JP7056719B2 - シンチレータ構造体およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、シンチレータ構造体およびその製造方法に関し、例えば、それぞれ樹脂と蛍光体とを含む複数のセルを有するシンチレータ構造体およびその製造方法に適用して有効な技術に関する。
特開昭63-100391号公報(特許文献1)には、粉末蛍光体とエポキシ樹脂とを混合した蛍光体成型体に関する技術が記載されている。
特開平2-17489号公報(特許文献2)には、放射線検出器に使用される蛍光体に関する技術が記載されている。
特開昭63-100391号公報 特開平2-17489号公報
シンチレータは、X線やガンマ線に代表される放射線が当たると、放射線のエネルギーを吸収して可視光を発生させる物質である。このシンチレータは、シンチレータと反射材とを含むシンチレータ構造体として製品化され、シンチレータ構造体とフォトダイオードなどの光電変換素子とを組み合わせたX線検出器が、例えば、X線CTなどの医療機器、分析機器、放射線を用いた非破壊検査装置、放射線漏洩検査装置などに用いられている。
例えば、シンチレータには、ガドリニウム酸硫化物(GdS)からなるセラミックスが使用されている。ここで、本明細書では、ガドリニウム酸硫化物を「GOS」と呼ぶことにする。なお、厳密には、ガドリニウム酸硫化物自体はほとんど発光せず、ガドリニウム酸硫化物にプラセオジウムやテルビウムなどを含有させることによって発光する。このことから、本明細書で「GOS」という文言は、ガドリニウム酸硫化物自体にプラセオジウムやテルビウムなどが含有されて発光する物質(蛍光体)を暗に意図して使用することにする。ただし、ガドリニウム酸硫化物自体にプラセオジウムやテルビウムなどが含有されていることを明示的に示す必要がある場合、プラセオジウムを含有する「GOS」やテルビウムを含有する「GOS」と表現することがある。
また、シンチレータを「GOS」単体から構成する場合、「GOS」はセラミックから構成される。一方、後述するように、シンチレータを「GOS」と樹脂の混合物から構成することも検討されており、この場合の「GOS」は粉体から構成される。したがって、本明細書では、特にセラミックと粉体とを明示する必要がないときには、単に「GOS」と表現する。これに対し、セラミックを明示する必要があるときは「GOS」セラミックと呼ぶ。一方、粉体を明示する必要があるときは「GOS」粉体と呼ぶことにする。
この「GOS」は、タングステン酸カドミウム(CdWO)よりも可視光の発光出力が大きいという利点を有する一方、製造コストが高い。
このことから、シンチレータ構造体の製造コストを低減するため、シンチレータとして「GOS」粉体と樹脂の混合物を使用することが検討されている。
ところが、「GOS」粉体と樹脂の混合物を使用すると、製造コストを低減できる一方で、可視光の発光出力の低下を招く。したがって、シンチレータとして「GOS」粉体と樹脂の混合物を使用する場合、可視光の発光出力を向上することが望まれている。
一実施の形態におけるシンチレータ構造体は、複数のセルと、複数のセルを覆う反射材とを備える。ここで、複数のセルのそれぞれは、樹脂と蛍光体とを含み、蛍光体は、テルビウムとセリウムを含有するガドリニウム酸硫化物からなる。そして、複数のセルのそれぞれの密度は、4.4g/cm以上5.0g/cm未満であり、複数のセルのそれぞれの厚さは、0.5mm以上1.8mm以下である。
一実施の形態によれば、製造コストを低減しながら、発光出力の低下を抑制できる。
X線検出器を模式的に示す図である。 「樹脂GOS」において、発光出力が低下する一因を説明する図である。 セルの厚さと発光出力との関係を示すグラフである。 セル自体の密度と発光出力の関係を示すグラフである。 「CWO」の残光特性を示すグラフである。 「第3樹脂GOS」の残光特性を示すグラフである。 「第1樹脂GOS」の残光特性を示すグラフである。 シンチレータ構造体の製造工程の流れを説明するフローチャートである。 ダイシング工程から反射材塗布工程までの工程を模式的に示す図である。 「樹脂GOS」の表面に様々な表面処理を行った後、「樹脂GOS」の表面にエポキシ樹脂を滴下したときの接触角を比較することにより、エポキシ樹脂に対する濡れ性を評価した結果を示すグラフである。 酸化チタン液浸漬処理による濡れ性の向上を説明する図である。 (a)は、抗折試験で評価するサンプルの作製工程を模式的に示す断面図であり、(b)は、抗折試験で評価するサンプルの作製工程を模式的に示す上面図である。 (a)は、抗折試験の様子を示す断面図であり、(b)は、抗折試験の様子を示す上面図である。 (a)は、サンプルを形成する前のシンチレータ構造体で施される表面処理の条件を示す表であり、(b)は、「条件1」~「条件8」のそれぞれに対応するサンプルに対して、抗折試験を実施して測定された破断強度を示すグラフである。
実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお、図面をわかりやすくするために平面図であってもハッチングを付す場合がある。
<X線検出器の概要>
図1は、X線検出器を模式的に示す図である。
図1において、X線検出器100は、シンチレータ構造体10と受光素子20とを有している。シンチレータ構造体10は、X線検出器100に入射されるX線から可視光を発生するシンチレータ11と、このシンチレータ11を覆う反射材12から構成されている。一方、受光素子20は、シンチレータ11で発生した可視光から電流を生成する機能を有し、例えば、フォトダイオードに代表される光電変換素子から構成されている。
