JPS641564B2 - - Google Patents

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JPS641564B2
JPS641564B2 JP9933882A JP9933882A JPS641564B2 JP S641564 B2 JPS641564 B2 JP S641564B2 JP 9933882 A JP9933882 A JP 9933882A JP 9933882 A JP9933882 A JP 9933882A JP S641564 B2 JPS641564 B2 JP S641564B2
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JP
Japan
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fiber
fibers
acs
tri
drying
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JP9933882A
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JPS584813A (ja
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Takashi Fujiwara
Shuji Kajita
Tetsuo Matsushita
Seiichi Manabe
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Publication of JPS641564B2 publication Critical patent/JPS641564B2/ja
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Description

【発明の詳細な説明】
本発明は、改良されたポリ−p−フエニレンテ
レフタルアミド(以下、PPTAと略称する。)繊
維及びその製造法に関し、さらに詳しくは、高強
度にしてかつ特にゴム類の補強に用いられて優れ
た耐疲労性を示すPPTA繊維及びその製造法に関
する。 PPTAは古くから知られるポリマーであり、そ
の剛直な分子構造により、耐熱性及び機械的性質
に優れた繊維が得られることが期待されていた。
しかしながら、PPTAは有機溶剤として難溶であ
るため、シプリアニは濃硫酸を溶剤として湿式紡
糸する基本的方法を提案した(特公昭38−18573
号公報)が、シプリアニの方法自体は工業化され
るに至らなかつた。一方、剛直性高分子を溶媒に
溶解させた際、ある重合度以上、ある濃度以上、
ある温度条件下で液晶を構成することは古くから
理論的にも実験的にも明らかにされていた(P.J.
フローリー;Proc.Roy.Soc.、A234、73(1956))。
このような液晶状態にある光学的異方性を示す高
分子溶液をノズルから吐出させ、ノズル内部で生
じる液晶の配向を出来るだけ乱すことなく凝固で
きれば、高強度、高ヤング率を有し、高度に分子
鎖が配向した繊維が製造可能であることは容易に
期待される。実際、クウオレクは、これらの剛直
で直線的な分子構造を持つ芳香族ポリアミド類の
液晶状態にある濃厚溶液の湿式紡糸方法を提案
(特公昭50−8474号公報)し、再度脚光を浴びる
に至つた。しかし、クウオレクの方法によつて
も、有用な高い強度を得るためには、紡糸された
ままの繊維をさらに熱緊張処理する必要があり、
この熱緊張は必然的に強度の向上と共にヤング率
の上昇をもたらし、一方において、伸度を低下せ
しめる。従つて、この繊維をタイヤの如きゴム類
の補強に用いるには、耐疲労性の点で決して満足
できるものではなかつた。 ブレーズは、光学異方性ドープのうち高められ
た濃度のドープを空中吐出湿式紡糸することによ
り、紡糸したままの状態の繊維が特別な微細構造
を示し、これによつて高強度を発現させることを
提案(特開昭47−39458号公報)し、それがゴム
類の補強にも適したものであることを紹介してい
る。 しかし、本発明者らの一部は、このブレーズの
繊維の微細構造の特定が結晶部分のみに依存する
ため真にその目的とする効果を導くものではな
く、又、当業者が上記特許公報の開示を追試して
も物性とブレーズの開示した微細構造の関係が正
確に再現できない点に不満を抱き、種々検討の結
果、より合目的には、結晶部分のみに注目すする
ブレーズの考えは当を得たものではなく非晶部分
こそ重要であるとの知見を得た。この知見に基づ
き、PPTA繊維の非晶構造を含めた微細構造と繊
維特性との相関性について研究を進めた結果本発
明に到達した。 一方、本発明者らの他の一部は、繊維製造方法
と繊維特性の関係について探究し、既に、これら
の剛直で直線的構造をもつポリマーの光学的異方
性ドープの湿式紡糸について、二、三の提案を行
なつている。例えば、芳香族ポリアミドの光学異
方性ドープよりの湿式紡糸について、凝固された
後の水洗仕上工程を無緊張状態で行なう方法を提
案し、この方法によつて、伸度の低下を防ぎ、ゴ
ム類の補強に用いて耐疲労性の優れた繊維が提供
出来ることを紹介した(特開昭50−154522号公
報)。剛直で直線的な芳香族ポリアミドの典型例
であるPPTAは、良質なモノマーが入手し易く、
工業的に用いやすい利点はあるが、一方繊維を製
造する上で、配向しやすいことや結晶化しやすい
ことから、特開昭50−154522号公報に開示された
方法では繊維の微細構造の熱固定が十分でないた
めか、ゴム類の補強に用いるに当つての必須の工
程である接着剤処理、ゴムの加硫等の後加工工程
でのわずかの緊張及び/又は熱によつても伸度低
下等の物性変化がおこりやすく、実際にゴム類の
補強に用いるに於いて耐疲労性の点で必ずしも満
足できないことが判明した。 また、特開昭50−160517号公報において、無緊
張状態で、水洗、乾燥、熱処理することによつて
熱固定した繊維を製造することを紹介した。しか
し、この技術をPPTAに適用したとき、繊維の微
細構造、例えば結晶の大きさ、結晶化度、結晶内
の分子鎖の配向、非晶部の分子鎖の配向等の制御
が非常に難しく、従つて繊維の強度、伸度やヤン
グ率等の機械的性質がほぼ同等であつても、ゴム
類の補強に用いるに於いての耐疲労性の点で非常
にバラツキの大きい繊維しか製造しえないことが
判明した。 強度およびヤング率が高いという優れた機械的
性質を損なうことなく、特開昭47−39458号公報
等で明らかにされたPPTA繊維を改良して耐疲労
性にも優れた繊維を製造する技法は2つに大別さ
れる。即ち、化学構造自体を変化させる立場と、
化学構造を変えることなく繊維の微細構造を変え
る立場とである。前者の立場から共重合によつて
改良した例も報告されている(例えば特開昭49−
116322号公報、矢吹ら;繊雑学会誌34 T187
(1978))が、工業的に実施する立場からみれば共
重合化による製造原価の大幅な上昇が避けられな
いという大きな欠点を有している。本発明は、後
者の立場に立つもので、特開昭50−154522号公報
や特開昭50−160517号公報にて本発明者らが先に
開示した製造法に改良を加えることによつて、特
別な微細構造をもち、特別に改良された耐疲労性
を示すPPTA繊維を製造することに成功した。 すなわち、本発明者らは、PPTA繊維の製造技
術のより詳細な研究と繊維の微細構造上の理論的
究明とを重ねた結果、緊張をかけずに水洗、乾燥
してPPTA繊維を製造する方法において、乾燥に
先立つて無緊張で水蒸気処理を施すこと、及び、
乾燥を或る特別に選定された条件下に行うことの
2点が、高強度、高ヤング率にして耐疲労性に優
れかつ熱又は緊張に対する安定性に優れたPPTA
繊維を製造する上で、意外にも非常に重要なポイ
ントであることを発見し、更にこのような方法で
製造された繊維が前述した従来公知の製造法では
実現しなかつた特異な微細構造を有していること
およびこのような特異な微細構造を有しているが
故に上述の優れた性質をもつていることを発見
し、本発明として完成させるに至つた。 即ち、本発明の第1は、 実質的にポリ−p−フエニレンテレフタルアミ
ドから成る繊維において、繊維軸の垂直方向に振
動する偏光による繊維の屈折率の勾配(TRIv
が0乃至0.07、繊維軸の平行方向に振動する偏光
による繊維の屈折率の勾配(TRIp)が−0.060乃
至−0.005であり、繊維軸の垂直方向に振動する
偏光による繊維の中心屈折率(Nvp)とX線回折
強度比(RIX)が下記(1)〜(4)式; Nvp≧−0.08(RIX)+1.672 (1) Nvp≦1.630 (2) RIX≧0.85 (3) RIX≦1.05 (4) を満足する範囲内にあり、且つ繊維の見掛けの微
結晶の大きさ(ACS(Å))と繊維の配向角(OA
(度))が下記(5)〜(8)式; OA≧0.04・(ACS)+16 (5) OA≧2・(ACS)−140 (6) OA≦0.04・(ACS)+26 (7) OA≦2・(ACS)−82 (8) を満足する範囲内にあることを特徴とする優れた
耐疲労性を有する繊維である。 上記第1の発明に係る繊維は、第2の発明、即
