JPWO2002073722A1 - ガス拡散性電極体及びその製造方法、並びに電気化学デバイス - Google Patents
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Abstract
本発明は、燃料電池などの電気化学デバイスに用いられるガス拡散性電極体であり、少なくとも導電性カーボン粉体又は粒体(1)からなる層(22)と、白金からなる白金スパッタ層(19)とが交互に配置されて積層構造を有し、発電量を維持しつつ小型化を実現する。
Description
技術分野
本発明は、例えば、燃料電池の製造に好適なガス拡散性電極体及びその製造方法、並びに電気化学デバイスに関する。
背景技術
近年、石油等の化石燃料に代り得る、代替クリーンエネルギー源が要望され、例えば、水素若しくは水素ガス燃料が注目されている。
水素は、単位質量当りに含まれる化学エネルギー量が大きく、また、使用に際して、有害物質や地球温暖化ガス等を放出しないといった理由から、クリーンで、かつほとんど無尽蔵に存在する理想的なエネルギー源であると言える。
最近では、水素エネルギーから電気エネルギーを取り出すことができる燃料電池の開発が盛んに行われており、大規模発電からオンサイトな自家発電、更には、電気自動車用の電源等としての応用等が期待されている。
燃料電池は、プロトン伝導体膜を挟んで、燃料電極、例えば、水素電極と酸素電極とを配置し、これらの電極に、それぞれ燃料としての水素や酸素を供給することで電池反応を起こし、起電力を得るものであり、その製造に際しては、通常、プロトン伝導体膜、燃料電極、例えば、水素電極、酸素電極等を別々に成形し、これらを貼り合わせて製作している。
この燃料電池の燃料電極、例えば、水素電極と酸素電極としてのガス拡散性電極とは、主に、導電性カーボン粒子等からなり、さらに、例えば、白金等の触媒金属を担持させた触媒層を有する構成となっている。
従来、上述のガス拡散性電極は、導電性粉体又は粒体としてのカーボンに、触媒としての白金が担持されている触媒粒子を、撥水性樹脂としての、例えばフッ素樹脂及びイオン伝導体と共にシート状に成形するか、或いはカーボンシート上に直接塗布する工程を経て製造される。即ち、固体高分子燃料電池用ガス拡散性電極としては、例えば、特開平5−36418号公報に示されるように、通常、カーボンに白金が担持されている粉体又は粒体を撥水性樹脂、イオン導電性材料と共にカーボンシートに塗布して製造される。
ここで、ガス拡散性電極とは、作用ガスを拡散可能な連続気孔を有する電極のことを指し、更にこれは、電子伝導性を有するものである(以下、同様)。
このガス拡散性電極を、固体高分子型燃料電池等の燃料電池を構成する水素分解用電極として用いた場合、白金等の触媒によって燃料がイオン化され、それによって生じた電子は導電性カーボン粉体又は粒体を伝って流れ、また、水素をイオン化することで生じるプロトン(H+)はイオン伝導体を介してイオン(プロトン)伝導体膜に流れる。この過程では、ガスを通す間隙、電気を通すカーボン粉体又は粒体、イオンを通すイオン伝導体、及び燃料や酸化剤をイオン化するための触媒等が必要になる。ここで、白金等の触媒により燃料がイオン化され、これによって生じた電子は導電性カーボン粉体又は粒体を通して流れ、イオン化された水素(プロトン)はイオン伝導材料を通してイオン伝導膜に流れる。ここで、ガスを通す間隙、電気を通すカーボン粉体又は粒体、イオンを通すイオン伝導材料、燃料あるいは酸化剤をイオン化するための触媒等が必要になる。このガス拡散性電極(触媒層)においては、燃料が水素である場合、燃料電池内では、
H2→2H++2e−
の反応が起こり、酸素電極内では、
O2+4H++4e−→2H2O
なる反応により、水が生成する。
この種の燃料電池においても、単位体積当たりの発電量の増加の要請が強くなっている。しかし、発電量の増加に伴い、ガス拡散性電極は大型化してしまう。その反面、ガス拡散性電極の薄型化も急務である。
また、ガス拡散性電極内に含有される触媒物質、例えば白金が粉体又は粒体の状態で混合される時は、プロトン(H+)等と接触する面積、換言すれば電極反応は不十分となり易い。
発明の開示
本発明は、上述したような実情に鑑み提案されたものであって、その目的とするところは、発電量等の性能を維持しつつも、小型化が可能なガス拡散性電極体、及びその製造方法、並びにこの電極体を用いた電気化学デバイスを提供することにある。
上述のような目的を達成するために提案される本発明に係るガス拡散性電極体は、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなす。
本発明はガス拡散性電極体の製造方法であり、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とを交互に形成する。
本発明は、電気化学デバイスであり、第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたイオン伝導体とからなり、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなすガス拡散性電極体が、第1極及び第2極のうち少なくとも第1極を構成している。
本発明は、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなすガス拡散性電極体を用いることによって、ガス拡散性電極体内の各触媒物質層においてガス拡散性電極体に浸入する酸素を効率良くイオン化し、プロトン(H+)との接触面積を拡大する等、電極内の反応を効率的に行え、出力向上等の高性能化が可能となり、これが各層で生じることから、各層厚、従って全厚が薄くても高効率化、高性能化が可能となる。
本発明に係るガス拡散性電極体は、積層構造を形成する際に、上層の形成時に下層が既に形成されているために、比較的容易に積層形成できる。そのために、上記のガス拡散性電極体を再現性良く製造できる。
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下において図面を参照して説明される実施の形態の説明から一層明らかにされるであろう。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、ガス拡散性電極体であり、このガス拡散性電極体は、積層構造における第1層及び第2層のそれぞれの層数が、2以上100以下であり、第1層が少なくともカーボン粉体又は粒体からなり、第2層が触媒金属からなる。第1層の層厚みは、数nm〜数μm、例えば3μmであり、第2層の層厚みは数nm〜数百nmであり、複数の前記第2層のうち、少なくとも一層が白金を含むのが望ましい。複数の前記第1層のうち、少なくとも一層が触媒金属を含み、第1層が、イオン伝導性被膜を有する導電性粉体又は粒体を含有するのが望ましい。第1層が、撥水性被膜を有する導電性粉体又は粒体を含有していて、積層構造が集電体又は下地層上に形成されているのが望ましい。第1層は、スピンコート法、印刷法、スプレードライ法、気相成膜法のうち、少なくとも一つの方法を用いて形成され、また第2層は気相成膜法によって形成するのが望ましい。積層構造は、集電体又は下地層上に形成され、第1極及び第2極のうち少なくとも一方がガス電極であるのが望ましく、また燃料電池に適用されるのが望ましい。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を図面の参照してに詳しく説明する。
第1の実施の形態
この実施の形態において、ガス拡散性電極体は、図1に示すように、電子を通すための導電性のカーボン粉体又は粒体層22をガス透過性集電体(カーボンシート)11の上に塗布等によって形成し、この上に、酸素等の作用ガスを酸素イオンにイオン化する白金等の触媒層19を気相成膜法(スパッタ法等)によって積層し、これらの導電層22と触媒層19とを交互に積層してガス拡散性電極(触媒層)10を酸素極として形成している。なお、図1に簡略化のために2層構造の形態を示しているが、実際には2層以上の積層構造からなっている。但し、2層でも差支えない。また、図示は省略したが、水素極(燃料極)も、酸素極10と同様に構成されていてよい。
このガス拡散性電極(触媒層)10内においては、対向する電極側、図1においては上側から、イオン伝導部(プロトン伝導体膜)5を介してプロトン(H+)が侵入し、ガス透過性集電体(カーボンシート)11を介して侵入した空気(酸素)がイオン化され、これらのプロトンと酸素イオンが反応(電池反応)する。その結果、電気化学エネルギーが出力として取り出され、水(H2O)が生成する。
なお、触媒層19としての白金スパッタ層は、連続膜である必要はなく、多孔性であっても、更には部分的に非連続性を有していてもよい。なぜなら、連続膜として形成されると、プロトン(H+)や酸素等のガスの通過を妨げてしまうことがあるからである。
カーボン粉体又は粒体等の導電性粉体又は粒体は、粒状、球状、繊維状等の様々な形状のものを含むものとし、以下同様とする。
本発明に係る燃料電池の構成は、図9に示すようなものであり、簡易に述べると(詳しくは後述する)、基本的には、プロトン伝導性を有するイオン伝導部(プロトン伝導体膜)5の両面に、それぞれ負極(燃料電極)16、正極(酸素電極)17が形成されている。
上述の負極(燃料電池)16に、例えば水素を供給し、正極(酸素電極)17に酸素(空気)を供給すると、電池反応が起こり、起電力が生ずる。ここで、負極(燃料電極)16には、いわゆる、ダイレクトメタノール方式の場合、水素源としてメタノールを供給することも可能である。
なお、負極(燃料電極)16及び正極(酸素電極)17は、炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体1を主に電極材料とし、これを成形してなるものであ。
なお、本実施の形態においては、図1に示すように、カーボン粉体又は粒体の層22と、白金スパッタ層からなる触媒層19とが交互に積層形成されている。ガス拡散性電極を、このように構成することにより、ガス等と触媒金属との接触面積が大きくなって電極反応が効率的に起こり、薄型化することが可能となる。
次に、電極を構成する主材料として用いられる炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体には、電子伝導性を有することが必要であるため、黒鉛系の種々の炭素質材料(カーボン)及びカーボンナノチューブ等が好適に使用される。さらに、ガス拡散性の向上の観点からみれば、黒鉛は針状であることが好ましい。
なお、カーボンナノチューブは、真空チャンバーと呼ばれる反応室内に、いずれもグラファイト等の炭素棒からなる陰極と陽極とを、間隙を介して対向配置し、さらにヘリウム等の希ガスの雰囲気下で、各電極に直流を通電することによってアーク放電させ、反応室の内面に堆積する炭素質材料から精製して得られる。
上述の方法で生成された炭素質材料を電極材料として用いた場合、負極(燃料電極)或は正極(酸素電極)をガス透過性集電体11上に直接形成することができる。ここで、形成方法としては、スピンコート法、スプレー法や滴下法、バーコート法等を挙げることができる。
例えば、スピンコート法とは、炭素質材料であるカーボン粉体又は粒体を水、或は、エタノール等の溶剤に分散し、これを、回転させた集電体上に直接滴下する方法である。スプレー法の場合、炭素質材料であるカーボン粉体又は粒体を水、或は、エタノール等の溶剤に分散し、これを、集電体上に直接吹き付ける方法である。滴下法の場合、やはり、炭素質材料であるカーボン粉体又は粒体を水、或は、エタノール等の溶剤に分散し、これを、集電体上に直接滴下する方法である。これ等の上記形成方法によって、集電体上に、炭素質材料であるカーボン粉体又は粒体が堆積した状態となる。
このとき、カーボンナノチューブは、直径1nm程度、長さ1〜10μm程度の細長い繊維状の形状を呈し、また、針状黒鉛も、直径0.1〜0.5μm程度、長さ1〜50μm程度の針状の形状を呈するため、互いに絡み合って、特段の結合剤が無くとも良好な層状体を構成する。勿論、必要に応じて、結合剤(バインダー)を併用することも可能である。即ち、カーボン粉体又は粒体のガス透過性集電体(カーボンシート)への塗布に際しては、例えば、バインダー分散液等を使用してもよい。気相成膜法においては、例えば、スパッタ法等を使用してもよい。
なお、ガス拡散性電極(触媒層)10に触媒物質(白金等)を含有させてもよいが、この方法としては、スパッタ法等の気相成膜法を用いてカーボン表面に触媒物質を成膜してもよいし、触媒粒子を混合してもよい。例えば、5inch径の白金(Pt)ターゲットを用いて、DC1A、420Vを印加する。そして、基板を回転させながら、スパッタを8分8秒行なうことによって、1000nmの触媒物質(白金等)の成膜ができる。
なお、ガス拡散性電極によって形成される負極(燃料電池)や正極(酸素電極)等においては、ガス拡散性電極を、スピンコート法等によりガス拡散性集電体(カーボンシート)上に直接形成するゆえに、これを自立膜として別個に形成する必要がないため、作業中における破損等に対して求められる機械的強度が要求されることはなく、従って、その厚さは、10μm以下、例えば、2〜4μm程度と、極めて薄く設定することができる。但し、自立膜として作製してもよい。なお、従来の構造は、主に単層又は単層積層構造であり、厚みは例えば、50μmあった。
次に、本実施の形態における、燃料電池に使用するプロトン伝導体の素材としては、例えば、パーフルオロスルホン酸樹脂(例えば、デュポン社製、商品名Nafion(R)等)のようなプロトン(水素イオン)伝導性の高分子材料、又は、H3MO12PO40・29H2OやSb2O5・5.4H2O等、多くの水和性を持つポリモリブデン酸類や酸化物等、又は、フラーレンをはじめとする各種炭素質材料に、プロトン解離性の基を導入したもの、又は、酸化ケイ素及びブレーンステッド酸を主体とする化合物と、スルホン基を側鎖に持つ重合体との混合物等が好適に使用されるが、これらの材料に、特に限定されるものではない。
上述のパーフルオロスルホン酸樹脂や、ポリモリブデン酸類や酸化物等の高分子材料や水和化合物は、湿潤状態に置かれると、常温付近で、高いプロトン伝導性を示す。即ち、パーフルオロスルホン酸樹脂を例にとると、そのスルホン酸基より電離したプロトンは、高分子マトリックス中に大量に取込まれている水分と結合(水素結合)してプロトン化した水、つまり、オキソニウムイオン(H3O+)を生成し、このオキソニウムイオンの形態をとって、プロトンが高分子マトリックス内をスムーズに移動することができるので、この種のマトリックス材料は、常温下でもかなり高いプロトン伝導効果を発揮できる。或いは、これらの材料とは伝導機構の全く異なるプロトン伝導体も使用可能である。即ち、Yb(イッテルビウム)をドープしたSrCeO3等のペロブスカイト構造を有する複合金属酸化物等である。なお、この種のペロブスカイト構造を有する複合金属酸化物は、水分を移動媒体としなくとも、プロトン伝導性を有することが見出されている。この複合金属酸化物においては、プロトンは、ペロブスカイト構造の骨格を形成している酸素イオン間を、単独でチャネリングして伝導されると考えられている。
上述したフラーレンを初めとする各種炭素質材料にプロトン解離性の基を導入したものの中で、プロトン解離性の基とは、−OH、−OSO3H、−SO3H、−COOH、−OPO(OH)2等のように、電離によりプロトンを離し得る官能基を意味し、また「プロトン(H+)の解離とは、電離によりプロトンが官能基から離れることを意味する。そして、このプロトン伝導体においては、プロトン解離性の基を介してプロトンが移動し、イオン伝導性が発現される。特に、上述の炭素質材料の母体となる炭素質材料には、炭素を主成分とするものであれば、任意の材料を使用することができるが、プロトン解離性の基を導入した後に、イオン伝導性が電子伝導性よりも大であることが必要である。具体的には、炭素原子の集合体である炭素クラスターや、チューブ状炭素質(いわゆるカーボンナノチューブ)を含む炭素質材料等を挙げることができる。
なお、上述の炭素クラスターには、種々のものがあり、フラーレンや、フラーレン構造の少なくとも一部の開放端を持つもの、ダイヤモンド構造を持つもの等が好適である。
以下、この炭素クラスターについて、更に詳細に説明する。
さて、上述の炭素クラスターとは、通常は、数個から数百個の原子が結合、又は凝集して形成されている集合体のことであり、この原子が炭素である場合、この凝集(集合)体によって、プロトン伝導性が向上すると同時に、化学的性質を保持して膜強度が十分となり、層を形成し易い。
