JP2002063918A - プロトン伝導体及び電気化学デバイス - Google Patents

プロトン伝導体及び電気化学デバイス

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JP2002063918A JP2000248033A JP2000248033A JP2002063918A JP 2002063918 A JP2002063918 A JP 2002063918A JP 2000248033 A JP2000248033 A JP 2000248033A JP 2000248033 A JP2000248033 A JP 2000248033A JP 2002063918 A JP2002063918 A JP 2002063918A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】膜強度及びガス透過防止能に優れ、かつ薄膜
化、耐酸性及び耐熱性の良好なプロトン伝導体及び電気
化学デバイスを提供すること。 【解決手段】ポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポ
リエチレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイド、パ
ーフルオロスルホン酸系樹脂及びこれらの誘導体からな
る群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、フラーレン
分子を構成する炭素原子にプロトン(H+)を解離し得
る基を導入してなるフラーレン誘導体とを含有してい
る、プロトン伝導体。このプロトン伝導体を用いた燃料
電池等の電気化学デバイス。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はプロトン(H+)伝
導体及び電気化学デバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、例えば自動車駆動用の高分子固体
電解質型の燃料電池として、パーフルオロスルホン酸樹
脂(Du Pont 社製の Nafion(R) など)のようなプロト
ン(水素イオン)伝導性の高分子材料を用いたものが知
られている。
【0003】また、比較的新しいプロトン伝導体とし
て、H3Mo12PO40・29H2OやSb25・5.4H
2Oなど、多くの水和水を持つポリモリブデン酸類や酸
化物も知られている。
【0004】これらの高分子材料や水和化合物は、湿潤
状態に置かれると、常温付近で高いプロトン伝導性を示
す。
【0005】即ち、パーフルオロスルホン酸樹脂を例に
とると、そのスルホン酸基より電離したプロトンは、高
分子マトリックス中に大量に取込まれている水分と結合
(水素結合)してプロトン化した水、つまりオキソニウ
ムイオン(H3+)を生成し、このオキソニウムイオン
の形態をとってプロトンが高分子マトリックス内をスム
ーズに移動することができるので、この種のマトリック
ス材料は常温下でもかなり高いプロトン伝導効果を発揮
できる。
【0006】一方、最近になって、これらとは伝導機構
の全く異なるプロトン伝導体も開発されている。
【0007】即ち、YbをドープしたSrCeO3など
のペロブスカイト構造を有する複合金属酸化物は、水分
を移動媒体としなくても、プロトン伝導性を有すること
が見出された。この複合金属酸化物においては、プロト
ンはペロブスカイト構造の骨格を形成している酸素イオ
ン間を単独でチャネリングして伝導されると考えられて
いる。
【0008】しかし、この伝導性のプロトンは、初めか
ら複合金属酸化物中に存在しているわけではなく、ペロ
ブスカイト構造が周囲の雰囲気ガス中に含まれている水
蒸気と接触した際、その高温の水分子が、ドープにより
ペロブスカイト構造中に形成されていた酸素欠陥部と反
応し、この反応により初めてプロトンが発生するのだと
考えられる。
【0009】しかしながら、上述した各種のプロトン伝
導体は次のような問題点が指摘されている。
【0010】まず、前記パーフルオロスルホン酸樹脂な
どのマトリックス材料では、プロトンの伝導性を高く維
持するために、使用中、継続的に充分な湿潤状態に置か
れることが必要である。
【0011】従って、燃料電池等のシステムの構成に
は、加湿装置や各種の付随装置が要求され、装置の規模
が大型化したり、システム構築のコスト上昇が避けられ
ない。
【0012】さらに、作動温度も、マトリックスに含ま
れる水分の凍結や沸騰を防ぐため、温度範囲が広くない
という問題がある。
【0013】また、ペロブスカイト構造をもつ前記複合
金属酸化物の場合、意味のあるプロトンの伝導が行われ
るためには、作動温度を500℃以上という高温に維持
することが必要である。
【0014】このように、従来のプロトン伝導体は、湿
分を補給したり、水蒸気を必要とするなど、雰囲気に対
する依存性が高く、しかも作動温度が高過ぎるか又はそ
の範囲が狭いという問題点があった。
【0015】
【発明に至る経過】本発明者は、上記問題を解決するた
めに、常温を含む広い温度域で用いることができ、雰囲
気依存性が小さく、乾燥空気中においても好適に使用で
きるプロトン伝導体及びその製造方法、ならびに電気化
学デバイスを特願平11−204038号において提案
した。以下、これを先願発明と称する。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、本発明
者は、上記先願発明において、そのプロトン伝導体の薄
膜の強度、ガス透過防止能はもちろん、薄膜化、耐酸性
及び耐熱性において、不十分な点があることを見出し
た。
【0017】本発明の目的は、上記先願発明のなお改善
すべき問題点を解決するためになされたものであって、
膜強度及びガス透過防止能に優れ、かつ薄膜化、耐酸性
及び耐熱性等の良好なプロトン伝導体及び電気化学デバ
イスを提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、ポリ塩
化ビニル、塩化ビニル系共重合体、ポリエチレン、ポリ
プロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンオキサイ
ド、ポリフェニレンオキサイド、パーフルオロスルホン
酸系樹脂及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少
なくとも1種の樹脂と、フラーレン分子を構成する炭素
原子にプロトン(H+)解離性の基を導入してなるフラ
ーレン誘導体とを含有している、プロトン伝導体に係わ
るものである。ここで、本発明における前記「プロトン
解離性の基」とは、プロトンが電離により離脱し得る官
能基を意味し、また「プロトン(H+)の解離」とは、
電離によりプロトンが官能基から離れることを意味す
る。
【0019】本発明のプロトン伝導体は、上記樹脂と、
上記フラーレン誘導体とを含有しているので、膜強度及
びガス透過防止能に優れ、かつ耐酸性及び耐熱性等の良
好な薄膜として用いることができる。
【0020】従って、上記プロトン伝導体の酸性度が、
プロトン(H+)の解離によって著しく大きくなった場
合においても、酸化劣化し難く、耐久性に優れており、
プロトン伝導性薄膜として好適に用いることができ、更
には常温を含む広い温度域にわたって高伝導性を発揮す
ること等が可能である。
【0021】また、本発明のプロトン伝導体は上記フラ
ーレン誘導体を含有しているので、雰囲気依存性が小さ
く、乾燥空気中においても、十分なプロトン伝導性を示
し、継続的に使用することができる。但し、水分が存在
していても差支えない。
【0022】また、本発明は、第1極と、第2極と、こ
れらの両極間に挟持されたプロトン伝導体とからなり、
このプロトン伝導体が、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル系
共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボ
ネート、ポリエチレンオキサイド、ポリフェニレンオキ
サイド、パーフルオロスルホン酸系樹脂及びこれらの誘
導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、
フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン(H+
解離性の基を導入してなるフラーレン誘導体とを含有す
る、電気化学デバイスに係わるものである。
【0023】本発明の電気化学デバイスは、第1極と第
2極との間に挟持されたプロトン伝導体が、上記樹脂と
上記フラーレン誘導体とを含有するので、本発明のプロ
トン伝導体と同様の効果が奏せられ、また加湿装置等は
不要となり、システムの小型化、簡素化を実現すること
ができる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、実施の形態に基づいて本発
明を更に具体的に説明する。
【0025】本発明において、プロトン解離性の基の導
入対象となる母体としてのフラーレン分子は、球状クラ
スター分子であれば特に限定しないが、通常はC36、C
60(図3(A)参照)、C70(図3(B)参照)、
76、C78、C80、C82、C84などから選ばれるフラー
レン分子の単体、もしくはこれらの2種以上の混合物が
好ましく用いられる。
【0026】これらのフラーレン分子は、1985年に
炭素のレーザアブレーションによるクラスタービームの
質量分析スペクトル中に発見された(Kroto, H.W.; Hea
th,J.R.; O'Brien, S.C.; Curl, R. F.; Smalley, R.
E. Nature 1985.318,162.)。実際にその製造方法が確立
されるのは更に5 年後のことで、1990年に炭素電極
のアーク放電法による製造法が見出され、それ以来、フ
ラーレンは炭素系半導体材料等として注目されてきた。
【0027】本発明者はこのフラーレン分子の誘導体に
つき、そのプロトン伝導性を種々検討した結果、フラー
レンの構成炭素原子に水酸基を導入して得られるポリ水
酸化フラーレンは、乾燥状態でも、常温域を挟む広い温
度範囲、即ち、水の凝固点や、沸点を超えた温度範囲
(少なくとも160℃〜−40℃)で高いプロトン伝導
性を示すことを見出すことができた。そして、このプロ
トン伝導性は水酸基に替えて硫酸水素エステル基をフラ
ーレンの構成炭素原子に導入したときに、より顕著にな
ることが知見できた。
【0028】さらに詳述すると、ポリ水酸化フラーレン
は、図1に示す如く、フラーレンに複数の水酸基を付加
した構造を持ったものの総称であり、通称「フラレノー
ル(Fullerenol)」と呼ばれている。当然の事ながら、
水酸基の数やその分子内配置などには幾つかのバリエー
ションも可能である。フラレノールは1992年にChia
ngらによって最初に合成例が報告された(Chiang, L.
Y.;Swirczewski,J.W.;Hsu, C.S.; Chowdhury, S.K.; Ca
meron, S.; Creegan, K., J. Chem. Soc, Chem.Commun.
1992,1791) 。以来、一定量以上の水酸基を導入したフ
ラレノールは、特に水溶性である特徴が注目され、主に
バイオ関連の技術分野で研究されてきた。
【0029】本発明者は、そうしたフラレノールを図2
(A)に概略図示するように上述した樹脂で結着し、こ
れを加圧によってフラレノール密度を高めた膜を形成
し、近接し合ったフラレノール分子(図中、○はフラー
レン分子を示す。)の水酸基同士に相互作用が生じるよ
うにしたところ、この凝集体はマクロな集合体として高
いプロトン伝導特性(換言すれば、フラレノール分子の
フェノール性水酸基からのH+の解離性)を発揮し、か
つ水素などのガスの透過防止能が向上することを初めて
知見することができた。
【0030】本発明のプロトン伝導体には、フラレノー
ル以外にたとえば複数の−OSO3H基をもつフラーレ
ンを上述した樹脂で固めた膜を好適に用いることができ
る。OH基がOSO3H基と置き換わった図2(B)に
示すようなポリ水酸化フラーレン、すなわち硫酸水素エ
ステル化フラレノールは、やはりChiangらによって19
94年に報告されている(Chiang. L. Y.; Wang, L.Y.;
Swirczewski, J.W.;Soled, S.; Cameron, S., J. Org.