シンチレータ11は、X線を吸収して可視光を発生させる機能を有し、蛍光体11aと樹脂11bから構成されている。ここで、本明細書では、蛍光体11aを構成する「GOS」粉体と樹脂11bとを混合した材料を「樹脂GOS」と呼ぶこともある。つまり、本実施の形態におけるシンチレータ11は、「樹脂GOS」から構成されている。蛍光体11aは、プラセオジウムやテルビウムなどを含有するガドリニウム酸硫化物であり、樹脂11bは、例えば、エポキシ樹脂である。また、反射材12は、酸化チタンを含有するエポキシ樹脂から構成されている。
このように構成されているX線検出器は、以下に示すように動作する。
すなわち、X線がシンチレータ構造体10のシンチレータ11に入射すると、シンチレータ11を構成する蛍光体11a内の電子は、X線のエネルギーを受け取って基底状態から励起状態に遷移する。その後、励起状態の電子は、基底状態に遷移する。この際、励起状態と基底状態との間のエネルギー差に相当する可視光が放出される。このようなメカニズムによって、シンチレータ11は、X線を吸収して可視光を発生させる。
そして、シンチレータ11から発生した可視光のうちの一部の可視光は、直接的に受光素子20に入射するとともに、シンチレータ11から発生した可視光のうちの他の一部の可視光は、シンチレータ11を覆う反射材12での反射を繰り返しながら受光素子20に集光される。
続いて、例えば、フォトダイオードから構成される受光素子20に可視光が入射すると、この可視光のエネルギーによって、フォトダイオードを構成する半導体材料の電子が価電子帯から伝導帯に励起される。これにより、伝導帯に励起した電子に起因する電流がフォトダイオードに流れる。そして、フォトダイオードから出力された電流に基づいて、X線画像が取得される。このようにして、X線検出器100によれば、X線画像を取得できる。
<「樹脂GOS」の採用理由>
上述したように、本実施の形態では、シンチレータ11として「樹脂GOS」が採用されている。以下では、この理由について説明する。
例えば、シンチレータ構造体10を構成するシンチレータ11として、タングステン酸カドミウム(以下、「CWO」と呼ぶ)が使用されているが、この「CWO」には、RoHS指令/REACH規則対象物質であるカドミウムが含まれている。このことから、シンチレータ11として、カドミウムを含有する「CWO」に替えて「GOS」セラミックが使用されてきている。この「GOS」セラミックは、「CWO」に比べて、可視光の発光出力が高いというメリットを有している一方、製造コストが高くなるデメリットがある。
そこで、製造コストを削減する観点から、シンチレータ11として、「GOS」セラミックに替えて、エポキシ樹脂などからなる樹脂と「GOS」粉体とを混合した「樹脂GOS」を採用することが検討されている。すなわち、「GOS」セラミックによる製造コストの上昇を抑制するために、「GOS」セラミックよりも価格の安い「樹脂GOS」をシンチレータ11に使用する動きがある。
ところが、「樹脂GOS」は、「GOS」セラミックよりも発光出力が低く、シンチレータ11として「樹脂GOS」を採用する場合においても、発光出力を確保することが望まれている。
<発光出力の低下要因>
まず、「樹脂GOS」において、発光出力が低下する原因について説明する。
<<第1原因>>
「樹脂GOS」は、例えば、エポキシ樹脂などの樹脂と「GOS」粉体との混合物から構成される。そして、エポキシ樹脂および「GOS」粉体のいずれも可視光に対して透光性を有している。この点に関し、エポキシ樹脂の透光性は、「GOS」の透光性よりも高い。このことから、「樹脂GOS」の透光性は、「GOS」セラミックの透光性よりも高くなる。したがって、「樹脂GOS」の透光性が「GOS」の透光性よりも高い結果、一見すると、「樹脂GOS」を使用したシンチレータ11の発光出力は、「GOS」セラミックを使用したシンチレータ11の発光出力よりも高くなると考えられる。
ところが、実際には、「樹脂GOS」を使用したシンチレータ11の発光出力は、「GOS」セラミックを使用したシンチレータ11の発光出力よりも低くなる。
これは、「樹脂GOS」では、「GOS」粉体を使用している結果、「GOS」セラミックの総表面積よりも「樹脂GOS」を構成する「GOS」粉体の総表面積が大きくなることに起因していると考えられる。すなわち、「樹脂GOS」では、エポキシ樹脂内に多量の「GOS」粉体が存在していることから、「GOS」粉体で発光した光は、たとえ、「GOS」粉体からエポキシ樹脂内に出射されたとしても、その後、多量に存在する「GOS」粉体の表面で多重散乱し、散乱の度に「GOS」粉体の表面で光吸収が生じる。この結果、「樹脂GOS」では、「GOS」セラミックよりも光吸収が大きくなるため、「樹脂GOS」を使用したシンチレータ11の発光出力は、「GOS」セラミックを使用したシンチレータ11の発光出力よりも高くなると考えられる。これが「樹脂GOS」において発光出力が低下する第1原因と推察される。
<<第2原因>>
