JPWO2003082987A1 - 高分子組成物 - Google Patents
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Abstract
本発明による難燃性高分子組成物は、高分子と難燃剤とを含む高分子組成物であって、難燃剤は難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含むことを特徴とする。
Description
技術分野
本発明は、毒性が少なく、高分子の本来の性質を損なわない難燃性を有する高分子組成物およびその製造方法に関する。
背景技術
高分子は、木材などと同じく燃えるものに分類される。このため、燃えては都合が悪い用途にはそのままでは使用できず、種々の難燃化が施されている。
なお、本明細書において、高分子(「樹脂」または「プラスチック」ということもある。)は、熱可塑性高分子だけでなく熱硬化性高分子を含むものとし、高分子組成物は、高分子と他の材料(例えば無機充填剤)との混合物を含む。
一般に、高分子の難燃化は、種々の難燃剤を配合するか、高分子の骨格に置換基を導入することによって行われている。また、難燃剤は、ハロゲン系難燃剤とノンハロゲン系難燃剤とに大別される。
ハロゲン系難燃剤については、燃焼時に発生する臭化水素、塩化水素などの酸性ガスによる毒性が従来から指摘されており、さらに最近ではダイオキシンが発生する恐れがあることも問題視されている。このために近年はノンハロゲン系難燃剤が注目されている。
ノンハロゲン系難燃剤としては、金属水酸化物やリン系の難燃剤が挙げられる。例えば水酸化マグネシウムなどのような金属水酸化物は、ハロゲン系難燃剤と比較して燃焼時に発生するガスの毒性は低いものの、難燃性能が劣るといった欠点がある。従って、金属水酸化物を用いて高分子を難燃化するためには、金属酸化物を高分子中に多量に配合しなければならず、高分子の性質を損なうという問題が生じている。
また、ノンハロゲン系難燃剤としてトリアジン化合物の硫酸塩を熱可塑性高分子に配合した難燃性高分子組成物が特開平8−48812号公報に開示されている。しかし、この組成物は、かなりの燃焼抑制効果を示すものの難燃性が十分ではなく、さらに良好な難燃性を有する難燃剤および難燃性高分子組成物の開発が望まれている。
また、地球規模の環境問題の観点からは、石油などの資源枯渇や、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルできない高分子の廃棄処理時の焼却による地球温暖化がますます深刻化しており、生分解性高分子の開発が進んでいる。特に、石油などの化石資源を使用せずバイオマスを原料とする生分解性高分子の開発が盛んに行われつつある。その中でも、とうもろこしや芋など比較的短いサイクル(例えば1年)で大気中の二酸化炭素を固定化した植物起源のバイオマスを用いると、焼却によって炭酸ガスが発生しても固定化されるサイクルが短いので、長期的には地球温暖化に寄与しないという利点があるので注目されている。
上述したように、ダイオキシンなど有毒ガスの発生がなく、高分子の特性を損なわずに、且つ、十分な難燃性を有する難燃剤および難燃性高分子を開発することが望まれている。更に、これまで、バイオマスを原料として難燃剤を製造する、あるいは、難燃剤そのものに生分解性を付与するという視点での技術開発がなされていなかった。
発明の開示
本発明は上記諸点に鑑みてなされたものであり、本発明の主な目的は、毒性が少なく、地球環境にやさしい難燃性を有する高分子組成物およびその製造方法を提供することにある。
本発明の高分子組成物は、高分子と難燃剤とを含む高分子組成物であって、前記難燃剤は難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含むことを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。
前記難燃性化合物は、加熱された時に、吸熱分解反応、ラジカル化合物生成反応、不活性ガス生成反応、不燃物生成反応でなる反応種群から選ばれる少なくとも1つの反応を発現する化合物であることが好ましい。
ある実施形態において、前記重合体の熱分解温度は、100℃よりも高く且つ前記高分子の熱分解温度よりも低い。
ある実施形態において、前記重合体の熱分解温度は300℃超550℃未満の範囲にある。
ある実施形態において、前記重合体の融点または軟化温度は、前記高分子の軟化温度以下である。
ある実施形態において、前記高分子100重量部に対して、前記重合体を5重量部以上50重量部以下の比率で含む。
ある実施形態において、前記重合体は、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する。
ある実施形態において、前記複素環状化合物は、ヒダントイン、ジメチルヒダントイン、トリアジン、ジアミノトリアジン、アセトグアナミン、アミノトリアゾール、アミノピリジン、イソシアヌル酸、イミダゾール、メチルイミダゾール、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ピラジン、メラミン、核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
ある実施形態において、前記重合体は付加重合体である。
ある実施形態において、前記付加重合体における重合性基は、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基からなる群から選択された少なくとも1種を含む。
ある実施形態において、前記高分子は生分解性高分子を含む。
ある実施形態において、前記高分子は植物起源の原料から製造された高分子である。
ある実施形態において、前記高分子はポリ乳酸系高分子である。
ある実施形態において、前記高分子はポリスチレンを含む。
ある実施形態において、前記高分子は不飽和ポリエステルを含む。
ある実施形態において、熱可塑性を有し射出成形され得る。
本発明による高分子組成物からなる成形体は、上記のいずれかにの高分子組成物からなることを特徴とする。
ある実施形態において、前記成形品は、前記難燃性化合物を表面近傍に内部よりも高い密度で含む。
本発明による成形体は、電気機器用筐体に好適に用いられる。
本発明による難燃性を有する高分子組成物の製造方法は、高分子と、難燃性化合物を含む重合性化合物とを用意する工程と、前記高分子と前記重合性化合物とを加熱しながら混合し、前記難燃性化合物を側鎖に有する重合体を生成する工程とを包含することを特徴とする。
ある実施形態において、前記難燃性化合物は、加熱された時に、吸熱分解反応、ラジカル化合物生成反応、不活性ガス生成反応、不燃物生成反応でなる反応種群から選ばれる少なくとも1つの反応を発現する化合物である。
ある実施形態において、前記重合性化合物は、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を含む。
ある実施形態において、前記高分子は生分解性高分子を含む。
ある実施形態において、前記高分子はポリスチレンを含む。
ある実施形態において、前記高分子はゴム混入ポリスチレンであって、前記重合性化合物はビニルジアミノトリアジンである。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の説明において、実施例および比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
本発明者は、毒性が少なく、地球環境にやさしい難燃性を有する高分子組成物を提供することを目的に、特に、バイオマスを原料として難燃剤を製造する、あるいは、難燃剤そのものに生分解性を付与するという視点から研究開発を行い本発明に想到した。
本発明による難燃性高分子組成物は、高分子と難燃剤とを含む高分子組成物であって、難燃剤は難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含む。
本発明による難燃性高分子組成物は、難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含み、この重合体は、難燃性化合物そのもののよりも高分子に対する分散性が低いので、均一に分散し難く、例えば、射出成形などの成形工程において、表面近傍(スキン層と言われることもある)に内部よりも高い密度で存在するので、従来よりも高い難燃効果を得ることができる。すなわち、本発明の高分子組成物においては、難燃剤が難燃効果を発揮する表面近傍により多く存在しているので、従来よりも少ない配合量で従来と同等以上の難燃性を得ることができる。また、難燃性化合物の重合体なので、難燃性化合物をそのまま(低分子で)用いるよりも、高分子の特性(機械特性)を低下させ難い。これは、所望の難燃性を得るための配合量を減らせること、および/または分子量が大きいことによって得られる。
難燃性重合体の分子量は、好ましくは300〜100,000、さらに好ましくは500〜10,000である。分子量が大きいほうが、高分子への分散性が低下する傾向にある。そのため、低分子での均一分散に比べて、混練後あるいは成形後においては、表面付近においてはスキン層を形成するために難燃性重合体の濃度が高くなり、難燃性の効果は高くなる。しかしながら、分子量が大きすぎると、難燃性重合体の分散性が低下し、難燃性重合体の凝集による機械特性の低下や成形品の表面の平滑性の低下、あるいは成形性の低下が起こることがある。そのため、難燃性重合体の分子量は、300〜100,000であることが好ましい。
また、難燃性重合体における難燃性化合物(好ましくは、後述ウする窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物)を含む側鎖の分子量は、500以下が好ましい。さらに好ましくは、350以下である。側鎖の分子量が大きくなると、重合体に高分子反応によって側鎖を結合させる場合においても、重合性化合物(典型的には単量体)と側鎖を結合させてから重合させる場合においても、反応性は低下し、収率は低下する。そのため、側鎖の分子量は、500以下が好ましい。
また、難燃性重合体の側鎖の構造によっても、側鎖を結合させる際の反応性が影響される。例えば、難燃性化合物として窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を用いる場合、ヌクレオチドのリン酸の数が増えれば、その分嵩高くなり、立体障害効果により反応性は低下する。しかし、リン酸部位が多いほうが、ポリリン酸形成能が高まり、難燃効果が高い。従って、難燃性化合物としてヌクレオチドを用いる場合には、一リン酸および三リン酸よりも、二リン酸が最も効果的である。
本発明の高分子組成物における難燃剤が含む重合体を形成する重合方法は、付加重合、縮合重合、重付加、付加縮合、開環重合などが挙げられる。付加重合の場合は、ビニル、アリル、アクリル、メタクリルなどの付加重合性基を有した単量体による重合である。縮合重合の場合は、酸とアルコールによるエステル重合、アルコール同士のエーテル重合、酸とアミンのアミド(ナイロン)重合などが挙げられる。重付加は、イソシアナート基とアルコールによるウレタン重合や、ジイソシアナートとジアミンの尿素重合などが挙げられる。また、付加縮合は、付加反応と縮合反応の繰り返しによる重合であり、フェノールとホルムアルデヒドによるフェノール樹脂形成に見られる重合や、尿素あるいはメラミンと、ホルムアルデヒドによる重合反応が挙げられる。開環重合は、ラクトンやラクタム、環状エーテルや環状ホルマールなどによる環の開裂、生長反応による重合である。
いずれの重合反応を利用する場合でも、難燃性化合物を側鎖に重合体は、高分子と混合する前に調製(合成)してもよいし、高分子と混合(例えば加熱混練)する過程で、重合性化合物(例えば難燃性単量体)を重合することによって生成してもよい。勿論、両者を併用することもできる。
難燃剤として用いる難燃性重合体の側鎖として含まれる難燃性化合物は、公知の化合物から適宜選択されるが、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物が好ましい。
窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物としては、ヒダントイン、ジメチルヒダントイン、トリアジン、ジアミノトリアジン、アセトグアナミン、アミノトリアゾール、アミノピリジン、イソシアヌル酸、イミダゾール、メチルイミダゾール、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ピラジン、メラミン、核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
後に具体的な実施例を例示するように、これら窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する重合体は窒素原子を含有しているので、従来から難燃剤として使用されている窒素含有化合物、例えば、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素およびチオ尿素と同様に難燃作用を発揮する。
特に、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物は含窒素複素環を有しているので、高温に晒されたとき、吸熱分解することによって高分子の熱分解を抑え燃焼の燃料供給を断つと共に、且つ、高分子の周囲に不活性な雰囲気(窒素ガス雰囲気)を形成することによって酸素との接触機会を低下させ、難燃化する作用が高いと考えられる。
また、難燃性重合体の融点あるいは軟化点は、高分子組成物の成形温度以下であることが好ましい。高分子組成物の成形時に、難燃性重合体が、液滴または移動容易な状態であり、より表面付近に局在するので、難燃効果がさらに高まる。
難燃性重合体として、付加重合体を利用する場合、重合性基は、ビニル、アリル、アクリル、メタクリルからなる群から選択された少なくとも1種をあげることができる。付加重合体を用いると射出成形に適した高分子組成物に好適に用いられ、さらに、加熱・混練工程において生成させることも容易にできる。