Chem. 1994,59,3960) 。硫酸水素エステル化されたフ
ラーレンには、一つの分子内にOSO3H基のみを含む
ものもあるし、あるいはこの基と水酸基をそれぞれ複数
個、持たせることも可能である。
【0031】上述したフラーレン誘導体を多数凝集させ
た時、それがバルクとして示すプロトン伝導性は、分子
内に元々含まれる大量の水酸基やOSO3H基に由来す
るプロトンが移動に直接関わるため、雰囲気から水蒸気
分子などを起源とする水素、プロトンを取り込む必要は
なく、また、外部からの水分の補給、とりわけ外気より
水分等を吸収する必要もなく、雰囲気に対する制約はな
い。また、これらの誘導体分子の基体となっているフラ
ーレンはとくに求電子性の性質を持ち、このことが酸性
度の高いOSO3H基のみならず、水酸基等においても
水素イオンの電離の促進に大きく寄与していると考えら
れる。これが、本発明のプロトン伝導体が優れたプロト
ン伝導性を示す理由の一つである。
【0032】さらに、一つのフラーレン分子中にかなり
多くの水酸基およびOSO3H基等を導入することがで
きるため、伝導に関与するプロトンの、伝導体の単位体
積あたりの数密度が非常に多くなる。これが、本発明の
プロトン伝導体が実効的な伝導率を発現するもう一つの
理由である。
【0033】本発明のプロトン伝導体は、その殆どが、
フラーレンの炭素原子で構成されているため、重量が軽
く、変質もし難く、また汚染物質も含まれていない。フ
ラーレンの製造コストも急激に低下しつつある。資源
的、環境的、経済的にみて、フラーレンは他のどの材料
にもまして、理想に近い炭素系材料であると考えられ
る。
【0034】更に本発明者の検討によれば、プロトン解
離性の基は、前述した水酸基やOSO3H基に限定する
必要はない。
【0035】即ち、この解離性の基は式−XHで表わさ
れ、Xは2価の結合手を有する任意の原子もしくは原子
団であればよい。更には、この基は式−OH又は−YO
Hで表わされ、Yは2価の結合手を有する任意の原子も
しくは原子団であればよい。
【0036】具体的には、前記プロトン解離性の基とし
ては、前記−OH、−OSO3H以外に−COOH、−
SO3H、−OPO(OH)3のいずれかが好ましい。
【0037】本発明のプロトン伝導体に用いる前記フラ
ーレン誘導体を合成するには、後述の実施例に明らかな
ように、前記フラーレン分子の粉末に対し、たとえば酸
処理や加水分解等の公知の処理を適宜組み合わせて施す
ことにより、フラーレン分子の構成炭素原子に所望のプ
ロトン解離性の基を導入すればよい。
【0038】本発明のプロトン伝導体は、ポリ塩化ビニ
ル、塩化ビニル系共重合体、ポリエチレン、ポリプロピ
レン、ポリカーボネート、ポリエチレンオキサイド、ポ
リフェニレンオキサイド、パーフルオロスルホン酸系樹
脂及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくと
も1種の樹脂と、前記フラーレン誘導体とを含有してい
る。
【0039】前記樹脂の含有量は、50重量%以下が好
ましく、この含有量が50重量%を超えると、プロトン
の伝導性を低下させる恐れがあるからである。
【0040】本発明のプロトン伝導体は、前記樹脂を含
有しているので、成形性を有しており、より強度の高い
薄膜化を実現することができる。従って、膜強度及びガ
ス透過防止能に優れ、かつ耐酸性及び耐熱性等の良好な
薄膜として用いることができる。
【0041】前記ポリ塩化ビニル及び前記塩化ビニル系
共重合体は、耐酸性に優れており、また耐熱性も良好で
あり、本発明の目的を実現する上で望ましい樹脂であ
る。ここで、塩化ビニル系共重合体は、塩化ビニル−塩
化ビニリデン共重合体及び塩化ビニル−酢酸ビニル共重
合体など、塩化ビニルと共重合性モノマーとの共重合体
である。
【0042】前記ポリエチレン、前記ポリプロピレン、
前記ポリエチレンオキサイド及び前記ポリフェニレンオ
キサイドは、耐酸性の良好な樹脂である。
【0043】前記ポリカーボネートは透明性の非晶性樹
脂であり、耐熱性及び低温特性に優れており、広い温度
範囲における使用に耐えられる。また、耐衝撃性にも優
れている。
【0044】前記パーフルオロスルホン酸系樹脂は、耐
酸性及び耐熱性に優れ、また耐候性の良好な樹脂なの
で、過酷な温度や長期にわたる光線曝露下でも、その特
性に大きな変化はもたらさない。
【0045】即ち、本発明のプロトン伝導体は前記樹脂
を含有しているので、プロトン(H+)の解離によって、
プロトン伝導体の酸性度が著しく大きくなった場合にお
いても、酸化劣化し難く、耐久性に優れており、プロト
ン伝導性薄膜として好適に用いることができ、更には常
温を含む広い温度域にわたって高伝導度を発揮すること
が可能である。
【0046】さらに、本発明のプロトン伝導体は、前記
フラーレン誘導体を含有しているので、雰囲気依存性が
小さく、乾燥空気中においても、十分なプロトン伝導性
を示し、継続的に使用することができるが、水分が存在
していても差支えない。例えば、本発明のプロトン伝導
体が、前記パーフルオロスルホン酸系樹脂と前記フラー
レン誘導体とを含有する場合、水分の存在下では前記パ
ーフルオロスルホン酸系樹脂もまたプロトン解離能を示
すので、よりプロトン伝導度を向上させることができ
