JPWO2003047070A1 - アキシャルギャップ型回転電機 - Google Patents

アキシャルギャップ型回転電機 Download PDF

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JPWO2003047070A1
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真也 内藤
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Abstract

誘導電流によるエネルギー損失を低減して、例えば強い磁石を使用した高トルクの駆動源として小型で高いモータ効率が得られるアキシャルギャップ型回転電機を提供する。回転軸に固定された円板状のロータ側のヨークと、該ロータ側のヨークに対向する円板状のステータ側のヨーク23と、該ロータ側又はステータ側のいずれか一方のヨークの対向面側に固定されたマグネットと、前記ロータ側又はステータ側の他方のヨークの対向面側に、前記マグネットに対向して放射状に配設され、該ヨーク23に固定された複数のティース24と、該複数のティースの各々に巻回されたコイルとからなるアキシャルギャップ型回転電機において、前記ティース24は、ティース用板材124の積層体からなり、前記ティース用板材124の重ね合せ面124aを円周方向に配設した。

Description

技術分野
本発明は、電動モータや発電機等を構成し、また車両駆動源として用いた場合には回生ブレーキとしてモータと発電機の両方の作用を利用するロータ及びステータからなる回転電機に関する。
背景技術
電動二輪車等の駆動源やその他一般の電動モータとしてラジアルギャップ型電動モータが用いられている。このラジアルギャップ型電動モータは、例えばロータ側に、マグネットを軸廻りに円筒状に設け、このマグネットの円筒面に対向して複数のティースをステータ側に設け、このティースにコイルを巻回したものである。したがって、マグネットと各ティースの対向面のギャップは軸に沿って円筒状に形成される。
一方、オーディオ機器等の比較的小出力の回転駆動源としてアキシャルギャップ型電動モータが用いられている。このアキシャルギャップ型電動モータは、回転軸に固定された円板状のロータ側のヨークと、該ロータ側のヨークに対向する円板状のステータ側のヨークと、該ロータ側又はステータ側のいずれか一方のヨークの対向面側に固定されたマグネットと、前記ロータ側又はステータ側の他方のヨークの対向面側に、前記マグネットに対向して放射状に配設された複数のティースと、該複数のティースの各々に巻回されたコイルとにより構成される。したがって、マグネットとティースの対向面のギャップは、軸に垂直な平面状に形成される。
図22は、従来のアキシャルギャップ型電動モータの磁束説明図である。図は1つのティース3についてのみ磁束を示し、その左右隣のティース3については図示省略してある。
ステータ1は、鋼板の積層体からなる円板状ステータヨーク2を備え、このステータヨーク2上に複数の同じく鋼板の積層体からなるティース3を放射状に配設したものである。各ティース3にコイル(不図示)が巻回される。このステータのティース3に対向して円板状のロータ(不図示)が配設される。このロータにマグネットがティース3の上面に対し所定のギャップを隔てて固定される。なお円板状とは円形及び平板リング状(ドーナツ形状)を含む。
不図示のロータとステータとの間で磁気回路が形成され、マグネットのN極から出た磁束は、ティース3からステータヨーク2へ流れ(矢印A)、他のティース3を通してマグネットのS極へ流れる(不図示)。コイルへの通電により、そのコイルのティースが励磁され、ティース上面に対向するロータのマグネットを吸引及び反発させる。コイルへの通電を順次切換えることにより、励磁するティースを順次移動させてマグネットとともにロータを回転させる。
このようなアキシャルギャップ型モータは、マグネットとティースとの対向面が軸方向に垂直であるため、ラジアルギャップ型に比べ軸方向が短くなる。出力を大きくする場合にも、軸方向を長くすることなくギャップ対向面を大きくできるため、モータの薄型化に寄与できる。