炭素を主成分とするクラスターとは、炭素原子が、炭素ー炭素間の結合の種類は問わず、数個から数百個結合して形成されている集合体のことである。但し、必ずしも、100%炭素のみで形成されているとは限らず、他原子に混在もあり得る。このような場合も含めて、炭素原子が多数を占める集合体を、炭素クラスターと称する。なお、プロトン解離性の基を有する炭素質材料を主成分として含有するプロトン伝導体は、乾燥状態でも、プロトンが前記プロトン解離性の基から解離し易く、しかも、このプロトンは、常温を含む広い温度域(少なくとも約160℃〜−40℃の範囲)に亘って高伝導性を発揮することが可能である。
上述のように、このプロトン伝導体は、乾燥状態でも十分なプロトン伝導性を示すが、水分が存在していても差支えない。なお、この水分は、外部から浸入したものでもよい。
次に、上述の実施の形態においては、積層数は2〜100層が好ましいが、これは、2層未満の場合は単層(又は単積層)構造になり、従来と構造的にはほとんど変りがなく、積層構造としての利点を生かすことができないからである。積層数が100層を超えると、プロトン(H+)や空気(酸素)が、ガス拡散性電極(触媒層)10への侵入初期時に、主に電極の外周の白金スパッタ層19に接触して電極反応を早々に起こしてしまい、ガス拡散性電極(触媒体)10の内部まで十分にプロトン(H+)や空気(酸素)が到達しにくくなり、ガス拡散性電極(触媒層)10の内部に電極反応のできない無駄な部分が生じるおそれがあるからである。更に、同じ電極厚に保持しつつ、層数を増やすと、その分、例えばカーボン粉体又は粒体層の厚さが薄くなるが、カーボン粉体又は粒体層22や白金スパッタ(触媒金属)層19が100層を超えると、ガスの透過性が損われ、電池反応が抑制されて出力が低下し、また全厚も増えてしまう。それゆえに、上述の条件での最適層数は、例えば層22と19でそれぞれ5〜6層である。しかし、例えば機能を失うことなくカーボン粒体又は粒体層をもっと薄く作製できたときには、状況が変わる可能性が高い。なお、カーボン粉体又は粒体層が1層に対して、白金スパッタ層19を1層という組み合せが好ましい。例えば、数μm厚のカーボン粉体又は粒体層を、粒径が数十nmのカーボン粉体又は粒体で形成すると、おそらく、100層位又はそれ以下になり、好ましいといえる。
本実施の形態においては、電子を通すための導電性のカーボン粉体又は粒体1の層の厚さは数nm〜数μmとし、酸素や水素等の作用ガスを、プロトンと電子とに分解し或いは酸素をイオン化する触媒となる白金スパッタ層19の厚さは、数nm〜数百nmとする。
さて、本実施の形態において、導電性のカーボン粉体又は粒体によって形成されている層は、導電性を有し、所定の機能を発揮するならば、カーボン、即ち、炭素質系物質以外の物質を用いてもよい。
上述の形態で使用される、カーボン粉体又は粒体の外径、重量、形成方法、形成する層数等は所定の効果が有るのならば、自由に変えてよい。
なお、形成方法については、スピンコート法、印刷法、スプレードライ法、気相成膜法等の中から選ぶ。しかし、所定の効果が得られるのならば、これら以外の形成方法でもよい。厚さも、上述の制限内に収められる範囲とするが、所定の効果が得られるのならば、上記以外の範囲でもよい。
本実施の形態で使用される、酸素や水素等の作用ガスを、プロトンと電子とに分解する触媒となる白金スパッタ層19については、用いられる触媒金属は、所定の効果が有るのならば、白金である必要はなく、他の触媒金属を使用してもよい。更に、この層の厚さ、層数等は所定の効果が有れば、自由に変えてよい。
本実施の形態においては、ガス透過性集電体(カーボンシート)とガス拡散性電極との間に、所定の効果が有るのならば、第3の層や下地層等を設けてもよい。
本実施の形態においては、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなすガス拡散性電極体を用いることによって、ガス拡散性電極体内の各触媒物質層において、ガス拡散性電極体に侵入する酸素を効率良くイオン化し、プロトン(H+)との接触面積を拡大する等、電極内の反応を効率的に行え、出力の向上等の高性能化が可能となり、これが各層で生じることから、各層厚、従って全厚が薄くても、高効率化、高性能化が可能となる。
上述のガス拡散性電極体においては、積層構造を形成する際に、上層の形成時に下層が既に形成されているために、比較的容易に積層形成できる。そのために、上記のガス拡散性電極体を再現性良く製造できる。即ち、本実施の形態においては、カーボン粉体又は粒体層と、触媒金属層とを有し、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属層とが交互に配置された構造を有するガス拡散性電極を提供する。
本実施の形態のガス拡散性電極の製造方法としては、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属とを含む層を、交互に複数回形成する製造方法を提供する。
本実施の形態の燃料電池においては、対をなすガス拡散性電極を備え、これらの対をなすガス拡散性電極が、プロトン伝導体膜を介して互いに対向配置されてなる燃料電池において、上記の対をなすガス拡散性電極の少なくとも一方は、カーボン粉体又は粒体層と、触媒金属とを有し、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属層とが交互に配置された構造を有する燃料電池を提供する。
本実施の形態のガス拡散性電極によれば、カーボン粉体又は粒体層と、触媒金属層とを有し、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属層とが交互に配置された構造を有しており、電極反応を効率的に行うことができるので、ガス拡散性電極を薄型化することができる。
本実施の形態のガス拡散性電極の製造方法によれば、カーボン粉体又は粒体層と、触媒金属層とを有し、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属層とが交互に配置された構造を有するガス拡散性電極を容易に製造することができる。
本実施の形態の燃料電池によれば、ガス拡散性電極をカーボン粉体又は粒体層と、触媒金属層と有し、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属層とが交互に配置された構造とすることにより、薄型化することが可能となるので、燃料電池を小型化することができる。
第2の実施の形態
この実施の形態のガス拡散性電極体は、図2に示すように、カーボン粉体又は粒体によって形成される層22に、触媒として均一径の白金粉体6を更に混合する以外は、上述の第1の実施の形態と同様である。この実施の形態において、所定の効果が有するならば、触媒として白金以外の触媒金属粉体等を用いてもよい。白金粉体6の外径、カーボン粉体又は粒体によって形成される層に含有される比率(重量%)、混合の方法等は、所定の効果が有るのならば、自由に変えてよい。又、ガス拡散性電極層内の、カーボン粉体又は粒体からなる各積層内22内全てに白金粉体6を混合させるか否かは、所定の効果を考慮しつつ、自由に決めることができる。しかし、少なくとも一層は、混合させる。
本実施の形態においては、触媒金属としての白金が、粉体としてガス拡散性電極内に含有されるために、触媒機能が増進し、電極反応が活発化する。その他、本実施の形態は上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
第3の実施の形態
この実施の形態のガス拡散性電極体は、図3に示すように、主にカーボン粉体又は粒体によって形成される層に、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体を更に混合する以外は、上述の第1の実施の形態と同様である。
本実施の形態においては、図3に示すように、球状の炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体1の一部の表面をフラーレン誘導体、例えばフラレノール(以下、同様)からなるH+伝導性被膜20で被覆している。
なお、炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体の形状は、図3に示すような球形に限定されず、様々な形状のものにも、H+伝導性被膜20を設けることができる。
カーボン粉体又は粒体を被覆するH+伝導性被膜20の厚さについては、単分子層以上有すればよいので、最低限数nmあればよいが、あまりに厚いと、カーボン粉体又は粒体の導電性が損われるため、上限は数百nmが好ましい。例えば、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体の被膜の厚さは、10nm〜数十nmの範囲がよい。炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体1の表面をH+伝導性被膜20で被覆するには、例えば、H+伝導性樹脂を溶媒に分散し、この中に炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体を浸した後、乾燥すればよい。
なお、H+伝導性被膜の施されたカーボン粉体又は粒体の表面の少なくとも一部を、触媒物質(例えば白金)等で被膜してもよい。このH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体は、同種の粉体又は粒体が凝集しやすい性質を有するため、図3に示すように、ガス拡散性電極(触媒層)10の中では、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21は、連なったチェーン構造を形成する。従って、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21の形成するチェーン構造は、プロトン(H+)ガスの流通を促進し、それゆえ、プロトンガスH+等が透過する気孔(隙間)が確保され、ガスの拡散が十分に行なわれる。
なお、ガス拡散性電極(触媒層)10には、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体が、1〜80重量%、好ましくは20〜70重量%含有されるのが、活発な電池反応のためにはよいと考えられる。なぜなら、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体の重量%が少なすぎると、ガス拡散性電極(触媒層)10内で、プロトン(H+)ガスの流通が低下してしまうことにより、ガスの透過を妨げてしまい、電池反応をも弱めてしまうことがある。
ガス拡散性電極(触媒層)10内のH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体の重量%が多すぎると、プロトン(H+)ガスの流通にとっては好ましいが、カーボン粉体又は粒体相互の接触性が低くなり、或いはその分布が不均一となり易く、電子の導電性が不十分になり、電池反応を弱めてしまうことがある。
上述のガス拡散性電極によって形成される負極(燃料電池)や正極(酸素電極)等においては、ガス拡散性電極を、スピンコート法等によりガス拡散性集電体(カーボンシート)上に直接形成するゆえに、これを自立膜として別個に形成する必要がないため、作業中における破損等に対して求められる機械的強度が要求されることはなく、従って、その厚さは、10μm以下、例えば、2〜4μm程度と、極めて薄く設定することができる。但し、自立膜として作製してもよい。
本実施の形態においては、ガス拡散性電極内のカーボン粉体又は粒体、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体等の混合率(重量%)、混合方法等は、所定の効果が有るならば、自由に変えてよい。H+伝導性物質の種類、カーボン粉体又は粒体への付着方法、付着の厚さ等は、所定の効果が有るならば、自由に変えてよい。
本実施の形態においては、カーボン粉体又は粒体からなる層にH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体が含有されるために、イオン伝導部から浸入するプロトン(H+)ガスがH+伝導性被膜を通ってガス拡散電極内に十分に浸透し、その結果、電極反応が活発に行われる。
その他、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
第4の実施の形態
この実施の形態のガス拡散性電極体は、図4に示すように、主にカーボン粉体又は粒体によって形成される層に、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26を更に混合する以外は、上述の第1の実施の形態と同様である。
本実施の形態において、球状の炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体1の一部の表面は、図4示すように、撥水性被膜18で被覆されている。炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体の形状は、図4に示すような球形に限定されず、様々な形状のものにも、撥水性被膜を設けることができる。カーボン粉体又は粒体を被覆する撥水性被膜の厚さについては、単分子層以上有すればよいので、最低限数nmあればよいが、あまりに厚いと、カーボン粉体又は粒体の導電性が大きく損われるため、上限は数百nmが好ましい。例えば、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の被膜の厚さは、10nm〜数十nmの範囲にあればよい。
なお、撥水性被膜の施されたカーボン粉体又は粒体の表面の少なくとも一部を、触媒物質(例えば白金)等で被膜してもよい。
このような撥水性被膜18で被覆された撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体(炭素質材料粉体)26の周囲においては、電極内反応によって生じた生成水が撥水されて付着しないために、さらに、電極内の生成水が撥水されて過剰に留まらずに電極外へ排出され、酸素ガスが透過する隙間が確保される。それゆえに、ガス拡散性電極内(正極)における酸素ガスの供給が妨げられない。その結果、十分な量の酸素ガスが供給され続けるために、出力を比較的高く保持できる。
炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体1の表面を撥水性被膜18で被覆するには、例えば、撥水性樹脂を溶媒に分散し、この中に炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体を浸した後、乾燥すればよい。
上述の撥水性被膜18を構成する撥水性の材料としては、フッ素を含む、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)やフッ素系ポリマー(C2F6重合体等)、テフロン(デュポン社製PTFE)等が好適に用いられる。被膜方法として、ディッピング法、プラズマCVD法等を用いることができる。
上述のガス拡散性電極に用いる、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体は、水をはじくという性質があるため、このカーボン粉体又は粒体の周囲には水が付着しない。この撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体は、同種の粉体又は粒体が凝集しやすい性質を有するため、図5に示すように、ガス拡散性電極(触媒層)10の中では、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26は、連なったチェーン構造を形成する。従って、上記撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26の形成するチェーン構造は、生成水(H2O)の浸入防止用の壁を形成して生成水を効果的に排出する通路を形成することになり、それゆえ、O2ガス等が透過する気孔(隙間)が確保され、ガスの拡散が十分に行なわれる。