る。
【0047】本発明のプロトン伝導体は、各種の電気化
学デバイスに好適に使用できる。すなわち、第1極と、
第2極と、これらの両極間に挟持されたプロトン伝導体
とからなる基本的構造体において、そのプロトン伝導体
に本発明のプロトン伝導体を好ましく適用することがで
きる。
【0048】更に具体的に言うと、第1極及び/又は第
2極が、ガス電極である電気化学デバイスとか、第1極
及び/又は第2極に活物質性電極を用いる電気化学デバ
イスなどに対し、本発明のプロトン伝導体を好ましく適
用することが可能である。
【0049】以下、本発明のプロトン伝導体を燃料電池
に適用した例について説明する。
【0050】その燃料電池のプロトン伝導のメカニズム
は図4の模式図に示すようになり、プロトン伝導部1は
第1極(たとえば水素極)2と第2極(たとえば酸素
極)3との間に挟持され、解離したプロトン(H+)は
図面矢印方向に沿って第1極2側から第2極3側へと移
動する。
【0051】図5には、本発明のプロトン伝導体を用い
た燃料電池の一具体例を示す。この燃料電池は、触媒2
a及び3aをそれぞれ密着又は分散させた互いに対向す
る、端子8及び9付きの負極(燃料極又は水素極)2及
び正極(酸素極)3を有し、これらの両極間にプロトン
伝導部1が挟着されている。使用時には、負極2側では
導入口12から水素が供給され、排出口13(これは設
けないこともある。)から排出される。燃料(H2)1
4が流路15を通過する間にプロトンを発生し、このプ
ロトンはプロトン伝導部1で発生したプロトンとともに
正極3側へ移動し、そこで導入口16から流路17に供
給されて排気口18へ向かう酸素(空気)19と反応
し、これにより所望の起電力が取り出される。
【0052】かかる構成の燃料電池は、プロトン伝導部
1でプロトンが解離しつつ、負極2側から供給されるプ
ロトンが正極3側へ移動するので、プロトンの伝導率が
高い特徴がある。従って、加湿装置等は不必要となるの
で、システムの簡略化、軽量化を図ることができる。
【0053】図9に示す水素−空気電池は、薄膜状のプ
ロトン伝導体(本発明のプロトン伝導体)20を中にし
て水素極21と空気極22とが対向配置され、これらの
外側を、テフロン(登録商標)板24aと、多数の孔2
5を設けたテフロン板24bとで挟み込み、全体をボル
ト26a、26b及びナット27a、27bにより固定
したもので、各極から外部に水素極リード28a、空気
極リード28bが取り出されている。
【0054】また、図10に示す電気化学デバイスは、
内面に負極活物質層30を設けた負極31と、外面にガ
ス透過支持体32を設けた正極33(ガス電極)との間
に、プロトン伝導体34が挟持された構造を有してお
り、このプロトン伝導体34に本発明のプロトン伝導体
が用いられる。なお、負極活物質30には、水素吸蔵合
金、又はフラーレンなどのカーボン材料に水素吸蔵合金
を担持させたものが好ましく、ガス透過支持体32に
は、たとえば多孔性のカーボンペーパなどが用いられ、
正極33は、たとえば白金をカーボン粉末に担持させた
材料をペースト状に塗布、形成するのが好ましい。な
お、負極31の外端と正極33の外端との隙間は、ガス
ケット35により塞がれている。この電気化学デバイス
では、正極33側に水分を存在させて、充電を行うこと
ができる。
【0055】また、図11に示す電気化学デバイスは、
内面に負極活物質層37を設けた負極38と、内面に正
極活物質層39を設けた正極40との間に、薄膜状の本
発明のプロトン伝導体41を挟持させた構造を有し、正
極活物質39としては、たとえば水酸化ニッケルを主成
分とするものが用いられる。なお、この電気化学デバイ
スも負極38の外端と正極40の外端との隙間は、ガス
ケット42によって塞がれている。
【0056】上述したいずれの電気化学デバイスも、上
記図4の模式図に基づいて説明した内容と同様のメカニ
ズムでプロトン伝導効果を発揮することができる。
【0057】
【実施例】以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説
明する。
【0058】<ポリ水酸化フラーレンの合成>この合成
は、文献(Chiang,L.Y.;Wang,L.Y.;Swirczewski.J.W.;S
oled, S.;Cameron, S., J.Org.Chem.1994,59,3960)を
参考にしておこなった。C70を約15%含むC60/C70
フラーレン混合物の粉末2gを発煙硫酸30ml中に投
じ、窒素雰囲気中で60℃に保ちながら3日間攪拌し
た。得られた反応物を、氷浴内で冷やした無水ジエチル
エーテル中に少しずつ投下し、その沈殿物を遠心分離で
分別し、さらにジエチルエーテルで3回、およびジエチ
ルエーテルとアセトニトリルの2:1混合液で2回洗浄
したあと、40℃にて減圧中で乾燥させた。さらに、こ
の乾燥物を60mlのイオン交換水中に入れ、85℃で
窒素によるバブリングを行いながら10時間攪拌した。
反応生成物は遠心分離によって沈殿物を分離し、この沈
殿物をさらに純水で数回洗浄し、遠心分離を繰り返した
後に、40℃で減圧乾燥した。このようにして得られた
茶色の粉末のFT−IR測定を行ったところ、上記文献
