JP4524579B2 - プロトン伝導性複合体並びに電気化学デバイス - Google Patents

プロトン伝導性複合体並びに電気化学デバイス Download PDF

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Description

本発明は、カーボンクラスターを主成分とし、燃料電池等に使用可能なプロトン伝導性複合体とその製造方法、並びにこのプロトン伝導性複合体を用いた電気化学デバイスに関するものである。
プロトン伝導膜を固体電解質とする燃料電池では、燃料電極と酸素電極との間にプロトン伝導膜が挟持され、燃料と酸素との反応による起電力が燃料電極と酸素電極との間に発生する。
例えば、燃料が水素である場合、燃料電極に供給された水素は、下記
2H2 → 4H+ +4e-
の反応により酸化され、燃料電極に電子を与える。生じた水素イオンH+(プロトン)はプロトン伝導膜を介して酸素電極へ移動する。
酸素電極へ移動した水素イオンは、酸素電極に供給される酸素と下記
2 +4H+ +4e- → 2H2
のように反応し、水を生成するとともに、酸素電極から電子を取り込む。
燃料電池は、燃料が保有する化学エネルギーを電気エネルギーに変換する効率の高さや、窒素酸化物などの環境汚染物質を生成せずクリーンであることなどの理由から、次世代の環境配慮型電気エネルギー発生装置として注目され、各方面で盛んに開発が進められている。
上記の燃料電池は、使われるプロトン伝導膜の種類によって燃料電池自身を大別することができる。これは、使用温度や使用条件がプロトン伝導膜の性質に強く依存するためである。このように、使用するプロトン伝導膜の特性が燃料電池の性能に大きく影響することから、プロトン伝導膜の性能向上が燃料電池の性能を向上するための大きな鍵となる。
一般に、常温から100℃未満の温度範囲では、固体高分子からなるプロトン伝導性高分子膜が用いられている。具体的にはパーフルオロスルホン酸系樹脂である、デュポン社製のナフィオン(Nafion(R);商品名)やゴア社のゴア膜などが代表的であり、それらの改良も進められている。あるいは、これらパーフルオロスルホン酸系樹脂以外に、近年、学会や論文等では、炭化水素系のプロトン伝導性高分子膜に関する報告もなされている。
また、比較的新しいプロトン伝導体として、H312PO40・29H2O(M=Mo又はW)やSb25・nH2O(一般的にnは5.4)など、多くの水和水を持つポリモリブデン酸類や金属酸化物も知られている。
これらの高分子材料や水和化合物は、湿潤状態に置かれると、常温付近で高いプロトン伝導性を示す。例えば、パーフルオロスルホン酸系樹脂などの含水性高分子材料では、スルホン酸基から放出されたプロトンが、高分子マトリックス中に大量に取込まれている水をチャネルとして移動することにより、プロトン伝導性が発現する。無機金属酸化物プロトン伝導体でも、湿度が低い状態では、プロトン伝導率が急激に低下する。
また、高分子マトリックス中に取込まれている水は、プロトンの移動に伴って燃料電極側から酸素電極側へ運ばれ、徐々に失われていくので、これらの樹脂のプロトン伝導性を高く維持するためには、使用中も継続的に水分を補給して、樹脂を十分な湿潤状態に保つ必要がある。従って、これらのプロトン伝導膜を用いる燃料電池等では、電池に供給されるガスに水分を補給する加湿装置や膜の水分管理を行う周辺装置等が必要になる。
例えば、運転中は発電によって生成する水を膜の加湿に用いることが可能であるが、少なくとも装置起動時の膜の湿潤状態を確保するための加湿装置は必須である。また、運転中に発生する水も、一部を膜の加湿に用いながら、残りはすみやかに排出して、余分な水が燃料電極側へ浸透したり、燃料電極や酸素電極の周辺にあふれて電極等を水没させたりすることを避けなければならない。また、負荷変動によって水の生成量が変化しても、その変動に遅滞なく対応できるシステムでなければならない。
このように、従来のプロトン伝導膜は、プロトン伝導のために湿潤条件を必要とし、しかも、膨潤して水分を多量に取り込みやすく、同時に水をスムーズに通過させてしまう性質を有するため、これらのプロトン伝導膜を用いる燃料電池等のシステムは、膜の水分管理のために装置構成が複雑になり、システムが大型化して、設備コストも運転コストもコストアップすることが避けられない。
また、ダイレクトメタノール燃料電池のように、メタノールなどの水溶性燃料を膜−電極接合体(MEA)に直接供給して発電させる燃料電池では、プロトンが燃料電極から酸素電極へ透過するのと同様に、メタノールなどの水溶性燃料も高分子中の水に溶け込み、この水をチャネルとして燃料電極側から酸素電極側へ拡散して移動する。このような燃料の透過現象が起こると、燃料の損失となるだけでなく、酸素電極に複雑な混成電位が発生するため、起電力が低下して出力が取り出せなくなる恐れがある。
発明に至る経過
一方、本発明者のうちの一人は、カーボンクラスター、特にC60やC70といったフラーレンや所謂カーボンナノチューブなどの特異な分子構造をもったカーボンクラスターに、各種プロトン解離性の基を導入したクラスター誘導体を主成分とする材料が、乾燥・低湿状態でもプロトン伝導性を示すこと、従って、無加湿下で燃料電池を作動させることのできる材料として有望であることを報告した(特許WO 01/06519)。
なお、「プロトン解離性の基」とは、その基から水素原子がプロトン(H+)として電離し、離脱し得る官能基を意味し、この官能基には、結合手が1つのみの原子団のみならず、結合手を2以上有する原子団をも含み、官能基が分子末端に結合していても、分子鎖の中間位置に存在していてもよいものとする。
更に、本発明者の一人は、プロトン解離性の基を導入したカーボンクラスター誘導体を含むプロトン伝導体を用いて、加湿下で燃料電池等の電気化学デバイスを動作させるに際し、プロトン伝導体中に成膜性を有する高分子材料を含有させることで、プロトン伝導体の成膜性を向上させることを提案した(後述の特許文献1参照。)。
その後も、本発明者は、材料の安定性や特性の向上を目指して鋭意検討した結果、カーボンクラスター間をメチレン基などによって連結して高分子化する方法を見出し、クラスター誘導体の耐水性(水への不溶性)を向上させることができた(特願2002−210428号;以下、この出願に係わる発明を先願発明と称する。)。この高分子化カーボンクラスター誘導体は、プロトン解離性の基としてスルホメチレン基−CH(SO3H)−及びジスルホメチル基−CH(SO3H)2などを有し、プロトン伝導性も良好である。また、先願発明に基づく高分子化カーボンクラスター誘導体の合成法は、フラーレン等へのプロトン解離性の基の導入とメチレン基によるフラーレン同士の連結とを一連の工程で同時に行うことができ、しかも比較的容易な反応で構成されているので、水に不溶のプロトン伝導体を大量合成することも可能である。
特開2002−75420号公報(第8及び12−14頁、図17、18及び20)
しかしながら、固体高分子電解質型燃料電池等に用いられるプロトン伝導膜が満たすべき性能は非常に多岐にわたる。即ち、プロトン伝導性が高いこと、燃料や酸素や水の透過(クロスリーク)を遮断する性能が十分であること、成膜性や機械的強度に優れていること、耐水性や化学的安定性や耐熱性に優れていることなどが要求される。従来使用されてきたプロトン伝導体材料で、これらすべての要求に応えるのは難しい。