上述のガス拡散性電極(触媒層)10には、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体が、1〜80重量%、好ましくは20〜70重量%含有されるのが、活発な電池反応のためにはよいと考えられる。なぜなら、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の重量%が少なすぎると、ガス拡散性電極(触媒層)10内で、電池反応によって生じた生成水が、撥水されずにカーボン粉体又は粒体の周囲に大量に付着して電極内に留まり、ガスを通すはずの隙間を埋めて減少させてしまうことにより、ガスの透過を妨げてしまい、電池反応をも弱めてしまうことがある。ガス拡散性電極(触媒層)10内の撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の重量%が多すぎると、カーボン粉体又は粒体相互の接触性が低くなり、或いはその分布が不均一となり易く、電子の導電性が不十分となり、電池反応を弱めてしまうことがある。
上述のガス拡散性電極によって形成される負極(燃料電池)や正極(酸素電極)等においては、ガス拡散性電極を、スピンコート法等によりガス拡散性集電体(カーボンシート)上に直接形成するゆえに、これを自立膜として別個に形成する必要がないため、作業中における破損等に対して求められる機械的強度が要求されることはなく、従って、その厚さは、10μm以下、例えば、2〜4μm程度と、極めて薄く設定することができる。但し、自立膜として作製してもよい。
本実施の形態においては、ガス拡散性電極内のカーボン粉体又は粒体と撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体との混合率、混合方法等は、所定の効果が有るならば自由に変えてよい。
撥水性物質の種類、カーボン粉体又は粒体への付着方法、付着の厚さ等は、所定の効果が有るならば自由に変えてよい。
上述の導電体粉体又は粒体は、カーボンに限ることはなく、導電性を有し、かつ所定の効果が得られるのならば他の物質でもよい。
本実施の形態については、主に導電性カーボン粉体又は粒体からなるガス拡散性電極体内において、撥水性被膜を有する導電性カーボン粉体又は粒体が更に混合されているので、この導電性カーボン粉体又は粒体の撥水性被膜によってガス拡散性電極体に生じる生成水が効果的に撥水され、導電性カーボン粉体又は粒体に付着せずに電極外へ排出されることになり、このために、生成水によって作用ガスの透過が妨げえられることなく、ガス拡散性電極体内への十分なガス透過能が確保できる。
上述のガス拡散性電極体は、撥水性被膜を有する導電性カーボン粉体又は粒体を、その他の材料と混合することによって形成できるので、複雑な製造工程を必要とせずに、比較的簡易に製造できる。
その他、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
第5の実施の形態
この実施の形態のガス拡散性電極体は、図5に示すように、カーボン粉体又は粒体によって形成される層22に、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26とH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21とを更に混合する以外は、第1の実施の形態と同様である。
なお、混合される撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26と、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21とについては、上述の第3及び第4の実施の形態において詳述したのでここではその説明を省略する。
本実施の形態においては、カーボン粉体又は粒体からなる層22に、上述したと同様のH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21と、上述したと同様の撥水性被膜形成したカーボン粉体又は粒体26とが更に混合されているが、それぞれの混合比(重量%)、混合方法、層の厚さ等は、所定の効果が有るのならば、自由に変えてよい。
本実施の形態においては、カーボン粉体又は粒体からなる層22にH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21が含有されるために、イオン伝導部から侵入するプロトン(H+)ガスが、H+伝導性被膜20を通ってガス拡散電極内に十分に浸透して触媒金属と効率的に接触し、その結果、電極反応が活発に行われる。
本実施の形態については、主に導電性のカーボン粉体又は粒体からなるガス拡散性電極体において、撥水性被膜18を有する導電性カーボン粉体又は粒体26が更に混合されているので、この導電性カーボン粉体又は粒体26の撥水性被膜18によってガス拡散性電極体内に生じる生成水が効果的に撥水され、導電性カーボン粉体又は粒体に付着せずに排出されることになり、このために、生成水によって作用ガスの透過が妨げえられることなく、ガス拡散性電極体内への十分なガス透過能が確保できる。
上述のガス拡散性電極体は、撥水性被膜を有する導電性カーボン粉体又は粒体を、その他の材料と混合することによって形成できるので、複雑な製造工程を必要とせずに、比較的簡易に製造できる。
本実施の形態においては、上述したプロトン伝導性被膜を有する導電性粉体又は粒体21と、撥水性被膜を有する導電性粉体又は粒体26とを併用しているので、これらによるプロトン伝導性の向上と撥水作用の双方の作用が相乗的に発揮され、活発で高効率な電池反応を期待できる。
その他、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
次に、図6A、図6B及び図6Cは、本実施の形態における、別の形態の導電性カーボン粉体又は粒体を示す断面図である。
即ち、本実施の形態においては、例えば、物理的成膜法を用いるので、得られる導電性カーボン粉体又は粒体は、図6Aに示すように、白金(触媒)2が導電性カーボン粉体又は粒体1の表面に膜状に付着している。この形態によると、より少ない量で良好な触媒作用を得ることができ、また、触媒とガスとの接触面積が十分に確保されるので、反応に寄与する触媒の比表面積が大きくなり触媒能も向上する。
また、本実施の形態においては、図6(B)に示すように、白金(触媒)2が導電性カーボン粉体又は粒体1の表面に不均一に膜状に付着していてもよく、この場合でも、図6Aの構造を有する導電性カーボン粉体又は粒体と同様にして、より少ない触媒量で良好な触媒作用を得ることができ、また、触媒とガスとの接触面積が十分に確保することができ、反応に寄与する触媒の比表面積が大きくなり、触媒能の向上を図ることができる。
上記導電性カーボン粉体又は粒体の表面に、物理的成膜法により白金(触媒)2を膜状に付着させて導電性カーボン粉体又は粒体を得るのに代えて、図6Cに示すように、導電性カーボン粉体又は粒体1の表面に、イオン伝導体3を付着させ、更に、このイオン伝導体3の表面に、物理的成膜法により、白金(触媒)2を膜状に付着させることも可能である。この場合、物理的成膜法によって白金(触媒)2を付着させるので、従来のように触媒の結晶性を良好にするための熱処理を行う必要がなくなり、イオン伝導体の性能を損なうことなく触媒を付着させることができる。
なお、図6A、図6B及び図6Cのいずれの導電性カーボン粉体又は粒体も、本実施の形態においては、導電性カーボン粉体又は粒体に対して、触媒を10〜1000重量%の割合で付着させることが好ましく、更に、触媒として、電子伝導性を有する金属を用いることが好ましく、例示するならば、白金、ルテニウム、バナジウム、タングステン等、或いはこれらの混合物を挙げることができる。
また、導電性カーボン粉体又は粒体1には、耐酸性、導電性及び低コスト性を有する材料ならば特に限定するべきものではないが、例示するならば、カーボン粉体、ITO(Indium tin oxide)等が挙げられ、特に、カーボン粉体を用いることが好ましい。このカーボン粉体の平均粒子径は約1μm以下が好ましく、より好ましくは0.005〜0.1μmである。
物理的成膜法としては、スパッタ法、パルスレーザーデポジション(PLD)法又は真空蒸着法等であることが望ましい。物理的成膜法としてのスパッタ法は、容易に生産することが可能で、生産性が高く、また、成膜性も良好である。物理的成膜法としてのパルスレーザーデポジション法は、成膜における制御が容易で、成膜性も良好である。
ここで、特表平11−510311号公報にカーボンシート上に貴金属をスパッタ成膜する例が記載されているが、本実施の形態においては、導電性を有するカーボン粉体又は粒体の表面に白金(触媒)を膜状に付着させるので、特表平11−510311号公報に記載されるものに比べ、反応に寄与する白金(触媒)の比表面積をより大きくすることができ、触媒能の向上を図ることができる。
更に、本実施の形態においては、物理的成膜法により導電性カーボン粉体又は粒体の表面に、白金(触媒)を膜状に付着させる際に、導電性カーボン粉体又は粒体を振動させることが好ましく、これによって、より十分な触媒量を付着することができ、良好な均一性を得ることができる。
なお、この振動を発生させる機構については、特に限定しないが、例えば、超音波を印加して振動を発生させながら、物理的成膜法により導電性カーボン粉体又は粒体の表面に、白金(触媒)を膜状に付着させることが好ましい。
本実施の形態によれば、導電性カーボン粉体又は粒体の表面に、白金(触媒)を膜状に付着させて得られる導電性カーボン粉体又は粒体を、例えば、合成樹脂により結着することができ、更に導電性カーボン粉体又は粒体を多孔性のガス透過性集電体、例えばカーボンシート上に保持させることが好ましい。
本実施の形態におけるガス拡散性電極は、上述したように、実質的に導電性カーボン粉体又は粒体の表面に触媒が膜状に付着している導電性カーボン粉体又は粒体のみからなるか、或いは導電性カーボン粉体又は粒体の他に、この粒子を結着するための樹脂等の他成分を含有していてもよく、後者の場合、他成分としては、造孔剤(例えばCaCO3)及びイオン伝導体等が挙げられる。更に、導電性カーボン粉体又は粒体を多孔性のガス透過性集電体、例えばカーボンシート上に保持させることが好ましい。
本実施の形態において、ガス拡散性電極中に、或いは電気化学デバイスを構成する第1極と、第2極との両極間に挟持されたイオン伝導部に、使用可能なイオン伝導体としては、一般的なナフィオン(デュポン社製のパーフルオロスルホン酸樹脂)のほかにも、フラレノール(ポリ水酸化フラーレン)等のフラーレン誘導体が挙げられる。
特に、図7A及び図7Bに示す如く、フラーレン分子に複数の水酸基を付加した構造を持つフラレノール(Fullerenol)は、1992年にChiangらによって最初に合成例が報告された(Chiang,L.Y.;Swirczewski,J.W.;Hsu,C.S.;Chowdhury,S.K.;Cameron,S.;Creegan,K.,J.Chem.Soc,Chem.Commun.1992,1791)。
本出願人は、そうしたフラレノールを図8Aに概略図示するように凝集体とし、近接し合ったフラレノール分子(図中、○はフラーレン分子を示す。)の水酸基同士に相互作用が生じるようにしたところ、この凝集体はマクロな集合体として高いプロトン伝導特性、換言すれば、フラレノール分子のフェノール性水酸基からのH+の解離性を発揮することを初めて知見することができた。
本実施の形態においては、フラレノール以外に、例えば、複数の−OSO3H基をもつフラーレンの凝集体をイオン伝導体として用いることもできる。OH基がOSO3H基と置き換わった図8Bに示すようなポリ水酸化フラーレン、即ち、硫酸水素エステル化フラレノールは、やはりChiangらによって1994年に報告されている(Chiang.L.Y.;Wang,L.Y.;Swirczewski,J.W.;Soled,S.;Cameron,S.,J.Org.Chem.1994,59,3960)。そして、硫酸水素エステル化されたフラーレンには、ひとつの分子内にOSO3H基のみを含むものもあるし、或いは、この基と水酸基とをそれぞれ複数、持たせることも可能である。
上述したフラレノール及び硫酸水素エステル化フラレノールを、多数凝集させた時、それが、バルクとして示すプロトン伝導性は、分子内に元々含まれる大量の水酸基やOSO3H基に由来するプロトンが移動に直接関わるため、雰囲気から水蒸気分子などを起源とする水素、プロトンを取り込む必要はなく、外部からの水分の補給、とりわけ、外気より水分等を吸収する必要もなく、雰囲気に対する制約はない。従って、乾燥雰囲気下においても、継続的に使用することができる。
これらの分子の基体となっているフラーレンは、特に求電子性の性質を持ち、このことが酸性度の高いOSO3H基のみならず、水酸基等においても水素イオンの電離の促進に大きく寄与していると考えられ、優れたプロトン伝導性を示す。又、一つのフラーレン分子中に、かなり多くの水酸基及びOSO3H基等を導入することができるため、伝導に関与するプロトンの、伝導体の単位体積あたりの数密度が非常に多くなるので実効的な伝導率を発現する。
フラレノール及び硫酸水素エステル化フラレノールは、その殆どが、フラーレンの炭素原子で構成されているため、重量が軽く、変質もし難く、汚染物質も含まれていない。更に、フラーレンの製造コストも急激に低下しつつある。それゆえに、資源的、環境的、経済的にみて、フラーレンは他のどの材料にもまして、理想に近い炭素質系材料であると考えられる。更に、フラーレン分子に、例えば上記−OH、−OSO3H以外に−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかを有するものでも使用可能である。
本実施の形態に使用可能なフラレノール等を合成するには、フラーレン分子の粉末に対し、例えば、酸処理や加水分解等の公知の処理を適宜組み合わせて施すことにより、フラーレン分子の構成炭素原子に所望の基を導入することができる。ここで、イオン伝導部を構成するイオン伝導体として、フラーレン誘導体を用いた場合、このイオン伝導体が実質的にフラーレン誘導体のみからなるか、或いは結合剤によって結着されていることが好ましい。
本実施の形態のガス拡散性電極においては、各種の電気化学デバイスに好適に使用できる。すなわち、第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたイオン伝導体とからなる基本的構造体において、上記第1極及び上記第2極のうち少なくとも上記第1極に、本実施の形態のガス拡散性電極を適用することができる。
更に、具体的にいうと、第1極及び第2極の少なくとも一方が、ガス電極である電気化学デバイスなどに対し、本実施の形態のガス拡散性電極を好ましく適用することが可能である。
次に、本実施の形態のガス拡散性電極を用いた具体例の燃料電池を図9に示す。
この燃料電池は、ガス拡散性電極10をそれぞれ有する、互いに対向する負極(燃料電極又は水素電極)16及び正極(酸素電極)17を有し、これらの両電極間に、イオン伝導部(プロトン伝導体部)5が挟持されている。これら負極16、正極17からは、それぞれ端子15,14が引き出されており、外部回路(負荷4)と接続するような構造とされている。
この燃料電池では、使用時には、負極16側では導入口(図示せず)から水素が供給され、排出口(図示せず、なお、これは設けないこともある)から排出される。
燃料ガス(H2)がH2流路12を通過する間に、水素が負極へ拡散してここでプロトン(H+)を発生し、このプロトン(H+)は、イオン伝導部(プロトン伝導体部)5で発生したプロトンと共に正極17側へ移動し、そこで、導入口(図示せず)からO2流路13に供給された排気口(図示せず)へ向かう酸素(空気)と反応し、これにより、所望の起電力が取り出される。
以上の構成には示されていないが、水素の供給源には、水素吸蔵合金や水素吸蔵炭素質材料が収納されている。なお、予め、この水素吸蔵用炭素質材料に水素を吸蔵させておき、水素供給源に収納してもよい。
かかる燃料電池は、本実施の形態のガス拡散性電極が第1極及び/又は第2極を構成しているので、良好な触媒作用を有しており、触媒とガス(H2など)との接触面積が十分に確保されるので、反応に寄与する触媒の比表面積が大きくなり、触媒能も向上して、良好な出力特性が得られる。また、負極16中で水素イオンが解離し、又イオン伝導部5で水素イオンが解離しつつ、これらの水素イオンが正極17側へ移動するので、乾燥状態でも水素イオンの伝導率が高いという特徴がある。従って、加湿装置等は不必要となるので、システムの簡略化、軽量化を図ることができ、更に電流密度及び出力特性等、電極としての機能の向上を図ることができる。