しかしながら、上記アキシャルギャップ型電動モータにおいて、コイルへの通電によりティース3からステータヨーク2へ流れる磁束は、ロータ側のマグネットが回転するため、その向きや大きさが変化し、その変化量に応じた電磁誘導によって、ステータヨーク2の中をティース3を中心にその周囲に渦状の誘導電流Bが流れる(図22)。この誘導電流Bはジュール熱となってエネルギーの損失となりモータ効率を低下させる。
このような熱によるエネルギーの損失は、低出力の場合にはそれほど大きな問題とならないが、例えば電動二輪車のように大きなトルクを得るために強いマグネットを用いる場合には、損失が著しく大きくなるとともに温度上昇率も高くなり高温になる。
したがって、このようなアキシャルギャップ型電動モータは、薄型で電動二輪車の車軸等に装着するのに好適であると考えられるにもかかわらず、高トルクで強い磁石を用いる電動二輪車ではモータ効率が著しく低下するため、駆動源としては適用されていなかった。
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、誘導電流によるエネルギー損失を低減して、強い磁石を使用した例えば高トルクの駆動源として小型で高いモータ効率が得られるアキシャルギャップ型回転電機の提供を目的とする。
発明の開示
前記目的を達成するため、本発明では、回転軸に固定された円板状のロータ側のヨークと、該ロータ側のヨークに対向する円板状のステータ側のヨークと、該ロータ側又はステータ側のいずれか一方のヨークの対向面側に固定されたマグネットと、前記ロータ側又はステータ側の他方のヨークの対向面側に、前記マグネットに対向して放射状に配設され、該ヨークに固定された複数のティースと、該複数のティースの各々に巻回されたコイルとからなるアキシャルギャップ型回転電機において、前記ティースは、ティース用板材の積層体からなり、前記ティース用板材の重ね合せ面を円周方向に配設したことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機を提供する。
この構成によれば、マグネットからティースに流れる磁束による誘導電流を有効に低減できる。これは以下の理由による。
マグネットは、円板(ドーナツ状)のため、ティースの円周方向には、ティースの対向していない部分にもマグネットは存在する。このマグネットから出る磁束は、ティースの対向面(上面)ではなく放射方向側の側面(横面)に入る(図17、18のC)。この側面がティース用板材の重ね合せ面側の場合、面内に過電流が形成されるため、大きな誘導電流が流れる。
一方、放射方向には、ティース対向面からマグネットがはみ出すとしてもわずかであるから、このマグネットから出る磁束(図17、18のD)の量もわずかである。したがって、この面がティース用板材の重ね合せ面であっても損失は小さい。すなわち、ティースに対向するマグネットは、ティースへの実際の矩形対向面とその4辺外側周縁のはみ出し部分がある。この4辺のはみ出し部分とは放射方向の内外2辺と円周方向の左右2辺の4辺である。このうち、円周方向のはみ出し部分が、放射方向のはみ出し部分より大きいため、円周方向からの磁束に対向して各ティース用板材の側面(板厚を表す面)を配置することにより、渦電流が形成されにくくなって、誘導電流を低減することができる。
言い換えると、放射方向のはみ出し部分が、円周方向のはみ出し部分より小さいため、この部分の磁束をティース用板材の重ね合せ面側とすることにより誘導電流を小さくできる。
なお、マグネットから出る磁束は、ほとんど全て矩形ティースの上面を通してティース内に入り、はみ出し部からの磁束は少ない。
好ましい構成例では、前記ヨークに設けたティース固定用の固定孔は、長手方向を有する形状であって、その長手方向を放射方向としたことを特徴としている。
この構成によれば、各ティース用板材の側面が見える面(渦電流が流れにくい面)を長手方向に配置し、この面を磁束の大きい側に配置するため、誘導電流を効率よく低減できる。
好ましい構成例では、前記固定孔は、長方形であることを特徴としている。
この構成によれば、一定形状のティース用板材を積層してティースを形成することができる。
好ましい構成例では、前記ティースの重ね合せ面側とステータヨークの固定孔との間に磁気抵抗部を設けたことを特徴としている。
この構成によれば、渦電流が形成されやすいティース用板材の重ね合せ面側と固定孔との間に、例えば空間を形成して磁気抵抗を高めることにより、この面を通る磁束が小さくなり、誘導電流が低減する。