に示されているC60(OH)12のIRスペクトルとほぼ
一致し、この粉末が目的物質であるポリ水酸化フラーレ
ンと確認された。上記の反応は、例えばC60について次
のように表わすことができる。
【化1】
【0059】<実施例1のポリ水酸化フラーレンペレッ
トの製造>次に、このポリ水酸化フラーレンの粉末70
mgをとり、これとポリ塩化ビニルの粉末10mgとを
混合し、ジメチルホルムアミド0.5mlを加えてよく
攪拌した。そして、この混合物を直径15mmの円形の
型に流し込み、減圧下において溶媒を蒸発させた。その
後、プレスを行い、直径15mmのペレットを得た。こ
のペレットは厚みが約300ミクロンであった。これを
実施例1のペレットとする。
【0060】<ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステル
(全エステル化)の合成>これも同様に、前記の文献を
参考にしておこなった。上記得られたポリ水酸化フラー
レンの粉末1gを60mlの発煙硫酸中に投下し、室温
にて窒素雰囲気下で3日間攪拌した。得られた反応物
を、氷浴内で冷やした無水ジエチルエーテル中に少しず
つ投下し、その沈殿物を遠心分離で分別し、さらにジエ
チルエーテルで3回、およびジエチルエーテルとアセト
ニトリルの2:1混合液で2回洗浄した後、40℃にて
減圧下で乾燥させた。このようにして得られた粉末のF
T−IR測定を行ったところ、前記文献中に示されてい
る、すべての水酸基が硫酸水素エステル化されたものの
IRスペクトルとほぼ一致し、この粉末が目的物質であ
るポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステルと確認でき
た。
【0061】上記の反応は、例えばC60(OH)yにつ
いて次のように表わすことができる(以下、同様)。
【化2】
【0062】<実施例2のポリ水酸化フラーレン硫酸水
素エステルペレットの製造>このポリ水酸化フラーレン
硫酸水素エステルの粉末70mgをとり、これとポリ塩
化ビニルの粉末10mgとを混合し、ジメチルホルムア
ミド0.5mlを加えてよく攪拌した。この混合物を直
径15mmの円形の型に流し込み、減圧下において溶媒
を蒸発させた。その後、プレスを行い、直径15mmの
ペレットを得た。このペレットは厚みが約300ミクロ
ンであった。これを実施例2のペレットとする。
【0063】<比較例1のフラーレン凝集ペレットの製
造>比較のため、前記実施例で合成原料に用いたフラー
レンの粉末90mgを用いる以外は実施例1と同様にし
て、直径15mmの円形ペレット状になるように一方方
向へのプレスを行った。このペレットは厚みが約300
ミクロンで、これを比較例1のペレットとする。
【0064】各ペレットのプロトン伝導率の測定 ポリ水酸化フラーレンのペレット(実施例1)、ポリ水
酸化フラーレン硫酸水素エステルのペレット(実施例
2)及び比較例1のペレットの伝導率を測定するため
に、まず、ペレットと等しい直径15mmのアルミニウ
ム板でそれぞれのペレットの両側を挟み、これに7MH
zから0.01Hzまでの交流電圧(振幅0.1V)を
印加し、各周波数における複素インピーダンスを測定し
た。測定は、乾燥雰囲気下で行った。
【0065】インピーダンス測定に関し、実施例1及び
2のペレットからなるプロトン伝導体のプロトン伝導部
1は、電気的には、図6(A)に示すような等価回路を
構成しており、抵抗4と容量5の並列回路で表されるプ
ロトン伝導部1も含めて、第1極2と第2極3との間に
それぞれ容量6と6’とを形成している。なお、容量5
はプロトンが移動するときの遅延効果(高周波のときの
位相遅れ)を表し、抵抗4はプロトンの動き易さのパラ
メータを表す。
【0066】ここで、測定インピーダンスZは、Z=R
e(Z)+i・Im(Z)で表され、上記等価回路で示
されるプロトン伝導部の周波数依存性を調べた。
【0067】なお、図6(B)は、プロトン解離性のな
い比較例1のフラーレン分子を用いた場合(上記の比較
例1)の等価回路であり、図中の1aはフラーレン部で
ある。
【0068】図7に、実施例1のポリ水酸化フラーレン
のペレット及び比較例1のペレットについてのインピー
ダンス測定結果を示す。
【0069】これによれば、比較例1においては、複素
インピーダンスの周波数特性Bはおおよそキャパシター
単独の挙動と同様であり、フラーレン自体の凝集体につ
いては荷電粒子(電子、イオンなど)の伝導挙動は一切
観測されなかった。それに比べてポリ水酸化フラーレン
の場合Aは、高周波数部分に偏平ではあるが、非常にき
れいな単一の半円状円弧を見ることができる。これは、
ペレット内部においてなんらかの荷電粒子の伝導挙動が
存在していることを示している。さらに、低周波数領域
においては、インピーダンスの虚数部分の急激な上昇が
観測される。これは、徐々に直流電圧に近づくにつれて
アルミニウム電極との間で荷電粒子のブロッキングが生
じていることを示しており、当然、アルミニウム電極側
における荷電粒子は電子であるから、ペレット内部の荷
電粒子は電子やホールではなく、それ以外の荷電粒子、
すなわちイオンであることがわかる。用いたフラレノー
ルの構成から、この荷電粒子はプロトン以外には考えら
れない。
【0070】高周波数側に見られる円弧のX軸切片か