上記窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物のうち、核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドは、いずれも生物起源の物質であり、且つ、生分解性を有する。従って、石油などの化石燃料から合成される化合物と異なり、バイオマスを原料として製造され、且つ、生分解性を有する地球環境に優しい材料である。
なお、本発明に高分子組成物が含有する難燃剤は、上記難燃性化合物を側鎖に含む重合体の他に従来の難燃剤を含んでも良いが、本発明の効果を得るためには、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する重合体のみを難燃剤として用いることが好ましい。
上記高分子組成物の難燃剤として好適に作用するためには、難燃性化合物は、加熱された時に、吸熱分解反応、ラジカル化合物生成反応、不活性ガス生成反応、不燃物生成反応でなる反応種群から選ばれる少なくとも1つの反応を発現する化合物であることが好ましく、これらの反応を発現する温度(すなわち熱分解温度)は、高分子組成物の加工温度(成形温度など)よりも高く、高分子の熱分解温度よりも低いことが好ましい。
本発明による高分組成物は、配合される高分子の特性に応じて、シート、フィルムや筐体など、種々の形態の成形品に加工することが可能であり、また、成形材料に限られず、接着剤、塗料やパテなどの材料として用いることができる。一般的な高分子の加工温度は約100℃以上約300℃以下であり、また、一般な高分子材料は燃焼するときに約400℃以上約550℃以下の温度(熱分解温度に相当する)に到達する。従って、難燃性重合体は、配合される高分子の種類および/または加工温度に応じて、所望の熱分解温度を有する難燃性重合体を用いればよい。すなわち、熱分解温度が100℃超550℃未満の難燃性重合体を用途に応じて適宜用いることができる。
本発明の高分子組成物は、特に難燃性が要求される、例えば電気機器(電子機器や電子部品などを含む)の用途において、その利点が発揮される。また、本発明による難燃性重合体は、高分子の機械特性を大きく低下させることなく、難燃性を付与することができるので、筐体などのバルク成形品の材料として好適に用いられる。
これらの用途の高分子組成物を構成する高分子としては、加工温度(成形温度)が、約250℃以上約300℃以下である高分子(典型的には従来のいわゆる汎用エンジニアリングプラスチック(ここでいう「プラスチック」は狭義のプラスチックであり、熱可塑性樹脂を指す。)が用いられており、これらの高分子の加工中に熱分解が起こらないように、難燃性重合体の熱分解温度は約300℃よりも高いことが好ましい。従って、熱分解温度が約300℃超550℃未満の難燃性重合体を用いることによって、本発明の利点が特に発揮される。
なお、本明細書における熱分解温度は、熱重量計(TG)を用いて、窒素雰囲気下において10℃/分の昇温条件で重量変化を測定し、重量減少10%に到達した温度を熱分解温度とする。
本発明の高分子組成物における高分子と難燃性重合体との配合組成は、高分子および難燃性重合体の種類および最終的な製品に要求される特性(例えば、難燃性や機械特性)に依存するが、一般に、高分子100重量部に対して、上記難燃性重合体を5重量部以上50重量部以下の比率で含むことが好ましい。難燃性重合体は、典型的には粉末状をとるので、嵩密度が小さく重量の比率に比べ体積効果(あるいは表面積効果)が大きいため、比較的少量から難燃作用を発揮し得るが、難燃効果を確実に得るためには5重量部以上配合することが好ましく、10重量部以上配合することが更に好ましい。一方、難燃性重合体の配合量が50重量部を超えると、高分子の特性(例えば機械特性)が低下し過ぎることがある。特に、バルク成形品の用途等において高分子の物性の低下を抑制するためには、難燃性重合体の配合量は100重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることが更に好ましい。
以下、難燃性重合体の側鎖を構成する難燃性化合物として用いられる窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物の好適例である核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドの具体例を示す。
核酸塩基とは、良く知られているようにペントースおよびリン酸と共に核酸を構成する物質である。アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミンおよびヒポキサンチンを好適に用いることができる。また、これらの核酸塩基の硫酸塩、硝酸塩、硼酸塩、塩酸塩ならびにイソシアヌル酸塩も好適に用いられる。例えば、アデニン硫酸塩、グアニン塩酸塩、グアニン硫酸塩などを例示することができる。
また、ヌクレオシドとしては、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、チミジン、イノシンを例示することができる。
ヌクレオチドとしては、例えば、アデニル酸、グアニル酸、シチジル酸、ウリジル酸、チミジル酸、イノシン酸を好適に用いることができる。また、ヌクレオチドの金属塩としては、5’−アデニル酸ナトリウム塩、アデノシン三リン酸ナトリウム塩、5’−グアニル酸ナトリウム塩、5’−ウリジル酸ナトリウム塩、5’−イノシン酸ナトリウム塩を例示することができる。
上記核酸塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチドの窒素原子に結合した水素原子を、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アルコキシ基またはメルカプト基に置換した化合物も難燃性を有する。このような化合物として、2−メチルアデニン、6−ジエチルアデニン、6−アリルアデニンなどを使用することもできる。
ここで、炭素数1〜4のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等を挙げることができる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げることができる。なお、炭素数があまり多いと難燃性が低下することがある。
上述したように、特にバルク成形品用の高分子組成物に用いられる難燃性重合体は、300℃超550℃未満の熱分解温度を有していることが好ましく、このような窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物として、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、およびチミンを例示することができる。なお、熱分解温度は、リガク製の熱分析装置TAS100(TG/DTA・DSC)を用いて、窒素雰囲下、10℃/分の昇温条件における重量減が10%に到達した温度とした。
ヌクレオチド、またはヌクレオチドの窒素原子に結合した水素原子を、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アルコキシ基、およびメルカプト基からなる群から選択された原子団(基)に置換された化合物は、リン酸を構成単位として有しており、これらの化合物は高温下に晒された時にポリリン酸化合物を生成して、耐熱性の皮膜を形成することにより、および/または、固体酸による炭化促進機構により、難燃効果を示すと考えられる。従って、これら化合物は、リン酸による難燃作用と含窒素複素環による難燃作用と有するので、より大きい効果が期待できる。
本発明の高分子組成物に使用される高分子には、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン、ポリウレタン、PPS樹脂などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂など汎用の高分子を用いることができるが、生分解性高分子を用いることが好ましい。本発明のうち、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物の好適例である核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドを含む難燃性重合体と生分解性高分子とを用いることによって、生分解性の高分子組成物を得ることができるので、酵素および/または微生物による分解を利用して廃棄処理することが可能で、また、地中に埋設しても分解され、自然の物質循環に組み込まれ得る。
生分解性高分子には、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトンのようなラクトンの開環重合により得られる重合体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸のようなヒドロキシ酸の重合体、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートのようなグリコールと脂肪族ジカルボン酸とからなる共重合体、ポリカプロラクトンジオールやポリカプロラクトントリオールのような末端に官能基を有する重合体、3−ヒドロキシプロピオナート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバリレート、3−ヒドロキシオクタノエートのような微生物の発酵により得られるポリエステルなどを好適に用いることができる。
生分解性高分子のなかでも比較的短いサイクル(例えば1年)で大気中の二酸化炭素を固定化した植物起源のバイオマスを用いて製造される高分子が特に好ましい。これらの高分子は、化石資源を必要としない上に、焼却によって炭酸ガスが発生しても固定化されるサイクルが短いので、長期的には地球温暖化に寄与しないという利点がある。このような高分子として、例えば、トウモロコシ、サツマイモなどの主成分であるでんぷんや、草木や稲わらの主成分であるセルロース、あるいはその構成単位であるグルコースなどの糖類を原料とする高分子であり、ポリ乳酸や酢酸セルロースを例示することができる。
本発明に用いられる窒素含有複素環を側鎖に有する重合体は、高温下に晒された時、窒素含有複素環を側鎖部分が吸熱分解して配合される高分子から熱を奪い且つ不活性な雰囲気を形成するために、高分子の難燃効果を示す難燃性重合体である。窒素含有複素環を側鎖に有する単量体としては、アリルハイダントイン、ビニル−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジンが挙げられ、窒素含有複素環としては、トリアジンや、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチドから選ばれる核酸塩基類を由来とすることができる。アリルアデニン、アリルアデノシン、アリルイノシン、メタクリル酸とアデニンあるいはアデノシンとのアミド化合物などがその例である。
また、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体を重合してポリマを形成してから高分子に混ぜても良いし、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体を高分子に混ぜる過程で加熱混練して、この単量体の重合を促進しても良い。単量体で混ぜ始め混練時に重合させることによって、混練時初期には良好なブレンドとなって混入が容易になるが、混練時あるいは成形時の加熱によって、重合し高分子から相分離して分散性が低下し、スキン層となって表目付近に位置する確率が高まり、難燃効果としては増大することになる。
また、本発明の高分子組成物は、母材である高分子と、難燃剤の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の添加剤成分を含有しても良い。
それらの例としては、酸化防止剤(フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、耐候剤(ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系など)、金属不活性剤、ハロゲン捕捉剤、滑剤(オレフィン、脂肪酸およびその誘導体など)、結晶化核剤(金属塩、タルク、ソルビトール系など)、充填剤(タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、マイカなど)、ブルーミング防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、粘着剤、着色剤、艶消し剤、帯電防止剤、酸素や炭酸ガスの吸収剤、ガス吸着剤、鮮度保持剤、酵素、消臭剤、香料等が挙げられる。
本発明の高分子組成物は、原料成分を配合した後に混合および溶融混練することにより得られる。各成分の配合順序、混練方法などは特に限定されない。例えば、ニーダ、ミキシングロール、タンブラー式ブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサーなどを用いて常法により行えば良い。また、溶融混練の方法も特に限定されず、例えば、スクリュー押出機、加熱式ニーダ、バンバリーミキサー、加熱ミキシングロールなどを使用して、熱可塑性樹脂の融点以上の温度で行うのが良い。この溶融混練は窒素ガスなどの不活性気流下で行うこともできる。
本発明の高分子組成物は、難燃性が求められるさまざまなバルク成形品に好適に用いられる。そのような成形品の例としては、各種電気製品(洗濯機、冷蔵庫、食器乾燥機、炊飯器、扇風機、換気扇、テレビ、パソコン、ステレオ、電話、電子レンジ、暖房便器、アイロンなど)の部品およびカバー;光熱機器(エアコン、ストーブ、コンロ、ファンヒーター、給湯機など)の部品およびカバー;建築物の内装材および外装材;自動車、船舶、航空機などの部品または内装材、などを挙げることができる。
以下、本発明による実施例および比較例を説明する。
[実施例1〜7および比較例1〜10]
