JP2005093417A - プロトン伝導性複合体とその製造方法、並びに電気化学デバイス - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 プロトン解離性の官能基を有するカーボンクラスターと、水及び/又はアルコール分子等の液体分子を透過しにくい高分子材料とが混合されてなり、この高分子材料の混合比率が15質量%を超え、95質量%以下(特に、20質量%以上、90質量%以下)である、プロトン伝導性複合体。
【選択図】 図1
Description
2H2 → 4H+ +4e-
の反応により酸化され、燃料電極に電子を与える。生じた水素イオンH+(プロトン)はプロトン伝導膜を介して酸素電極へ移動する。
O2 +4H+ +4e- → 2H2O
のように反応し、水を生成するとともに、酸素電極から電子を取り込む。
以下、先願発明に基づいて合成したフラーレンプロトン伝導体ポリマーを用い、本発明の第1の製造方法に基づいてプロトン伝導性複合体を作製し、この複合体膜を用いてDMFCを構成した例について説明する。
カーボンクラスターの例としてC60フラーレンを用い、連結剤分子の例としてI(CH2)kIを用い、イオン解離性の官能基の例としてスルホン酸基を用いて、フラーレンプロトン伝導体ポリマーを合成する反応を説明すると次のようである。
C60 + I-(CH2)k-I → C60-(CH2)k-I
C60-(CH2)k-I +C60 → C60-(CH2)k-C60
一方、連結剤分子の残基が、もう1つのヨウ素原子を未反応のまま残して次の工程に進むと、ヨウ素基はスルホン酸基などのプロトン解離性の基によって置換される。
三つ口フラスコに1g(1.39mmol)のフラーレンC60 を入れ、容器内の空気や水分を乾燥窒素で完全に置換した後、1,2-ジメトキシエタン(DME)約150mlを加えた。次に、あらかじめ調製しておいた、フラーレンの40倍当量のナトリウムナフタレニト(触媒;電子供給源)を溶かしたDME溶液を、キャヌラを用いて徐々に加え、2時間攪拌を続けた。
試料(A)1gを N-メチルピロリドン(NMP)50mlに分散させた後、水浴で冷却しながら、亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3 15.12gを水50mlに溶かした水溶液に滴下した。その後、室温又は80℃で1時間から72時間攪拌を続け、試料(A)にスルホン酸基を導入した。反応後、反応液を吸引ろ過して、スルホン酸基を導入した試料(B)( -[-C60(CH(SO3Na)2)m-CH(SO3Na)-]n- )をろ別し、水で洗浄した後、60℃で乾燥した。この結果、0.72gの試料(B)を回収した。
図10は、模式化したフラーレンプロトン伝導体ポリマーの構造を示す説明図である。フラーレン同士は、スルホメチレン基(1個の水素原子がスルホン酸基で置換されたメチレン基)−CH(SO3H)−によって連結され、ポリマーの骨格を形成する。スルホメチレン基の数が2のフラーレンは、分子鎖が左から右へつながるだけの単純な鎖状構造を形成するが、スルホメチレン基の数が3以上のフラーレンは、図10の中央のフラーレンのように、1個のフラーレンから分子鎖が3方向以上にのびる分岐構造を形成する。従って、1個のフラーレンに結合しているスルホメチレン基の数を平均i個とすると、iが2を超えるポリマーは、単純な鎖状分子ではなく、三次元的に連結した構造をもつ分子である。このように、iの値はポリマーの骨格構造と密接な関係がある。
フラーレンプロトン伝導体ポリマー0.1gを N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)に分散させた後、0.1gのポリフッ化ビニリデン或いはポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重合体を加え、60℃で加熱しながら完全に溶解させた。即ち、プロトン伝導体ポリマーとバインダー高分子材料との質量比は1:1である。
真空乾燥で得られたプロトン伝導性複合体膜を99.8%のメタノール中に3か月間浸漬しでも、見た目の変化がなく、安定であることを確認した。一方、比較例として市販のパーフルオロスルホン酸系ポリマーであるNafion111を99.8%のメタノール中に浸漬したところ、24時間で完全に溶解した。
[(W2−W1)/W1]×100(%)
但し、W1は溶液に浸漬する前の膜の質量であり、W2は24時間溶液中に浸漬した後の膜の質量である。
図2は、プロトン伝導性複合体膜(膜厚は32μm。)と市販Nafion膜(膜厚は27μm。)のメタノール透過性を示すグラフである。測定方法は、Vincenzo Tricoli,“Proton and Methanol Transport in Poly(perfluorosulfonate) Membranes Containing Cs+ and H+ Cations”,J. Electrochem. Soc., Vol.145, No.11, p.3798, (1998)を参考にした。
CB(t) = CA×(A/L)×(P/V)×(t−t0)