ち、固有粘度が少くとも5.1のポリ−p−フエニ
レンテレフタルアミドから実質的に成る重合体を
濃度98重量%以上の濃硫酸に少くとも12重量%の
濃度に溶解した異方性ドープを、空気中に押出し
た後に凝固層を通過させ、次いで凝固した繊維を
ネツトコンベヤー上に堆積させて、繊維に実質的
な緊張がかからない状態で硫酸の洗浄除去及び乾
燥を行なつて繊維を製造するに当り、硫酸を洗浄
除去した後、乾燥するに先立つて繊維を実質的に
緊張させずに少くとも100℃の飽和水蒸気中に30
秒〜30分保持し、次いで少くとも120℃でかつ450
℃以下の温度(℃)で、 250≦(温度)×(時間)0.08≦600 を満たす時間(秒)だけ乾燥させること特徴とす
る製造法によつて製造される。 本発明の繊維は、見掛けの微結晶の大きさ
(ACS(Å))と配向角(OA(度))が次の4つの
式 OA≧0.04・(ACS)+16 (5) OA≧2・(ACS)−140 (6) OA≦0.04・(ACS)+26 (7) OA≦2・(ACS)−82 (8) を満足する範囲で特徴づけられる特別の結晶部の
構造を有している。この範囲をわかりやすく示す
ために第1図を作成した。同図において、4つの
直線a,b,cおよびdは、それぞれ下記4つの
式に対応する。 (a) OA≧0.04・(ACS)+16 (b) OA≧2・(ACS)−140 (c) OA≦0.04・(ACS)+26 (d) OA≦2・(ACS)−82 このような結晶部の微細構造を有する本発明の
繊維は、従来公知の繊維、例えば特開昭47−
39458号公報に開示された繊維やケブラー(デユ
ポン社商標PPTA繊維といわれている。)として
上市されている繊維に比べて、比較的低い結晶部
の分子鎖の配向度をもつことと、比較的大きな見
掛けの微結晶の大きさをもつことで特徴づけら
れ、また特開昭47−43419号公報に開示された繊
維やケブラー−49(デユポン社商標、PPTA繊維
といわれている。)として上市されている繊維に
比べて相当に低い結晶部の分子鎖の配向度をもつ
ことで特徴づけられる。更に特開昭50−154522号
公報に開示された製造法によりえられる繊維に比
べて、比較的大きな見掛けの微結晶の大きさを持
つことで特徴づけられる。 本発明の繊維の比較的低い結晶部の分子鎖の配
向度は、洗浄から乾燥に至る工程が実質的に無緊
張下に行なわれ、かつ洗浄した後乾燥するに先立
つて水蒸気によつて無緊張湿熱処理されることと
密接に関連し、比較的大きな見掛けの微結晶の大
きさは、水蒸気処理に続く特別な乾燥条件の選択
に密度に関連している。これに反し、特開昭50−
160517号公報に開示された製造法では、乾燥に先
立つ無緊張水蒸気処理が行われないために、繊維
内のポリマー分子鎖の配向上の歪の緩和が不充分
であり、そのためか、繊維における結晶の成長が
大きすぎたりまた殆んど成長しなかつたりするこ
とが非常に多く、本発明の繊維のような適度な、
つまり比較的大きいが過度に大きくはない見掛け
の微結晶の大きさを持たせることが困難である。 上記した4つの式で規定された結晶部の構造を
有する、つまり比較的低めの結晶部の分子鎖の配
向度と比較的大きめの見掛けの微結晶の大きさと
が特別に組み合わされた微細構造を有しているこ
とが、高い強度、比較的大きめの伸度、高いヤン
グ率、高温曝露時の優れた寸法安定性や物性安定
性、優れた耐疲労性の繊維を保証する必要条件で
ある。 更に具体的に述べれば、まず OA≧0.04・(ACS)+16 (5) なる要件を満たさない繊維は、配向角(OA)が
過度に小さい即ち結晶部の分子鎖の配向が進みす
ぎているとを意味し、高強度、高ヤング率ではあ
るが、耐疲労性が極端に悪くなるという重大な欠
点をもつている。配向角はより好ましくは20゜以
上であり、更に好ましくは21゜以上である。 次に、 OA≧2・(ACS)−140 (6) なる要件を満たさない繊維は、ACS(見掛けの微
結晶の大きさ)が大きすぎるために、強度が小さ
くなり無論耐疲労性が悪くなる。 耐疲労性が非常に優れた繊維であるためには、
更に望ましくは OA≧2・(ACS)−120 であるべきである。 第3に、 OA≦0.04・(ACS)+26 (7) なる要件を満さない繊維は、OA(配向角)が大
きすぎる即ち結晶部の分子鎖の配向が少ないため
に、耐疲労性は良好であるが、強度とヤング率が
小さいという欠点がある。 第4に、 OA≦2・(ACS)−82 (8) なる要件を満さない繊維は、ACSが小さく結晶
性が低位であることを示し、このような繊維はヤ
ング率と耐疲労性が本発明の繊維に比べやや劣る
だけでなく、該繊維を高温例えば200℃程度に曝
したとき寸法の収縮がおこるとともに殊に緊張下
に曝したときには伸度低下をきたすという欠点が
存在する。このような欠点がより改善された繊維
は OA≦2・(ACS)−86 を満たすACSをもち、更に望ましくは OA≦2・(ACS)−90 である。 現在、工業生産されて上市されているデユポン
社のケブラーはPPTA繊維と言われ、製造ロツト
によつて変動するが、本発明者らの入手した範囲
に於いてその見掛けの微結晶の大きさは40Å〜47
Å、配向角は10゜〜17゜であり、タイヤコード等の
ゴム補強用途に主として用いられようとしている
が、本発明の繊維は、このケブラーに比べ、単繊
維デニール、構成本数、コード構造等同条件下の
比較に於いて、約3倍以上の耐疲労寿命を示す
(グツドイヤー法、チユーブ疲労試験法による)
ことからも、本発明の繊維の改良された効果が理
解されよう。 本発明の繊維が比較的大きな結晶化度をもちな
がら何故改良された耐疲労性を示すのか、また、
比較的低い結晶部の分子鎖の配向性をもちなが
ら、高い強度とヤング率を示すのか、これらの意
外な結果を解明するには、結晶部の微細構造のみ
を反映したパラメーターであるOAとACSのみで
は、十分に説明できず、本発明の特別に改良され
た耐疲労性の理由の説明には繊維の無定形領域の
ポリマー分子鎖の微細構造を反映したパラメータ
ーによらなければならない。 このようなパラメーターとして、結晶部の大き
さ及び分子鎖の配向に関する総合的なパラメータ
ーであるX線回折強度比(RIX)と関係づけられ
た特別な範囲の繊維軸の垂直方向に振動する偏光
による繊維の中心屈折率(Nvp)と、特定範囲の
2種類の屈折率勾配(TRIv及びTRIp)とによつ
て、本発明の繊維が特徴づけられる。即ち、本発
明の繊維は、繊維軸に垂直方向に振動する偏光の
繊維中心部における屈折率Nvpと、結晶部のパラ
メーターであるRIXとが、 Nvp≧−0.08・(RIX)+1.672 (1) Nvp≦1.630 (2) RIX≧0.85 (3) RIX≦1.05 (4) を満足することで特徴づけられる。これをわかり
やすくするために第2図に図示した。同図におい
て、4つの直線e,f,gおよびhはそれぞれ下
記4つの式に対応する。 (e) Nvp=−0.08・(RIX)+1.672 (f) Nvp=1.630 (g) RIX=0.85 (h) RIX=1.05 (1)式で示される条件を満足する繊維の製造法を
公知の技術から予測することは難しい。何故なら
ば、Nvpの値は、結晶部及び無定形領域内部のポ
リマー分子鎖(特に分子鎖軸)の配向の程度と特
定の分子鎖に垂直な軸(特に結晶b軸)のラジア
ル配向の程度とに依存すると考えられるが、極限
繊維とされるPPTA繊維ではNvpの値は化学構造
で定まる一種の固有値であると考えられ、この値
の絶対値自体は大幅には変動し得ないものと考え
られていたからである。実際、特開昭47−39458
号公報に開示された繊維は結晶領域内の分子鎖は
ほとんど100%近く繊維軸方向に配向し、Nvp
変動が小さい。この場合、理論的にはNvpの値は
1.62(結晶b軸がラジアル方向に無秩序)〜1.51
(結晶b軸がラジアル方向に完全配向)の間に存
在するはずである。ただし、ここで主屈折率の理
論値としてN〓=1.5138、N〓=1.7334、N〓=2.04を
採用した(矢吹ら;繊維学会誌32T55(1976)参
照。ただし、本発明者らが、後述のNpを測定し
た結果ではN〓は2.07又はそれ以上である。)。市販
されているPPTA繊維(ケブラーやケブラー−
49)及び特開昭47−39458号公報の方法で製造し
た繊維は全てNvpが1.585未満であるか、又はRIX
が0.85未満であるところの、いわば結晶としての
完全度が十分でない結晶領域をもつたものでしか
ないか、又は/及びb軸のラジアル方向への配向
が過度に進んだ繊維である。 上式(1)の式を満たす繊維は、繊維の製造におけ
る洗浄、乾燥工程を無緊張下に行なうことによつ
て実現され、耐疲労性に優れているという特徴と
密接に関連している。このような好ましい特徴
は、Nvpが少くとも1.605であるときにより一層発
揮され、更に少くとも1.610のNvpをもつた繊維の
ときその耐疲労性が際立つたものになる。 上式(1)〜(4)で特徴づけられる本発明の繊維は、
結晶b軸及び無定形領域における結晶b軸に対応
する軸のラジアル方向への配向性が比較的小さ
く、かつ無定形領域においてポテンシヤルエネル
ギー的に安定なコンホメーシヨンをとつた分子鎖
より成つており、更に結晶部が比較的高い結晶化