まず、本発明による高分子組成物の実施例1〜7と、従来の難燃剤を分散した高分子組成物の比較例1〜10の試料を作製した。それぞれの試料の配合比を表1および表2に示す。
熱可塑性高分子を用いた高分子組成物については、それぞれ高分子の溶融温度以上に加温して難燃剤と混合して作製した。得られた高分子組成物をペレタイズしたものを射出成形機によって成形した。成形の標準の条件を、金型温度60℃、射出圧力80MPa、射出時間10秒(冷却時間40秒)、射出速度40mm/secとし、材料によって調整しながら成形を行った。また、難燃性試験用の試験片として、圧縮成形法(加圧4.9MPa)により、12.7mm×3mm×127mmの短冊状試験片を作製した。また、熱硬化性高分子を用いた高分子組成物については、プレプリグ状態で難燃剤と混合した後に、加熱硬化して試験片を作製した。
難燃性試験は、上記試験片を用いて、UL94安全規格「機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験」に従って行った。燃焼試験として、水平燃焼試験94HB(参照規格ASTM−D635)と、20mm垂直燃焼試験94V(参照規格ASTM−D3801)とを行った。
94HB試験において、75mmの区間での燃焼速度が1分あたり40mmを超えない場合、または、75mmに達する前に燃焼が止まる場合に、94HBに分類した(表中では「HB」と表記)。
94V試験において、5枚の試験片について、いずれの残炎時間も10秒以下である場合、全ての試験片の残炎時間の合計が50秒以下である場合、あるいは、各試験片の接炎後の残炎時間と残燼時間との合計が30秒以下である場合に、94V0に分類した(表中では「V−0」と表記)。
なお、実施例1および5の難燃剤であるアリルヒダントインと、実施例2および6の難燃剤であるビニル−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジンは関東化学株式会社から市販されているものを用いた。実施例3、4および7の難燃性単量体(モノマ)は以下のようにしてそれぞれ合成した。
実施例3:アデニン(例えばヤマサ醤油株式会社製)5.35gと、水酸化ナトリウム3.2gを水100mlに加え溶解液1を得る。また、塩化メタクリロイル(例えば和光純薬工業株式会社製)4.23gをクロロフォルム100mlに溶かし溶解液2を得る。溶解液1を強力に攪拌する。これに滴下漏斗を通して一度に溶解液2を加える。すると直ちに微粉状のモノマが析出した。これを濾過してよく水洗いをし、次いでよくメタノールで洗浄し、60℃にて減圧乾燥し、モノマを得た。これをKBr錠剤法により赤外吸収を確認したところ、アミド結合による吸収波長を確認することができた。このモノマは、メタクリル酸−アデニンであり、実施例3の難燃性重合体のモノマとして用いた。
実施例4:アデノシン(例えばヤマサ醤油株式会社製)10.60gと、水酸化ナトリウム3.2gを水100mlに加え溶解液3を得る。また、塩化メタクリロイル4.23gをクロロフォルム100mlに溶かし溶解液4を得る。溶解液3を強力に攪拌する。これに滴下漏斗を通して一度に溶解液4を加える。すると直ちに微粉状のモノマが析出した。これを濾過してよく水洗いをし、次いでよくメタノールで洗浄し、60℃にて減圧乾燥し、モノマを得た。これをKBr錠剤法により赤外吸収を確認したところ、アミド結合による吸収波長を確認することができた。このモノマは、メタクリル酸−アデノシンであり、実施例4の難燃性重合体のモノマとして用いた。
実施例7:アデニン5.35gと、水酸化ナトリウム3.2gを水100mlに加え溶解液5を得る。また、アリルクロライド3.09gをクロロフォルム100mlに溶かし溶解液6を得る。溶解液5を強力に攪拌する。これに滴下漏斗を通して一度に溶解液6を加える。すると直ちに微粉状のモノマが析出した。これを濾過してよく水洗いをし、次いでよくメタノールで洗浄し、60℃にて減圧乾燥し、モノマを得た。これをKBr錠剤法により赤外吸収を確認したところ、アミド結合による吸収波長を確認することができた。このモノマは、アリルアデニンであり、実施例7の難燃性重合体のモノマとして用いた。
上記の実施例1〜7および比較例1〜10の高分子組成物は、成形性や機械強度などの基本物性については、ほとんど変わりなかった。
一方、難燃性についてみると、本発明の実施例1〜7の高分子組成物は全て、V−Oに相当する難燃グレードを有していたのに対し、比較例の高分子組成物は、ハロゲン系難燃剤であるテトラブロモビスフェノールAを用いた比較例6と、特許文献1に記載されている難燃剤を100重量部配合した比較例9および10とがV−Oであったが、その他の配合ではHBグレードであった。本発明の実施例の高分子組成物はいずれも難燃性重合体を30重量部以下しか配合していないにも拘わらず、優れた難燃性を示すことがわかる。
また、実施例3から7の難燃性重合体は、バイオマスを原料(核酸関連物質)とするものであり、地球環境に優しい材料である。さらに、実施例5から7の高分子組成物は、高分子もバイオマスを原料とする高分子であり、難燃剤を含む高分子組成物がバイオマスから構成されており、地球環境にとっては理想的な材料である。
[実施例8〜9]
上記の実施例1〜7では、難燃性単量体を高分子と加熱混練しながら重合させることによって難燃性重合体を生成した例を示したが、予め難燃性重合体を調製した後、高分子と混合(混練)してもよい。
ここでは、下記の表3に示すように、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体を付加重合して得られた難燃性重合体を高分子と混合した場合(実施例8)と、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体(重合性化合物)と高分子とを加熱混練しながら難燃性重合体を生成した場合(実施例9)とを比較する。高分子としては、ゴム混入ポリスチレンであるハイインパクトポリスチレンを用いた。
表3の結果からわかるように、実施例8の高分子組成物も優れた難燃性を有している。但し、コーンカロリメータによって測定した最高発熱速度を比較すると、実施例8よりも実施例9の高分子組成物の方が最高発熱速度が遅く、難燃性に優れていることがわかる。これは、重合性の難燃性化合物を高分子と加熱混練しながら重合させた方が、難燃性重合体が成形体の表面近傍に偏在しやすいためと考えられる。実施例8、実施例9、および難燃剤を加えないハイインパクトポリスチレンの成形体の外観を比較すると、難燃剤なし、実施例8、実施例9の順に、表面の滑らかさが増え、また表面の白色度合いも同様にこの順に高くなる。このことからも、表面における難燃性重合体の含有率が実施例9の方が実施例8よりも高いと考えられる。また、実施例9の方が難燃性重合体が微細に分散しているために、難燃性をさらに向上させていると考えられる。
なお、本発明による難燃性高分子組成物の構成および製造方法は、本実施例に限定されることはなく、例えば、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカなどのフィラーや、ガラス繊維、炭素繊維などの強化剤、その他、増粘剤、離型剤、着色剤などを混合していても良い。
また、上記の実施例では、板状に成形した例を用いたが、これに限定されることなく、その他の形状を有する成形体、および塗料、パテ、接着剤などであっても良い。
産業上の利用可能性
本発明によると、毒性が少なく、地球環境にやさしい難燃性を有する高分子組成物およびその製造方法が提供される。本発明によると、従来よりも難燃剤の配合量を減らしながら従来と同等以上の難燃性を有する高分子組成物が得られるだけでなく、バイオマスを原料とする重合体を難燃剤として用いることによって、資源枯渇や地球温暖化に寄与しない難燃剤およびこれを用いた高分子組成物が提供される。
なお、本発明の高分子組成物は、トランスファー成形や、圧縮成形、射出成形などによって成形加工することができる。
また、本発明の高分子組成物から得られる最終成形品は、家具、雑貨のような家庭用品、建設資材、土木資材、輸送機器のボディや部品、住宅機器、化粧板、装飾品などの様々な分野で使用され得る。
本発明は、毒性が少なく、高分子の本来の性質を損なわない難燃性を有する高分子組成物およびその製造方法に関する。
背景技術
高分子は、木材などと同じく燃えるものに分類される。このため、燃えては都合が悪い用途にはそのままでは使用できず、種々の難燃化が施されている。
なお、本明細書において、高分子(「樹脂」または「プラスチック」ということもある。)は、熱可塑性高分子だけでなく熱硬化性高分子を含むものとし、高分子組成物は、高分子と他の材料(例えば無機充填剤)との混合物を含む。
一般に、高分子の難燃化は、種々の難燃剤を配合するか、高分子の骨格に置換基を導入することによって行われている。また、難燃剤は、ハロゲン系難燃剤とノンハロゲン系難燃剤とに大別される。
ハロゲン系難燃剤については、燃焼時に発生する臭化水素、塩化水素などの酸性ガスによる毒性が従来から指摘されており、さらに最近ではダイオキシンが発生する恐れがあることも問題視されている。このために近年はノンハロゲン系難燃剤が注目されている。
ノンハロゲン系難燃剤としては、金属水酸化物やリン系の難燃剤が挙げられる。例えば水酸化マグネシウムなどのような金属水酸化物は、ハロゲン系難燃剤と比較して燃焼時に発生するガスの毒性は低いものの、難燃性能が劣るといった欠点がある。従って、金属水酸化物を用いて高分子を難燃化するためには、金属酸化物を高分子中に多量に配合しなければならず、高分子の性質を損なうという問題が生じている。
また、ノンハロゲン系難燃剤としてトリアジン化合物の硫酸塩を熱可塑性高分子に配合した難燃性高分子組成物が特開平8−48812号公報に開示されている。しかし、この組成物は、かなりの燃焼抑制効果を示すものの難燃性が十分ではなく、さらに良好な難燃性を有する難燃剤および難燃性高分子組成物の開発が望まれている。
また、地球規模の環境問題の観点からは、石油などの資源枯渇や、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルできない高分子の廃棄処理時の焼却による地球温暖化がますます深刻化しており、生分解性高分子の開発が進んでいる。特に、石油などの化石資源を使用せずバイオマスを原料とする生分解性高分子の開発が盛んに行われつつある。その中でも、とうもろこしや芋など比較的短いサイクル(例えば1年)で大気中の二酸化炭素を固定化した植物起源のバイオマスを用いると、焼却によって炭酸ガスが発生しても固定化されるサイクルが短いので、長期的には地球温暖化に寄与しないという利点があるので注目されている。
上述したように、ダイオキシンなど有毒ガスの発生がなく、高分子の特性を損なわずに、且つ、十分な難燃性を有する難燃剤および難燃性高分子を開発することが望まれている。更に、これまで、バイオマスを原料として難燃剤を製造する、あるいは、難燃剤そのものに生分解性を付与するという視点での技術開発がなされていなかった。
発明の開示
本発明は上記諸点に鑑みてなされたものであり、本発明の主な目的は、毒性が少なく、地球環境にやさしい難燃性を有する高分子組成物およびその製造方法を提供することにある。
本発明の高分子組成物は、高分子と難燃剤とを含む高分子組成物であって、前記難燃剤は難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含むことを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。
前記難燃性化合物は、加熱された時に、吸熱分解反応、ラジカル化合物生成反応、不活性ガス生成反応、不燃物生成反応でなる反応種群から選ばれる少なくとも1つの反応を発現する化合物であることが好ましい。
ある実施形態において、前記重合体の熱分解温度は、100℃よりも高く且つ前記高分子の熱分解温度よりも低い。
ある実施形態において、前記重合体の熱分解温度は300℃超550℃未満の範囲にある。
ある実施形態において、前記重合体の融点または軟化温度は、前記高分子の軟化温度以下である。
ある実施形態において、前記高分子100重量部に対して、前記重合体を5重量部以上50重量部以下の比率で含む。
ある実施形態において、前記重合体は、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する。
ある実施形態において、前記複素環状化合物は、ヒダントイン、ジメチルヒダントイン、トリアジン、ジアミノトリアジン、アセトグアナミン、アミノトリアゾール、アミノピリジン、イソシアヌル酸、イミダゾール、メチルイミダゾール、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ピラジン、メラミン、核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
ある実施形態において、前記重合体は付加重合体である。
ある実施形態において、前記付加重合体における重合性基は、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基からなる群から選択された少なくとも1種を含む。
ある実施形態において、前記高分子は生分解性高分子を含む。
ある実施形態において、前記高分子は植物起源の原料から製造された高分子である。
ある実施形態において、前記高分子はポリ乳酸系高分子である。
ある実施形態において、前記高分子はポリスチレンを含む。
ある実施形態において、前記高分子は不飽和ポリエステルを含む。
ある実施形態において、熱可塑性を有し射出成形され得る。
本発明による高分子組成物からなる成形体は、上記のいずれかにの高分子組成物からなることを特徴とする。
ある実施形態において、前記成形品は、前記難燃性化合物を表面近傍に内部よりも高い密度で含む。
本発明による成形体は、電気機器用筐体に好適に用いられる。
本発明による難燃性を有する高分子組成物の製造方法は、高分子と、難燃性化合物を含む重合性化合物とを用意する工程と、前記高分子と前記重合性化合物とを加熱しながら混合し、前記難燃性化合物を側鎖に有する重合体を生成する工程とを包含することを特徴とする。
