JPWO2003076515A1 - 熱硬化性樹脂組成物、それを用いてなる積層体および回路基板 - Google Patents

熱硬化性樹脂組成物、それを用いてなる積層体および回路基板 Download PDF

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田中  滋
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Abstract

本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、(A)ポリイミド樹脂と、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類の少なくとも一方とを含んでおり、上記(A)ポリイミド樹脂として、エーテル結合を有する酸二無水物とジアミン類とを反応させて得られる可溶性ポリイミドを用いる。また、(B)多官能性シアン酸エステル類としては、特定構造の化合物および/またはそのオリゴマーが用いられ、(C)エポキシ樹脂類としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂および/またはアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂が好ましく用いられる。

Description

技術分野
本発明は、(A)ポリイミド樹脂と、(B)多官能性シアン酸エステル(オリゴマーも含む)および(C)エポキシ樹脂の少なくとも一方とを必須成分とし、誘電特性、耐熱性、接着性等の諸物性に優れており、熱硬化性樹脂組成物と、それを用いてなる積層体および回路基板とに関するものである。上記熱硬化性樹脂組成物は、フレキシブルプリント配線基板(FPC)やビルドアップ配線基板等の積層材料等のように、低誘電性、耐熱性、優れた接着性等が要求される積層体の製造に好適に用いることができる。
背景技術
近年、各種電子機器や電気機器に用いられている回路では、これら機器の情報処理能力を向上させるために、伝達される信号を高周波化するようになっている。上記各種機器では、回路は、各種基板上に配線が形成されてなる配線基板(回路基板)となっており、このような配線基板としては、例えば、フレキシブルプリント配線基板(FPCとも称する)や、多層プリント配線板や、ビルドアップ配線基板(ビルドアップ回路基板)等が挙げられる。
上記配線基板では、信号の高周波化に伴い、配線の電気的信頼性を保つとともに、回路の信号伝達速度の低下や信号の損失を抑える必要が生じる。そこで、回路基板を形成する接着材料(樹脂材料)としては、GHz帯域における低誘電率と低誘電正接との誘電特性を示す材料が要求されるようになっている。
従来、上記接着材料としては、良好な加工性や接着性を示す、エポキシ系接着材料や熱可塑性ポリイミド系接着材料が用いられている。
このうちエポキシ系接着材料は、加工性、接着性は優れているが、誘電特性は不十分であった。具体的には、エポキシ系接着材料は、接着対象物(被着体)同士を低い温度、低い圧力で貼り合わせて加工することができ、また被着体との接着性にも優れる。しかしながら、硬化後のエポキシ系接着材料では、GHz帯域における誘電率が4以上、誘電正接が0.02以上となるため、GHz帯域における信号の伝達速度の低下や損失が大きいという問題が生じていた。
一方、熱可塑性ポリイミド系接着材料は、誘電特性や耐熱性については優れているが、加工性については不十分であった。具体的には、熱可塑性ポリイミド系接着材料は、熱膨張が小さい、熱分解温度が高い等の特性を有しているため、耐熱性に優れている。また、熱可塑性ポリイミド系接着材料は、GHz領域における誘電率が3.5以下、誘電正接が0.02未満となり、誘電特性にも優れている。しかしながら、被着体同士を接着させるためには、高温、高圧の条件下で貼り合わせ加工を行わなければならないという問題が生じていた。
そこで、最近では、(1)日本国公開特許公報「特開平5−32726公報」(公開日:1993年2月9日)や、(2)日本国公開特許公報「特開2000−109645号公報」(公開日:2000年4月18日)に開示されている技術に代表されるように、エポキシ樹脂と熱可塑性ポリイミド樹脂とをブレンドした接着材料(ブレンド接着材料と称する)が提案されている。
上記(1)の公報には、ポリシロキサンブロックを有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂とを反応させて得られる樹脂組成物が開示されており、上記(2)の公報には、特定のポリイミド樹脂とエポキシ樹脂から構成される樹脂組成物が開示されている。これらブレンド接着材料では、上記エポキシ樹脂の優れた加工性とポリイミド樹脂の優れた誘電特性を併せて発揮することが可能となり、接着性、耐熱性、加工性等といった諸特性のバランスが、従来の接着材料よりも優れたものとなっている。
しかしながら、上記ブレンド接着材料では、エポキシ樹脂を混合することによって、ポリイミド樹脂の誘電特性が低下する傾向にある。具体的には、上述したように、ブレンド接着材料では、諸特性のバランスは優れているものの、誘電率、誘電正接などの誘電特性は未だ不十分であり、特にGHz帯域での高周波特性については、その用途によっては十分ではない場合がある。例えば、上記(1)の公報に開示されている樹脂組成物を接着材料として用いた場合、50Hzという比較的低い周波数で測定した誘電率でも3.4以上という高い値となっている。このような高誘電率の樹脂組成物では、GHz領域での使用に耐え得るものではない。それゆえ、ブレンド接着材料においては、さらなる誘電特性の向上が望まれている。
そこで、最近、上記誘電特性を向上する試みとして、例えば、(3)日本国公開特許公報「特開2001−200157号公報」(公開日:2001年7月24日)等に開示されている技術が提案されている。
上記(3)の公報では、ポリイミド樹脂とシアン酸エステル類を混合した樹脂組成物が開示されている。この技術では、ブレンド接着材料の諸物性のバランスが良いため、ビルドアップ配線基板等の用途にも有効に用いることができる。
しかしながら、上記(3)の技術においても、配線を形成する導体金属(例えば銅等)に対するブレンド接着材料の接着性が不十分であるという問題が生じている。具体的には、例えば、プレッシャークッカー試験(以下、PCT試験と略す)によって、接着材料の接着性が劣化してしまう。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、ポリイミド樹脂を必須成分として含み、諸物性のうち、少なくともGHz帯域における誘電特性、加工性、耐熱性を優れたものとし、さらに、接着性、特にPCT試験後の接着性(以下、PCT耐性と称する)も優れたものとすることが可能であり、各種配線基板の製造に好適に用いることが可能な熱硬化性樹脂組成物と、それを用いてなる積層体および回路基板とを提供することにある。
発明の開示
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討した結果、主成分であるポリイミド樹脂の種類、シアン酸エステルやエポキシ樹脂等の熱硬化性成分の種類、これらの配合量を適切なものとすることにより、諸物性のうち、少なくとも誘電特性、加工性、耐熱性を優れたものとできることに加え、さらに接着性、PCT耐性についても優れたものとすることが可能であり、得られる熱硬化性樹脂組成物において、加工性や耐熱性を高めても、硬化後のGHz帯域における誘電率および誘電正接を、従来の樹脂組成物よりも低くすることができること、さらには、接着性やPCT耐性を従来の樹脂組成物よりも優れたものにできることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記の課題を解決するために、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、(A)ポリイミド樹脂と、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類の少なくとも一方とを含んでおり、
上記(A)ポリイミド樹脂として、少なくとも、次に示す一般式(1)
Figure 2003076515
(ただし、式中Vは、−O−、−CO−、−O−T−O−、およびCOO−T−OCO−からなる群より選択される2価の基を示し、Tは2価の有機基を示す。)
で表される少なくとも1種の酸二無水物と、ジアミン類とを反応させて得られる可溶性ポリイミドが用いられるものであり、上記ジアミン類が、次に示す一般式(4)
Figure 2003076515
(ただし、式中、YおよびYは、それぞれ独立して、−C(=O)−、−SO−、−O−、−S−、−(CH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=O)O−、または単結合(直接結合)を示し、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基または炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、mおよびnは1以上5以下の整数である。)で表される少なくとも1種類のジアミン類であることが好ましく、さらに上記ジアミン類が、次に示す一般式(5)
Figure 2003076515
(ただし、式中、YおよびYは、それぞれ独立して、−C(=O)−、−SO−、−O−、−S−、−(CH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=O)O−、または単結合(直接結合)を示し、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基または炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、mおよびnは1以上5以下の整数である。)で表されるジアミン類であることがより好ましい。また、上記ジアミン類として、水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンを少なくとも1種含むものであるとより好ましい。
また、上記一般式(1)で表される酸二無水物では、当該一般式(1)におけるTが、次に示す群(2)
Figure 2003076515
で表される有機基か、次に示す一般式(3)
Figure 2003076515
(ただし、式中、Zは、−C2Q−、−C(=O)−、−SO−、−O−、および−S−から成る群より選択される二価の基であり、Qは1以上5以下の整数である。)
で表される有機基であることが好ましい。
また、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、(A)ポリイミド樹脂として用いられる可溶性ポリイミドのガラス転移温度が250℃以下となっていることが好ましい。
さらに、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、上記(B)多官能性シアン酸エステル類として、次に示す一般式(6)
Figure 2003076515
(ただし、Rは、単結合、芳香環、脂肪族環を少なくとも1つを有する2価の有機基、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−CH(CH)−、−CH(CF)、−SO−、−S−、−O−、から選択され、R、Rは、それぞれ同一または異なって、−H、−CH、−CF、から選択され、oは0以上7以下の整数、p、qは、それぞれ同一または異なって0以上3以下の整数である。)
で表される化合物から選択される多官能性シアン酸エステル、および/またはそのオリゴマーから選択される少なくとも1種であることが好ましく、上記(B)多官能性シアン酸エステル類は、次に示す群(7)
Figure 2003076515
(ただし、rおよびtは、0以上5以下の整数を表す。)
で表される化合物から選択される少なくとも一種であることがより好ましい。
また、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、上記(C)エポキシ樹脂類として、次に示す一般式(8)、(9)および(10)
Figure 2003076515
(ただし、上記各式中Gは、次に示す構造式
Figure 2003076515
で表される有機基であり、i、j、kはそれぞれ独立して0以上5以下の整数であり、R10、R11、R12、R13はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表されるエポキシ樹脂、および/またはアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂が用いられることが好ましい。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物においては、(A)ポリイミド樹脂の全成分の重量をCとし、(B)多官能性シアン酸エステル類の全成分の重量をCとし、(C)エポキシ樹脂類の全成分の重量をCとしたときには、目的とする物性に応じて、これらの混合比またはそれぞれの組成比を、次の何れか一つを少なくとも満たすように規定することが好ましい。
:C=20:80〜90:10
:C=95:5〜85:15
:C=50:50〜99:1
/(C+C+C)=0.5〜0.96
/(C+C+C)=0.02〜0.48
/(C+C+C)=0.002〜0.48
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物においては、上記(A)ポリイミド樹脂と、(B)多官能性シアン酸エステル類、(C)エポキシ樹脂類以外の成分を含んでいてもよく、例えば、(B)多官能性シアン酸エステル類の硬化を促進させる硬化触媒、および(C)エポキシ樹脂類の硬化を促進させる硬化剤の少なくとも一方を含んでいてもよい。このとき、上記(B)多官能性シアン酸エステル類の硬化を促進させる硬化触媒として、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、ナフテン酸コバルト、銅(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸銅から選択される少なくとも1種が用いられることが好ましい。また、(C)エポキシ樹脂類の硬化を促進させる硬化剤と、(C)エポキシ樹脂類との反応を促進する硬化促進剤を含んでいてもよい。
さらに、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、200℃〜250℃の温度条件下で1時間〜5時間加熱して硬化させた後に、誘電率が3.0以下、誘電正接が0.01以下であるという条件1、およびPCT処理の前後において、銅箔との接着力がいずれも5N/cm以上であるという条件2のうち、少なくとも一つを満たすことが好ましく、さらに、上記条件1において、誘電率が3.2以下であり、誘電正接が0.012以下であることがより好ましい。
また、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、(A)ポリイミド樹脂と、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類の少なくとも一方とを含んでおり、上記(B)多官能性シアン酸エステル類としては、上記一般式(6)で表される化合物から選択される多官能性シアン酸エステル、および/またはそのオリゴマーから選択される少なくとも1種が用いられ、上記(C)エポキシ樹脂類として、上記一般式(8)、(9)および(10)で表されるエポキシ樹脂、および/またはアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂が用いられるものであってもよい。
本発明にかかる積層体は、上記熱硬化性樹脂組成物を含む層を1層以上有する積層体であり、本発明にかかる回路基板は、上記熱硬化性樹脂組成物を用いてなる回路基板である。
上記構成によれば、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物には、主成分として上記の(A)ポリイミド樹脂が含まれており、熱硬化性成分として上記の(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂の少なくとも一方とが含まれている。それゆえ、この熱硬化性樹脂組成物では、主成分の物性と熱硬化性成分の物性とを十分かつバランス良く発揮することができる。
したがって、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、GHz帯域における誘電率、誘電正接を低くし、加工性、耐熱性にも優れ、さらには、接着性、特にPCT耐性にも優れたものとなる。その結果、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、フレキシブル配線基板(FPC)やビルドアップ配線基板等の回路基板や、これら回路基板の製造に用いられる積層体等として好適に用いることができる。
本発明のさらに他の目的、特徴、および優れた点は、以下に示す記載によって十分わかるであろう。また、本発明の利益は次の説明で明白になるであろう。