例えば、図2に示すように、シンチレータ構造体10は、直方体形状をしたシンチレータ11とシンチレータ11を覆う反射材12から構成されている。ここで、直方体形状をしたシンチレータ11は、ダイシング工程や研削工程などの加工工程を経て形成されることから、直方体形状の表面には、加工面が形成される。すなわち、「加工面」とは、機械的な加工が施された面をいう。具体的に、「加工面」には、ワーク厚み出しを実施するにあたり、研削砥石にて研削した面、もしくは、ダイシング処理を実施するためにスライシングブレードにてワークを切断した表面が含まれる。例えば、「樹脂GOS」を使用したシンチレータ11において、「加工面」とは、樹脂が露出する面と「GOS」粉体が破断した面とが混在する面として定義される。例えば、図1において示される破線は、「樹脂GOS」を使用したシンチレータ11において、シンチレータ11と反射材12との界面が「加工面」である場合を模式的に表している。この場合、「加工面」においては、樹脂11bを切断する領域と蛍光体11a(「GOS」粉体)が破断する領域が混在することがわかる。なお、図1に示す破線は、「加工面」の構成をわかりやすく説明するために描かれたものであり、破線によってシンチレータ11のシュリンクを意図するものではなく、破線で囲まれるシンチレータ11のサイズは、実線で囲まれるサイズであってもよい。
この加工面は、加工工程に起因する機械的ダメージを受けることから、加工変質層30となる。「加工変質層」とは、機械的な加工工程に起因する機械的ダメージを受けることによって、機械的な加工を施す前よりも光の反射特性が劣化して光が吸収されやすくなる層として定義される。例えば、「加工変質層」の具体例としては、「GOS」粉体表面の硫黄成分の脱硫による光吸収層を挙げることができる。
この加工変質層30では、シンチレータ11で発生した可視光が吸収されやすくなる。すなわち、シンチレータ11に存在する加工変質層30によって、発生した可視光の一部が吸収される結果、発光出力の低下が生じる。つまり、シンチレータ11の表面に加工変質層30が形成されることが、シンチレータ構造体10からの発光出力を低下させる一因となるのである。
特に、近年では、図2に示すように、X線画像の解像度を向上する観点から、複数のフォトダイオードのそれぞれに合わせてシンチレータ11を複数のセルCLに分割することが行われている(シンチレータ11のアレイ化)。そして、複数のセルCLを覆うように反射材12が設けられる。具体的に、セルCLの上面と4つの側面は、反射材12で覆われる。一方、セルCLの下面は、フォトダイオードと接触させる必要があるため、反射材12で覆われてはいない。
シンチレータ11を複数のセルCLに分割する場合、複数のセルCLのそれぞれの表面に加工変質層30が形成されることから、シンチレータ構造体10Aに占める加工変質層30の面積が大きくなる。この結果、複数セル型のシンチレータ構造体10Aでは、加工変質層30に起因する発光出力の低下が大きくなると考えられる。
本実施の形態におけるシンチレータ構造体は、X線画像の解像度の向上を図ることができる複数セル型シンチレータ構造体10Aを前提としている。このため、加工変質層30に起因する発光出力の低下が大きくなると考えられるため、発光出力を維持するために工夫を施すことが重要になることがわかる。
ここで、シンチレータ11として、「GOS」セラミックを使用しても「樹脂GOS」を使用しても、シンチレータ11の表面に加工変質層30が形成されることには変わりがない。したがって、シンチレータ11を「GOS」セラミックから構成する場合や「樹脂GOS」から構成する場合のいずれであっても、加工変質層30に起因する発光出力の低下が生じると考えられる。
この点に関し、本発明者の検討によると、シンチレータ11を「GOS」セラミックから構成する場合よりも、シンチレータ11を「樹脂GOS」から構成する場合のほうが、加工変質層30に起因する発光出力の低下が大きくなることを新規に見出した。
以下に、この理由について説明する。例えば、「GOS」セラミックは、セルCLに個片化した後においても加熱処理を加えることができる。そして、加熱処理は、機械的ダメージで形成された加工変質層30を回復する機能を有する。したがって、シンチレータ11を「GOS」セラミックから構成する場合には、セルCLに個片化した後、加熱処理を加えることにより、セルCLの表面に形成されている加工変質層30を回復することができるのである。これにより、シンチレータ11を「GOS」セラミックから構成する場合には、加熱処理によって加工変質層30が低減されることから、加工変質層30に起因する発光出力の低下を抑制することができる。
これに対し、「樹脂GOS」は、セラミックスではなく「GOS」粉体を樹脂で固めたものであり、加熱処理を施すことが困難である。この結果、シンチレータ11を「樹脂GOS」から構成する場合、加熱処理による加工変質層30の回復効果を得ることができないため、加工変質層30に起因する発光出力の低下が大きくなるのである。つまり、「樹脂GOS」は、「GOS」セラミックと異なり加熱処理を施すことが困難で加工変質層30を回復できないことが、シンチレータ構造体10Aからの発光出力を低下させる第2原因である。
以上のことから、シンチレータ11を「樹脂GOS」から構成すると、「GOS」粉体の使用に起因する第1原因と、加工変質層30の回復が困難であるという第2原因との相乗要因によって、「GOS」セラミックよりも発光出力が低下する。
したがって、シンチレータ11として「樹脂GOS」を使用すると、本質的に「GOS」セラミックよりも発光出力が低下することは避けられない。ただし、本発明者は、シンチレータ11として「樹脂GOS」を使用する場合、「樹脂GOS」から構成されているセルCLの厚さや密度によって、発光出力が変化することを新規な知見として獲得した。すなわち、本発明者の見出した新規な知見によれば、セルCLの厚さや密度を規定することにより、「樹脂GOS」でもある程度以上の発光出力を確保できると考えられる。