ある実施形態において、前記難燃性化合物は、加熱された時に、吸熱分解反応、ラジカル化合物生成反応、不活性ガス生成反応、不燃物生成反応でなる反応種群から選ばれる少なくとも1つの反応を発現する化合物である。
ある実施形態において、前記重合性化合物は、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を含む。
ある実施形態において、前記高分子は生分解性高分子を含む。
ある実施形態において、前記高分子はポリスチレンを含む。
ある実施形態において、前記高分子はゴム混入ポリスチレンであって、前記重合性化合物はビニルジアミノトリアジンである。
発明を実施するための最良の形態
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の説明において、実施例および比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
本発明者は、毒性が少なく、地球環境にやさしい難燃性を有する高分子組成物を提供することを目的に、特に、バイオマスを原料として難燃剤を製造する、あるいは、難燃剤そのものに生分解性を付与するという視点から研究開発を行い本発明に想到した。
本発明による難燃性高分子組成物は、高分子と難燃剤とを含む高分子組成物であって、難燃剤は難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含む。
本発明による難燃性高分子組成物は、難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含み、この重合体は、難燃性化合物そのもののよりも高分子に対する分散性が低いので、均一に分散し難く、例えば、射出成形などの成形工程において、表面近傍(スキン層と言われることもある)に内部よりも高い密度で存在するので、従来よりも高い難燃効果を得ることができる。すなわち、本発明の高分子組成物においては、難燃剤が難燃効果を発揮する表面近傍により多く存在しているので、従来よりも少ない配合量で従来と同等以上の難燃性を得ることができる。また、難燃性化合物の重合体なので、難燃性化合物をそのまま(低分子で)用いるよりも、高分子の特性(機械特性)を低下させ難い。これは、所望の難燃性を得るための配合量を減らせること、および/または分子量が大きいことによって得られる。
難燃性重合体の分子量は、好ましくは300〜100,000、さらに好ましくは500〜10,000である。分子量が大きいほうが、高分子への分散性が低下する傾向にある。そのため、低分子での均一分散に比べて、混練後あるいは成形後においては、表面付近においてはスキン層を形成するために難燃性重合体の濃度が高くなり、難燃性の効果は高くなる。しかしながら、分子量が大きすぎると、難燃性重合体の分散性が低下し、難燃性重合体の凝集による機械特性の低下や成形品の表面の平滑性の低下、あるいは成形性の低下が起こることがある。そのため、難燃性重合体の分子量は、300〜100,000であることが好ましい。
また、難燃性重合体における難燃性化合物(好ましくは、後述ウする窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物)を含む側鎖の分子量は、500以下が好ましい。さらに好ましくは、350以下である。側鎖の分子量が大きくなると、重合体に高分子反応によって側鎖を結合させる場合においても、重合性化合物(典型的には単量体)と側鎖を結合させてから重合させる場合においても、反応性は低下し、収率は低下する。そのため、側鎖の分子量は、500以下が好ましい。
また、難燃性重合体の側鎖の構造によっても、側鎖を結合させる際の反応性が影響される。例えば、難燃性化合物として窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を用いる場合、ヌクレオチドのリン酸の数が増えれば、その分嵩高くなり、立体障害効果により反応性は低下する。しかし、リン酸部位が多いほうが、ポリリン酸形成能が高まり、難燃効果が高い。従って、難燃性化合物としてヌクレオチドを用いる場合には、一リン酸および三リン酸よりも、二リン酸が最も効果的である。
本発明の高分子組成物における難燃剤が含む重合体を形成する重合方法は、付加重合、縮合重合、重付加、付加縮合、開環重合などが挙げられる。付加重合の場合は、ビニル、アリル、アクリル、メタクリルなどの付加重合性基を有した単量体による重合である。縮合重合の場合は、酸とアルコールによるエステル重合、アルコール同士のエーテル重合、酸とアミンのアミド(ナイロン)重合などが挙げられる。重付加は、イソシアナート基とアルコールによるウレタン重合や、ジイソシアナートとジアミンの尿素重合などが挙げられる。また、付加縮合は、付加反応と縮合反応の繰り返しによる重合であり、フェノールとホルムアルデヒドによるフェノール樹脂形成に見られる重合や、尿素あるいはメラミンと、ホルムアルデヒドによる重合反応が挙げられる。開環重合は、ラクトンやラクタム、環状エーテルや環状ホルマールなどによる環の開裂、生長反応による重合である。
いずれの重合反応を利用する場合でも、難燃性化合物を側鎖に重合体は、高分子と混合する前に調製(合成)してもよいし、高分子と混合(例えば加熱混練)する過程で、重合性化合物(例えば難燃性単量体)を重合することによって生成してもよい。勿論、両者を併用することもできる。
難燃剤として用いる難燃性重合体の側鎖として含まれる難燃性化合物は、公知の化合物から適宜選択されるが、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物が好ましい。
窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物としては、ヒダントイン、ジメチルヒダントイン、トリアジン、ジアミノトリアジン、アセトグアナミン、アミノトリアゾール、アミノピリジン、イソシアヌル酸、イミダゾール、メチルイミダゾール、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ピラジン、メラミン、核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
後に具体的な実施例を例示するように、これら窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する重合体は窒素原子を含有しているので、従来から難燃剤として使用されている窒素含有化合物、例えば、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素およびチオ尿素と同様に難燃作用を発揮する。
特に、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物は含窒素複素環を有しているので、高温に晒されたとき、吸熱分解することによって高分子の熱分解を抑え燃焼の燃料供給を断つと共に、且つ、高分子の周囲に不活性な雰囲気(窒素ガス雰囲気)を形成することによって酸素との接触機会を低下させ、難燃化する作用が高いと考えられる。
また、難燃性重合体の融点あるいは軟化点は、高分子組成物の成形温度以下であることが好ましい。高分子組成物の成形時に、難燃性重合体が、液滴または移動容易な状態であり、より表面付近に局在するので、難燃効果がさらに高まる。
難燃性重合体として、付加重合体を利用する場合、重合性基は、ビニル、アリル、アクリル、メタクリルからなる群から選択された少なくとも1種をあげることができる。付加重合体を用いると射出成形に適した高分子組成物に好適に用いられ、さらに、加熱・混練工程において生成させることも容易にできる。
上記窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物のうち、核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドは、いずれも生物起源の物質であり、且つ、生分解性を有する。従って、石油などの化石燃料から合成される化合物と異なり、バイオマスを原料として製造され、且つ、生分解性を有する地球環境に優しい材料である。
なお、本発明に高分子組成物が含有する難燃剤は、上記難燃性化合物を側鎖に含む重合体の他に従来の難燃剤を含んでも良いが、本発明の効果を得るためには、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する重合体のみを難燃剤として用いることが好ましい。
上記高分子組成物の難燃剤として好適に作用するためには、難燃性化合物は、加熱された時に、吸熱分解反応、ラジカル化合物生成反応、不活性ガス生成反応、不燃物生成反応でなる反応種群から選ばれる少なくとも1つの反応を発現する化合物であることが好ましく、これらの反応を発現する温度(すなわち熱分解温度)は、高分子組成物の加工温度(成形温度など)よりも高く、高分子の熱分解温度よりも低いことが好ましい。
本発明による高分組成物は、配合される高分子の特性に応じて、シート、フィルムや筐体など、種々の形態の成形品に加工することが可能であり、また、成形材料に限られず、接着剤、塗料やパテなどの材料として用いることができる。一般的な高分子の加工温度は約100℃以上約300℃以下であり、また、一般な高分子材料は燃焼するときに約400℃以上約550℃以下の温度(熱分解温度に相当する)に到達する。従って、難燃性重合体は、配合される高分子の種類および/または加工温度に応じて、所望の熱分解温度を有する難燃性重合体を用いればよい。すなわち、熱分解温度が100℃超550℃未満の難燃性重合体を用途に応じて適宜用いることができる。
本発明の高分子組成物は、特に難燃性が要求される、例えば電気機器(電子機器や電子部品などを含む)の用途において、その利点が発揮される。また、本発明による難燃性重合体は、高分子の機械特性を大きく低下させることなく、難燃性を付与することができるので、筐体などのバルク成形品の材料として好適に用いられる。
これらの用途の高分子組成物を構成する高分子としては、加工温度(成形温度)が、約250℃以上約300℃以下である高分子(典型的には従来のいわゆる汎用エンジニアリングプラスチック(ここでいう「プラスチック」は狭義のプラスチックであり、熱可塑性樹脂を指す。)が用いられており、これらの高分子の加工中に熱分解が起こらないように、難燃性重合体の熱分解温度は約300℃よりも高いことが好ましい。従って、熱分解温度が約300℃超550℃未満の難燃性重合体を用いることによって、本発明の利点が特に発揮される。
なお、本明細書における熱分解温度は、熱重量計(TG)を用いて、窒素雰囲気下において10℃/分の昇温条件で重量変化を測定し、重量減少10%に到達した温度を熱分解温度とする。
本発明の高分子組成物における高分子と難燃性重合体との配合組成は、高分子および難燃性重合体の種類および最終的な製品に要求される特性(例えば、難燃性や機械特性)に依存するが、一般に、高分子100重量部に対して、上記難燃性重合体を5重量部以上50重量部以下の比率で含むことが好ましい。難燃性重合体は、典型的には粉末状をとるので、嵩密度が小さく重量の比率に比べ体積効果(あるいは表面積効果)が大きいため、比較的少量から難燃作用を発揮し得るが、難燃効果を確実に得るためには5重量部以上配合することが好ましく、10重量部以上配合することが更に好ましい。一方、難燃性重合体の配合量が50重量部を超えると、高分子の特性(例えば機械特性)が低下し過ぎることがある。特に、バルク成形品の用途等において高分子の物性の低下を抑制するためには、難燃性重合体の配合量は100重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることが更に好ましい。
以下、難燃性重合体の側鎖を構成する難燃性化合物として用いられる窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物の好適例である核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドの具体例を示す。
核酸塩基とは、良く知られているようにペントースおよびリン酸と共に核酸を構成する物質である。アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミンおよびヒポキサンチンを好適に用いることができる。また、これらの核酸塩基の硫酸塩、硝酸塩、硼酸塩、塩酸塩ならびにイソシアヌル酸塩も好適に用いられる。例えば、アデニン硫酸塩、グアニン塩酸塩、グアニン硫酸塩などを例示することができる。
また、ヌクレオシドとしては、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、チミジン、イノシンを例示することができる。
ヌクレオチドとしては、例えば、アデニル酸、グアニル酸、シチジル酸、ウリジル酸、チミジル酸、イノシン酸を好適に用いることができる。また、ヌクレオチドの金属塩としては、5’−アデニル酸ナトリウム塩、アデノシン三リン酸ナトリウム塩、5’−グアニル酸ナトリウム塩、5’−ウリジル酸ナトリウム塩、5’−イノシン酸ナトリウム塩を例示することができる。
上記核酸塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチドの窒素原子に結合した水素原子を、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アルコキシ基またはメルカプト基に置換した化合物も難燃性を有する。このような化合物として、2−メチルアデニン、6−ジエチルアデニン、6−アリルアデニンなどを使用することもできる。
ここで、炭素数1〜4のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等を挙げることができる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げることができる。なお、炭素数があまり多いと難燃性が低下することがある。