度と高い結晶の完全さとを示すという特異な微細
構造をもつていると解釈される。無定形領域の分
子鎖のこのような特徴が、優れた耐疲労性と高温
曝露時の寸法ならびに物性安定性の発現に寄与す
ると考えられる。 上記の式(2)の限定即ちNvp≦1.630を逸脱すると
繊維の強度及びヤング率が減少する。一般的に
は、Nvpの増大に伴なつて強度及びヤング率が減
少する傾向にある。 上記の式(3)で限定された本発明の繊維は比較的
高い結晶化度と結晶の完全さを有する特徴をも
つ。特開昭50−154522号公報に開示された方法で
製造された繊維はRIX<0.85の低い結晶化度と結
晶の完全さしかもたないため、高温時の寸法や物
性の安定性に欠ける。RIXは好ましくは0.90以上
である。RIX≧0.85の比較的大きな結晶化度と結
晶の完全さを備えた繊維は、緊張のない状態で、
水蒸気処理され、ついで特別に選定された乾燥を
行なうことによつて好便に製造される。 このような特別な方法によれば、RIX≦1.05と
いう上記(4)式によつて制限された範囲を保つこと
が出来、過度の結晶化度と結晶の完全さの増加に
よる強度や耐疲労性の極端な低下という好ましく
ない事態から回避される。 RIXの物理的意味は理論的には必ずしも明瞭で
はないが、しかしRIXと物性値(特にヤング率や
耐疲労性)との相関性は、ACSのそれに比べて
より密接である。本発明者らは、RIXが結晶の成
長方向の異方性、乱れの異方性、結晶領域内の分
子鎖のコンホメーシヨン及び分子鎖の充填状態の
変動(例えば高柳らのいう結晶型、型(第26
回高分子討論会予稿集(1977))を反映したパラ
メーターと理解している。熱処理により、一般に
RIXは増大するが、これは上記の複雑な構造変化
を反映しているものと考えられる。 本発明の繊維は、黄リン8重量部、ヨウ化メチ
レン1重量部及び硫黄1重量部からなる混合物を
封入剤として用い、この他は後述するNvpやTRIv
の測定と同じ方法により繊維軸の平行方向に振動
する偏光による干渉顕微鏡観察を行なうことがで
きる。このようにして測定したNpは、主に結晶
部及び無定形領域部を総合したポリマー分子鎖の
配向を反映したパラメーターであると解釈される
が、本発明の繊維は特異なNpをもつていること
がわかつた。即ち、Npの繊維中心における値
Npp、Npの繊維断面方向の勾配TRIpが特別な範
囲にあることが見出された。具体的に言えば、本
発明の繊維は、Nppが2.11以上、好ましくは2.12
以上であるのに対し、従来公知の繊維又は従来公
知の方法で製造した繊維は高々2.10である。これ
は、本発明の繊維が、市販されているPPTA繊維
(ケブラーやケブラー−49)に比べ、繊維中心部
における分子鎖の配向度が大きいためと考えられ
る。本発明の繊維と従来公知の繊維とは、TRIp
の値において、その差異が更に明確にできる。市
販のPPTA繊維(ケブラーやケブラー−49)や特
開昭47−39458号公報に開示されたPPTA繊維は
一般に正又は0のTRIp値を亭をとるのに対し、
本発明の繊維は負のTRIp値をとる。このような
TRIp値は、繊維中心におけるポリマー分子鎖の
配向度が比較的大きいものであることを反映して
いると考えられ、かくの如き本発明の繊維の微細
構造上の特徴は、本発明の繊維が優れた耐疲労性
を有するという物性上の特徴と関連していること
が判明した。TRIp値が−0.060乃至−0.005のとき
耐疲労性に優れた繊維となり、−0.040乃至−
0.010のTRIp値のとき、耐疲労性が一段と優れた
ものになる。本発明の繊維と従来公知の繊維との
差異をより明確に示すために第5図を添付する。
第5図は、繊維軸の平行方向に振動する偏光によ
り、繊維を干渉顕微鏡で横方向から観察したとき
にみられる干渉縞の模式図である。(A)は、特開昭
47−43419号公報に開示された繊維やケブラー−
49により観察され、W形の干渉縞をもつているこ
とに特徴があり、TRIp値は正の値をもつている。
(B)は、特開昭47−39458号公報、特開昭50−
154522号公報に開示された繊維又はケブラーによ
り観察され、U字形(より厳密には楕円形状)の
干渉縞をもつていることに特徴があり、TRIp
はほぼ0である。(C)は、本発明の繊維により観察
され、V字様の干渉縞に特徴があり、TRIp値は
負の値をもつ。 もし、分子鎖軸方向が完全に繊維軸の方向と一
致しているならば、結晶b軸及び無定形領域内の
結晶b軸に対応する軸のラジアル方向への配向の
程度は、Nvの値のラジアル方向に沿つた勾配
(TRIv)で表現できる。特開昭47−39458号公報
では結晶のb軸のラジアル方向への配向をLCO
値なるパラメーターで表現し、LCO値が大きい、
すなわち、ラジアル配向性の強い繊維ほど好まし
い物性を持つている旨記載している。しかし、
LCO値なるものは繊維の局所的な部分(面積表
示で10-7cm2以下)に関する値であるために非常に
バラツキが大きいという測定原理上或いは測定技
術上の問題があり、更に結晶領域のみの配向に関
係するものであり、そのため物性値との関係がほ
とんどない。本発明者らが用いたTRIv値はラジ
アル配向の程度を結晶領域と無定形領域との総合
として精度よく表現できるが、詳細に検討した結
果では、TRIv値即ちラジアル配向性は繊維の物
性(強度やヤング率、耐疲労性など)とは弱い相
関性しかもたないことを見出した。 しかし、TRIv値が0.07を超えると伸度の低下
及び耐疲労性の低下を招くことがわかり、特開昭
47−39458号公報に記載される教示とは逆の傾向
である。 異方性ドープより繊維を製造する上で、凝固に
際して実質的に伸長を加えつつ凝固をすすめるこ
とは、繊維の凝集構造や高次構造を乱すので好ま
しくない。このような凝固方式としては、紡糸口
金を凝固層に浸漬して紡糸する方法が挙げられ、
この方法により得られる繊維は、干渉顕微鏡観察
によれば、繊維の凝集構造や高次構造の乱れがみ
られる。また偏光顕微鏡観察によれば上記紡糸法
により得られる繊維の内部には1μm程度の大き
さをもつ粒状物が構成されており、これは液晶が
粒状に連続化した構造と解釈される。本発明の
PPTAの如く極めて極性の大きい高分子は、界面
に対して或る特定の結晶配向をとつて凝固するこ
とは、高柳らの研究(第26回高分子討論会予稿集
(1977))でも明らかなことであるが、それ故に、
本来の乱されない高次構造のPPTA繊維は、繊維
の表面に対するb軸の配向つまりb軸のラジアル
配向を示すため、その繊維を繊維軸の垂直方向に
振動する偏光を用いた干渉顕微鏡観察によると、
繊維とほぼ同程度の屈折率をもつ浸液媒体を採用
すれば、特別な干渉縞例えば第4図のような干渉
縞が見られる。従つて、このような干渉縞は、凝
固時又は/及び凝固後に凝固表面の伸長による破
壊や不均一凝固による失透が起らなければ十分に
出現するもので、ドープのポリマー濃度等によつ
てはほとんど左右されない。このような凝固の好
適な一例として、紡糸口金を凝固層より難し、配
向のための張力を凝固前の非凝固層通過中のドー
プ流に集中させる紡糸法を挙げることができる。
これとは対照的に、紡糸口金を凝固層に浸漬して
紡糸し、かつ凝固時に伸長のための張力をかけつ
つ紡糸した繊維では、失透したり、干渉縞が連続
した線として観察されなかつたりする。これは明
らかに不均一な凝集構造が存在することを意味
し、このような不均一な凝集構造をもつ繊維で
は、強度、伸度とも小さい。 干渉顕微鏡によつて観察される干渉縞のパター
ンを定量化したのがTRIvであり、凝集構造の乱
れた繊維は明瞭な干渉縞が測定できず、TRIv
測定不可能であるのに対し、本発明の繊維は0〜
0.07の範囲のTRIv値をもつており、更に実用的
にはTRIvが0.02〜0.06の繊維が強度、伸度、耐疲
労性の点でより好ましく、本発明の方法に従えば
製造も容易である。 なお、TRIv値は後記の乾燥値を大きくしたり
紡出時のドラフトを大きくすることによりやや増
加する傾向をもつている。 本発明の繊維において、30℃、60%RH下にお
ける力学的損失正接(tanδ)が0.001乃至0.030で
ある繊維がより望ましい。何故ならこれより大き
い力学的損失正接を示す繊維は無定形領域部の割
合が過度に大きく、寸法安定性が悪くなつたり、
吸湿性が大きくなつて用途によつては不都合がお
こることがあるからである。また、上記範囲より
小さいtanδをもつ繊維は、結晶化度が大き過ぎて
繊維の機械的性質が劣る。上記温度におけるtanδ
値は、水分、溶媒の混入量によつて変動し、一般
に不純物や溶媒の混入量の増大によつて大きくな
る。 本発明の繊維を構成する単繊維は、それが太く
なると紡糸の際の流動配向や凝固速度等に起因す
ると思われる繊維の強度低下等が見られて好まし
くなく、通常数デニール以下に選定されている
が、本発明の目的である改良された耐疲労性の点
からは、さらに細デニール、大略3.0デニール以
下であることが望ましい。下限は特に限定される
ものではなく、通常工業的に得られる最小織度で
ある0.1デニール程度までとり得る。 本発明の繊維を構成する実質的にポリ−p−フ
エニレンテレフタルアミド(以下PPTAと略す
る。)からなる重合体とは、工業的純度のテレフ