そこで、以下では、発光出力の厚さ依存性および密度依存性について説明する。
<発光出力の厚さ依存性>
図3は、セルの厚さと発光出力との関係を示すグラフである。
図3において、横軸はセルの厚さを示しており、縦軸は発光出力を示している。
まず、「第1GOS」とは、プラセオジウム(Pr)とセリウム(Ce)を添加した「GOS」である。一方、図3には示されていないが、「第2GOS」とは、テルビウム(Tb)とセリウム(Ce)を添加した「GOS」である。
ここで、「第1GOS」と「第2GOS」の発光出力に着目すると、「第1GOS」よりも「第2GOS」のほうが発光出力は高い。言い換えると、「第1GOS」は、「第2GOS」よりも発光出力が低い。なお、図3の縦軸に示す発光出力は、厚さが1.3mmの「第1GOS」の発光出力を100パーセントとしたパーセント表示で示されている。
「第2樹脂GOS」は、「第2GOS」からなる「GOS」粉体とエポキシ樹脂との混合物である。
「第3樹脂GOS」と「第4樹脂GOS」は、いずれも「第1GOS」からなる「GOS」粉体とエポキシ樹脂との混合物であり、「第3樹脂GOS」と「第4樹脂GOS」の相違点は密度である。
図3において、「第1GOS」の曲線に着目すると、「第1GOS」の発光出力は、セルの厚さにほとんど依存しないことがわかる。一方、図3において、「第2樹脂GOS」~「第4樹脂GOS」のそれぞれの曲線に着目すると、「第2樹脂GOS」~「第4樹脂GOS」のそれぞれの発光出力は、セルの厚さに依存していることがわかる。
以下では、「第2樹脂GOS」~「第4樹脂GOS」のそれぞれの発光出力の厚さ依存性について定性的に説明する。まず、厚さが薄い範囲では、厚さが増加するほど発光出力が大きくなっている。これは、厚さが薄い範囲では、厚さが厚くなるにつれて、入射されるX線を吸収して可視光を発生させることに寄与する「樹脂GOS」の量が増加することから理解できる。そして、厚さがある程度厚くなると、入射されるX線を吸収して可視光を発生させることに寄与する「樹脂GOS」の量が飽和する一方、厚さが厚くなると透光性が低下するとともに、上述した第1原因や第2原因が顕在化することにより、厚さが厚くなるにつれて、発光出力が低くなることが理解される。
<発光出力の密度依存性>
次に、発光出力の密度依存性について説明する。
図4は、セル自体の密度と発光出力の関係を示すグラフである。
図4において、横軸はセルを構成するシンチレータの密度を示しており、縦軸は発光出力を示している。なお、縦軸の発光出力は、厚さ1.5mmの「第1GOS」の発光出力を100パーセントとしたパーセント表示で示されている。
ここで、「密度」とは、「樹脂GOS」全体の密度をいう。特に、「樹脂GOS」では、エポキシ樹脂に比べて「GOS」粉体の密度が高いことから、以下の関係が成立する。
すなわち、「樹脂GOS」の密度が低いということは、「GOS」粉体の量が少なく、エポキシ樹脂の量が多いことを意味する。言い換えれば、「樹脂GOS」の密度が高いということは、「GOS」粉体の量が多く、エポキシ樹脂の量が少ないことを意味する。
図4において、「第1樹脂GOS」(比較例)の密度は、5.0(g/cm)である一方、「第2樹脂GOS」の密度は、4.4(g/cm)である。すなわち、「第2樹脂GOS」の密度は、「第1樹脂GOS」の密度よりも低くなっている。言い換えれば、「第1樹脂GOS」の密度は、「第2樹脂GOS」の密度よりも高くなっている。
図4に示すように、密度が低くなるにつれて、発光出力が高くなることがわかる。これは、密度が小さいということは、「GOS」粉体よりも透光性の高いエポキシ樹脂の量が相対的に大きくなることを意味するから、可視光の吸収が低減される結果、密度が低くなると発光出力が大きくなると考えられる。言い換えれば、密度が大きいということは、「GOS」粉体の量が透光性の高いエポキシ樹脂の量よりも多くなることを意味するから、「GOS」粉体における可視光の吸収が増加する結果、密度が高くなると発光出力が低くなると考えられる。
以下では、シンチレータ11を「樹脂GOS」から構成することにより、「GOS」セラミックをシンチレータ11として使用する場合よりも製造コストを削減しながらも、上述した発光出力の厚さ依存性(図3参照)および発光出力の密度依存性(図4)に基づいて、シンチレータ構造体10Aの性能を向上する工夫点について説明する。言い換えれば、シンチレータ構造体10Aのコストパフォーマンスを向上する工夫点について説明する。
具体的には、シンチレータ構造体10Aの性能を向上する工夫点として、発光出力を確保する観点からの第1工夫点と、残光特性を確保する観点からの第2工夫点のそれぞれについて説明することにする。
<発光出力を確保する観点(第1工夫点)>
図3に示すように、「第2樹脂GOS」における発光出力の厚さ依存性を見ると、例えば、厚さが0.5mm以上1.8mm以下である場合において、「第2樹脂GOS」の発光出力は、「第1GOS」の発光出力よりも高くなる。つまり、「第1GOS」よりも発光出力の大きい「第2GOS」からなる「GOS」粉体にエポキシ樹脂を混合して形成された「第2樹脂GOS」は、「第2GOS」よりも発光出力が低下するものの、セルの厚さを0.5mm以上1.8mm以下の範囲にすることにより、「第1GOS」よりも発光出力を高くすることできることがわかる。つまり、「第2樹脂GOS」から構成されるセルの厚さを0.5mm以上1.8mm以下の範囲に設定すれば、「第2樹脂GOS」の発光出力を「第1GOS」と同等以上にすることができるのである。