上述したように、特にバルク成形品用の高分子組成物に用いられる難燃性重合体は、300℃超550℃未満の熱分解温度を有していることが好ましく、このような窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物として、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、およびチミンを例示することができる。なお、熱分解温度は、リガク製の熱分析装置TAS100(TG/DTA・DSC)を用いて、窒素雰囲下、10℃/分の昇温条件における重量減が10%に到達した温度とした。
ヌクレオチド、またはヌクレオチドの窒素原子に結合した水素原子を、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アルコキシ基、およびメルカプト基からなる群から選択された原子団(基)に置換された化合物は、リン酸を構成単位として有しており、これらの化合物は高温下に晒された時にポリリン酸化合物を生成して、耐熱性の皮膜を形成することにより、および/または、固体酸による炭化促進機構により、難燃効果を示すと考えられる。従って、これら化合物は、リン酸による難燃作用と含窒素複素環による難燃作用と有するので、より大きい効果が期待できる。
本発明の高分子組成物に使用される高分子には、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン、ポリウレタン、PPS樹脂などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂など汎用の高分子を用いることができるが、生分解性高分子を用いることが好ましい。本発明のうち、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物の好適例である核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドを含む難燃性重合体と生分解性高分子とを用いることによって、生分解性の高分子組成物を得ることができるので、酵素および/または微生物による分解を利用して廃棄処理することが可能で、また、地中に埋設しても分解され、自然の物質循環に組み込まれ得る。
生分解性高分子には、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトンのようなラクトンの開環重合により得られる重合体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸のようなヒドロキシ酸の重合体、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートのようなグリコールと脂肪族ジカルボン酸とからなる共重合体、ポリカプロラクトンジオールやポリカプロラクトントリオールのような末端に官能基を有する重合体、3−ヒドロキシプロピオナート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバリレート、3−ヒドロキシオクタノエートのような微生物の発酵により得られるポリエステルなどを好適に用いることができる。
生分解性高分子のなかでも比較的短いサイクル(例えば1年)で大気中の二酸化炭素を固定化した植物起源のバイオマスを用いて製造される高分子が特に好ましい。これらの高分子は、化石資源を必要としない上に、焼却によって炭酸ガスが発生しても固定化されるサイクルが短いので、長期的には地球温暖化に寄与しないという利点がある。このような高分子として、例えば、トウモロコシ、サツマイモなどの主成分であるでんぷんや、草木や稲わらの主成分であるセルロース、あるいはその構成単位であるグルコースなどの糖類を原料とする高分子であり、ポリ乳酸や酢酸セルロースを例示することができる。
本発明に用いられる窒素含有複素環を側鎖に有する重合体は、高温下に晒された時、窒素含有複素環を側鎖部分が吸熱分解して配合される高分子から熱を奪い且つ不活性な雰囲気を形成するために、高分子の難燃効果を示す難燃性重合体である。窒素含有複素環を側鎖に有する単量体としては、アリルハイダントイン、ビニル−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジンが挙げられ、窒素含有複素環としては、トリアジンや、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチドから選ばれる核酸塩基類を由来とすることができる。アリルアデニン、アリルアデノシン、アリルイノシン、メタクリル酸とアデニンあるいはアデノシンとのアミド化合物などがその例である。
また、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体を重合してポリマを形成してから高分子に混ぜても良いし、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体を高分子に混ぜる過程で加熱混練して、この単量体の重合を促進しても良い。単量体で混ぜ始め混練時に重合させることによって、混練時初期には良好なブレンドとなって混入が容易になるが、混練時あるいは成形時の加熱によって、重合し高分子から相分離して分散性が低下し、スキン層となって表目付近に位置する確率が高まり、難燃効果としては増大することになる。
また、本発明の高分子組成物は、母材である高分子と、難燃剤の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の添加剤成分を含有しても良い。
それらの例としては、酸化防止剤(フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、耐候剤(ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系など)、金属不活性剤、ハロゲン捕捉剤、滑剤(オレフィン、脂肪酸およびその誘導体など)、結晶化核剤(金属塩、タルク、ソルビトール系など)、充填剤(タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、マイカなど)、ブルーミング防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、粘着剤、着色剤、艶消し剤、帯電防止剤、酸素や炭酸ガスの吸収剤、ガス吸着剤、鮮度保持剤、酵素、消臭剤、香料等が挙げられる。
本発明の高分子組成物は、原料成分を配合した後に混合および溶融混練することにより得られる。各成分の配合順序、混練方法などは特に限定されない。例えば、ニーダ、ミキシングロール、タンブラー式ブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサーなどを用いて常法により行えば良い。また、溶融混練の方法も特に限定されず、例えば、スクリュー押出機、加熱式ニーダ、バンバリーミキサー、加熱ミキシングロールなどを使用して、熱可塑性樹脂の融点以上の温度で行うのが良い。この溶融混練は窒素ガスなどの不活性気流下で行うこともできる。
本発明の高分子組成物は、難燃性が求められるさまざまなバルク成形品に好適に用いられる。そのような成形品の例としては、各種電気製品(洗濯機、冷蔵庫、食器乾燥機、炊飯器、扇風機、換気扇、テレビ、パソコン、ステレオ、電話、電子レンジ、暖房便器、アイロンなど)の部品およびカバー;光熱機器(エアコン、ストーブ、コンロ、ファンヒーター、給湯機など)の部品およびカバー;建築物の内装材および外装材;自動車、船舶、航空機などの部品または内装材、などを挙げることができる。
以下、本発明による実施例および比較例を説明する。
[実施例1〜7および比較例1〜10]
まず、本発明による高分子組成物の実施例1〜7と、従来の難燃剤を分散した高分子組成物の比較例1〜10の試料を作製した。それぞれの試料の配合比を表1および表2に示す。
熱可塑性高分子を用いた高分子組成物については、それぞれ高分子の溶融温度以上に加温して難燃剤と混合して作製した。得られた高分子組成物をペレタイズしたものを射出成形機によって成形した。成形の標準の条件を、金型温度60℃、射出圧力80MPa、射出時間10秒(冷却時間40秒)、射出速度40mm/secとし、材料によって調整しながら成形を行った。また、難燃性試験用の試験片として、圧縮成形法(加圧4.9MPa)により、12.7mm×3mm×127mmの短冊状試験片を作製した。また、熱硬化性高分子を用いた高分子組成物については、プレプリグ状態で難燃剤と混合した後に、加熱硬化して試験片を作製した。
難燃性試験は、上記試験片を用いて、UL94安全規格「機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験」に従って行った。燃焼試験として、水平燃焼試験94HB(参照規格ASTM−D635)と、20mm垂直燃焼試験94V(参照規格ASTM−D3801)とを行った。
94HB試験において、75mmの区間での燃焼速度が1分あたり40mmを超えない場合、または、75mmに達する前に燃焼が止まる場合に、94HBに分類した(表中では「HB」と表記)。
94V試験において、5枚の試験片について、いずれの残炎時間も10秒以下である場合、全ての試験片の残炎時間の合計が50秒以下である場合、あるいは、各試験片の接炎後の残炎時間と残燼時間との合計が30秒以下である場合に、94V0に分類した(表中では「V−0」と表記)。
なお、実施例1および5の難燃剤であるアリルヒダントインと、実施例2および6の難燃剤であるビニル−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジンは関東化学株式会社から市販されているものを用いた。実施例3、4および7の難燃性単量体(モノマ)は以下のようにしてそれぞれ合成した。
実施例3:アデニン(例えばヤマサ醤油株式会社製)5.35gと、水酸化ナトリウム3.2gを水100mlに加え溶解液1を得る。また、塩化メタクリロイル(例えば和光純薬工業株式会社製)4.23gをクロロフォルム100mlに溶かし溶解液2を得る。溶解液1を強力に攪拌する。これに滴下漏斗を通して一度に溶解液2を加える。すると直ちに微粉状のモノマが析出した。これを濾過してよく水洗いをし、次いでよくメタノールで洗浄し、60℃にて減圧乾燥し、モノマを得た。これをKBr錠剤法により赤外吸収を確認したところ、アミド結合による吸収波長を確認することができた。このモノマは、メタクリル酸−アデニンであり、実施例3の難燃性重合体のモノマとして用いた。
実施例4:アデノシン(例えばヤマサ醤油株式会社製)10.60gと、水酸化ナトリウム3.2gを水100mlに加え溶解液3を得る。また、塩化メタクリロイル4.23gをクロロフォルム100mlに溶かし溶解液4を得る。溶解液3を強力に攪拌する。これに滴下漏斗を通して一度に溶解液4を加える。すると直ちに微粉状のモノマが析出した。これを濾過してよく水洗いをし、次いでよくメタノールで洗浄し、60℃にて減圧乾燥し、モノマを得た。これをKBr錠剤法により赤外吸収を確認したところ、アミド結合による吸収波長を確認することができた。このモノマは、メタクリル酸−アデノシンであり、実施例4の難燃性重合体のモノマとして用いた。
実施例7:アデニン5.35gと、水酸化ナトリウム3.2gを水100mlに加え溶解液5を得る。また、アリルクロライド3.09gをクロロフォルム100mlに溶かし溶解液6を得る。溶解液5を強力に攪拌する。これに滴下漏斗を通して一度に溶解液6を加える。すると直ちに微粉状のモノマが析出した。これを濾過してよく水洗いをし、次いでよくメタノールで洗浄し、60℃にて減圧乾燥し、モノマを得た。これをKBr錠剤法により赤外吸収を確認したところ、アミド結合による吸収波長を確認することができた。このモノマは、アリルアデニンであり、実施例7の難燃性重合体のモノマとして用いた。
上記の実施例1〜7および比較例1〜10の高分子組成物は、成形性や機械強度などの基本物性については、ほとんど変わりなかった。
一方、難燃性についてみると、本発明の実施例1〜7の高分子組成物は全て、V−Oに相当する難燃グレードを有していたのに対し、比較例の高分子組成物は、ハロゲン系難燃剤であるテトラブロモビスフェノールAを用いた比較例6と、特許文献1に記載されている難燃剤を100重量部配合した比較例9および10とがV−Oであったが、その他の配合ではHBグレードであった。本発明の実施例の高分子組成物はいずれも難燃性重合体を30重量部以下しか配合していないにも拘わらず、優れた難燃性を示すことがわかる。
また、実施例3から7の難燃性重合体は、バイオマスを原料(核酸関連物質)とするものであり、地球環境に優しい材料である。さらに、実施例5から7の高分子組成物は、高分子もバイオマスを原料とする高分子であり、難燃剤を含む高分子組成物がバイオマスから構成されており、地球環境にとっては理想的な材料である。
[実施例8〜9]
上記の実施例1〜7では、難燃性単量体を高分子と加熱混練しながら重合させることによって難燃性重合体を生成した例を示したが、予め難燃性重合体を調製した後、高分子と混合(混練)してもよい。
ここでは、下記の表3に示すように、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体を付加重合して得られた難燃性重合体を高分子と混合した場合(実施例8)と、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体(重合性化合物)と高分子とを加熱混練しながら難燃性重合体を生成した場合(実施例9)とを比較する。高分子としては、ゴム混入ポリスチレンであるハイインパクトポリスチレンを用いた。
表3の結果からわかるように、実施例8の高分子組成物も優れた難燃性を有している。但し、コーンカロリメータによって測定した最高発熱速度を比較すると、実施例8よりも実施例9の高分子組成物の方が最高発熱速度が遅く、難燃性に優れていることがわかる。これは、重合性の難燃性化合物を高分子と加熱混練しながら重合させた方が、難燃性重合体が成形体の表面近傍に偏在しやすいためと考えられる。実施例8、実施例9、および難燃剤を加えないハイインパクトポリスチレンの成形体の外観を比較すると、難燃剤なし、実施例8、実施例9の順に、表面の滑らかさが増え、また表面の白色度合いも同様にこの順に高くなる。このことからも、表面における難燃性重合体の含有率が実施例9の方が実施例8よりも高いと考えられる。また、実施例9の方が難燃性重合体が微細に分散しているために、難燃性をさらに向上させていると考えられる。