発明を実施するための最良の形態
本発明の実施の一形態について詳細に説明すれば、以下の通りである。なお、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、主成分として(A)ポリイミド樹脂を含み、さらに、熱硬化性成分として、(B)多官能性シアン酸エステル(モノマーおよび/またはオリゴマー)、並びに(C)エポキシ樹脂の少なくとも一方とを含むものである。また、本発明にかかる積層体および回路基板は、上記熱硬化性樹脂組成物を用いてなる。
<(A)ポリイミド樹脂>
本発明に用いられる(A)ポリイミド樹脂は、特に限定されるものではないが、可溶性のポリイミド樹脂(以下、可溶性ポリイミドと称する)であることが望ましい。可溶性ポリイミドを用いると、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステルおよび(C)エポキシ樹脂の少なくとも一方とを配合した後にイミド化させるために高温・長時間で処理する必要がない。そのため、得られる熱硬化性樹脂組成物の加工性を高めることが可能になり好ましい。
可溶性ポリイミド樹脂の「可溶性」とは、ジオキソラン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンから選択される少なくとも1種の溶媒(説明の便宜上、「可溶性判定溶媒」と称する)に、室温〜100℃以下の温度で1質量%以上溶解することをいう。なお、ここでいう「室温」とは、10〜35℃の温度範囲を指すものとする。
本発明で用いられる(A)ポリイミド樹脂は、公知の方法で製造することができる。具体的には、ポリイミド樹脂の前駆体物質であるポリアミド酸を、化学的または熱的にイミド化することで製造することができる。
<酸二無水物>
本発明では、上記ポリアミド酸の原料となる酸二無水物としては、具体的には特に限定されるものではないが、最終的に可溶性ポリイミドを得るためには、次に示す一般式(1)
Figure 2003076515
(ただし、式中Vは、−O−、−CO−、−O−T−O−、およびCOO−T−OCO−からなる群より選択される2価の基を示し、Tは2価の有機基を示す。)
で表される少なくとも1種の酸二無水物を用いることが好ましい。上記一般式(1)に示す酸二無水物としては、任意の1種類の化合物のみを用いてもよいし、2種類以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(1)で表される酸二無水物を用いれば、上記可溶性判定溶媒に対する溶解性および耐熱性等を高めるとともに、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステル類や(C)エポキシ樹脂類との相溶性も有する可溶性ポリイミドが得られやすい。
上記一般式(1)で表される酸二無水物においては、同式中Tで示される2価の有機基が、次に示す群(2)
Figure 2003076515
で表される有機基か、次に示す一般式(3)
Figure 2003076515
(ただし、式中、Zは、−C2Q−、−C(=O)−、−SO−、−O−、および−S−から成る群より選択される二価の基であり、Qは1以上5以下の整数である。)で表される有機基であることが好ましい。
上記酸二無水物として、上記群(2)および一般式(3)から選択される芳香環を含む有機基を、前記有機基Tとして含む酸二無水物を少なくとも1種用いれば、得られる可溶性ポリイミドにおいて、特に、GHz領域における誘電率、誘電正接を低くして誘電特性を優れたものとすることができ、耐熱性も優れたものとすることができる。
上記一般式(1)で表される酸二無水物としては、特に、上記可溶性判定溶媒に対する溶解性、熱硬化性成分に対する相溶性、誘電特性および耐熱性等の諸特性のバランスが良好である点や、入手しやすい点等から、次に示す構造式
Figure 2003076515
で表される4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸二無水物を用いることが最も好ましい。
あるいは、上記一般式(1)で表される酸二無水物としては、上記と同様の観点から、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物を用いることも好ましい。
本発明では、酸二無水物としては、上記一般式(1)で表される酸二無水物以外の構造を有する酸二無水物を用いてもよいことは言うまでもない。ただし、上記一般式(1)で表される酸二無水物は、ポリアミド酸の合成に用いられる全ての酸二無水物(全酸二無水物成分)のうち50モル%以上となるように用いられることが好ましい。上記一般式(1)で表される酸二無水物がこのように用いられれば、得られる可溶性ポリイミドにおいて、溶解性、熱硬化性成分に対する相溶性および誘電特性を優れたものにできるため好ましい。
上記一般式(1)で表される酸二無水物以外の酸二無水物(その他の酸二無水物)としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4、4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン酸二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンジフタル酸無水物等を挙げることができる。これら酸二無水物は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を任意の割合となるように適宜組み合わせて用いてもよい。
<ジアミン類>
本発明では、上記ポリアミド酸の原料となるジアミン類(ジアミン化合物)としては、具体的には特に限定されるものではないが、最終的に可溶性ポリイミドを得るためには、次に示す一般式(4)
Figure 2003076515
(ただし、式中、YおよびYは、それぞれ独立して、−C(=O)−、−SO−、−O−、−S−、−(CH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=O)O−、または単結合(直接結合)を示し、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基または炭素数1以上5以下、好ましくは1以上4以下のアルキル基を示し、mおよびnは1以上5以下の整数である。)
で表される少なくとも1種類のジアミン類(以下の説明では、便宜上、「主ジアミン類」と称する)を用いることが好ましい。上記一般式(4)に示すジアミン類(主ジアミン類)としては、任意の1種類の化合物のみを用いてもよいし、2種類以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。また、上記一般式(4)におけるYで表される2価の基または単結合は、繰り返し単位の中でそれぞれ同一であってもよいし異なっていてもよい。
上記主ジアミン類を用いれば、最終的に得られる可溶性ポリイミドにおいて、上記可溶性判定溶媒に対する溶解性および耐熱性等を優れたものにできるとともに、吸水性を低いものとすることができる。
上記主ジアミン類としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェニキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン等を挙げることができる。
上記主ジアミン類としては、特に、メタ位にアミノ基を有するジアミン類(以下の説明では、便宜上、「メタ主ジアミン類」と称する)が好ましく用いられる。すなわち、上記一般式(4)で表される主ジアミン類としては、次に示す一般式(5)
Figure 2003076515
(ただし、式中、YおよびYは、それぞれ独立して、−C(=O)−、−SO−、−O−、−S−、=(CH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=O)O−、または単結合(直接結合)を示し、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基または炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、mおよびnは1以上5以下の整数である。)で表されるメタ主ジアミン類を用いることがより好ましい。このようなメタ主ジアミン類を用いてポリアミド酸を合成すれば、パラ位にアミノ基を有する主ジアミン類を用いた場合よりも、最終的に得られる可溶性ポリイミドの溶解性をより優れたものとすることができる。
上記メタ主ジアミン類としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル等を挙げることができる。
上記主ジアミン類またはメタ主ジアミン類としては、特に、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いることが特に好ましい。1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンを用いてポリアミド酸を合成すれば、最終的に得られる可溶性ポリイミドを含む熱硬化性樹脂組成物において、各種の有機溶媒に対する溶解性、はんだ耐熱性、PCT耐性を優れたものとすることができる。
また、本発明で用いられる上記ジアミン類としては、主ジアミン類に加えて、水酸基およびカルボキシル基の少なくとも一方を有するジアミン類(以下の説明では、便宜上、「従ジアミン類」と称する)を用いても好ましい。用いられるジアミン類が上記水酸基および/またはカルボキシル基を有していると、最終的に得られる可溶性ポリイミドに、水酸基および/またはカルボキシル基が導入されることになる。
このような可溶性ポリイミドは、水酸基および/またはカルボキシル基を含むために、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステル類および/または(C)エポキシ樹脂類を硬化させるための硬化触媒または硬化促進剤となり得る。その結果、従ジアミン類を原料として用いた可溶性ポリイミドを含む熱硬化性樹脂組成物は、低温または短時間で硬化させることが可能となる。
また、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステル類および/または(C)エポキシ樹脂類は、水酸基および/またはカルボキシル基と反応することが可能であるため、従ジアミン類を原料として用いた可溶性ポリイミドがエポキシ樹脂等を介して架橋することが可能となる。その結果、熱硬化性樹脂組成物に対して、さらに優れた耐熱性、半田耐熱性およびPCT耐性を与えることが可能である。
上記従ジアミン類としては、水酸基および/またはカルボキシル基を有しているジアミン化合物であれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、2,4−ジアミノフェノール等のジアミノフェノール類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシビフェニル等のヒドロキシビフェニル化合物類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルメタン等のヒドロキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルエーテル等のヒドロキシジフェニルエーテル化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジヒドロキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラヒドロキシジフェニルスルフォン等のジフェニルスルホン化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(ヒドロキシフェニル)フェニル]アルカン化合物類;4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル化合物類;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン化合物;3,5−ジアミノ安息香酸等のジアミノ安息香酸類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシビフェニル等のカルボキシビフェニル化合物類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−3、3’−ジハイドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジハイドロキシジフェニルメタン、2,2−ビス[4−アミノ−3−カルボキシフェニル]プロパン、2,2−ビス[3−アミノ−4−カルボキシフェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルメタン等のカルボキシジフェニルアルカン類;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルエーテル等のカルボキシジフェニルエーテル化合物;3,3’−ジアミノ−4,4’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ジカルボキシジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノ−2,2’,5,5’−テトラカルボキシジフェニルスルフォン等のジフェニルスルホン化合物;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン等のビス[(カルボキシフェニル)フェニル]アルカン化合物類;4,4’−ビス(4−アミノ−3−ヒドキシフェノキシ)ビフェニル等のビス(ヒドキシフェノキシ)ビフェニル化合物類;2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン等のビス[(カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン化合物;等を挙げることができる。
本発明では、上記主ジアミン類と、上記従ジアミン類とを併用することが好ましいが、特に、上記従ジアミン類として、次に示す構造式
Figure 2003076515
で表される3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル)を用いることが特に好ましい。上記3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニルを用いてポリアミド酸(最終的には可溶性ポリイミド)を合成した場合、熱硬化性樹脂組成物に対して、優れた半田耐熱性およびPCT耐性を付与できるため好ましい。
上記主ジアミン類と上記従ジアミン類とを併用する場合、ポリアミド酸の合成に用いられる全てのジアミン類(全ジアミン成分)のうち、主ジアミン類を60〜99モル%の範囲内とし、従ジアミン類(特に、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル)を40〜1モル%の範囲内として用いることがより好ましい。これら2種類のジアミン類を用いる場合、全ジアミン成分におけるそれぞれのジアミン類の使用範囲が上記の範囲から逸脱すると、得られる可溶性ポリイミドや熱硬化性樹脂組成物の溶解性、半田耐熱性、PCT耐性等の物性が損なわれる傾向にある。
さらに、本発明では、ポリアミド酸(可溶性ポリイミド)を合成するに当たって、上述した以外のジアミン類(以下の説明では、便宜上、「他のジアミン類」と称する)を用いてもよい。
この他のジアミン類としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、ビス(3−アミノフェニル)スルフィド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(4−アミノフェニル)スルフィド、ビス(3−アミノフェニル)スルホキシド、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホキシド、ビス(3−アミノフェニル)スルホン、(3−アミノフェニル)(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド等を挙げることができる。
上記他のジアミン類の使用量は特に限定されるものではないが、最終的に得られる可溶性ポリイミドおよびこれを含む熱硬化性樹脂組成物において、諸物性の低下を回避する観点から、全ジアミン成分中、10モル%未満の範囲内で用いられることが好ましい。
<ポリアミド酸の重合>
本発明では、主成分である(A)ポリイミド樹脂として、上述した各原料を用いて合成される可溶性ポリイミドを用いることがより好ましいが、この可溶性ポリイミドは、対応する構造を有する前駆体、すなわちポリアミド酸を脱水閉環する(イミド化する)ことにより得られる。ここで、前駆体であるポリアミド酸は、上述した酸二無水物とジアミン類とを、実質的に等モル反応させることにより重合(合成)することができる。