例えば、前述の高分子化カーボンクラスター誘導体は、成膜性や機械的強度、及びメタノールなどの燃料や水のクロスリーク遮断性が、ポリフッ化ビニリデン等の高分子材料に比べ劣っている場合がある。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、固体高分子電解質型燃料電池等に用いられるプロトン伝導膜に要求される機能を高度に備えた高機能膜を作製できるプロトン伝導性複合体とその製造方法、並びにこのプロトン伝導性複合体を用いた電気化学デバイスを提供することにある。
即ち、本発明は、プロトン解離性の官能基を有するカーボンクラスターと、水及び/又はアルコール分子等の液体分子を透過しにくい高分子材料とが混合されてなり、この高分子材料の混合比率が15質量%を超え、95質量%以下(特に、20質量%以上、90質量%以下)である、プロトン伝導性複合体に係わるものである。
また、本発明は、前記プロトン伝導性複合体の製造方法であって、前記カーボンクラスターと前記高分子材料とを溶媒に溶解又は分散させて混合液を作製する工程と、前記混合液を基板に被着させる工程と、前記溶媒を蒸発させる工程とを有する、プロトン伝導性複合体の第1の製造方法に係わり、また、前記カーボンクラスターと前記高分子材料とを粉末状に混合して混合粉末を作製する工程と、前記混合粉末を膜状に加圧成型する工程とを有する、プロトン伝導性複合体の第2の製造方法に係わり、また、前記高分子材料を第1の溶媒に溶解又は分散させて第1の混合液を作製する工程と、前記第1の混合液を基板に被着する工程と、前記第1の溶媒を蒸発させて前記高分子材料のみからなる多孔質膜を作製する工程と、前記カーボンクラスターを第2の溶媒に溶解又は分散させて第2の混合液を作製する工程と、前記多孔質膜に前記第2の混合液を含浸させる工程と、前記第2の溶媒を蒸発させる工程とを有する、プロトン伝導性複合体の第3の製造方法に係わるものでもある。
更に、本発明は、前記プロトン伝導性複合体が対向電極間に挟持され、電気化学反応部を構成する電気化学デバイスに係わるものである。
本発明によれば、プロトン解離性の官能基を有するカーボンクラスターと、水及び/又はアルコール分子等の液体分子を透過しにくい高分子材料とが混合されて複合体が形成されており、しかも、この高分子材料の混合比率が15質量%を超え、95質量%以下(特に、20質量%以上、90質量%以下)と高められているので、前記カーボンクラスターが有する高いプロトン伝導性を維持しながら、前記高分子材料と同様に、水及び/又は燃料のメタノール等の液体分子を透過を遮断する性能、及び成膜性や機械的強度や化学的安定性に優れている複合体を提供することができる。
即ち、前記カーボンクラスターは、複合体中に、加湿を必要とせず、高いプロトン伝導性を有する伝導パスを提供し、プロトンはこの伝導パスを通って移動する。一方、前記高分子材料は、水及び/又は燃料のメタノール等の液体分子の移動を遮断するとともに、高い成膜性と機械的強度によって前記カーボンクラスターの膨潤を阻止する機能を有する。
また、本発明のプロトン伝導性複合体の第1の製造方法によれば、予め前記カーボンクラスターと前記高分子材料とを前記溶媒を用いて前記混合液とし、この混合液から前記プロトン伝導性複合体を形成し、また、第2の製造方法によれば、前記カーボンクラスターと前記高分子材料とを粉末状に混合し、この前記混合粉末を加圧成型して前記プロトン伝導性複合体を形成し、また、第3の製造方法によれば、前記高分子材料からなる前記多孔質膜を作製した後に、前記カーボンクラスターを前記第2の溶媒と混ぜ合わせた前記第2の混合液を前記多孔質膜に含浸させて前記プロトン伝導性複合体を形成する。
このように、本発明は、前記カーボンクラスターと前記高分子材料とを混合して複合体化する方法として3通りの方法を提供するので、前記カーボンクラスターや前記高分子材料の性状や溶媒との親和性等に応じて最適の製造方法を選択することができ、高機能の前記プロトン伝導性複合体を確実に作製できる。
また、本発明の電気化学デバイスによれば、前記プロトン伝導性複合体が対向電極間に挟持され、電気化学反応部を構成するので、プロトン伝導膜の水分管理のためのシステムを簡素化して、燃料電池等の設備コストや運転コストをコストダウンすることができ、また、メタノールなどの燃料を膜−電極接合体(MEA)に直接供給して発電させる、ダイレクトメタノール燃料電池等の燃料電池などを構成することができる。
本発明において、前記高分子材料が、少なくともポリフッ化ビニリデン又はその共重合体を含むのがよく、前記共重合体はヘキサフルオロプロペンとの共重合体であるのがよい。ポリフッ化ビニリデン及びそのヘキサフルオロプロペンとの共重合体は、成膜性と機械的強度に優れ、水及びメタノール等のアルコールなどの液体分子が透過するのを遮断する能力が特に高く、耐熱性にも優れている。これ以外にも、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、塩素化ポリエーテル(CE)、塩素化ポリエチレン(CPE)、フラン樹脂(FF)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエーテル-エーテルケトン(PEEK)、アクリル-アクリロニトリル-スチレン樹脂(AAS)、アクリロニトリル樹脂(AN)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の高分子化合物の使用が可能である。
また、前記高分子材料がポリイミド類であってもよい。さらには、前記ポリイミド類が多孔質体であり、この多孔質体の細孔内に前記カーボンクラスターが充填されていることが好ましい。これにより、本発明に基づくプロトン伝導性複合体は低含水率のような環境下においても運転可能であると共に、成膜性、機械的強度及び形状安定性がより向上した高機能膜となる。また、前記ポリイミド類からなる多孔質体は寸法安定性に優れているため、前記プロトン伝導性複合体の膨潤を防ぎ、高い成膜性を実現し、より効果的に水及び/又は燃料のメタノール等の液体分子の移動を遮断することができる。
前記高分子材料として前記ポリイミドからなる多孔質体を用いる場合、その空孔率は10〜85%が好ましく、平均孔径は0.05〜5μmが好ましい。空孔率が低すぎるとプロトン伝導の妨げになることがあり、逆に大きすぎると機械的強度が低下する恐れがある。平均孔径が小さすぎると、その細孔内に前記カーボンクラスターを充填するのが困難になる場合があり、逆に大きすぎると前記カーボンクラスターの保持能力が低下することがある。また、前記多孔質体の膜厚は5〜300μmが好ましい。
さらに、前記カーボンクラスターが、カーボンクラスター単量体が連結基を介して互いに連結されてなるカーボンクラスター重合体であるのがよい。この連結基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1つの基を有するのがよい。
カーボンクラスター重合体は、重合体化によって単量体に比べてはるかに水に溶けにくく化学的に安定になっているため、単量体よりもはるかに多くのプロトン解離性の基を、前記カーボンクラスターに導入することができる。この場合、前記連結基の中にもプロトン解離性の基を導入すれば、重合によってプロトン伝導体におけるプロトン解離性の基の濃度が低下することを防止できるので、望ましい。