なお、本発明による難燃性高分子組成物の構成および製造方法は、本実施例に限定されることはなく、例えば、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカなどのフィラーや、ガラス繊維、炭素繊維などの強化剤、その他、増粘剤、離型剤、着色剤などを混合していても良い。
また、上記の実施例では、板状に成形した例を用いたが、これに限定されることなく、その他の形状を有する成形体、および塗料、パテ、接着剤などであっても良い。
産業上の利用可能性
本発明によると、毒性が少なく、地球環境にやさしい難燃性を有する高分子組成物およびその製造方法が提供される。本発明によると、従来よりも難燃剤の配合量を減らしながら従来と同等以上の難燃性を有する高分子組成物が得られるだけでなく、バイオマスを原料とする重合体を難燃剤として用いることによって、資源枯渇や地球温暖化に寄与しない難燃剤およびこれを用いた高分子組成物が提供される。
なお、本発明の高分子組成物は、トランスファー成形や、圧縮成形、射出成形などによって成形加工することができる。
また、本発明の高分子組成物から得られる最終成形品は、家具、雑貨のような家庭用品、建設資材、土木資材、輸送機器のボディや部品、住宅機器、化粧板、装飾品などの様々な分野で使用され得る。
本発明は、毒性が少なく、高分子の本来の性質を損なわない難燃性を有する高分子組成物およびその製造方法に関する。
高分子は、木材などと同じく燃えるものに分類される。このため、燃えては都合が悪い用途にはそのままでは使用できず、種々の難燃化が施されている。
なお、本明細書において、高分子(「樹脂」または「プラスチック」ということもある。)は、熱可塑性高分子だけでなく熱硬化性高分子を含むものとし、高分子組成物は、高分子と他の材料(例えば無機充填剤)との混合物を含む。
一般に、高分子の難燃化は、種々の難燃剤を配合するか、高分子の骨格に置換基を導入することによって行われている。また、難燃剤は、ハロゲン系難燃剤とノンハロゲン系難燃剤とに大別される。
ハロゲン系難燃剤については、燃焼時に発生する臭化水素、塩化水素などの酸性ガスによる毒性が従来から指摘されており、さらに最近ではダイオキシンが発生する恐れがあることも問題視されている。このために近年はノンハロゲン系難燃剤が注目されている。
ノンハロゲン系難燃剤としては、金属水酸化物やリン系の難燃剤が挙げられる。例えば水酸化マグネシウムなどのような金属水酸化物は、ハロゲン系難燃剤と比較して燃焼時に発生するガスの毒性は低いものの、難燃性能が劣るといった欠点がある。従って、金属水酸化物を用いて高分子を難燃化するためには、金属酸化物を高分子中に多量に配合しなければならず、高分子の性質を損なうという問題が生じている。
また、ノンハロゲン系難燃剤としてトリアジン化合物の硫酸塩を熱可塑性高分子に配合した難燃性高分子組成物が特開平8−48812号公報に開示されている。しかし、この組成物は、かなりの燃焼抑制効果を示すものの難燃性が十分ではなく、さらに良好な難燃性を有する難燃剤および難燃性高分子組成物の開発が望まれている。
また、地球規模の環境問題の観点からは、石油などの資源枯渇や、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルできない高分子の廃棄処理時の焼却による地球温暖化がますます深刻化しており、生分解性高分子の開発が進んでいる。特に、石油などの化石資源を使用せずバイオマスを原料とする生分解性高分子の開発が盛んに行われつつある。その中でも、とうもろこしや芋など比較的短いサイクル(例えば1年)で大気中の二酸化炭素を固定化した植物起源のバイオマスを用いると、焼却によって炭酸ガスが発生しても固定化されるサイクルが短いので、長期的には地球温暖化に寄与しないという利点があるので注目されている。
上述したように、ダイオキシンなど有毒ガスの発生がなく、高分子の特性を損なわずに、且つ、十分な難燃性を有する難燃剤および難燃性高分子を開発することが望まれている。更に、これまで、バイオマスを原料として難燃剤を製造する、あるいは、難燃剤そのものに生分解性を付与するという視点での技術開発がなされていなかった。
本発明は上記諸点に鑑みてなされたものであり、本発明の主な目的は、毒性が少なく、地球環境にやさしい難燃性を有する高分子組成物およびその製造方法を提供することにある。
本発明の高分子組成物は、高分子と難燃剤とを含む高分子組成物であって、前記難燃剤は難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含むことを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。
前記難燃性化合物は、加熱された時に、吸熱分解反応、ラジカル化合物生成反応、不活性ガス生成反応、不燃物生成反応でなる反応種群から選ばれる少なくとも1つの反応を発現する化合物であることが好ましい。
ある実施形態において、前記重合体の熱分解温度は、100℃よりも高く且つ前記高分子の熱分解温度よりも低い。
ある実施形態において、前記重合体の熱分解温度は300℃超550℃未満の範囲にある。
ある実施形態において、前記重合体の融点または軟化温度は、前記高分子の軟化温度以下である。
ある実施形態において、前記高分子100重量部に対して、前記重合体を5重量部以上50重量部以下の比率で含む。
ある実施形態において、前記重合体は、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する。
ある実施形態において、前記複素環状化合物は、ヒダントイン、ジメチルヒダントイン、トリアジン、ジアミノトリアジン、アセトグアナミン、アミノトリアゾール、アミノピリジン、イソシアヌル酸、イミダゾール、メチルイミダゾール、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ピラジン、メラミン、核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む。
ある実施形態において、前記重合体は付加重合体である。
ある実施形態において、前記付加重合体における重合性基は、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基からなる群から選択された少なくとも1種を含む。
ある実施形態において、前記高分子は生分解性高分子を含む。
ある実施形態において、前記高分子は植物起源の原料から製造された高分子である。
ある実施形態において、前記高分子はポリ乳酸系高分子である。
ある実施形態において、前記高分子はポリスチレンを含む。
ある実施形態において、前記高分子は不飽和ポリエステルを含む。
ある実施形態において、熱可塑性を有し射出成形され得る。
本発明による高分子組成物からなる成形体は、上記のいずれかにの高分子組成物からなることを特徴とする。
ある実施形態において、前記成形品は、前記難燃性化合物を表面近傍に内部よりも高い密度で含む。
本発明による成形体は、電気機器用筐体に好適に用いられる。
本発明による難燃性を有する高分子組成物の製造方法は、高分子と、難燃性化合物を含む重合性化合物とを用意する工程と、前記高分子と前記重合性化合物とを加熱しながら混合し、前記難燃性化合物を側鎖に有する重合体を生成する工程とを包含することを特徴とする。
ある実施形態において、前記難燃性化合物は、加熱された時に、吸熱分解反応、ラジカル化合物生成反応、不活性ガス生成反応、不燃物生成反応でなる反応種群から選ばれる少なくとも1つの反応を発現する化合物である。
ある実施形態において、前記重合性化合物は、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を含む。
ある実施形態において、前記高分子は生分解性高分子を含む。
ある実施形態において、前記高分子はポリスチレンを含む。
ある実施形態において、前記高分子はゴム混入ポリスチレンであって、前記重合性化合物はビニルジアミノトリアジンである。
本発明によると、毒性が少なく、地球環境にやさしい難燃性を有する高分子組成物およびその製造方法が提供される。本発明によると、従来よりも難燃剤の配合量を減らしながら従来と同等以上の難燃性を有する高分子組成物が得られるだけでなく、バイオマスを原料とする重合体を難燃剤として用いることによって、資源枯渇や地球温暖化に寄与しない難燃剤およびこれを用いた高分子組成物が提供される。
なお、本発明の高分子組成物は、トランスファー成形や、圧縮成形、射出成形などによって成形加工することができる。
また、本発明の高分子組成物から得られる最終成形品は、家具、雑貨のような家庭用品、建設資材、土木資材、輸送機器のボディや部品、住宅機器、化粧板、装飾品などの様々な分野で使用され得る。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の説明において、実施例および比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されるものではない。
本発明者は、毒性が少なく、地球環境にやさしい難燃性を有する高分子組成物を提供することを目的に、特に、バイオマスを原料として難燃剤を製造する、あるいは、難燃剤そのものに生分解性を付与するという視点から研究開発を行い本発明に想到した。
本発明による難燃性高分子組成物は、高分子と難燃剤とを含む高分子組成物であって、難燃剤は難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含む。
本発明による難燃性高分子組成物は、難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含み、この重合体は、難燃性化合物そのものよりも高分子に対する分散性が低いので、均一に分散し難く、例えば、射出成形などの成形工程において、表面近傍(スキン層と言われることもある)に内部よりも高い密度で存在するので、従来よりも高い難燃効果を得ることができる。すなわち、本発明の高分子組成物においては、難燃剤が難燃効果を発揮する表面近傍により多く存在しているので、従来よりも少ない配合量で従来と同等以上の難燃性を得ることができる。また、難燃性化合物の重合体なので、難燃性化合物をそのまま(低分子で)用いるよりも、高分子の特性(機械特性)を低下させ難い。これは、所望の難燃性を得るための配合量を減らせること、および/または分子量が大きいことによって得られる。
難燃性重合体の分子量は、好ましくは300〜100,000、さらに好ましくは500〜10,000である。分子量が大きいほうが、高分子への分散性が低下する傾向にある。そのため、低分子での均一分散に比べて、混練後あるいは成形後においては、表面付近においてはスキン層を形成するために難燃性重合体の濃度が高くなり、難燃性の効果は高くなる。しかしながら、分子量が大きすぎると、難燃性重合体の分散性が低下し、難燃性重合体の凝集による機械特性の低下や成形品の表面の平滑性の低下、あるいは成形性の低下が起こることがある。そのため、難燃性重合体の分子量は、300〜100,000であることが好ましい。
また、難燃性重合体における難燃性化合物(好ましくは、後述する窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物)を含む側鎖の分子量は、500以下が好ましい。さらに好ましくは、350以下である。側鎖の分子量が大きくなると、重合体に高分子反応によって側鎖を結合させる場合においても、重合性化合物(典型的には単量体)と側鎖を結合させてから重合させる場合においても、反応性は低下し、収率は低下する。そのため、側鎖の分子量は、500以下が好ましい。
また、難燃性重合体の側鎖の構造によっても、側鎖を結合させる際の反応性が影響される。例えば、難燃性化合物として窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を用いる場合、ヌクレオチドのリン酸の数が増えれば、その分嵩高くなり、立体障害効果により反応性は低下する。しかし、リン酸部位が多いほうが、ポリリン酸形成能が高まり、難燃効果が高い。従って、難燃性化合物としてヌクレオチドを用いる場合には、一リン酸および三リン酸よりも、二リン酸が最も効果的である。
本発明の高分子組成物における難燃剤が含む重合体を形成する重合方法は、付加重合、縮合重合、重付加、付加縮合、開環重合などが挙げられる。付加重合の場合は、ビニル、アリル、アクリル、メタクリルなどの付加重合性基を有した単量体による重合である。縮合重合の場合は、酸とアルコールによるエステル重合、アルコール同士のエーテル重合、酸とアミンのアミド(ナイロン)重合などが挙げられる。重付加は、イソシアナート基とアルコールによるウレタン重合や、ジイソシアナートとジアミンの尿素重合などが挙げられる。また、付加縮合は、付加反応と縮合反応の繰り返しによる重合であり、フェノールとホルムアルデヒドによるフェノール樹脂形成に見られる重合や、尿素あるいはメラミンと、ホルムアルデヒドによる重合反応が挙げられる。開環重合は、ラクトンやラクタム、環状エーテルや環状ホルマールなどによる環の開裂、生長反応による重合である。
いずれの重合反応を利用する場合でも、難燃性化合物を側鎖に含む重合体は、高分子と混合する前に調製(合成)してもよいし、高分子と混合(例えば加熱混練)する過程で、重合性化合物(例えば難燃性単量体)を重合することによって生成してもよい。勿論、両者を併用することもできる。
難燃剤として用いる難燃性重合体の側鎖として含まれる難燃性化合物は、公知の化合物から適宜選択されるが、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物が好ましい。
窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物としては、ヒダントイン、ジメチルヒダントイン、トリアジン、ジアミノトリアジン、アセトグアナミン、アミノトリアゾール、アミノピリジン、イソシアヌル酸、イミダゾール、メチルイミダゾール、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ピラジン、メラミン、核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
後に具体的な実施例を例示するように、これら窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する重合体は窒素原子を含有しているので、従来から難燃剤として使用されている窒素含有化合物、例えば、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、シアン化合物、脂肪族アミド、芳香族アミド、尿素およびチオ尿素と同様に難燃作用を発揮する。
特に、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物は含窒素複素環を有しているので、高温に晒されたとき、吸熱分解することによって高分子の熱分解を抑え燃焼の燃料供給を断つと共に、且つ、高分子の周囲に不活性な雰囲気(窒素ガス雰囲気)を形成することによって酸素との接触機会を低下させ、難燃化する作用が高いと考えられる。
また、難燃性重合体の融点あるいは軟化点は、高分子組成物の成形温度以下であることが好ましい。高分子組成物の成形時に、難燃性重合体が、液滴または移動容易な状態であり、より表面付近に局在するので、難燃効果がさらに高まる。
難燃性重合体として、付加重合体を利用する場合、重合性基は、ビニル、アリル、アクリル、メタクリルからなる群から選択された少なくとも1種をあげることができる。付加重合体を用いると射出成形に適した高分子組成物に好適に用いられ、さらに、加熱・混練工程において生成させることも容易にできる。
上記窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物のうち、核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドは、いずれも生物起源の物質であり、且つ、生分解性を有する。従って、石油などの化石燃料から合成される化合物と異なり、バイオマスを原料として製造され、且つ、生分解性を有する地球環境に優しい材料である。
なお、本発明に高分子組成物が含有する難燃剤は、上記難燃性化合物を側鎖に含む重合体の他に従来の難燃剤を含んでも良いが、本発明の効果を得るためには、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する重合体のみを難燃剤として用いることが好ましい。
上記高分子組成物の難燃剤として好適に作用するためには、難燃性化合物は、加熱された時に、吸熱分解反応、ラジカル化合物生成反応、不活性ガス生成反応、不燃物生成反応でなる反応種群から選ばれる少なくとも1つの反応を発現する化合物であることが好ましく、これらの反応を発現する温度(すなわち熱分解温度)は、高分子組成物の加工温度(成形温度など)よりも高く、高分子の熱分解温度よりも低いことが好ましい。
本発明による高分組成物は、配合される高分子の特性に応じて、シート、フィルムや筐体など、種々の形態の成形品に加工することが可能であり、また、成形材料に限られず、接着剤、塗料やパテなどの材料として用いることができる。一般的な高分子の加工温度は約100℃以上約300℃以下であり、また、一般な高分子材料は燃焼するときに約400℃以上約550℃以下の温度(熱分解温度に相当する)に到達する。従って、難燃性重合体は、配合される高分子の種類および/または加工温度に応じて、所望の熱分解温度を有する難燃性重合体を用いればよい。すなわち、熱分解温度が100℃超550℃未満の難燃性重合体を用途に応じて適宜用いることができる。
本発明の高分子組成物は、特に難燃性が要求される、例えば電気機器(電子機器や電子部品などを含む)の用途において、その利点が発揮される。また、本発明による難燃性重合体は、高分子の機械特性を大きく低下させることなく、難燃性を付与することができるので、筐体などのバルク成形品の材料として好適に用いられる。
これらの用途の高分子組成物を構成する高分子としては、加工温度(成形温度)が、約250℃以上約300℃以下である高分子(典型的には従来のいわゆる汎用エンジニアリングプラスチック(ここでいう「プラスチック」は狭義のプラスチックであり、熱可塑性樹脂を指す。)が用いられており、これらの高分子の加工中に熱分解が起こらないように、難燃性重合体の熱分解温度は約300℃よりも高いことが好ましい。従って、熱分解温度が約300℃超550℃未満の難燃性重合体を用いることによって、本発明の利点が特に発揮される。
なお、本明細書における熱分解温度は、熱重量計(TG)を用いて、窒素雰囲気下において10℃/分の昇温条件で重量変化を測定し、重量減少10%に到達した温度を熱分解温度とする。
本発明の高分子組成物における高分子と難燃性重合体との配合組成は、高分子および難燃性重合体の種類および最終的な製品に要求される特性(例えば、難燃性や機械特性)に依存するが、一般に、高分子100重量部に対して、上記難燃性重合体を5重量部以上50重量部以下の比率で含むことが好ましい。難燃性重合体は、典型的には粉末状をとるので、嵩密度が小さく重量の比率に比べ体積効果(あるいは表面積効果)が大きいため、比較的少量から難燃作用を発揮し得るが、難燃効果を確実に得るためには5重量部以上配合することが好ましく、10重量部以上配合することが更に好ましい。一方、難燃性重合体の配合量が50重量部を超えると、高分子の特性(例えば機械特性)が低下し過ぎることがある。特に、バルク成形品の用途等において高分子の物性の低下を抑制するためには、難燃性重合体の配合量は100重量部以下であることが好ましく、30重量部以下であることが更に好ましい。
以下、難燃性重合体の側鎖を構成する難燃性化合物として用いられる窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物の好適例である核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドの具体例を示す。
核酸塩基とは、良く知られているようにペントースおよびリン酸と共に核酸を構成する物質である。アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、チミンおよびヒポキサンチンを好適に用いることができる。また、これらの核酸塩基の硫酸塩、硝酸塩、硼酸塩、塩酸塩ならびにイソシアヌル酸塩も好適に用いられる。例えば、アデニン硫酸塩、グアニン塩酸塩、グアニン硫酸塩などを例示することができる。
また、ヌクレオシドとしては、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、チミジン、イノシンを例示することができる。
ヌクレオチドとしては、例えば、アデニル酸、グアニル酸、シチジル酸、ウリジル酸、チミジル酸、イノシン酸を好適に用いることができる。また、ヌクレオチドの金属塩としては、5’−アデニル酸ナトリウム塩、アデノシン三リン酸ナトリウム塩、5’−グアニル酸ナトリウム塩、5’−ウリジル酸ナトリウム塩、5’−イノシン酸ナトリウム塩を例示することができる。
上記核酸塩基、ヌクレオシドおよびヌクレオチドの窒素原子に結合した水素原子を、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アルコキシ基またはメルカプト基に置換した化合物も難燃性を有する。このような化合物として、2−メチルアデニン、6−ジエチルアデニン、6−アリルアデニンなどを使用することもできる。
ここで、炭素数1〜4のアルキル基とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、炭素数6〜10のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等を挙げることができる。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等が挙げることができる。なお、炭素数があまり多いと難燃性が低下することがある。
上述したように、特にバルク成形品用の高分子組成物に用いられる難燃性重合体は、300℃超550℃未満の熱分解温度を有していることが好ましく、このような窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物として、アデニン、グアニン、シトシン、ウラシル、およびチミンを例示することができる。なお、熱分解温度は、リガク製の熱分析装置TAS100(TG/DTA・DSC)を用いて、窒素雰囲下、10℃/分の昇温条件における重量減が10%に到達した温度とした。
ヌクレオチド、またはヌクレオチドの窒素原子に結合した水素原子を、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、アルコキシ基、およびメルカプト基からなる群から選択された原子団(基)に置換された化合物は、リン酸を構成単位として有しており、これらの化合物は高温下に晒された時にポリリン酸化合物を生成して、耐熱性の皮膜を形成することにより、および/または、固体酸による炭化促進機構により、難燃効果を示すと考えられる。従って、これら化合物は、リン酸による難燃作用と含窒素複素環による難燃作用と有するので、より大きい効果が期待できる。
本発明の高分子組成物に使用される高分子には、ポリスチレン、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン、ポリウレタン、PPS樹脂などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂など汎用の高分子を用いることができるが、生分解性高分子を用いることが好ましい。本発明のうち、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物の好適例である核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドを含む難燃性重合体と生分解性高分子とを用いることによって、生分解性の高分子組成物を得ることができるので、酵素および/または微生物による分解を利用して廃棄処理することが可能で、また、地中に埋設しても分解され、自然の物質循環に組み込まれ得る。
生分解性高分子には、ポリカプロラクトン、ポリプロピオラクトンのようなラクトンの開環重合により得られる重合体、ポリ乳酸、ポリグリコール酸のようなヒドロキシ酸の重合体、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートのようなグリコールと脂肪族ジカルボン酸とからなる共重合体、ポリカプロラクトンジオールやポリカプロラクトントリオールのような末端に官能基を有する重合体、3−ヒドロキシプロピオナート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシバリレート、3−ヒドロキシオクタノエートのような微生物の発酵により得られるポリエステルなどを好適に用いることができる。
生分解性高分子のなかでも比較的短いサイクル(例えば1年)で大気中の二酸化炭素を固定化した植物起源のバイオマスを用いて製造される高分子が特に好ましい。これらの高分子は、化石資源を必要としない上に、焼却によって炭酸ガスが発生しても固定化されるサイクルが短いので、長期的には地球温暖化に寄与しないという利点がある。このような高分子として、例えば、トウモロコシ、サツマイモなどの主成分であるでんぷんや、草木や稲わらの主成分であるセルロース、あるいはその構成単位であるグルコースなどの糖類を原料とする高分子であり、ポリ乳酸や酢酸セルロースを例示することができる。
本発明に用いられる窒素含有複素環を側鎖に有する重合体は、高温下に晒された時、窒素含有複素環を側鎖部分が吸熱分解して配合される高分子から熱を奪い且つ不活性な雰囲気を形成するために、高分子の難燃効果を示す難燃性重合体である。窒素含有複素環を側鎖に有する単量体としては、アリルハイダントイン、ビニル−4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジンが挙げられ、窒素含有複素環としては、トリアジンや、核酸塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチドから選ばれる核酸塩基類を由来とすることができる。アリルアデニン、アリルアデノシン、アリルイノシン、メタクリル酸とアデニンあるいはアデノシンとのアミド化合物などがその例である。
また、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体を重合してポリマを形成してから高分子に混ぜても良いし、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体を高分子に混ぜる過程で加熱混練して、この単量体の重合を促進しても良い。単量体で混ぜ始め混練時に重合させることによって、混練時初期には良好なブレンドとなって混入が容易になるが、混練時あるいは成形時の加熱によって、重合し高分子から相分離して分散性が低下し、スキン層となって表目付近に位置する確率が高まり、難燃効果としては増大することになる。
また、本発明の高分子組成物は、母材である高分子と、難燃剤の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の添加剤成分を含有しても良い。