好ましい構成例では、前記各ティース用板材の板厚を表す側面とステータヨークの固定孔との間に誘導電流に対する抵抗部を設けたことを特徴としている。
この構成によれば、誘導電流が有効に低減される。すなわち、通常は、固定孔に圧入された積層ティース圧入面は密着して電流が流れやすいため、積層されたティース用板材同士間で渦電流が流れる。本発明では、この圧入密着面に空間あるいは絶縁材等を設けることにより電気抵抗を高め、誘導電流を低減する。
発明を実施するための最良の形態
以下図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明のアキシャルギャップ型電動モータが適用される電動二輪車の側面図である。
この電動二輪車10は、メインフレーム4の前端に固着されたヘッドパイプ5を挿通してハンドル6のステアリング軸(不図示)が装着され、これに連結されたフロントフォーク7を介して前輪8を支持する。車体中央部にサドル9が設けられ、その下側のメインフレーム4にバッテリ11が固定される。メインフレーム4の中央部から後方に向けて、ピボット12を介してスイングアーム13がダンパ14を介して揺動可能に支持される。スイングアーム13の後端部にモータケース16が一体に形成される。このモータケース16内に後輪15の車軸(不図示)とともにその車軸と同軸上に後述の本発明に係るアキシャルギャップ型電動モータが装着される。
図2は、上記電動二輪車の後輪部分の要部構成図である。
後輪15のタイヤ15aは、車軸17に固定されたホイル18に装着される。スイングアーム13と一体のモータケース16内に、アキシャルギャップ型の電動モータ19が装着される。この電動モータ19は、ロータ軸20と、このロータ軸20に固定されたロータヨーク21と、ロータヨーク21に固定されたマグネット22と、モータケース16に固定されたステータヨーク23と、ステータヨーク23にマグネット22と対向して放射状に並べて固定された複数のティース24と、各ティース24に巻回されたコイル25とにより構成される。
ロータ軸20の一方の端部は、ベアリング26を介してモータケース16に対し回転可能に支持され、他方の端部は、軸受27を介して車軸17に対し回転可能に支持される。ロータ軸20は、遊星機構28を介して車軸17に連結される。この遊星機構28自体は公知のものであり、モータケース側に固定された筒状ハウジング29と、このハウジング29の内面に設けたリングギヤ30と、ロータ軸20に設けたサンギヤ31と、このサンギヤ31及びリングギヤ30に噛合って自転及び公転する遊星ギヤ32と、この遊星ギヤ32を支持するキャリア33と、キャリア33を支持する車軸17と一体のキャリア支持板34とにより構成される。車軸17はベアリング35を介してハウジング29に対し回転可能に取付けられている。
図3は、本発明に係るアキシャルギャップ型電動モータのステータ部分の要部構成図である。
鋼板の積層体からなる円板状(ドーナツ状)ステータヨーク23上に鋼板の積層体からなる複数のティース24が放射状に配設され、例えば圧入固定される。ステータヨーク23は、後述の図11に示すように、鋼板を打ち抜き加工した(この例では図3のようにドーナツ状の)ヨーク用板材123を積層して形成したものである。また、ティース24は、図11に示すように、鋼板を打ち抜き加工したティース用板材124を積層して形成したものである。
ティース用板材124は、表裏の板面124aを積層する面として重ね合わせて積層される。鋼板の板厚に相当する側面124bが積層体であるティース24の側面に露出する。この例では、積層方向が半径方向(放射方向)であり、重ね合わせ面となる板面124aの方向が円周方向になるように、ティース24がヨーク23に圧入され固定される。
各ティース24にコイル25(図2)が巻回される。これらのティース24に対向して、前述の図2に示したように、円板状のロータヨーク21に固定したマグネット22が所定のギャップを隔てて配設される。本実施形態では、各ティース24の外周側のステータヨーク23を切断してスリット36を形成している。
図4は、上記ステータヨークに設けたスリットの作用説明図である。