次に、図4に示すように、セル自体の密度が小さくなると、発光出力が向上することがわかる。特に、密度を4.4g/cm以上5.0g/cm未満の範囲にすることにより、厚さが1.5mmの「第1GOS」の発光出力を「100パーセント」とした場合に、「125パーセント以上」の発光出力を得ることができることがわかる。
以上のことから、シンチレータ11として、「第2GOS」からなる「GOS」粉体にエポキシ樹脂を混合した「樹脂GOS」を使用することを前提として、セルの厚さを0.5mm以上1.8mm以下の範囲にするとともに、セル自体の密度を4.4g/cm以上5.0g/cm未満の範囲にすることにより、「樹脂GOS」であっても「第1GOS」以上の発光出力を得ることができる。このように、製造コストを低減できる「樹脂GOS」を使用しながらも、厚さの範囲と密度の範囲を上述した範囲に設定することにより、「第1GOS」以上の発光出力を得ることができるのである。すなわち、製造コストを低減できる「樹脂GOS」を使用しながらも発光出力を確保することは、セルの厚さを0.5mm以上1.8mm以下の範囲に設定し、かつ、セル自体の密度を4.4g/cm以上5.0g/cm未満の範囲に設定することにより実現することができる。
<残光特性を確保する観点(第2工夫点)>
上述した第1工夫点は、発光出力を確保する観点からの工夫点である。これに対し、これから説明する第2工夫点は、残光特性を確保する観点からの工夫点である。すなわち、シンチレータ構造体10Aの性能としては、発光出力が大きいだけでなく、残光特性が良好であることも要求される。そこで、まず、残光特性について説明する。
シンチレータ構造体10Aを構成するシンチレータ11は、X線を当てると可視光を発生させる物質である。シンチレータ11において、X線を当てると可視光を発生させるメカニズムは、以下のようなものである。すなわち、シンチレータ11にX線を照射すると、シンチレータ11内の電子がX線からエネルギーを受け取って、エネルギーの低い基底状態からエネルギーの高い励起状態に遷移する。そして、励起状態にある電子は、エネルギーの低い基底状態に遷移する。このとき、励起された電子の大部分は、直ちに基底状態に遷移する。一方、励起された電子のうちの一部の電子は、ある程度の時間が経過した後に基底状態に遷移する。このある程度の時間が経過した後に生じる電子の励起状態から基底状態への遷移によって発生する可視光が残光になる。つまり、残光とは、励起状態から基底状態に遷移するタイミングがX線を照射した時刻からある程度時間が経過後に生じることによって発生する可視光である。そして、この残光が大きいということは、X線を照射してからもある程度の時間経過後まで発生する可視光の強度が大きいことを意味する。この場合、次のX線を照射するときまで前のX線照射で発生した残光が残存することになり、残存した残光はノイズとなる。このことから、残光は小さいことが望ましい。つまり、残光特性が良好であるとは、残光が小さいことを意味する。
ここで、残光特性は、シンチレータ11の種類によって異なる。例えば、図5は、「CWO」の残光特性を示すグラフであり、図6は、「第3樹脂GOS」の残光特性を示すグラフである。また、図7は、「第1樹脂GOS」の残光特性を示すグラフである。
図5~図7において、縦軸は残光の強度を示している一方、横軸は時刻を示している。図5~図7において、時刻経過後において残光の強度が大きいほど残光特性が悪いことを示している。言い換えれば、図5~図7において、時刻経過後において残光の強度が小さいほど残光特性が良好であることを示している。
この点に着目して図5~図7を見ると、図5の残光特性と図6の残光特性はほぼ同等で残光特性が良好である一方、図7の残光特性が悪いことがわかる。つまり、図5に示す「CWO」の残光特性と図6に示す「第3樹脂GOS」の残光特性は、ともに良好である一方、図7に示す「第1樹脂GOS」の残光特性は、悪いことがわかる。
つまり、発光出力の観点からは、上述した工夫点1を実現すると、「第2GOS」>「第2樹脂GOS」>「第1樹脂GOS」>「第1GOS」>「第4樹脂GOS」>「第3樹脂GOS」>「CWO」の関係が成立する領域がある。
これに対し、図5~図7を参照すると、残光特性の観点からは、「CWO」≒「第3樹脂GOS」<「第1樹脂GOS」の関係が成立する。
したがって、例えば、「第1樹脂GOS」と「第3樹脂GOS」と「CWO」に着目すると、発光出力の観点からは、「第1樹脂GOS」が最も優れている。これに対し、残光特性の観点からは、「CWO」および「第3樹脂GOS」が優れているということになる。
このことから、残光特性に優れた「樹脂GOS」を実現するためには、「第2GOS」からなる「GOS」粉体にエポキシ樹脂を混合した「第1樹脂GOS」や「第2樹脂GOS」よりも、「第1GOS」からなる「GOS」粉体にエポキシ樹脂を混合した「第3樹脂GOS」や「第4樹脂GOS」が望ましいことがわかる。ただし、図3に示すように、「第3樹脂GOS」や「第4樹脂GOS」は、「第2樹脂GOS」よりも発光出力が低い。
