JPS6342194Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案はベルト高さに比し広幅な上面を有する
ローエツジタイプのＶ形変速ベルトの構造に関す
るものである。

従来、ＶベルトはＶプーリに巻掛けて駆動する
時に生じる楔効果によつて動力を伝達するために
耐側圧性が高く、特に広幅な上面を有するＶ形変
速ベルトにあつては高度な耐側圧性が要求され
る。そこでこのような耐側圧性を増大せしめるた
めに従前より種々の提案がなされているが、これ
らの提案は何れも圧縮部の下部のみを補強するこ
とを主目的としたもので、例えば荷重支持部と圧
縮部下部に設けた補強部材との間に短繊維群を配
向埋設せしめた構造からなつている。

しかし、かかる構造のものはプーリとの摩擦に
よつて短繊維群の摩耗，亀裂を生じ、また屈曲時
には応力が圧縮部の下部に集中するためにスダレ
と短繊維群間で剥離する問題があり、更に径の小
さいプーリにベルトを巻掛けると屈曲性が低下す
ると共に圧縮部下部の発熱が著しく高くなり短繊
維群の熱による劣化を促進する難点を有してい
た。

ところで、一方、このような耐側圧性と相俟つ
て屈曲性を向上すべく実公昭52−20623号公報記
載の如くＶベルト下面にコグ部を設け、コグ部全
面に天然繊維又はゴム，合成樹脂等を含浸せしめ
た帆布を埋設せしめたコグ付Ｖベルトがあるが、
これはコグ全面に帆布などの如き繊維を埋設して
いるため耐側圧性は良好であるとしても、硬過ぎ
て柔軟性を損う点に問題がある。

又、コグ部底面に接近して横スダレ層を波形状
に埋設せしめた構成が特開昭51−98460号公報に
より提案されているが、これもコグ部底面部にお
ける補強はとも角としてコグ部中間部における耐
側圧性，耐久性の面ではなお、充分なものという
には至らない。

本考案は上記の如き従来のＶベルト，コグベル
トのもつ構成上の問題を解消することを目的とし
て提案するもので、ベルト下面に設けたベルトコ
グ部全域の内面にわたり複数層のスダレコードを
横方向に、かつベルト長手方向に対して抗張体か
ら離れるに従い大きな波形状で、少なくとも最外
層のスダレ層はほぼコグ形状に沿うようにして埋
設すると共に、各スダレ層間はもとよりコグ部全
面に亘つて短繊維群を横方向に埋設することによ
り耐側圧性もコグ部全面に亘つて均一化され、ベ
ルト屈曲性にスダレに集中する応力を分散させる
と共にスダレ間に介在する短繊維群の摩耗，亀裂
を防止し、耐側圧性，屈曲性共に良好な変速ベル
トを提供することを特徴とするものである。

以下、更に本考案に係るＶ形変速ベルトの実施
例について図面を参照しつつ詳細に説明する。

第１図は本考案に係るＶ形コグ付変速ベルトの
横断面図、第２図はその部分側面図を示すもの
で、図においてａはベルト本体、２，２′はNR
（天然ゴム）、SBR（スチレン・ブタジエンゴム）、
CR（クロロプレンゴム）、NBR（ニトリルゴム）
などの単一材又はこれらを適宜ブレンドしたゴム
からなる上芯ゴムならびにクツシヨンゴム層（接
着ゴム層）で、短繊維群５が上芯ゴム層２中に横
方向に埋設され、上芯ゴム層２の上には経緯綿糸
よりなるバイアス帆布もしくは広角度帆布、或は
ウーリー加工した捲縮ナイロン経糸と通常のナイ
ロン緯糸で織成した伸縮性帆布３が１〜複数層、
通常は１〜３層積層貼着されている。

又、前記クツシヨンゴム層２′中にはポリエス
テル，脂肪族ポリアミド，芳香族ポリアミド（商
品名、ケブラー）、或はガラス繊維のような低伸
度高強力のロープ抗張体１がベルト長手方向に沿
つて縦方向に並列状に埋設されている。

