JPWO2003083513A1 - X線検出器 - Google Patents
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Abstract
隔壁39によって画素ごとに分離されたシンチレータ層38とこのシンチレータ層38で変換された蛍光を信号電荷に変換するフォトダイオード13とを具備したX線検出器において、シンチレータ層38を形成する蛍光体粒子の平均粒径をDs、隔壁39を構成する粒子の平均粒径をDwとした場合にDs>Dwとなっている。
Description
技術分野
本発明はX線画像を検出するX線検出器およびその製造方法に関する。
背景技術
近年、新世代の診断用X線検出器として、アクティブマトリックスを用いた平面型のX線検出器が注目を集めている。平面型X線検出器は、X線で撮影したX線画像あるいはリアルタイムのX線透視画像をデジタル信号として出力する構成になっている。
平面型X線検出器は固体検出器であるため、画質性能の向上や安定性の面でも大きい期待が寄せられている。
平面型X線検出器は、比較的大きな線量で静止画像を収集する一般撮影用や胸部撮影用のものがすでに開発され、商品化されている。また、透視線量のもとで毎秒30画面以上のリアルタイムのX線動画の検出も可能なことから、近い将来、循環器や消化器などの診断分野に応用した製品の商品化も予想されている。このような動画用のX線検出器の実用化には、S/N比の改善や微小信号のリアルタイム処理技術の一層の改善が必要である。
平面型X線検出器は、大きく分けると直接方式と間接方式の2つの方式がある。
直接方式はa−Seなどの光導電膜を用いてX線を電荷に直接変換し、変換した電荷を電荷蓄積用キャパシターに蓄積する方式である。この方式では、解像度特性は画素ピッチでほぼ規定される。間接方式はシンチレータ層でX線を可視光に変換し、変換した可視光をa−SiフォトダイオードやCCDなどの光電変換素子で電荷に変換し、電荷蓄積用キャパシターに蓄積する方式である。
直接方式の平面X線検出器では、X線の吸収率を上げて信号強度を確保するために、例えばa−Seの光導電膜を1mm程度の厚膜で形成している。また、X線フォトン1個当りの光導電電荷生成率を上げるため、生成した光導電電荷が膜中の欠陥準位にトラップされることなく集電電極に到達させるため、そしてバイアス電界と直角方向への電荷の拡散を極力抑えるために、例えばa−Seの光導電膜の両端に10V/μmの強バイアス電界が印加されている。したがって、a−Seの光導電膜の膜厚が1.0mmの場合、10kV程度の高電圧が印加される。
直接方式のX線検出器は解像度特性が優れているという利点があるが、その反面、動作電圧の低いTFTを高電圧から保護しなければならず、信頼性の点で問題がある。また、低暗電流特性と高感度特性、熱的安定性などを備えた光導電材料を容易に入手できないという問題もある。
一方、間接方式のX線検出器は信号電荷の発生にフォトダイオードやCCDなどを用いるため、直接方式におけるような高電圧の印加を必要とせず、高電圧による絶縁破壊の問題はない。また、シンチレータ材料やフォトダイオードなどは基本的な技術が確立しているので製品化が容易であるという利点がある。
しかし、X線診断装置としての解像度特性はシンチレータ層で変換された蛍光が光電変換素子に到達するまでの間に拡散や散乱を起こすため直接方式に較べて一般に劣るという問題がある。特に感度特性を改善するためにシンチレータ層を厚膜にすると、フォトダイオード等の光電変換素子に到達するまでの蛍光の広がりが大きくなって解像度の劣化が顕著となる。この蛍光の広がりを抑えて解像度を確保するために、シンチレータ層をフォトダイオードとTFTのマトリックスに合わせて画素単位に形成し、シンチレータ画素間を隔壁で光学的に遮断する方法が知られている。しかし従来のX線検出器における隔壁はX線感度に寄与しない金属材料などで形成されており、このためシンチレータ層から隔壁に置き換えられた分だけシンチレータ層の総発光量が低減してX線検出器の感度が低下するという問題があった。
発明の開示
そこで本発明の目的は、画素間に、解像度特性の劣化を抑えるための隔壁が形成された間接方式のX線検出器において、隔壁の存在による輝度低下をできるだけ小さくしたX線検出器を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、かかるX線検出器の製造方法において、輝度の低下をできるだけ小さく抑える隔壁とシンチレータ層の構造を均質かつ信頼性良く形成する方法を提供することにある。
本発明のX線検出器は、画素間に隔壁の形成された間接方式のX線検出器の高い解像度特性を維持しつつ、感度特性を向上させるために、以下の構造を有する。
すなわち、本発明のX線検出器の一つの形態は、画素単位の光電変換部と、前記光電変換部の各画素上に形成された蛍光材料Iを含むシンチレータ画素と、前記シンチレータ画素間に設けた蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含む隔壁とを備えたX線検出器において、前記蛍光材料Iの平均粒径をDs、前記蛍光材料及び/又は非蛍光材料の平均粒径をDwとしたとき、Ds>Dwであることを特徴としている。
本発明のX線検出器における画素間の透過光の抑制による解像度の改善は、隔壁が、画素を構成する蛍光材料Iと光学的特性が相違する蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含むため、画素と隔壁との界面で屈折や反射が生じることにより得られる。ここで、光学的特性が異なるとは、具体的には平均粒径が異なるために光学的特性が異なることを意味するが、平均粒径の相違に加えて両蛍光材料の屈折率や分光吸収特性が異なることにより光学的特性が異なることをも意味する。
本発明の他の態様は、画素単位の光電変換部と、前記光電変換部の各画素上に形成された蛍光材料Iを含むシンチレータ画素と、前記シンチレータ画素間に設けた蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含む隔壁とを備えたX線検出器において、前記シンチレータ画素の膜厚をTs、前記シンチレータ画素内における蛍光材料Iの平均粒径をDs、前記シンチレータ画素内における蛍光材料Iの体積充填密度をFsとしたとき、Ds≧Ts・Fs/10であることを特徴としている。ここで、例えば体積充填率50%の場合の(Ds)は0.5である。
本発明のさらに他の態様は、画素単位の光電変換部と、前記光電変換部の各画素上に形成された蛍光材料Iを含むシンチレータ画素と、前記シンチレータ画素間に設けた蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含む隔壁とを備えたX線検出器において、前記隔壁の壁厚をTw、前記隔壁内における蛍光材料及び/又は非蛍光材料の平均粒径をDw、前記隔壁内における蛍光材料及び/又は非蛍光材料の体積充填密度をFwとしたとき、Dw≦Tw・Fw/10であることを特徴としている。
このように隔壁内の蛍光材料の粒径とシンチレータ画素の膜厚や隔壁の壁幅との関係を調整することにより、以下のような作用効果により輝度の低下を抑制し、かつシンチレータ膜の光学的な画素分離効果を一層発揮させることができる。
シンチレータ層内の蛍光体からの蛍光発光は、蛍光体粒と周辺のバインダー又は空気との界面での屈折により散乱されて、その一部がフォトダイオード等の光電変換素子に到達する。蛍光を効率的に光電変換素子に導く為には、同一体積に占める蛍光体粒と周囲のバインダー等との界面の割合が極力小さい事が望ましい。一方、隔壁に対しては、シンチレータ層からの蛍光に対してトータル反射率を極力高める必要がある。この場合、隔壁に含まれる材料としての粒(蛍光材料及び/又は非蛍光材料)の平均粒径が小さい程望ましい。即ち、隔壁内の粒と周辺のバインダー等との界面の割合が大きい程、複雑な多数回の屈折により隔壁が拡散反射面の効果をより発揮し、実効的な反射率が上昇する。
夫々の層を構成する粒子の平均粒径の関係で示せば、シンチレータ層を形成する蛍光体の平均粒径Dsが隔壁を構成する粒の平均粒径より大きく(Ds>Dw)その比率が大きい程シンチレータ画素の輝度を確保しつつ隣接画素間の光学的な分離効果を高める事ができると考えられる。
蛍光体の自己吸収係数を通常一般的な蛍光体の自己吸収係数レベルで仮定し、粒体を含む層の膜厚をT、粒体の充填密度をF、粒の直径をDとした場合の、層の実効反射率とT・F/Dとの関係を光学モデルでシミュレーションした結果から、T・F/Dの値が10程度以上で実効反射率は90%以上の高反射率が得られる事が分かった。逆にT・F/Dの値が10程度以下の場合には10%程度以上の蛍光が層を透過して対面側に達する可能性が高い。この関係から、蛍光体から成るシンチレータ層においては、Ts・Fs/Ds≦10(即ちDs≧Ts・Fs/10)となる様に蛍光体の粒径を大きくする事が、膜の最上部から発した蛍光を光電変換部まで導く為には特に有効である。隔壁に対しては、Tw・Fw/Dw≧10(即ちDw≦Tw・Fw/10)の場合にシンチレータから発した光が隔壁を通して隣接のシンチレータ画素に到達する可能性を抑えて解像度劣化を防ぐ効果が大きい。
繰り返しになるが、シンチレータ画素に含まれる蛍光材料の粒径に関して言えば、蛍光体から発した蛍光や隔壁層から反射して戻ってきた蛍光、或いは場合により隔壁層の粉体が蛍光体の場合にはその蛍光がフォトダイオード等の光電変換部に到達し易くするためにシンチレータ層の蛍光材料Iの粒径をできるだけ大きくすることが望ましい。これは蛍光体Iとバインダー材料又は空気との界面による蛍光の散乱回数をできるだけ少なくして蛍光がフォトダイオード等の光電変換部に到達するまでの実効的な光路長を極力抑える効果を狙ったものである。さらに、蛍光材料Iを焼結体のようなバインダー等を含まないものとして、蛍光材料とバインダー等との界面での屈折による散乱の頻度を極力抑える事ができる。また、夫々の蛍光材料の自己吸収係数及びバインダー材料等の蛍光に対する吸収係数をできるだけ小さくすることにより、蛍光体材料Iから発した蛍光や隔壁部の蛍光材料からシンチレータ層に入射した蛍光をフォトダイオード等の光電変換部に一層到達し易くすることができる。
一方、隔壁部に含まれる蛍光材料及び/又は非蛍光材料の粒径に関して言えば、隔壁厚さに対して十分小さい粒径である事が良好な解像度特性を確保する為に望ましい。これはシンチレータ画素の蛍光体Iから発した蛍光が多数回散乱されて隣接画素まで達する事を抑える、即ち隔壁部が拡散反射面に近づく効果を狙ったものである。
シンチレータ画素からの蛍光が隣接画素に到達するのを防ぐ効果は隔壁層の実効的な蛍光吸収若しくは反射の程度と関係している。蛍光の吸収率を増大させると実質的な輝度は低下するが、反射率の向上は輝度の低下をもたらさない。隔壁層の実効反射率は、蛍光材料粒子の粒径(針状粉体の場合には短径の最大径)を小さくして蛍光材料とバインダー等の周辺材料との界面での屈折頻度を増やすことにより向上させることができる。粒径を小さくすると完全拡散反射面に近付き隔壁でのトータルの反射率は増大する。
但し蛍光材料及び/又は非蛍光材料の粒径が極端に小さくなって蛍光波長程度に近付くと散乱効果が小さくなるので、粒径の下限はシンチレータ層の蛍光波長程度までとすることが望ましい。蛍光材料IIからシンチレータ層に入射した蛍光は、蛍光材料Iに吸収されて発光輝度増大に寄与するが、さらに主にシンチレータ層内を通過してフォトダイオードに達して、X線検出器の実効感度も向上させる。
本発明のさらに他の態様は、請求項1乃至4のいずれか1項記載のX線検出器において、前記隔壁は、前記蛍光材料Iの最短蛍光波長と等しいかそれよりも長い最長蛍光波長を有する蛍光材料IIを含有することを特徴としている。
従来知られている隔壁構造を有するX線検出器では、隔壁が、例えば金属材料やガラス系又はセラミックス材料、或いは樹脂材料などで形成されており、それ自体がX線照射により発光することはないのは勿論、シンチレータ層の発光を増大させる効果は得られないものであるが、本発明のX線検出器は、シンチレータ層から発せられる蛍光が拡散あるいは散乱して隣接する画素の光電変換素子に到達するのを防ぐための隔壁構造が形成されており、この隔壁構造が画素間の透過光を抑えて解像度を向上させるとともにシンチレータ層の発光輝度の向上に寄与するという特徴を備えている。
すなわち、蛍光材料IIから発する蛍光が蛍光材料Iに達すると蛍光の発光には寄与しないが、蛍光励起に関係する少なくとも最短波長の蛍光発生に関係する電子遷移のグランド準位に存在する電子を上位のエネルギー準位に励起する。その結果、蛍光材料Iの蛍光発光遷移に必要なグランド準位の電子の空き率が増加する。あるいは、バンド間の不純物準位や欠陥準位が関係する電子遷移を励起する。この結果、蛍光材料Iからの蛍光がシンチレータ層内を通過する際に、グランド準位の電子を励起する確率や、バンド間の準位が関係する電子励起の確率を減じて、蛍光材料Iからの蛍光のシンチレータ層内での吸収が抑えられる。これによって、金属材料等により形成された隔壁をもつ従来の間接方式のX線検出器と比べて高い輝度のX線検出器を得ることができる。
本発明のさらに他の態様は、請求項1乃至4のいずれか1項記載のX線検出器において、前記隔壁は、前記シンチレータ画素内に含まれる蛍光材料Iと光学的特性が相違し、かつ前記蛍光材料Iの最長蛍光励起波長と等しいかそれよりも短い最短蛍光波長を有する蛍光材料IIIを含有することを特徴としている。
すなわち、この態様によれば、隔壁に含まれる蛍光材料IIIの最短蛍光波長がシンチレータ層に含まれる蛍光材料Iの最長蛍光励起波長よりも短いため、蛍光材料IIIから発する蛍光が蛍光材料Iに達して少なくとも最長蛍光励起波長に係るグランド準位から励起準位への電子遷移を増大させ、この結果として蛍光材料Iの発光強度自体が増大する。
蛍光材料Iとしては、Gd2O2S又はCsIを母材とする蛍光材料が適している。
また、蛍光材料II又はIIIとしては、Gd2O2Sを母材とする蛍光材料が適しており、特に蛍光材料IIIは、その最長蛍光波長が紫外領域にあることがより望ましい。