ポリアミド酸の重合反応は、具体的には特に限定されるものではないが、代表的な重合反応の手順について説明すると、まず、1種以上のジアミン類を有機極性溶剤に溶解または分散(拡散)させる。これによりジアミン溶液が得られる。その後、このジアミン溶液に対して、1種以上の酸二無水物を添加することにより、これらモノマーが重合してポリアミド酸溶液を得ることができる。
上記各モノマーの添加順序は特に限定されるものではなく、酸二無水物を有機極性溶媒に先に加えておき、ジアミン類を後から添加してもよいし、ジアミン類を有機極性溶媒中に先に適量加えて、次に過剰の酸二無水物を加えた後、さらに過剰量に相当するジアミン類を加えてもよい。これら以外にも、当業者に公知の様々な添加方法がある。なお、ここでいう「溶解」とは、溶媒が溶質を完全に溶解する場合だけでなく、溶質が溶媒中に均一に分散または拡散されて実質的に溶解しているのと同様の状態になる場合を含む。
上記ポリアミド酸の重合反応に用いられる有機極性溶媒としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセトアミド系溶媒;N−メチル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒;フェノール、o−、m−またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコール等のフェノール系溶媒;ヘキサメチルホスホルアミド;γ−ブチロラクトン;等を挙げることができる。さらに、必要に応じて、上記有機極性溶媒に加えて、キシレンまたはトルエン等の芳香族炭化水素を組み合わせて用いることもできる。
<ポリアミド酸のイミド化>
本発明において、(A)ポリイミド樹脂として好ましく用いられる可溶性ポリイミドは、上記のようにして得られたポリアミド酸溶液を、熱的または化学的方法により脱水閉環する(イミド化する)ことにより得られる。
上記イミド化の具体的な方法としては特に限定されるものではなく、熱的方法の場合、ポリアミド酸溶液を熱処理して脱水する方法を用いることができ、化学的方法の場合、脱水剤を用いて脱水する方法を用いることができる。さらに、減圧下で加熱してイミド化する方法も用いることができる。本発明で用いられる可溶性ポリイミドとしては、上記の何れの方法でイミド化された場合であっても、前駆体のポリアミド酸と比較して95%以上イミド化されていることが好ましい。95%以上イミド化された可溶性ポリイミドであれば、優れた誘電特性(低誘電性)、PCT耐性、および耐熱性等の諸物性を実現することができる。以下に各イミド化の方法について説明する。
まず、熱的方法の一例としては、上記ポリアミド酸溶液を加熱処理することによりイミド化反応を進行させると同時に、溶媒を蒸発させるという方法が挙げられる。この方法を用いることによって、固形の可溶性ポリイミドを得ることができる。上記方法を行うときの条件は特に限定されるものではないが、加熱の条件は、本実施の形態では、例えば、300℃以下の温度で約5〜200分の範囲内の時間で加熱処理する条件が好ましい。
次に、化学的方法の一例としては、上記ポリアミド酸溶液に化学量論以上の脱水剤と触媒とを加えて脱水閉環反応を行うとともに、有機溶媒を蒸発させるという方法が挙げられる。この方法を用いることによっても、固形のポリイミド樹脂を得ることができる。上記方法を行うときの条件は特に限定されるものではないが、上記脱水剤、触媒、脱水閉環反応をおこなうときの加熱の条件、有機溶媒を蒸発させるときの加熱の条件は、本実施の形態では、例えば、次に示す各条件であることが好ましい。
上記脱水剤としては、例えば、無水酢酸等の脂肪族酸無水物、無水安息香酸等の芳香族酸無水物等が挙げられる。また上記触媒としては、例えば、トリエチルアミン等の脂肪族第3級アミン類;ジメチルアニリン等の芳香族第3級アミン類;ピリジン、α−ピコリン、β−ピコリン、γ−ピコリン、イソキノリン等の複素環式第3級アミン類;等が挙げられる。脱水閉環反応を行うときの加熱の条件は100℃以下の温度であることが好ましく、有機溶媒を蒸発させるときの加熱の条件は、200℃以下の温度で約5〜120分の範囲内の時間で行うことが好ましい。
ここで、本発明にかかる(A)ポリイミド樹脂を得るために、上記熱的方法または化学的方法を採用した場合であっても、溶媒を蒸発させないで、ポリイミド樹脂を得る方法もある。この方法では、ポリイミド樹脂を貧溶媒中で析出させるため、便宜上、析出法と称する。
この析出法の一例について具体的に説明すると、まずは上記熱的方法または化学的方法によりイミド化を行って、ポリイミド樹脂溶液を得る。次に、このポリイミド樹脂溶液を、当該ポリイミド樹脂を溶解しにくい貧溶媒中に投入してポリイミド樹脂を析出させる。そして、析出したポリイミド樹脂を乾燥させて固形のポリイミド樹脂を得る。
この析出法によれば、イミド化の方法は熱的方法であっても化学的方法であってもよいため、適宜イミド化の方法を選択できる上に、ポリイミド樹脂を析出させるため、未反応の原料(モノマー)を取り除いてポリイミド樹脂を精製することができるという利点がある。この析出法を行うときの条件は特に限定されるものではない。ここで、上記貧溶媒としては、ポリイミド樹脂溶液の溶媒とは良好に混合するがポリイミド樹脂は溶解しにくい性質のものを選択すればよく、例えば、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ベンゼン、メチルセロソルブ、メチルエチルケトン等を挙げることができるが、もちろんこれらに限定されるものではない。
次に、減圧下で加熱してイミド化する方法(説明の便宜上、減圧法とする)としては、上記ポリアミド酸溶液を減圧しながら加熱処理することによりイミド化反応を進行させると同時に、溶媒を蒸発させる方法が挙げられる。この減圧法では、イミド化によって生成する水を積極的に系外に除去できるため、ポリアミド酸の加水分解を抑えることが可能となり、高分子量のポリイミド樹脂が得られるという利点がある。また、この減圧法では、原料の酸二無水物中に不純物として存在する片側または両側開環物を再閉環することができるので、ポリイミド樹脂の分子量をより一層向上する効果が期待できる。
上記減圧法を行うときの条件は特に限定されるものではないが、加熱の条件、減圧するときの圧力の条件は、本実施の形態では、例えば、次に示す各条件であることが好ましい。
まず、加熱の条件は80〜400℃の範囲内であることが好ましいが、加熱温度の下限については、イミド化を効率よく行うとともに、水を効率よく除去することから、100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましい。また、加熱時の最高温度(加熱温度の上限)については、目的とするポリイミド樹脂の熱分解温度以下であることが好ましい。したがって、上記最高温度としては、通常のイミド化の完結温度、すなわち250〜350℃の範囲内程度の温度が適用される。
次に、減圧するときの圧力の条件は、できる限り低い圧力であることが好ましいが、より具体的には、0.9〜0.001気圧(910hPa〜1hPa)の範囲内であればよく、0.8〜0.001気圧(810hPa〜1hPa)の範囲内であることが好ましく、0.7〜0.01気圧(710hPa〜1hPa)の範囲内であることがより好ましい。
<得られた(A)ポリイミド樹脂の物性>
上述した製造方法により得られた(A)ポリイミド樹脂(特に可溶性ポリイミド)の物性は、特に限定されるものではなく、本発明の用途に十分適応できるような物性を有していればよい。
例えば、本発明の主たる用途としては、各種電子機器や電気機器に用いられる回路用のブレンド接着材料が挙げられるが、本発明では、主成分である(A)ポリイミド樹脂を、(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類の少なくとも一方と混合して、上記ブレンド接着材料(本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物)を得た場合に、当該ブレンド接着材料に要求される諸物性を発揮できるようになっていればよい。もちろん、他の用途でも同様である。
本発明の主たる用途である、各種電子機器や電気機器に用いられる回路用のブレンド接着材料で要求される諸物性としては、誘電特性、加工性、耐熱性、接着性、PCT耐性等が挙げられる。ここで、主成分である(A)ポリイミド樹脂は、ブレンド接着材料に対して誘電特性や耐熱性等を付与できる成分であるが、さらに、(A)ポリイミド樹脂のガラス転移温度は、ブレンド接着材料の加工性にも影響を及ぼす。
上述した製造方法により得られたポリイミド樹脂では、そのガラス転移温度が比較的低温となっているが、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の加工性を良好なものとするためには、(A)ポリイミド樹脂のガラス転移温度は、350℃以下であることが好ましく、320℃以下であることがより好ましく、280℃以下であることが特に好ましい。
さらに、本発明では、A)ポリイミド樹脂に対して(B)多官能性シアン酸エステル類を配合する際に、それぞれの配合量(ブレンド量)を所定の範囲内に調整する手法を採用する場合、には、(A)ポリイミド樹脂のガラス転移温度は、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましく、180℃以下が特に好ましい。
(A)ポリイミド樹脂のガラス転移温度が上記の上限以下であれば、得られる熱硬化性樹脂組成物(ブレンド接着材料)において、小さい熱膨張率、高い熱分解温度、優れた誘電特性等の諸物性を実現できるとともに、ガラス転移温度が低いために、被着体同士を、比較的低温、低圧の条件下で貼り合わせ加工することが可能になる。その結果、得られる熱硬化性樹脂組成物(ブレンド接着材料)の加工性を向上させることができる。
<(B)多官能性シアン酸エステル類>
本発明に用いられる(B)多官能性シアン酸エステル類は、特に限定されるものではないが、特に耐熱性に優れる点から、次に示す一般式(6)
Figure 2003076515
(ただし、Rは、単結合、芳香環、脂肪族環を少なくとも1つを有する2価の有機基、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−CH(CH)−、−CH(CF)、−SO−、−S−、−O−、から選択され、R、Rは、それぞれ同一または異なって、−H、−CH、−CF、から選択され、oは0以上7以下の整数、p、qは、それぞれ同一または異なって0以上3以下の整数である。)
で表される化合物から選択される少なくとも1種の多官能性シアン酸エステルを用いることが好ましい。
上記一般式(6)で表される多官能性シアン酸エステル類の中でも、ポリイミド樹脂との相溶性が高い(相溶しやすい)点や入手しやすい点等の理由から、次に示す群(7)
Figure 2003076515
(ただし、rおよびtは、0以上5以下の整数を表す。)
で表される化合物から選択される少なくとも一種を用いることが好ましく、特に、次に示す構造式
Figure 2003076515
で表される2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンを用いることがより好ましい。
上記(B)多官能性シアン酸エステル類としては、上記一般式(6)で表される化合物をモノマー(単量体)として用いることができる。さらに、一般式(6)で表される化合物(モノマー)におけるシアナート基の一部を、加熱などによりトリアジン環(シアナート基の3量化体)に転化させたオリゴマーも、上記(B)多官能性シアン酸エステル類として用いることが可能である。さらに、上記(B)多官能性シアン酸エステル類としては、上記モノマーとオリゴマーとを併用することも可能である。
上記オリゴマーの多官能性シアン酸エステル類としては、具体的には、例えば、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパンの全シアナート基の5〜50%を反応させてトリアジン環に転化させたオリゴマー(例えば、ロンザ社製の商品名BA200、旭チバ社製の商品名Arocy B−30、B−50等)、ビス(3、5−ジメチル−4−シアネートフェニル)メタンの全シアナート基の5〜50%を反応させてトリアジン環に転化させたオリゴマー(例えば、旭チバ社製の商品名Arocy M−30、M−50等)を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
<(A)および(B)の混合比率>
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、熱硬化性成分として上記(B)多官能性シアン酸エステル類(モノマーおよび/またはそのオリゴマー)が含まれていれば、それ以外の他の成分としてどのような成分が含まれている場合でも、(A)ポリイミド樹脂および(B)多官能性シアン酸エステル類の混合比(混合割合)は、誘電特性を損なわない範囲内であれば特に限定されるものではないが、求める物性に応じて、次に示す好ましい範囲を挙げることができる。
具体的には、上記(A)ポリイミド樹脂および(B)多官能性シアン酸エステル類の何れの成分についても、それぞれの混合比は、熱硬化性樹脂組成物の用途や加工方法によって調整すればよいが、(A)ポリイミド樹脂の混合比が高くなると誘電特性を向上することができる一方、(B)多官能性シアン酸エステル類の混合比率高くなると接着性や加工性を向上することができる。
そこで、接着性(銅箔等の導体との接着性)と、耐熱性(高温時における熱硬化性樹脂組成物の弾性率や線膨張係数等)等とのバランスを良好なものとする場合には、重量比(質量比)で、(A)ポリイミド樹脂に対する(B)多官能性シアン酸エステル類の比が次の範囲内となっていることが好ましい。
:C=20:80〜90:10(好ましい範囲)
=30:70〜80:20(より好ましい範囲)
=50:50〜75:25(さらに好ましい範囲)
上記混合比の範囲を逸脱すると、得られる熱硬化性樹脂組成物では、誘電特性、導体との接着性、耐熱性、導体あるいは回路基板を貼り合わせる際の加工性といった、各種配線基板用の接着材料として重要な物性を損なうおそれがある。すなわち、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物においては、(A)ポリイミド樹脂を多く混合し過ぎると、加熱時の熱硬化性樹脂組成物の流動性が低下し、加熱による貼り合わせ時の加工性に劣ることになる。逆に、(B)多官能性シアン酸エステル類を多く混合し過ぎると、接着性や誘電特性を損なうことになる。
ところで、(A)ポリイミド樹脂の混合比率が高くなるほどPCT耐性(PCT処理前およびPCT処理後の銅箔等の導体との接着性)が向上することが、本発明者らによって初めて見出された。
そこで、特に、得られる熱硬化性樹脂組成物が、PCT特性の向上を重要とするような用途に用いられる場合には、重量比(質量比)で、(A)ポリイミド樹脂に対する(B)多官能性シアン酸エステル類の混合比(組成比)が次の範囲内となっていることが好ましい。なお、次の式では、Cが(A)ポリイミド樹脂の全成分の重量を示し、Cが(B)多官能性シアン酸エステル類の全成分の重量を示す。
:C=95:5〜85:15
混合比が上記の範囲内であれば、PCT耐性と加工性(貼り合わせ加工時の加工性)とのバランスを良好なものとすることができる。また、混合比が上記のこの範囲内であれば、実用上、十分に耐え得る程度の接着性も発揮することができる。
これに対して、上記混合比の範囲を逸脱すると、得られる熱硬化性樹脂組成物では、導体または回路基板との接着性、導体または回路基板を貼り合わせる際の加工性といった、各種配線基板用の接着材料として重要な物性を損なうおそれがある。すなわち、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物においては、(A)ポリイミド樹脂を多く混合し過ぎる(95重量%を超える)と、加熱時の流動性が低下し、加熱による貼り合わせ時の加工性が劣ることがある。
さらに、上記(B)多官能性シアン酸エステル類は、熱硬化性成分であるため、得られる熱硬化性樹脂組成物において、熱硬化性を良好に発現するためには、(B)多官能性シアン酸エステル類の量が5重量%以上であることが好ましい。逆に、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物において、(B)多官能性シアン酸エステル類を多く混合し過ぎる(15重量%を超える場合)と、得られる熱硬化性樹脂組成物の接着性、特にPCT処理後の接着性が低下する(PCT耐性が損なわれる)。
<(B)多官能性シアン酸エステル類の硬化触媒>
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、熱硬化性成分として(B)多官能性シアン酸エステル類(モノマーおよび/またはそのオリゴマー)を用いる場合、この(B)多官能性シアン酸エステル類の硬化を促進させるために、硬化触媒(または硬化促進剤、後述するエポキシ硬化剤やエポキシ硬化促進剤と明確に区別する便宜上、シアン酸エステル硬化触媒と称する)を用いることができる。