このように、カーボンクラスター重合体では、多数のプロトン解離性の基を導入できるので、前記高分子材料の混合比率を高めても、前記プロトン伝導性複合体におけるプロトン解離性の基の濃度を十分高く維持できる。
この際、前記連結基の炭素数は、1〜20であるのがよく、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1であるのがよい。また、前記連結基にプロトン解離性の官能基が含まれ、更に前記連結基にフッ素原子が含まれるのがよい。
連結基が短い方が、イオン伝導は容易になる。この理由は、連結される2つの前記カーボンクラスターの間の距離が短くなるほど、プロトン伝導パスを短くでき、プロトンが伝達されやすくなるからである。また、プロトン解離性の基と前記カーボンクラスターとの間の距離が短くなるほど、後述するフラーレン等の電子吸引作用をより強く受けることができ、イオンの解離が容易になる効果もある。
前記カーボンクラスターばかりでなく、前記連結基にもプロトン解離性の官能基が含まれると、これらもプロトン伝導性を担うプロトン源として働くから、プロトン伝導性が向上する。
前記連結基にフッ素原子が含まれると、重合体の化学的安定性及び耐熱性が向上する。また、フッ素原子は、電気陰性度が大きく、周囲の原子から電子を引きつけ、結果として前記プロトン解離性の官能基が解離するのを助長する。
また、前記カーボンクラスターが、球状炭素クラスター分子Cn(n=36、60、70、76、78、80、82、84等、通称フラーレン)からなる群の中から選ばれた少なくとも1種であるのがよい。とくに、C60 及び/又はC70 であるのがより好ましい。例えば、C60フラーレン分子は、30本の2重結合、即ち60個のπ電子を有する分子である。電子吸引性が極めて強いため、前記プロトン解離性の基のプロトン解離度が強められ、乾燥状態でもプロトンが解離しやすくなり、高いプロトン伝導性が実現できる。また、現在用いられているフラーレンの製造方法では、C60 及びC70 の生成比率が圧倒的に高く、製造コスト的にもC60 及び/又はC70を用いるメリットが大きい。更に、できるだけ形がそろったカーボンクラスターを用いることで細密にパッキングでき、小さい固体のカーボンクラスターを用いることでカーボンクラスターの表面積を増し、そこに結合するプロトン解離性の基の密度を高めることができる。
前記カーボンクラスターには、球状炭素クラスター分子以外にも、籠状構造、又は少なくとも一部に開放端をもつ構造からなるものがあり、また、チューブ状の形状を有するカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー及びダイヤモンド構造の微粒子であってもよい。
また、前記イオン解離性の官能基が−XH(Xは、2価の結合手を有する任意の原子もしくは原子団である。)で表されるプロトン解離性の官能基であり、具体的には、ヒドロキシル基−OH、スルホン酸基−SO2OH、カルボキシル基−COOH、ホスホノ基−PO(OH)2 、リン酸二水素エステル基−O−PO(OH)2 、ホスホノメタノ基>CH(PO(OH)2)、ジホスホノメタノ基>C(PO(OH)2)2 、ホスホノメチル基−CH2(PO(OH)2)、ジホスホノメチル基−CH(PO(OH)2)2 、ホスフィン基−PHO(OH)、−PO(OH)−、及び−O−PO(OH)−からなる群の中から選ばれた1種以上の官能基であるのがよい。ここで、メタノ基>CH2とは、メタノ基の炭素原子が2本の結合手で前記カーボンクラスターの2個の炭素原子と単結合を形成し、橋かけ構造を作っている原子団のことである。
また、本発明のプロトン伝導性複合体の第1の製造方法では、前記カーボンクラスターと前記高分子材料とを N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)や N-メチルピロリドン(NMP)等の非プロトン極性溶媒に溶解又は分散させ、その混合液をドクターブレード法等によってガラス板やプラスチックシート等の上に膜状にキャストした後、溶媒を蒸発させてプロトン伝導性複合体膜を作製する。この際、加温しながら減圧下で溶媒を除去するのがよい。例えば、真空乾燥機を用い、60℃程度の温度で1分間〜10時間または終夜にわたり溶媒を除去する等である。膜厚は、キャストする前記混合液の量によって1μmから200μmまで制御することができる。
この方法では、前記カーボンクラスターと前記高分子材料とが予め前記混合液中で混合されているので、前記カーボンクラスターと前記高分子材料の比がより精密に、また容易に制御できる。また、液相で混合するため、より均一な混合液を作製することができ、ひいては均一な膜を作製することができる。また、前記プロトン伝導性複合体の作製に高温で加圧成型する工程を必要としないので、より簡単に成膜することができる。
また、本発明のプロトン伝導性複合体の第2の製造方法では、前記カーボンクラスターと前記高分子材料とを乳鉢で均一に粉末状に混合した後、温度130℃〜180℃、圧力7.5kgf/cm2〜300kgf/cm2で1分間から60分間加圧成型することにより、均一な前記プロトン伝導性複合体膜を作製する。
加圧成型時の温度は、前記高分子材料の軟化点温度近傍又はそれ以上であることが望ましく、耐熱性のある前記高分子材料では130℃以上であることが望ましい。130℃未満の温度では、膜の軟化が起こりにくく、緻密な膜の作製が困難であり、メタノール等が透過しやすくなるなどの不都合が生じ易い。また、180℃をこえる高温は、成膜は可能であるが、前記カーボンクラスターが分解する可能性がある。
加圧成型時の圧力は、7.5kgf/cm2未満では緻密な膜を作製し難く、メタノール等の透過速度が著しく(例えば、後述の実施例1の100倍に)増加し易い。また、300kgf/cm2をこえる圧力は、成膜は原理的には可能であるが、高圧の発生のためにより高性能でより高価な装置が必要となる。
膜厚は、プレスする試料の量を調節することによって、10μmから500μmまで制御可能である。それ以上の膜厚も作成可能であるが、プロトン伝導体膜が500μm以上の膜厚となると、プロトン伝導の抵抗が大きくなり、燃料電池に適用した場合、その出力が低下し易い。
この方法では、前記プロトン伝導性複合体の作製に溶媒を用いないので、溶媒が膜中に残存するなどの可能性がなく、溶媒を完全に除去するための工程が不要である。更に、溶媒が蒸発する際に生じる微小な孔も生成せず、緻密な膜が作製可能となる。
また、本発明のプロトン伝導性複合体の第3の製造方法では、まず、前記高分子材料を N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)や N-メチルピロリドン(NMP)等の非プロトン極性溶媒の前記第1の溶媒に溶解又は分散させて前記第1の混合液を作製し、その第1の混合液をドクターブレード法等によってガラス板やプラスチックシート等の上に膜状にキャストし、溶媒を除去して多孔質膜を作製する。この際、溶媒を除去するために、水浴で水洗した後、加温しながら減圧下で溶媒を蒸発させ除去するのがよい。例えば、25℃及び100℃の水浴で水洗した後、真空乾燥機を用いて60℃程度の温度で終夜にわたり溶媒を蒸発させる等である。膜厚は、キャストする前記第1の混合液の量によって1μmから200μmまで制御することができる。