本発明のX線検出器は、例えば次に挙げる方法により製造することができる。
第1の方法は、シンチレータ層を先に形成する方法である。蛍光材料II及び/又はIII及び/又は非蛍光材料を含む隔壁材料の層を一旦形成した後にシンチレータ画素が形成されるべき部分を、化学反応又は光化学反応を用いて、或いは機械的に又は熱的に除去し、しかる後に除去した部分に蛍光材料Iを充填する方法である。
すなわち、本発明の第1のX線検出器の製造方法は、画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、前記画素単位の光電変換部上に蛍光材料Iを含む層を形成する工程と、前記層から隔壁となる部分を除去して前記シンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素を形成する工程で除去した部分に前記蛍光材料II及び/又は蛍光材料III及び/又は非蛍光材料を含む材料を充填して前記隔壁を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
第2の方法は、第1の方法とは逆に、隔壁層を先に形成する方法である。
すなわち、本発明の第2のX線検出器の製造方法は、画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、前記画素単位の光電変換部上に蛍光材料II及び/又は蛍光材料III及び/又は非蛍光材料を含む層を形成する工程と、前記層から画素となる部分(前記隔壁となる部分以外の部分)を除去して前記隔壁を形成する工程と、前記隔壁を形成する工程で除去した部分に前記蛍光材料Iを含む材料を充填して前記シンチレータ画素を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
第3の方法は、樹脂材料等の有機材料又は金属材料等の無機材料により形成された仮隔壁を用いる方法で、蛍光材料を含む層の画素形状又は隔壁形状への加工が困難な場合に特に有効な方法である。
すなわち、本発明の第3のX線検出器の製造方法は、画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、前記画素単位の光電変換部上に樹脂材料等の有機材料又は金属材料等の無機材料により層を形成する工程と、前記層から前記隔壁となる部分を除去して樹脂材料又は金属材料による仮画素を形成する工程と、前記仮画素を形成する工程で除去した部分に前記蛍光材料II及び/又は蛍光材料III及び/又は非蛍光材料を含む材料を充填して前記隔壁を形成する工程と、前記仮画素を除去する工程と、前記仮画素を除去した部分に前記蛍光材料Iを含む材料を充填して前記シンチレータ画素を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
第4の方法は、樹脂材料等の有機材料又は金属材料等の無機材料などにより形成された仮画素を用いる方法で、この方法も蛍光材料を含む層の画素形状又は隔壁形状への加工が困難な場合に特に有効である。
すなわち、本発明の第4のX線検出器の製造方法は、画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、前記画素単位の光電変換部上に樹脂材料等の有機材料又は金属材料等の無機材料により層を形成する工程と、前記層から隔壁となる部分以外の部分を除去して樹脂材料又は金属材料による仮隔壁を形成する工程と、前記仮隔壁を形成する工程で除去した部分に前記蛍光材料Iを含む材料を充填して前記シンチレータ画素を形成する工程と、前記仮隔壁を除去する工程と、前記仮隔壁を除去した部分に蛍光材料II及び/又は蛍光材料III及び/又は非蛍光材料を含む材料を充填して前記隔壁を形成する工程とを備えたことを特徴としている。なお、一般に画素は一辺が30〜400μmの正方形又は正方形に近い長方形であり、隔壁の幅は10〜50μm程度であり、シンチレータ画素の厚さは100〜800μmである。用途や検出するX線のエネルギーにより必要な膜厚は異なるが、医療用途の一般撮影用や透視用としては、好ましくは200〜500μmである。
隔壁層やシンチレータ層等の蛍光材料を含む層あるいは樹脂材料や金属材料からなる層を部分除去する方法としては、紫外線領域の発光波長を持つレーザー光による光化学的反応を用いた除去、化学的な処理による除去、ダイシングその他の機械的な手段を用いての切削除去、更には赤外線レーザーなどによる高密度の加熱による熱的な除去等の公知の方法を用いることができる。
また、蛍光材料は硬度と結合エネルギーが高いために化学反応や機械加工、或いは熱的又は光化学的な除去がいずれの方法でも難しいが、樹脂材料や金属材料でパターン形成して仮隔壁や仮画素を形成する方法では、このような蛍光材料を除去する工程を省略できるという利点がある。また加工時の蛍光体へのダメージによる発光効率の低下や着色による輝度低下を避けることができる。近年は、数百μmの厚膜で、アスペクト比10以上の構造を数μmの精度で形成できる特殊なフォトレジスト材料も市販されている。
従来のX線検出器では、例えば金属材料やガラス系又はセラミックス材料、或いは樹脂材料などで隔壁が形成されており、隔壁自体がX線照射により発光することはないのは勿論、シンチレータ層の発光を増大させる効果も有していない。これに対して本発明のX線検出器では、隔壁層が、シンチレータ層から発せられる蛍光が拡散して隣接する画素の光電変換素子へ到達するのを抑制するとともに、同じ隔壁層がシンチレータ層の発光輝度の増大に寄与する。なお、本発明のX線検出器における隔壁の光の遮蔽効果は、前述したように、隔壁内の蛍光材料II又はIII又は非蛍光材料を適当な粒径の粉体状とすることにより蛍光材料自体とバインダー材の界面屈折や界面での全反射により得られる。例えばAgやAg系合金などの金属粉体やTiO2等の微細な透明セラミックス粉体のような反射材や蛍光を吸収する色素などの樹脂材料を隔壁を構成する非蛍光材料を含有させることによっても実現可能である。
発明を実施するための最良の形態
本発明の実施形態について図1の回路構成図を参照して説明する。
符号11はX線光電変換部で、X線光電変換部11はマトリックス状に配列した複数の画素単位12から構成されている。たとえばガラスなどの絶縁基板上に同じ構造の複数の画素単位12が行方向(たとえば図の横方向)および列方向(たとえば図の縦方向)の2次元に配置されている。図1では、たとえば9個の画素単位12a〜12iが示されている。
1つの画素単位たとえば画素単位12iは、光を電荷に変換するフォトダイオード13およびスイッチング部を構成する薄膜トランジスタ(以下TFTという)14、電荷を蓄積する電荷蓄積部たとえば蓄積キャパシタ15などから構成されている。TFT14はゲート電極Gおよびソース電極S、ドレイン電極Dを有し、たとえばドレイン電極Dはフォトダイオード13および蓄積キャパシタ15と電気的に接続されている。
X線光電変換部11の外部に、TFT14の動作状態たとえばオン・オフを制御する制御回路16が設けられている。制御回路16には複数の制御ライン17が設けられている。図では第1ないし第4の4個の制御ライン171〜174が設けられている。それぞれの制御ライン17は、同じ行の画素単位12を構成するTFT14のゲート電極Gに接続されている。たとえば第1の制御ライン171は画素単位12a〜12cのゲート電極Gに接続されている。
列方向には、複数のデータライン18が設けられている。図では第1ないし第4の4個のデータライン181〜184が設けられている。それぞれのデータライン18は、同じ列の画素単位12を構成するTFT14のソース電極Sに接続されている。たとえば第1のデータライン181は画素単位12a、12d、12gのソース電極Sに接続されている。各データライン17は対応する電荷増幅器19に接続されている。
電荷増幅器19はたとえば演算増幅器で構成され、その一方の入力端子a1にデータライン18が接続され、他方の入力端子a2は接地されている。一方の入力端子a1と出力端子b間にコンデンサCが接続され積分機能を有する構成になっている。コンデンサCと並列にスイッチSWが接続され、たとえばスイッチSWを閉じてコンデンサCに残った電荷を放電する構成になっている。
それぞれの電荷増幅器19は、並列に入力する複数の電気信号を直列信号に変換して出力する並列/直列変換器20に接続されている。並列/直列変換器20は、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器21に接続されている。
制御回路16や電荷増幅器19、並列/直列変換器20、アナログデジタル変換器21はたとえば集積回路で形成され、制御回路16とTFT14間などそれぞれの回路間はたとえばワイヤボンディングで接続される。
次に、X線光導変換部11の構成について図2を参照して説明する。図2は1つの画素単位の部分を抜き出した断面図で、図1に対応する部分には同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。
ガラスなどの絶縁基板31上にTFT14および蓄積キャパシタ15が形成されている。TFT14は、絶縁基板31上に形成されたゲート電極Gおよびゲート電極Gを覆う絶縁膜32、絶縁膜32上に形成された半導体膜33、半導体膜33上に設けられたソース電極S、ドレイン電極Dなどから構成されている。
TFT14のゲート電極Gは制御ライン17(図1)に接続され、ソース電極Sはデータライン18に接続されている。
蓄積キャパシタ15は絶縁基板31上に形成された下部電極34、ゲート電極G上から下部電極34上まで延長する絶縁膜32、絶縁膜32上に設けられた上部電極35などから構成されている。上部電極35はドレイン電極Dと電気的に接続されている。
TFT14および蓄積キャパシタ15の上方に絶縁層36が設けられ、絶縁層36上にフォトダイオード13が形成されている。フォトダイオード13は、a−SiのpnダイオードやPINダイオードなどで形成される。図の場合はPINダイオードで形成されている。フォトダイオード13の図示下方および上方にそれぞれ第1電極131および第2電極132が設けられ、第1電極131と第2電極132間にバイアス電圧が印加される。第2電極132はスパッタリング法などで成膜したITO透明導電膜で形成されている。絶縁層36の一部にスルーホール37が設けられ、フォトダイオード13の第1電極131はスルーホール37を介してTFT14のドレイン電極Dと電気的に接続されている。第2電極132上にX線を光に変換するシンチレータ層38が形成されている。
シンチレータ層38を囲む周縁領域たとえば隣接する画素単位のシンチレータ層381との境界に隔壁層39が形成され、隣接する画素単位のシンチレータ層どうしは隔壁層39で遮断されている。シンチレータ層38および隔壁層39にはそれぞれ蛍光材料I(P1)および蛍光材料II(P2)が含まれ、蛍光材料I(P1)および蛍光材料II(P2)は、平均粒径又は平均粒径と他の光学的特性たとえば発光スペクトルや屈折率、反射率などの1つあるいは複数の特性が相違している。また、シンチレータ層38および隔壁層39上に、光を反射する蛍光反射層40がX線光導変換部11の全面にわたってたとえば共通に形成されている。
上記した構成において、蛍光反射層40を通してシンチレータ層38および隔壁層39にX線41が入射し、シンチレータ層38および隔壁39で光に変換される。シンチレータ層38で発生した光L1は、隔壁層39から入力する光L2の作用で強められ、あるいは減衰が抑えられ、あるいは隔壁層39との境界などで反射し、シンチレータ層38からフォトダイオード13に入力し、電荷に変換される。この電荷は蓄積キャパシタ15に蓄積される。
蓄積キャパシタ15に蓄積した電荷の読み出しは制御回路16によって制御され、たとえば画素単位12の行(図1の横方向)ごとに順に行われる。まず、制御回路16から第1のゲートライン171を通して第1行目に位置する画素単位12a〜12cのゲート電極Gに、たとえば10Vのオン信号を加え、第1行目の画素単位のTFT14をオン状態にする。
このとき、第1行目の画素単位12a〜12cの蓄積キャパシタ15に蓄積された電荷が、ドレイン電極Dからソース電極Sに電気信号として出力される。ソース電極Sに出力した電気信号はそれぞれ複数の電荷増幅器19で増幅される。増幅された電気信号は並列/直列変換器20に並列に加えられ、直列信号に変換される。その後、アナログデジタル変換機21でデジタル信号に変換され、次段の信号処理回路(図示せず)に送られる。
第1行目に位置する画素単位の蓄積キャパシタ15の電荷の読み出しが終了すると、制御回路16から第1ゲートライン171を通して第1行目の画素単位のゲート電極Gにたとえば−5Vのオフ信号が加えられ、第1行目の画素単位のTFT14をオフ状態にする。
上記した動作が第2行目以下の画素単位12についても順に行われる。そして、すべての画素単位12の蓄積キャパシタ15に蓄積した電荷の読み出しが行われ、順次、デジタル信号に変換されて出力され、1つのX線画面に対応する電気信号がアナログデジタル変換器20から出力される。
図1の場合、フォトダイオード13はTFT14や蓄積キャパシタ15に重ならない領域に形成されている。しかし、広い受光面積を確保するために、たとえばTFT14および蓄積キャパシタ15上に絶縁層を設け、1つの画素内のより広い領域にフォトダイオード13を形成することもできる。
そして、隔壁39を形成する粒子の平均粒径をDw、隔壁39内の粒子の充填密度をFwとした場合、Tw・Fw/10≧Dwの関係に形成している。また、シンチレータ層38内の蛍光体の平均粒径をDs、シンチレータ層38の膜厚をTs、シンチレータ層38内の蛍光体粒子の充填密度をFsとした場合、Ts・Fs/10≦Dsの関係に形成している。さらに、シンチレータ層38を形成する蛍光体粉末の平均粒径をDs、隔壁39を形成する材料の平均粒径をDとした場合、Ds>Dwの関係にしている。