ら、この荷電粒子の伝導率を求めることができ、実施例
1のポリ水酸化フラーレンのペレットにおいては、おお
よそ1×10-6S/cmと計算される。更に、実施例2
のポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステルのペレットに
ついても同様の測定を行ったところ、ポリ水酸化フラー
レンの場合と全体の形状については同様なインピーダン
スの周波数特性となった。ただし、円弧部分のX切片か
ら求められる伝導率は表1に示すようにそれぞれ異なる
値となった。
【0071】
【表1】表1 本発明に基づくプロトン伝導体ペレット
の伝導率(25℃)
【0072】このように、水酸基がOSO3H基に置き
換わると、ペレット中の伝導率は大きくなる傾向を示し
ている。これは、水酸基よりもOSO3H基の方が水素
の電離が起こり易いことによるものである。そして、水
酸基、OSO3H基のどちらの場合も、または双方が混
在する場合においても、この種のフラーレン誘導体の凝
集体は、乾燥雰囲気中において、室温でプロトン伝導が
可能であることを見出すことができた。
【0073】次に、実施例1のポリ水酸化フラーレンの
ペレットを用い、上記の複素インピーダンス測定を16
0℃から−40℃までの温度範囲で行い、その時の高周
波側の円弧から求めた伝導率の温度依存性を調べた。結
果をアレニウス型のプロットとして示したのが図8であ
る。このように、160℃から−40℃において伝導率
が直線的に変化していることがわかる。つまり、この図
は、上記温度範囲において単一のイオン伝導機構が進行
可能であることを示している。すなわち、本発明に基づ
くプロトン伝導体は、室温を含む広い温度範囲、特に1
60℃といった高温や−40℃といった低温においても
伝導が可能である。
【0074】<フラーレン誘導体溶液の作製>上記得ら
れたポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステルとTHF
(テトラヒドロキシフラン)とを、以下に示す割合で混
合し、フラーレン誘導体溶液を作製した。
【0075】 ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステル 33重量% THF 66.6重量%
【0076】<ポリ塩化ビニル溶液の作製>ポリ塩化ビ
ニル材料(丸棒)を旋盤加工してポリ塩化ビニル切粉を
採取した。この時、他の物質は混合させないことに注意
し、上記得られたポリ塩化ビニル切粉とTHF(テトラ
ヒドロフラン)を混合させ溶液を作製した。ポリ塩化ビ
ニル切粉とTHFの混合比を以下に示す。
【0077】 ポリ塩化ビニル 10重量% THF 90重量%
【0078】<実施例3の薄膜の作製>上述した方法で
得られたフラーレン誘導体溶液内のポリ水酸化フラーレ
ン硫酸水素エステルと、ポリ塩化ビニル溶液を混合し、
超音波洗浄機で3分混合した。得られた混合液の組成を
以下に示す。
【0079】 ポリ水酸化フラーレン硫酸水素エステル 25重量% THF 72.5重量% ポリ塩化ビニル 2.5重量%
【0080】ガラス板に厚さ125μmのマスクをセッ
トして、上記得られたポリ塩化ビニル溶液とフラーレン
誘導体溶液との混合液を往復塗布した。次にマスクを交
換して、上記往復塗布と同様の塗布方法で2層塗布を行
った後、10分程度乾燥させたら、ガラス板に塗布され
た膜(プロトン伝導膜)は簡単にガラス板から剥離する
ことができた。これを実施例3のプロトン伝導膜とす
る。
【0081】上記ガラス板から剥離したこの膜の両面に
ポリテトラフルオロエチレンシート(通称テフロンシー
ト:厚み20μm)を張り、プレスで1ton/cm2
の圧力を2分間かけた。
【0082】膜厚測定 ここで、加圧後の膜厚みについて測定を行った。測定は
上記得られた加圧後のプロトン伝導膜1枚につき、8箇
所について行い、合計膜4枚を測定し、その結果を下記
表2に示す。
【0083】
【表2】表2
【0084】上記表2によれば、本発明に基づく実施例
3のプロトン伝導体は、例えばポリ塩化ビニル樹脂を含
有しているので、1ton/cm2で2分間のプレスに
よって、各膜とも厚み平均値が45μm以下と好ましい
成形性を示した。
【0085】発電試験 まず、Pt触媒付き水素極(外径30mm)及び酸素極
(外径34mm)をそれぞれ作製し、さらに外径34m
mの円形穴をもつプラスチック製のマスクを酸素極上に
のせ、先に作製しておいた上記のポリ水酸化フラーレン
硫酸水素エステルとポリ塩化ビニルの混合液をたらし、
マスクの穴の中で均一に広げた。その後、室温で乾燥さ
せた後、マスクを外した。その上に、水素極を重ね、1
平方センチメートル当り約5トンの圧力でプレスし、実
施例3のプロトン伝導膜を有するセルを完成させた。こ
のセル4枚分を接続し、4連モジュールとして組み立
て、下記の条件下で発電試験を行った。
【0086】即ち、水素極への水素供給量10cc/m
inとし、酸素極を大気に開放したところ、1セル当り
1.2Vの起電力を得ることができた。
【0087】<比較例2のナイロン系樹脂含有膜の作製
>上記ポリ塩化ビニルの代わりに、ナイロン系樹脂を用
いた以外は、実施例3と同様の方法で比較例2のプロト