すなわち、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、硬化後に優れた誘電特性を発現し得る程度まで(B)多官能性シアン酸エステル類を硬化させ得ることが必要となる。そのため、(B)多官能性シアン酸エステル類の硬化反応に200℃以上の高温かつ1時間以上、好ましくは2時間以上の時間を要する場合がある。そこで、(B)多官能性シアン酸エステル類の硬化反応を促進させるために、シアン酸エステル硬化触媒を用いることが好ましい。
上記シアン酸エステル硬化触媒としては、(B)多官能性シアン酸エステル類の反応を促進し得る化合物であれば特に限定されるものでない。具体的には、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、ナフテン酸コバルト、銅(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸銅等の金属系触媒;N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、p−t−オクチルフェノール、クミルフェノール、フェノール樹脂等の水酸基を有する有機化合物;等を挙げることができる。これらシアン酸エステル硬化触媒は、単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて用いてもよい。
上記シアン酸エステル硬化触媒の中でも、より硬化を促進することができる点から、金属系触媒を用いることが好ましく、特に、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、ナフテン酸コバルト、銅(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸銅を用いることがより好ましく、この中でも、さらに、亜鉛(II)アセチルアセトナート、銅(II)アセチルアセトナートを用いることがより好ましい。
上記シアン酸エステル硬化触媒の配合量(使用量・混合量)は、用いられるシアン酸エステル硬化触媒の種類や硬化反応を促進する程度によって異なり、特に限定されるものではない。例えば、シアン酸エステル硬化触媒が上記金属系触媒であれば、(B)多官能性シアン酸エステル類100重量部に対して、0.001〜2重量部(または質量部)の範囲内で用いることが好ましく、0.001〜0.1重量部の範囲内で用いることがより好ましい。また、シアン酸エステル硬化触媒が上記有機化合物であれば、(B)多官能性シアン酸エステル類100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲内で用いることが好ましい。
特に、シアン酸エステル硬化触媒として、亜鉛(II)アセチルアセトナート、または、銅(II)アセチルアセトナートを用いる場合は、(B)多官能性シアン酸エステル類100重量部に対して0.001〜0.5重量部(または質量部)の範囲内で用いることが好ましく、0.001〜0.05重量部の範囲内で用いることが好ましい。シアン酸エステル硬化触媒の使用量が上記範囲未満であると硬化反応を促進する効果が得られにくく、上記範囲を超えると得られる熱硬化性樹脂組成物の保存安定性に支障が生じる可能性があるため好ましくない。
<(C)エポキシ樹脂類>
本発明に用いられる(C)エポキシ樹脂類は、熱硬化性成分として(B)多官能性シアン酸エステル類を併用するか否かによって、用いられる種類の範囲が異なっている。
まず、熱硬化性成分として、(B)多官能性シアン酸エステル類と(C)エポキシ樹脂類とを併用する場合には、用いられる(C)エポキシ樹脂類の種類は特に限定されるものではなく、任意のエポキシ樹脂を用いることができる。具体的には、例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール系エポキシ樹脂、フェノールノボラック系エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック系エポキシ樹脂、ポリグリコール系エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリシロキサン、後述する好適エポキシ樹脂(後述する一般式(8)、(9)および/または(10)で示される好ましいエポキシ樹脂)等を挙げることができる。上記エポキシ樹脂は、それぞれ単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
上記エポキシ樹脂の中でも、特に、入手しやすさ(入手容易性)や、得られる熱硬化性樹脂組成物の耐熱性、接着性、相溶性、絶縁性、誘電特性(低誘電率、低誘電正接)等の物性に優れる点から、好適エポキシ樹脂がより好ましく用いられる。
次に、熱硬化性成分として、(B)多官能性シアン酸エステル類を併用しない場合、すなわち、少なくとも(A)ポリイミド樹脂および(C)エポキシ樹脂類を用いるが、(B)多官能性シアン酸エステル類を用いない場合には、次に示す一般式(8)、(9)および(10)
Figure 2003076515
(ただし、上記各式中Gは、次に示す構造式
Figure 2003076515
で表される有機基であり、i、j、kはそれぞれ独立して0以上5以下の整数であり、R10、R11、R12、R13はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
で表されるエポキシ樹脂、および/またはアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂が用いられる。これら一般式(8)、(9)および/または(10)で示されるエポキシ樹脂は、(B)多官能性シアン酸エステル類を併用する場合にも好適なエポキシ樹脂であるため、上述したように、本発明では、これら一般式で表されるエポキシ樹脂を「好適エポキシ樹脂」と称する。
ここで、上記アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂とは、エポキシ樹脂に含有している水酸基の一部あるいは全部をアルコキシシラン化合物と反応させたエポキシ樹脂のことを指す。具体的には、例えば、次に示す一般式(11)
Figure 2003076515
(ただし、式中wは、1以上の整数を示す。)
で表される構造を有するエポキシ樹脂が挙げられる。
上記好適エポキシ樹脂としては、誘電特性(低誘電率、低誘電正接)、耐熱性、入手容易性等の点から、式中kの平均が0〜2の範囲内であるエポキシ樹脂がより好ましく用いられる。このようなエポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、大日本インキ化学工業社製の商品名EXA7200(平均のkが0.3)や商品名EXA7200H(平均のkが1)等が挙げられる。また、ビスフェノールA型エポキシ樹脂をベースにしたアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、荒川化学工業社製の商品名コンポセランEシリーズ等を挙げることができる。
なお、本発明で用いられる(C)エポキシ樹脂類としては、電気絶縁性の信頼性の点から、純度の高いエポキシ樹脂を用いることが好ましい。具体的には、エポキシ樹脂中のハロゲン元素およびアルカリ金属の含有濃度は、120℃、2気圧下の抽出で25ppm以下であることが好ましく、15ppm以下であることがより好ましい。上記上限以下であれば、本発明においては、エポキシ樹脂の純度が高いと判断できる。一方、好適である。ハロゲン元素およびアルカリ金属の含有濃度が25ppmを超えると、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の信頼性を損なうおそれがあるため好ましくない。
上述したように、本発明において、(C)エポキシ樹脂類として用いられるエポキシ樹脂は、(B)多官能性シアン酸エステル類を併用する場合には、上記好適エポキシ樹脂に限定されるものではない。特に、本発明では、得られる熱硬化性樹脂組成物の接着力や耐熱性を向上させるために、上述した好適エポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂(以下の説明では、便宜上、「接着・耐熱向上用エポキシ樹脂」と称する)を用いてもよい。
上記接着・耐熱向上用エポキシ樹脂としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ビスフェノール系エポキシ樹脂、ハロゲン化ビスフェノール系エポキシ樹脂、フェノールノボラック系エポキシ樹脂、アリルフェノールノボラック樹脂、アルキルフェノールノボラック系エポキシ樹脂、ビフェニル系エポキシ樹脂、ナフタレン系エポキシ樹脂、ポリグリコール系エポキシ樹脂、環状脂肪族エポキシ樹脂、クレゾールノボラック系エポキシ樹脂、グリシジルアミン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリシロキサン等を挙げることができる。
これら接着・耐熱向上用エポキシ樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、これら接着・耐熱向上用エポキシ樹脂の配合量(使用量・混合量)は、特に限定されるものではなく、得られる熱硬化性樹脂組成物の誘電特性を損なわない範囲内であればよいが、好ましくは、全ての樹脂成分量((C)エポキシ樹脂類だけでなく、上記(A)ポリイミド樹脂や、後述する(D)その他の成分に相当する樹脂類も含む)100重量部に対して、1〜5重量部程度の範囲内で用いる。上記接着・耐熱向上用エポキシ樹脂の配合量が1重量部未満であると、接着性等を向上する効果が得られ難くなり、逆に、5重量部よりも多く用いると誘電特性を損なうことになる。
なお、上記接着・耐熱向上用エポキシ樹脂も、上記好適エポキシ樹脂と同様に高純度であることが好ましく、具体的には、樹脂中のハロゲン元素やアルカリ金属などの含有濃度が上述した範囲内であることが好ましい。
また、本発明で用いられる(C)エポキシ樹脂類は、上記好適エポキシ樹脂や接着・耐熱向上用エポキシ樹脂に限定されるものではないことは言うまでも無い。したがって、用途に応じて、上記好適エポキシ樹脂や接着・耐熱向上用エポキシ樹脂と、これら以外のエポキシ樹脂を併用してもよいし、好適エポキシ樹脂に代えてこれ以外のエポキシ樹脂を、主たる(C)エポキシ樹脂類として用いてもよい。
<(A)および(C)または(A)、(B)および(C)の混合比率>
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、熱硬化性成分として上記(C)エポキシ樹脂類が含まれていれば、それ以外の他の成分としてどのような成分が含まれている場合でも、(A)ポリイミド樹脂および(C)エポキシ樹脂類の混合比(混合割合)は、誘電特性を損なわない範囲内であれば特に限定されるものではないが、求める物性に応じて、次に示す好ましい範囲を挙げることができる。
まず、少なくとも(A)ポリイミド樹脂および(C)エポキシ樹脂類(この場合、好適エポキシ樹脂)を用いるが、(B)多官能性シアン酸エステル類を用いない場合には、重量比(質量比)で、(A)ポリイミド樹脂に対する(C)エポキシ樹脂類の混合比(組成比)が次の範囲内となっていることが好ましい。なお、次の式では、Cが(C)エポキシ樹脂類の全成分の重量を示す。
:C=50:50〜99:1(好ましい範囲)
=60:40〜95:5(より好ましい範囲)
=75:25〜90:10(さらに好ましい範囲)
上記混合比の範囲内であれば、接着性(銅箔等の導体との接着性)と、耐熱性(高温時における熱硬化性樹脂組成物の弾性率や線膨張係数等)等とのバランスを良好なものとすることができる。
これに対して、上記混合比の範囲を逸脱すると、得られる熱硬化性樹脂組成物では、誘電特性、導体との接着性、耐熱性、導体あるいは回路基板を貼り合わせる際の加工性といった、各種配線基板用の接着材料として重要な物性を損なうおそれがある。すなわち、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物においては、(A)ポリイミド樹脂を多く混合し過ぎると、加熱時の熱硬化性樹脂組成物の流動性が低下し、加熱による貼り合わせ時の加工性に劣ることになる。逆に、(C)エポキシ樹脂類を多く混合し過ぎると、誘電特性を損なうことになる。
次に、熱硬化性成分として、(B)多官能性シアン酸エステル類と(C)エポキシ樹脂類とを併用する場合、すなわち、(A)ポリイミド樹脂、(B)多官能性シアン酸エステル類(モノマーおよび/またはそのオリゴマー)および(C)エポキシ樹脂類を用いる場合には、重量比(質量比)で、(A)ポリイミド樹脂、(B)多官能性シアン酸エステル類、および(C)エポキシ樹脂類のぞれぞれの混合比(組成比)が次の範囲内となっていることが好ましい。
/(C+C+C)=0.5〜0.96
/(C+C+C)=0.02〜0.48
/(C+C+C)=0.002〜0.48
上記混合比の範囲内であれば、接着性(銅箔等の導体との接着性)と、耐熱性(高温時における熱硬化性樹脂組成物の弾性率や線膨張係数等)等とのバランスを良好なものとすることができる。
これに対して、上記混合比の範囲を逸脱すると、得られる熱硬化性樹脂組成物では、誘電特性、導体との接着性、耐熱性、導体あるいは回路基板を貼り合わせる際の加工性といった、各種配線基板用の接着材料として重要な物性を損なうおそれがある。すなわち、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物においては、(A)ポリイミド樹脂を多く混合し過ぎると、加熱時の熱硬化性樹脂組成物の流動性が低下し、加熱による貼り合わせ時の加工性に劣ることになる。逆に、(C)エポキシ樹脂類を多く混合し過ぎると、接着性や誘電特性を損なうことになる。また、(C)エポキシ樹脂類を多く混合し過ぎると誘電特性を損なうことになる。
さらに、得られる熱硬化性樹脂組成物において熱硬化性を発現させるためには、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステル類+(C)エポキシ樹脂類の量が少なくとも4重量%以上であることが好ましい。
<(C)エポキシ樹脂類の硬化剤>
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、熱硬化性成分として(C)エポキシ樹脂類を用いる場合、前記(B)多官能性シアン酸エステル類の場合と同様に、(C)エポキシ樹脂類の硬化を促進させるために、エポキシ樹脂用の硬化剤(前述したシアン酸エステル硬化触媒とより明確に区別する便宜上、エポキシ硬化剤と称する)を用いることができる。
上記エポキシ硬化剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、ビス(4−アミノフェニル)スルホン、ビス(4−アミノフェニル)メタン、1,5−ジアミノナフタレン、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、2,6−ジクロロ−1,4−ベンゼンジアミン、1,3−ジ(p−アミノフェニル)プロパン、m−キシレンジアミン等の芳香族ジアミン系化合物;エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルジシクロヘキシル)メタン、ポリメチレンジアミン、ポリエーテルジアミン等の脂肪族アミン系化合物;ポリアミノアミド系化合物、ドデシル無水コハク酸、ポリアジピン酸無水物、ポリアゼライン酸無水物等の脂肪族酸無水物;ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等の脂環式酸無水物;無水フタル酸、無水トリメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、グリセロールトリストリメリテート等の芳香族酸無水物;フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のノボラック樹脂およびこれらのフェノール樹脂のハロゲン化物;フェノール樹脂類、アミノ樹脂類、ユリア樹脂類、メラミン樹脂類、ジシアンジアミド、ジヒドラジン化合物類、イミダゾール化合物類、ルイス酸、およびブレンステッド酸塩類、ポリメルカプタン化合物類、イソシアネートおよびブロックイソシアネート化合物類;等が挙げられる。
これらエポキシ硬化剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上組み合わせて用いてもよい。また、上記エポキシ硬化剤の配合量(使用量・混合量)も特に限定されるものではないが、一般的には、(C)エポキシ樹脂類100重量部に対して、5〜200重量部の範囲内であることが好ましく、特にエポキシ当量と同じ当量となるように配合するのが好ましい。
さらに、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物においては、(C)エポキシ樹脂類と上記エポキシ硬化剤との反応を促進するため、必要に応じて上記エポキシ硬化剤とともに硬化促進剤(前述したシアン酸エステル硬化触媒とより明確に区別する便宜上、エポキシ硬化促進剤と称する)を併用することができる。