タル酸及びパラフエニレンジアミンとより誘導さ
れるものを言い、好適にはテレフタル酸クロライ
ドとパラフエニレンジアミンより、N−アルキル
置換カルボンアミド型溶剤又はそれらの二種以上
の混合物、又はそれらと塩化リチウム又は塩化カ
ルシウムの混合物中にて謂ゆる低温溶液重合法に
より重合される。(例えば、特公昭35−14399号公
報参照) 本発明の繊維の製造において、一般に重合度の
大きいポリマーを用いるのが、高強度や優れた耐
疲労性を実現する上で好ましい。具体的には、繊
維は、後で詳述する測定条件下で測つた固有粘度
が少くとも5.0であることが好ましい。より好ま
しくは、少くとも5.5である。なお、濃硫酸への
溶解及びその紡糸迄の諸工程中にポリマーの重合
度低下をきたすことがあり、繊維としては好まし
い固有粘度よりも若干高い固有粘度、具体的に
は、溶解工程及びその後の工程での温度管理及び
滞在時間により異なるが、少くとも0.1から0.5高
い固有粘度のポリマーを用いるのが好ましい。固
有粘度の上限は格別限定されないが、ドープの粘
度からみて約10以下であることが望ましい。 本発明に係る繊維製造方法を以下に説明する。
まず、上記ポリマーを濃硫酸に溶解し、次いで得
られた紡糸用ドープを空気中、凝固層の順に通過
させて繊維状に凝固させる。 ポリマーを溶解する溶剤としては、溶解能力及
び価格の点で濃硫酸が好ましく、上記の如き高い
固有粘度のPPTAを高濃度に溶解するためには、
特に約98重量%以上の濃硫酸を用いる。なお、遊
離のSO3を含有する謂ゆる発煙硫酸の使用は、
SO3がかえつて溶解性を低めることや、SO3によ
りポリマーのスルホン化が行なわれる可能性があ
ること等の点ではあまり好ましいものではなく、
硫酸濃度の上限は通常100重量%である。 紡糸ドープに含有されるべきポリマーの濃度
は、経済的な理由や得られる繊維の機械的性質特
に引張り強度を好ましいものにするために12重量
%以上とし、好適には14重量%以上である。ポリ
マー濃度の上限も特に制限されるものではない
が、あまり高濃度では安定な紡糸が不可能になる
点を考慮すれば通常約20重量%以下である。な
お、本発明の繊維の特徴とするゴム類の補強に有
用な耐疲労性に優れた繊維を製造する上において
は、おおむね、19重量%以下が更に好適に用いら
れる。 本発明に使用されるドープは、少くとも紡糸口
金から押出される温度においては異方性であるべ
きである。これは、繊維の好ましい機械的性質を
実現するために必要である。ドープが異方性であ
るか否かは、例えば特公昭50−8474号公報に記載
された光学的方法を使つて判定することができ
る。 紡糸ドープの調製及び使用に当つては、上記ポ
リマー濃度範囲に於いては、ドープは室温付近で
は固化する場合があるため、室温から80℃程度の
温度で取扱えば良いが、ポリマーの分解を可及的
に回避する観点から、なるべく低い温度を選ぶべ
きである。 紡糸ドープは紡糸口金よりまず空気中に押出
し、次いで凝固層に導く。なお、空気には、凝固
性液体(例えば水やメタノール)の蒸気が飽和又
は不飽和状態で含まれていてもよい。 空気層の厚さは通常約0.1〜10cm、好適には0.3
〜2cmである。空気層の厚さが過大であると、本
発明の範囲のドープが謂ゆるチクソ粘性を示す、
即ち変形速度が大である程見掛けの粘度が減少す
るため、得られた繊維の太さが均一でなくなり、
引張り強伸度の低下に結びつく。空気層の厚さが
過小であると、紡糸口金面を凝固浴層中に浸漬し
た場合と差異がなくなる。紡糸口金面と凝固層の
間に空気層を介在させる本発明の紡糸方法の利用
として、空気層のドープ流に引取りのドラフト
(引き伸ばし)がかかり、凝固層中の凝固しつつ
ある又は凝固した繊維の引き伸ばしが全く又はほ
とんど行なわれないため、繊維の微細構造の破壊
やクラツク等、さらにマクロな破壊を生じないこ
とである。このような特徴は、本発明の繊維が失
透しないこと、所定範囲の屈折率勾配(TRIv
をもつこと等と関連しており、このような繊維の
微細構造上の特徴によつて、紡糸口金面を凝固層
中に浸漬して行なう湿式紡糸によつて得られる繊
維と区別される。 また、本発明の紡糸方法の他の利点として、紡
糸合金におけるドープ温度とは独立に凝固層の温
度を自由に設定できるという利点もある。殊に本
発明で用いるドープは室温付近で固化することが
あるためドープ温度として室温より高い温度を用
いることがしばしば必要となるが、このドープ温
度とは独立して凝固層の温度を室温或いはそれ以
下に自由に設定できる利益は大きい。 本発明の紡糸方法のさらに他の1つの利点は、
紡糸口金を凝固層中に入れた湿式紡糸に比べてド
ラフト(凝固した繊維の引きとり速度と紡糸口金
からのドープ押出速度の比)を大きくできること
であり、この点は高強度、高ヤング率の繊維を製
造する上で有利である。 紡糸に用いる紡糸口金の形状等は特に制限され
るものではなく、また紡孔の大きさについては、
孔閉塞の点からあまり小さなものは避けるべきで
あるし、反対に、吐出線速度や紡孔中での剪断配
向等の点から過大なものは避けるべきである。紡
糸速度、目的とする単糸デニール等を勘案して、
紡糸直径は通常0.06mmから0.09mmの間で選べば良
い。 凝固層は、特に制限されないが、水又は濃度50
重量%以下の硫酸(水溶液)が好適である。浴の
温度についても、特に制限されないが、稀硫酸の
機材への腐蝕性を考慮すれば、室温以下、当該凝
固層の氷点付近までが好ましい。 凝固した繊維は、次いでネツトコンベヤー上に
堆積されて水洗(硫酸除去)および乾燥を受け
る。第3図は、ネツトコンベヤー上で水洗および
乾燥を行う好ましい実施態様の一例を示したもの
である。第3図においてPPTAの光学異方性ドー
プは紡糸口金2から空気層1aに次いで凝固層1
bに押出される。凝固した繊維糸条3aは取出ロ
ール4によつ凝固層より引出され、次いで振込ロ
ール5によつて反転コンベヤー6上に振落され
る。振込ロール5はかご状物であつてフイラメン
トを導く外周面を構成する多数のロツドからな
る。繊維糸条3bはコンベヤー6上で弛緩状態の
フイラメントが積重つて巾の狭い無端フリース状
をなす。そして、処理コンベヤー7上に反転され
つつ移される。処理コンベヤー7は連続的にまた
は間歇的に適当な駆動源により反転コンベヤー6
と実質的に等速度でで駆動される。堆積された無
緊張状態の繊維糸条からなるフリースは処理コン
ベヤー7によつて順次洗浄装置8、水蒸気処理装
置9、乾燥装置10へ運ばれる。次いで、繊維糸
条3cは処理コンベヤー7より取出され、巻取機
11によつてボビンに巻取られる。カバーベルト
12は無緊張状態に堆積された繊維糸条3bが洗
浄、水蒸気処理、乾燥各工程において乱されるの
を防ぐ。 水洗水蒸気処理、および乾燥の諸工程を通じて
繊維に長さ方向に実質的に張力を加えないこと
が、特異な微細構造をもつ本発明の繊維を実現す
るために必須である。このため、凝固層中又は層
から取出してネツトコンベヤー上に至る迄の取扱
いに於いても細心の注意と装置上の工夫が必要で
ある。即ち、これらの工程での緊張は繊維の結晶
部だけでなく無定形領域部のポリマー分子鎖の配
向を過度に進ませ、これがゴム類の補強に用いた
とき耐疲労性の低下を招来すると考えられる。 凝固層よりの繊維の引き出しに当つても緊張力
ができるだけ加わらぬことが肝要である。従つ
て、層中に変向ガイド等を設置することは、繊維
に緊張を与えるので好ましくない。特公昭44−
22204号公報第1図の如き、銅アンモニアレーシ
ヨンの紡糸等で用いられる流管式紡糸浴を採用
し、繊維を凝固液と共に流管より浴外に取出す方
法が好適である。更に、特開昭53−144911号公報
に開示される2重流管式紡糸浴は一層好適であ
る。 凝固層より取出された繊維を、ネツトコンベヤ
ー上に堆積するに際しても、延伸又は緊張処理が
行なわれるべきではなく、凝固層からの引出の抵
抗や諸ガイド類の摩擦等により繊維に作用する張
力をを大略0.2g/d以下となる様に、変向角度
を出来るだけ小さくしたり、ガイドの材質や表面
粗度に細心の注意を払うべきである。 ネツトコンベヤー上で繊維を実質的に無緊張下
に水で洗滌して硫酸を除去するに際し、必要に応
じて、水洗に先立つて又はその中間にて水性アル
カリにて中和することや、油剤を付与する等の処
理を行なうことは随意である。これらの処理は、
特開昭50−154522号公報記載の方法に準じて行な
うことができる。 洗浄された繊維は、引続いてネツトコンベヤー
上に堆積されたままで、水蒸気処理及び特定の温
度及び時間条件下に加熱乾燥する。特別な微細構
造をもち、かつそれ故に高強度高ヤング率にして
ゴム類の補強に用いたとき優れた耐疲労性を発揮
する本発明の繊維を製造する上において、ネツト
コンベヤー上に依然堆積したまま乾燥に先立つて
少くとも100℃の水蒸気で処理することと、乾燥
を120℃〜450℃の温度でしかも温度を摂氏(℃)
で、時間を秒で表わしたとき250≦(温度)×(時
間)0.08≦600なる条件を満足する時間だけ乾燥す
ることの2つが肝要である。 洗浄された繊維を乾燥に先立つてネツトコンベ
ヤー上で水蒸気処理することは、従来公知の技術
には全く開示されていない。この処理が、本発明
の目的とするゴム類の補強に用いられるときに優