各ティース24に巻回したコイル(不図示)への通電により、そのコイルのティース24が励磁され、ティース上面に対向するロータ(不図示)のマグネットを吸引及び反発させる。励磁するコイルを順番に切り換えることにより、マグネットを順番に吸引、反発させてロータを回転させる。このときマグネット側からティース24に向けて磁束が流れ、マグネットと所定のティース24とステータヨーク23を通して磁路が形成される。この磁路を形成する磁束は、所定のティース24から、矢印Aのようにステータヨーク23を通して流れる。このときロータの回転に伴う磁束変化によって、図17で説明したように、ティース24の周囲のステータヨーク23内に誘導電流が発生する(図の点線位置)。しかしながら、本実施形態では、各ティース24の根元部分の圧入部外周側のステータヨーク23に、絶縁層となるスリット36が形成されるため誘導電流が遮断され、実質上この誘導電流は流れない。
すなわち、スリット36が誘導電流に対する抵抗部となり、誘導電流を遮断又は低減させる。このような抵抗部は、細長い間隔を有するスリットに限らず、ほとんど間隔のない切込み或いは他の形状の孔等の空間部により形成してもよい。また、絶縁フィルムを挟んだり、樹脂等の絶縁剤を充填してもよい。あるいは、ヨークを切り欠くことなく、化学処理やレーザー処理その他の処理で、誘導電流が流れる部分を変質させることにより、絶縁性をもたせて誘導電流を低減してもよい。
図5は、上記本発明実施形態のステータヨークの平面図である。
円環状のステータヨーク23に複数のティース圧入孔37が貫通して形成される。各圧入孔37の外周側に開口するスリット36がステータヨーク23を切断して形成される。
この圧入孔37は、ティースの一部(図11の圧入部24a)をヨークに対し挿入し固定するための固定部である。この固定部(圧入孔37)は、後述の図9(A)のように、ヨーク23をその板厚方向に貫通する孔であってもよいし、あるいは図9(C)のように、貫通しないで途中まで孔を形成した凹みであってもよい。
図6は、本発明の別の実施形態のステータヨーク平面図である。
この実施形態は、ステータヨーク23に形成された各ティース圧入孔37の内周側を切断してスリット36を形成したものである。このように各ティース圧入孔37の内周側を切断しても、図5の例と同様に誘導電流を遮断することができる。
図7は、本発明のさらに別の実施形態のステータヨーク平面図である。
この実施形態は、隣り合うティース圧入孔37の放射方向の中央部同士を連通して円弧状又は直線状のスリット36を形成したものである。このようにステータヨーク23の円周方向(放射方向に対し直角方向)に沿ってスリット36を形成する。このスリット36により、ティースが固定される圧入孔周囲に形成される誘導電流を遮断または低減できる。
この場合、電気角で360°となる1組みのティース24同士を連結してスリット36を形成することにより、有効に誘導電流の発生を抑えることができる。図7の例では、18スロット12極のモータにおいて、隣接する3個のティース24(U相、V相、W相)で360°の電気角を形成した例であり、隣接する3個のティース圧入孔37ごとに、各ティース圧入孔37の放射方向の中央部同士を連結してスリット36が形成されている。なお、スリット36の位置は中央部以外でもよい。
図8は、本発明のさらに別の実施形態の形状説明図である。
この実施形態は、スリット36をティース圧入孔37に開口させずにその手前まで切断し、ティース圧入孔37の周縁が連続した状態となるようにスリット端部に連結部136を形成したものである。これにより、誘導電流を低減するとともに、スリット36を形成したことによるティース圧入時のステータヨークの変形やティースの圧入保持力の低下を防止することができる。なお、図の例はティースの外周側にスリット36を形成した図5の実施形態への適用例を示しているが、図6及び図7の例についても同様にティース圧入孔37に開口させずにティース圧入孔37の周縁が連続した状態でスリット36を形成してもよい。
図9は図8のヨーク23のX−X部の断面図である。
(A)に示すように、ステータヨーク23は、ヨーク用板材123の積層体であり、圧入孔37とスリット36との間に連結部136が形成される。
(B)は(A)の変形例であり、スリット36がヨーク23の板厚方向に貫通しないで途中まで形成した例である。この例では、一番下のヨーク用板材123にスリット用の開口が形成されていない。このように、連結部136とともにヨークの板厚方向にもスリットの非形成部を設けることにより、ヨークの変形防止効果が大きくなる。