上記エポキシ硬化促進剤としては、特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、トリフェニルホスフィン、3級アミン系、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラエタノールアミン、1,8−ジアザ−ビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセニウムテトラフェニルボレート、イミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−イソプロピルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾリン、2−エチルイミダゾリン、2−イソプロピルイミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、2−フェニル−4−メチルイミダゾリン等が挙げられる。
これらエポキシ硬化促進剤は、それぞれ単独で用いてもよいし、必要に応じて2種類以上組み合わせて用いてもよい。また、上記エポキシ硬化促進剤の配合量(使用量・混合量)も特に限定されるものではないが、一般的には、(C)エポキシ樹脂類100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内であることが好ましい。
<(D)その他の成分1:その他の樹脂>
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物においては、主成分として上記(A)ポリイミド樹脂が含まれており、熱硬化性成分として上記(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類の少なくとも一方が含まれていればよく、その他の成分については特に限定されるものではない。したがって、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、上記(A)・(B)・(C)以外の成分(説明の便宜上、(D)その他の成分と称する)が含まれていてもよい。
具体的には、例えば、上記(D)その他の成分の一例としては、(D−1)他の熱硬化性樹脂類を挙げることができる。この(D−1)他の熱硬化性樹脂類は、上記(B)多官能性シアン酸エステル類(モノマーおよび/またはそのオリゴマー)や(C)エポキシ樹脂類と同様に、熱硬化性成分として用いられるものである。このような(D−1)他の熱硬化性樹脂類を上記(B)および/または(C)併用すれば、得られる熱硬化性樹脂組成物の接着性や耐熱性、加工性等の諸特性を改善することができる。
上記(D−1)他の熱硬化性樹脂類として用いられる熱硬化性樹脂としては、具体的には、例えば、ビスマレイミド樹脂、ビスアリルナジイミド樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ヒドロシリル硬化樹脂、アリル硬化樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂;高分子鎖の側鎖または末端にアリル基、ビニル基、アルコキシシリル基、ヒドロシリル基等の反応性基を有する側鎖反応性基型の熱硬化性高分子;等を挙げることができる。
これら(D−1)他の熱硬化性樹脂類は単独で用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。また、これら(D−1)他の熱硬化性樹脂類の配合量(使用量・混合量)も特に限定されるものではなく、得られる熱硬化性樹脂組成物の誘電特性を損なわない範囲内であればよい。
<(D)その他の成分2:有機溶媒>
具体的には、例えば、上記(D)その他の成分の一例としては、(D−2)有機溶媒類を挙げることができる。この(D−2)有機溶媒類を用いることにより、得られる熱硬化性樹脂組成物において、被着体同士を貼り合わせ加工するときに熱硬化性樹脂組成物の流れ性を向上させることができる。
上記(D−2)有機溶媒類としては、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物、すなわち(A)ポリイミド樹脂、(B)多官能性シアン酸エステル類、(C)エポキシ樹脂類、(D−1)他の熱硬化性樹脂類等の各成分を溶解できる有機溶媒であれば特に限定されるものではないが、中でも沸点が200℃以下である有機溶媒が好ましい。
具体的には、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、トリグライム、ジエチレングリコール、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ等の鎖状エーテル;等のエーテル類が好ましく用いられる。また、上記エーテル類に、トルエン、キシレン類、グリコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、環状シロキサン、鎖状シロキサン等を混合した混合溶媒も好ましく用いることができる。
後述するように、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、用途によって硬化前の状態(Bステージ状態)とする場合がある。このとき、Bステージ状態の熱硬化性樹脂組成物を加圧および加熱すれば、当該熱硬化性樹脂組成物は被着体の隙間(例えば回路の間等)等に流し込まれる。このとき、熱硬化性樹脂組成物がどの程度流れて隙間等に充填されるかが重要なファクターとなる。本発明者は、この熱硬化性樹脂組成物に含まれる有機溶媒が、流れ性に大きな影響を与えることを独自に見出した。
すなわち、本発明では、熱硬化性樹脂組成物において、加圧・加熱時の流れ性を制御するためには、熱硬化性樹脂組成物に有機溶媒を含有させることが好ましい。換言すれば、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物に対して、有機溶媒を含有させる積極的意味合いは、その流れ性を制御することにある。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物においては、好ましい流れ性を実現するために配合される有機溶媒の量は、適宜設定されるものであって特に限定されるものではないが、一般的には、1〜20重量%であることが好ましく、3〜10重量%であることはより好ましい。この範囲内であれば、十分な流れ性を発揮することが可能となる。
<熱硬化性樹脂組成物>
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、上述したA)ポリイミド樹脂、(B)多官能性シアン酸エステル類、および/または(C)エポキシ樹脂類を混合し、必要に応じて、上記(D)他の成分を混合すればよく、その製造方法は特に限定されるものではない。
また、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、上述した(A)ポリイミド樹脂、(B)多官能性シアン酸エステル類、および/または(C)エポキシ樹脂類を少なくとも含み、用途等に応じて、上記(D)他の成分を含んでいればよく、その状態や形状は特に限定されるものではない。すなわち、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の具体的な使用態様は、当業者が実施し得る範囲内で種々の方法があり、特に限定されるものではない。
まず、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の具体的な状態は、特に限定されるものではなく、固形であってもよいし、固形のものを溶液に調製してもよいし、固形のものをその他の状態に調製してもよい。
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物が溶液である場合、すなわち、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を溶媒に溶解し、樹脂溶液として用いる場合、用いられる溶媒としては、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を溶解する溶媒であれば限定されるものでないが、沸点が150℃以下であることが好ましい。具体的には、前記(D−2)有機溶媒類で例示したエーテル類および/またはその混合溶媒が好ましく用いられる。
固形の熱硬化性樹脂組成物を溶液に調製する場合の調製方法(製造方法)としては特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を構成する各成分(上記(A)・(B)・(C)等)を上記溶媒中に個別に添加・攪拌して製造する方法;予め上記各成分を個別に溶媒で溶解した成分溶液を調製しておき、これら成分溶液を混合することにより製造する方法等を挙げることができる。
また、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物が固形である場合でも、上記溶媒を含んでいてもよい。例えば、後述するように、熱硬化性樹脂組成物が樹脂シートまたは樹脂フィルムとなっている場合には、当該熱硬化性樹脂組成物の流れ性を制御するために、前記<(D)その他の成分2:有機溶媒>の項で説明したように、予め各種溶媒を含ませていてもよい。
したがって、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、(D−2)有機溶媒を、当該熱硬化性樹脂組成物の中の一成分として含んでいてもよいし、当該熱硬化性樹脂組成物には含まれない成分、換言すれば外部添加される成分となっていてもよい。
次に、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物が固形である場合に、その具体的な形状は、特に限定されるものではないが、例えば、予めシート状またはフィルム状に成形した樹脂シートまたは樹脂フィルムとして用いることができる。
ここで、上記樹脂シートまたは樹脂フィルムとは、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物をシート状またはフィルム状に加工したものであり、その具体的な形態としては、単層シート、2層または3層シート、多層シート等を挙げることができる。単層シートは、熱硬化性樹脂組成物のみからなるシートであり、2層または3層シートは、基材となるフィルム(基材フィルム)の片面またはは両面に、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層を形成してなるシートであり、多層シートは、基材フィルムと熱硬化性樹脂組成物からなる樹脂層とを交互に積層させたシートである。
上記樹脂シートの利点としては、次のような例を挙げることができる。例えば、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の用途の一つとしては、ビルドアップ配線基板のように多層化された積層体または回路基板の製造に用いる用途が挙げられる。このとき、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、硬化前の状態(Bステージ状態)とした上で、これを加圧および/または加熱することで、熱硬化性樹脂組成物を回路(銅等の導電体により形成)の間に流し込む。このとき、熱硬化性樹脂組成物が樹脂シートまたは樹脂フィルムであれば、これら樹脂シートや樹脂フィルムを回路に積層すればよい。
熱硬化性樹脂組成物が樹脂溶液であれば、回路(この回路が形成された基板)の表面に、樹脂溶液を塗布して層状に形成することになるが、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物が樹脂シートまたは樹脂フィルムとなっていれば、被着物に積層した後に、加圧および/または加熱するだけでよいので、塗布工程が必要なくなくなる。そのため、積層体の製造プロセスを簡素化できる等の効果が得られる。もちろん、被着物の形状によっては樹脂溶液である方が好ましい場合もあり得ることは言うまでもない。
上記樹脂シートおよび/または樹脂フィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、一般的には、単層シートの場合。前述した製造方法で得られた樹脂溶液を、支持体の表面に流延または塗布し(樹脂溶液塗布工程)、塗布した樹脂溶液を乾燥させ(乾燥工程)、乾燥により得られたシートを支持体から剥離する(剥離工程)ことによって製造することができる。
また、2層または3層シートの場合、前記樹脂溶液を基材フィルムの表面(片面または両面)に流延または塗布し(樹脂溶液塗布工程)、塗布した樹脂溶液を乾燥させて樹脂層を形成する(乾燥工程)ことによって製造することができる。さらに多層シートの場合、上記2層シートまたは3層シートの製造工程において、乾燥工程前の状態のものを重ね合わせることで製造することができる。
さらに、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を樹脂シートや樹脂フィルムとして用いる場合、これら樹脂シートや樹脂フィルムは繊維強化型であってもよい。繊維強化型の樹脂シートに用いられる繊維としては、具体的には、例えば、ガラス布、ガラスマット、芳香族ポリアミド繊維布、芳香族ポリアミド繊維マット等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。繊維強化型の樹脂シートの製造方法としては、繊維をワニス(樹脂溶液)に含浸させ、樹脂溶液を半硬化させる方法が挙げられるが、特に限定されるものではない。
<ポスト加熱処理>
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物においては、熱硬化性成分として、(B)多官能性シアン酸エステル類が含まれている場合であって、当該多官能性シアン酸エステルがモノマー型である場合、または、(C)エポキシ樹脂類が含まれている場合には、被着物に接着させた後に、ポスト加熱処理を実施することがより好ましい。このポスト加熱処理を実施することにより、モノマー型の多官能性シアン酸エステル類やエポキシ樹脂類の硬化反応を十分に進行させることができる。
ポスト加熱処理の具体的な条件については特に限定されるものではないが、例えば、熱硬化性成分がモノマー型の多官能性シアン酸エステル類である場合には、加熱温度が150〜250℃の範囲内、加熱時間が10分〜3時間の範囲内程度の範囲内程度、より好ましくは1〜3時間の範囲内程度の条件が、好適な条件の一例となっている。一方、熱硬化性成分がエポキシ樹脂類である場合には、加熱温度が150〜200℃の範囲内、加熱時間が10分〜3時間の範囲内程度の条件が、好適な条件の一例となっている。
<熱硬化性樹脂の誘電特性>
本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、硬化後に測定される誘電率および誘電正接が次の範囲内に入っていると、優れた低誘電特性を有していると判断することができる。すなわち、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、200〜250℃の範囲内における温度条件下で1〜5時間加熱し硬化させたときに、周波数1〜10GHzにおける誘電率が3.5以下、好ましくは3.2以下、より好ましくは3.0以下となっており、同じく誘電正接が0.010以下、好ましくは0.015以下、より好ましくは0.012以下となっていればよい。
誘電特性が上記の範囲内であれば、微細配線を有する回路基板を製造する際に、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を用いても、微細配線の電気的信頼性を維持し、回路の信号伝達速度を高速化することができる。
なお、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物には、その特性を低下させない限り、前述した以外の成分が含まれていてもよいことは言うまでもない。同様に、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物においては、前述した以外の工程が含まれていても良いことも言うまでもない。
<積層体・回路基板>
本発明にかかる積層体としては、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を含んでいるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、例えば、上述した2層または3層シートや多層シート等の樹脂シート、金属箔積層体等を挙げることができる。
上記金属箔積層体は、銅やアルミニウム等の金属層の片面または両面に、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を含む樹脂層(説明の便宜上、以下、単に樹脂層と略す)を形成してなるものである。より具体的には、樹脂層を1層以上と金属箔層を1層以上とを有する積層体であればよいが、例えば、金属箔の片面に樹脂層を設けてなる2層積層体;金属箔と樹脂層とを少なくとも1層以上有しており、金属箔と樹脂層とが交互に積層された多層積層体;等を挙げることができる。
上記金属箔積層体の製造方法は特に限定されるものではないが、例えば、前述した樹脂シートの製造方法のうち、2層または3層シート、あるいは多層シートの製造方法と同様の方法を用いればよい。具体的には、前記樹脂溶液を金属箔の表面(片面または両面)に流延または塗布し(樹脂溶液塗布工程)、流延または塗布した樹脂溶液を乾燥させて樹脂層を形成する(乾燥工程)ことによって製造することができる。