上記した構成において、外部からX線40がシンチレータ層38に入射し蛍光に変換される。蛍光の一部A1はシンチレータ層38を移動しフォトダイオード13に入力する。蛍光の一部A2は隔壁39に侵入し、その一部A21はシンチレータ層38に戻リフォトダイオード13に入力する。また隔壁39に侵入した蛍光の一部A22は隔壁38内を移動する。また、蛍光の一部A3は隔壁39で反射し、シンチレータ層38内を移動する。
ここで、粒体で形成した層の膜厚をT、粒体の充填密度をF、粒の直径をDとした場合、(T・F/D)の値と蛍光に対する層の実効透過率との関係について光学モデルでシミュレーションした結果を図3を参照して説明する。図3はTiO2の層を20μmの膜厚に形成した場合で、図の(a)は粒径(μm)および(T−F/D)、反射率(%)、透過率(%)の間係を示した図、図の(b)は(T・F/D)と透過率(%)の関係をグラフで表示した図である。図3(b)の横軸は(T・F/D)の値、縦軸は透過率(%)で、シミュレーション結果を曲線Pで示す。
図3から分かるように、(T・F/D)の値がほぼ10以上になると実効透過率は10%以下となり、ほとんどの蛍光を反射する。逆に(T・F/D)の値がほぼ10以下になると実効透過率が高くなり、10%程度以上の蛍光が透過する。上記の実施形態では、隔壁39部分についてTw・Fw/10≧Dw、すなわちTw・Fw/Dw≧10の関係になっている。したがって、シンチレータ層38で発光した蛍光は隔壁39によって90%以上の高反射率で反射される。この場合、隔壁39内に侵入する蛍光の量が減少し、陽壁39内での光ガイド効果が発生しない、その結果、蛍光の損失が少なくなり、シシチレータ画素ごとの輝度が向上する。また、シンチレータ層38から隔壁39に侵入した蛍光が透過しないため、隔壁30を通り抜けて隣接する画素のシンチレータ層やフォトダイオードに到達する蛍光が減少し、解像度の劣化が防止される。
また、上記の実施形態は、シンチレータ層38の部分についてTs・Fs/10≦Ds、すなわちTs・Fs/Ds≦10の関係とし、蛍光体の粒径を大きくしている。この場合、シンチレータ層38内の実効透過率が高くなり、たとえばシンチレータ層38の最上部で発光した蛍光が光電変換部に透過する割合が10%以上となる。
また、シンチレータ層38内で発生した蛍光は、蛍光体粒とその周囲に位置するバインダーとの界面における屈析で複雑に散乱して、光電変換素子たとえはフォトダイオード13に到達する。したがって、蛍光を発光素子に効率的に導くためには、同一体積に占める蛍光体粒とバインダーなどとの界面の割合が小さい方がよい。
一方、隔壁39にこついては、シンチレータ層38から侵入する蛍光に対して全体の反射率を高める必要があり、隔壁39を構成する粒は平均粒径が小さい方がよい。平均粒径が小さいと、粒とバインダーなどとの界面の割合が大きくなり、複雑な多数回の屈析が生じる。その結果、拡散反射面の効果が大きくなり、隔壁39による実効的な反射率が上昇する。
ここで、(Ds/Dw)の値と画素単位の輝度特性との間係について図4を参照して説明する。図の(a)は(Ds/Dw)と輝度(arb・units)の関係を示した図で、図の(b)はこの関係をグラフQに表示した図である。図4(b)の横軸は(Ds/Dw)の値、縦軸は輝度である。
この場合、シンチレータ層は、エポキシ樹脂内に蛍光体粉末(Gd2O2S:Tb)を分散させた塗液を用いて、光電変換部上に300μmの膜厚に塗布し、その後、80℃に加熱して膜を乾燥、硬化させて形成した。その後、間隔が150μm、深さが280μm、幅が23μmの格子状溝を、ダイシング法によってシンチレータ層の部分に形成し、その溝にシンチレータ層の蛍光体粉末と同一で粒径が2μmの蛍光体粉末を充填して隔壁を形成した。
図4に示すように、Ds/Dw=1の場合、輝度は14.3となっている。Ds>Dwの場合、たとえばDS/Dw=15では、輝度はその2倍の30に向上している。
上記の実施形態の場合、シンチレータ層38を形成する蛍光体の平均粒径Dsと、隔壁39を構成する粒の平均粒径Dwとの関係をDs>Dwにしている。したがって、シンチレータ層38の蛍光が効率的に光電変換素子に到達し、シンチレータ層38の画素ごとの輝度劣化が防止される。また、隔壁39による反射効果が大きくなり、隣接する画素間の光学的な分離効果が向上する。この分離効果は、DsとDwの差が大きいほど顕著になる。
なお、上記の実施形熊では、シンチレータ層を粒子状の蛍光体で形成している。しかし、蛍光体の焼結体で形成しても同様な効果が得られる。たとえば焼結体のクラスターの平均粒径Dcは80〜100μmで、隣接する光電変換素子たとえばフォトダイオード間の距離は、一般に、50μm以下となっている。したがって、隔壁の壁幅は最大でも50μm程度で、Dc>Dwの条件が満たされる。この場合も、DcとDwの差が大きいほど画素ごとの輝度持性が向上する。
次に、シンチレータ層38に含まれる蛍光材料I(P1)および隔壁層39に含まれる蛍光材料II(P2)の蛍光波長の選択による輝度改善効果について説明する。
蛍光材料Iには、蛍光波長が所定の範囲に分布する光を発生するたとえばGd2O2S:Tbが用いられ、蛍光材料IIには、蛍光材料Iの蛍光波長のうちその一番短い波長と等しいかそれよりも長い波長成分を有する蛍光波長の光を発生する蛍光材料が用いられる。たとえばGd2O2S:Eu(4重量%)などで、この場合、たとえば平均粒径が2μm程度の小さな粒径のものが用いられる。
この組み合わせの場合、シンチレータ層38で発生した光L1は、隔壁層39の蛍光材料IIが発生する光L2の作用により、シンチレータ層38内での減衰が小さく抑えられてフォトダイオード13に入力し輝度が上昇する。
この構成の場合、隔壁に含まれる蛍光材料IIの最長蛍光波長がシンチレータ層に含まれる蛍光材料Iが発生する蛍光波長のうちその最も短い波長より大きくなっている。したがって、蛍光材料IIから発する蛍光L2がシンチレータ層38に進入すると、蛍光材料Iの蛍光励起には寄与しないが、蛍光励起に係る電子遷移のグランド準位に存在する電子を上位の不純物準位や蛍光発生に関係しない上位のエネルギー準位に励起する。その結果、蛍光材料Iの蛍光発光遷移に必要なグランド準位の電子の空き率が増加する。これによって、蛍光材料IのX線蛍光発光効率が増大する。あるいは、蛍光L2が蛍光材料Iのバンド間の不純物準位や欠陥準位が関係する電子遷移を励起するときには、蛍光材料Iからの蛍光L1がシンチレータ層内を通過する際に、グランド準位の電子を励起して吸収される確率や、バンド間の準位が関係する電子励起により吸収される確率を減じて、蛍光材料Iからの蛍光L1のシンチレータ層38内での自己吸収が抑えられる。これらの結果として輝度の向上が期待できる。
また蛍光材料IIから発した蛍光L2で前記の蛍光材料Iへの輝度向上効果を生じなかったものも、シンチレータ層内を何回か反射して、その一部が検出器に達しシンチレータ層の輝度向上に寄与する。
上記の場合、蛍光材料Iには、Gd2O2S:Tbの他にGd2O2S:Eu等の添加材の異なるもの、Gd2O2SやLa2O2S、Lu2O2S等の希土類セラミックス系材料を母材としたX線用蛍光体、CsI:Tl、CsI:Na等の沃化物系のX線用蛍光体あるいはCaWO4、LaOBr:Tm、LaOBr:Tb等のX線用蛍光体などが用いられる。
また、蛍光材料IIにはGd2O2S:Euの他、Gd2O2S:PrやGd2O2S:Tb等の添加材の異なるもの、Gd2O2SSやLa2O2S、Lu2O2S等の希土類セラミックス系材料を母材としたX線用蛍光体あるいはZnCdS:Ag等の硫化物系蛍光体などが用いられる。
蛍光材料Iおよび蛍光材料IIを選択する場合に、実用上望ましくは、例えば両者の蛍光発光スペクトルなどを考慮し、蛍光材料IIには蛍光材料Iの主蛍光波長と同程度かそれよりも長い主蛍光波長を有する蛍光材料が用いられる。例えば蛍光材料Iに主蛍光波長が540nm前後のGd2O2S:Tbを用いる場合には蛍光材料IIには主蛍光波長が640nm前後のGd2O2S:Euが用いられる。
しかし、蛍光材料IIの主発光波長が必ずしも蛍光材料Iの主発光波長より長い必要は無く、蛍光材料IIの発光スペクトルの少なくとも一部が蛍光材料Iの最短発光波長よりも長ければ前述したメカニズムから輝度向上効果が期待できる。前述の例と逆の組み合わせになるが、例えば蛍光材料IにGd2O2S:Euを用い、蛍光材料IIにGd2O2S:Tbを用いた場合にも、蛍光材料IIのGd2O2S:Tbが発光する380nm前後から680nm前後までの蛍光L2のうち500nm程度以上の蛍光スペクトルが、最短発光波長500nm程度の蛍光材料IのGd2O2S:Euの蛍光発光効率を増大させる。
隔壁に含まれる蛍光材料IIが画素部に含まれる蛍光材料Iと同じ蛍光体種の場合、例えばどちらもGd2O2S:Tb、或いはGd2O2S:Eu、La2O2S、Lu2O2S等の同じ蛍光体種系の場合も同様な効果が期待できる。
また、蛍光材料で隔壁を構成した場合には、次の構成でもシンチレータ画素の輝度が向上する。すなわち、隔壁層に含有される蛍光材料IIIの発光スペクトルがシンチレータ層38に含有される蛍光材料Iの蛍光励起波長を含む場合、蛍光材料IIIから発する蛍光L2が蛍光材料Iに達して少なくとも最長蛍光励起波長に対応するグランド準位から励起準位への電子遷移を増大させ、この結果として蛍光材料Iの発光強度自体が増大する。この構成においてシンチレータ層38に含有される蛍光材料Iの最長蛍光波長と等しいか又はこれよりも短波長側の蛍光発光スペクトルを有する蛍光材料IIIを隔壁に含有した場合が該当する。特に蛍光材料IIIの主発光波長が蛍光材料Iの主発光波長よりも短い場合に輝度改善効果は一層大きいものとなる。蛍光材料Iとしては例えば、Gd2O2S:EuやGd2O2S:Pr等の他にGd2O2S系で添加物の異なるもの、更にLa2O2S、Lu2O2S等の希土類セラミックス系材料を母材とし、Eu、Tb等の添加物を含有したX線用蛍光体などが好適である。
蛍光材料IIIには、Gd2O2S:Tbの他にGd2O2S:Eu等の添加材の異なるもの、更にGd2O2SやLa2O2S、Lu2O2S等の希土類セラミックス系材料を母材としたX線用蛍光体、或いはZnCdS:Ag、ZnS:Ag、ZnS:Cu等の硫化物系蛍光体、或いはCsI:Tl、CsI:Na等の沃化物系のX線用蛍光体、CaWO4、LaOBr:Tm、LaOBr:Tb等のX線用蛍光体などが用いられる。
蛍光材料Iと蛍光材料IIIが同一蛍光体種の場合には、蛍光材料Iの発光スペクトルの各スペクトル成分に対して当該各スペクトル成分より短波長側の蛍光材料IIIの発光スペクトル成分が蛍光材料Iの蛍光励起に寄与して蛍光材料IIIの発光輝度向上に効果がある。
また蛍光材料IIIから発した蛍光L2で前記の蛍光材料Iへの輝度向上効果を生じなかったものも、シンチレータ層内を乱反射してその一部が検出器に達しシンチレータ層の輝度向上に寄与することは先に説明した第1のメカニズムの場合と同様である。
なお、蛍光材料Iを励起する蛍光波長をもつ蛍光材料IIIとしては、ZnS:Agの他、CaWO4やLaOBr:Tb、BaSO4:EuなどのX線用蛍光体が用いられる。
この場合も、蛍光材料IIIの選定にあたっては、蛍光材料Iの蛍光励起スペクトルおよび蛍光材料IIIの蛍光発光スペクトルなどを考慮し、例えば蛍光材料Iの蛍光励起波長と同程度、あるいはそれよりも短い波長成分の光を発生するX線蛍光体が用いられる。
なお、シンチレータ層に含まれる蛍光材料Iには、X線吸収率およびX線から蛍光への変換効率が高く、蛍光の自己吸収が小さい透明度の高い蛍光材料が望ましい。例えばGd2O2Sを母材とする蛍光体あるいはCsIを母材とする蛍光体が有効である。Gd2O2Sを母材とする蛍光体は、粒径の制御が比較的容易な粉体で、また湿気に対しても、化学的にも安定で、シンチレータ層の製造にも適している。
蛍光材料Iの選択には、使用するX線に対するその蛍光体の発光効率だけではなく、蛍光波長とフォトダイオードの分光感度特性との整合性も考慮することが望ましい。例えば、分光感度特性のピークが600nm台にあるa−Siフォトダイオードを検出器とする場合、Gd2O2S:Tb(主発光波長545nm)に対して発光効率で劣るGd2O2S:Eu(主発光波長630nm)がフォトダイオードの検出出力では同等か若干大きい値を示す。総合的には、Gd2O2S:Eu、Gd2O2S:Tb、CsI:Tl等が好適な蛍光材料である。
また、隔壁層に含有される蛍光材料IIとしては、例えばシンチレータ層に含有する蛍光材料をGd2O2S:Tbとした場合、その最短蛍光波長は370nm程度であることから、最長蛍光波長が370nm以上で前記の条件を満足するGd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr、Gd2O2S:Eu、CsI:Tl、等が有効である。
隔壁層に含まれる蛍光材料IIIには、例えばシンチレータ層に含有する蛍光材料IがGd2O2S:Eu(主発光波長630nm)の場合には、その主発光波長成分の励起波長が概ね630nm以下であることから、630nm以下に主要蛍光発光成分を有するGd2O2S:TbやBaFCl:Eu、LaOBr:Tb、Y2O2S:Tb、ZnS:Ag、(Zn、Cd)S:Ag等のX線用蛍光体が好適である。
また、蛍光材料Iを励起する蛍光材料IIIには、最長の蛍光波長が紫外領域にある蛍光材料が有効となる。例えば、シンチレータ層が厚くなると、隔壁層で発生した光が隣接する画素のシンチレータ層を超えて、さらにその先のシンチレータ層まで到達し、解像度を低下させる場合がある。
隔壁層に含有する蛍光材料IIIの蛍光波長が紫外領域にあるために、可視光以上の長波長蛍光に較べてシンチレータ層内で吸収が大きく、隣接するシンチレータ画素を超えてこの紫外蛍光が到達する可能性が極めて小さい。特に膜厚が厚い場合には隣接画素を超えての蛍光の発散による解像度低下を生じやすく、本発明の有効性が増す。
隔壁層内の蛍光材料IIIとしては、上記の蛍光材料Iを励起する蛍光波長成分を有する蛍光材料および最長の蛍光波長が紫外領域にある蛍光材料を混合したものを使用することもできる。この場合、両者の配合率に応じてそれぞれのメカニズムにより輝度の向上効果が実現される。