その後、前記カーボンクラスターと前記第2の溶媒とを混ぜ合わせた前記第2の混合液を前記多孔質膜に含浸させ、前記第2の溶媒を蒸発させて前記プロトン伝導性複合体膜を形成する。
前記第2の溶媒を蒸発させた後、前記プロトン伝導性複合体膜を温度130℃〜180℃、圧力7.5kgf/cm2〜300kgf/cm2で1分間から60分間加圧成型するのがよい。
前記多孔質膜の空孔に前記カーボンクラスターを充填した後に残存する、前記プロトン伝導性複合体膜内の隙間が、上記の加圧成型によってなくなり、膜がより緻密な構造になり、燃料であるメタノールの透過がさらに抑えられる。
この方法では、3次元的な空孔を有する前記高分子材料の前記多孔質膜を予め作製し、その空孔にプロトン伝導体である前記カーボンクラスターを充填するので、プロトン伝導体は必ず3次元的に連結した状態で充填される。そのため、作製した前記プロトン伝導性複合体膜は3次元的に連結したプロトン伝導パスを有し、より高いプロトン伝導度が期待できる。
また、本発明の電気化学デバイスは、電気化学反応を伴いながらエネルギー又は情報を取り出すことができるように作られているのが望ましい。とりわけ、燃料電池として構成されているのがよい。
次に、本発明の好ましい実施例を挙げて、本発明に基づくプロトン伝導性複合体とその製造方法、並びに電気化学デバイスとしてのダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)の有効性を具体的に説明する。
実施例1
以下、先願発明に基づいて合成したフラーレンプロトン伝導体ポリマーを用い、本発明の第1の製造方法に基づいてプロトン伝導性複合体を作製し、この複合体膜を用いてDMFCを構成した例について説明する。
<プロトン伝導体ポリマーの合成>
カーボンクラスターの例としてC60フラーレンを用い、連結剤分子の例としてI(CH2)kIを用い、イオン解離性の官能基の例としてスルホン酸基を用いて、フラーレンプロトン伝導体ポリマーを合成する反応を説明すると次のようである。
連結剤分子I(CH2)kIは、ヨウ素原子1個を用いてC60フラーレンと次のように反応し、C60フラーレンと結合する。
60 + I-(CH2)k-I → C60-(CH2)k-I
連結剤分子の残基である−(CH2)k−Iがもう1つのヨウ素原子で別のC60フラーレンと結合すると、フラーレン同士がメチレン鎖で連結され、ポリマーの骨格になる分子鎖が形成される。
60-(CH2)k-I +C60 → C60-(CH2)k-C60
一方、連結剤分子の残基が、もう1つのヨウ素原子を未反応のまま残して次の工程に進むと、ヨウ素基はスルホン酸基などのプロトン解離性の基によって置換される。
このように、先願発明に基づくフラーレンプロトン伝導体ポリマーの合成反応は、比較的簡単な縮合反応と置換反応のみで構成されているので、容易に実行でき、収率も高いため、低コストで水に不溶なプロトン伝導体を大量に合成することができる。
次に、上記の連結剤分子の具体例としてヨードホルムCHI3を用い、下記の反応フロー図に従ってプロトン伝導体ポリマーを合成した例を説明する。ヨードホルムには、3つ目のヨウ素原子があるので、ヨードホルムを連結剤分子として用いると連結基にもプロトン解離性の官能基を導入することができ、プロトン伝導度を向上させることができる。
工程1:
三つ口フラスコに1g(1.39mmol)のフラーレンC60 を入れ、容器内の空気や水分を乾燥窒素で完全に置換した後、1,2-ジメトキシエタン(DME)約150mlを加えた。次に、あらかじめ調製しておいた、フラーレンの40倍当量のナトリウムナフタレニト(触媒;電子供給源)を溶かしたDME溶液を、キャヌラを用いて徐々に加え、2時間攪拌を続けた。
続いて、水浴で冷却しながら、フラーレンの20倍当量のヨードホルムCHI3 を溶かしたDME溶液を滴下した後、室温又は80℃で1時間から24時間攪拌を続け、フラーレンとヨードホルムとを反応させた。初めは緑色の溶液が濃茶色の混合液に変化した。反応後、反応液を吸引ろ過して、ポリマー化した固体状の生成物をろ別し、メタノールとトルエンを用いて十分に洗浄した。この結果、2.88gの試料(A)(フラーレンプロトン伝導体ポリマーの前駆体 -[-C60(CHI2)m-CHI-]n- )を回収した。
工程2:
試料(A)1gを N-メチルピロリドン(NMP)50mlに分散させた後、水浴で冷却しながら、亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 15.12gを水50mlに溶かした水溶液に滴下した。その後、室温又は80℃で1時間から72時間攪拌を続け、試料(A)にスルホン酸基を導入した。反応後、反応液を吸引ろ過して、スルホン酸基を導入した試料(B)( -[-C60(CH(SO3Na)2)m-CH(SO3Na)-]n- )をろ別し、水で洗浄した後、60℃で乾燥した。この結果、0.72gの試料(B)を回収した。
試料(B)1gに1Mの塩酸を加え、室温で1時間から18時間攪拌を続け、試料(B)中のナトリウムイオンNa+を水素イオンH+で置換して、試料(C)(フラーレンプロトン伝導体ポリマー -[-C60(CH(SO3H)2)m-CH(SO3H)-]n- )を得た。反応液から試料(C)をろ別し、0.1Mの希塩酸を用いて洗浄した後、更に水で洗浄し、洗浄液から塩化物イオンCl- が検出されないことを1Mの硝酸銀AgNO3 水溶液との反応がないことで確認した後、60℃で乾燥した。この結果、0.8gの試料(C)を回収した。
<フラーレンプロトン伝導体ポリマーの構造>
図10は、模式化したフラーレンプロトン伝導体ポリマーの構造を示す説明図である。フラーレン同士は、スルホメチレン基(1個の水素原子がスルホン酸基で置換されたメチレン基)−CH(SO3H)−によって連結され、ポリマーの骨格を形成する。スルホメチレン基の数が2のフラーレンは、分子鎖が左から右へつながるだけの単純な鎖状構造を形成するが、スルホメチレン基の数が3以上のフラーレンは、図10の中央のフラーレンのように、1個のフラーレンから分子鎖が3方向以上にのびる分岐構造を形成する。従って、1個のフラーレンに結合しているスルホメチレン基の数を平均i個とすると、iが2を超えるポリマーは、単純な鎖状分子ではなく、三次元的に連結した構造をもつ分子である。このように、iの値はポリマーの骨格構造と密接な関係がある。
一方、このフラーレンプロトン伝導体ポリマーには、フラーレン同士を結びつけるのではなく、単なる置換基としてフラーレンに導入されたジスルホメチル基(2個のHがスルホン酸基で置換されたメチル基)−CH(SO3H)2も存在する。フラーレン1個あたりの、ジスルホメチル基の数を平均m個とすると、このm個のジスルホメチル基は、ポリマーの骨格構造とは関係しないプロトン源として機能する。
i及びmの値は、合成する際の温度と時間を調整することにより、また、フラーレン原料と他の原料のモル比を調整することにより、コントロール可能である。iの値が大きいと、分岐構造が発達し、水に溶解しにくくなる。一方、mの値が大きく、フラーレン1個当たりのスルホン酸基の数が多いほど、プロトンの数も増えプロトン伝導度も増す。i及びmの値を独立にコントロールできるので、水への不溶性と高いプロトン伝導度を両立させることができる。