れた耐疲労性を発揮する繊維を得る上で重要なこ
との詳細な理由は次のように推定される。第1に
乾燥をうけたときに結晶が過大に成長して見掛け
の微結晶の大きさ(ACS)が過大になつて強度
が極端に低く脆い繊維になることを抑制する効果
と、逆に、結晶が殆んど成長せずにACSが過度
に小さく高温時の寸法安定性や物性安定性が悪い
繊維になることを抑制する効果の両方をもち、ゴ
ム類の補強用繊維として最も優れた性質を発揮す
るに適当な範囲のACSを与えることである。第
2に、繊維中の結晶部だけでなく無定形領域での
ポリマー分子鎖の微細構造が特定の構造をもつこ
と、すなわち、無定形領域を含めた微細構造を反
映したパラメーターである繊維の中心屈折率
(Nvp)や屈折率勾配(TRIvやTRIp)が特別の範
囲の値をとることである。換言すれば、無定形領
域でのポリマー分子鎖軸の繊維長方向への配向が
繊維中心部において比較的大きく、また謂ゆる結
晶b軸に対応する軸の繊維断面方向への配向が比
較的少ない。これは、無定形領域部に存在する高
温下の水分子が、水蒸気処理及び乾燥工程中で発
生するであろうポリマー分子鎖の熱運動による再
配列、再凝集を円滑に行ない、かつ安定で無理の
ない構造に導く上で有効な働きをするためと推定
される。 飽和水蒸気で加熱する方法は、飽和水蒸気で満
された加熱室を貫通して糸山をネツトコンベヤー
と共に移動させることにより行なわれる。加熱室
の貫通口が狭いスリツトで外気に開放されるとき
は、飽村水蒸気圧が0Kg/cm2Gとなり加熱温度が
100℃となる。貫通口をローラーシール等で外気
に対してシールして、高められた飽和水蒸気圧で
加熱処理するときは、約3Kg/cm2Gの飽和水蒸気
即ち140℃程度迄の加熱温度が好適であり、そり
以上の高温は、シール部分の耐圧性等の点で作業
上の危険性が増すので、あまり利点はない。 水蒸気処理は、繊維をネツトコンベヤー上に堆
積させた繊維に実質的な緊張をかけずに行なうこ
とが大切である。緊張をかけると、繊維中のポリ
マー分子鎖の配向が過大になつて、もはや本発明
の目的とする耐疲労性に優れた繊維が得られな
い。 水蒸気処理する時間は、水蒸気量及び温度、繊
維の単糸デニール及び総デニール、ネツトコンベ
ヤー上の堆積厚さ等が影響するので一概には決め
られないことが多いが、洗浄された繊維が実質的
に少なくとも約100℃に達するように設定すれば
よく、このような要請を満たしかつ経済的な理由
も考慮すれば30秒〜30分が適切である。 水蒸気処理をうけた繊維は続いて特定の条件下
に乾燥する。水蒸気処理工程から乾燥工程への移
行方法は、繊維に実質的に緊張がかからない限り
格別限定されることはなく、同一のネツトコンベ
ヤー上で行なうのが簡便である。移行中に繊維の
温度が低下することも許されるが経済的には好ま
しくない。 乾燥は、繊維に緊張が実質的に働かない状態
で、120〜450℃の間の温度で式250≦(温度)×(時
間)0.08≦600を満たす時間だけ行なうべきである。
ただし、ここで温度および時間の単位はそれぞれ
℃および秒である。 120℃未満の温度では、十分な乾燥を行なうた
めに乾燥時間を極めて長くとらねばならず不利で
ある。乾燥温度を高めることは、加熱時間を短縮
できる点では好ましいが、ネツトコンベヤーや堆
積されない糸山の乱れを防止するためのカバー布
等の材質の耐熱性や耐久性上の制約や、熱エネル
ギーの損失が大きい等の理由により、乾燥温度の
上限は450℃とする。好ましい乾燥温度は140゜〜
300℃、特に140゜〜250℃である。 乾燥時間は、乾燥温度と密接に関連させて設定
することが、本発明の目的とするゴム類の補強に
きわめて有用な繊維を製造する上で重要である。 特開昭50−154522号公報が特開昭50−160517号
公報に一般的に開示される乾燥や熱処理を施した
のでは、ゴム類の補強に供するに十分な物性を完
備するに適した特別な微細構造をもつた繊維がつ
くりえない。すなわち、本発明の特別な微細構造
をもつた繊維を製造するためには、摂氏(℃)で
表現した温度と秒単位で表わした時間の0.08乗と
の積の値(以下、乾燥値と称する。)が250〜600
(℃・秒0.08)の範囲にあることが必要である。 乾燥値が250未満のときには、ポリマー分子鎖
の熱固定が不十分なためか、繊維を例えば200℃
程度の温度雰囲気中においたとき、寸法の収縮が
おこり、また僅かな緊張をかけてそのような温度
雰囲気においたとき物性の変化(例えば伸度の低
下)をひきおこす。これは、繊維をゴム補強に供
するための後処理(例えば接着剤付与)時や、ゴ
ムの加硫時に繊維が変質することを意味し、実用
上好ましくない。乾燥値が250未満の乾燥をうけ
ただけの繊維は、微細構造的にはX線回折強度比
(RIX)が0.85未満で且つACS(Å)が41+1/2
(配向角)未満(これは前記第(8)式より誘導され
る。)である結晶性が低い繊維であることと対応
している。乾燥値が600を超える条件下に乾燥を
行なうと、結晶化が進みすぎ、繊維の強度および
耐疲労性の低下をひきおこす。繊維の微細構造的
にはRIXが1.05を超え且つACS(Å)が80+1/2
(配向角)を超えるようになる(このACSは前記
(6)式より誘導される。)乾燥値のより好ましい範
囲は、280〜550であり、このような乾燥によつて
ゴム類の補強により有用なより限定された微細構
造の繊維が製造される。 乾燥工程における加熱方法は特に限定されるこ
とはなく、加熱された空気や窒素や燃料廃ガス又
は過熱水蒸気等の高温気体をネツトコンベヤー上
の糸山に吹きつける方法や、熱板の遠赤外線発生
装置等をネツトコンベヤー上方又はネツトコンベ
ヤーを挾んで上下に設置して糸山を加熱する方法
等が考えられる。 乾燥は通常1段で行なわれるが、2段又はそれ
以上に分けて同じ温度又は異なつた温度で行なつ
てもよい。本発明で定義した乾燥値は、加成性が
あるため、2段以上で行なつたとき各々の乾燥値
の和が上記の範囲に入るようにすればよい。 なお、水蒸気処理の温度、時間と関連させて、
乾燥値を変動させてもよいが、水蒸気処理は乾燥
値に示される温度時間関係を完全には満足しない
ので、この点を配慮して行なうべきである。 乾燥工程において、繊維に実質的に緊張をかけ
ることは避けなければならない。繊維のポリマー
分子鎖の配向が過度に進み、耐疲労性が悪くなる
ためである。 本発明の特徴とする条件下で繊維に実質的に緊
張力を加えることなく加熱処理された繊維は、次
いで、必要あれば仕上げ油剤の付与、調湿、識別
のための着色、インターレース処理等の各種の仕
上げ処理を施した後、捲き取られる。上記仕上げ
処理および捲取りは、本発明方法の実施上特に制
限されるものではない。なお、繊維の洗浄後に、
水蒸気処理に先立つてエポキシ系化合物を付着さ
せることは、本発明の繊維を得る上で、水蒸気処
理の効果が十分に発揮されず、好ましくない。 本発明の繊維は以上の如き、特別な条件下で製
造され、その特徴とするところは、高強度、比較
的大きめの伸度と共に、高温下における寸法及び
物性の安定性に優れ、更にゴム類の補強に用いら
れたときの耐疲労性に優れていることである。こ
のような繊維の物性上の優位性は、該繊維の微細
構造と密接に関連しており、従来公知の製造法で
は実現しえない特別な微細構造により発揮され
る。 本発明の繊維は、ゴム等の補強用に供するとき
は、通常マルチフイラメントの形態で用いられる
が、本発明の繊維の用途は特にそれに限られるも
のではなく、従つて繊維の形態も、ロービングヤ
ーン、スフ、チヨツプドストランド等であつても
良い。 本発明の繊維は、タイヤコード、特に高重量車
輛用のラジアル構造タイヤに於けるカーカスコー
ド、ならびにその他のVベルト、平ベルト、歯付
ベルト等の補助コード等のゴム類の補強コードに
好適に用いられる。そして、本発明の特徴とする
改良された耐疲労性が効果的に発揮される。 勿論、本発明繊維の用途は上記に限られるもの
ではなく、高強度や寸法安定性、耐熱性や難燃性
と言つた従来のPPTA繊維の特性も兼ね備えてお
り、従つて、従来のPPTA繊維と全く同様に用い
られる。 以下に本発明の繊維の構造の特定や物性の測定
に用いられる主なパラメーターの測定法について
述べる。 <固有粘度の測定法> 固有粘度(ηioh)は、98.5重量%の濃硫酸に濃
度(C)=0.5g/dlでポリマー又は繊維を溶かし
た溶液を30℃にて常法により測定する。 ηioh=lo・ηrel/C <繊維の強伸度特性の測定法> 特に断わらない限に、フイラメントの引張り強
度、伸度、ヤング率は特開昭47−39458号公報に
準じて常法により測定する。 <繊維の耐疲労性の測定法> タイヤ等のゴム類製品に於ける補強繊維の使用
時の疲労性をモデル的に評価する手段は種々提案
されているが、本発明では、日本工業規格JIS−
1017−1963の「化学繊維タイヤコード試験方法」
の参考記載の部1、3、2、1項記載のチユーブ
疲労強さA法(グツドイヤー法)を採用し、試料
繊維とゴムとの接着処理済コード(処理コード)
を軸と平行に埋めたチユーブ状テストピースを
105゜(上記JIS参考では90゜)に曲げて伸長圧縮疲
労試験機に取りつける。次いで、空気によりテス
トピースに3.5Kg/cm2Gの内圧をかけ850回/分の