(C)は圧入孔37がヨーク23の板厚方向に貫通しないで途中まで形成した凹み形状の圧入孔37を示す。この例では、一番下のヨーク用板材123に圧入孔37が形成されていない。
図10(A)〜(G)は、本発明に係る誘導電流に対する抵抗部のさらに別の形状例を示す図である。
(A)は、圧入孔37の内周側及び外周側に対し交互にスリット36を形成したものである。1つおきでなくても、複数個ごとに交互に設けてもよい。
(B)は、外周側(又は内周側)に、2つのスリット36を逆方向から形成したものである。このようにスリットの一方の端部を開放しないで閉じて連続させた状態で2つ(又はそれ以上)のスリットをラビリンス状に並べることにより、図8の例と同様に、ヨークの強度が維持されるとともに、誘導電流に対する抵抗が大きくなり誘導電流低減の効果が大きくなる。
(C)は、放射方向のスリット36の両方の端部を開放しないで閉じて連結させたものである。すなわち、図8の例で、ヨーク23の外周縁側についてもスリット36の端部を内周側と同様に連続させたものである。
(D)は、放射方向のスリット36を斜め方向に傾斜させたものである。スリット36は、曲がっていてもよい。
(E)は、隣接する圧入孔37の間に、円周方向に複数(この例では3つ)のスリット36を(B)と同様にラビリンス状に設けたものである。
(F)は、隣接する圧入孔37の間に、円周方向に(C)と同様に両端が閉じて連続したスリット36を設けたものである。
(G)は、スリット36に代えて円形の孔36’を圧入孔37の内周側と外周側に形成して誘導電流に対する抵抗部としたものである。抵抗部(孔36’)の形状や位置及び数は図の例に限定されない。
図11は、本発明に係るステータの分解構成図である。
この例は、図5の実施形態に係るステータを示す。ティース圧入孔37の外周側にスリット36が形成されたステータヨーク23は、鋼板からなるヨーク用板材123の積層体である。このステータヨーク23の各ティース圧入孔37の位置に載置した絶縁材からなるボビン(インシュレータ)38及びボビンフランジ39を通して、鋼板からなるティース用板材124の積層体であるティース24が挿入される。ティース24はその下端の圧入部24aをティース圧入孔37内に圧入されて固定保持される。ボビン38を介してティース24にコイル25が巻回される。
図12は、本発明に係るステータの全体斜視図である。
前述の図11で示したように、ボビン38を介してコイル25が巻回されたティース24が、円環状ステータヨーク23上に放射状に並べて圧入されて固定保持される。これによりステータ1が形成される。この例では、各ティース24の外周側のステータヨーク23にスリット36が形成されている。
図13は、図12のステータを組込んだ電動モータ全体の構成図である。
モータ全体を囲うモータケース40が、円板状のフロントカバー41、リヤカバー42及び筒状のサイドカバー43により構成される。フロントカバー41に前述の本発明のスリット36が形成されたステータヨーク23が固定される。ロータ軸20の端部がベアリング26を介してフロントカバー41に回転可能に装着される。ロータ軸20の他端部近傍がベアリング44を介してリヤカバー42に回転可能に支持される。このロータ軸20にロータヨーク21が固定される。ロータヨーク21にマグネット22が固定される。ステータヨーク23に圧入されたティース24は所定のギャップGを介してマグネット22と対向して配置される。
図14は、樹脂モールドで封止したステータを示す。(A)は平面図、(B)は断面図である。
ヨーク23に複数のティース24がリング状に装着され、各ティース24にはボビン38を介してコイル25が巻回される。このようなヨーク23とティース24からなるステータ1はほぼ全体が樹脂材131でモールド成形され封止される。この樹脂モールド体の下面側及び基板取付部132には、位置決め用のボス130,134が形成される。135は、基板取付用のネジ孔である。133は3相の各コイルの端部である。樹脂モールド体の周縁部には、取付孔136が形成されカラー137が装着される。