<プロトン伝導性複合体の作製>
フラーレンプロトン伝導体ポリマー0.1gを N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に分散させた後、0.1gのポリフッ化ビニリデン或いはポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重合体を加え、60℃で加熱しながら完全に溶解させた。即ち、プロトン伝導体ポリマーとバインダー高分子材料との質量比は1:1である。
次に、上記の混合溶液をさらにハイブリッド攪拌機で30分間攪拌し、3分間脱泡した。その後、得られた溶液を、ガラス板或いはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート上にドクターブレード法を用いてキャストした。キャストした膜を真空乾燥機を用いて60℃の下で30分間真空乾燥した。膜厚はキャストする溶液の量によって制御できる。本実施例で得られた膜の厚さは32μmであった。
<プロトン伝導性複合体膜のメタノール吸液性(膨潤)の測定>
真空乾燥で得られたプロトン伝導性複合体膜を99.8%のメタノール中に3か月間浸漬しでも、見た目の変化がなく、安定であることを確認した。一方、比較例として市販のパーフルオロスルホン酸系ポリマーであるNafion111を99.8%のメタノール中に浸漬したところ、24時間で完全に溶解した。
図1は、プロトン伝導性複合体膜とNafion膜とを、濃度の異なるメタノール水溶液(各水溶液の濃度は、3M、6M、及び10M。)中に24時間浸漬した場合の質量増加率を測定した結果である。このとき、膜は、60℃で10時間真空乾燥後、更に露点−50℃以下に保った乾燥雰囲気中で3日間保管したものを用いた。
質量増加率は、次の式を用いて計算した。
[(W2−W1)/W1]×100(%)
但し、W1は溶液に浸漬する前の膜の質量であり、W2は24時間溶液中に浸漬した後の膜の質量である。
この結果から、Nafionの質量増加率は、3Mのメタノール中で42%、6Mのメタノール中で60%、10Mのメタノール中で81.5%と大きいのに対して、本実施例で作製したプロトン伝導性複合体膜の質量増加率は、3Mのメタノール中で1.1%、6Mのメタノール中で3.9%、10Mのメタノール中で4.8%と、Nafionに比べて非常に小さいことがわかった。
<プロトン伝導性複合体膜におけるメタノールの透過速度の測定>
図2は、プロトン伝導性複合体膜(膜厚は32μm。)と市販Nafion膜(膜厚は27μm。)のメタノール透過性を示すグラフである。測定方法は、Vincenzo Tricoli,“Proton and Methanol Transport in Poly(perfluorosulfonate) Membranes Containing Cs+ and H+ Cations”,J. Electrochem. Soc., Vol.145, No.11, p.3798, (1998)を参考にした。
その方法を概説すると、次の通りである。作製したプロトン伝導性複合体膜又はNafion膜をメタノールクロスオーバ測定用のセルにセットする。膜の両側にある容器VAとVBとには、容器VAに8体積%のメタノールと0.2体積%のブタノールとを含む水溶液を注入し、容器VBに0.2体積%のブタノール水溶液を注入した。膜の両側の水溶液におけるメタノールの濃度が異なるため、濃度差によってVA側のメタノールがVB側に膜を透過して拡散する。この結果、時間とともにVB側のメタノール濃度が徐々に増加し、膜がメタノールを透過しやすいものであるほど、VB側のメタノール濃度の増加は速い。実験は、VB側におけるメタノール濃度とブタノール濃度との比をGCMS(ガスクロマトグラフィー質量分析法)で測定し、この比からメタノール濃度をブタノール濃度(0.2体積%)に基づいて計算した。
図2中、縦軸は膜を透過したメタノールの体積パーセント濃度、横軸は測定開始からの時間(測定のサンプリング時間)である。
メタノールの透過係数Pは次の式で計算できる:
B(t) = CA×(A/L)×(P/V)×(t−t0)
ここで、CB(t)とCAは、膜を挟んだ両側の容器中のメタノール濃度で、CB(t)は時間の関数、CAは定数である。AとLは、測定に用いた膜の面積と厚みであり、Vは容器VB中の溶液の体積である。tは測定のサンプリング時間であり、t0は膜中メタノールの拡散係数に関係ある定数である(to=L2/6D;Dは拡散係数である。)。
図2の測定結果から上記の式を用いて求めたメタノールの透過係数は、Nafionが8.4×10-7cm2/secであり、プロトン伝導性複合体膜は3.5×10-9cm2/secであった。ただし、この透過係数は装置の形状因子を含むため、いわゆる拡散係数とは値が多少異なるものである。
この結果から、本発明で作製したプロトン伝導性複合体膜は、市販のNafionと比べて、メタノールの透過係数が約240分の1であることがわかった(図2に示されているように、プロトン伝導性複合体膜の透過性が小さすぎ、実験の測定精度が十分でない可能性があるため、240分の1以下であるかもしれない。)。
以上の結果から、作製したプロトン伝導性複合体膜のメタノールに対する遮断性は高いと判断できる。
<プロトン伝導性複合体膜の水分含有率>
図3は、室温において、雰囲気ガス中の相対湿度が0%から100%まで増加する際の、プロトン伝導性複合体膜とNafion膜の質量増加率をそれぞれ測定し、プロトン伝導性プロトン伝導性複合体膜とNafion膜の水分含有量を調べた結果である。
実験に用いた膜は、60℃で終夜真空乾燥した後、更に露点−50℃以下の乾燥雰囲気下で3日間乾燥した後、膜の質量を測定し、それらの膜の基準質量とした。次に、それらの膜を所定の相対湿度に調整された雰囲気ガス中に10時間以上置いた後に質量を測定し、その質量の増加率を水分の含有率とした。プロトン伝導性複合体膜の質量増加率は、湿度が上昇するとともに徐々に上昇するが、100%の湿度雰囲気下において5.8%に留まったのに対し、Nafion膜の質量増加率は、100%の湿度雰囲気下において32.1%に達した。
このことより、作製したプロトン伝導性複合体膜は、メタノール同様、水に対しても親和性が小さいことが示唆された。これは燃料電池を作動させる際に発生する生成水がプロトン伝導膜中に残留し、多量の水がプロトン伝導膜中を移動するというような不都合な現象を防ぐことができることを示している。
<プロトン伝導性複合体膜の伝導度>
プロトン伝導性複合体膜の伝導度を複素インピーダンス法により測定した。室温、湿度約50%においては、伝導度が2×10-4Scm-1であった。更に、水とメタノールのモル比が1:1のメタノール水溶液と接触している状態では、伝導度が2.5×10-3Scm-1であった。これは膜厚が30μmの場合、1cm2 あたり1.2Ωの膜抵抗に相当する。この値は、実用的な発電が十分に可能な伝導度であると判断できる。
<プロトン伝導性複合体膜における、高分子材料の混合比率の影響>
図4は、本実施例のプロトン伝導性複合体膜における、高分子材料の質量分率と、メタノールの透過係数およびプロトン伝導度(水とメタノールのモル比が1:1のメタノール水溶液と接触している状態での値)との関係を示すグラフである。