そこで、「第3樹脂GOS」や「第4樹脂GOS」を採用することにより残光特性を確保しながら、発光出力もできるだけ高くすることが望まれる。この点に関し、図3において、「第1GOS」からなる「GOS」粉体にエポキシ樹脂を混合した「樹脂GOS」を使用することを前提として、セルの厚さを0.3mm以上2.5mm以下の範囲にするとともに、図4の類推からセル自体の密度を4.4g/cm以上5.0g/cm以下の範囲にすることにより、「第2GOS」の発光出力には及ばないものの、「CWO」以上の発光出力を得ることができると考えられる。このように、製造コストを低減できるとともに残光特性の良好な「樹脂GOS」を使用しながらも、厚さの範囲と密度の範囲を上述した範囲に設定することにより、「CWO」以上の発光出力を得ることできる。すなわち、製造コストを低減できるとともに残光特性の良好な「樹脂GOS」を使用しながらも発光出力を確保することは、セルの厚さを0.3mm以上2.5mm以下の範囲に設定し、かつ、セル自体の密度を4.4g/cm以上5.0g/cm以下の範囲に設定することにより実現することができる。
<シンチレータ構造体の製造方法>
続いて、シンチレータ構造体10の製造方法について説明する。
図8は、シンチレータ構造体の製造工程の流れを説明するフローチャートである。
図8において、まず、原料粉末とフラックス成分を所定量秤量して混合した後(S101)、この混合物を坩堝に充填し、1300℃~1400℃の大気炉中で7~9時間焼成することにより(S102)、「GOS」粉体を生成する。そして、「GOS」粉体中に含まれるフラックス成分や不純物を塩酸と温水を使用した洗浄により除去する(S103)。次に、「GOS」粉体にエポキシ樹脂を滴下することにより、「GOS」粉体にエポキシ樹脂を浸み込ませる(S104)。次に、エポキシ樹脂を硬化させた後(S105)、「GOS」粉体と混合していないエポキシ樹脂を除去する(S106)。これにより、「樹脂GOS」からなるシンチレータを形成できる。
続いて、シンチレータが形成された基板をダイシングすることにより、基板を複数のセルに個片化する(S107)。個片化された複数のセルは、再配列された後(S108)、複数のセルを覆うように反射材が塗布される(S109)。そして、シンチレータ構造体10Aとしての不要部を切断した後(S110)、検査をパスしたシンチレータ構造体10Aが出荷される(S111)。
図9は、ダイシング工程から反射材塗布工程までの工程を模式的に示す図である。
図9に示すように、「樹脂GOS」からなるシンチレータが形成された基板WFをダイシングすることにより、基板WFは複数のセルCLに個片化される。そして、個片化された複数のセルCLは、例えば、ライン状に再配列される。その後、ライン状に再配列された複数のセルCLを内包するように外枠FRが配置される。次に、外枠FR内に配置された複数のセルCLを覆うように、例えば、酸化チタンを含有するエポキシ樹脂からなる反射材12を塗布する。その後、外枠FRを除去する。このようにして、シンチレータ構造体10Aが製造される。
なお、図9では、1×n個のセルを使用したライン状のシンチレータ構造体10Aを例に挙げて説明しているが、本実施の形態における技術的思想は、これに限らず、例えば、n×n個のセルを使用したアレイ状(行列状)のシンチレータ構造体にも適用可能である。
<製法上の特徴>
次に、本実施の形態における製法上の特徴点について説明する。
本実施の形態における製法上の特徴点は、シンチレータ11が形成された基板WFをフルカットダイシングすることにより完全に複数のセルCLに個片化した後、個片化した複数のセルCLを再配列し、その後、再配列された複数のセルCLを覆うように反射材12を塗布してシンチレータ構造体10Aを製造する点にある。
これにより、本実施の形態によれば、セル間の間隔を自由に調整できる。
例えば、シンチレータ11が形成された基板WFを途中までハーフダイシングした後、反射材12を塗布し、その後、ハーフダイシングした基板WFを研削して互いに隣り合うセルCLを切り離す技術がある。この技術によれば、互いに隣り合うセルCLの間隔がハーフダイシングの切断幅で決定されるため、互いに隣り合うセルCL間の間隔を精度よく決定することができる。このことは、裏を返せば、この技術では、セルCL間の間隔を自由に変えることができないことを意味する。
この点に関し、例えば、X線検出器のユーザによっては、受光素子であるフォトダイオードを高密度に配置して高精細なX線画像を取得したいユーザもいれば、フォトダイオードを低密度に配置して高精細ではないが広い範囲のX線画像を取得したいユーザもいる。前者の場合、高密度に配置されるフォトダイオードに対応してシンチレータ構造体10Aを構成する複数のセルCLも高密度に配置することが要求される。この場合、セルCL間の間隔を非常に小さくする必要がある。例えば、セルCL間の間隔をハーフダイシングの切断幅よりも小さくする場合、ハーフダイシングを使用した技術では対応できない。一方、後者の場合も、セルCLの間隔をハーフダイシングの幅よりも大きくしたくても、ハーフダイシングを使用した技術では対応できない。このように、ハーフダイシングを利用した技術では、セルCL間の間隔がハーフダイシングのせん断幅で一律に決定されてしまうため、ユーザの要求に合わせてセルCL間の間隔を自由に調整することできない。
これに対し、本実施の形態では、ハーフダイシングではなく、フルカットダイシングしてシンチレータ11が形成された基板WFを複数のセルCLに個片化した後、この個片化した複数のセルCLを再配列している。これにより、本実施の形態によれば、複数のセルCLを再配列する際、互いに隣り合うセルCL間の間隔を自由に設定することができる。
このことから、本実施の形態によれば、セルCL間の間隔をダイシングの切断幅よりも小さくも大きくもできるため、ユーザのニーズに対応したシンチレータ構造体10Aを柔軟に製造することができる利点が得られる。