ここまでに説明した構成によれば、隔壁層に含まれる蛍光材料II又はIIIが発生した光はシンチレータ層内の蛍光材料Iが発生した光の減衰を抑え、または、蛍光材料Iが発生する光を強めている。このとき、蛍光材料IIはIIIが発生した光の一部は、シンチレータ層内を通過してフォトダイオードに達し感度の上昇にも寄与する。
このような感度上昇の効果を上げるためには、シンチレータ層の蛍光材料Iの粒径は大きい方が望ましい。例えば隔壁層の粒径よりも大きな粒径とし、あるいは焼結した一体化構造とし、蛍光材料とバインダーなどの周辺材料との界面の屈折による散乱を極力抑えた方が効果が大きくなる。また、それぞれの蛍光材料の自己吸収係数およびバインダー材料のそれぞれの蛍光に対する吸収係数は小さい方が望ましい。
上記した構成は、隔壁層内の蛍光材料の粒径を小さくすれば画素分離効果が顕著となり、いわゆる解像度が改善する。
例えば蛍光材料の粒径(蛍光材料が針状紛体の場合は針の直径)を小さくすると、蛍光材料とバインダーなどの周辺材料との界面での屈折頻度が増加する。また、粒径が小さいと、完全拡散反射面に近い状態となり反射率が増大する。その結果、シンチレータ層で発生した光の隣接する画素単位のシンチレータ層への到達が防止され、画素分離効果が大きくなる。
この場合、シンチレータ層間に挟まれた隔壁層の壁幅方向に、例えば最低4個程度の蛍光材料の粒子を配列すれば有効な反射効果が実現される。この時、隔壁層に含まれる蛍光材料II又はIIIの平均粒径がφ、体積充填率がDの場合、平均粒径φを体積充填率Dで徐した値(φ/D)隔壁層の幅の1/2以下にすれば十分に有効な反射効果が得られる。蛍光材料の粒径が極端に小さくなり、その粒径がシンチレータ層で発生する蛍光波長に近い大きさになると散乱効果が小さくなる。従って粒径の下限は、シンチレータ層の蛍光材料Iが発生する最短の蛍光波長程度となる。
次に、上記した構成のX線検出器の製造方法について説明する。
まず、絶縁基板31上に光電変換部例えばTFT14および蓄積コンデンサ15、フォトダイオード13などをそれぞれ画素単位に形成する。
次に、シンチレータ層38を構成するGd2O2S:Tbなどの蛍光材料Iとエポキシなどの樹脂材料とを混合した材料を、例えばマトリクス状に形成された複数のフォトダイオード13などの上部に、400μmの厚さで塗付してシンチレータ膜を形成し、その後、焼成し固化する。
次に、ダイシング法などを用いてシンチレータ膜を加工し、隔壁層39が設けられる部分に溝を形成する。このとき、フォトダイオード13やTFT14の配置に合わせて、150μmのピッチで幅25μmの溝を形成し、画素単位に分離したシンチレータ層38が形成される。
次に、蛍光材料II又はIII、例えば平均粒径が2μmのGd2O2S:Euの小粒径や平均粒径が2μmのZnS:Agの粉体とPVB(ポリビニルブチラール)とを混合した材料を酢酸ブチルで溶かしたスラリー状の充填材を、溝の部分に沈殿法等により充填し、乾燥させ、その後、表面に残った充填材を研磨などで除去し隔壁層39を形成する。
次に、微粒子紛体のTiO2と樹脂バインダーとを混合した材料を、画素ごとに分離して形成された複数のシンチレータ層38および隔壁層39の表面に塗布し、蛍光反射膜40を形成する。
なお、蛍光反射膜40は、その他の透明なセラミックスの微粒子紛体や蛍光体の微粉末で形成することもできる。良好な平坦性が得られればメタル膜で形成することもできる。
また、湿気などによるシンチレータ層38の変質を防ぐ場合は、X線検出器の主要部を、Alやプラスチックなどの外囲器で覆って真空封止し、あるいは、外囲器内に乾燥気体が封入される。
上記した製造方法の場合、まずシンチレータ層38を形成し、その後、隔壁層39を形成している。しかし、隔壁層39を形成した後にシンチレータ層38を形成することもできる。例えば蛍光材料II又はIIIを含む材料で隔壁膜を形成し、その後、シンチレータ層38となる部分の隔壁膜を除去し、この除去した部分に、蛍光材料Iを含むシンチレータ材料を充填する方法である。
ここで、シンチレータ層38および隔壁層39を形成する他の方法について説明する。まず、成形が容易な樹脂材料または金属材料からなる予備膜をフォトダイオードなどの上部に形成する。次に、隔壁層39(またはシンチレータ層38)となる部分の予備膜を除去し、その除去した部分に隔壁層39(またはシンチレータ層38)となる蛍光材料を充填する。次に、先の工程で除去されずに残った予備膜のパターンを選択的に除去し、予備膜が選択的に除去された部分にシンチレータ層38(または隔壁層39)となる蛍光材料を充填する方法である。
蛍光材料は、無機材料で硬度が高く結合エネルギーが高い。そのため、化学反応や機械加工、熱的、光化学的な方法では、シンチレータ膜や隔壁膜を部分的に除去するパターニング加工が困難な場合がある。このような場合、樹脂材料や金属材料からなる予備膜を形成する方法が有効となる。また、加工時の蛍光体へのダメージによる発光効率の低下や着色による輝度低下を抑えるメリットもある。
シンチレータ膜や隔壁を部分的に除去して溝を形成しパターン化する方法としては、ダイシング法の他、紫外領域のレーザーによる光化学分解を用いる方法や赤外領域のレーザーによる加熱分解を用いる方法、バインダー材料を化学的に溶解するエッチング法などを利用することもできる。
また、上記の実施形態では、画素単位ごとに形成された複数の光電変換部上にシンチレータ層および隔壁層を順に形成している。しかし、シンチレータ層および隔壁層を別の基板上に形成し、その後、これらシンチレータ層および隔壁層を光電変換部上に接合する方法を用いることもできる。
ここで、本発明の実施例と比較例との特性の測定結果を表1に示す。
なお、表1中の各特性は次の方法により測定したものである。
<相対感度>
ガラス基板上にTiO2微粉を樹脂にねりこんで塗布した反射層を形成し、その上に各シンチレータ層及び隔壁層を300μmtの厚さで形成して特性評価用のサンプルを得た。碁盤の目状に画素分離した膜の画素間ピッチは150μmで、隔壁幅は約20μm幅で形成した。各サンプルは研磨により表面を平坦化し、光学ジェルを介して分光感度特性が600〜700nmであるa−Si(アモルファスシリコン)フォトダイオードアレイに密着させ、このa−Siフォトダイオードの感度出力を平均化して感度評価の指標とした。
<MTF(解像度特性)>
感度特性測定用と同様にサンプル作成し、50μm以下の幅のスリット状ラインを開けた鉛板チャートを介してX線の透過像を測定し、そのX線透過像の広がりからLine Spread Functionを測定する。このLine Spread Functionをフーリエ変換することにより空間周波数(Spatial Frequency)に対するMTF(Modulation Transfer Function)を計算した。
<蛍光材料の平均粒径>
適当な断面を数箇所割ってSEM観察し、SEM画像の各蛍光材料粒子の面積から実効粒径を求めてこれらを平均する。
実施例および従来例とも、単位画素のピッチは150μm、単位画素サイズは130μm×130μmとし(隔壁の幅が20μm)、シンチレータ層及び隔壁層の蛍光体の体積充填率は0.5(50%)とした。フォトダイオードなどはプラズマCVD法およびフォトリソグラフィを用いて形成した。フォトダイオード上の電極膜はITOをスパッタリング法で形成した。フォトダイオードはa−SiのPIN構造で、380乃至720nm程度の波長範囲で感度を持ち、600nm近傍が感度のピークとなっている。また、シンチレータ層および隔壁層の膜厚は300μとなっている。
表1のサンプル1〜4は本発明の構造で、いずれも隔壁層に蛍光材料が含まれている。サンプル5は蛍光材料が含まれない隔壁層を設けた構造で、サンプル6は隔壁層のない構造である。解像度特性は空間周波数2Lp/mmのMTF(%)で比較した。
表1から分かるように、隔壁層のないサンプルFの構造と比較した場合、従来例のサンプルEは輝度の低下が大きい。発明のサンプルA〜Dは、輝度の低下は15%前後に留まっている。サンプルFは、隔壁層がないため輝度低下はないものの、解像度特性が極端に劣り、精細画像が要求されるX線診断には使えないレベルになっている。
図5のQは、隔壁層に含まれる蛍光材料の平均粒径(横軸、単位μm)と解像度特性の2Lp/mmのMTF(縦軸、単位%)との関係を示している。
MTFの値はある範囲にばらつきがあるため、符号Qは所定の幅で示されている。この図4から、蛍光材料の平均粒径が隔壁幅の1/4である概ね5μm以下になると解像度特性の向上が顕著になることがわかる。
次に、シンチレータ層の膜厚と蛍光材料Iの平均粒径、隔壁内の壁厚と蛍光材料IIの粒径とを、それぞれ請求項2、請求項3の範囲内としたサンプルと範囲外にしたサンプルを作成し、それぞれのサンプルについて輝度とCTF(解像度)を測定した。結果を表2に示す。なお、各サンプルは、150μmピッチのフォトダイオード付きTFT基板上に下記条件の画素分離シンチレータを作成したものである。また同表中の○は、請求項に示した式に該当するもの、×は請求項に示した式に該当しないものである。
また、表中の符号は、それぞれ次のものを示している。
Ts:シンチレータ画素の膜厚
Ds:シンチレータ層における蛍光材料Iの平均粒径
Fs:シンチレータ層における蛍光材料Iの充填密度
Tw:隔壁の壁厚
Dw:隔壁内における蛍光材料、蛍光材料III、非蛍光材料のいずれか1種以上の平均粒径
Fw:隔壁内における蛍光材料II、蛍光材料III、非蛍光材料のいずれか1種以上の充填密度
(サンプル7)
Ds=6μm、Ts=200μm、Fs=70%、画素分離無し構造
(サンプル8)
Ds=40μm、Ts=500μm、Fs=50%
Dw=0.3μm、Tw=20μm、Fw=50%
(サンプル9)
Ds=40μm、Ts=500μm、Fs=50%
Dw=2μm、Tw=20μm、Fw=50%
(サンプル10)
Ds=15μm、Ts=500μm、Fs=50%
Dw=0.3μm、Tw=20μm、Fw=50%
(サンプル11)
Ds=15μm、Ts=500μm、Fs=50%
Dw=2μm、Tw=20μm、Fw=50%
(サンプル12)
Ds=1μm、Ts=20μm、Fs=50%
Dw=2μm、Tw=40μm、Fw=50%
各サンプルの特性を表2に示す。
同表から請求項1〜3の要件を満たすサンプルが最も特性がよく、請求項1、2の要件を満たすサンプル、請求項1、3の要件を満たすサンプル、請求項1の要件だけを満たすサンプルの順に特性がよいことが分かる。サンプル7、サンプル12は比較例である。
産業上の利用可能性
本発明は、画像特性を改善したX線検出器およびその製造方法を実現できる。本発明のX線検出器は、人体の胸部撮影の他、循環器や消化器などの診断にも適用可能である。また工業用のX線検出器も適用可能である。更に、2次元的に配列した平面検出器だけでなく、1次元配列のライン検出器(X線ラインセンサー)にも適用可能である。したがって、広い分野の産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実旅形態を説朋するための模式的な回路構成図。
図2は、本発明の実施形態を説明するための模式的な断面図で、1つの画素単位部分を抜き出した図。
図3は、本発明の実施形態を説明するための特性図。
図4は、本発明の実施形態を説明するための他の特性図。
図5は、本発明の実施形態を説明するための他の特性図。
本発明はX線画像を検出するX線検出器およびその製造方法に関する。
背景技術
近年、新世代の診断用X線検出器として、アクティブマトリックスを用いた平面型のX線検出器が注目を集めている。平面型X線検出器は、X線で撮影したX線画像あるいはリアルタイムのX線透視画像をデジタル信号として出力する構成になっている。
平面型X線検出器は固体検出器であるため、画質性能の向上や安定性の面でも大きい期待が寄せられている。
平面型X線検出器は、比較的大きな線量で静止画像を収集する一般撮影用や胸部撮影用のものがすでに開発され、商品化されている。また、透視線量のもとで毎秒30画面以上のリアルタイムのX線動画の検出も可能なことから、近い将来、循環器や消化器などの診断分野に応用した製品の商品化も予想されている。このような動画用のX線検出器の実用化には、S/N比の改善や微小信号のリアルタイム処理技術の一層の改善が必要である。
平面型X線検出器は、大きく分けると直接方式と間接方式の2つの方式がある。
直接方式はa−Seなどの光導電膜を用いてX線を電荷に直接変換し、変換した電荷を電荷蓄積用キャパシターに蓄積する方式である。この方式では、解像度特性は画素ピッチでほぼ規定される。間接方式はシンチレータ層でX線を可視光に変換し、変換した可視光をa−SiフォトダイオードやCCDなどの光電変換素子で電荷に変換し、電荷蓄積用キャパシターに蓄積する方式である。
直接方式の平面X線検出器では、X線の吸収率を上げて信号強度を確保するために、例えばa−Seの光導電膜を1mm程度の厚膜で形成している。また、X線フォトン1個当りの光導電電荷生成率を上げるため、生成した光導電電荷が膜中の欠陥準位にトラップされることなく集電電極に到達させるため、そしてバイアス電界と直角方向への電荷の拡散を極力抑えるために、例えばa−Seの光導電膜の両端に10V/μmの強バイアス電界が印加されている。したがって、a−Seの光導電膜の膜厚が1.0mmの場合、10kV程度の高電圧が印加される。
直接方式のX線検出器は解像度特性が優れているという利点があるが、その反面、動作電圧の低いTFTを高電圧から保護しなければならず、信頼性の点で問題がある。また、低暗電流特性と高感度特性、熱的安定性などを備えた光導電材料を容易に入手できないという問題もある。
一方、間接方式のX線検出器は信号電荷の発生にフォトダイオードやCCDなどを用いるため、直接方式におけるような高電圧の印加を必要とせず、高電圧による絶縁破壊の問題はない。また、シンチレータ材料やフォトダイオードなどは基本的な技術が確立しているので製品化が容易であるという利点がある。