速度で回転させて、そのチユーブ疲労寿命を測定
し、本発明及び比較の各繊維の耐疲労性の比較を
行なう。なお、チユーブ疲労寿命の値は3本のテ
ストピースの平均値を用いる。 繊維のコードの耐疲労性は、コードの撚数によ
り大幅に変化し、ある範囲までは一般に撚数大な
る方が耐疲労性は良いことが知られる。一方伸度
の低い繊維では特にコードの撚数を高めること
は、原フイラメント強力に対するコード強力の比
(強力利用率)の低下となつて表われるため、好
ましい原フイラメントの高い強度を有効に利用す
るには撚数を大きくして耐疲労性を高めることは
得策ではない。この点から、本発明繊維の好まし
い特徴が活かされるのであるが、本発明に於いて
耐疲労性を評価するに当つても注意すべきことで
ある。本発明では、コードの撚構造を一定にして
上記試験を行うこととし、撚構造は双糸とし、撚
係数(ツイストマルチプライヤー)を8.0に一定
とする。 ここで撚係数とは (撚数/m)×√(ヤーンのデニール)/2870 で表わされるものである。 疲労試験に供する処理コードの製造法も以下の
如く条件を統一して行なうが、勿論本発明繊維の
特徴を発揮する上での唯一の条件ではなく、本発
明繊維を効果的に用いる上で、実際の使用に於い
ては変更されて良い。 コードは前述の撚係数となるように下撚及び上
撚りされて合撚されて製造される。処理コード
は、エポキシ樹脂を付与し、250℃にて1g/d
の張力下に処理し、次いでレゾルシン−ホルマリ
ン−ラテツクス(RFL)を付与し、230℃で1/3
g/dの張力下に第2段の処理を行うことにより
作製する。 ここで用いるエポキシ樹脂処理液は、 エピコート812(シエル化学社商品名) 3重量部 エタノール 5重量部 ポリビニルピリジンラテツクス 25重量部 水 67重量部 より成る分散液であり、RFL処理液は、 レゾルシン 11重量部 水 238.4重量部 37%ホルマリン 16.2重量部 NaOH 0.3重量部 ポリビニルピリジン−スチレン−ブタジエンラテ
ツクス(固形分として41%含有) 244重量部 より成るものであり、張製後一昼夜放置したもの
を用いる。 処理コードは、未加硫ゴムに埋め込み、加硫す
る。用いる配合ゴムの組成は次のものであり、加
硫条件は140℃で40分である。 天然ゴム 90重量部 スチレン−ブタジエン共重合ゴム 10重量部 カーボンブラツク 40重量部 ステアリン酸 2重量部 石油系軟化剤 10重量部 パインタール 4重量部 亜鉛華 5重量部 N−フエニル−β−ナフチルアミン 1.5重量部 2−ベンゾチアゾリルジスルフイド 0.75重量部 ジフエニルグアニジン 0.75重量部 硫 黄 2.5重量部 <中心屈折率(Nvp、Npp)及び屈折率勾配
(TRIv、TRIp)の測定法> 透過定量型干渉顕微鏡を使用して得られる中心
屈折率(Nvp、Npp)及び屈折率勾配(TRIv
TRIp)の値によつて、本発明の繊維の特異な分
子配向が明らかとなり、本発明の繊維の優れた耐
疲労性との関連を示すことができる。 透過定量型干渉顕微鏡(例えば東独カールツア
イスイエナ社製干渉顕微鏡インターフアコ)を使
用して得られる干渉縞法によつて、繊維の側面か
ら観察した平均の屈折率の分布を測定することが
できる。この方法は円形断面を有する繊維に適用
することができる。 繊維の屈折率は、繊維軸の平行方向に振動して
いる偏光に対する屈折率(Np)と繊維軸の垂直
方向に振動している偏光に対する屈折率(Nv
によつて特徴づけられる。ここに説明する測定は
全て縁色光線(波長λ=546mμ)を使用して得
られる屈折率(Np及びNv)を用いて実施され
る。以下、Nvの測定及びNvより求められるNvp
とTRIvについて説明するが、Np(Npp、TRIp
についても同様に測定できる。 試験される繊維は光学的にフラツトなスライド
ガラス及びカバーグラスを使用し、0.2〜2波長
の範囲内の干渉縞のずれを与える屈折率(NR
をもつ繊維に対して不活性の封入剤中に浸漬され
る。封入剤の屈折率(NR)は縁色光線(波長λ
=546mμ)を光源としてアツベの屈折計を用い
て測定された20℃における値である。この封入剤
中に数本の繊維を浸漬し単糸が互いに接触しない
ようにする。さらに繊維は、その繊維軸が干渉顕
微鏡の光軸及び干渉縞に対して垂直となるように
すべきである。この干渉縞のパターンを写真撮影
し、1500倍〜2000倍に拡大して解析する。 第4図で繊維の封入剤の屈折率をNR、繊維の
S′−S″間の平均屈折率をNv、S′−S″間の厚みを
t、使用光線の波長をλ、バツクグラウンドの平
行干渉縞の間隔(1λに相当)をD、繊維による
干渉縞のずれをdとすると、光路差Rは R=d/Dλ=(Nv−NR)t で表わされる。 繊維の中心rOから外周rGまでの各位置での光路
差から、各位置の繊維の平均屈折率(Nv)の分
布を求めることができる。 厚みtは得られる繊維が円形断面と仮定して計
算によつて求めることができる。しかしながら製
造条件の変動や製造後のアクシデントによつて、
円形断面になつてない場合も考えられる。このよ
うな不都合を除くため、測定する個所は繊維軸を
対称軸として干渉縞のずれが左右対称になつてい
る部分を使用することが適当である。測定は、繊
維の半径をrとすると、0(繊維の中心)〜0.95r
の間を0.05rの間隔で行ない、各位置の平均の屈
折率を求めることができる。繊維軸の垂直方向に
振動する偏光による中心屈折率Nvpは、rp(繊維の
中心)における屈折率の値である。繊維軸の垂直
方向に振動する偏光による屈折率勾配(TRIv
は次式によつて表わされる。 TRIv=Nv0.5−Nvp/0.5 ここでTRIv、Nvp、Nv0.5は各々、繊維軸の垂
直方向に振動する偏光による屈折率勾配、中心屈
折率、半径の1/2の位置におけるる平均屈折率で
ある。 一方、繊維軸の平行方向に振動する偏光を用い
ることによつてNpを測定すれば、Nppはrpにおけ
る屈折率の値として、又、TRIpは TRIP=NP0.5−NPp/0.5 なる式によつて計算できる。 屈折率勾配及び中心屈折率の値は少なくとも3
本のフイラメント、好適には5〜10本のフイラメ
ントについて測定したものを平均して得られる。 実施例2、3及び比較例6、7についてNPO
びTRIPを測定した結果を次に記す。
【表】
【表】 <配向角(OA)の測定法> 繊維の配向角(OA)の測定は例えば理学電機
社製X線発生装置(RU−200PL)、繊維測定装置
(FS−3)、ゴニオメーター(SG−9R)及びシン
チレーシヨンカウンタを用いて実施する。測定に
はニツケルフイルターで単色化したCuKα(λ=
1.5418Å)を使用する。 本発明の繊維は一般に赤道線上に2つの主要な
反射を有することが特徴である。配向角の測定
は、高角度の2θを有する反射を使用する。使用さ
れる反射の2θは、赤道線方向の回折強度曲線から
決定される。 X線発生装置は40kV90mAで運転する。繊維
測定装置に繊維試料を単糸どうしが互いに平行と
なるように取り付ける。試料の厚さは0.5mm位に
なるようにするのが適当である。予備実験により
決定された2θ値にゴニオメーターをセツトする。
この平行に配列した繊維の繊維軸に垂直にX線を
入射させる(ビーム垂直透過法)。方位角方向を
−30゜〜+30゜走査し、シンチレーシヨンカウンタ
ーで回折強度を記録紙に記録する。さらに−180゜
と+180゜の回折強度を記録する。この時スキヤニ
ングスピード2θ=4゜/mln、チヤートスピード1.0
cm/min、タイムコンスタント2あるいは5sec、
コリメーター1mmφ、レシービングスリツト縦横
とも1゜である。 得られた回折強度曲線から配向角を求めるに
は、±180゜で得られる回折強度の平均値を取り、
水平線を引く。ピークの頂点から基線に垂線をお
ろし、その高さの中点を求める。中点を通る水平
線を引く。この水平線と回折強度曲線の交点間の
距離を測定し、この値を角度(゜)に換算した値
を配向角(OA)とする。 <見掛けの微結晶の大きさ(AOS)及び回折強
度比(RIX)の測定法> 赤道方向の回折強度曲線を反射法によつて求め
ることによつて、ACS、RIXを求めることがで
きる。 理学電機社製X線発生装置(RU−200PL)ゴ
ニオメーター(SG−9R)及びシンチレーシヨン
カウンターを用いて実施する。測定にはニツケル
フイルターで単色化したCuKα(λ=1.5418Å)を
用いる。繊維試料の繊維軸が回折計の2θ軸の面に
垂直となるようにAl製試料ホルダにセツトする。
このとき試料の厚さは0.5mm位になるようにする。
40kV90mAでX線発生装置を運転し、シンチレ
ーシヨンカウンターを使用することにより、スキ
ヤニングスピード2θ=1゜/min、チヤートスピー
ド1cm/min、タイムコンスタント2sec、ダイバ
ージエンススリツト1/6゜、レシービングスリツ
ト0.3mm、スキヤツタリングスリツト1/6゜におい
て、2θが8゜〜37゜までの回折強度を記録する。記
録計のフルスケールは得られる回折強度曲線がス
ケール内に入るように設定し、少なくとも最高強
度値がフルスケールの50%を越えるように設定す
る。 本発明の繊維は、一般に赤道線のθ=19゜〜24゜
の範囲内に2つの主要な反射を有することが特徴