さらに、本実施の形態によれば、以下に示す利点も得ることができる。すなわち、ハーフダイシングを使用した技術では、最終的に研削工程によってセルCLを切り離す。
この点に関し、本実施の形態では、フルカットダイシングによって複数のセルCLを個片化している。このことから、その後の工程で複数のセルCLを切り離す研削工程が必要なくなる。このことは、複数のセルCLを切り離す研削工程を削減できることを意味する。この結果、本実施の形態におけるシンチレータ構造体10Aの製造方法は、製造工程を簡略化できる利点も得ることができる。
<密着性の向上を図る観点(第3工夫点)>
例えば、上述した製造工程を経ることにより製造された完成品であるシンチレータ構造体10Aに対して、信頼性を確保するために恒温高湿試験が行われる。
ここで、シンチレータ11に「樹脂GOS」を使用したシンチレータ構造体10Aに対して恒温高湿試験を行うと、恒温高湿試験に合格する割合が低下することが確認された。この点に関し、本発明者は、「樹脂GOS」からなるシンチレータ11と反射材12との界面の密着力の低下に起因して、恒温高湿試験に合格する割合が低下することを新規に見出した。そこで、本実施の形態では、シンチレータ構造体10Aの信頼性を向上する観点から、「樹脂GOS」からなるシンチレータ11と反射材12との密着性を向上するための工夫を施している。以下では、この工夫点について説明する。
<<新規な知見>>
まず、本発明者が見出した新規な知見について説明する。
本発明者が見出した新規な知見とは、「樹脂GOS」からなるシンチレータ11を覆うように反射材12を塗布する前に、「樹脂GOS」の表面に対して表面処理を施すと、この表面処理の種類によって、「樹脂GOS」と反射材12との界面における密着力に差が生じるという知見である。そして、「樹脂GOS」と反射材12との界面における密着力に差が生じる要因は、「樹脂GOS」の表面に対する表面処理の種類によって反射材12に対する濡れ性が変化することにあると本発明者は推測している。このことから、反射材12に対する濡れ性を向上できる表面処理を「樹脂GOS」の表面に施すと、「樹脂GOS」と反射材12との界面における密着力を向上できると考えることができる。すなわち、複数のセルCLの表面であって反射材12と接触する表面に表面処理層を形成すると、「樹脂GOS」と反射材12との界面における密着力を向上できると考えられる。例えば、複数のセルCLのそれぞれの少なくとも側面および上面に表面処理層を形成すると密着力を向上できると考えられる。
そこで、様々な表面処理に対して、エポキシ樹脂に対する濡れ性を評価した。
図10は、「樹脂GOS」の表面に様々な表面処理を行った後、「樹脂GOS」の表面にエポキシ樹脂を滴下したときの接触角を比較することにより、エポキシ樹脂に対する濡れ性を評価した結果を示すグラフである。
図10において、様々な表面処理としては、未処理とIPA処理(イソプロピルアルコール処理)と酸化チタン液浸漬処理と純水洗浄処理がある。
図10に示すように、表面処理の相違によって、接触角が異なることがわかる。このことは、表面処理の種類によって、濡れ性に変化があることを意味している。
そして、図10に示す結果から、「樹脂GOS」の表面に酸化チタン液浸漬処理を行った後、「樹脂GOS」の表面にエポキシ樹脂を滴下したときの接触角が最も小さいことがわかる。これは、表面処理として酸化チタン液浸漬処理を実施することにより、エポキシ樹脂に対する濡れ性が最も向上することを意味している。
したがって、エポキシ樹脂に対する濡れ性が最も良好である酸化チタン浸漬処理を実施すると、「樹脂GOS」と反射材12との界面における密着力が高くなると推測される。つまり、図11に示すように、酸化チタン浸漬処理を実施すると、「樹脂GOS」からなるシンチレータ11の表面に酸化チタンが付着することにより濡れ性が向上してシンチレータ11と反射材12との接着面積が増大する結果、「樹脂GOS」からなるシンチレータ11と反射材12との界面における密着力が高くなると考えられる。
以上のことから、「樹脂GOS」からなるシンチレータ11と反射材12との密着性を向上するための工夫点とは、シンチレータ11を覆うように反射材12を塗布する前に、反射材12に対して濡れ性を向上させるための表面処理をシンチレータ11の表面に実施する点である。具体的に、この工夫点は、シンチレータ11を覆うように反射材12を塗布する前に、酸化チタン液浸漬処理をシンチレータ11の表面に実施することで実現される。
<<効果の検証>>
以下では、「樹脂GOS」からなるシンチレータ11を覆うように反射材12を塗布する前に、酸化チタン液浸漬処理をシンチレータ11の表面に実施することにより、シンチレータ11と反射材12との界面における密着力が高くなることを裏付ける検証結果について説明する。
本発明者は、シンチレータ11と反射材12との界面における密着力を抗折試験の破断強度で定量的に比較できることが可能と考え、抗折試験によってシンチレータ11と反射材12との界面における密着力を評価したので、この抗折試験による評価結果について説明する。具体的に、本実施の形態では、「JIS K7171」で規定される3点曲げ試験に準拠した抗折試験で密着力を評価した。例えば、「JIS K7171」に示される図において、以下に示す条件でサンプルが破断する荷重を測定した。
サンプル形状(長さ、厚さ、幅): 50mm×6.2mm×1.2mm
圧子の先端半径(R):0.3mm
支持台コーナーの半径(R):0.3mm
試験片(サンプル)の厚さ(h):6.2mm