他の製造方法としては、前述した樹脂シートを金属箔表面に貼り付ける方法を挙げることができる。この場合、樹脂シートとしては、単層シートを貼り付けてもよいし、2層または3層シートを貼り付けてもよいし、多層シートを貼り付けてもよい。さらに他の製造方法としては、前記樹脂シートに化学めっきやスパッターなどにより金属箔を形成する方法を挙げることができる。
上記金属箔としては、回路基板の導体として用いることのできる金属であれば、その具体的な構成は特に限定されるものではなく、一般的には、上述したように、銅やアルミニウム等の材質からなる箔を挙げることができる。また、金属箔の厚みも特に限定されるものではなく、形成される回路の種類に応じて適切な膜厚を設定すればよい。
本発明にかかる回路基板は、上述した金属箔積層体における金属箔(導体層)に対して、金属エッチング等の方法を用いて所望のパターンの回路を形成することなどにより製造することができる。このとき用いられる金属エッチングの具体的な方法は特に限定されるものではないが、ドライフィルムレジストや液状のレジスト等を用いる方法を好適に用いることができる。また、回路のパターンも特に限定されるものではない。
以下、具体的な実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、これら実施例は本発明を説明するための一例であり、本発明を限定するためのものではない。特に、以下の実施例では、本発明の効果をより明確にするために複数の比較例を挙げているが、この比較例は全て本発明の範囲外の例となっているわけではなく、本発明における具体的な選択肢をより詳細に説明するために便宜的に「比較例」としたものが一部に含まれることを、念のため付記しておく。したがって、本発明の権利範囲は、以下の実施例や比較例に限定されるものではなく、また、当業者は、本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、および改変を行い得る。
なお、以下の合成例で得られたポリイミド樹脂のガラス転移温度、実施例および比較例で得られた熱硬化性樹脂組成物における硬化後の樹脂組成物の誘電特性および熱的特性、並びに、上記熱硬化性樹脂組成物を含む樹脂層を有する金属箔積層板の銅箔引剥強度は、次のようにして測定・評価した。
〔ガラス転移温度〕
測定装置として、動的粘弾性評価装置 DMS200(商品名、セイコーインスツルメンツ(株)製)を用いて、次に示す測定条件で測定した。なお、得られたtanδピーク温度をガラス転移温度とした。
測定温度範囲:30〜350℃
サンプル形状:9mm×40mm
測定周波数:5Hz
〔誘電特性〕
測定装置として、空洞共振器摂動法複素誘電率評価装置(商品名、(株)関東電子応用開発社製)を用いて、次に示す測定条件で誘電率および誘電正接を測定した。
測定周波数:3GHz、5GHz、10GHz
測定温度:22〜24℃
測定湿度:45〜55%
測定試料:上記測定条件下で、24時間放置した試料を使用した。
〔熱的特性〕
熱的特性を評価するために熱膨張係数を測定した。熱膨張係数は、TMA−50(商品名、島津製作所製)を用いて、次に示す測定条件にて測定し、測定結果における100〜200℃の範囲内における平均の熱膨張率を試料の熱膨張率とした。
測定方法:引張モード(試料にかかる荷重が0gとなるように調整)
昇温速度:10℃/分
測定範囲:30〜300℃
測定雰囲気:窒素(流量50ml/分)
測定試料:硬化後の樹脂を、硬化時の歪みを緩和させるために300℃で1分間加熱した試料を使用した。
試料形状:幅5mm×厚み50μm
測定間距離(チャック間距離):15mm
〔銅箔引剥強度〕
得られた金属箔積層体の金属箔をマスキングした後にエッチングし、3mm幅の導体層を形成して測定用の試料とした。そしてJIS C6481に従って金属箔引剥強度(引き剥がし角度が180°)を測定した。また、上記試料についてプレッシャークッカー試験(PCT試験)を行った。テスト条件は、121℃、100%RH、96時間とした。PCT試験後の試料についても、上記と同様にして金属箔引剥強度を測定した。
<可溶性ポリイミドの合成例>
〔合成例1〕
容量2000mlのガラス製フラスコに、ジメチルホルムアミド(以下、DMFと称する)に0.95当量の1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン(三井化学社製、以下、APBと称する)および0.05当量の3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル(和歌山精化社製、以下、HABと称する)を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌溶解した。
さらに、フラスコ内を窒素置換雰囲気下、溶液を氷水で冷却しつつ攪拌し、1当量の4、4’−(4、4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビスフタル酸無水物(GE社製、以下、IPBPと称する)を添加し更に3時間攪拌した。
このようにして、ポリアミド酸溶液を得た。なお、DMFの使用量は、APB、HABおよびIPBPのモノマー仕込濃度が30重量%となるように設定した。言い換えれば、DMFの使用量は、得られるポリアミド酸溶液に含まれるポリアミド酸の重量%が30重量%となるように設定した。
上記ポリアミド酸溶液300gをフッ素樹脂コートしたバットに移し、真空オーブンで200℃×3時間、5mmHg(約0.007気圧、約5.65hPa)の圧力の条件で減圧加熱することによって、可溶性ポリイミドであるポリイミド樹脂(a)を得た。
〔合成例2〕
APBに代えて、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(和歌山精化社製、以下、BAPS−Mと称する)を用いた以外は、合成例1と同一の量および同一の条件により、可溶性ポリイミドであるポリイミド樹脂(b)を得た。
〔合成例3〕
IPBPに代えて、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物(本州化学社製、以下、ESDAと称する)を用いた以外は、合成例1と同一の量および同一の条件で、可溶性ポリイミドであるポリイミド樹脂(c)を得た。
<ポリイミド溶液(A溶液)の調製例>
〔調製例A−1〕
合成例1で得られたポリイミド樹脂(a)粉末30gを75gのジオキソランに加えて撹拌、溶解させることにより、ポリイミド溶液(A−1)を得た(固形分率(SC)=30重量%)。
〔調製例A−2〕
合成例2で得られたポリイミド樹脂(b)粉末30gを70gのジオキソランに加えて撹拌、溶解させることにより、ポリイミド溶液(A−2)を得た(SC=30重量%)。
〔調製例A−3〕
合成例3で得られたポリイミド樹脂(c)粉末30gを70gのジオキソランに加えて撹拌、溶解させることにより、ポリイミド溶液(A−3)を得た(SC=30重量%)。
<シアン酸エステル溶液(B溶液)の調製例>
〔調製例B−1〕
ジオキソランとトルエンの8:2の混合溶媒70gに対して、多官能性シアン酸エステルPRIMASET BADCY(商品名、ロンザ社製)のオリゴマーであるBA200(商品名、ロンザ社製、モノマーの全シアナート基の内20〜30%がトリアジン環に転化したオリゴマー)30g、亜鉛(II)アセチルアセトナート0.08gを加えて、30〜40℃の温度範囲で2時間攪拌、溶解させることによって、シアン酸エステル溶液(B−1)を得た(SC=30%)。
〔調製例B−2〕
ジオキソランとトルエンの8:2の混合溶媒70gに対して、フェノールノボラック型シアン酸エステルPRIMASET PT−30(商品名、ロンザ社製、フェノールノボラック部位の平均繰り返し単位が約3)30g、亜鉛(II)アセチルアセトナート0.08gを加えて、30〜40℃の温度範囲で2時間攪拌、溶解させることによって、シアン酸エステル溶液(B−2)を得た(SC=30%)。
〔調製例B−3〕
ジオキソランとトルエンの8:2の混合溶媒700gに対して、多官能性シアン酸エステルPRIMASET BADCY(商品名、ロンザ社製)300g、亜鉛(II)アセチルアセトナート0.012g(多官能性シアン酸エステル100重量部に対して、0.012重量部)を加えて、30〜40℃の温度範囲で2時間攪拌、溶解させることによって、シアン酸エステル溶液(B−3)を得た(SC=30%)。
<エポキシ樹脂溶液(C溶液)の調製例>
〔調製例C−1〕
ジオキソランとトルエンの8:2の混合溶媒70gに対して、エポキシ樹脂エピコート1032H60(商品名、油化シェル社製)30g、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン9gを加え、室温下(20〜30℃の温度範囲)で3時間攪拌、溶解させることによって、エポキシ樹脂溶液(C−1)を得た(SC=30%)。
〔調製例C−2〕
ジオキソランとトルエンの8:2の混合溶媒70gに対して、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂EXA7200H(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)30g、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン9gを加え、室温下(20℃〜30℃の温度範囲)で3時間攪拌、溶解させることによって、エポキシ樹脂溶液(C−2)を得た(SC=30%)。
〔調製例C−3〕
ジオキソランとトルエンの8:2の混合溶媒70gにアルコキシ基含有変性エポキシ樹脂(商品名、荒川化学工業(株)製)30g、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン9gを加え、室温下(20〜30℃の温度範囲)で3時間攪拌、溶解させることによって、エポキシ樹脂溶液(C−3)を得た(SC=30%)。
<樹脂シートの作製例>
〔作製例1〕
調製例A−1で得られたポリイミド溶液(A−1)を、支持体としての125μmPETフィルム(商品名セラピールHP、東洋メタライジング社製)の表面上に流延した。その後、熱風オーブンにて60℃、80℃、100℃、120℃、140℃の温度で各5分加熱し、さらに150℃、5分間で加熱乾燥させた。さらにその後、ポリイミド樹脂からなるシートをPETフィルムから引き剥がすことによって、ポリイミド樹脂(a)からなる単層の樹脂シートを得た。得られた樹脂シートのガラス転移温度を測定した。その結果を表1に示す。
〔作製例2〕
調製例A−2で得られたポリイミド溶液(A−2)を用いて、作成例1と同様にすることにより、ポリイミド樹脂(b)からなる単層の樹脂シートを得た。得られた樹脂シートのガラス転移温度を測定した。その結果を表1に示す。
〔作製例3〕
調製例A−3で得られたポリイミド溶液(A−3)を用いて、作成例1と同様にすることにより、ポリイミド樹脂(c)からなる単層の樹脂シートを得た。得られた樹脂シートのガラス転移温度を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2003076515
<実施例・比較例>
まず、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の最初の例として、熱硬化性成分として(B)多官能性シアン酸エステル類のみを含む場合を例に挙げて説明する。したがって、以下の実施例1〜5および比較例1・2では、(A)〜(C)の必須成分のうち、(A)ポリイミド樹脂および(B)多官能性シアン酸エステル類を含むものを実施例とし、これから外れる例は比較例とする。
〔実施例1〕
調製例A−1で得られたポリイミド溶液(A−1)80gと調製例B−1で得られたシアン酸エステル溶液(B−1)20gとを混合し、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を含む溶液(樹脂溶掖)を調製した(表2参照)。
次に、得られた樹脂溶液を、支持体としての125μm厚のPETフィルム(商品名セラピールHP、東洋メタライジング社製)の表面上に流延した。その後、熱風オーブンにて60℃、80℃、100℃、120℃、140℃の温度で各5分加熱し、さらに150℃で5分間加熱乾燥させて、PETフィルムを基材とする2層の樹脂シートを得た。該樹脂シートから、PETフィルムを剥離除去し、単層の樹脂シートを得た。得られた単層の樹脂シートの厚みは50μmであった。
得られた樹脂シートを18μm厚の圧延銅箔(商品名BHY−22B−T、ジャパンエナジー社製)で樹脂表面と銅箔粗化面とが接するように挟み込み、温度200℃、圧力3MPaの条件で1時間加熱加圧した。その後、さらに熱風オーブン中200℃で2時間加熱処理を行うことによって、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、銅箔積層体(単層の樹脂シートを圧延銅箔で挟持した構成)を得た。
得られた銅箔積層体を用いて銅箔剥離強度を測定し、さらに、当該銅箔積層体の銅箔を全面除去して得られたシートを用いて、誘電特性および熱的特性を評価した。その結果を表3に示す。
〔実施例2〜5〕
ポリイミド溶液A−1またはA−2、シアン酸エステル溶液B−1ないしB−3の何れかを、表2に示す配合比で混合した以外は、実施例1と同一の方法および条件で、樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて、銅箔剥離強度、誘電特性および熱的特性を測定・評価した。その結果を表3に示す
〔比級例1〕
調製例A−1で得られたポリイミド溶液(A−1)80gと調製例C−1で得られたエポキシ樹脂溶液(C−1)20gとを混合し、熱硬化性樹脂組成物を含む溶液(樹脂溶液)を調製した(表2参照)。
次に、得られた樹脂溶液を、支持体としての125μm厚のPETフィルム(商品名セラピールHP、東洋メタライジング社製)の表面上に流延した。その後、熱風オーブンにて60℃、80℃、100℃、120℃、140℃の温度で各5分加熱し、さらに150℃で5分間加熱乾燥させて、本発明にかかるPETフィルムを基材とする2層の樹脂シートを得た。当該樹脂シートから、PETフィルムを剥離除去し、単層の樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの厚みは50μmであった。
得られた樹脂シートを18μm厚の圧延銅箔(商品名BHY−22B−T、ジャパンエナジー社製)で樹脂表面と銅箔粗化面とが接するように挟み込み、温度200℃、圧力3MPaの条件で1時間加熱加圧した。その後、さらに熱風オーブン中200℃で2時開加熱処理を行うことによって熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、銅箔積層体(単層樹脂シートを圧延銅箔で挟持した構成)を得た。
得られた銅箔積層体を用いて銅箔剥離強度を測定し、さらに、当該銅箔積層体の銅箔を全面除去し得られたシートを用いて、誘電特性および熱的特性を評価した。その結果を表3に示す。
〔比較例2〕
ポリイミド溶液A−1に代えてポリイミド溶液A−2を用いた以外は、比較例2と同一の方法および条件で、樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて銅箔剥離強度、誘電特性および熱的特性を測定・評価した。その結果を表3に示す。
Figure 2003076515
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上記のように、熱硬化性成分として(B)多官能性シアン酸エステル類を含む場合でも、十分に優れ諸物性を示すことができる。これに対して、(C)エポキシ樹脂類として、従来用いられていたものを用いた比較例では、熱膨張係数が高くなっていた。
次に、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の次の例として、熱硬化性成分として(B)多官能性シアン酸エステル類のみを含み、さらに、PCT耐性と加工性とのバランスを良好なものとするために、これらの配合比を特定の範囲内に制御する場合を例に挙げて説明する。したがって、以下の実施例6〜12および比較例3・4では、(A)ポリイミド樹脂および(B)多官能性シアン酸エステル類を含み、PCT試験後の接着強度が高い結果が出たものを実施例とし、これから外れる例は、本発明の範囲内に含まれるものであっても比較例とする。
〔実施例6〕
調製例A−1で得られたポリイミド溶液(A−1)90gと、調製例B−1で割れたシアン酸エステル溶液(B−1)10gとを混合し、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を含む樹脂溶液を調製した(表4参照)。
次に、得られた樹脂溶液を、支持体としての125μm厚のPETフィルム(商品名セラピールHP、東洋メタライジング社製)の表面上に流延した。その後、熱風オーブンにて60℃、80℃、100℃、120℃、140℃の温度で各5分加熱し、さらに150℃で5分間加熱乾燥させて、PETフィルムを基材とする2層の樹脂シートを得た。当該樹脂シートから、PETフィルムを剥離除去し、単層の樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの厚みは50μmあった。