図4によると、メタノールの透過係数は、高分子材料の質量分率が15質量%を下回るあたりから急激に大きくなっており、10質量%付近でNafion膜の値(図中、黒点●で示した。)と同程度になっている。これは、高分子材料の質量分率が15質量%をきるあたりから、ポリフッ化ビニリデン或いはその共重合体特有の緻密な膜が得られにくくなり、高分子材料の混合比率の低下につれ隙間の多い膜に変質していくためと考えられる。従って、高分子材料の混合比率は、少なくとも15質量%以上であることが必要であるが、15質量%を超えること、更には20質量%以上、特に25質量%以上であることが望ましい。
一方、高分子材料の質量分率が95質量%を超えると、プロトン伝導度が急激に低下する。これは、フラーレンプロトン伝導体ポリマーの混合比率の低下によって、フラーレンプロトン伝導体ポリマーによる三次元的なプロトン伝導パスが形成できなくなってしまうためと考えられる。図4によると、高分子材料の質量分率が95質量%であるプロトン伝導性複合体膜のプロトン伝導度は、1×10-4Scm-1である。これは膜厚が5μmの場合、1cm2 あたり5Ωの膜抵抗に相当する。この値は、1cm2 あたりの電流値が100mAから200mAであるとすると、0.5Vから1Vの電圧低下を引き起こす値であり、開放電圧が1V程度である燃料電池では実用的な使用が可能な限界値であると判定できる。従って、高分子材料の混合比率は、95質量%以下であることが必要であり、90質量%以下が望ましい。
<ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)の作製>
プロトン伝導性複合体膜を用いたDMFCを作製し、電池の開放電池電圧(OCV:電流が流れていないときの両極間の電位差)及び出力特性を調べた結果について説明する。
図5は、作製したDMFCの構成を示す概略断面図(a)と膜−電極接合体(MEA)14の拡大断面図(b)である。膜−電極接合体(MEA)14は、プロトン伝導膜12の両面に燃料電極13と酸素電極11とが接合されて形成されている。
図5の装置で、膜−電極接合体(MEA)14はセル上半部17及びセル下半部18の間に挟持され、燃料電池に組み込まれる。セル上半部17及びセル下半部18には、それぞれ、燃料供給管19及び酸素(空気)供給管20が設けられており、燃料供給管19からはメタノール水溶液が供給され、また酸素(空気)供給管20からは酸素もしくは空気が供給される。メタノール水溶液と酸素(もしくは空気)は、それぞれ、図示省略した通気孔を有する燃料供給部15及び酸素供給部16を通過して燃料電極13及び酸素電極11に供給される。燃料供給部15は燃料電極13とセル上半部17を電気的に接続し、酸素供給部16は酸素電極11とセル下半部18を電気的に接続する。また、セル上半部17には燃料の漏洩を防ぐためにOリング21が配置されている。
発電は、メタノール水溶液と酸素(もしくは空気)を供給しながら、セル上半部17及びセル下半部18に接続されている外部回路22を閉じることで行うことができる。この時、燃料電極13の表面上では下記(式1)
2CH3OH+2H2O→ 12H+ +2CO2+ 12e- (式1)
の反応によりメタノールが酸化され、燃料電極に電子を与える。生じた水素イオンH+はプロトン伝導膜を介して酸素電極へ移動する。
酸素電極へ移動した水素イオンは、酸素電極に供給される酸素と下記(式2)
3O2 + 12H+ + 12e- → 6H2O (式2)
のように反応し、水を生成する。このとき、酸素は、酸素電極から電子を取り込み、還元される。
図5(b)のMEAの燃料電極13では、カーボンシートやカーボンクロスなどの導電性多孔質支持体13aの表面に、燃料供給層13bと、触媒である白金若しくは白金合金等とNafion(R)などのプロトン伝導体との混合物からなるメタノール酸化触媒層13cが順次積層されている。また、酸素電極11では、カーボンシートやカーボンクロスなどの導電性多孔質支持体11aの表面に、酸素供給層11bと、触媒である白金若しくは白金合金等とNafion(R)などのプロトン伝導体との混合物からなる酸素還元触媒層11cが順次積層されている。
上記のMEAは、下記のようにして作製した。
まず、導電性多孔質支持体13a又は11aであるカーボンシートの上に、カーボン微粉末とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粒子を40:60の質量比率で水中に混合分散させた混合液をバーコーターにて塗布した後、乾燥させて、カーボンシート上に燃料供給層13b及び酸素供給層11bをそれぞれ形成した。
次に、触媒金属を担持したカーボン粉末と、Nafion(R)のメタノール溶液とを、水とプロパノールの混合溶媒に加え、十分に撹拌混合した。この溶液を、カーボンシート上に形成した燃料供給層13b及び酸素供給層11bの上にバーコート法により塗布し、溶媒を蒸発させ、メタノール酸化触媒層13c及び酸素還元触媒層11cを形成した。
ここで、触媒金属担持カーボン粉末とNafion(R)の質量比は、1:0.6とした。また、メタノール酸化触媒層13cには、田中貴金属(株)製の燃料電池用触媒担持カーボン(Pt 30.1質量%、Ru 23.4質量%担持)を用い、触媒金属の塗布量を2mg/cm2とした。酸素還元触媒層11cには、田中貴金属(株)製の燃料電池用触媒担持カーボン(Pt 45.8質量%担持)を用い、触媒金属の塗布量を1mg/cm2とした。
このようにして作製した燃料電極(アノード)13と酸素電極(カソード)11で、プロトン伝導性複合体膜又はNafion膜を挟み込み、30kgf/cm2の圧力を加えながら150℃で5分間ホットプレスして、膜-電極接合体(MEA)を作製した。
上記のMEAをDMFCシステムに組み込み、温度25℃の条件下で、MEAの燃料電極(アノード)13の側にメタノールと水のモル比が1:1のメタノール水溶液を供給し、酸素電極(カソード)11の側に空気を供給して、DMFCとして動作させた。
図6は、DMFCの開放電圧(OCV)の経時変化を示すグラフである。プロトン伝導性複合体膜を用いたDMFCのOCVは、約0.58Vで安定した値が得られた。一方、Nafion111膜を用いたDMFCのOCVは、測定初期においても0.28Vと低く、更に徐々に0.16V以下まで減少した。
DMFCのOCV低下は、燃料であるメタノールが膜を透過して酸素電極に到達し、そこで直接酸素と反応してしまうことによるところが大きいとされており、Nafion111膜を用いたDMFCのOCVの測定結果は、それを示す1例と考えられる。それに対し、プロトン伝導性複合体膜を用いたDMFCのOCVは、経時変化がわずかであり、プロトン伝導性複合体膜ではメタノールのクロスリークが阻止されていることがわかる。
図7は、プロトン伝導性複合体膜を用いたDMFCの出力特性を示す電流―電圧曲線である。この結果から、出力電圧0ボルト(短絡状態)において、約100mA/cm2の電流密度が得られることがわかった。
実施例2
次に、実施例1と同様に、先願発明に基づいて合成したフラーレンプロトン伝導体ポリマーを用いるものの、本発明の第2の製造方法に基づいてプロトン伝導性複合体を作製し、このプロトン伝導性複合体膜を用いてDMFCを構成した例について説明する。
<プロトン伝導性複合体の作製とその性能>