なお、フラーレン誘導体を加圧成形して得られる膜状のフラーレン誘導体のみからなる、すなわち第1極と、第2極とに挟持されたイオン伝導部に代わり、結合剤によって結着されているフラーレン誘導体をイオン伝導部5に用いてもよい。この場合、結合剤によって結着されることによって、強度の十分なイオン伝導部を形成できる。ここで、結合剤として使用可能な高分子材料としては、公知の成膜性を有するポリマーの1種又は2種以上が用いられ、そのイオン伝導部中の配合量は、通常、20重量%以下に抑えるのがよい。20重量%を超えると、水素イオンの伝導性を低下させるおそれがあるからである。このような構成のイオン伝導部も、フラーレン誘導体をイオン伝導体として含有するので、上述した実質的にフラーレン誘導体のみからなるイオン伝導体と同様の水素イオン伝導性を発揮することができる。しかも、フラーレン誘導体単独の場合と違って高分子材料に由来する成膜性が付与されており、フラーレン誘導体の粉末圧縮成形品に比べ、強度が大きく、かつガス透過防止能を有する柔軟なイオン伝導性薄膜(厚みは通常300μm以下)として用いることができる。
なお、高分子材料としては、水素イオンの伝導性をできるだけ阻害(フラーレン誘導体との反応による)せず、成膜性を有するものなら、特に限定はしない。通常は電子伝導性をもたず、良好な安定性を有するものが用いられ、その具体例を挙げると、ポリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール等があり、これらは次に述べる理由からも、好ましい高分子材料である。まず、ポリテトラフルオロエチレンが好ましいのは、他の高分子材料に比べ、少量の配合量で強度のより大きな薄膜を容易に成膜できるからである。この場合の配合量は、3重量%以下、好ましくは0.5〜1.5重量%と少量ですみ、薄膜の厚みは通常、100μmから1μmまでと薄くできる。ポリビニルアルコールが好ましいのは、より優れたガス透過防止能を有するイオン伝導性薄膜が得られるからである。この場合の配合量は5〜15重量%の範囲とするのがよい。
なお、ポリフルオロエチレンにせよ、ポリビニルアルコールにせよ、それらの配合量が上述したそれぞれの範囲の下限値を下回ると、成膜に悪影響を及ぼすことがある。
本実施の形態の、各フラーレン誘導体が結合剤によって結着されてなるイオン伝導部の薄膜を得るには、加圧成形や押出し成形を始め、公知の成膜法を用いればよい。
本実施の形態の電気化学デバイスにおいて、本実施の形態のガス拡散性電極に挟着されるイオン伝導体は、特に限定されるべきものではなく、イオン(水素イオン)伝導性を有するものならばいずれのものも使用可能であり、例示するならば、水酸化フラーレン、硫酸エステル化フラレノール及びナフィオン等が挙げられる。また、結合剤をガス拡散性電極の撥水性樹脂として使用可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明する。
実施例1
この実施例1は、ガス透過性集電体(カーボンシート)上に、カーボン粒体又は粒体層22と白金(スパッタ)層19とを交互に形成して、図1に示したような、ガス拡散性電極を作製し、燃料電池を構成した。
即ち、カーボン粉体又は粒体層22として、通常のカーボン粉体又は粒体1(粒径30〜40nm)0.6gを、溶媒NMP(N−メチルピロリドン)40g中に分散させた塗料を、スピンコート法によって、初めは、500rpmで5秒間滴下し、その後、1000rpmで30秒間滴下することによって層を形成し、更に、120℃で加熱乾燥して形成した。
次に、白金スパッタ層19は、5inch径の白金(Pt)ターゲットを用いて、DC1A、420Vを印加した。そして、基板を回転させながら、スパッタを8分8秒行なうことによって、100nmの触媒物質(白金等)を成膜した。
なお、カーボン粉体又は粒体層22は、スピンコート法を用いて、厚さは300nmとし、それを5層設けて合計1500nmとした。又、白金(スパッタ)層19は、スパッタリング法を用いて、厚さは20nmとし、それを5層設けて合計100nmとした。即ち、それぞれの層をガス透過性集電体(カーボンシート)上に5層ずつ形成し、ガス拡散性電極の厚さを1.6μmとした。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極層を、ナフィオンからなるイオン交換膜(プロトン伝導部)と集電電極との間に設置し、燃料電池セルとして水素ガス、酸素ガスを導入することにより、電極を構成するカーボン粉体又は粒体層の層数(以下、単に層数と称する。)に対する燃料電池の出力電圧の変化を測定した。
実施例2
この例は、図2に示すように、カーボン粉体又は粒体層22に粒径2〜3nmの白金粉体6を混合比で20重量%混合させる以外は、実施例1と同様にした。
上述した工程によって得られたガス拡散性電極を、イオン交換膜(プロトン伝導部)と集電電極との間に設置し、燃料電池セルとして水素ガス、酸素ガスを導入することにより、燃料電池の層数に対する出力電圧の変化を測定した。その結果は、後述する。
実施例3
この例は、図3に示すように、カーボン粉体又は粒体層22に、フラレノールからなるH+伝導性被膜(以下、同様)20を形成したカーボン粉体又は粒体21を混合させる以外は、実施例1と同様にした。
なお、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21のH+伝導性被膜20の厚さは、10nm〜数十nmの範囲に収まるものとし、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21と被膜なしのカーボン粉体又は粒体1との配合比は重量比で1:1とした。
さらに、H+伝導性のフラーレン誘導体が被膜されたH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21の総量に対して、H+伝導性被膜の割合を30重量パーセントとした。このH+伝導処理されたカーボン粉体又は粒体と、H+伝導処理されていないカーボン粉体又は粒体1とを混合した。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極を実施例1と同様に燃料電池セルに組み込み、その出力を測定した。
実施例4
この例は、図4に示すように、カーボン粉体又は粒体層22に、テフロンからなる撥水性被膜(以下、同様)18が形成されたカーボン粉体又は粒体26を混合させる以外は、実施例1と同様にした。
なお、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の撥水性被膜の厚さは、10nm〜数十nmの範囲に収まるものとし、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体と被膜なしのカーボン粉体又は粒体との配合比は重量比で1:1とした。
さらに、撥水性のテフロンが被膜された撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の総量に対して、撥水性テフロンの割合を30重量パーセントとした。この撥水処理されたカーボン粉体又は粒体と、撥水処理されていないカーボン粉体又は粒体とを混合した。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極を実施例1と同様に燃料電池セルに組み込み、その出力を測定した。
実施例5
この例は、図5に示すように、カーボン粉体又は粒体層22に、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21と、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26とを混合させる以外は、実施例1と同様にした。
なお、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26及びH+伝導性被膜形成カーボン21のそれぞれの被膜の厚さは、10nm〜数十nmの範囲に収まるものとし、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26とH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体と、被膜なしのカーボン粉体又は粒体1との配合比は重量比で0.5:0.5:1とした。
さらに、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26において、撥水性被膜を形成するには、例えばテフロン溶液にカーボン粉体等を浸した後に乾燥した。このテフロンが被膜された撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の総量に対して撥水性テフロンの割合を30重量%とした。
さらに、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21において、伝導性被膜を形成するには、例えばフラーレン誘導体のテトラヒドロフラン溶液にカーボン粉体等を浸した後に乾燥した。このフラーレン誘導体が被膜されたH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体の総量に対して、H+伝導性被膜の割合を30重量パーセントとした。
この撥水処理されたカーボン粉体又は粒体と、H+伝導性処理されたカーボン粉体又は粒体と、処理されていないカーボン粉体又は粒体とを混合した。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極を実施例1と同様にして燃料電池セルに組み込み、その出力を測定した。
比較例1
この比較例においては、従来のように、平均粒径100nmの白金粒子の分散液を、厚さ2μmのガス透過性集電体(カーボンシート)上に散布させたガス拡散性電極を用いて構成した燃料電池を作製した。
なお、分散液中における白金粒子の濃度は20重量%であり、分散液量は200μlであった。分散液は、カーボンシートにしみ込んだ。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極層を、イオン交換膜(プロトン伝導部)と集電電極との間に設置し、燃料電池セルとして水素ガス、酸素ガスを導入することにより、燃料電池の層数に対する出力電圧を測定した。
比較例2
この比較例においては、上記の分散液を、厚さ50μmのガス透過性集電体(カーボンシート)上に散布させたガス拡散性電極を用いて構成した燃料電池を作製した。その他は、比較例1と同様であった。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極を、イオン交換膜(プロトン伝導部)と集電電極との間に設置し、燃料電池セルとして水素ガス、酸素ガスを導入することにより、燃料電池の層数に対する出力電圧を測定した。
比較例3
この比較例は、ガス透過性集電体(カーボンシート)と白金粒子の分散液との間に、厚さ1.5μmのカーボン粉体又は粒体層が設けられた以外は、比較例1と同様とする。
上述の実施例及び比較例の検討を行った結果を下記表に示す。
これらの結果から、実施例1の電極の厚さは1.6μmとなり、出力電圧は、0.6Vで良好であった。さらに、実施例2〜5の結果も実施例1と同様良好であった。
なお、比較例1の電極の厚さは2μmとなり、出力電圧は、0.4Vと低くなった。又、比較例2の電極の厚さは50μmとなるので、出力電圧は0.6Vと良好であるが、電極自体の厚みが大きくなる。又、比較例3の結果は、比較例1と同様であった。
比較例1においては、白金粒子がまばらにしか分散していないために、触媒作用が起きにくく、出力電圧が十分でなかった。又、比較例2においては、出力電圧は十分とれたが、電極の厚さが比較例3の結果も同様であった。さらに、比較例2においては、出力電圧は十分とれたが、電極の厚さが50μmになり、薄型化は難しかった。
実施例1においては、ガス拡散性電極の厚さが1.6μmであり、比較例2(50μm)の約30分の1の厚さであるにも係らず、出力電圧が比較例2と等(0.6V)であった。又、実施例2〜5の結果も同様であった。
このことから、本実施のガス拡散性電極を用いた燃料電池は、従来の構造の比較例を用いる燃料電池と比べて、比較的出力電圧を高く維持しながら、さらに、ガス拡散性電極を薄型化できることがわかった。
次に、実施例1における、燃料電池の出力電圧と層数との相関関係を図10に示す。
図10によると、層数が2以上、100以下の範囲は、出力がほぼ0.6Vに保たれるが、100層を過ぎると次第に下がり、150層の時点では0.54V、200層の時点では0.44Vになってしまう。
この結果から、出力電圧を比較的高く維持できる層数の範囲としては、2層以上、150層以下(更には120層以下)が好ましく、2層以上、100層以下が最も好ましいといえる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述の実施の形態は、本発明の技術的思想に基いて更に変形が可能である。
例えば、上記の電気化学デバイスは、H2等の分解による電池反応のみならず、その過程を逆にすることによって、例えば、H2やH2O2の製造に適応させることができる。
上述の実施の形態においては、所定の効果を得られるのならば、同一のガス拡散性電極内における、カーボン粉体又は粒体層及び白金スパッタ層の各層の層数、厚さ、構成材質、濃度、形成方法等がそれぞれに異なった組み合わせで積層されてもよい。
産業上の利用可能性
本発明は、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなすガス拡散性電極体を用いることによって、ガス拡散性電極体内の各触媒物質層において、ガス拡散性電極体に侵入する酸素を効率良くイオン化し、プロトン(H+)との接触面積を拡大する等、電極内の反応を効率的に行え、出力向上等の高性能化が可能となり、これが各層で生じることから、各層厚(従って全厚)が薄くても、高効率化、高性能化が可能となる。
上述のガス拡散性電極体においては、積層構造を形成する際に、上層の形成時に下層が既に形成されているために、比較的容易に積層形成できる。そのために、上記のガス拡散性電極体を再現性良く製造できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係るガス拡散性電極体の一部を示す断面図である。
図2は、本発明に係るガス拡散性電極体の他の例を示す断面図である。
図3は、本発明に係るガス拡散性電極体の更に他の例を示す断面図である。
図4は、本発明に係るガス拡散性電極体の更に他の例を示す断面図である。
図5は、本発明に係るガス拡散性電極体の更に他の例を示す断面図である。
図6は、本発明に用いられる導電性カーボン粉体又は粒体の一例を示す断面図である。
図7は、本発明に使用可能なフラーレン誘導体の一例であるポリ水酸化フラーレンの構造を示す図である。
図8は、本発明に使用可能なフラーレン誘導体の例を示す模式図である。
図9は、本発明に係る燃料電池の概略構成を示す構成図である。
図10は、本発明に係る燃料電池の出力特性を示す特性図である。
本発明は、例えば、燃料電池の製造に好適なガス拡散性電極体及びその製造方法、並びに電気化学デバイスに関する。
背景技術
近年、石油等の化石燃料に代り得る、代替クリーンエネルギー源が要望され、例えば、水素若しくは水素ガス燃料が注目されている。
水素は、単位質量当りに含まれる化学エネルギー量が大きく、また、使用に際して、有害物質や地球温暖化ガス等を放出しないといった理由から、クリーンで、かつほとんど無尽蔵に存在する理想的なエネルギー源であると言える。
最近では、水素エネルギーから電気エネルギーを取り出すことができる燃料電池の開発が盛んに行われており、大規模発電からオンサイトな自家発電、更には、電気自動車用の電源等としての応用等が期待されている。
燃料電池は、プロトン伝導体膜を挟んで、燃料電極、例えば、水素電極と酸素電極とを配置し、これらの電極に、それぞれ燃料としての水素や酸素を供給することで電池反応を起こし、起電力を得るものであり、その製造に際しては、通常、プロトン伝導体膜、燃料電極、例えば、水素電極、酸素電極等を別々に成形し、これらを貼り合わせて製作している。
この燃料電池の燃料電極、例えば、水素電極と酸素電極としてのガス拡散性電極とは、主に、導電性カーボン粒子等からなり、さらに、例えば、白金等の触媒金属を担持させた触媒層を有する構成となっている。
従来、上述のガス拡散性電極は、導電性粉体又は粒体としてのカーボンに、触媒としての白金が担持されている触媒粒子を、撥水性樹脂としての、例えばフッ素樹脂及びイオン伝導体と共にシート状に成形するか、或いはカーボンシート上に直接塗布する工程を経て製造される。即ち、固体高分子燃料電池用ガス拡散性電極としては、例えば、特開平5−36418号公報に示されるように、通常、カーボンに白金が担持されている粉体又は粒体を撥水性樹脂、イオン導電性材料と共にカーボンシートに塗布して製造される。