このように、ステータ1を樹脂モールドで封止することにより、コイル等を装着したティース24がヨーク23に対し確実に固定保持される。また、誘導電流を低減するための前述の各種スリット36等を形成した場合、ティース圧入時にヨークが変形しやすくなるが、ヨークが変形した場合であっても、モールド成形するときに、ヨークを金型により矯正した状態でセットすることができ、変形のない高い寸法精度の形状でステータをモールド封止することができる。
このように変形を矯正する場合、金型に設けたヨーク矯正用の押えピンの跡138が樹脂モールド131の成形体に形成される。この例では、押えピンの跡138は各ティース23間のヨーク上に形成され、この部分には樹脂がなくヨーク表面が露出する。これらの押えピンの跡138はステータ1の裏面側にも形成される。
図15は、本発明の別の実施形態に係るティースの斜視図である。
この実施形態は、ティース24の積層方向を変えたものである。すなわち、この図15の例は、積層体であるティース24を構成する各ティース用板材124の重ね合せ面となる板面124a(1枚ごとの板材124について表裏両面をいう)をステータヨーク23の放射方向としたものである。ティース用板材124の側面124b(鋼板の板厚を示す面)は、ステータヨーク23の円周方向に配設される。
このように、各ティース用板材124の重ね合せ面となる板面124aを放射方向としても、前述の板面124aを円周方向とした例(図11)と同様に、スリット36による誘導電流低減の効果が充分得られる。
図16は、本発明のさらに別の実施形態の斜視図である。
この実施形態では、ステータヨーク23に圧入されたティース24の内周側と外周側(内周側のみ図示)の圧入部に隙間45を設けたものである。また、この例では、ティース24の圧入部の長方形断面が、長辺を放射方向、短辺を円周方向としている。この場合、短辺側にティース用板材124の重ね合せ面となる板面124aを配設し、長辺側に各ティース用板材124の側面124b(板厚を示す面)を配設している。したがって、隙間45は、ティース24の重ね合せ面となる板面124a側で且つ長方形の短辺側に形成される。この隙間45は、ステータヨーク23に設けたティース圧入孔37を切欠くことにより形成する。
この隙間45により、円周方向に配置した短辺側の板面124aを通る磁束が低減され、この磁束に基づく誘導電流が少なくなってエネルギー損失がさらに軽減する。また、各板材124の側面124bを長辺側に配置することにより、その積層境界面の抵抗によって、長辺側に発生する大きな誘導電流を有効に低減できる。
図17は、前述の図15に示したティース24の各ティース用板材124の板面124aを放射方向としてこれを円周方向に積層し、圧入部の長辺側を板面124aとした場合の磁束の流れの説明図である。
ティース24の上面側に不図示のマグネットが対向して配置される。このマグネットからティース上面に磁束(不図示)が流入するとともに、この上面から流入する磁束以外にティース上部の側面から磁束C及び磁束Dが流入する。このとき、ティース24の重ね合せ面である板面124a側から流入する磁束Cは、板厚を表す面であるティース用板材124の側面124b側から流入する磁束Dより大きい。板面124aには面内で渦電流が流れるため、各板材124の面内で磁束Cに基づく比較的大きな誘導電流Eが発生する。
また、ティース24からステータヨーク23側に出る磁束についてみると、長方形断面を有する圧入部の長辺側から大きな磁束Fが流れ、短辺側から小さな磁束Gが流れる。この出口側の磁束においても、長辺側の大きな磁束に基づく比較的大きな誘導電流Hが各鋼板の面内で発生する。
したがって、このティース24の重ね合せ面である板面124aを放射方向として長方形断面を有する圧入部の長辺側をこの板面124aとした構成では、前述の図22に示したティース24の周囲全体に流れる誘導電流Bは、前述のようにスリット36により有効に遮断されるが、上記ティース24の横面に直角方向の磁束による比較的大きな誘導電流E,Hが各ティース用板材124の面内で流れ、これによるエネルギー損失が発生する。
図18は、前述の図11及び図16に示したティース24の各ティース用板材124の重ね合せ面である板面124aを円周方向とし、これと直角な圧入部の長辺側を各ティース板材124の板厚を表す側面124bとした場合の磁束の流れの説明図である。