ン伝導膜を作製した。
【0088】耐酸性試験 上記得られた実施例3の膜と比較例2のナイロン系樹脂
含有膜の耐酸性度の測定をしたところ、比較例2は、酸
性に弱いとされるナイロン系樹脂を用いて製膜を試みた
が、時間の経過と共に膜が崩壊した。一方、上記得られ
た実施例3の膜は、上述したような膜の劣化は見られな
かった。
【0089】以上より明らかなように、本発明に基づく
実施例1〜3のプロトン伝導体は、耐酸性の優れた樹脂
を含有するので、プロトン伝導体の酸性度が、プロトン
(H +)の解離によって著しく大きくなった場合におい
ても、酸化劣化し難く、耐久性に優れており、プロトン
伝導性薄膜として好適に用いることができる。
【0090】ここで、上述の実施例では、ポリ塩化ビニ
ル樹脂とフラーレン誘導体(ポリ水酸化フラレノール又
はその硫酸水素エステル)とを含有するプロトン伝導体
薄膜の作製を行ったが、本発明に基づくプロトン伝導体
は以下に示す如くに変更することも可能である。
【0091】上述の実施例では、ポリ塩化ビニル樹脂を
用いたが、本発明に基づくプロトン伝導体は、ポリ塩化
ビニル、塩化ビニル系共重合体、ポリエチレン、ポリプ
ロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンオキサイ
ド、ポリフェニレンオキサイド、パーフルオロスルホン
酸系樹脂及びこれらの誘導体(即ち、各種置換基を有す
るもの等)からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹
脂を用いることができる。
【0092】また、フラーレン誘導体としてポリ水酸化
フラーレン硫酸水素エステル(全エステル化)を用いた
が、本発明に基づくプロトン伝導体は、フラーレン分子
を構成する炭素原子にプロトン(H+)解離性の基を導入
してなるフラーレン誘導体、例えばフラレノールやポリ
水酸化フラーレン硫酸水素エステル(部分エステル化)
などを用いることができる。
【0093】また、乾燥雰囲気下で各試験を行ったが、
本発明に基づくプロトン伝導体は、水分存在下で用いる
ことも可能である。
【0094】更に、混合溶液を塗布することでプロトン
伝導膜の製膜を行ったが、本発明に基づくプロトン伝導
体は、溶融成形による製膜も可能で、更に、塗布に代わ
って印刷による製膜も可能である。
【0095】
【発明の作用効果】以上の説明から明らかなように、本
発明のプロトン伝導体は、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル
系共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカー
ボネート、ポリエチレンオキサイド、ポリフェニレンオ
キサイド、パーフルオロスルホン酸系樹脂及びこれらの
誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂
と、フラーレン分子を構成する炭素原子にプロトン(H
+)解離性の基を導入してなるフラーレン誘導体とを含
有しているので、膜強度及びガス透過防止能に優れ、か
つ耐酸性及び耐熱性等の良好な薄膜として用いることが
できる。
【0096】従って、上記プロトン伝導体の酸性度が、
プロトン(H+)の解離によって著しく大きくなった場
合においても、酸化劣化し難く、耐久性に優れており、
プロトン伝導性薄膜として好適に用いることができ、更
には常温を含む広い温度域にわたって高伝導性を発揮す
ることができる。
【0097】また、本発明のプロトン伝導体は、雰囲気
依存性が小さく、乾燥空気中においても、十分なプロト
ン伝導性を示し、継続的に使用することができる。
【0098】また、本発明の電気化学デバイスは、前記
本発明のプロトン伝導体を用いているので、本発明のプ
ロトン伝導体と同様の効果が奏せられ、また加湿装置等
は不要となり、システムの小型化、簡素化を実現するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に使用可能なフラーレン誘導体の一例で
あるポリ水酸化フラーレンの構造図である。
【図2】同、フラーレン誘導体の例を示す模式図であ
る。
【図3】同、フラーレン分子のみの構造図である。
【図4】本発明のプロトン伝導体の一例を示す模式図で
ある。
【図5】本発明の一実施の形態による燃料電池の概略構
成図である。
【図6】本発明の実施例に用いたペレットの電気的な等
価回路を比較して示す図である。
【図7】同、ペレットの複素インピーダンスの測定結果
を比較して示す図である。
【図8】同、ペレットのプロトン伝導率の温度依存性を
示す図である。
【図9】本発明の他の実施の形態による水素−空気電池
の概略構成図である。
【図10】本発明の他の実施の形態による電気化学デバ
イスの概略構成図である。
【図11】本発明の更に他の実施の形態による電気化学
デバイスの概略構成図である。
【符号の説明】
1…プロトン伝導部、2…第1極(水素極)、2a…触
媒、3…第2極(酸素極)、3a…触媒、14…水素、
19…酸素(空気)、20…プロトン伝導体、21…水
素極、22…空気極、24a…テフロン板、24b…孔
を設けたテフロン板、30…負極活物質、31…負極、
32…ガス透過支持体、33…正極(ガス電極)、34