ここで、ガス拡散性電極とは、作用ガスを拡散可能な連続気孔を有する電極のことを指し、更にこれは、電子伝導性を有するものである(以下、同様)。
このガス拡散性電極を、固体高分子型燃料電池等の燃料電池を構成する水素分解用電極として用いた場合、白金等の触媒によって燃料がイオン化され、それによって生じた電子は導電性カーボン粉体又は粒体を伝って流れ、また、水素をイオン化することで生じるプロトン(H+)はイオン伝導体を介してイオン(プロトン)伝導体膜に流れる。この過程では、ガスを通す間隙、電気を通すカーボン粉体又は粒体、イオンを通すイオン伝導体、及び燃料や酸化剤をイオン化するための触媒等が必要になる。ここで、白金等の触媒により燃料がイオン化され、これによって生じた電子は導電性カーボン粉体又は粒体を通して流れ、イオン化された水素(プロトン)はイオン伝導材料を通してイオン伝導膜に流れる。ここで、ガスを通す間隙、電気を通すカーボン粉体又は粒体、イオンを通すイオン伝導材料、燃料あるいは酸化剤をイオン化するための触媒等が必要になる。このガス拡散性電極(触媒層)においては、燃料が水素である場合、燃料電池内では、
H2→2H++2e−
の反応が起こり、酸素電極内では、
O2+4H++4e−→2H2O
なる反応により、水が生成する。
この種の燃料電池においても、単位体積当たりの発電量の増加の要請が強くなっている。しかし、発電量の増加に伴い、ガス拡散性電極は大型化してしまう。その反面、ガス拡散性電極の薄型化も急務である。
また、ガス拡散性電極内に含有される触媒物質、例えば白金が粉体又は粒体の状態で混合される時は、プロトン(H+)等と接触する面積、換言すれば電極反応は不十分となり易い。
発明の開示
本発明は、上述したような実情に鑑み提案されたものであって、その目的とするところは、発電量等の性能を維持しつつも、小型化が可能なガス拡散性電極体、及びその製造方法、並びにこの電極体を用いた電気化学デバイスを提供することにある。
上述のような目的を達成するために提案される本発明に係るガス拡散性電極体は、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなす。
本発明はガス拡散性電極体の製造方法であり、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とを交互に形成する。
本発明は、電気化学デバイスであり、第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたイオン伝導体とからなり、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなすガス拡散性電極体が、第1極及び第2極のうち少なくとも第1極を構成している。
本発明は、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなすガス拡散性電極体を用いることによって、ガス拡散性電極体内の各触媒物質層においてガス拡散性電極体に浸入する酸素を効率良くイオン化し、プロトン(H+)との接触面積を拡大する等、電極内の反応を効率的に行え、出力向上等の高性能化が可能となり、これが各層で生じることから、各層厚、従って全厚が薄くても高効率化、高性能化が可能となる。
本発明に係るガス拡散性電極体は、積層構造を形成する際に、上層の形成時に下層が既に形成されているために、比較的容易に積層形成できる。そのために、上記のガス拡散性電極体を再現性良く製造できる。
本発明の更に他の目的、本発明によって得られる具体的な利点は、以下において図面を参照して説明される実施の形態の説明から一層明らかにされるであろう。
発明を実施するための最良の形態
本発明は、ガス拡散性電極体であり、このガス拡散性電極体は、積層構造における第1層及び第2層のそれぞれの層数が、2以上100以下であり、第1層が少なくともカーボン粉体又は粒体からなり、第2層が触媒金属からなる。第1層の層厚みは、数nm〜数μm、例えば3μmであり、第2層の層厚みは数nm〜数百nmであり、複数の前記第2層のうち、少なくとも一層が白金を含むのが望ましい。複数の前記第1層のうち、少なくとも一層が触媒金属を含み、第1層が、イオン伝導性被膜を有する導電性粉体又は粒体を含有するのが望ましい。第1層が、撥水性被膜を有する導電性粉体又は粒体を含有していて、積層構造が集電体又は下地層上に形成されているのが望ましい。第1層は、スピンコート法、印刷法、スプレードライ法、気相成膜法のうち、少なくとも一つの方法を用いて形成され、また第2層は気相成膜法によって形成するのが望ましい。積層構造は、集電体又は下地層上に形成され、第1極及び第2極のうち少なくとも一方がガス電極であるのが望ましく、また燃料電池に適用されるのが望ましい。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を図面の参照してに詳しく説明する。
第1の実施の形態
この実施の形態において、ガス拡散性電極体は、図1に示すように、電子を通すための導電性のカーボン粉体又は粒体層22をガス透過性集電体(カーボンシート)11の上に塗布等によって形成し、この上に、酸素等の作用ガスを酸素イオンにイオン化する白金等の触媒層19を気相成膜法(スパッタ法等)によって積層し、これらの導電層22と触媒層19とを交互に積層してガス拡散性電極(触媒層)10を酸素極として形成している。なお、図1に簡略化のために2層構造の形態を示しているが、実際には2層以上の積層構造からなっている。但し、2層でも差支えない。また、図示は省略したが、水素極(燃料極)も、酸素極10と同様に構成されていてよい。
このガス拡散性電極(触媒層)10内においては、対向する電極側、図1においては上側から、イオン伝導部(プロトン伝導体膜)5を介してプロトン(H+)が侵入し、ガス透過性集電体(カーボンシート)11を介して侵入した空気(酸素)がイオン化され、これらのプロトンと酸素イオンが反応(電池反応)する。その結果、電気化学エネルギーが出力として取り出され、水(H2O)が生成する。
なお、触媒層19としての白金スパッタ層は、連続膜である必要はなく、多孔性であっても、更には部分的に非連続性を有していてもよい。なぜなら、連続膜として形成されると、プロトン(H+)や酸素等のガスの通過を妨げてしまうことがあるからである。
カーボン粉体又は粒体等の導電性粉体又は粒体は、粒状、球状、繊維状等の様々な形状のものを含むものとし、以下同様とする。
本発明に係る燃料電池の構成は、図9に示すようなものであり、簡易に述べると(詳しくは後述する)、基本的には、プロトン伝導性を有するイオン伝導部(プロトン伝導体膜)5の両面に、それぞれ負極(燃料電極)16、正極(酸素電極)17が形成されている。
上述の負極(燃料電池)16に、例えば水素を供給し、正極(酸素電極)17に酸素(空気)を供給すると、電池反応が起こり、起電力が生ずる。ここで、負極(燃料電極)16には、いわゆる、ダイレクトメタノール方式の場合、水素源としてメタノールを供給することも可能である。
なお、負極(燃料電極)16及び正極(酸素電極)17は、炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体1を主に電極材料とし、これを成形してなるものであ。
なお、本実施の形態においては、図1に示すように、カーボン粉体又は粒体の層22と、白金スパッタ層からなる触媒層19とが交互に積層形成されている。ガス拡散性電極を、このように構成することにより、ガス等と触媒金属との接触面積が大きくなって電極反応が効率的に起こり、薄型化することが可能となる。
次に、電極を構成する主材料として用いられる炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体には、電子伝導性を有することが必要であるため、黒鉛系の種々の炭素質材料(カーボン)及びカーボンナノチューブ等が好適に使用される。さらに、ガス拡散性の向上の観点からみれば、黒鉛は針状であることが好ましい。
なお、カーボンナノチューブは、真空チャンバーと呼ばれる反応室内に、いずれもグラファイト等の炭素棒からなる陰極と陽極とを、間隙を介して対向配置し、さらにヘリウム等の希ガスの雰囲気下で、各電極に直流を通電することによってアーク放電させ、反応室の内面に堆積する炭素質材料から精製して得られる。
上述の方法で生成された炭素質材料を電極材料として用いた場合、負極(燃料電極)或は正極(酸素電極)をガス透過性集電体11上に直接形成することができる。ここで、形成方法としては、スピンコート法、スプレー法や滴下法、バーコート法等を挙げることができる。
例えば、スピンコート法とは、炭素質材料であるカーボン粉体又は粒体を水、或は、エタノール等の溶剤に分散し、これを、回転させた集電体上に直接滴下する方法である。スプレー法の場合、炭素質材料であるカーボン粉体又は粒体を水、或は、エタノール等の溶剤に分散し、これを、集電体上に直接吹き付ける方法である。滴下法の場合、やはり、炭素質材料であるカーボン粉体又は粒体を水、或は、エタノール等の溶剤に分散し、これを、集電体上に直接滴下する方法である。これ等の上記形成方法によって、集電体上に、炭素質材料であるカーボン粉体又は粒体が堆積した状態となる。
このとき、カーボンナノチューブは、直径1nm程度、長さ1〜10μm程度の細長い繊維状の形状を呈し、また、針状黒鉛も、直径0.1〜0.5μm程度、長さ1〜50μm程度の針状の形状を呈するため、互いに絡み合って、特段の結合剤が無くとも良好な層状体を構成する。勿論、必要に応じて、結合剤(バインダー)を併用することも可能である。即ち、カーボン粉体又は粒体のガス透過性集電体(カーボンシート)への塗布に際しては、例えば、バインダー分散液等を使用してもよい。気相成膜法においては、例えば、スパッタ法等を使用してもよい。
なお、ガス拡散性電極(触媒層)10に触媒物質(白金等)を含有させてもよいが、この方法としては、スパッタ法等の気相成膜法を用いてカーボン表面に触媒物質を成膜してもよいし、触媒粒子を混合してもよい。例えば、5inch径の白金(Pt)ターゲットを用いて、DC1A、420Vを印加する。そして、基板を回転させながら、スパッタを8分8秒行なうことによって、1000nmの触媒物質(白金等)の成膜ができる。
なお、ガス拡散性電極によって形成される負極(燃料電池)や正極(酸素電極)等においては、ガス拡散性電極を、スピンコート法等によりガス拡散性集電体(カーボンシート)上に直接形成するゆえに、これを自立膜として別個に形成する必要がないため、作業中における破損等に対して求められる機械的強度が要求されることはなく、従って、その厚さは、10μm以下、例えば、2〜4μm程度と、極めて薄く設定することができる。但し、自立膜として作製してもよい。なお、従来の構造は、主に単層又は単層積層構造であり、厚みは例えば、50μmあった。
次に、本実施の形態における、燃料電池に使用するプロトン伝導体の素材としては、例えば、パーフルオロスルホン酸樹脂(例えば、デュポン社製、商品名Nafion(R)等)のようなプロトン(水素イオン)伝導性の高分子材料、又は、H3MO12PO40・29H2OやSb2O5・5.4H2O等、多くの水和性を持つポリモリブデン酸類や酸化物等、又は、フラーレンをはじめとする各種炭素質材料に、プロトン解離性の基を導入したもの、又は、酸化ケイ素及びブレーンステッド酸を主体とする化合物と、スルホン基を側鎖に持つ重合体との混合物等が好適に使用されるが、これらの材料に、特に限定されるものではない。
上述のパーフルオロスルホン酸樹脂や、ポリモリブデン酸類や酸化物等の高分子材料や水和化合物は、湿潤状態に置かれると、常温付近で、高いプロトン伝導性を示す。即ち、パーフルオロスルホン酸樹脂を例にとると、そのスルホン酸基より電離したプロトンは、高分子マトリックス中に大量に取込まれている水分と結合(水素結合)してプロトン化した水、つまり、オキソニウムイオン(H3O+)を生成し、このオキソニウムイオンの形態をとって、プロトンが高分子マトリックス内をスムーズに移動することができるので、この種のマトリックス材料は、常温下でもかなり高いプロトン伝導効果を発揮できる。或いは、これらの材料とは伝導機構の全く異なるプロトン伝導体も使用可能である。即ち、Yb(イッテルビウム)をドープしたSrCeO3等のペロブスカイト構造を有する複合金属酸化物等である。なお、この種のペロブスカイト構造を有する複合金属酸化物は、水分を移動媒体としなくとも、プロトン伝導性を有することが見出されている。この複合金属酸化物においては、プロトンは、ペロブスカイト構造の骨格を形成している酸素イオン間を、単独でチャネリングして伝導されると考えられている。
上述したフラーレンを初めとする各種炭素質材料にプロトン解離性の基を導入したものの中で、プロトン解離性の基とは、−OH、−OSO3H、−SO3H、−COOH、−OPO(OH)2等のように、電離によりプロトンを離し得る官能基を意味し、また「プロトン(H+)の解離とは、電離によりプロトンが官能基から離れることを意味する。そして、このプロトン伝導体においては、プロトン解離性の基を介してプロトンが移動し、イオン伝導性が発現される。特に、上述の炭素質材料の母体となる炭素質材料には、炭素を主成分とするものであれば、任意の材料を使用することができるが、プロトン解離性の基を導入した後に、イオン伝導性が電子伝導性よりも大であることが必要である。具体的には、炭素原子の集合体である炭素クラスターや、チューブ状炭素質(いわゆるカーボンナノチューブ)を含む炭素質材料等を挙げることができる。
なお、上述の炭素クラスターには、種々のものがあり、フラーレンや、フラーレン構造の少なくとも一部の開放端を持つもの、ダイヤモンド構造を持つもの等が好適である。
以下、この炭素クラスターについて、更に詳細に説明する。
さて、上述の炭素クラスターとは、通常は、数個から数百個の原子が結合、又は凝集して形成されている集合体のことであり、この原子が炭素である場合、この凝集(集合)体によって、プロトン伝導性が向上すると同時に、化学的性質を保持して膜強度が十分となり、層を形成し易い。
炭素を主成分とするクラスターとは、炭素原子が、炭素ー炭素間の結合の種類は問わず、数個から数百個結合して形成されている集合体のことである。但し、必ずしも、100%炭素のみで形成されているとは限らず、他原子に混在もあり得る。このような場合も含めて、炭素原子が多数を占める集合体を、炭素クラスターと称する。なお、プロトン解離性の基を有する炭素質材料を主成分として含有するプロトン伝導体は、乾燥状態でも、プロトンが前記プロトン解離性の基から解離し易く、しかも、このプロトンは、常温を含む広い温度域(少なくとも約160℃〜−40℃の範囲)に亘って高伝導性を発揮することが可能である。
上述のように、このプロトン伝導体は、乾燥状態でも十分なプロトン伝導性を示すが、水分が存在していても差支えない。なお、この水分は、外部から浸入したものでもよい。
次に、上述の実施の形態においては、積層数は2〜100層が好ましいが、これは、2層未満の場合は単層(又は単積層)構造になり、従来と構造的にはほとんど変りがなく、積層構造としての利点を生かすことができないからである。積層数が100層を超えると、プロトン(H+)や空気(酸素)が、ガス拡散性電極(触媒層)10への侵入初期時に、主に電極の外周の白金スパッタ層19に接触して電極反応を早々に起こしてしまい、ガス拡散性電極(触媒体)10の内部まで十分にプロトン(H+)や空気(酸素)が到達しにくくなり、ガス拡散性電極(触媒層)10の内部に電極反応のできない無駄な部分が生じるおそれがあるからである。更に、同じ電極厚に保持しつつ、層数を増やすと、その分、例えばカーボン粉体又は粒体層の厚さが薄くなるが、カーボン粉体又は粒体層22や白金スパッタ(触媒金属)層19が100層を超えると、ガスの透過性が損われ、電池反応が抑制されて出力が低下し、また全厚も増えてしまう。それゆえに、上述の条件での最適層数は、例えば層22と19でそれぞれ5〜6層である。しかし、例えば機能を失うことなくカーボン粒体又は粒体層をもっと薄く作製できたときには、状況が変わる可能性が高い。なお、カーボン粉体又は粒体層が1層に対して、白金スパッタ層19を1層という組み合せが好ましい。例えば、数μm厚のカーボン粉体又は粒体層を、粒径が数十nmのカーボン粉体又は粒体で形成すると、おそらく、100層位又はそれ以下になり、好ましいといえる。
本実施の形態においては、電子を通すための導電性のカーボン粉体又は粒体1の層の厚さは数nm〜数μmとし、酸素や水素等の作用ガスを、プロトンと電子とに分解し或いは酸素をイオン化する触媒となる白金スパッタ層19の厚さは、数nm〜数百nmとする。