しかし、X線診断装置としての解像度特性はシンチレータ層で変換された蛍光が光電変換素子に到達するまでの間に拡散や散乱を起こすため直接方式に較べて一般に劣るという問題がある。特に感度特性を改善するためにシンチレータ層を厚膜にすると、フォトダイオード等の光電変換素子に到達するまでの蛍光の広がりが大きくなって解像度の劣化が顕著となる。この蛍光の広がりを抑えて解像度を確保するために、シンチレータ層をフォトダイオードとTFTのマトリックスに合わせて画素単位に形成し、シンチレータ画素間を隔壁で光学的に遮断する方法が知られている。しかし従来のX線検出器における隔壁はX線感度に寄与しない金属材料などで形成されており、このためシンチレータ層から隔壁に置き換えられた分だけシンチレータ層の総発光量が低減してX線検出器の感度が低下するという問題があった。
発明の開示
そこで本発明の目的は、画素間に、解像度特性の劣化を抑えるための隔壁が形成された間接方式のX線検出器において、隔壁の存在による輝度低下をできるだけ小さくしたX線検出器を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、かかるX線検出器の製造方法において、輝度の低下をできるだけ小さく抑える隔壁とシンチレータ層の構造を均質かつ信頼性良く形成する方法を提供することにある。
本発明のX線検出器は、画素間に隔壁の形成された間接方式のX線検出器の高い解像度特性を維持しつつ、感度特性を向上させるために、以下の構造を有する。
すなわち、本発明のX線検出器の一つの形態は、画素単位の光電変換部と、前記光電変換部の各画素上に形成された蛍光材料Iを含むシンチレータ画素と、前記シンチレータ画素間に設けた蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含む隔壁とを備えたX線検出器において、前記蛍光材料Iの平均粒径をDs、前記蛍光材料及び/又は非蛍光材料の平均粒径をDwとしたとき、Ds>Dwであることを特徴としている。
本発明のX線検出器における画素間の透過光の抑制による解像度の改善は、隔壁が、画素を構成する蛍光材料Iと光学的特性が相違する蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含むため、画素と隔壁との界面で屈折や反射が生じることにより得られる。ここで、光学的特性が異なるとは、具体的には平均粒径が異なるために光学的特性が異なることを意味するが、平均粒径の相違に加えて両蛍光材料の屈折率や分光吸収特性が異なることにより光学的特性が異なることをも意味する。
本発明の他の態様は、画素単位の光電変換部と、前記光電変換部の各画素上に形成された蛍光材料Iを含むシンチレータ画素と、前記シンチレータ画素間に設けた蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含む隔壁とを備えたX線検出器において、前記シンチレータ画素の膜厚をTs、前記シンチレータ画素内における蛍光材料Iの平均粒径をDs、前記シンチレータ画素内における蛍光材料Iの体積充填密度をFsとしたとき、Ds≧Ts・Fs/10であることを特徴としている。ここで、例えば体積充填率50%の場合の(Ds)は0.5である。
本発明のさらに他の態様は、画素単位の光電変換部と、前記光電変換部の各画素上に形成された蛍光材料Iを含むシンチレータ画素と、前記シンチレータ画素間に設けた蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含む隔壁とを備えたX線検出器において、前記隔壁の壁厚をTw、前記隔壁内における蛍光材料及び/又は非蛍光材料の平均粒径をDw、前記隔壁内における蛍光材料及び/又は非蛍光材料の体積充填密度をFwとしたとき、Dw≦Tw・Fw/10であることを特徴としている。
このように隔壁内の蛍光材料の粒径とシンチレータ画素の膜厚や隔壁の壁幅との関係を調整することにより、以下のような作用効果により輝度の低下を抑制し、かつシンチレータ膜の光学的な画素分離効果を一層発揮させることができる。
シンチレータ層内の蛍光体からの蛍光発光は、蛍光体粒と周辺のバインダー又は空気との界面での屈折により散乱されて、その一部がフォトダイオード等の光電変換素子に到達する。蛍光を効率的に光電変換素子に導く為には、同一体積に占める蛍光体粒と周囲のバインダー等との界面の割合が極力小さい事が望ましい。一方、隔壁に対しては、シンチレータ層からの蛍光に対してトータル反射率を極力高める必要がある。この場合、隔壁に含まれる材料としての粒(蛍光材料及び/又は非蛍光材料)の平均粒径が小さい程望ましい。即ち、隔壁内の粒と周辺のバインダー等との界面の割合が大きい程、複雑な多数回の屈折により隔壁が拡散反射面の効果をより発揮し、実効的な反射率が上昇する。
夫々の層を構成する粒子の平均粒径の関係で示せば、シンチレータ層を形成する蛍光体の平均粒径Dsが隔壁を構成する粒の平均粒径より大きく(Ds>Dw)その比率が大きい程シンチレータ画素の輝度を確保しつつ隣接画素間の光学的な分離効果を高める事ができると考えられる。
蛍光体の自己吸収係数を通常一般的な蛍光体の自己吸収係数レベルで仮定し、粒体を含む層の膜厚をT、粒体の充填密度をF、粒の直径をDとした場合の、層の実効反射率とT・F/Dとの関係を光学モデルでシミュレーションした結果から、T・F/Dの値が10程度以上で実効反射率は90%以上の高反射率が得られる事が分かった。逆にT・F/Dの値が10程度以下の場合には10%程度以上の蛍光が層を透過して対面側に達する可能性が高い。この関係から、蛍光体から成るシンチレータ層においては、Ts・Fs/Ds≦10(即ちDs≧Ts・Fs/10)となる様に蛍光体の粒径を大きくする事が、膜の最上部から発した蛍光を光電変換部まで導く為には特に有効である。隔壁に対しては、Tw・Fw/Dw≧10(即ちDw≦Tw・Fw/10)の場合にシンチレータから発した光が隔壁を通して隣接のシンチレータ画素に到達する可能性を抑えて解像度劣化を防ぐ効果が大きい。
繰り返しになるが、シンチレータ画素に含まれる蛍光材料の粒径に関して言えば、蛍光体から発した蛍光や隔壁層から反射して戻ってきた蛍光、或いは場合により隔壁層の粉体が蛍光体の場合にはその蛍光がフォトダイオード等の光電変換部に到達し易くするためにシンチレータ層の蛍光材料Iの粒径をできるだけ大きくすることが望ましい。これは蛍光体Iとバインダー材料又は空気との界面による蛍光の散乱回数をできるだけ少なくして蛍光がフォトダイオード等の光電変換部に到達するまでの実効的な光路長を極力抑える効果を狙ったものである。さらに、蛍光材料Iを焼結体のようなバインダー等を含まないものとして、蛍光材料とバインダー等との界面での屈折による散乱の頻度を極力抑える事ができる。また、夫々の蛍光材料の自己吸収係数及びバインダー材料等の蛍光に対する吸収係数をできるだけ小さくすることにより、蛍光体材料Iから発した蛍光や隔壁部の蛍光材料からシンチレータ層に入射した蛍光をフォトダイオード等の光電変換部に一層到達し易くすることができる。
一方、隔壁部に含まれる蛍光材料及び/又は非蛍光材料の粒径に関して言えば、隔壁厚さに対して十分小さい粒径である事が良好な解像度特性を確保する為に望ましい。これはシンチレータ画素の蛍光体Iから発した蛍光が多数回散乱されて隣接画素まで達する事を抑える、即ち隔壁部が拡散反射面に近づく効果を狙ったものである。
シンチレータ画素からの蛍光が隣接画素に到達するのを防ぐ効果は隔壁層の実効的な蛍光吸収若しくは反射の程度と関係している。蛍光の吸収率を増大させると実質的な輝度は低下するが、反射率の向上は輝度の低下をもたらさない。隔壁層の実効反射率は、蛍光材料粒子の粒径(針状粉体の場合には短径の最大径)を小さくして蛍光材料とバインダー等の周辺材料との界面での屈折頻度を増やすことにより向上させることができる。粒径を小さくすると完全拡散反射面に近付き隔壁でのトータルの反射率は増大する。
但し蛍光材料及び/又は非蛍光材料の粒径が極端に小さくなって蛍光波長程度に近付くと散乱効果が小さくなるので、粒径の下限はシンチレータ層の蛍光波長程度までとすることが望ましい。蛍光材料IIからシンチレータ層に入射した蛍光は、蛍光材料Iに吸収されて発光輝度増大に寄与するが、さらに主にシンチレータ層内を通過してフォトダイオードに達して、X線検出器の実効感度も向上させる。
本発明のさらに他の態様は、請求項1乃至4のいずれか1項記載のX線検出器において、前記隔壁は、前記蛍光材料Iの最短蛍光波長と等しいかそれよりも長い最長蛍光波長を有する蛍光材料IIを含有することを特徴としている。
従来知られている隔壁構造を有するX線検出器では、隔壁が、例えば金属材料やガラス系又はセラミックス材料、或いは樹脂材料などで形成されており、それ自体がX線照射により発光することはないのは勿論、シンチレータ層の発光を増大させる効果は得られないものであるが、本発明のX線検出器は、シンチレータ層から発せられる蛍光が拡散あるいは散乱して隣接する画素の光電変換素子に到達するのを防ぐための隔壁構造が形成されており、この隔壁構造が画素間の透過光を抑えて解像度を向上させるとともにシンチレータ層の発光輝度の向上に寄与するという特徴を備えている。
すなわち、蛍光材料IIから発する蛍光が蛍光材料Iに達すると蛍光の発光には寄与しないが、蛍光励起に関係する少なくとも最短波長の蛍光発生に関係する電子遷移のグランド準位に存在する電子を上位のエネルギー準位に励起する。その結果、蛍光材料Iの蛍光発光遷移に必要なグランド準位の電子の空き率が増加する。あるいは、バンド間の不純物準位や欠陥準位が関係する電子遷移を励起する。この結果、蛍光材料Iからの蛍光がシンチレータ層内を通過する際に、グランド準位の電子を励起する確率や、バンド間の準位が関係する電子励起の確率を減じて、蛍光材料Iからの蛍光のシンチレータ層内での吸収が抑えられる。これによって、金属材料等により形成された隔壁をもつ従来の間接方式のX線検出器と比べて高い輝度のX線検出器を得ることができる。
本発明のさらに他の態様は、請求項1乃至4のいずれか1項記載のX線検出器において、前記隔壁は、前記シンチレータ画素内に含まれる蛍光材料Iと光学的特性が相違し、かつ前記蛍光材料Iの最長蛍光励起波長と等しいかそれよりも短い最短蛍光波長を有する蛍光材料IIIを含有することを特徴としている。
すなわち、この態様によれば、隔壁に含まれる蛍光材料IIIの最短蛍光波長がシンチレータ層に含まれる蛍光材料Iの最長蛍光励起波長よりも短いため、蛍光材料IIIから発する蛍光が蛍光材料Iに達して少なくとも最長蛍光励起波長に係るグランド準位から励起準位への電子遷移を増大させ、この結果として蛍光材料Iの発光強度自体が増大する。
蛍光材料Iとしては、Gd2O2S又はCsIを母材とする蛍光材料が適している。
また、蛍光材料II又はIIIとしては、Gd2O2Sを母材とする蛍光材料が適しており、特に蛍光材料IIIは、その最長蛍光波長が紫外領域にあることがより望ましい。
本発明のX線検出器は、例えば次に挙げる方法により製造することができる。
第1の方法は、シンチレータ層を先に形成する方法である。蛍光材料II及び/又はIII及び/又は非蛍光材料を含む隔壁材料の層を一旦形成した後にシンチレータ画素が形成されるべき部分を、化学反応又は光化学反応を用いて、或いは機械的に又は熱的に除去し、しかる後に除去した部分に蛍光材料Iを充填する方法である。
すなわち、本発明の第1のX線検出器の製造方法は、画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、前記画素単位の光電変換部上に蛍光材料Iを含む層を形成する工程と、前記層から隔壁となる部分を除去して前記シンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素を形成する工程で除去した部分に前記蛍光材料II及び/又は蛍光材料III及び/又は非蛍光材料を含む材料を充填して前記隔壁を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
第2の方法は、第1の方法とは逆に、隔壁層を先に形成する方法である。
すなわち、本発明の第2のX線検出器の製造方法は、画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、前記画素単位の光電変換部上に蛍光材料II及び/又は蛍光材料III及び/又は非蛍光材料を含む層を形成する工程と、前記層から画素となる部分(前記隔壁となる部分以外の部分)を除去して前記隔壁を形成する工程と、前記隔壁を形成する工程で除去した部分に前記蛍光材料Iを含む材料を充填して前記シンチレータ画素を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
第3の方法は、樹脂材料等の有機材料又は金属材料等の無機材料により形成された仮隔壁を用いる方法で、蛍光材料を含む層の画素形状又は隔壁形状への加工が困難な場合に特に有効な方法である。
すなわち、本発明の第3のX線検出器の製造方法は、画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、前記画素単位の光電変換部上に樹脂材料等の有機材料又は金属材料等の無機材料により層を形成する工程と、前記層から前記隔壁となる部分を除去して樹脂材料又は金属材料による仮画素を形成する工程と、前記仮画素を形成する工程で除去した部分に前記蛍光材料II及び/又は蛍光材料III及び/又は非蛍光材料を含む材料を充填して前記隔壁を形成する工程と、前記仮画素を除去する工程と、前記仮画素を除去した部分に前記蛍光材料Iを含む材料を充填して前記シンチレータ画素を形成する工程とを備えたことを特徴としている。
第4の方法は、樹脂材料等の有機材料又は金属材料等の無機材料などにより形成された仮画素を用いる方法で、この方法も蛍光材料を含む層の画素形状又は隔壁形状への加工が困難な場合に特に有効である。