フラーレンプロトン伝導体ポリマー0.1gとポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重合体0.1gを乳鉢で均一に混合した後、温度160℃、圧力70kgf/cm2で10分間ホットプレスすることにより、均一なプロトン伝導性複合体膜の成型体を作製した。得られた膜の厚みは30μmであった。
実施例1と同様に、得られたプロトン伝導性複合体膜は99.8%のメタノール中で安定であることを確認した。また、メタノールの膜透過性の測定結果から、加圧成型法より作製したプロトン伝導性複合体膜のメタノール透過係数は5.1×10-9cm2/secであった。
また、相対湿度100%の雰囲気ガス中における、水分の吸蔵による質量増加率は、実施例1で作製したプロトン伝導性複合体膜とほぼ同じであった。
上記の結果から、実施例2で作製したプロトン伝導性複合体膜は、実施例1で作製したプロトン伝導性複合体膜と同様に、水またはメタノールに対する遮断性は高いと考えられる。
得られた膜の伝導度を複素インピーダンス法により測定した。室温、相対湿度約50%において、伝導度が5×10-4Scm-1であった。更に、水とメタノールのモル比が1:1のメタノール水溶液と接触させた場合は、6.0×10-3Scm-1であった。これは膜厚を30μmとする場合は、1cm2あたりの膜抵抗0.5Ωに相当し、実用化に向け十分な伝導度が得られたと考えられる。
<DMFCの作製>
実施例1と同様にしてMEAを作製し、図5のDMFCシステムに組み込み、温度25℃の条件下で、MEAの燃料電極(アノード)側にメタノールと水のモル比が1:1のメタノール水溶液を供給し、酸素電極(カソード)側に空気を供給して、DMFCとして動作させた。
OCVは、経時変化がほとんどなく、約0.57Vで安定した値が得られ、実施例1とほぼ同じ値であった。これから、実施例2によるプロトン伝導性複合体膜でも、実施例1と同様、メタノールのクロスリークが阻止されていることがわかる。
図8は、プロトン伝導性複合体膜を用いたDMFCの出力特性を示す電流―電圧曲線である。この結果から、出力電圧0ボルト(短絡状態)において、約140mA/cm2の電流密度が得られることがわかった。実施例1で得られた電流密度100mA/cm2に比べ大きいのは、本実施例の膜のプロトン伝導性が実施例1の膜に比べて若干高いことが原因であると考えられる。
実施例3
次に、実施例1と2と同様に、先願発明に基づいて合成したフラーレンプロトン伝導体ポリマーを用いるものの、本発明の第3の製造方法に基づいてプロトン伝導性複合体を作製し、この複合体膜を用いてDMFCを構成した例について説明する。
<プロトン伝導性複合体の作製とその性能>
ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重合体1gを、N-メチルピロリドン(NMP)10gを溶媒として60℃にて10分間加熱して溶解させた。得られた溶液をガラス板上にキャストした後、25℃の水浴に投入してポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重合体の多孔質膜を作製した。多孔質膜中に残存するNMPを更に除去するため、続いて100℃の水浴に投入し、30分間攪拌した。その後、60℃の真空乾燥機内で終夜溶媒を除去することにより、多孔質膜を得た。
得られた多孔質膜の断面の走査電子顕微鏡(SEM)観察を行ったところ、膜厚は約42μmで、直径約1μmと直径約10μmの2種類の空孔が多数存在していることがわかった。膜の密度から求めた空孔率は約60〜75%であった。
また上記の多孔質膜中に含浸させるため、フラーレンプロトン伝導体ポリマー0.1gを、質量比が水:エタノール:テトラヒドロフラン(THF)=2.5:1:1である混合溶媒1gに溶解させた。この溶液に上記多孔質膜を浸漬し、60℃で加熱しながら真空脱気を行った。次にフラーレンプロトン伝導体ポリマーを含む溶液を含浸させた多孔質膜を溶液から引き上げ、溶媒を蒸発させた。
この後、さらに150℃、圧力30kgf/cm2で5分間ホットプレスすることにより、緻密なプロトン伝導性複合体膜を得た。得られた膜の厚みは30μmであった。
実施例1又は2と同様に、得られたプロトン伝導性複合体膜は99.8%のメタノール中で安定であることを確認した。また、メタノールの膜透過性の測定結果から、加圧成型法より作製したプロトン伝導性複合体膜のメタノール透過係数は4.7×10-9cm2/secであった。
更に、相対湿度100%の雰囲気ガス中における、水分の吸蔵による質量増加率は、実施例1又は2で作製したプロトン伝導性複合体膜とほぼ同じであった。
上記の結果から、実施例3で作製したプロトン伝導性複合体膜は、実施例1又は2で作製したプロトン伝導性複合体膜と同様に、水またはメタノールに対する遮断性が高いと判断できる。
このことから、作製したプロトン伝導性複合体膜は実施例1又は2と同じように、水またはメタノールに対する遮断性が高いと判断できる。
得られた膜の伝導度を複素インピーダンス法により測定した。室温、相対湿度約50%において、この膜の伝導度は3.0×10-4Scm-1であった。更に、水とメタノールのモル比が1:1のメタノール水溶液と接触させた場合は、伝導度が4.3×10-3Scm-1であった。これは膜厚が30μmである場合は、1cm2あたりの膜抵抗は0.7Ωとなり、実用化に向け十分な伝導度が得られたと考えられる。
<DMFCの作製>
更に、実施例1又は2と同様にしてMEAを作製し、図5のDMFCシステムに組み込み、温度25℃の条件下で、MEAの燃料電極(アノード)側にメタノールと水のモル比が1:1のメタノール水溶液を供給し、酸素電極(カソード)側に空気を供給して、DMFCとして動作させた。
OCVは、経時変化がほとんどなく、約0.58Vで安定した値が得られ、実施例1又は2とほぼ同じ値であった。これから、実施例3によるプロトン伝導性複合体膜でも、実施例1又は2と同様、メタノールのクロスリークが阻止されていることがわかる。
図9は、プロトン伝導性複合体膜を用いたDMFCの出力特性を示す電流―電圧曲線である。この結果から、出力電圧0ボルト(短絡状態)において、約125mA/cm2の電流密度が得られることがわかった。実施例1で得られた電流密度100mA/cm2に比べ大きいのは、本実施例の膜のプロトン伝導性が実施例1の膜に比べて若干高いことが原因であると考えられる。
実施例4
次に、実施例1と2と同様に、先願発明に基づいて合成したフラーレンプロトン伝導体ポリマー(図11)を用い、前記高分子材料として前記ポリイミド類を用いてプロトン伝導性複合体を作製し、この複合体膜を用いてDMFCを構成した例について説明する。
<プロトン伝導性複合体の作製とその性能>
ポリイミドを、N-メチルピロリドン(NMP)溶液に分散させ、ポリイミド濃度が8質量%の溶液を作製した。次いで、このポリイミド溶液にフラーレンプロトン伝導体ポリマーを混合し、均一に分散させた。このとき、フラーレンプロトン伝導体ポリマーとポリイミドの質量比が1:1となるように調整した。得られた溶液をガラス板(又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート)上にドクターブレード法によってキャストした後、80℃で乾燥することにより、本発明に基づくプロトン伝導性複合体を得た。