さて、本実施の形態において、導電性のカーボン粉体又は粒体によって形成されている層は、導電性を有し、所定の機能を発揮するならば、カーボン、即ち、炭素質系物質以外の物質を用いてもよい。
上述の形態で使用される、カーボン粉体又は粒体の外径、重量、形成方法、形成する層数等は所定の効果が有るのならば、自由に変えてよい。
なお、形成方法については、スピンコート法、印刷法、スプレードライ法、気相成膜法等の中から選ぶ。しかし、所定の効果が得られるのならば、これら以外の形成方法でもよい。厚さも、上述の制限内に収められる範囲とするが、所定の効果が得られるのならば、上記以外の範囲でもよい。
本実施の形態で使用される、酸素や水素等の作用ガスを、プロトンと電子とに分解する触媒となる白金スパッタ層19については、用いられる触媒金属は、所定の効果が有るのならば、白金である必要はなく、他の触媒金属を使用してもよい。更に、この層の厚さ、層数等は所定の効果が有れば、自由に変えてよい。
本実施の形態においては、ガス透過性集電体(カーボンシート)とガス拡散性電極との間に、所定の効果が有るのならば、第3の層や下地層等を設けてもよい。
本実施の形態においては、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなすガス拡散性電極体を用いることによって、ガス拡散性電極体内の各触媒物質層において、ガス拡散性電極体に侵入する酸素を効率良くイオン化し、プロトン(H+)との接触面積を拡大する等、電極内の反応を効率的に行え、出力の向上等の高性能化が可能となり、これが各層で生じることから、各層厚、従って全厚が薄くても、高効率化、高性能化が可能となる。
上述のガス拡散性電極体においては、積層構造を形成する際に、上層の形成時に下層が既に形成されているために、比較的容易に積層形成できる。そのために、上記のガス拡散性電極体を再現性良く製造できる。即ち、本実施の形態においては、カーボン粉体又は粒体層と、触媒金属層とを有し、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属層とが交互に配置された構造を有するガス拡散性電極を提供する。
本実施の形態のガス拡散性電極の製造方法としては、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属とを含む層を、交互に複数回形成する製造方法を提供する。
本実施の形態の燃料電池においては、対をなすガス拡散性電極を備え、これらの対をなすガス拡散性電極が、プロトン伝導体膜を介して互いに対向配置されてなる燃料電池において、上記の対をなすガス拡散性電極の少なくとも一方は、カーボン粉体又は粒体層と、触媒金属とを有し、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属層とが交互に配置された構造を有する燃料電池を提供する。
本実施の形態のガス拡散性電極によれば、カーボン粉体又は粒体層と、触媒金属層とを有し、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属層とが交互に配置された構造を有しており、電極反応を効率的に行うことができるので、ガス拡散性電極を薄型化することができる。
本実施の形態のガス拡散性電極の製造方法によれば、カーボン粉体又は粒体層と、触媒金属層とを有し、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属層とが交互に配置された構造を有するガス拡散性電極を容易に製造することができる。
本実施の形態の燃料電池によれば、ガス拡散性電極をカーボン粉体又は粒体層と、触媒金属層と有し、カーボン粉体又は粒体層と触媒金属層とが交互に配置された構造とすることにより、薄型化することが可能となるので、燃料電池を小型化することができる。
第2の実施の形態
この実施の形態のガス拡散性電極体は、図2に示すように、カーボン粉体又は粒体によって形成される層22に、触媒として均一径の白金粉体6を更に混合する以外は、上述の第1の実施の形態と同様である。この実施の形態において、所定の効果が有するならば、触媒として白金以外の触媒金属粉体等を用いてもよい。白金粉体6の外径、カーボン粉体又は粒体によって形成される層に含有される比率(重量%)、混合の方法等は、所定の効果が有るのならば、自由に変えてよい。又、ガス拡散性電極層内の、カーボン粉体又は粒体からなる各積層内22内全てに白金粉体6を混合させるか否かは、所定の効果を考慮しつつ、自由に決めることができる。しかし、少なくとも一層は、混合させる。
本実施の形態においては、触媒金属としての白金が、粉体としてガス拡散性電極内に含有されるために、触媒機能が増進し、電極反応が活発化する。その他、本実施の形態は上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
第3の実施の形態
この実施の形態のガス拡散性電極体は、図3に示すように、主にカーボン粉体又は粒体によって形成される層に、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体を更に混合する以外は、上述の第1の実施の形態と同様である。
本実施の形態においては、図3に示すように、球状の炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体1の一部の表面をフラーレン誘導体、例えばフラレノール(以下、同様)からなるH+伝導性被膜20で被覆している。
なお、炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体の形状は、図3に示すような球形に限定されず、様々な形状のものにも、H+伝導性被膜20を設けることができる。
カーボン粉体又は粒体を被覆するH+伝導性被膜20の厚さについては、単分子層以上有すればよいので、最低限数nmあればよいが、あまりに厚いと、カーボン粉体又は粒体の導電性が損われるため、上限は数百nmが好ましい。例えば、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体の被膜の厚さは、10nm〜数十nmの範囲がよい。炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体1の表面をH+伝導性被膜20で被覆するには、例えば、H+伝導性樹脂を溶媒に分散し、この中に炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体を浸した後、乾燥すればよい。
なお、H+伝導性被膜の施されたカーボン粉体又は粒体の表面の少なくとも一部を、触媒物質(例えば白金)等で被膜してもよい。このH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体は、同種の粉体又は粒体が凝集しやすい性質を有するため、図3に示すように、ガス拡散性電極(触媒層)10の中では、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21は、連なったチェーン構造を形成する。従って、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21の形成するチェーン構造は、プロトン(H+)ガスの流通を促進し、それゆえ、プロトンガスH+等が透過する気孔(隙間)が確保され、ガスの拡散が十分に行なわれる。
なお、ガス拡散性電極(触媒層)10には、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体が、1〜80重量%、好ましくは20〜70重量%含有されるのが、活発な電池反応のためにはよいと考えられる。なぜなら、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体の重量%が少なすぎると、ガス拡散性電極(触媒層)10内で、プロトン(H+)ガスの流通が低下してしまうことにより、ガスの透過を妨げてしまい、電池反応をも弱めてしまうことがある。
ガス拡散性電極(触媒層)10内のH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体の重量%が多すぎると、プロトン(H+)ガスの流通にとっては好ましいが、カーボン粉体又は粒体相互の接触性が低くなり、或いはその分布が不均一となり易く、電子の導電性が不十分になり、電池反応を弱めてしまうことがある。
上述のガス拡散性電極によって形成される負極(燃料電池)や正極(酸素電極)等においては、ガス拡散性電極を、スピンコート法等によりガス拡散性集電体(カーボンシート)上に直接形成するゆえに、これを自立膜として別個に形成する必要がないため、作業中における破損等に対して求められる機械的強度が要求されることはなく、従って、その厚さは、10μm以下、例えば、2〜4μm程度と、極めて薄く設定することができる。但し、自立膜として作製してもよい。
本実施の形態においては、ガス拡散性電極内のカーボン粉体又は粒体、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体等の混合率(重量%)、混合方法等は、所定の効果が有るならば、自由に変えてよい。H+伝導性物質の種類、カーボン粉体又は粒体への付着方法、付着の厚さ等は、所定の効果が有るならば、自由に変えてよい。
本実施の形態においては、カーボン粉体又は粒体からなる層にH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体が含有されるために、イオン伝導部から浸入するプロトン(H+)ガスがH+伝導性被膜を通ってガス拡散電極内に十分に浸透し、その結果、電極反応が活発に行われる。
その他、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
第4の実施の形態
この実施の形態のガス拡散性電極体は、図4に示すように、主にカーボン粉体又は粒体によって形成される層に、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26を更に混合する以外は、上述の第1の実施の形態と同様である。
本実施の形態において、球状の炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体1の一部の表面は、図4示すように、撥水性被膜18で被覆されている。炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体の形状は、図4に示すような球形に限定されず、様々な形状のものにも、撥水性被膜を設けることができる。カーボン粉体又は粒体を被覆する撥水性被膜の厚さについては、単分子層以上有すればよいので、最低限数nmあればよいが、あまりに厚いと、カーボン粉体又は粒体の導電性が大きく損われるため、上限は数百nmが好ましい。例えば、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の被膜の厚さは、10nm〜数十nmの範囲にあればよい。
なお、撥水性被膜の施されたカーボン粉体又は粒体の表面の少なくとも一部を、触媒物質(例えば白金)等で被膜してもよい。
このような撥水性被膜18で被覆された撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体(炭素質材料粉体)26の周囲においては、電極内反応によって生じた生成水が撥水されて付着しないために、さらに、電極内の生成水が撥水されて過剰に留まらずに電極外へ排出され、酸素ガスが透過する隙間が確保される。それゆえに、ガス拡散性電極内(正極)における酸素ガスの供給が妨げられない。その結果、十分な量の酸素ガスが供給され続けるために、出力を比較的高く保持できる。
炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体1の表面を撥水性被膜18で被覆するには、例えば、撥水性樹脂を溶媒に分散し、この中に炭素質材料(カーボン)粉体又は粒体を浸した後、乾燥すればよい。
上述の撥水性被膜18を構成する撥水性の材料としては、フッ素を含む、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)やフッ素系ポリマー(C2F6重合体等)、テフロン(デュポン社製PTFE)等が好適に用いられる。被膜方法として、ディッピング法、プラズマCVD法等を用いることができる。
上述のガス拡散性電極に用いる、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体は、水をはじくという性質があるため、このカーボン粉体又は粒体の周囲には水が付着しない。この撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体は、同種の粉体又は粒体が凝集しやすい性質を有するため、図5に示すように、ガス拡散性電極(触媒層)10の中では、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26は、連なったチェーン構造を形成する。従って、上記撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26の形成するチェーン構造は、生成水(H2O)の浸入防止用の壁を形成して生成水を効果的に排出する通路を形成することになり、それゆえ、O2ガス等が透過する気孔(隙間)が確保され、ガスの拡散が十分に行なわれる。
上述のガス拡散性電極(触媒層)10には、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体が、1〜80重量%、好ましくは20〜70重量%含有されるのが、活発な電池反応のためにはよいと考えられる。なぜなら、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の重量%が少なすぎると、ガス拡散性電極(触媒層)10内で、電池反応によって生じた生成水が、撥水されずにカーボン粉体又は粒体の周囲に大量に付着して電極内に留まり、ガスを通すはずの隙間を埋めて減少させてしまうことにより、ガスの透過を妨げてしまい、電池反応をも弱めてしまうことがある。ガス拡散性電極(触媒層)10内の撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の重量%が多すぎると、カーボン粉体又は粒体相互の接触性が低くなり、或いはその分布が不均一となり易く、電子の導電性が不十分となり、電池反応を弱めてしまうことがある。
上述のガス拡散性電極によって形成される負極(燃料電池)や正極(酸素電極)等においては、ガス拡散性電極を、スピンコート法等によりガス拡散性集電体(カーボンシート)上に直接形成するゆえに、これを自立膜として別個に形成する必要がないため、作業中における破損等に対して求められる機械的強度が要求されることはなく、従って、その厚さは、10μm以下、例えば、2〜4μm程度と、極めて薄く設定することができる。但し、自立膜として作製してもよい。
本実施の形態においては、ガス拡散性電極内のカーボン粉体又は粒体と撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体との混合率、混合方法等は、所定の効果が有るならば自由に変えてよい。
撥水性物質の種類、カーボン粉体又は粒体への付着方法、付着の厚さ等は、所定の効果が有るならば自由に変えてよい。
上述の導電体粉体又は粒体は、カーボンに限ることはなく、導電性を有し、かつ所定の効果が得られるのならば他の物質でもよい。
本実施の形態については、主に導電性カーボン粉体又は粒体からなるガス拡散性電極体内において、撥水性被膜を有する導電性カーボン粉体又は粒体が更に混合されているので、この導電性カーボン粉体又は粒体の撥水性被膜によってガス拡散性電極体に生じる生成水が効果的に撥水され、導電性カーボン粉体又は粒体に付着せずに電極外へ排出されることになり、このために、生成水によって作用ガスの透過が妨げえられることなく、ガス拡散性電極体内への十分なガス透過能が確保できる。
上述のガス拡散性電極体は、撥水性被膜を有する導電性カーボン粉体又は粒体を、その他の材料と混合することによって形成できるので、複雑な製造工程を必要とせずに、比較的簡易に製造できる。
その他、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
第5の実施の形態