試験片(サンプル)の長さ(l):50mm
支点間距離(L):10mm
1.サンプルの作製
図12(a)は、抗折試験で評価するサンプルの作製工程を模式的に示す断面図であり、図12(b)は、抗折試験で評価するサンプルの作製工程を模式的に示す上面図である。
図12(a)に示すように、配列された複数のシンチレータ11を反射材12で覆うように構成されたシンチレータ構造体10Aを用意し、このシンチレータ構造体10Aの上面を研削するとともに、図12(b)に示すように、シンチレータ構造体10Aの2つの側面(長辺側)を研削することにより、サンプルSPを作製する。
そして、このサンプルSPに対して、恒温高湿試験を行う。ここでは、80℃の温水に80分浸漬することで、恒温高湿試験を行う。その後、恒温高湿試験を実施したサンプルSPに対して抗折試験を実施する。
2.抗折試験
図13(a)は、抗折試験の様子を示す断面図であり、図13(b)は、抗折試験の様子を示す上面図である。図13(a)に示すように、圧子NLの先端部は、シンチレータ11と反射材との界面に接触させるとともに、図13(b)に示すように、圧子NLの先端部は、サンプルSPの幅方向の中心に位置するように配置される。
抗折試験では、サンプルSPに対して上部から圧子NLを押し当てて、サンプルSPが破壊されたときの破断強度を測定する。この破断強度が高いほど、シンチレータ11と反射材12との界面における密着力が高いということができる。つまり、抗折試験で測定された破断強度に基づいて、シンチレータ11と反射材12との界面における密着力を評価することができる。以下では、この評価結果について説明する。
なお、抗折試験で使用される測定装置は、例えば、駆動機(FGS-50V-L:SHIMPO製)と張力計(FGC-5:SHIMPO製)から構成される。また、測定に使用されるサンプルにおける測定点は3点であり、サンプルの破断強度は、3点の測定点での平均値で評価される。
3.評価結果
図14は、抗折試験の評価結果を示す図である。
図14(a)は、サンプルSPを形成する前のシンチレータ構造体10Aで施される表面処理の条件を示す表である。図14(a)においては、8つの条件で表面処理を行ったシンチレータ構造体10Aを加工して8つのサンプルSPが作製されている。例えば、「条件1」は、表面処理として、IPA処理→酸化チタン液浸漬処理→純水洗浄を行った後に反射材を塗布する条件を示している。「条件2」は、表面処理として上述した処理を行わず反射材を塗布する条件を示している。
図14(b)は、「条件1」~「条件8」のそれぞれに対応するサンプルSPに対して、抗折試験を実施して測定された破断強度を示すグラフである。図14(b)に示すように、表面処理として、酸化チタン液浸漬処理を行ったサンプルSPの破断強度が高くなっていることがわかる。具体的に、酸化チタン液浸漬処理を行ったサンプルSPにおいては、シンチレータ11と反射材12との界面の破断強度が900gf以上であることがわかる。
この評価結果から、「樹脂GOS」からなるシンチレータ11を覆うように反射材12を塗布する前に、酸化チタン液浸漬処理をシンチレータ11の表面に実施することにより、シンチレータ11と反射材12との界面における密着力が高くなることが裏付けられていることがわかる。
なお、シンチレータ11と反射材12との界面の密着性を向上する観点からは、界面の破断強度が938gf以上であることが望ましく、さらには、1059gf以上であることが望ましく、1182gf以上であることが望ましい。
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
10 シンチレータ構造体
10A シンチレータ構造体
11 シンチレータ
11a 蛍光体
11b 樹脂
20 受光素子
30 加工変質層
100 X線検出器
CL セル
FR 外枠
NL 圧子
SP サンプル
WF 基板

Claims (2)

  1. 複数のセルと、
    前記複数のセルを覆う反射材と、
    を備える、シンチレータ構造体であって、
    前記複数のセルのそれぞれは、樹脂と蛍光体とを含み、
    前記蛍光体は、テルビウムとセリウムを含有するガドリニウム酸硫化物からなり、
    前記複数のセルのそれぞれの密度は、4.4g/cm 以上5.0g/cm 未満であり、
    前記複数のセルのそれぞれの厚さは、0.5mm以上1.8mm以下であり、
    前記複数のセルのそれぞれは、加工変質層を有し、
    前記加工変質層は、機械的な加工工程に起因する機械的ダメージを受けることによって、機械的な加工を施す前よりも光の反射特性が劣化して光が吸収されやすくなる層である、シンチレータ構造体。
  2. それぞれ樹脂および蛍光体を含む複数のセルと前記複数のセルを覆う反射材とを備えるシンチレータ構造体の製造方法であって、
    (a)基板を前記複数のセルに個片化する工程、
    (b)個片化した前記複数のセルを配列する工程、
    (c)配列された前記複数のセルを覆うように前記反射材を形成する工程、
    を有し、
    前記蛍光体は、テルビウムとセリウムを含有するガドリニウム酸硫化物からなり、
    前記複数のセルのそれぞれの密度は、4.4g/cm以上5.0g/cm未満であり、
    前記複数のセルのそれぞれの厚さは、0.5mm以上1.8mm以下である、シンチレータ構造体の製造方法。
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