得られた樹脂シートを18μm厚の圧延銅箔(商品名BHY−22B−T、ジャパンエナジー社製)で樹脂表面と銅箔粗化面とが接するように挟み込み、温度200℃、圧力3MPaの条件で1時間加熱加圧した。その後、さらに熱風オーブン中200℃で2時間加熱処理を行うことによって樹脂組成物を硬化させて、銅箔積層体(単層の樹脂シートを圧延銅箔で挟持した構成)を得た。
得られた金属積層体を用いて銅箔剥離強度を測定し、さらに、当該金属積層体の銅箔を全面除去して得られたシートを用いて、誘電特性および熱的特性を評価した。その結果を表5に示す。
〔実施例7〜12〕
ポリイミド溶液A−1ないしA−3の何れか、シアン酸エステル溶液B−1またはB−2、並びに、その他成分を表4に示す配合比で混合した以外は、実施例6と同一の方法および条件で、樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて、銅箔剥離強度、誘電特性および熱的特性を測定・評価した。その結果を表5に示す。
〔比較例3〕
ポリイミド溶液(A−1)80gと、シアン酸エステル溶液(B−1)20gとを混合した以外は、実施例1と同一の方法および条件で、樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて銅箔剥離強度、誘電特性を測定・評価した。その結果を表5に示す。
〔比較例4〕
ポリイミド溶液(A−1)98gと、シアン酸エステル溶液(B−1)2gとを混合した以外は、比較例3と同一の方法および条件で樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて銅箔剥離強度、誘電特性を測定・評価した。その結果を表5に示す。
Figure 2003076515
Figure 2003076515
上記のように、(A)ポリイミド樹脂と(B)多官能性シアン酸エステル類の混合比率(A/B)が、重量比で95/5〜85/15の範囲内にある場合には、PCT試験後の銅箔剥離強度は高く維持されていたが、上記範囲外にある場合には、PCT試験後の銅箔剥離強度は著しく低下した。
次に、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の次の例として、熱硬化性成分として(C)エポキシ樹脂類のみを含む場合を例に挙げて説明する。したがって、以下の実施例13〜16および比較例5〜7では、(A)ポリイミド樹脂および(C)エポキシ樹脂類を含み、接着強度が高い結果が出たものを実施例とし、これから外れる例は比較例とする。
〔実施例13〕
合成例1で得られたポリイミド樹脂(a)35g、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂EXA7200(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)15g、および硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.015gをジオキソランに溶解して樹脂溶液を得た。
次に、得られた樹脂溶液を、支持体としての125μm厚のPETフィルム(商品名セラピールHP、東洋メタライジング社製)の表面上に流延した。その後、熱風オーブンにて60℃、80℃、100℃、120℃、140℃の温度で各5分加熱し、さらに150℃で5分間加熱乾燥させて、PETフィルムを基材とする2層の樹脂シートを得た。当該樹脂シートから、PETフィルムを剥離除去し、単層の樹脂シートを得た。得られた単層の樹脂シートの厚みは50μmであった。
得られた樹脂シートを18μm厚の圧延銅箔(商品名BHY−22B−T、ジャパンエナジー社製)で樹脂表面と銅箔粗化面とが接するように挟み込み、温度200℃、圧力3MPaの条件で1時間加熱加圧した。その後、さらに熱風オーブン中200℃で2時間加熱処理を行うことによって、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、銅箔積層体(単層の樹脂シートを圧延銅箔で挟持した構成)を得た。
得られた金属積層体を用いて銅箔剥離強度を測定し、さらに、当該金属積層体の銅箔を全面除去して得られたシートを用いて、誘電特性および熱的特性を評価した。その結果を表6に示す。
〔実施例14〕
合成例2で得られたポリイミド樹脂(b)35g、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂EXA7200(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)15g、および硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.015gをジオキソランに溶解して樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を実施例13と同一の方法および条件で樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて銅箔剥離強度、誘電特性を測定・評価した。その結果を表6に示す。
〔実施例15〕
合成例1で得られたポリイミド樹脂(a)40g、アルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂コンポセランE103(商品名、荒川化学工業(株)製)10g、および硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.01gをジオキソランに溶解して樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を実施例13と同一の方法および条件で樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて銅箔剥離強度、誘電特性を測定・評価した。その結果を表6に示す。
〔実施例16〕
合成例1で得られたポリイミド樹脂(a)30g、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂EPICLON EXA7200H(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)20g、およびナフタレン系エポキシ樹脂EPICLON EXA−4700(商品名、大日本インキ化学工業(株)社製)1gをジオキソランに溶解して樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を実施例13と同一の方法および条件で樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて銅箔剥離強度、誘電特性を測定・評価した。その結果を表6に示す。
〔比較例5〕
合成例1で得られたポリイミド樹脂(a)30g、ビスフェノールA系エポキシ樹脂エピコート828(商品名、油化シェル(株)製)20g、および硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.01gをジオキソランに溶解して樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を実施例13と同一の方法および条件で樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて銅箔剥離強度、誘電特性を測定・評価した。その結果を表6に示す。
〔比較例6〕
合成例2で得られたポリイミド樹脂(b)40g、フェノールノボラック系エポキシ樹脂エピコート1032H60(商品名、油化シェル(株)社製)10g、および硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.01gをジオキソランに溶解して樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を実施例13と同一の方法および条件で樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて銅箔剥離強度、誘電特性を測定・評価した。その結果を表6に示す。
〔比較例7〕
共重合ナイロンであるプラタボンドM1276(商品名、日本リルサン社製)35g、ジシクロペンタジエン系エポキシ樹脂EPICLON EXA7200H(商品名、大日本インキ化学工業(株)製)15g、硬化剤としてジアミノジフェニルスルホン1g、および硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.015gをジオキソランに溶解し樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を実施例13と同一の方法および条件で樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて銅箔剥離強度、誘電特性を測定・評価した。その結果を表6に示す。
Figure 2003076515
上記のように、(A)ポリイミド樹脂と(B)多官能性シアン酸エステル類の混合比率(A/B)が、重量比で95/5〜85/15の範囲内にある場合には、PCT試験後の銅箔剥離強度は高く維持されていたが、上記範囲外にある場合には、PCT試験後の銅箔剥離強度は著しく低下した。
上記のように、熱硬化性成分として(C)エポキシ樹脂類として前述した好適エポキシ樹脂を含む場合でも、十分に優れ諸物性を示すことができる。これに対して、(C)エポキシ樹脂類として、従来用いられていたものを用いた比較例では、接着強度が不十分であったり、低誘電特性が得られなかったりした。
次に、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物の次の例として、熱硬化性成分として(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類の双方を含む場合を例に挙げて説明する。したがって、以下の実施例17〜23および比較例8〜13では、(A)ポリイミド樹脂、(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類を含むものを実施例とし、これから外れる例は、本発明の範囲内に含まれるものであっても比較例とする。
〔実施例17〕
調製例A−1で得られたポリイミド溶液(A−1)80gと、調製例B−1で得られたシアン酸エステル溶液(B−1)15gと、調製例C−1で得られたエポキシ樹脂溶液(C−1)5gとを混合し、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を含む溶液(樹脂溶液)を調製した(表7参照)。
次に、得られた樹脂溶液を、支持体としての125μm厚のPETフィルム(商品名セラピールHP、東洋メタライジング社製)の表面上に流延した。その後、熱風オーブンにて60℃、80℃、100℃、120℃、140℃の温度で各5分加熱し、さらに150℃で5分間加熱乾燥させて、PETフィルムを基材とする2層の樹脂シートを得た。当該樹脂シートから、PETフィルムを剥離除去し、単層の樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの厚みは50μmあった。
得られた樹脂シートを18μm厚の圧延銅箔(商品名BHY−22B−T、ジャパンエナジー社製)で樹脂表面と銅箔粗化面とが接するように挟み込み、温度200℃、圧力3MPaの条件で1時間加熱加圧した。その後、さらに熱風オーブン中200℃で2時間加熱処理を行うことによって、熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、銅箔積層体(単層の樹脂シートを圧延銅箔で挟持した構成)を得た。
得られた銅箔積層体を用いて銅箔剥離強度を測定し、さらに、当該銅箔積層体の銅箔を全面除去し得られたシートを用いて、誘電特性および熱的特性を評価した。その結果を表8に示す。
〔実施例18〜23〕
ポリイミド溶液A−1ないしA−3の何れか、シアン酸エステル溶液B−1またはB−2、エポキシ樹脂溶液C−1ないしC−3の何れかを、表7に示す配合比で混合した以外は、実施例17と同一の方法および条件で、樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて、銅箔剥離強度、誘電特性および熱的特性を測定・評価した。その結果を表8に示す。
〔比較例8〕
調製例1で得られたポリイミド溶液(A−1)80gと、調製例B−1で得られたシアン酸エステル溶液(B−1)20gとを混合した以外は、実施例17と同じ方法、条件で樹脂溶液、樹脂シート、金属箔積層体を得、それぞれについて銅箔剥離強度、誘電特性および熱的特性を評価した。その結果を表2に示した
〔比較例9〜11〕
ポリイミド溶液A−1またはA−2、シアン酸エステル溶液B−1またはB−2を、表7に示す配合比で混合した以外は、実施例17と同一の方法および条件で、樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて銅箔剥離強度、誘電特性および熱的特性を測定・評価した。その結果を表8に示す。
〔比較例12〕
調整例A−1で得られたポリイミド溶液(A−1)80gと、調製例C−3で得られたエポキシ樹脂溶液(C−3)20gとを混合し、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物を含む溶液(樹脂溶液)を調製した(表7参照)。
次に、得られた樹脂溶液を、支持体としての125μm厚のPETフィルム(商品名セラピールHP、東洋メタライジング社製)の表面上に流延した。その後、熱風オーブンにて60℃、80℃、100℃、120℃、140℃の温度で各5分加熱し、さらに150℃で5分間加熱乾燥させて、PETフィルムを基材とする2層の樹脂シートを得た。当該樹脂シートから、PETフィルムを剥離除去し、単層の樹脂シートを得た。得られた樹脂シートの厚みは50μmあった。
得られた樹脂シートを18μm厚の圧延銅箔(商品名BHY−22B−T、ジャパンエナジー社製)で樹脂表面と銅箔粗化面とが接するように挟み込み、温度200℃、圧力3MPaの条件で1時間加熱加圧した。その後、さらに熱風オーブン中200℃で2時間加熱処理を行うことによって熱硬化性樹脂組成物を硬化させて、銅箔積層体(単層の樹脂シートを圧延銅箔で挟持した構成)を得た。
得られた銅箔積層体を用いて銅箔剥離強度を測定し、さらに、当該銅箔積層体の銅箔を全面除去し得られたシートを用いて、誘電特性および熱的特性を評価した。その結果を表8に示す。
〔比較例13〕
ポリイミド溶液A−1に代えてポリイミド溶液A−2を用いた以外は、比較例13と同一の方法および条件で、樹脂溶液、樹脂シートおよび金属箔積層体を得るとともに、これらそれぞれについて、銅箔剥離強度、誘電特性および熱的特性を測定・評価した。その結果を表8に示す。
Figure 2003076515
Figure 2003076515
上記のように、熱硬化性成分として(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類を含む場合でも、十分に優れ諸物性を示すことができる。これに対して、熱硬化性成分として何れか一方のみを用いた比較例では、接着強度が不十分となる場合がある。
以上のように、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、(A)ポリイミド樹脂と、(B)多官能性シアン酸エステル類および/または(C)エポキシ樹脂類とを少なくとも含み、用途等に応じて、上記(D)他の成分を含む構成である。
より具体的には、本発明では、主成分である(A)ポリイミド樹脂に配合する熱硬化性成分として、(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類の少なくとも一方を併用する。
このとき、(A)ポリイミド樹脂として、一般式(1)で表されるような、エーテル結合を有する酸二無水物とジアミン類とを反応させて得られる可溶性ポリイミドを用いることが好ましい。また、(B)多官能性シアン酸エステル類としては、前記一般式(6)で表されるモノマーおよび/またはそのオリゴマーが用いられ、(C)エポキシ樹脂類としては、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂および/またはアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂(好適エポキシ樹脂)が好ましく用いられる。
さらに、(A)ポリイミド樹脂に対して、熱硬化性成分の一つである(B)多官能性シアン酸エステル類を配合する際に、それぞれの配合量(ブレンド量)を所定の範囲内に調整する。これら(A)および(B)の各成分の混合比は重量比で95/5〜85/15であることが好ましい。このとき、上記熱可塑性樹脂組成物においては、硬化後の銅箔との接着力は、PCT処理の前後において5N/cm以上であることが好ましく、(A)ポリイミド樹脂のガラス移転温度は250℃以下であることが好ましい。また、(C)成分についても特定の重量比で混合することが好ましい。