前述の図17の例と同様に、ティース24の上面側に不図示のマグネットが対向して配置される。このマグネットからティース上面に磁束(不図示)が流入するとともに、この上面から流入する磁束以外にティース上部の横面から磁束C及び磁束Dが流入する。このとき、ティース24の板材124の側面124b側の横面から流入する磁束Cは重ね合せ面である板面124a側の横面から流入する磁束Dより大きい。
この図18のティース24は、板面124aが円周方向であるため、各板材124の面内で磁束Dに基づいて誘導電流Jが発生するが、磁束Dが小さいためこの誘導電流Jは小さい。
また、ティース24からステータヨーク23側に出る磁束についても、前述の図17の例と同様に、長方形断面を有する圧入部の長辺側から大きな磁束Fが流れ、短辺側から小さな磁束Gが流れる。この出口側の磁束においても、図18の例では、ティース24の板面124aが短辺側であるため、短辺側の磁束Gに基づいて鋼板面内で誘導電流Kが発生するが、磁束Gが小さいため、この誘導電流Kは小さい。
したがって、図18に示すように、ティース24の各ティース用板材124の板厚を表す側面124b側の面を放射方向とし、この面を長方形断面の圧入部の長辺側とすることにより、ティース横面を通してティース内に入る磁束による誘導電流を小さくして、エネルギー損失を軽減できる。
図19(A)〜(E)は、本発明のさらに別の実施形態のティース圧入孔の形状説明図である。
(A)は従来の構造であり、ステータヨーク23の圧入孔37に鋼板積層体からなるティース24が圧入されている。この構造では前述のように誘導電流Bが発生する。この誘導電流Bは、(B)に示すようにスリット36を形成することにより遮断される。しかしながら、ティース24のティース用板材124の側面124b側の面(図11、図16参照)がヨーク23の圧入孔37の内面に圧接(低抵抗で接触)していると、(C)に示すようにこの圧接面を介してスリット36を迂回する誘導電流Yが流れる。本実施形態では、(D)に示すように、ティース24の各側面に例えば長辺の半分の長さの隙間46(または絶縁フィルム)による絶縁層を相互に位置をずらせて設ける。これにより各板材124を介する誘導電流Yが長辺全長にわたって遮断される。この隙間46は、(E)に示すように、圧入孔37の両側の長辺全長(又は片側のみの長辺全長)に沿って形成してもよい。
(E)の場合、図20に示すように、隙間46をヨーク23の厚さ方向全体に形成することなく、下部数枚のヨーク用板材123には隙間46を形成しないでおくことにより、この下部数枚の板材123でティース24の圧入部24aを圧入孔37内に確実に固定保持できる。前記(D)の場合にも、このように下部数枚のヨーク用板材123に隙間46を形成しないで、ティース24の固定保持力を高めてもよい。
この隙間46は、誘導電流を遮断するためのものであり、したがって、空間のある隙間に限らず電気的な絶縁材を設けてもよい。すなわち、誘導電流に対する抵抗部となればよい。
図20は上記圧入部に設けた抵抗部(隙間46)の形成例を示す。(A)は、ティース24の下端部に形成された幅の狭い圧入部24aの両側に隙間46を設けたものである。(B)は、ティース24の下部全体が下端の圧入部24aを含め同一幅の形状であり、この圧入部24aの両側のヨーク23側に隙間46を形成したものである。(C)は、ティース24の下端部の幅を広げて圧入部24aを形成し、ヨーク23側の圧入部37は同一の貫通孔として圧入部24aの上側に隙間46を形成したものである。なお、いずれの場合もティース24の片側にのみ隙間46を形成してもよい。
図21は、本発明の別の実施形態を示す。
この実施形態は、ティース24の形状を前述の実施形態と異なり長方形ではなく台形としたものである。この台形は、外周側の辺が長く内周側の辺が短く、長手方向を放射方向とする細長い台形である。このようにティース24を台形とすることにより、長方形の場合に比べ、隣接するティース24の外周側の間隔wを小さくすることができる。これにより、ティース上面に対向するマグネット(不図示)からティース上面を通して内部に入る磁束を大きくし、横面から入るはみ出し部分の磁束を小さくして誘導電流を小さくすることができる。
このような台形のティース24は、例えば積層されるティース用板材124の形状を徐々に幅が小さくなるように変えることにより形成する。
産業上の利用可能性