ここで、CB(t)とCAは、膜を挟んだ両側の容器中のメタノール濃度で、CB(t)は時間の関数、CAは定数である。AとLは、測定に用いた膜の面積と厚みであり、Vは容器VB中の溶液の体積である。tは測定のサンプリング時間であり、t0は膜中メタノールの拡散係数に関係ある定数である(to=L2/6D;Dは拡散係数である。)。
図3は、室温において、雰囲気ガス中の相対湿度が0%から100%まで増加する際の、プロトン伝導性複合体膜とNafion膜の質量増加率をそれぞれ測定し、プロトン伝導性プロトン伝導性複合体膜とNafion膜の水分含有量を調べた結果である。
プロトン伝導性複合体膜の伝導度を複素インピーダンス法により測定した。室温、湿度約50%においては、伝導度が2×10-4Scm-1であった。更に、水とメタノールのモル比が1:1のメタノール水溶液と接触している状態では、伝導度が2.5×10-3Scm-1であった。これは膜厚が30μmの場合、1cm2 あたり1.2Ωの膜抵抗に相当する。この値は、実用的な発電が十分に可能な伝導度であると判断できる。
図4は、本実施例のプロトン伝導性複合体膜における、高分子材料の質量分率と、メタノールの透過係数およびプロトン伝導度(水とメタノールのモル比が1:1のメタノール水溶液と接触している状態での値)との関係を示すグラフである。
プロトン伝導性複合体膜を用いたDMFCを作製し、電池の開放電池電圧(OCV:電流が流れていないときの両極間の電位差)及び出力特性を調べた結果について説明する。
2CH3OH+2H2O→ 12H+ +2CO2+ 12e- (式1)
の反応によりメタノールが酸化され、燃料電極に電子を与える。生じた水素イオンH+はプロトン伝導膜を介して酸素電極へ移動する。
3O2 + 12H+ + 12e- → 6H2O (式2)
のように反応し、水を生成する。このとき、酸素は、酸素電極から電子を取り込み、還元される。
次に、実施例1と同様に、先願発明に基づいて合成したフラーレンプロトン伝導体ポリマーを用いるものの、本発明の第2の製造方法に基づいてプロトン伝導性複合体を作製し、このプロトン伝導性複合体膜を用いてDMFCを構成した例について説明する。
フラーレンプロトン伝導体ポリマー0.1gとポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重合体0.1gを乳鉢で均一に混合した後、温度160℃、圧力70kgf/cm2で10分間ホットプレスすることにより、均一なプロトン伝導性複合体膜の成型体を作製した。得られた膜の厚みは30μmであった。
実施例1と同様にしてMEAを作製し、図5のDMFCシステムに組み込み、温度25℃の条件下で、MEAの燃料電極(アノード)側にメタノールと水のモル比が1:1のメタノール水溶液を供給し、酸素電極(カソード)側に空気を供給して、DMFCとして動作させた。
次に、実施例1と2と同様に、先願発明に基づいて合成したフラーレンプロトン伝導体ポリマーを用いるものの、本発明の第3の製造方法に基づいてプロトン伝導性複合体を作製し、この複合体膜を用いてDMFCを構成した例について説明する。
ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重合体1gを、N-メチルピロリドン(NMP)10gを溶媒として60℃にて10分間加熱して溶解させた。得られた溶液をガラス板上にキャストした後、25℃の水浴に投入してポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロペン共重合体の多孔質膜を作製した。多孔質膜中に残存するNMPを更に除去するため、続いて100℃の水浴に投入し、30分間攪拌した。その後、60℃の真空乾燥機内で終夜溶媒を除去することにより、多孔質膜を得た。
更に、実施例1又は2と同様にしてMEAを作製し、図5のDMFCシステムに組み込み、温度25℃の条件下で、MEAの燃料電極(アノード)側にメタノールと水のモル比が1:1のメタノール水溶液を供給し、酸素電極(カソード)側に空気を供給して、DMFCとして動作させた。
次に、実施例1と2と同様に、先願発明に基づいて合成したフラーレンプロトン伝導体ポリマー(図11)を用い、前記高分子材料として前記ポリイミド類を用いてプロトン伝導性複合体を作製し、この複合体膜を用いてDMFCを構成した例について説明する。
ポリイミドを、N-メチルピロリドン(NMP)溶液に分散させ、ポリイミド濃度が8質量%の溶液を作製した。次いで、このポリイミド溶液にフラーレンプロトン伝導体ポリマーを混合し、均一に分散させた。このとき、フラーレンプロトン伝導体ポリマーとポリイミドの質量比が1:1となるように調整した。得られた溶液をガラス板(又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シート)上にドクターブレード法によってキャストした後、80℃で乾燥することにより、本発明に基づくプロトン伝導性複合体を得た。
プロトン伝導体ポリマーは実施例4と同様のものを用い、前記高分子材料としてポリイミドからなる多孔質膜を用いた。なお、この多孔質膜の膜厚は30μm、空孔率60%、平均孔径0.5μmとした。
14…膜−電極接合体(MEA)、15…燃料供給部、16…酸素供給部、