すなわち、本発明の第4のX線検出器の製造方法は、画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、前記画素単位の光電変換部上に樹脂材料等の有機材料又は金属材料等の無機材料により層を形成する工程と、前記層から隔壁となる部分以外の部分を除去して樹脂材料又は金属材料による仮隔壁を形成する工程と、前記仮隔壁を形成する工程で除去した部分に前記蛍光材料Iを含む材料を充填して前記シンチレータ画素を形成する工程と、前記仮隔壁を除去する工程と、前記仮隔壁を除去した部分に蛍光材料II及び/又は蛍光材料III及び/又は非蛍光材料を含む材料を充填して前記隔壁を形成する工程とを備えたことを特徴としている。なお、一般に画素は一辺が30〜400μmの正方形又は正方形に近い長方形であり、隔壁の幅は10〜50μm程度であり、シンチレータ画素の厚さは100〜800μmである。用途や検出するX線のエネルギーにより必要な膜厚は異なるが、医療用途の一般撮影用や透視用としては、好ましくは200〜500μmである。
隔壁層やシンチレータ層等の蛍光材料を含む層あるいは樹脂材料や金属材料からなる層を部分除去する方法としては、紫外線領域の発光波長を持つレーザー光による光化学的反応を用いた除去、化学的な処理による除去、ダイシングその他の機械的な手段を用いての切削除去、更には赤外線レーザーなどによる高密度の加熱による熱的な除去等の公知の方法を用いることができる。
また、蛍光材料は硬度と結合エネルギーが高いために化学反応や機械加工、或いは熱的又は光化学的な除去がいずれの方法でも難しいが、樹脂材料や金属材料でパターン形成して仮隔壁や仮画素を形成する方法では、このような蛍光材料を除去する工程を省略できるという利点がある。また加工時の蛍光体へのダメージによる発光効率の低下や着色による輝度低下を避けることができる。近年は、数百μmの厚膜で、アスペクト比10以上の構造を数μmの精度で形成できる特殊なフォトレジスト材料も市販されている。
従来のX線検出器では、例えば金属材料やガラス系又はセラミックス材料、或いは樹脂材料などで隔壁が形成されており、隔壁自体がX線照射により発光することはないのは勿論、シンチレータ層の発光を増大させる効果も有していない。これに対して本発明のX線検出器では、隔壁層が、シンチレータ層から発せられる蛍光が拡散して隣接する画素の光電変換素子へ到達するのを抑制するとともに、同じ隔壁層がシンチレータ層の発光輝度の増大に寄与する。なお、本発明のX線検出器における隔壁の光の遮蔽効果は、前述したように、隔壁内の蛍光材料II又はIII又は非蛍光材料を適当な粒径の粉体状とすることにより蛍光材料自体とバインダー材の界面屈折や界面での全反射により得られる。例えばAgやAg系合金などの金属粉体やTiO2等の微細な透明セラミックス粉体のような反射材や蛍光を吸収する色素などの樹脂材料を隔壁を構成する非蛍光材料を含有させることによっても実現可能である。
発明を実施するための最良の形態
本発明の実施形態について図1の回路構成図を参照して説明する。
符号11はX線光電変換部で、X線光電変換部11はマトリックス状に配列した複数の画素単位12から構成されている。たとえばガラスなどの絶縁基板上に同じ構造の複数の画素単位12が行方向(たとえば図の横方向)および列方向(たとえば図の縦方向)の2次元に配置されている。図1では、たとえば9個の画素単位12a〜12iが示されている。
1つの画素単位たとえば画素単位12iは、光を電荷に変換するフォトダイオード13およびスイッチング部を構成する薄膜トランジスタ(以下TFTという)14、電荷を蓄積する電荷蓄積部たとえば蓄積キャパシタ15などから構成されている。TFT14はゲート電極Gおよびソース電極S、ドレイン電極Dを有し、たとえばドレイン電極Dはフォトダイオード13および蓄積キャパシタ15と電気的に接続されている。
X線光電変換部11の外部に、TFT14の動作状態たとえばオン・オフを制御する制御回路16が設けられている。制御回路16には複数の制御ライン17が設けられている。図では第1ないし第4の4個の制御ライン171〜174が設けられている。それぞれの制御ライン17は、同じ行の画素単位12を構成するTFT14のゲート電極Gに接続されている。たとえば第1の制御ライン171は画素単位12a〜12cのゲート電極Gに接続されている。
列方向には、複数のデータライン18が設けられている。図では第1ないし第4の4個のデータライン181〜184が設けられている。それぞれのデータライン18は、同じ列の画素単位12を構成するTFT14のソース電極Sに接続されている。たとえば第1のデータライン181は画素単位12a、12d、12gのソース電極Sに接続されている。各データライン17は対応する電荷増幅器19に接続されている。
電荷増幅器19はたとえば演算増幅器で構成され、その一方の入力端子a1にデータライン18が接続され、他方の入力端子a2は接地されている。一方の入力端子a1と出力端子b間にコンデンサCが接続され積分機能を有する構成になっている。コンデンサCと並列にスイッチSWが接続され、たとえばスイッチSWを閉じてコンデンサCに残った電荷を放電する構成になっている。
それぞれの電荷増幅器19は、並列に入力する複数の電気信号を直列信号に変換して出力する並列/直列変換器20に接続されている。並列/直列変換器20は、アナログ信号をデジタル信号に変換するアナログデジタル変換器21に接続されている。
制御回路16や電荷増幅器19、並列/直列変換器20、アナログデジタル変換器21はたとえば集積回路で形成され、制御回路16とTFT14間などそれぞれの回路間はたとえばワイヤボンディングで接続される。
次に、X線光導変換部11の構成について図2を参照して説明する。図2は1つの画素単位の部分を抜き出した断面図で、図1に対応する部分には同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。
ガラスなどの絶縁基板31上にTFT14および蓄積キャパシタ15が形成されている。TFT14は、絶縁基板31上に形成されたゲート電極Gおよびゲート電極Gを覆う絶縁膜32、絶縁膜32上に形成された半導体膜33、半導体膜33上に設けられたソース電極S、ドレイン電極Dなどから構成されている。
TFT14のゲート電極Gは制御ライン17(図1)に接続され、ソース電極Sはデータライン18に接続されている。
蓄積キャパシタ15は絶縁基板31上に形成された下部電極34、ゲート電極G上から下部電極34上まで延長する絶縁膜32、絶縁膜32上に設けられた上部電極35などから構成されている。上部電極35はドレイン電極Dと電気的に接続されている。
TFT14および蓄積キャパシタ15の上方に絶縁層36が設けられ、絶縁層36上にフォトダイオード13が形成されている。フォトダイオード13は、a−SiのpnダイオードやPINダイオードなどで形成される。図の場合はPINダイオードで形成されている。フォトダイオード13の図示下方および上方にそれぞれ第1電極131および第2電極132が設けられ、第1電極131と第2電極132間にバイアス電圧が印加される。第2電極132はスパッタリング法などで成膜したITO透明導電膜で形成されている。絶縁層36の一部にスルーホール37が設けられ、フォトダイオード13の第1電極131はスルーホール37を介してTFT14のドレイン電極Dと電気的に接続されている。第2電極132上にX線を光に変換するシンチレータ層38が形成されている。
シンチレータ層38を囲む周縁領域たとえば隣接する画素単位のシンチレータ層381との境界に隔壁層39が形成され、隣接する画素単位のシンチレータ層どうしは隔壁層39で遮断されている。シンチレータ層38および隔壁層39にはそれぞれ蛍光材料I(P1)および蛍光材料II(P2)が含まれ、蛍光材料I(P1)および蛍光材料II(P2)は、平均粒径又は平均粒径と他の光学的特性たとえば発光スペクトルや屈折率、反射率などの1つあるいは複数の特性が相違している。また、シンチレータ層38および隔壁層39上に、光を反射する蛍光反射層40がX線光導変換部11の全面にわたってたとえば共通に形成されている。
上記した構成において、蛍光反射層40を通してシンチレータ層38および隔壁層39にX線41が入射し、シンチレータ層38および隔壁39で光に変換される。シンチレータ層38で発生した光L1は、隔壁層39から入力する光L2の作用で強められ、あるいは減衰が抑えられ、あるいは隔壁層39との境界などで反射し、シンチレータ層38からフォトダイオード13に入力し、電荷に変換される。この電荷は蓄積キャパシタ15に蓄積される。
蓄積キャパシタ15に蓄積した電荷の読み出しは制御回路16によって制御され、たとえば画素単位12の行(図1の横方向)ごとに順に行われる。まず、制御回路16から第1のゲートライン171を通して第1行目に位置する画素単位12a〜12cのゲート電極Gに、たとえば10Vのオン信号を加え、第1行目の画素単位のTFT14をオン状態にする。
このとき、第1行目の画素単位12a〜12cの蓄積キャパシタ15に蓄積された電荷が、ドレイン電極Dからソース電極Sに電気信号として出力される。ソース電極Sに出力した電気信号はそれぞれ複数の電荷増幅器19で増幅される。増幅された電気信号は並列/直列変換器20に並列に加えられ、直列信号に変換される。その後、アナログデジタル変換機21でデジタル信号に変換され、次段の信号処理回路(図示せず)に送られる。
第1行目に位置する画素単位の蓄積キャパシタ15の電荷の読み出しが終了すると、制御回路16から第1ゲートライン171を通して第1行目の画素単位のゲート電極Gにたとえば−5Vのオフ信号が加えられ、第1行目の画素単位のTFT14をオフ状態にする。
上記した動作が第2行目以下の画素単位12についても順に行われる。そして、すべての画素単位12の蓄積キャパシタ15に蓄積した電荷の読み出しが行われ、順次、デジタル信号に変換されて出力され、1つのX線画面に対応する電気信号がアナログデジタル変換器20から出力される。
図1の場合、フォトダイオード13はTFT14や蓄積キャパシタ15に重ならない領域に形成されている。しかし、広い受光面積を確保するために、たとえばTFT14および蓄積キャパシタ15上に絶縁層を設け、1つの画素内のより広い領域にフォトダイオード13を形成することもできる。
そして、隔壁39を形成する粒子の平均粒径をDw、隔壁39内の粒子の充填密度をFwとした場合、Tw・Fw/10≧Dwの関係に形成している。また、シンチレータ層38内の蛍光体の平均粒径をDs、シンチレータ層38の膜厚をTs、シンチレータ層38内の蛍光体粒子の充填密度をFsとした場合、Ts・Fs/10≦Dsの関係に形成している。さらに、シンチレータ層38を形成する蛍光体粉末の平均粒径をDs、隔壁39を形成する材料の平均粒径をDとした場合、Ds>Dwの関係にしている。
上記した構成において、外部からX線40がシンチレータ層38に入射し蛍光に変換される。蛍光の一部A1はシンチレータ層38を移動しフォトダイオード13に入力する。蛍光の一部A2は隔壁39に侵入し、その一部A21はシンチレータ層38に戻リフォトダイオード13に入力する。また隔壁39に侵入した蛍光の一部A22は隔壁38内を移動する。また、蛍光の一部A3は隔壁39で反射し、シンチレータ層38内を移動する。
ここで、粒体で形成した層の膜厚をT、粒体の充填密度をF、粒の直径をDとした場合、(T・F/D)の値と蛍光に対する層の実効透過率との関係について光学モデルでシミュレーションした結果を図3を参照して説明する。図3はTiO2の層を20μmの膜厚に形成した場合で、図の(a)は粒径(μm)および(T−F/D)、反射率(%)、透過率(%)の間係を示した図、図の(b)は(T・F/D)と透過率(%)の関係をグラフで表示した図である。図3(b)の横軸は(T・F/D)の値、縦軸は透過率(%)で、シミュレーション結果を曲線Pで示す。
図3から分かるように、(T・F/D)の値がほぼ10以上になると実効透過率は10%以下となり、ほとんどの蛍光を反射する。逆に(T・F/D)の値がほぼ10以下になると実効透過率が高くなり、10%程度以上の蛍光が透過する。上記の実施形態では、隔壁39部分についてTw・Fw/10≧Dw、すなわちTw・Fw/Dw≧10の関係になっている。したがって、シンチレータ層38で発光した蛍光は隔壁39によって90%以上の高反射率で反射される。この場合、隔壁39内に侵入する蛍光の量が減少し、陽壁39内での光ガイド効果が発生しない、その結果、蛍光の損失が少なくなり、シシチレータ画素ごとの輝度が向上する。また、シンチレータ層38から隔壁39に侵入した蛍光が透過しないため、隔壁30を通り抜けて隣接する画素のシンチレータ層やフォトダイオードに到達する蛍光が減少し、解像度の劣化が防止される。
また、上記の実施形態は、シンチレータ層38の部分についてTs・Fs/10≦Ds、すなわちTs・Fs/Ds≦10の関係とし、蛍光体の粒径を大きくしている。この場合、シンチレータ層38内の実効透過率が高くなり、たとえばシンチレータ層38の最上部で発光した蛍光が光電変換部に透過する割合が10%以上となる。
また、シンチレータ層38内で発生した蛍光は、蛍光体粒とその周囲に位置するバインダーとの界面における屈析で複雑に散乱して、光電変換素子たとえはフォトダイオード13に到達する。したがって、蛍光を発光素子に効率的に導くためには、同一体積に占める蛍光体粒とバインダーなどとの界面の割合が小さい方がよい。
一方、隔壁39にこついては、シンチレータ層38から侵入する蛍光に対して全体の反射率を高める必要があり、隔壁39を構成する粒は平均粒径が小さい方がよい。平均粒径が小さいと、粒とバインダーなどとの界面の割合が大きくなり、複雑な多数回の屈析が生じる。その結果、拡散反射面の効果が大きくなり、隔壁39による実効的な反射率が上昇する。
ここで、(Ds/Dw)の値と画素単位の輝度特性との間係について図4を参照して説明する。図の(a)は(Ds/Dw)と輝度(arb・units)の関係を示した図で、図の(b)はこの関係をグラフQに表示した図である。図4(b)の横軸は(Ds/Dw)の値、縦軸は輝度である。
この場合、シンチレータ層は、エポキシ樹脂内に蛍光体粉末(Gd2O2S:Tb)を分散させた塗液を用いて、光電変換部上に300μmの膜厚に塗布し、その後、80℃に加熱して膜を乾燥、硬化させて形成した。その後、間隔が150μm、深さが280μm、幅が23μmの格子状溝を、ダイシング法によってシンチレータ層の部分に形成し、その溝にシンチレータ層の蛍光体粉末と同一で粒径が2μmの蛍光体粉末を充填して隔壁を形成した。