…プロトン伝導体、35…ガスケット、37…負極活物
質、38…負極、39…正極活物質、40…正極、41
…プロトン伝導体、42…ガスケット
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01M 10/40 H01M 10/40 B 12/08 12/08 K S Fターム(参考) 5G301 CA30 CD01 5H024 AA01 CC01 FF21 5H026 AA06 CX05 EE05 EE18 EE19 5H029 AJ01 AJ11 AM16 DJ09 EJ04 HJ01 HJ02 5H032 AA00 AA01 AS01 AS12 CC17 EE01 EE04 EE08 HH01

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合
    体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネー
    ト、ポリエチレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイ
    ド、パーフルオロスルホン酸系樹脂及びこれらの誘導体
    からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、フラ
    ーレン分子を構成する炭素原子にプロトン(H+)解離性
    の基を導入してなるフラーレン誘導体とを含有してい
    る、プロトン伝導体。
  2. 【請求項2】 前記樹脂の含有量が50重量%以下であ
    る、請求項1に記載のプロトン伝導体。
  3. 【請求項3】 前記プロトン解離性の基が、−XH(X
    は2価の結合手を有する任意の原子もしくは原子団、H
    は水素原子である。)である、請求項1に記載のプロト
    ン伝導体。
  4. 【請求項4】 前記プロトン解離性の基が、−OH又は
    −YOH(Yは2価の結合手を有する任意の原子もしく
    は原子団である。)である、請求項1に記載のプロトン
    伝導体。
  5. 【請求項5】 前記プロトン解離性の基が、−OH、−
    OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(OH)
    3のいずれかより選ばれる基である、請求項4に記載の
    プロトン伝導体。
  6. 【請求項6】 前記フラーレン分子が、球状炭素クラス
    ター分子Cm(m=36、60、70、76、78、8
    0、82、84等)である、請求項1に記載のプロトン
    伝導体。
  7. 【請求項7】 第1極と、第2極と、これらの両極間に
    挟持されたプロトン伝導体とからなり、このプロトン伝
    導体が、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル系共重合体、ポリ
    エチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエ
    チレンオキサイド、ポリフェニレンオキサイド、パーフ
    ルオロスルホン酸系樹脂及びこれらの誘導体からなる群
    より選ばれる少なくとも1種の樹脂と、フラーレン分子
    を構成する炭素原子にプロトン(H+)解離性の基を導
    入してなるフラーレン誘導体とを含有する、電気化学デ
    バイス。
  8. 【請求項8】 前記樹脂の含有量が50重量%以下であ
    る、請求項7に記載の電気化学デバイス。
  9. 【請求項9】 前記プロトン解離性の基が、−XH(X
    は2価の結合手を有する任意の原子もしくは原子団、H
    は水素原子である。)である、請求項7に記載の電気化
    学デバイス。
  10. 【請求項10】 前記プロトン解離性の基が、−OH又
    は−YOH(Yは2価の結合手を有する任意の原子もし
    くは原子団である。)である、請求項7に記載の電気化
    学デバイス。
  11. 【請求項11】 前記プロトン解離性の基が、−OH、
    −OSO3H、−COOH、−SO3H、−OPO(O
    H)3のいずれかより選ばれる基である、請求項10に
    記載のプロトン伝導体。
  12. 【請求項12】 前記フラーレン分子が、球状炭素クラ
    スター分子Cm(m=36、60、70、76、78、
    80、82、84等)である、請求項1に記載のプロト
    ン伝導体。
  13. 【請求項13】 前記第1極又は前記第2極のうち少な
    くとも一方がガス電極である、請求項7に記載の電気化
    学デバイス。
  14. 【請求項14】 燃料電池として構成されている、請求
    項13に記載の電気化学デバイス。
  15. 【請求項15】 空気電池として構成されている、請求
    項13に記載の電気化学デバイス。
  16. 【請求項16】 前記第1極及び前記第2極の少なくと
    も一方が活物質性電極である、請求項7に記載の電気化
    学デバイス。
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