この実施の形態のガス拡散性電極体は、図5に示すように、カーボン粉体又は粒体によって形成される層22に、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26とH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21とを更に混合する以外は、第1の実施の形態と同様である。
なお、混合される撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26と、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21とについては、上述の第3及び第4の実施の形態において詳述したのでここではその説明を省略する。
本実施の形態においては、カーボン粉体又は粒体からなる層22に、上述したと同様のH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21と、上述したと同様の撥水性被膜形成したカーボン粉体又は粒体26とが更に混合されているが、それぞれの混合比(重量%)、混合方法、層の厚さ等は、所定の効果が有るのならば、自由に変えてよい。
本実施の形態においては、カーボン粉体又は粒体からなる層22にH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21が含有されるために、イオン伝導部から侵入するプロトン(H+)ガスが、H+伝導性被膜20を通ってガス拡散電極内に十分に浸透して触媒金属と効率的に接触し、その結果、電極反応が活発に行われる。
本実施の形態については、主に導電性のカーボン粉体又は粒体からなるガス拡散性電極体において、撥水性被膜18を有する導電性カーボン粉体又は粒体26が更に混合されているので、この導電性カーボン粉体又は粒体26の撥水性被膜18によってガス拡散性電極体内に生じる生成水が効果的に撥水され、導電性カーボン粉体又は粒体に付着せずに排出されることになり、このために、生成水によって作用ガスの透過が妨げえられることなく、ガス拡散性電極体内への十分なガス透過能が確保できる。
上述のガス拡散性電極体は、撥水性被膜を有する導電性カーボン粉体又は粒体を、その他の材料と混合することによって形成できるので、複雑な製造工程を必要とせずに、比較的簡易に製造できる。
本実施の形態においては、上述したプロトン伝導性被膜を有する導電性粉体又は粒体21と、撥水性被膜を有する導電性粉体又は粒体26とを併用しているので、これらによるプロトン伝導性の向上と撥水作用の双方の作用が相乗的に発揮され、活発で高効率な電池反応を期待できる。
その他、本実施の形態は、上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
次に、図6A、図6B及び図6Cは、本実施の形態における、別の形態の導電性カーボン粉体又は粒体を示す断面図である。
即ち、本実施の形態においては、例えば、物理的成膜法を用いるので、得られる導電性カーボン粉体又は粒体は、図6Aに示すように、白金(触媒)2が導電性カーボン粉体又は粒体1の表面に膜状に付着している。この形態によると、より少ない量で良好な触媒作用を得ることができ、また、触媒とガスとの接触面積が十分に確保されるので、反応に寄与する触媒の比表面積が大きくなり触媒能も向上する。
また、本実施の形態においては、図6(B)に示すように、白金(触媒)2が導電性カーボン粉体又は粒体1の表面に不均一に膜状に付着していてもよく、この場合でも、図6Aの構造を有する導電性カーボン粉体又は粒体と同様にして、より少ない触媒量で良好な触媒作用を得ることができ、また、触媒とガスとの接触面積が十分に確保することができ、反応に寄与する触媒の比表面積が大きくなり、触媒能の向上を図ることができる。
上記導電性カーボン粉体又は粒体の表面に、物理的成膜法により白金(触媒)2を膜状に付着させて導電性カーボン粉体又は粒体を得るのに代えて、図6Cに示すように、導電性カーボン粉体又は粒体1の表面に、イオン伝導体3を付着させ、更に、このイオン伝導体3の表面に、物理的成膜法により、白金(触媒)2を膜状に付着させることも可能である。この場合、物理的成膜法によって白金(触媒)2を付着させるので、従来のように触媒の結晶性を良好にするための熱処理を行う必要がなくなり、イオン伝導体の性能を損なうことなく触媒を付着させることができる。
なお、図6A、図6B及び図6Cのいずれの導電性カーボン粉体又は粒体も、本実施の形態においては、導電性カーボン粉体又は粒体に対して、触媒を10〜1000重量%の割合で付着させることが好ましく、更に、触媒として、電子伝導性を有する金属を用いることが好ましく、例示するならば、白金、ルテニウム、バナジウム、タングステン等、或いはこれらの混合物を挙げることができる。
また、導電性カーボン粉体又は粒体1には、耐酸性、導電性及び低コスト性を有する材料ならば特に限定するべきものではないが、例示するならば、カーボン粉体、ITO(Indium tin oxide)等が挙げられ、特に、カーボン粉体を用いることが好ましい。このカーボン粉体の平均粒子径は約1μm以下が好ましく、より好ましくは0.005〜0.1μmである。
物理的成膜法としては、スパッタ法、パルスレーザーデポジション(PLD)法又は真空蒸着法等であることが望ましい。物理的成膜法としてのスパッタ法は、容易に生産することが可能で、生産性が高く、また、成膜性も良好である。物理的成膜法としてのパルスレーザーデポジション法は、成膜における制御が容易で、成膜性も良好である。
ここで、特表平11−510311号公報にカーボンシート上に貴金属をスパッタ成膜する例が記載されているが、本実施の形態においては、導電性を有するカーボン粉体又は粒体の表面に白金(触媒)を膜状に付着させるので、特表平11−510311号公報に記載されるものに比べ、反応に寄与する白金(触媒)の比表面積をより大きくすることができ、触媒能の向上を図ることができる。
更に、本実施の形態においては、物理的成膜法により導電性カーボン粉体又は粒体の表面に、白金(触媒)を膜状に付着させる際に、導電性カーボン粉体又は粒体を振動させることが好ましく、これによって、より十分な触媒量を付着することができ、良好な均一性を得ることができる。
なお、この振動を発生させる機構については、特に限定しないが、例えば、超音波を印加して振動を発生させながら、物理的成膜法により導電性カーボン粉体又は粒体の表面に、白金(触媒)を膜状に付着させることが好ましい。
本実施の形態によれば、導電性カーボン粉体又は粒体の表面に、白金(触媒)を膜状に付着させて得られる導電性カーボン粉体又は粒体を、例えば、合成樹脂により結着することができ、更に導電性カーボン粉体又は粒体を多孔性のガス透過性集電体、例えばカーボンシート上に保持させることが好ましい。
本実施の形態におけるガス拡散性電極は、上述したように、実質的に導電性カーボン粉体又は粒体の表面に触媒が膜状に付着している導電性カーボン粉体又は粒体のみからなるか、或いは導電性カーボン粉体又は粒体の他に、この粒子を結着するための樹脂等の他成分を含有していてもよく、後者の場合、他成分としては、造孔剤(例えばCaCO3)及びイオン伝導体等が挙げられる。更に、導電性カーボン粉体又は粒体を多孔性のガス透過性集電体、例えばカーボンシート上に保持させることが好ましい。
本実施の形態において、ガス拡散性電極中に、或いは電気化学デバイスを構成する第1極と、第2極との両極間に挟持されたイオン伝導部に、使用可能なイオン伝導体としては、一般的なナフィオン(デュポン社製のパーフルオロスルホン酸樹脂)のほかにも、フラレノール(ポリ水酸化フラーレン)等のフラーレン誘導体が挙げられる。
特に、図7A及び図7Bに示す如く、フラーレン分子に複数の水酸基を付加した構造を持つフラレノール(Fullerenol)は、1992年にChiangらによって最初に合成例が報告された(Chiang,L.Y.;Swirczewski,J.W.;Hsu,C.S.;Chowdhury,S.K.;Cameron,S.;Creegan,K.,J.Chem.Soc,Chem.Commun.1992,1791)。
本出願人は、そうしたフラレノールを図8Aに概略図示するように凝集体とし、近接し合ったフラレノール分子(図中、○はフラーレン分子を示す。)の水酸基同士に相互作用が生じるようにしたところ、この凝集体はマクロな集合体として高いプロトン伝導特性、換言すれば、フラレノール分子のフェノール性水酸基からのH+の解離性を発揮することを初めて知見することができた。
本実施の形態においては、フラレノール以外に、例えば、複数の−OSO3H基をもつフラーレンの凝集体をイオン伝導体として用いることもできる。OH基がOSO3H基と置き換わった図8Bに示すようなポリ水酸化フラーレン、即ち、硫酸水素エステル化フラレノールは、やはりChiangらによって1994年に報告されている(Chiang.L.Y.;Wang,L.Y.;Swirczewski,J.W.;Soled,S.;Cameron,S.,J.Org.Chem.1994,59,3960)。そして、硫酸水素エステル化されたフラーレンには、ひとつの分子内にOSO3H基のみを含むものもあるし、或いは、この基と水酸基とをそれぞれ複数、持たせることも可能である。
上述したフラレノール及び硫酸水素エステル化フラレノールを、多数凝集させた時、それが、バルクとして示すプロトン伝導性は、分子内に元々含まれる大量の水酸基やOSO3H基に由来するプロトンが移動に直接関わるため、雰囲気から水蒸気分子などを起源とする水素、プロトンを取り込む必要はなく、外部からの水分の補給、とりわけ、外気より水分等を吸収する必要もなく、雰囲気に対する制約はない。従って、乾燥雰囲気下においても、継続的に使用することができる。
これらの分子の基体となっているフラーレンは、特に求電子性の性質を持ち、このことが酸性度の高いOSO3H基のみならず、水酸基等においても水素イオンの電離の促進に大きく寄与していると考えられ、優れたプロトン伝導性を示す。又、一つのフラーレン分子中に、かなり多くの水酸基及びOSO3H基等を導入することができるため、伝導に関与するプロトンの、伝導体の単位体積あたりの数密度が非常に多くなるので実効的な伝導率を発現する。
フラレノール及び硫酸水素エステル化フラレノールは、その殆どが、フラーレンの炭素原子で構成されているため、重量が軽く、変質もし難く、汚染物質も含まれていない。更に、フラーレンの製造コストも急激に低下しつつある。それゆえに、資源的、環境的、経済的にみて、フラーレンは他のどの材料にもまして、理想に近い炭素質系材料であると考えられる。更に、フラーレン分子に、例えば上記−OH、−OSO3H以外に−COOH、−SO3H、−OPO(OH)2のいずれかを有するものでも使用可能である。
本実施の形態に使用可能なフラレノール等を合成するには、フラーレン分子の粉末に対し、例えば、酸処理や加水分解等の公知の処理を適宜組み合わせて施すことにより、フラーレン分子の構成炭素原子に所望の基を導入することができる。ここで、イオン伝導部を構成するイオン伝導体として、フラーレン誘導体を用いた場合、このイオン伝導体が実質的にフラーレン誘導体のみからなるか、或いは結合剤によって結着されていることが好ましい。
本実施の形態のガス拡散性電極においては、各種の電気化学デバイスに好適に使用できる。すなわち、第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたイオン伝導体とからなる基本的構造体において、上記第1極及び上記第2極のうち少なくとも上記第1極に、本実施の形態のガス拡散性電極を適用することができる。
更に、具体的にいうと、第1極及び第2極の少なくとも一方が、ガス電極である電気化学デバイスなどに対し、本実施の形態のガス拡散性電極を好ましく適用することが可能である。
次に、本実施の形態のガス拡散性電極を用いた具体例の燃料電池を図9に示す。
この燃料電池は、ガス拡散性電極10をそれぞれ有する、互いに対向する負極(燃料電極又は水素電極)16及び正極(酸素電極)17を有し、これらの両電極間に、イオン伝導部(プロトン伝導体部)5が挟持されている。これら負極16、正極17からは、それぞれ端子15,14が引き出されており、外部回路(負荷4)と接続するような構造とされている。
この燃料電池では、使用時には、負極16側では導入口(図示せず)から水素が供給され、排出口(図示せず、なお、これは設けないこともある)から排出される。
燃料ガス(H2)がH2流路12を通過する間に、水素が負極へ拡散してここでプロトン(H+)を発生し、このプロトン(H+)は、イオン伝導部(プロトン伝導体部)5で発生したプロトンと共に正極17側へ移動し、そこで、導入口(図示せず)からO2流路13に供給された排気口(図示せず)へ向かう酸素(空気)と反応し、これにより、所望の起電力が取り出される。
以上の構成には示されていないが、水素の供給源には、水素吸蔵合金や水素吸蔵炭素質材料が収納されている。なお、予め、この水素吸蔵用炭素質材料に水素を吸蔵させておき、水素供給源に収納してもよい。
かかる燃料電池は、本実施の形態のガス拡散性電極が第1極及び/又は第2極を構成しているので、良好な触媒作用を有しており、触媒とガス(H2など)との接触面積が十分に確保されるので、反応に寄与する触媒の比表面積が大きくなり、触媒能も向上して、良好な出力特性が得られる。また、負極16中で水素イオンが解離し、又イオン伝導部5で水素イオンが解離しつつ、これらの水素イオンが正極17側へ移動するので、乾燥状態でも水素イオンの伝導率が高いという特徴がある。従って、加湿装置等は不必要となるので、システムの簡略化、軽量化を図ることができ、更に電流密度及び出力特性等、電極としての機能の向上を図ることができる。
なお、フラーレン誘導体を加圧成形して得られる膜状のフラーレン誘導体のみからなる、すなわち第1極と、第2極とに挟持されたイオン伝導部に代わり、結合剤によって結着されているフラーレン誘導体をイオン伝導部5に用いてもよい。この場合、結合剤によって結着されることによって、強度の十分なイオン伝導部を形成できる。ここで、結合剤として使用可能な高分子材料としては、公知の成膜性を有するポリマーの1種又は2種以上が用いられ、そのイオン伝導部中の配合量は、通常、20重量%以下に抑えるのがよい。20重量%を超えると、水素イオンの伝導性を低下させるおそれがあるからである。このような構成のイオン伝導部も、フラーレン誘導体をイオン伝導体として含有するので、上述した実質的にフラーレン誘導体のみからなるイオン伝導体と同様の水素イオン伝導性を発揮することができる。しかも、フラーレン誘導体単独の場合と違って高分子材料に由来する成膜性が付与されており、フラーレン誘導体の粉末圧縮成形品に比べ、強度が大きく、かつガス透過防止能を有する柔軟なイオン伝導性薄膜(厚みは通常300μm以下)として用いることができる。
なお、高分子材料としては、水素イオンの伝導性をできるだけ阻害(フラーレン誘導体との反応による)せず、成膜性を有するものなら、特に限定はしない。通常は電子伝導性をもたず、良好な安定性を有するものが用いられ、その具体例を挙げると、ポリフルオロエチレン、ポリビニルアルコール等があり、これらは次に述べる理由からも、好ましい高分子材料である。まず、ポリテトラフルオロエチレンが好ましいのは、他の高分子材料に比べ、少量の配合量で強度のより大きな薄膜を容易に成膜できるからである。この場合の配合量は、3重量%以下、好ましくは0.5〜1.5重量%と少量ですみ、薄膜の厚みは通常、100μmから1μmまでと薄くできる。ポリビニルアルコールが好ましいのは、より優れたガス透過防止能を有するイオン伝導性薄膜が得られるからである。この場合の配合量は5〜15重量%の範囲とするのがよい。
なお、ポリフルオロエチレンにせよ、ポリビニルアルコールにせよ、それらの配合量が上述したそれぞれの範囲の下限値を下回ると、成膜に悪影響を及ぼすことがある。
本実施の形態の、各フラーレン誘導体が結合剤によって結着されてなるイオン伝導部の薄膜を得るには、加圧成形や押出し成形を始め、公知の成膜法を用いればよい。
本実施の形態の電気化学デバイスにおいて、本実施の形態のガス拡散性電極に挟着されるイオン伝導体は、特に限定されるべきものではなく、イオン(水素イオン)伝導性を有するものならばいずれのものも使用可能であり、例示するならば、水酸化フラーレン、硫酸エステル化フラレノール及びナフィオン等が挙げられる。また、結合剤をガス拡散性電極の撥水性樹脂として使用可能である。
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明する。
実施例1