以上説明したように、本発明では、ティース用板材の積層体からなるティースの各ティース用板材の重ね合せ面を円周方向に配設したことにより、マグネットからティースに流れる磁束による誘導電流を有効に低減できる。
この場合、ヨークに設けたティース固定用の固定孔は、長手方向を有する形状であって、その長手方向を放射方向とした構成によれば、各ティース用板材の側面が見える面(渦電流が流れにくい面)を長手方向に配置し、この面を磁束の大きい側に配置するため、誘導電流を効率よく低減できる。
また、前記固定孔を長方形とした構成によれば、一定形状のティース用板材を積層してティースを形成することができる。
また、ティースの重ね合せ面側とステータヨークの固定孔との間に磁気抵抗部を設けた構成によれば、渦電流が形成されやすいティース用板材の重ね合せ面側と固定孔との間に、例えば空間を形成して磁気抵抗を高めることにより、この面を通る磁束が小さくなり、誘導電流が低減する。
また、各ティース用板材の板厚を表す側面とステータヨークの固定孔との間に誘導電流に対する抵抗部を設けた構成によれば、誘導電流が有効に低減される。すなわち、通常は、固定孔に圧入された積層ティース圧入面は密着して電流が流れやすいため、積層されたティース用板材同士間で渦電流が流れるが、この圧入密着面に空間あるいは絶縁材等を設けることにより電気抵抗を高め、誘導電流を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明が適用される電動二輪車の側面図である。
図2は、図1の電動二輪車の後輪部分の構成図である。
図3は、本発明の実施形態に係るステータの要部構成斜視図である。
図4は、本発明の実施形態の作用説明図である。
図5は、本発明の実施形態のステータヨークの平面図である。
図6は、本発明の別の実施形態のステータヨークの平面図である。
図7は、本発明のさらに別の実施形態のステータヨークの平面図である。
図8は、本発明のさらに別の実施形態の形状説明図である。
図9は、ステータヨークの断面図である。
図10は、スリットの形状例の説明図である。
図11は、本発明の実施形態のステータの分解図である。
図12は、図11のステータの全体斜視図である。
図13は、図12のステータを組込んだ電動モータ全体の断面構成図である。
図14は、樹脂モールドで封止した本発明の実施形態の説明図である。
図15は、本発明の別の実施形態の斜視図である。
図16は、本発明のさらに別の実施形態の斜視図である。
図17は、図15の実施形態の磁束説明図である。
図18は、図11の実施形態の磁束説明図である。
図19は、本発明の別の実施形態の説明図である。
図20は、本発明の別の実施形態の説明図である。
図21は、本発明の別の実施形態の説明図である。
図22は、従来のステータにおける誘導電流の説明図である。

Claims (5)

  1. 回転軸に固定された円板状のロータ側のヨークと、該ロータ側のヨークに対向する円板状のステータ側のヨークと、該ロータ側又はステータ側のいずれか一方のヨークの対向面側に固定されたマグネットと、前記ロータ側又はステータ側の他方のヨークの対向面側に、前記マグネットに対向して放射状に配設され、該ヨークに固定された複数のティースと、該複数のティースの各々に巻回されたコイルとからなるアキシャルギャップ型回転電機において、前記ティースは、ティース用板材の積層体からなり、前記ティース用板材の重ね合せ面を円周方向に配設したことを特徴とするアキシャルギャップ型回転電機。
  2. 前記ヨークに設けたティース固定用の固定孔は、長手方向を有する形状であって、その長手方向を放射方向としたことを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機。
  3. 前記固定孔は、長方形であることを特徴とする請求項2に記載のアキシャルギャップ型回転電機。
  4. 前記ティースの重ね合せ面側とステータヨークの固定孔との間に磁気抵抗部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機。
  5. 前記各ティース用板材の板厚を表す側面とステータヨークの固定孔との間に誘導電流に対する抵抗部を設けたことを特徴とする請求項1に記載のアキシャルギャップ型回転電機。
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