図4に示すように、Ds/Dw=1の場合、輝度は14.3となっている。Ds>Dwの場合、たとえばDS/Dw=15では、輝度はその2倍の30に向上している。
上記の実施形態の場合、シンチレータ層38を形成する蛍光体の平均粒径Dsと、隔壁39を構成する粒の平均粒径Dwとの関係をDs>Dwにしている。したがって、シンチレータ層38の蛍光が効率的に光電変換素子に到達し、シンチレータ層38の画素ごとの輝度劣化が防止される。また、隔壁39による反射効果が大きくなり、隣接する画素間の光学的な分離効果が向上する。この分離効果は、DsとDwの差が大きいほど顕著になる。
なお、上記の実施形熊では、シンチレータ層を粒子状の蛍光体で形成している。しかし、蛍光体の焼結体で形成しても同様な効果が得られる。たとえば焼結体のクラスターの平均粒径Dcは80〜100μmで、隣接する光電変換素子たとえばフォトダイオード間の距離は、一般に、50μm以下となっている。したがって、隔壁の壁幅は最大でも50μm程度で、Dc>Dwの条件が満たされる。この場合も、DcとDwの差が大きいほど画素ごとの輝度持性が向上する。
次に、シンチレータ層38に含まれる蛍光材料I(P1)および隔壁層39に含まれる蛍光材料II(P2)の蛍光波長の選択による輝度改善効果について説明する。
蛍光材料Iには、蛍光波長が所定の範囲に分布する光を発生するたとえばGd2O2S:Tbが用いられ、蛍光材料IIには、蛍光材料Iの蛍光波長のうちその一番短い波長と等しいかそれよりも長い波長成分を有する蛍光波長の光を発生する蛍光材料が用いられる。たとえばGd2O2S:Eu(4重量%)などで、この場合、たとえば平均粒径が2μm程度の小さな粒径のものが用いられる。
この組み合わせの場合、シンチレータ層38で発生した光L1は、隔壁層39の蛍光材料IIが発生する光L2の作用により、シンチレータ層38内での減衰が小さく抑えられてフォトダイオード13に入力し輝度が上昇する。
この構成の場合、隔壁に含まれる蛍光材料IIの最長蛍光波長がシンチレータ層に含まれる蛍光材料Iが発生する蛍光波長のうちその最も短い波長より大きくなっている。したがって、蛍光材料IIから発する蛍光L2がシンチレータ層38に進入すると、蛍光材料Iの蛍光励起には寄与しないが、蛍光励起に係る電子遷移のグランド準位に存在する電子を上位の不純物準位や蛍光発生に関係しない上位のエネルギー準位に励起する。その結果、蛍光材料Iの蛍光発光遷移に必要なグランド準位の電子の空き率が増加する。これによって、蛍光材料IのX線蛍光発光効率が増大する。あるいは、蛍光L2が蛍光材料Iのバンド間の不純物準位や欠陥準位が関係する電子遷移を励起するときには、蛍光材料Iからの蛍光L1がシンチレータ層内を通過する際に、グランド準位の電子を励起して吸収される確率や、バンド間の準位が関係する電子励起により吸収される確率を減じて、蛍光材料Iからの蛍光L1のシンチレータ層38内での自己吸収が抑えられる。これらの結果として輝度の向上が期待できる。
また蛍光材料IIから発した蛍光L2で前記の蛍光材料Iへの輝度向上効果を生じなかったものも、シンチレータ層内を何回か反射して、その一部が検出器に達しシンチレータ層の輝度向上に寄与する。
上記の場合、蛍光材料Iには、Gd2O2S:Tbの他にGd2O2S:Eu等の添加材の異なるもの、Gd2O2SやLa2O2S、Lu2O2S等の希土類セラミックス系材料を母材としたX線用蛍光体、CsI:Tl、CsI:Na等の沃化物系のX線用蛍光体あるいはCaWO4、LaOBr:Tm、LaOBr:Tb等のX線用蛍光体などが用いられる。
また、蛍光材料IIにはGd2O2S:Euの他、Gd2O2S:PrやGd2O2S:Tb等の添加材の異なるもの、Gd2O2SSやLa2O2S、Lu2O2S等の希土類セラミックス系材料を母材としたX線用蛍光体あるいはZnCdS:Ag等の硫化物系蛍光体などが用いられる。
蛍光材料Iおよび蛍光材料IIを選択する場合に、実用上望ましくは、例えば両者の蛍光発光スペクトルなどを考慮し、蛍光材料IIには蛍光材料Iの主蛍光波長と同程度かそれよりも長い主蛍光波長を有する蛍光材料が用いられる。例えば蛍光材料Iに主蛍光波長が540nm前後のGd2O2S:Tbを用いる場合には蛍光材料IIには主蛍光波長が640nm前後のGd2O2S:Euが用いられる。
しかし、蛍光材料IIの主発光波長が必ずしも蛍光材料Iの主発光波長より長い必要は無く、蛍光材料IIの発光スペクトルの少なくとも一部が蛍光材料Iの最短発光波長よりも長ければ前述したメカニズムから輝度向上効果が期待できる。前述の例と逆の組み合わせになるが、例えば蛍光材料IにGd2O2S:Euを用い、蛍光材料IIにGd2O2S:Tbを用いた場合にも、蛍光材料IIのGd2O2S:Tbが発光する380nm前後から680nm前後までの蛍光L2のうち500nm程度以上の蛍光スペクトルが、最短発光波長500nm程度の蛍光材料IのGd2O2S:Euの蛍光発光効率を増大させる。
隔壁に含まれる蛍光材料IIが画素部に含まれる蛍光材料Iと同じ蛍光体種の場合、例えばどちらもGd2O2S:Tb、或いはGd2O2S:Eu、La2O2S、Lu2O2S等の同じ蛍光体種系の場合も同様な効果が期待できる。
また、蛍光材料で隔壁を構成した場合には、次の構成でもシンチレータ画素の輝度が向上する。すなわち、隔壁層に含有される蛍光材料IIIの発光スペクトルがシンチレータ層38に含有される蛍光材料Iの蛍光励起波長を含む場合、蛍光材料IIIから発する蛍光L2が蛍光材料Iに達して少なくとも最長蛍光励起波長に対応するグランド準位から励起準位への電子遷移を増大させ、この結果として蛍光材料Iの発光強度自体が増大する。この構成においてシンチレータ層38に含有される蛍光材料Iの最長蛍光波長と等しいか又はこれよりも短波長側の蛍光発光スペクトルを有する蛍光材料IIIを隔壁に含有した場合が該当する。特に蛍光材料IIIの主発光波長が蛍光材料Iの主発光波長よりも短い場合に輝度改善効果は一層大きいものとなる。蛍光材料Iとしては例えば、Gd2O2S:EuやGd2O2S:Pr等の他にGd2O2S系で添加物の異なるもの、更にLa2O2S、Lu2O2S等の希土類セラミックス系材料を母材とし、Eu、Tb等の添加物を含有したX線用蛍光体などが好適である。
蛍光材料IIIには、Gd2O2S:Tbの他にGd2O2S:Eu等の添加材の異なるもの、更にGd2O2SやLa2O2S、Lu2O2S等の希土類セラミックス系材料を母材としたX線用蛍光体、或いはZnCdS:Ag、ZnS:Ag、ZnS:Cu等の硫化物系蛍光体、或いはCsI:Tl、CsI:Na等の沃化物系のX線用蛍光体、CaWO4、LaOBr:Tm、LaOBr:Tb等のX線用蛍光体などが用いられる。
蛍光材料Iと蛍光材料IIIが同一蛍光体種の場合には、蛍光材料Iの発光スペクトルの各スペクトル成分に対して当該各スペクトル成分より短波長側の蛍光材料IIIの発光スペクトル成分が蛍光材料Iの蛍光励起に寄与して蛍光材料IIIの発光輝度向上に効果がある。
また蛍光材料IIIから発した蛍光L2で前記の蛍光材料Iへの輝度向上効果を生じなかったものも、シンチレータ層内を乱反射してその一部が検出器に達しシンチレータ層の輝度向上に寄与することは先に説明した第1のメカニズムの場合と同様である。
なお、蛍光材料Iを励起する蛍光波長をもつ蛍光材料IIIとしては、ZnS:Agの他、CaWO4やLaOBr:Tb、BaSO4:EuなどのX線用蛍光体が用いられる。
この場合も、蛍光材料IIIの選定にあたっては、蛍光材料Iの蛍光励起スペクトルおよび蛍光材料IIIの蛍光発光スペクトルなどを考慮し、例えば蛍光材料Iの蛍光励起波長と同程度、あるいはそれよりも短い波長成分の光を発生するX線蛍光体が用いられる。
なお、シンチレータ層に含まれる蛍光材料Iには、X線吸収率およびX線から蛍光への変換効率が高く、蛍光の自己吸収が小さい透明度の高い蛍光材料が望ましい。例えばGd2O2Sを母材とする蛍光体あるいはCsIを母材とする蛍光体が有効である。Gd2O2Sを母材とする蛍光体は、粒径の制御が比較的容易な粉体で、また湿気に対しても、化学的にも安定で、シンチレータ層の製造にも適している。
蛍光材料Iの選択には、使用するX線に対するその蛍光体の発光効率だけではなく、蛍光波長とフォトダイオードの分光感度特性との整合性も考慮することが望ましい。例えば、分光感度特性のピークが600nm台にあるa−Siフォトダイオードを検出器とする場合、Gd2O2S:Tb(主発光波長545nm)に対して発光効率で劣るGd2O2S:Eu(主発光波長630nm)がフォトダイオードの検出出力では同等か若干大きい値を示す。総合的には、Gd2O2S:Eu、Gd2O2S:Tb、CsI:Tl等が好適な蛍光材料である。
また、隔壁層に含有される蛍光材料IIとしては、例えばシンチレータ層に含有する蛍光材料をGd2O2S:Tbとした場合、その最短蛍光波長は370nm程度であることから、最長蛍光波長が370nm以上で前記の条件を満足するGd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr、Gd2O2S:Eu、CsI:Tl、等が有効である。
隔壁層に含まれる蛍光材料IIIには、例えばシンチレータ層に含有する蛍光材料IがGd2O2S:Eu(主発光波長630nm)の場合には、その主発光波長成分の励起波長が概ね630nm以下であることから、630nm以下に主要蛍光発光成分を有するGd2O2S:TbやBaFCl:Eu、LaOBr:Tb、Y2O2S:Tb、ZnS:Ag、(Zn、Cd)S:Ag等のX線用蛍光体が好適である。
また、蛍光材料Iを励起する蛍光材料IIIには、最長の蛍光波長が紫外領域にある蛍光材料が有効となる。例えば、シンチレータ層が厚くなると、隔壁層で発生した光が隣接する画素のシンチレータ層を超えて、さらにその先のシンチレータ層まで到達し、解像度を低下させる場合がある。
隔壁層に含有する蛍光材料IIIの蛍光波長が紫外領域にあるために、可視光以上の長波長蛍光に較べてシンチレータ層内で吸収が大きく、隣接するシンチレータ画素を超えてこの紫外蛍光が到達する可能性が極めて小さい。特に膜厚が厚い場合には隣接画素を超えての蛍光の発散による解像度低下を生じやすく、本発明の有効性が増す。
隔壁層内の蛍光材料IIIとしては、上記の蛍光材料Iを励起する蛍光波長成分を有する蛍光材料および最長の蛍光波長が紫外領域にある蛍光材料を混合したものを使用することもできる。この場合、両者の配合率に応じてそれぞれのメカニズムにより輝度の向上効果が実現される。
ここまでに説明した構成によれば、隔壁層に含まれる蛍光材料II又はIIIが発生した光はシンチレータ層内の蛍光材料Iが発生した光の減衰を抑え、または、蛍光材料Iが発生する光を強めている。このとき、蛍光材料IIはIIIが発生した光の一部は、シンチレータ層内を通過してフォトダイオードに達し感度の上昇にも寄与する。
このような感度上昇の効果を上げるためには、シンチレータ層の蛍光材料Iの粒径は大きい方が望ましい。例えば隔壁層の粒径よりも大きな粒径とし、あるいは焼結した一体化構造とし、蛍光材料とバインダーなどの周辺材料との界面の屈折による散乱を極力抑えた方が効果が大きくなる。また、それぞれの蛍光材料の自己吸収係数およびバインダー材料のそれぞれの蛍光に対する吸収係数は小さい方が望ましい。
上記した構成は、隔壁層内の蛍光材料の粒径を小さくすれば画素分離効果が顕著となり、いわゆる解像度が改善する。
例えば蛍光材料の粒径(蛍光材料が針状紛体の場合は針の直径)を小さくすると、蛍光材料とバインダーなどの周辺材料との界面での屈折頻度が増加する。また、粒径が小さいと、完全拡散反射面に近い状態となり反射率が増大する。その結果、シンチレータ層で発生した光の隣接する画素単位のシンチレータ層への到達が防止され、画素分離効果が大きくなる。
この場合、シンチレータ層間に挟まれた隔壁層の壁幅方向に、例えば最低4個程度の蛍光材料の粒子を配列すれば有効な反射効果が実現される。この時、隔壁層に含まれる蛍光材料II又はIIIの平均粒径がφ、体積充填率がDの場合、平均粒径φを体積充填率Dで徐した値(φ/D)隔壁層の幅の1/2以下にすれば十分に有効な反射効果が得られる。蛍光材料の粒径が極端に小さくなり、その粒径がシンチレータ層で発生する蛍光波長に近い大きさになると散乱効果が小さくなる。従って粒径の下限は、シンチレータ層の蛍光材料Iが発生する最短の蛍光波長程度となる。
次に、上記した構成のX線検出器の製造方法について説明する。
まず、絶縁基板31上に光電変換部例えばTFT14および蓄積コンデンサ15、フォトダイオード13などをそれぞれ画素単位に形成する。
次に、シンチレータ層38を構成するGd2O2S:Tbなどの蛍光材料Iとエポキシなどの樹脂材料とを混合した材料を、例えばマトリクス状に形成された複数のフォトダイオード13などの上部に、400μmの厚さで塗付してシンチレータ膜を形成し、その後、焼成し固化する。
次に、ダイシング法などを用いてシンチレータ膜を加工し、隔壁層39が設けられる部分に溝を形成する。このとき、フォトダイオード13やTFT14の配置に合わせて、150μmのピッチで幅25μmの溝を形成し、画素単位に分離したシンチレータ層38が形成される。
次に、蛍光材料II又はIII、例えば平均粒径が2μmのGd2O2S:Euの小粒径や平均粒径が2μmのZnS:Agの粉体とPVB(ポリビニルブチラール)とを混合した材料を酢酸ブチルで溶かしたスラリー状の充填材を、溝の部分に沈殿法等により充填し、乾燥させ、その後、表面に残った充填材を研磨などで除去し隔壁層39を形成する。
次に、微粒子紛体のTiO2と樹脂バインダーとを混合した材料を、画素ごとに分離して形成された複数のシンチレータ層38および隔壁層39の表面に塗布し、蛍光反射膜40を形成する。
なお、蛍光反射膜40は、その他の透明なセラミックスの微粒子紛体や蛍光体の微粉末で形成することもできる。良好な平坦性が得られればメタル膜で形成することもできる。
また、湿気などによるシンチレータ層38の変質を防ぐ場合は、X線検出器の主要部を、Alやプラスチックなどの外囲器で覆って真空封止し、あるいは、外囲器内に乾燥気体が封入される。