この実施例1は、ガス透過性集電体(カーボンシート)上に、カーボン粒体又は粒体層22と白金(スパッタ)層19とを交互に形成して、図1に示したような、ガス拡散性電極を作製し、燃料電池を構成した。
即ち、カーボン粉体又は粒体層22として、通常のカーボン粉体又は粒体1(粒径30〜40nm)0.6gを、溶媒NMP(N−メチルピロリドン)40g中に分散させた塗料を、スピンコート法によって、初めは、500rpmで5秒間滴下し、その後、1000rpmで30秒間滴下することによって層を形成し、更に、120℃で加熱乾燥して形成した。
次に、白金スパッタ層19は、5inch径の白金(Pt)ターゲットを用いて、DC1A、420Vを印加した。そして、基板を回転させながら、スパッタを8分8秒行なうことによって、100nmの触媒物質(白金等)を成膜した。
なお、カーボン粉体又は粒体層22は、スピンコート法を用いて、厚さは300nmとし、それを5層設けて合計1500nmとした。又、白金(スパッタ)層19は、スパッタリング法を用いて、厚さは20nmとし、それを5層設けて合計100nmとした。即ち、それぞれの層をガス透過性集電体(カーボンシート)上に5層ずつ形成し、ガス拡散性電極の厚さを1.6μmとした。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極層を、ナフィオンからなるイオン交換膜(プロトン伝導部)と集電電極との間に設置し、燃料電池セルとして水素ガス、酸素ガスを導入することにより、電極を構成するカーボン粉体又は粒体層の層数(以下、単に層数と称する。)に対する燃料電池の出力電圧の変化を測定した。
実施例2
この例は、図2に示すように、カーボン粉体又は粒体層22に粒径2〜3nmの白金粉体6を混合比で20重量%混合させる以外は、実施例1と同様にした。
上述した工程によって得られたガス拡散性電極を、イオン交換膜(プロトン伝導部)と集電電極との間に設置し、燃料電池セルとして水素ガス、酸素ガスを導入することにより、燃料電池の層数に対する出力電圧の変化を測定した。その結果は、後述する。
実施例3
この例は、図3に示すように、カーボン粉体又は粒体層22に、フラレノールからなるH+伝導性被膜(以下、同様)20を形成したカーボン粉体又は粒体21を混合させる以外は、実施例1と同様にした。
なお、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21のH+伝導性被膜20の厚さは、10nm〜数十nmの範囲に収まるものとし、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21と被膜なしのカーボン粉体又は粒体1との配合比は重量比で1:1とした。
さらに、H+伝導性のフラーレン誘導体が被膜されたH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21の総量に対して、H+伝導性被膜の割合を30重量パーセントとした。このH+伝導処理されたカーボン粉体又は粒体と、H+伝導処理されていないカーボン粉体又は粒体1とを混合した。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極を実施例1と同様に燃料電池セルに組み込み、その出力を測定した。
実施例4
この例は、図4に示すように、カーボン粉体又は粒体層22に、テフロンからなる撥水性被膜(以下、同様)18が形成されたカーボン粉体又は粒体26を混合させる以外は、実施例1と同様にした。
なお、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の撥水性被膜の厚さは、10nm〜数十nmの範囲に収まるものとし、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体と被膜なしのカーボン粉体又は粒体との配合比は重量比で1:1とした。
さらに、撥水性のテフロンが被膜された撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の総量に対して、撥水性テフロンの割合を30重量パーセントとした。この撥水処理されたカーボン粉体又は粒体と、撥水処理されていないカーボン粉体又は粒体とを混合した。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極を実施例1と同様に燃料電池セルに組み込み、その出力を測定した。
実施例5
この例は、図5に示すように、カーボン粉体又は粒体層22に、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21と、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26とを混合させる以外は、実施例1と同様にした。
なお、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26及びH+伝導性被膜形成カーボン21のそれぞれの被膜の厚さは、10nm〜数十nmの範囲に収まるものとし、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26とH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体と、被膜なしのカーボン粉体又は粒体1との配合比は重量比で0.5:0.5:1とした。
さらに、撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体26において、撥水性被膜を形成するには、例えばテフロン溶液にカーボン粉体等を浸した後に乾燥した。このテフロンが被膜された撥水性被膜形成カーボン粉体又は粒体の総量に対して撥水性テフロンの割合を30重量%とした。
さらに、H+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体21において、伝導性被膜を形成するには、例えばフラーレン誘導体のテトラヒドロフラン溶液にカーボン粉体等を浸した後に乾燥した。このフラーレン誘導体が被膜されたH+伝導性被膜形成カーボン粉体又は粒体の総量に対して、H+伝導性被膜の割合を30重量パーセントとした。
この撥水処理されたカーボン粉体又は粒体と、H+伝導性処理されたカーボン粉体又は粒体と、処理されていないカーボン粉体又は粒体とを混合した。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極を実施例1と同様にして燃料電池セルに組み込み、その出力を測定した。
比較例1
この比較例においては、従来のように、平均粒径100nmの白金粒子の分散液を、厚さ2μmのガス透過性集電体(カーボンシート)上に散布させたガス拡散性電極を用いて構成した燃料電池を作製した。
なお、分散液中における白金粒子の濃度は20重量%であり、分散液量は200μlであった。分散液は、カーボンシートにしみ込んだ。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極層を、イオン交換膜(プロトン伝導部)と集電電極との間に設置し、燃料電池セルとして水素ガス、酸素ガスを導入することにより、燃料電池の層数に対する出力電圧を測定した。
比較例2
この比較例においては、上記の分散液を、厚さ50μmのガス透過性集電体(カーボンシート)上に散布させたガス拡散性電極を用いて構成した燃料電池を作製した。その他は、比較例1と同様であった。
上述の工程によって得られたガス拡散性電極を、イオン交換膜(プロトン伝導部)と集電電極との間に設置し、燃料電池セルとして水素ガス、酸素ガスを導入することにより、燃料電池の層数に対する出力電圧を測定した。
比較例3
この比較例は、ガス透過性集電体(カーボンシート)と白金粒子の分散液との間に、厚さ1.5μmのカーボン粉体又は粒体層が設けられた以外は、比較例1と同様とする。
上述の実施例及び比較例の検討を行った結果を下記表に示す。
これらの結果から、実施例1の電極の厚さは1.6μmとなり、出力電圧は、0.6Vで良好であった。さらに、実施例2〜5の結果も実施例1と同様良好であった。
なお、比較例1の電極の厚さは2μmとなり、出力電圧は、0.4Vと低くなった。又、比較例2の電極の厚さは50μmとなるので、出力電圧は0.6Vと良好であるが、電極自体の厚みが大きくなる。又、比較例3の結果は、比較例1と同様であった。
比較例1においては、白金粒子がまばらにしか分散していないために、触媒作用が起きにくく、出力電圧が十分でなかった。又、比較例2においては、出力電圧は十分とれたが、電極の厚さが比較例3の結果も同様であった。さらに、比較例2においては、出力電圧は十分とれたが、電極の厚さが50μmになり、薄型化は難しかった。
実施例1においては、ガス拡散性電極の厚さが1.6μmであり、比較例2(50μm)の約30分の1の厚さであるにも係らず、出力電圧が比較例2と等(0.6V)であった。又、実施例2〜5の結果も同様であった。
このことから、本実施のガス拡散性電極を用いた燃料電池は、従来の構造の比較例を用いる燃料電池と比べて、比較的出力電圧を高く維持しながら、さらに、ガス拡散性電極を薄型化できることがわかった。
次に、実施例1における、燃料電池の出力電圧と層数との相関関係を図10に示す。
図10によると、層数が2以上、100以下の範囲は、出力がほぼ0.6Vに保たれるが、100層を過ぎると次第に下がり、150層の時点では0.54V、200層の時点では0.44Vになってしまう。
この結果から、出力電圧を比較的高く維持できる層数の範囲としては、2層以上、150層以下(更には120層以下)が好ましく、2層以上、100層以下が最も好ましいといえる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述の実施の形態は、本発明の技術的思想に基いて更に変形が可能である。
例えば、上記の電気化学デバイスは、H2等の分解による電池反応のみならず、その過程を逆にすることによって、例えば、H2やH2O2の製造に適応させることができる。
上述の実施の形態においては、所定の効果を得られるのならば、同一のガス拡散性電極内における、カーボン粉体又は粒体層及び白金スパッタ層の各層の層数、厚さ、構成材質、濃度、形成方法等がそれぞれに異なった組み合わせで積層されてもよい。
産業上の利用可能性
本発明は、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなすガス拡散性電極体を用いることによって、ガス拡散性電極体内の各触媒物質層において、ガス拡散性電極体に侵入する酸素を効率良くイオン化し、プロトン(H+)との接触面積を拡大する等、電極内の反応を効率的に行え、出力向上等の高性能化が可能となり、これが各層で生じることから、各層厚(従って全厚)が薄くても、高効率化、高性能化が可能となる。
上述のガス拡散性電極体においては、積層構造を形成する際に、上層の形成時に下層が既に形成されているために、比較的容易に積層形成できる。そのために、上記のガス拡散性電極体を再現性良く製造できる。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係るガス拡散性電極体の一部を示す断面図である。
図2は、本発明に係るガス拡散性電極体の他の例を示す断面図である。
図3は、本発明に係るガス拡散性電極体の更に他の例を示す断面図である。
図4は、本発明に係るガス拡散性電極体の更に他の例を示す断面図である。
図5は、本発明に係るガス拡散性電極体の更に他の例を示す断面図である。
図6は、本発明に用いられる導電性カーボン粉体又は粒体の一例を示す断面図である。
図7は、本発明に使用可能なフラーレン誘導体の一例であるポリ水酸化フラーレンの構造を示す図である。
図8は、本発明に使用可能なフラーレン誘導体の例を示す模式図である。
図9は、本発明に係る燃料電池の概略構成を示す構成図である。
図10は、本発明に係る燃料電池の出力特性を示す特性図である。
Claims (32)
- 少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなすガス拡散性電極体。
- 前記積層構造における前記第1層及び前記第2層のそれぞれの層数が、2以上、100以下である請求の範囲第1項記載のガス拡散性電極体。
- 前記第1層が少なくともカーボン粉体又は粒体からなり、前記第2層が触媒金属からなる、請求の範囲第1項記載のガス拡散性電極体。
- 前記が、少なくともカーボンナノチューブ又は針状黒鉛の一つを含む請求の範囲第3項記載のガス拡散性電極体。
- 前記第1層の層厚みが数nm〜数μmであり、前記第2層の層厚みが数nm〜数百nmである請求の範囲第1項記載のガス拡散性電極体。
- 複数の前記第2層のうち、少なくとも一層が白金を含む請求の範囲第1項記載のガス拡散性電極体。
- 複数の前記第1層のうち、少なくとも一層が触媒金属を含む請求の範囲第1項記載のガス拡散性電極体。
- 前記第1層が、イオン伝導性被膜を有する導電性粉体又は粒体を含有してい請求の範囲第1項記載のガス拡散性電極体。
- 前記第1層が、撥水性被膜を有する導電性粉体又は粒体を含有している請求の範囲第1項記載のガス拡散性電極体。
- 前記積層構造が集電体又は下地層上に形成されている請求の範囲第1項記載のガス拡散性電極体。
- 少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と、触媒物質からなる第2層とを交互に形成するガス拡散性電極体の製造方法。
- 前記第1層を、スピンコート法、印刷法、スプレードライ法、気相成膜法のうち、少なくとも一つの方法によって形成する請求の範囲第11項記載のガス拡散性電極体の製造方法。
- 前記第2層を気相成膜法によって形成する請求の範囲第11項記載のガス拡散性電極体の製造方法。
- 前記積層構造における前記第1層及び前記第2層のそれぞれの層数を、2以上、100以下とする請求の範囲第11項記載のガス拡散性電極体の製造方法。
- 前記第1層を少なくともカーボン粉体又は粒体によって形成し、前記第2層を触媒金属によって形成す請求の範囲第11項記載のガス拡散性電極体の製造方法。
- 前記第1層の層厚みを数nm〜数μmとし、前記第2層の層厚みを数nm〜数百nmとす請求の範囲第11項記載のガス拡散性電極体の製造方法。
- 複数の前記第2層のうち、少なくとも一層に白金を含有させる請求の範囲第11項記載のガス拡散性電極体の製造方法。
- 複数の前記第1層のうち、少なくとも一層に触媒金属を含有させる請求の範囲第11項記載のガス拡散性電極体の製造方法。
- 前記第1層が、イオン伝導性被膜を有する導電性粉体又は粒体を含有している請求の範囲第11項記載のガス拡散性電極体の製造方法。
- 前記第1層が、撥水性被膜を有する導電性粉体又は粒体を含有している請求の範囲第11項記載のガス拡散性電極体の製造方法。
- 前記積層構造を集電体又は下地層上に形成する請求の範囲第11項記載のガス拡散性電極体の製造方法。
- 第1極と、第2極と、これらの両極間に挟持されたイオン伝導体とからなり、少なくとも導電性粉体又は粒体からなる第1層と触媒物質からなる第2層とが交互に配置されて積層構造をなすガス拡散性電極体が、前記第1極及び第2極のうち少なくとも前記第1極を構成している電気化学デバイス。
- 前記積層構造における前記第1層及び前記第2層のそれぞれの層数が、2以上100以下である請求の範囲第22項記載の電気化学デバイス。
- 前記第1層が少なくともカーボン粉体又は粒体からなり、前記第2層が触媒金属からなる請求の範囲第22項記載の電気化学デバイス。
- 前記第1層の層厚みが数nm〜数μmであり、前記第2層の層厚みが数nm〜数百nmである請求の範囲第22項記載の電気化学デバイス。
- 複数の前記第2層のうち、少なくとも一層が白金を含む請求の範囲第22項記載の電気化学デバイス。
- 複数の前記第1層のうち、少なくとも一層が触媒金属を含む請求の範囲第22項記載の電気化学デバイス。
- 前記第1層が、イオン伝導性被膜を有する導電性粉体又は粒体を含有している請求の範囲第22項記載の電気化学デバイス。
- 前記第1層が、撥水性被膜を有する導電性粉体又は粒体を含有している請求の範囲第22項記載の電気化学デバイス。
- 前記積層構造が集電体又は下地層上に形成されている請求の範囲第22項記載の電気化学デバイス。
- 前記第1極及び第2極のうち少なくとも一方がガス電極である請求の範囲第22項記載の電気化学デバイス。
- 燃料電池として構成されている請求の範囲第22項記載の電気化学デバイス。
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