換言すれば、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、(A)ポリイミド樹脂と、(B)多官能性シアン酸エステル類および/または(C)エポキシ樹脂類の3つの成分を含んでいればよいが、具体的な成分としては、(A)として、一般式(1)で表される可溶性ポリイミドを、(B)として、一般式(6)で表される多官能性シアン酸エステル類を、(C)として、一般式(8)、(9)および(10)で表されるエポキシ樹脂のうち少なくとも1種を用いることが好ましく、これら3種類の具体的な成分のうち、少なくとも2種を含んでいることが好ましい。
上記構成においては、まず、(A)ポリイミド樹脂として上記可溶性ポリイミドを用いれば、(B)多官能性シアン酸エステル類と特異的に相溶できるだけでなく、広い範囲の混合比率で良好に相溶できる。そのため、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物では、(A)ポリイミド樹脂の優れた誘電特性を低下させる(誘電率や誘電正接を高くする)ことなく、加工性等の諸物性を向上することができ、さらには、耐熱性等の諸物性も優れたものとすることができる。しかも、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、従来の熱可塑性ポリイミド樹脂系のブレンド接着材料と比較してもガラス転移温度が比較的低温となっているため、被着物に接着する際には、より低温での接着が可能となる。それゆえ、貼り合わせ加工時の加工性や取扱性等にも優れたものとなっている。
また、上記(B)多官能性シアン酸エステル類として、上記モノマーおよび/またはそのオリゴマーを用いれば、(C)エポキシ樹脂類とともに(A)ポリイミド樹脂に十分な量となるように混合することが可能となる。このように(B)多官能性シアン酸エステル類を十分含んでいれば、従来のエポキシ樹脂系の接着材料や、ポリイミド/エポキシ樹脂を混合したブレンド接着材料に比べて、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、誘電特性、接着性、加工性、耐熱性等の諸特性の特性バランスを優れたものとなる。特に、得られる熱硬化性樹脂組成物の加工性、特にプレス装置やラミネート装置等を用いた貼り付け加工時における加工性を向上させることができる。さらには、加工性の向上とともに、(A)ポリイミド樹脂の優れた誘電特性を低下させることを抑制できる上に、PCT耐性も発揮させることができる。
さらに、上記(C)エポキシ樹脂類として、上記好適エポキシ樹脂を用いれば、当該エポキシ樹脂をポリイミド樹脂に十分な量となるように混合して、得られる熱硬化性樹脂組成物の加工性を向上させても、ポリイミド樹脂の優れた誘電特性を低下させることを抑制したり、接着性の耐環境製を優れたものとしたりすることができる。しかも、(C)エポキシ樹脂類を十分に含んでいれば、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、シート状に加工した状態でも接着性の耐環境性を発揮することができる。
加えて、上記のように、(A)・(B)・(C)の各成分の混合比を設定すれば、PCT耐性を向上できるだけでなく、加工性も向上することができ、特にプレス装置やラミネート装置等を用いた貼り付け加工時における加工性も発揮することできる。
なお、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様または実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求の範囲内で、いろいろと変更して実施することができるものである。
産業上の利用の可能性
以上のように、本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物、それを用いてなる積層体および回路基板では、GHz帯域における誘電特性、加工性、耐熱性および接着性に優れ、更には、接着性、特にPCT耐性にも優れたものとなっている。
その結果、本発明では、上記従来のブレンド接着材料で生じる問題点を十分に解消することが可能になり、FPCやビルドアップ配線基板等の積層体のように、耐熱性、低誘電率、低誘電正接等の低誘電性が要求される回路基板の製造に好適に用いることができる。
したがって、本発明は、各種樹脂や樹脂組成物を製造する高分子化学産業に加えて、ブレンド接着材料や樹脂シート、積層体等を製造する応用的な化学産業に利用することができ、さらには、FPCやビルドアップ配線基板等といった電気・電子部品を製造する分野や、これらを利用した電気・電子機器を製造する分野にも利用することが可能となる。

Claims (21)

  1. (A)ポリイミド樹脂と、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類の少なくとも一方とを含んでおり、
    上記(A)ポリイミド樹脂として、少なくとも、次に示す一般式(1)
    Figure 2003076515
    (ただし、式中Vは、−O−、−CO−、−O−T−O−、およびCOO−T−OCO−からなる群より選択される2価の基を示し、Tは2価の有機基を示す。)
    で表される少なくとも1種の酸二無水物と、ジアミン類とを反応させて得られる可溶性ポリイミドが用いられる熱硬化性樹脂組成物。
  2. 上記ジアミン類が、次に示す一般式(4)
    Figure 2003076515
    (ただし、式中、YおよびYは、それぞれ独立して、−C(=O)−、−SO−、−O−、−S−、−(CH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=O)O−、または単結合(直接結合)を示し、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基または炭素数1以上5以下のアルキル基を示し、mおよびnは1以上5以下の整数である。)で表される少なくとも1種類のジアミン類である請求の範囲1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  3. 上記ジアミン類が、次に示す一般式(5)
    Figure 2003076515
    (ただし、式中、YおよびYは、それぞれ独立して、−C(=O)−、−SO−、−O−、−S−、−(CH−、−NHCO−、−C(CH−、−C(CF−、−C(=O)O−、または単結合(直接結合)を示し、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、ハロゲン基または炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、mおよびnは1以上5以下の整数である。)で表されるジアミン類である請求の範囲2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  4. 上記ジアミン類として、水酸基および/またはカルボキシル基を有するジアミンを少なくとも1種含む請求の範囲2に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  5. 上記一般式(1)で表される酸二無水物では、当該一般式(1)におけるTが、次に示す群(2)
    Figure 2003076515
    で表される有機基か、次に示す一般式(3)
    Figure 2003076515
    (ただし、式中、Zは、−C2Q−、−C(=O)−、−SO−、−O−、および−S−から成る群より選択される二価の基であり、Qは1以上5以下の整数である。)
    で表される有機基である請求の範囲1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  6. (A)ポリイミド樹脂として用いられる可溶性ポリイミドのガラス転移温度が250℃以下となっている請求の範囲1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  7. 上記(B)多官能性シアン酸エステル類として、次に示す一般式(6)
    Figure 2003076515
    (ただし、Rは、単結合、芳香環、脂肪族環を少なくとも1つを有する2価の有機基、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−CH(CH)−、−CH(CF)、−SO−、−S−、−O−、から選択され、R、Rは、それぞれ同一または異なって、−H、−CH、−CF、から選択され、oは0以上7以下の整数、p、qは、それぞれ同一または異なって0以上3以下の整数である。)
    で表される化合物から選択される多官能性シアン酸エステル、および/またはそのオリゴマーから選択される少なくとも1種である請求の範囲1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  8. 上記(B)多官能性シアン酸エステル類は、次に示す群(7)
    Figure 2003076515
    (ただし、rおよびtは、0以上5以下の整数を表す。)
    で表される化合物から選択される少なくとも一種である請求の範囲7に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  9. 上記(C)エポキシ樹脂類として、次に示す一般式(8)、(9)および(10)
    Figure 2003076515
    (ただし、上記各式中Gは、次に示す構造式
    Figure 2003076515
    で表される有機基であり、i、j、kはそれぞれ独立して0以上5以下の整数であり、R10、R11、R12、R13はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
    で表されるエポキシ樹脂、および/またはアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂が用いられる請求の範囲1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  10. (A)ポリイミド樹脂の全成分の重量をCとし、(B)多官能性シアン酸エステル類の全成分の重量をCとしたときに、上記(A)ポリイミド樹脂および(B)多官能性シアン酸エステル類の混合比が、
    :C=20:80〜90:10
    の範囲内にある請求の範囲1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  11. (A)ポリイミド樹脂の全成分の重量をCとし、(B)多官能性シアン酸エステル類の全成分の重量をCとしたときに、上記(A)ポリイミド樹脂および(B)多官能性シアン酸エステル類の混合比が、
    :C=95:5〜85:15
    の範囲内にある請求の範囲1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  12. (A)ポリイミド樹脂の全成分の重量をCとし、(C)エポキシ樹脂類の全成分の重量をCとしたときに、上記(A)ポリイミド樹脂および(C)エポキシ樹脂類の混合比が、
    :C=50:50〜99:1
    の範囲内にある請求の範囲1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  13. (A)ポリイミド樹脂の全成分の重量をCとし、(B)多官能性シアン酸エステル類の全成分の重量をCとし、(C)エポキシ樹脂類の全成分の重量をCとしたときに、(A)ポリイミド樹脂、(B)多官能性シアン酸エステル類、および(C)エポキシ樹脂類のそれぞれの組成比が
    /(C+C+C)=0.5〜0.96
    /(C+C+C)=0.02〜0.48
    /(C+C+C)=0.002〜0.48
    の範囲内にある請求の範囲1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  14. さらに、(B)多官能性シアン酸エステル類の硬化を促進させる硬化触媒、および(C)エポキシ樹脂類の硬化を促進させる硬化剤の少なくとも一方を含む請求の範囲1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  15. 上記(B)多官能性シアン酸エステル類の硬化を促進させる硬化触媒として、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸亜鉛、コバルト(II)アセチルアセトナート、コバルト(III)アセチルアセトナート、ナフテン酸コバルト、銅(II)アセチルアセトナート、ナフテン酸銅から選択される少なくとも1種が用いられる請求の範囲14に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  16. (C)エポキシ樹脂類の硬化を促進させる硬化剤と、(C)エポキシ樹脂類との反応を促進する硬化促進剤を含む請求の範囲14に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  17. 200℃〜250℃の温度条件下で1時間〜5時間加熱して硬化させた後に、誘電率が3.0以下、誘電正接が0.01以下であるという条件1、およびPCT処理の前後において、銅箔との接着力がいずれも5N/cm以上であるという条件2のうち、少なくとも一つを満たす請求の範囲1に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  18. さらに、上記条件1において、誘電率が3.2以下であり、誘電正接が0.012以下である請求の範囲17に記載の熱硬化性樹脂組成物。
  19. (A)ポリイミド樹脂と、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類の少なくとも一方とを含んでおり、
    上記(B)多官能性シアン酸エステル類としては、次に示す一般式(6)
    Figure 2003076515
    (ただし、Rは、単結合、芳香環、脂肪族環を少なくとも1つを有する2価の有機基、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−CH(CH)−、−CH(CF)、−SO−、−S−、−O−、から選択され、R、Rは、それぞれ同一または異なって、−H、−CH、−CF、から選択され、oは0以上7以下の整数、p、qは、それぞれ同一または異なって0以上3以下の整数である。)
    で表される化合物から選択される多官能性シアン酸エステル、および/またはそのオリゴマーから選択される少なくとも1種が用いられ、
    上記(C)エポキシ樹脂類として、次に示す一般式(8)、(9)および(10)
    Figure 2003076515
    Figure 2003076515
    (ただし、上記各式中Gは、次に示す構造式
    Figure 2003076515
    で表される有機基であり、i、j、kはそれぞれ独立して0以上5以下の整数であり、R10、R11、R12、R13はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
    で表されるエポキシ樹脂、および/またはアルコキシ基含有シラン変性エポキシ樹脂から選択される少なくとも1種のエポキシ樹脂が用いられる熱硬化性樹脂組成物。
  20. (A)ポリイミド樹脂と、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類の少なくとも一方とを含んでおり、
    上記(A)ポリイミド樹脂として、少なくとも、次に示す一般式(1)
    Figure 2003076515
    (ただし、式中Vは、−O−、−CO−、−O−T−O−、およびCOO−T−OCO−からなる群より選択される2価の基を示し、Tは2価の有機基を示す。)
    で表される少なくとも1種の酸二無水物と、ジアミン類とを反応させて得られる可溶性ポリイミドが用いられる熱硬化性樹脂組成物を含む層を1層以上有する積層体。
  21. (A)ポリイミド樹脂と、熱硬化性成分である(B)多官能性シアン酸エステル類および(C)エポキシ樹脂類の少なくとも一方とを含んでおり、
    上記(A)ポリイミド樹脂として、少なくとも、次に示す一般式(1)
    Figure 2003076515
    (ただし、式中Vは、−O−、−CO−、−O−T−O−、およびCOO−T−OCO−からなる群より選択される2価の基を示し、Tは2価の有機基を示す。)
    で表される少なくとも1種の酸二無水物と、ジアミン類とを反応させて得られる可溶性ポリイミドが用いられる熱硬化性樹脂組成物を用いてなる回路基板。
JP2003574727A 2002-03-08 2003-03-06 熱硬化性樹脂組成物、それを用いてなる積層体および回路基板 Pending JPWO2003076515A1 (ja)

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