得られたプロトン伝導性複合体の膜厚はキャストする溶液の量によって制御でき、本実施例では約41μmであり、靭性、可撓性に優れていた。また、この複合体をメタノール水溶液中に1週間浸漬したが、見た目の変化はなく、安定性に優れていた。
得られた複合体を用い、交流インピーダンス法によってプロトン伝導率を測定した。測定に際しては、まず、上記のようにして作製したプロトン伝導性複合体の両面を直径4mmの金板で挟み、相対湿度60%、25℃に保った恒温恒湿槽に配し、これに10MHzから1Hzまでの交流電圧(振幅10mV)を印加し、各周波数における複素インピーダンスを測定した。結果を図12に示す。図12から、このプロトン伝導率を算出したところ、相対湿度60%で6.1×10-4Scm-1であった。この値は、実用的な発電が十分に可能なプロトン伝導度であると判断できる。
実施例5
プロトン伝導体ポリマーは実施例4と同様のものを用い、前記高分子材料としてポリイミドからなる多孔質膜を用いた。なお、この多孔質膜の膜厚は30μm、空孔率60%、平均孔径0.5μmとした。
ポリイミドからなる多孔質膜の細孔内にプロトン伝導体ポリマーを充填させるため、水やエタノール等のポリイミドが溶解しない溶媒にプロトン伝導体ポリマーを分散させた。そして、この溶液に多孔質膜を浸漬し、60℃で加熱しながら真空脱気を行った。次いで、徐々に溶媒を除去して溶液濃度を高め、更に真空脱気を行った。なお、この操作を溶媒が乾固するまで繰り返し行った。次に、膜の表面に堆積したプロトン伝導体ポリマーを取り除くことにより、多孔質膜の細孔内にプロトン伝導体ポリマーを充填してなる、本発明に基づくプロトン伝導性複合体を作製した。
得られた複合体を用い、交流インピーダンス法によってプロトン伝導率を測定した。測定に際しては、まず、上記のようにして作製したプロトン伝導性複合体の両面を直径4mmの金板で挟み、相対湿度60%、25℃に保った恒温恒湿槽に配し、これに10MHzから1Hzまでの交流電圧(振幅10mV)を印加し、各周波数における複素インピーダンスを測定した。結果を図13に示す。図13から、このプロトン伝導率を算出したところ、相対湿度60%で7.9×10-4Scm-1であった。この値は、実用的な発電が十分に可能なプロトン伝導度であると判断できる。
以上、本発明を実施の形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることは言うまでもない。
本発明は、イオン伝導体膜が対向電極間に挟持され、電気化学反応部を構成する、燃料電池やセンサーなどの電気化学デバイスに適用でき、とりわけ、膜の水分管理のためのシステムを簡素化して、燃料電池等の設備コストや運転コストをコストダウンしたり、従来のプロトン伝導膜では実現が難しいダイレクトメタノール燃料電池等を構成するのに、最適に用いられる。
本発明の実施例1によるプロトン伝導性複合体膜とNafion膜とを、それぞれメタノール水溶液中に浸漬した場合の質量増加率を示すグラフである。 同、プロトン伝導性複合体膜とNafion膜とのメタノール透過性を示すグラフである。 同、雰囲気ガス中の相対湿度の増加による、プロトン伝導性複合体膜とNafion膜との質量増加率を示すグラフである。 本発明の実施例1によるプロトン伝導性複合体膜における、高分子材料の質量分率と、メタノールの透過係数およびプロトン伝導度との関係を示すグラフである。 本発明の実施例1〜3で作製したDMFCの構成を示す概略断面図(a)とMEA拡大断面図(b)である。 本発明の実施例1によるプロトン伝導性複合体膜とNafion膜とをそれぞれ用いたDMFCの開放電圧の経時変化を示すグラフである。 同、プロトン伝導性複合体膜を用いたDMFCの出力特性を示すグラフである。 本発明の実施例2によるプロトン伝導性複合体膜を用いたDMFCの出力特性を示すグラフである。 本発明の実施例3によるプロトン伝導性複合体膜を用いたDMFCの出力特性を示すグラフである。 先願発明に基づくフラーレンプロトン伝導体ポリマーの模式化した構造を示す説明図である。 先願発明に基づくフラーレンプロトン伝導体ポリマーの模式化した構造を示す図である。 本発明の実施例4によるプロトン伝導性複合体のプロトン伝導率を導くグラフである。 本発明の実施例5によるプロトン伝導性複合体のプロトン伝導率を導くグラフである。
符号の説明
11…酸素電極、12…プロトン伝導膜、13…燃料電極、
14…膜−電極接合体(MEA)、15…燃料供給部、16…酸素供給部、
17…セル上半部、18…セル下半部、19…燃料供給管、20…酸素(空気)供給管、21…Oリング、22…外部回路

Claims (10)

  1. プロトン解離性の官能基を有するカーボンクラスターと、水及び/又はアルコール分子等の液体分子を透過しにくい高分子材料とが混合されてなるプロトン伝導性複合体であって
    前記カーボンクラスターは、プロトン解離性の官能基を有する連結基を介して複数の カーボンクラスター単量体が互いに連結されてなるカーボンクラスター重合体であり、
    前記高分子材料は、ポリフッ化ビニリデン又はその共重合体、又はポリイミドからな り、
    この高分子材料の混合比率が15質量%を超え、95質量%以下である、
    プロトン伝導性複合体。
  2. 前記共重合体がフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロペンとの共重合体である、請求項に記載したプロトン伝導性複合体。
  3. 前記ポリイミドが多孔質体であり、この細孔内に前記カーボンクラスター重合体が充填されている、請求項に記載したプロトン伝導性複合体。
  4. 前記連結基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1つの基を有する、請求項に記載したプロトン伝導性複合体。
  5. 前記カーボンクラスターが、球状炭素クラスター分子Cn(n=36、60、70、76、78、80、82、84等、通称フラーレン)からなる群の中から選ばれた少なくとも1種である、請求項1に記載したプロトン伝導性複合体。
  6. 前記プロトン解離性の官能基が−XH(Xは2価の結合手を有する任意の原子もしくは原子団である。)で表される官能基である、請求項1に記載したプロトン伝導性複合体。
  7. 前記プロトン解離性の基が、ヒドロキシル基−OH、スルホン酸基−SO2OH、カルボキシル基−COOH、ホスホノ基−PO(OH)2、リン酸二水素エステル基−O−PO(OH)2、ホスホノメタノ基>CH(PO(OH)2)、ジホスホノメタノ基>C(PO(OH)2)2、ホスホノメチル基−CH2(PO(OH)2)、ジホスホノメチル基−CH(PO(OH)2)2、ホスフィン基−PHO(OH)、−PO(OH)−、及び−O−PO(OH)−からなる群の中から選ばれた1種以上の基である、請求項に記載したプロトン伝導性複合体。
  8. 請求項1〜のいずれか1項に記載した前記プロトン伝導性複合体が対向電極間に挟持され、電気化学反応部を構成する電気化学デバイス。
  9. 電気化学反応を伴いながらエネルギー又は情報を取り出すことができる、請求項に記載した電気化学デバイス。
  10. 燃料電池として構成された、請求項に記載した電気化学デバイス。
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