17…セル上半部、18…セル下半部、19…燃料供給管、20…酸素(空気)供給管、21…Oリング、22…外部回路
Claims (22)
- プロトン解離性の官能基を有するカーボンクラスターと、水及び/又はアルコール分子等の液体分子を透過しにくい高分子材料とが混合されてなり、この高分子材料の混合比率が15質量%を超え、95質量%以下である、プロトン伝導性複合体。
- 前記高分子材料が、少なくともポリフッ化ビニリデン又はその共重合体を含む、請求項1に記載したプロトン伝導性複合体。
- 前記共重合体がヘキサフルオロプロペンとの共重合体である、請求項2に記載したプロトン伝導性複合体。
- 前記高分子材料がポリイミド類である、請求項1に記載したプロトン伝導性複合体。
- 前記ポリイミド類が多孔質体であり、この細孔内に前記カーボンクラスターが充填されている、請求項4に記載したプロトン伝導性複合体。
- 前記カーボンクラスターが、カーボンクラスター単量体が連結基を介して互いに連結されてなるカーボンクラスター重合体である、請求項1に記載したプロトン伝導性複合体。
- 前記連結基は、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基又はこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1つの基を有する、請求項6に記載したプロトン伝導性複合体。
- 前記連結基にプロトン解離性の官能基が含まれる、請求項6に記載したプロトン伝導性複合体。
- 前記カーボンクラスターが、球状炭素クラスター分子Cn(n=36、60、70、76、78、80、82、84等、通称フラーレン)からなる群の中から選ばれた少なくとも1種である、請求項1又は6に記載したプロトン伝導性複合体。
- 前記プロトン解離性の官能基が−XH(Xは2価の結合手を有する任意の原子もしくは原子団である。)で表される官能基である、請求項1又は8に記載したプロトン伝導性複合体。
- 前記プロトン解離性の基が、ヒドロキシル基−OH、スルホン酸基−SO2OH、カルボキシル基−COOH、ホスホノ基−PO(OH)2 、リン酸二水素エステル基−O−PO(OH)2 、ホスホノメタノ基>CH(PO(OH)2)、ジホスホノメタノ基>C(PO(OH)2)2 、ホスホノメチル基−CH2(PO(OH)2)、ジホスホノメチル基−CH(PO(OH)2)2 、ホスフィン基−PHO(OH)、−PO(OH)−、及び−O−PO(OH)−からなる群の中から選ばれた1種以上の基である、請求項10に記載したプロトン伝導性複合体。
- 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載したプロトン伝導性複合体の製造方法であって、前記カーボンクラスターと前記高分子材料とを溶媒に溶解又は分散させて混合液を作製する工程と、前記混合液を基板に被着させる工程と、前記溶媒を蒸発させる工程とを有する、プロトン伝導性複合体の製造方法。
- 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載したプロトン伝導性複合体の製造方法であって、前記カーボンクラスターと前記高分子材料とを粉末状に混合して混合粉末を作製する工程と、前記混合粉末を膜状に加圧成形する工程とを有する、プロトン伝導性複合体の製造方法。
- 前記加圧成形工程を温度130℃〜180℃で行う、請求項13に記載したプロトン伝導性複合体の製造方法。
- 前記加圧成形工程を圧力7.5kgf/cm2〜300kgf/cm2で行う、請求項13に記載したプロトン伝導性複合体の製造方法。
- 請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載したプロトン伝導性複合体の製造方法であって、前記高分子材料を第1の溶媒に溶解又は分散させて第1の混合液を作製する工程と、前記第1の混合液を基板に被着する工程と、前記第1の溶媒を蒸発させて前記高分子材料のみからなる多孔質膜を作製する工程と、前記カーボンクラスターを第2の溶媒に溶解又は分散させて第2の混合液を作製する工程と、前記多孔質膜に前記第2の混合液を含浸させる工程と、前記第2の溶媒を蒸発させる工程とを有する、プロトン伝導性複合体の製造方法。
- 前記第2の溶媒を蒸発させる工程の後、前記プロトン伝導性複合体を加圧成形する工程を行う、請求項16記載したプロトン伝導性複合体の製造方法。
- 前記加圧成形工程を温度130℃〜180℃で行う、請求項17に記載したプロトン伝導性複合体の製造方法。
- 前記加圧成形工程を圧力7.5kgf/cm2〜300kgf/cm2で行う、請求項17に記載したプロトン伝導性複合体の製造方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載した前記プロトン伝導性複合体が対向電極間に挟持され、電気化学反応部を構成する電気化学デバイス。
- 電気化学反応を伴いながらエネルギー又は情報を取り出すことができる、請求項20に記載した電気化学デバイス。
- 燃料電池として構成された、請求項20に記載した電気化学デバイス。
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