である。ACSは低い2θ値を有する反射について
求める。RIXは、2つのピークの回折強度比をも
つて表わされる。 2θ=9゜と36゜の間にある回折強度曲線間を直線
で結び基線とする。回折ピークの頂点から基線に
垂直を下し、ピークと基線間の中点を記入する。
中点を通る水平線を、回折強度曲線の間に引く。
この線は2つの主要な反射がよく分離している場
合は、曲線のピークの2つの肩と交叉するが、分
離が悪い場合には1つの肩のみと交叉するだけで
ある。このピークの幅を測定する。一方の肩のみ
と交叉する場合は交叉点から中点までの距離を測
定して2倍する。2つの肩と交叉する場合は、両
肩間の距離を測定する。これらの値をラジアン表
示に換算してライン幅(半価幅)とする。さらに
このライン幅を次の方法で補正する。 β=√22 Bは測定した半価幅、bはブロードニング定数
でSi単結晶の2θ=28゜付近に位置するピークのラ
ジアン表示したライン幅(半価幅)である。見か
けの微結晶の大きさは次式 ACS=Kλ/βcosθ によつて与えられる。ここでKは1、λはX線の
波長(1.5418Å)、βは補正された半価幅、θは
ブラツグ角で2θの1/2である。 RIXは、2θが低角度側に位置する回折ピークの
頂点と基線間の距離に対する高角度側の回折ピー
クの頂点と基線間の距離の比で表わされる。 <力学的損失正接(tanδ)の測定> 例えば東洋ボールドウイン社製レオバイブロン
DDV−c型を使用して常法により求めること
ができる。周波数110Hz、乾燥空気中30℃60%
RHで測定したときのtanδ値である。 以下、本発明の実施例について更に具体的に説
明する。実施例中、特に記載しないかぎり部およ
び%は重量に基づく。 参考例 低温溶液重合法により次の如くPPTAポリマー
を得た。 特公昭53−43986号公報に示された重合装置中
でN−メチルピロリドン1000部に無水塩化カルシ
ウム70部を溶解し、次いでパラフエニレンジアミ
ン48.6部を溶解した。8℃に冷却した後、テレフ
タル酸ジクロライド91.4部を粉末状で一度に加え
た。数分後に重合反応物はチーズ状に固化したの
で、特公昭53−43986号公報記載の方法に従つて
重合装置より重合反応物を排出し、直ちに2軸の
密閉型ニーダーに移し、同ニーダー中で重合反応
物を微粉砕した。次に微粉砕物をヘンシエルミキ
サー中に移し、ほぼ等量の水を加えて更に粉砕し
た後、過し、数回温水中で洗浄して、110℃の
熱風中で乾燥した。固有粘度が5.6の淡黄色の
PPTAポリマー95部を得た。 なお、異なつた固有粘度のポリマーは、N−メ
チルピロリドンとモノマー(パラフエニレンジア
ミン及びテレフタル酸ジクロライド)の比、又
は/及びモノマー間の比等を変えることによつて
容易に得ることができる。 実施例 1 参考例に従つて製造した固有粘度が5.6の
PPTAポリマーを99.4%硫酸中に、ポリマー濃度
が18%になるように、70℃で2時間で溶解した。
溶解は真空下で行ない、溶解についで2時間静置
脱泡した後紡糸した。このドープは異方性であつ
た。ドープは0.06mmφの細孔800個を持つ紡糸口
金より押出し、一旦10mmの空間を走行せしめた
後、初めて5℃の25%希硫酸中で凝固し、次いで
糸条として120m/分の速度で引出した。次いで、
糸条は第3図の装置により、洗浄、水蒸気処理及
び乾燥を行つた。洗浄はまず15%カセイソーダ水
溶液で行い、次いで水で行なつた。水蒸気処理
は、約120℃の飽和水蒸気を満たした加熱室を糸
山を堆積させたネツトコンベヤーが貫通する形で
行ない、貫通口はローラーシールで外気と遮断
し、加熱室でのネツトコンベヤーの滞溜時間が約
3分となるように設定した。水蒸気で処理した糸
山は一旦外気に出した後、直ちにネツトコンベヤ
ー上で乾燥した。乾燥は200℃の乾燥窒素の熱風
中で行ない、この温度で14分間滞在させた。乾燥
値は343とした。カバーベルトとしては、乾燥温
度に耐えられるようにポリテトラフルオロエチレ
ン繊維を平織りにした布を用い、ネツトコンベヤ
ーとしてはステンレス製の金網を用いた。得られ
た繊維は、TRIv=0.045、TRIp=−0.016、Nvp
1.619、Npp=2.123、RIX=0.94、ACS=60Å、
OA=23゜、tanδ=0.021をもつ1200デニールのフ
イラメントで、22.6g/dの強度、6.3%の伸度、
360g/dのヤング率をもつており、前記の方法
で測つたチユーブ疲労寿命は1480分を記録した。 次に、乾燥温度を170℃にして乾燥値292の条件
下に乾燥を行なう以外は上と全く同じ条件で繊維
を製造した。この繊維の構造と物性は次の通りで
あつた。TRIv=0.036、TRIp=−0.013、Nvp
1.623、Npp=2.125、RIX=0.88、ACS=57Å、
OA=21゜、tanδ=0.022、強度21.8g/d、伸度
6.1%、ヤング率330g/d、チユーブ疲労寿命
1130分。この繊維も後記の従来公知の方法で製造
された繊維に比べ、新規な微細構造をもつている
とともに、耐疲労性に格段にすぐれている。 比較例 1 比較のために特開昭47−39458号公報記載の方
法に従つて製造した繊維の例を示す。 実施例1と同様に紡糸された糸条を本発明の装
置の代りに、一旦ボビンに捲き取り、この状態で
10%カセイソーダ水溶液、次いで水の入つた洗浄
槽中に浸漬して水洗し、次にボビンに捲いたまま
160℃の熱風乾燥機中で乾燥した。製造されたフ
イラメントは、TRIv=0.052、TRIp=+0.003、
Nvp=1.596、Npp=2.092、RIX=0.81、ACS=43
Å、OA=15゜で、TRIvを除き本発明の繊維とは
ことごとく異なつた微細構造を示した。このフイ
ラメントの物性は、強度19.5g/d、伸度3.9%、
ヤング率560g/d、チユーブ疲労寿命280分で、
実施例1の繊維と比べ強度と伸度がやや小さくヤ
ング率が大きく、耐疲労性は相当に小さい。 次に、洗浄までを実施例1と同じ方法で行な
い、乾燥のみ160℃の加熱ロール上で行なつて繊
維を製造した。 このフイラメントは、TRIv=0.053、TRIp=−
0.001、Nvp=1.603、Npp=2.098、RIX=0.83、
ACS=40Å、OA=17゜で、強度19.6g/d、伸度
4.1%、ヤング率530g/d、チユーブ疲労寿命
330分であり、実施例1の繊維に比べ相当に耐疲
労性が劣る。 比較例 2 特開昭50−154522号公報に示された方法によつ
て製造された繊維を比較のために示す。 第3図の装置を用いて実施例1と同様に紡糸、
洗浄した糸条をのせたネツトコンベヤーを水蒸気
処理装置への飽和水蒸気の供給を完全に絶つて室
温になつた水蒸気処理装置中に通し、次いで170
℃で14分間乾燥した。製造された繊維の構造と物
性は次の通りであつた。 TRIv=0.027、TRIp=0、Nvp=1.617、Npp
2.101、RIX=0.80、ACS=49Å、OA=27゜、強度
21.6g/d、伸度6.4%、ヤング率310g/d、チ
ユーブ疲労寿命610分。 比較例1の繊維に比べチユーブ疲労寿命はかな
り改善されているが、実施例1の本発明の繊維に
比べると半分或いはそれ以下である。 なお、本比較例の繊維は高温度の寸法及び物性
の安定性に欠けることが判明した。即ち、本比較
例の繊維と実施例1の同温度で乾燥した繊維を
200℃のオーブン中に30分間無緊張で静置してお
くと、前者は0.08〜0.11%の寸法収縮を起した
(3本のサンプル)のに対し、後者は全く収縮が
観測されなかつた。また、220℃のオーブン中で
0.5g/dの緊張力下に30分間処理すると、次の
ような物性の変化がみられた。 実施例1の170℃乾燥の繊維; 処理前 21.8g/d/6.1%/330g/d 処理後 21.9g/d/5.9%/350g/d 本比較例の繊維; 処理前 21.6g/d/6.4%/310g/d 処理後 21.8g/d/3.5%/640g/d (ただし、物性は順に強度、伸度、ヤング率を表
わす。) この結果より、本発明の繊維即ち実施例1の繊
維は高温でゆるやかな緊張をかけられても物性が
ほとんど変化しないのに対し、特開昭50−154522
号公報の方法で製造された本比較例の繊維は重大
な物性変化をひきおこすことがわかる。 比較例 3 特開昭50−160517号公報に記載された方法によ
るPPTA繊維の製造を比較のために示す。 第3図に示した装置を一部改造し、特開昭50−
160517号公報の方法を追試した。 実施例1と同様に凝固、洗浄した繊維をネツト
コンベヤーにのせたまま、まず120℃の熱風で乾
燥し、次いで250℃の熱板で熱処理した。乾燥時
間は5分で一定にし、熱処理時間は10秒と30秒の
2水準とした。 得られた繊維は、10秒熱処理のものが、TRIv
=0.051、TRIp=−0.002、Nvp=1.612、Npp
2.098、RIX=0.83、ACS=50Å、OA=25゜、強度
22.5g/d、伸度5.9%、ヤング率380g/d、チ
ユーブ疲労寿命620分であり、30秒熱処理のもの
が、TRIv=0.086、TRIp=−0.057、Nvp=1.617、
Npp=2.129、RIX=1.21、ACS=96Å、OA=