上記した製造方法の場合、まずシンチレータ層38を形成し、その後、隔壁層39を形成している。しかし、隔壁層39を形成した後にシンチレータ層38を形成することもできる。例えば蛍光材料II又はIIIを含む材料で隔壁膜を形成し、その後、シンチレータ層38となる部分の隔壁膜を除去し、この除去した部分に、蛍光材料Iを含むシンチレータ材料を充填する方法である。
ここで、シンチレータ層38および隔壁層39を形成する他の方法について説明する。まず、成形が容易な樹脂材料または金属材料からなる予備膜をフォトダイオードなどの上部に形成する。次に、隔壁層39(またはシンチレータ層38)となる部分の予備膜を除去し、その除去した部分に隔壁層39(またはシンチレータ層38)となる蛍光材料を充填する。次に、先の工程で除去されずに残った予備膜のパターンを選択的に除去し、予備膜が選択的に除去された部分にシンチレータ層38(または隔壁層39)となる蛍光材料を充填する方法である。
蛍光材料は、無機材料で硬度が高く結合エネルギーが高い。そのため、化学反応や機械加工、熱的、光化学的な方法では、シンチレータ膜や隔壁膜を部分的に除去するパターニング加工が困難な場合がある。このような場合、樹脂材料や金属材料からなる予備膜を形成する方法が有効となる。また、加工時の蛍光体へのダメージによる発光効率の低下や着色による輝度低下を抑えるメリットもある。
シンチレータ膜や隔壁を部分的に除去して溝を形成しパターン化する方法としては、ダイシング法の他、紫外領域のレーザーによる光化学分解を用いる方法や赤外領域のレーザーによる加熱分解を用いる方法、バインダー材料を化学的に溶解するエッチング法などを利用することもできる。
また、上記の実施形態では、画素単位ごとに形成された複数の光電変換部上にシンチレータ層および隔壁層を順に形成している。しかし、シンチレータ層および隔壁層を別の基板上に形成し、その後、これらシンチレータ層および隔壁層を光電変換部上に接合する方法を用いることもできる。
ここで、本発明の実施例と比較例との特性の測定結果を表1に示す。
なお、表1中の各特性は次の方法により測定したものである。
<相対感度>
ガラス基板上にTiO2微粉を樹脂にねりこんで塗布した反射層を形成し、その上に各シンチレータ層及び隔壁層を300μmtの厚さで形成して特性評価用のサンプルを得た。碁盤の目状に画素分離した膜の画素間ピッチは150μmで、隔壁幅は約20μm幅で形成した。各サンプルは研磨により表面を平坦化し、光学ジェルを介して分光感度特性が600〜700nmであるa−Si(アモルファスシリコン)フォトダイオードアレイに密着させ、このa−Siフォトダイオードの感度出力を平均化して感度評価の指標とした。
<MTF(解像度特性)>
感度特性測定用と同様にサンプル作成し、50μm以下の幅のスリット状ラインを開けた鉛板チャートを介してX線の透過像を測定し、そのX線透過像の広がりからLine Spread Functionを測定する。このLine Spread Functionをフーリエ変換することにより空間周波数(Spatial Frequency)に対するMTF(Modulation Transfer Function)を計算した。
<蛍光材料の平均粒径>
適当な断面を数箇所割ってSEM観察し、SEM画像の各蛍光材料粒子の面積から実効粒径を求めてこれらを平均する。
実施例および従来例とも、単位画素のピッチは150μm、単位画素サイズは130μm×130μmとし(隔壁の幅が20μm)、シンチレータ層及び隔壁層の蛍光体の体積充填率は0.5(50%)とした。フォトダイオードなどはプラズマCVD法およびフォトリソグラフィを用いて形成した。フォトダイオード上の電極膜はITOをスパッタリング法で形成した。フォトダイオードはa−SiのPIN構造で、380乃至720nm程度の波長範囲で感度を持ち、600nm近傍が感度のピークとなっている。また、シンチレータ層および隔壁層の膜厚は300μとなっている。
表1のサンプル1〜4は本発明の構造で、いずれも隔壁層に蛍光材料が含まれている。サンプル5は蛍光材料が含まれない隔壁層を設けた構造で、サンプル6は隔壁層のない構造である。解像度特性は空間周波数2Lp/mmのMTF(%)で比較した。
表1から分かるように、隔壁層のないサンプルFの構造と比較した場合、従来例のサンプルEは輝度の低下が大きい。発明のサンプルA〜Dは、輝度の低下は15%前後に留まっている。サンプルFは、隔壁層がないため輝度低下はないものの、解像度特性が極端に劣り、精細画像が要求されるX線診断には使えないレベルになっている。
図5のQは、隔壁層に含まれる蛍光材料の平均粒径(横軸、単位μm)と解像度特性の2Lp/mmのMTF(縦軸、単位%)との関係を示している。
MTFの値はある範囲にばらつきがあるため、符号Qは所定の幅で示されている。この図4から、蛍光材料の平均粒径が隔壁幅の1/4である概ね5μm以下になると解像度特性の向上が顕著になることがわかる。
次に、シンチレータ層の膜厚と蛍光材料Iの平均粒径、隔壁内の壁厚と蛍光材料IIの粒径とを、それぞれ請求項2、請求項3の範囲内としたサンプルと範囲外にしたサンプルを作成し、それぞれのサンプルについて輝度とCTF(解像度)を測定した。結果を表2に示す。なお、各サンプルは、150μmピッチのフォトダイオード付きTFT基板上に下記条件の画素分離シンチレータを作成したものである。また同表中の○は、請求項に示した式に該当するもの、×は請求項に示した式に該当しないものである。
また、表中の符号は、それぞれ次のものを示している。
Ts:シンチレータ画素の膜厚
Ds:シンチレータ層における蛍光材料Iの平均粒径
Fs:シンチレータ層における蛍光材料Iの充填密度
Tw:隔壁の壁厚
Dw:隔壁内における蛍光材料、蛍光材料III、非蛍光材料のいずれか1種以上の平均粒径
Fw:隔壁内における蛍光材料II、蛍光材料III、非蛍光材料のいずれか1種以上の充填密度
(サンプル7)
Ds=6μm、Ts=200μm、Fs=70%、画素分離無し構造
(サンプル8)
Ds=40μm、Ts=500μm、Fs=50%
Dw=0.3μm、Tw=20μm、Fw=50%
(サンプル9)
Ds=40μm、Ts=500μm、Fs=50%
Dw=2μm、Tw=20μm、Fw=50%
(サンプル10)
Ds=15μm、Ts=500μm、Fs=50%
Dw=0.3μm、Tw=20μm、Fw=50%
(サンプル11)
Ds=15μm、Ts=500μm、Fs=50%
Dw=2μm、Tw=20μm、Fw=50%
(サンプル12)
Ds=1μm、Ts=20μm、Fs=50%
Dw=2μm、Tw=40μm、Fw=50%
各サンプルの特性を表2に示す。
同表から請求項1〜3の要件を満たすサンプルが最も特性がよく、請求項1、2の要件を満たすサンプル、請求項1、3の要件を満たすサンプル、請求項1の要件だけを満たすサンプルの順に特性がよいことが分かる。サンプル7、サンプル12は比較例である。
産業上の利用可能性
本発明は、画像特性を改善したX線検出器およびその製造方法を実現できる。本発明のX線検出器は、人体の胸部撮影の他、循環器や消化器などの診断にも適用可能である。また工業用のX線検出器も適用可能である。更に、2次元的に配列した平面検出器だけでなく、1次元配列のライン検出器(X線ラインセンサー)にも適用可能である。したがって、広い分野の産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の実旅形態を説朋するための模式的な回路構成図。
図2は、本発明の実施形態を説明するための模式的な断面図で、1つの画素単位部分を抜き出した図。
図3は、本発明の実施形態を説明するための特性図。
図4は、本発明の実施形態を説明するための他の特性図。
図5は、本発明の実施形態を説明するための他の特性図。
Claims (13)
- 画素単位の光電変換部と、前記光電変換部の各画素上に形成された蛍光材料Iを含むシンチレータ画素と、前記シンチレータ画素間に設けた蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含む隔壁とを備えたX線検出器において、
前記蛍光材料Iの平均粒径をDs、前記蛍光材料及び/又は非蛍光材料の平均粒径をDwとしたとき、
Ds>Dw
であることを特徴とするX線検出器。 - 画素単位の光電変換部と、前記光電変換部の各画素上に形成された蛍光材料Iを含むシンチレータ画素と、前記シンチレータ画素間に設けた蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含む隔壁とを備えたX線検出器において、
前記シンチレータ画素の膜厚をTs、前記シンチレータ画素内における蛍光材料の平均粒径をDs、前記シンチレータ画素内における蛍光材料Iの充填密度をFsとしたとき、
Ds≧Ts・Fs/10
であることを特徴とする請求項1記載のX線検出器。 - 画素単位の光電変換部と、前記光電変換部の各画素上に形成された蛍光材料Iを含むシンチレータ画素と、前記シンチレータ画素間に設けた蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含む隔壁とを備えたX線検出器において、
前記隔壁の壁厚をTw、前記隔壁内における蛍光材料及び/又は非蛍光材料の平均粒径をDw、前記隔壁内における蛍光材料及び/又は非蛍光材料の充填密度をFwとしたとき、
Dw≦Tw・Fw/10
であることを特徴とする請求項1又は2記載のX線検出器。 - 前記蛍光材料Iを含むシンチレータ画素は、蛍光体材料Iの焼結体で形成されていることを特徴とする請求項3記載のX線検出器。
- 画素単位の光電変換部と、前記光電変換部の各画素上に形成された蛍光材料Iを含むシンチレータ画素と、前記シンチレータ画素間に設けた蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含む隔壁とを備えたX線検出器において、
前記隔壁は、前記シンチレータ画素内に含まれる蛍光材料Iと光学的特性が相違し、かつ前記蛍光材料Iの最短蛍光波長と等しいかそれよりも長い最長蛍光波長を有する蛍光材料IIを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のX線検出器。 - 画素単位の光電変換部と、前記光電変換部の各画素上に形成された蛍光材料Iを含むシンチレータ画素と、前記シンチレータ画素間に設けた蛍光材料及び/又は非蛍光材料を含む隔壁とを備えたX線検出器において、
前記隔壁は、前記シンチレータ画素内に含まれる蛍光材料Iと光学的特性が相違し、かつ前記蛍光材料Iの最長蛍光励起波長と等しいかそれよりも短い最短蛍光波長を有する蛍光材料IIIを含有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のX線検出器。 - 前記蛍光材料Iが、Gd2O2S又はCsIを母材とする蛍光材料であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載のX線検出器。
- 前記蛍光材料II又はIIIが、Gd2O2Sを母材とする蛍光材料であることを特徴とする請求項1乃至6記載のいずれか1項記載のX線検出器。
- 前記蛍光材料IIIの最長蛍光波長が紫外領域にあることを特徴とする請求項6又は8記載のX線検出器。
- 画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、
前記画素単位の光電変換部上に蛍光材料Iを含む層を形成する工程と、前記層から隔壁となる部分を除去して前記シンチレータ画素を形成する工程と、蛍光材料II及び/又は蛍光材料IIIを含む材料を充填して前記隔壁を形成する工程とを備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のX線検出器の製造方法。 - 画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、
前記画素単位の光電変換部上に蛍光材料II及び/又は蛍光材料IIIを含む層を形成する工程と、
前記層から前記隔壁となる部分以外の部分を除去して前記隔壁を形成する工程と、
前記隔壁を形成する工程で除去した部分に前記蛍光材料Iを含む材料を充填して前記シンチレータ画素を形成する工程とを備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のX線検出器の製造方法。 - 画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、
前記画素単位の光電変換部上に樹脂材料等の有機材料又は金属材料等の無機材料により層を形成する工程と、前記層から前記隔壁となる部分を除去して樹脂材料又は金属材料による仮画素を形成する工程と、前記仮画素を形成する工程で除去した部分に前記蛍光材料II及び/又は蛍光材料IIIを含む材料を充填して前記隔壁を形成する工程と、
前記仮画素を除去する工程と、
前記仮画素を除去した部分に前記蛍光材料Iを含む材料を充填して前記シンチレータ画素を形成する工程とを備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のX線検出器の製造方法。 - 画素単位の光電変換部上にシンチレータ画素を形成する工程と、前記シンチレータ画素間に隔壁を形成する工程とを備えたX線検出器の製造方法において、
前記画素単位の光電変換部上に樹脂材料等の有機材料又は金属材料等の無機材料により層を形成する工程と、
前記層から隔壁となる部分以外の部分を除去して樹脂材料又は金属材料による仮隔壁を形成する工程と、
前記仮隔壁を形成する工程で除去した部分に前記蛍光材料Iを含む材料を充填して前記シンチレータ画素を形成する工程と、
前記仮隔壁を除去する工程と、
前記仮隔壁を除去した部分に蛍光材料II及び/又は蛍光材料IIIを含む材料を充填して前記隔壁を形成する工程とを備えたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項記載のX線検出器の製造方法。
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