それらの例としては、酸化防止剤(フェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系など)、耐候剤(ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、ヒンダードアミン系など)、金属不活性剤、ハロゲン捕捉剤、滑剤(オレフィン、脂肪酸およびその誘導体など)、結晶化核剤(金属塩、タルク、ソルビトール系など)、充填剤(タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、マイカなど)、ブルーミング防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、粘着剤、着色剤、艶消し剤、帯電防止剤、酸素や炭酸ガスの吸収剤、ガス吸着剤、鮮度保持剤、酵素、消臭剤、香料等が挙げられる。
本発明の高分子組成物は、原料成分を配合した後に混合および溶融混練することにより得られる。各成分の配合順序、混練方法などは特に限定されない。例えば、ニーダ、ミキシングロール、タンブラー式ブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサーなどを用いて常法により行えば良い。また、溶融混練の方法も特に限定されず、例えば、スクリュー押出機、加熱式ニーダ、バンバリーミキサー、加熱ミキシングロールなどを使用して、熱可塑性樹脂の融点以上の温度で行うのが良い。この溶融混練は窒素ガスなどの不活性気流下で行うこともできる。
本発明の高分子組成物は、難燃性が求められるさまざまなバルク成形品に好適に用いられる。そのような成形品の例としては、各種電気製品(洗濯機、冷蔵庫、食器乾燥機、炊飯器、扇風機、換気扇、テレビ、パソコン、ステレオ、電話、電子レンジ、暖房便器、アイロンなど)の部品およびカバー;光熱機器(エアコン、ストーブ、コンロ、ファンヒーター、給湯機など)の部品およびカバー;建築物の内装材および外装材;自動車、船舶、航空機などの部品または内装材、などを挙げることができる。
以下、本発明による実施例および比較例を説明する。
[実施例1〜7および比較例1〜10]
まず、本発明による高分子組成物の実施例1〜7と、従来の難燃剤を分散した高分子組成物の比較例1〜10の試料を作製した。それぞれの試料の配合比を表1および表2に示す。
まず、本発明による高分子組成物の実施例1〜7と、従来の難燃剤を分散した高分子組成物の比較例1〜10の試料を作製した。それぞれの試料の配合比を表1および表2に示す。
熱可塑性高分子を用いた高分子組成物については、それぞれ高分子の溶融温度以上に加温して難燃剤と混合して作製した。得られた高分子組成物をペレタイズしたものを射出成形機によって成形した。成形の標準の条件を、金型温度60℃、射出圧力80MPa、射出時間10秒(冷却時間40秒)、射出速度40mm/secとし、材料によって調整しながら成形を行った。また、難燃性試験用の試験片として、圧縮成形法(加圧4.9MPa)により、12.7mm×3mm×127mmの短冊状試験片を作製した。また、熱硬化性高分子を用いた高分子組成物については、プレプリグ状態で難燃剤と混合した後に、加熱硬化して試験片を作製した。
難燃性試験は、上記試験片を用いて、UL94安全規格「機器の部品用プラスチック材料の燃焼試験」に従って行った。燃焼試験として、水平燃焼試験94HB(参照規格ASTM−D635)と、20mm垂直燃焼試験94V(参照規格ASTM−D3801)とを行った。
94HB試験において、75mmの区間での燃焼速度が1分あたり40mmを超えない場合、または、75mmに達する前に燃焼が止まる場合に、94HBに分類した(表中では「HB」と表記)。
94V試験において、5枚の試験片について、いずれの残炎時間も10秒以下である場合、全ての試験片の残炎時間の合計が50秒以下である場合、あるいは、各試験片の接炎後の残炎時間と残燼時間との合計が30秒以下である場合に、94V0に分類した(表中では「V−0」と表記)。
なお、実施例1および5の難燃剤であるアリルヒダントインと、実施例2および6の難燃剤であるビニルー4,6−ジアミノ−1,3,5−トリアジンは関東化学株式会社から市販されているものを用いた。実施例3、4および7の難燃性単量体(モノマ)は以下のようにしてそれぞれ合成した。
実施例3:アデニン(例えばヤマサ醤油株式会社製)5.35gと、水酸化ナトリウム3.2gを水100mlに加え溶解液1を得る。また、塩化メタクリロイル(例えば和光純薬工業株式会社製)4.23gをクロロフォルム100mlに溶かし溶解液2を得る。溶解液1を強力に攪拌する。これに滴下漏斗を通して一度に溶解液2を加える。すると直ちに微粉状のモノマが析出した。これを濾過してよく水洗いをし、次いでよくメタノールで洗浄し、60℃にて減圧乾燥し、モノマを得た。これをKBr錠剤法により赤外吸収を確認したところ、アミド結合による吸収波長を確認することができた。このモノマは、メタクリル酸−アデニンであり、実施例3の難燃性重合体のモノマとして用いた。
実施例4:アデノシン(例えばヤマサ醤油株式会社製)10.60gと、水酸化ナトリウム3.2gを水100mlに加え溶解液3を得る。また、塩化メタクリロイル4.23gをクロロフォルム100mlに溶かし溶解液4を得る。溶解液3を強力に攪拌する。これに滴下漏斗を通して一度に溶解液4を加える。すると直ちに微粉状のモノマが析出した。これを濾過してよく水洗いをし、次いでよくメタノールで洗浄し、60℃にて減圧乾燥し、モノマを得た。これをKBr錠剤法により赤外吸収を確認したところ、アミド結合による吸収波長を確認することができた。このモノマは、メタクリル酸−アデノシンであり、実施例4の難燃性重合体のモノマとして用いた。
実施例7:アデニン5.35gと、水酸化ナトリウム3.2gを水100mlに加え溶解液5を得る。また、アリルクロライド3.09gをクロロフォルム100mlに溶かし溶解液6を得る。溶解液5を強力に攪拌する。これに滴下漏斗を通して一度に溶解液6を加える。すると直ちに微粉状のモノマが析出した。これを濾過してよく水洗いをし、次いでよくメタノールで洗浄し、60℃にて減圧乾燥し、モノマを得た。これをKBr錠剤法により赤外吸収を確認したところ、アミド結合による吸収波長を確認することができた。このモノマは、アリルアデニンであり、実施例7の難燃性重合体のモノマとして用いた。
上記の実施例1〜7および比較例1〜10の高分子組成物は、成形性や機械強度などの基本物性については、ほとんど変わりなかった。
一方、難燃性についてみると、本発明の実施例1〜7の高分子組成物は全て、V−Oに相当する難燃グレードを有していたのに対し、比較例の高分子組成物は、ハロゲン系難燃剤であるテトラブロモビスフェノールAを用いた比較例6と、特許文献1に記載されている難燃剤を100重量部配合した比較例9および10とがV−Oであったが、その他の配合ではHBグレードであった。本発明の実施例の高分子組成物はいずれも難燃性重合体を30重量部以下しか配合していないにも拘わらず、優れた難燃性を示すことがわかる。
また、実施例3から7の難燃性重合体は、バイオマスを原料(核酸関連物質)とするものであり、地球環境に優しい材料である。さらに、実施例5から7の高分子組成物は、高分子もバイオマスを原料とする高分子であり、難燃剤を含む高分子組成物がバイオマスから構成されており、地球環境にとっては理想的な材料である。
[実施例8〜9]
上記の実施例1〜7では、難燃性単量体を高分子と加熱混練しながら重合させることによって難燃性重合体を生成した例を示したが、予め難燃性重合体を調製した後、高分子と混合(混練)してもよい。
上記の実施例1〜7では、難燃性単量体を高分子と加熱混練しながら重合させることによって難燃性重合体を生成した例を示したが、予め難燃性重合体を調製した後、高分子と混合(混練)してもよい。
ここでは、下記の表3に示すように、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体を付加重合して得られた難燃性重合体を高分子と混合した場合(実施例8)と、窒素含有複素環を側鎖に有する単量体(重合性化合物)と高分子とを加熱混練しながら難燃性重合体を生成した場合(実施例9)とを比較する。高分子としては、ゴム混入ポリスチレンであるハイインパクトポリスチレンを用いた。
表3の結果からわかるように、実施例8の高分子組成物も優れた難燃性を有している。但し、コーンカロリメータによって測定した最高発熱速度を比較すると、実施例8よりも実施例9の高分子組成物の方が最高発熱速度が遅く、難燃性に優れていることがわかる。これは、重合性の難燃性化合物を高分子と加熱混練しながら重合させた方が、難燃性重合体が成形体の表面近傍に偏在しやすいためと考えられる。実施例8、実施例9、および難燃剤を加えないハイインパクトポリスチレンの成形体の外観を比較すると、難燃剤なし、実施例8、実施例9の順に、表面の滑らかさが増え、また表面の白色度合いも同様にこの順に高くなる。このことからも、表面における難燃性重合体の含有率が実施例9の方が実施例8よりも高いと考えられる。また、実施例9の方が難燃性重合体が微細に分散しているために、難燃性をさらに向上させていると考えられる。
なお、本発明による難燃性高分子組成物の構成および製造方法は、本実施例に限定されることはなく、例えば、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク、マイカなどのフィラーや、ガラス繊維、炭素繊維などの強化剤、その他、増粘剤、離型剤、着色剤などを混合していても良い。
また、上記の実施例では、板状に成形した例を用いたが、これに限定されることなく、その他の形状を有する成形体、および塗料、パテ、接着剤などであっても良い。
本発明によると、毒性が少なく、地球環境にやさしい難燃性を有する高分子組成物およびその製造方法が提供される。本発明によると、従来よりも難燃剤の配合量を減らしながら従来と同等以上の難燃性を有する高分子組成物が得られるだけでなく、バイオマスを原料とする重合体を難燃剤として用いることによって、資源枯渇や地球温暖化に寄与しない難燃剤およびこれを用いた高分子組成物が提供される。
なお、本発明の高分子組成物は、トランスファー成形や、圧縮成形、射出成形などによって成形加工することができる。
また、本発明の高分子組成物から得られる最終成形品は、家具、雑貨のような家庭用品、建設資材、土木資材、輸送機器のボディや部品、住宅機器、化粧板、装飾品などの様々な分野で使用され得る。
Claims (25)
- 高分子と難燃剤とを含む高分子組成物であって、前記難燃剤は難燃性化合物を側鎖に有する重合体を含む、高分子組成物。
- 前記難燃性化合物は、加熱された時に、吸熱分解反応、ラジカル化合物生成反応、不活性ガス生成反応、不燃物生成反応でなる反応種群から選ばれる少なくとも1つの反応を発現する化合物である、請求項1に記載の高分子組成物。
- 前記重合体の熱分解温度は、100℃よりも高く且つ前記高分子の熱分解温度よりも低い、請求項1または2に記載の高分子組成物。
- 前記重合体の熱分解温度は300℃超550℃未満の範囲にある、請求項1から3のいずれかに記載の高分子組成物。
- 前記重合体の融点または軟化温度は、前記高分子の軟化温度以下である、請求項1から4のいずれかに記載の高分子組成物。
- 前記高分子100重量部に対して、前記重合体を5重量部以上50重量部以下の比率で含む、請求項1から5のいずれかに記載の高分子組成物。
- 前記重合体は、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を側鎖に有する、請求項1から6のいずれかに記載の高分子組成物。
- 前記複素環状化合物は、ヒダントイン、ジメチルヒダントイン、トリアジン、ジアミノトリアジン、アセトグアナミン、アミノトリアゾール、アミノピリジン、イソシアヌル酸、イミダゾール、メチルイミダゾール、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ピラジン、メラミン、核酸塩基、ヌクレオチド、ヌクレオシドからなる群から選択された少なくとも1種の化合物を含む、請求項7に記載の高分子組成物。
- 前記重合体は付加重合体である、請求項1から8のいずれかに記載の高分子組成物。
- 前記付加重合体における重合性基は、ビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基からなる群から選択された少なくとも1種を含む、請求項9に記載の高分子組成物。
- 前記高分子は生分解性高分子を含む、請求項1から10のいずれかに記載の高分子組成物。
- 前記高分子は植物起源の原料から製造された高分子である、請求項1から11のいずれかに記載の高分子組成物。
- 前記高分子はポリ乳酸系高分子である請求項12に記載の高分子組成物。
- 前記高分子はポリスチレンを含む請求項1から10のいずれかに記載の高分子組成物。
- 前記高分子は不飽和ポリエステルを含む請求項1から10のいずれかに記載の高分子組成物。
- 熱可塑性を有し射出成形され得る請求項1から15のいずれかに記載の高分子組成物。
- 請求項1から16のいずれかに記載の高分子組成物からなる成形品。
- 前記成形品は、前記難燃性化合物を表面近傍に内部よりも高い密度で含む、請求項17に記載の成形品。
- 請求項1から16のいずれかに記載の高分子組成物からなる電気機器用筐体。
- 難燃性を有する高分子組成物の製造方法であって、
高分子と、難燃性化合物を含む重合性化合物とを用意する工程と、
前記高分子と前記重合性化合物とを加熱しながら混合し、前記難燃性化合物を側鎖に有する重合体を生成する工程と、
を包含する、高分子組成物の製造方法。 - 前記難燃性化合物は、加熱された時に、吸熱分解反応、ラジカル化合物生成反応、不活性ガス生成反応、不燃物生成反応でなる反応種群から選ばれる少なくとも1つの反応を発現する化合物である、請求項20に記載の高分子組成物の製造方法。
- 前記重合性化合物は、窒素をヘテロ原子とする複素環状化合物を含む、請求項21に記載の高分子組成物の製造方法。
- 前記高分子は生分解性高分子を含む、請求項20から22のいずれかに記載の高分子組成物の製造方法。
- 前記高分子はポリスチレンを含む、請求項20から22のいずれかに記載の高分子組成物の製造方法。
- 前記高分子はゴム混入ポリスチレンであって、前記重合性化合物はビニルジアミノトリアジンである、請求項24に記載の高分子組成物の製造方法。
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