19゜、強度16.6g/d、伸度3.8%、ヤング率510
g/d、チユーブ疲労寿命220分であつた。 前記したように、いわゆる乾燥値が加成性をも
つことを考慮して、本比較例における乾燥と熱処
理とを2段の乾燥とみなして各々の乾燥値を加算
することによつて乾燥値を求めると、10秒処理の
ものが490、30秒処理のものが518である。これら
の乾燥値が本発明の乾燥条件内にあるにもかかわ
らず、また互いにかなり接近した乾燥値で製造さ
れているにもかかわらず、乾燥に先立つ水蒸気処
理をうけていないために、一方は結晶の成長がほ
とんど行われず、他方は結晶の成長が過大に行な
われてしまつていることを読みとることが出来
る。 比較例 4 実施例1で得られた繊維を更に緊張下に加熱処
理した繊維の例を示す。 実施例1の200℃で乾燥して製造した繊維の1
部を、約5g/dの緊張下に300℃に加熱した窒
素ガス雰囲気中で処理した。緊張は送りロールと
捲取りロールの速度比を調整することで設定し、
滞留時間はほぼ4秒にした。得られた繊維は、
TRIv=0.068、TRIp=+0.001、Nvp=1.611、Npp
=2.130、RIX=1.10、ACS=74Å、OA=14゜、強
度21.3g/d、伸度1.9%、ヤング率720g/d、
チユーブ疲労寿命160分で、結晶部の配向が過度
に進んだために高ヤング率の繊維が得られるが、
耐チユーブ疲労性は極端に悪くなり、本発明の繊
維とは異なつた用途に用いられるべきである。 比較例 5 参考例に従つて製造したPPTAポリマーから、
ポリマー濃度4.5%の等方性ドープをつくり、こ
の他の条件は実施例1と同様に繊維を製造した。 得られた繊維は、TRIv=0.014、TRIp=+
0.002、Nvp=1.627、Npp=2.010、RIX=0.83、
ACS=55Å、OA=32゜、強度10.6g/d、伸度7.3
%、ヤング率210g/dで、結晶部及び無定形部
のポリマー分子鎖の配向が小さすぎるためか、強
度及びヤング率が小さかつた。 実施例2及び比較例6 参考例に準じて製造した固有粘度6.1のPPTA
ポリマーを99.4%硫酸中にポリマー濃度が16%に
なるように、65℃で2時間で溶解し、次いで脱泡
して異方性ドープとした。実施例1と同様に空気
中に紡出し、次いで特開昭53−144911号公報に開
示されたいわゆる2重流管式紡紡糸浴中を通して
凝固させた後、洗浄した。水蒸気処理と乾燥の条
件を種々変化させて、繊維を製造した。製造条件
と結果を第1表に示す。なお、第1表の繊維は全
て、固有粘度5.8〜6.0、単繊維デニールは約2.0で
あつた。
【表】 実施例3及び比較例7 参考例に準じて製造した固有粘度6.2のPPTA
ポリマーを使用して、ポリマー濃度を種々に変化
させたドープを用いて繊維を製造した。各々のポ
リマー濃度に応じて、ドープの温度を第2表に記
したように調整したが、いずれも異方性を示し
た。また、紡糸時のドラフトを調整することによ
つて第2表に記した単繊維デニールの繊維をを製
造した。乾燥は200℃で14分間行ない、その他は
実施例1と全く同様にして製造した。製造条件及
び結果を第2表に示す。
【表】 【図面の簡単な説明】
第1図及び第2図は、本発明に係る繊維の微細
構造上の特徴を説明するもので、各々の図の4つ
の直線で囲まれた範囲内が本発明の繊維である。
第3図は、本発明の繊維の製造法の一実施態様を
示す説明図である。 1a……空気層、1b……凝固層、2……紡糸
口金、3a,3b,3c……繊維糸条、4……取
出しロール、5……振込みロール、6……反転コ
ンベヤー、7……処理コンベヤー、8……洗浄装
置、9……水蒸気処理装置、10……乾燥装置、
11……捲取り機、12……カバーベルト。 第4図のAは、繊維の断面の模式図であり、B
は本発明の繊維を繊維軸の垂直方向に振動する偏
光により干渉顕微鏡で横方向から観察したときに
みられる干渉縞を示す。 d……Sにおける繊維による干渉縞のずれ、D
……バツクグランドの平行干渉縞の間隔、r……
繊維の断面の半径、rO……繊維の断面の中心、rG
……繊維の外周、S……繊維断面内の任意の点、
S′,S″……Sに対応する繊維の外周、t……Sに
おける繊維断面の入射光方向に測つた厚さ。 第5図はPPTA繊維を繊維軸の平行方向に振動
する偏光によつて干渉顕微鏡で横方向から観察し
たときにみられる干渉縞の模式図であり、A及び
Bは公知の繊維(各々ケブラー−49及びケブラ
ー)の場合であり、Cは本発明の繊維(実施例
1)の場合である。 d……繊維による干渉縞のずれ、D……バツク
グランドの平行干渉縞の間隔、r……繊維の断面
の半径。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 実質的にポリ−p−フエニレンテレフタルア
    ミドから成る繊維において、繊維軸の垂直方向に
    振動する偏光による繊維の屈折率の勾配(TRIv
    が0乃至0.07、繊維軸の平行方向に振動する偏光
    による繊維の屈折率の勾配(TRIp)が−0.060乃
    至−0.005であり、繊維軸の垂直方向に振動する
    偏光による繊維の中心屈折率(Nvp)とX線回折
    強度比(RIX)が下記(1)〜(4)式; Nvp≧−0.08(RIX)+1.672 (1) Nvp≦1.630 (2) RIX≧0.85 (3) RIX≦1.05 (4) を満足する範囲内にあり、且つ繊維の見掛けの微
    結晶の大きさ(ACS(Å))と繊維の配向角(OA
    (度))が下記(5)〜(8)式; OA≧0.04・(ACS)+16 (5) OA≧2・(ACS)−140 (6) OA≦0.04・(ACS)+26 (7) OA≦2・(ACS)−82 (8) を満足する範囲内にあることを特徴とする優れた
    耐疲労性を有する繊維。 2 力学的損失正接(tanδ)が0.001乃至0.030で
    あることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載
    の繊維。 3 固有粘度(98.5重量%硫酸中重合体濃度0.5
    g/dl、30℃において測定、以下同様)が少くと
    も5.0であることを特徴とする特許請求の範囲第
    1項記載の繊維。 4 繊維軸の垂直方向に振動する偏光による繊維
    の屈折率の勾配(TRIv)が0.02乃至0.06であり、
    かつ繊維軸の平行方向に振動する偏光による繊維
    の屈折率の勾配(TRIp)が−0.040乃至−0.010で
    あることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載
    の繊維。 5 繊維軸の垂直方向に振動する偏光による繊維
    の中心屈折率(Nvp)が少くとも1.605であること
    を特徴とする特許請求の範囲第1項記載の繊維。 6 配向角(OA)が少くとも20゜であることを特
    徴とする特許請求の範囲第1項記載の繊維。 7 配向角(OA(度))と見掛けの微結晶の大き
    さ(ACS(Å))との関係が OA≦2・(ACS)−86 で表わされる範囲にあることを特徴とする特許請
    求の範囲第1項又は第6項記載の繊維。 8 単繊維のデニールが3.0デニール以下である
    ことを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の繊
    維。 9 固有粘度が少くとも5.1のポリ−p−フエニ
    レンテレフタルアミドから実質的に成る重合体を
    濃度98重量%以上の濃硫酸に少くとも12重量%の
    濃度に溶解した異方性ドープを、空気中に押出し
    た後に凝固層を通過させ、次いで凝固した繊維を
    ネツトコンベヤー上に堆積させて、繊維に実質的
    な緊張がかからない状態で硫酸の洗浄除去及び乾
    燥を行なつて繊維を製造するに当り、硫酸を洗浄
    除去した後乾燥するに先立つて繊維を実質的に緊
    張させずに少くとも100℃の飽和水蒸気中に30秒
    〜30分保持し、次いで少くとも120℃でかつ450℃
    以下の温度(℃)で、 250≦(温度)×(時間)0.08≦600 を満たす時間(秒)だけ乾燥することを特徴とす
    る実質的にポリ−p−フエニレンテレフタルアミ
    ドからなる繊維の製造法。 10 凝固層が水又は/及び希硫酸水溶液である
    ことを特徴とする特許請求の範囲第9項記載の製
    造法。 11 繊維の洗浄を水又は/及び水性アルカリで
    行なうことを特徴とする特許請求の範囲第9項記
    載の製造法。 12 100℃乃至140℃の飽和水蒸気を用いること
    を特徴とする特許請求の範囲第9項記載の製造
    法。 13 飽和水蒸気中に30秒乃至30分間保持するこ
    とを特徴とする特許請求の範囲第9項又は第12
    項記載の製造法。 14 140℃乃至300℃の温度(℃)で、 280≦(温度)・(時間)0.08≦550 を満たす時間(秒)だけ乾燥することを特徴とす
    る特許請求の範囲第9項記載の製造法。
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