そして前記クツシヨンゴム層２′の下面には更
に通常の如く圧縮ゴム層４が設けられているが、
この圧縮ゴム層４は第２図に示す如く、一定ピツ
チのコグ部ｂが形成され、このコグ部ｂのコグ形
状に沿つて綿，ポリエステル，脂肪族ポリアミ
ド，芳香族ポリアミド，ガラス繊維などの２層の
繊維スダレ６，６′が横方向に、かつベルト長手
方向に対しては底部の外層が内層より大波となる
大小の波形状をなしてコグ層内部の底部，中間部
の広域にわたり埋設されている。

この２層の横スダレ６，６′はコグ谷部b₁にお
いては抗張体１との間隔が狭いため両スダレ６，
６′が接触することもあるが、コグ突起部b₂にお
いては耐側圧性をコグ部全面に亘つて均一化すべ
くスダレ６，６′間に図示のように圧縮ゴム４を
介在せしめて波形状に形成することが肝要であ
る。若し突起部で両スダレ６，６′が接触してい
ると屈曲により両スダレ６，６′間に剥離現象を
起しベルト早期破損の原因となる。

なお、前記横スダレは前述の２層に限定するも
のではなく２層以上で、通常は２〜３層埋設する
ことが好適である。

例えば第４図は横スダレを３層６，６′，６″と
なした場合であり、このようにスダレプライ数が
多くなれば図示のように上部スダレ層６″は次第
に抗張体１に対しほゞ並行した状態で埋設される
ようになる。

前記上芯ゴム層２の外、圧縮ゴム層４の全面、
即ちスダレ６又は６″の上面、スダレ６″，６間又
は６，６′間、ならびにスダレ６′の外周のゴム層
全面に亘つて短繊維群５が横方向に埋設され、更
にコグ部ｂの外周面はバイアス帆布，広角度帆布
（経糸と緯糸の交差角80〜150゜）、或は経糸をウー
リーナイロンで織成した伸縮性帆布７で被覆され
ている。

ここで、前記スダレ６，６′更に６″は通常はベ
ルト長手方向に対して直角方向に挿入するのであ
るが、１層目のスダレ６を０〜30゜斜め方向に、
２層目のスダレ６′を逆方向に０〜30゜傾け更に３
層目のときは３層目は再び逆方向に傾けて積層す
ることも好ましく、そしてこのように１層目スダ
レ６と２層目スダレ６′を更に多層の場合には順
次角度をずらして広角度に交差積層することによ
り一層屈曲性を向上せしめることができる。

以下、本考案に係る変速ベルトの実施効果につ
いて説明する。

横スダレ３プライ及び短繊維群を埋設した本考
案に係るＶ形コグ付変速ベルトＡと、スダレを埋
設せず、短繊維群のみを埋設した従来のＶ形コグ
付変速ベルトＢを夫々、駆動プーリ（Dr、
1720rpm）と従動プーリ（Dn、750rpm）に巻掛
け、2P、Ｓの負荷の条件下で走行試験を行い、
プーリとの接触によるベルト側面のゴム，短繊維
群の摩耗率を調べたところ、第３図に示すグラフ
の如き結果を得た。

同図によると従来の変速ベルトＢでは
10000HRSの走行時間で摩耗率10％（ベルト側面
の摩耗率が10％以上になると回転数が変り変速ベ
ルトの機能を果さなくなるため摩耗率は10％が限
度である）に達しているが、スダレを挿入した本
考案変速ベルトＡは２倍に当る約21000HRSで摩
耗率10％になり、従来品の２倍以上のベルトライ
フを有することが判る。

以上の如く、本考案Ｖ形コグ付変速ベルトはベ
ルト下面に、一定ピツチのコグ群を設け、前記コ
グ部全域にわたる内面に複数層のスダレコードを
ベルト横方向に、かつベルト長手方向に対しては
夫々のスダレ層を分離して外層側を大波状、内層
側を小波状の波形状に、かつ外層側をコグ形状に
沿わせて埋設したローエツジタイプの構成からな
り、コグ部内面のスダレと、突起部におけるスダ
レ間のゴム及び圧縮ゴム層の短繊維の存在により
これらが相俟つて屈曲性良好で、ベルト駆動時の
側部摩耗量も著しく減少し、耐側圧性を向上せし
め変速ベルトとして従来のベルトに比し顕著な効
果を奏し、自動車用農機具用、その他一般産業用
として極めてすぐれた性能を有し好適なベルトで
ある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案変速ベルトの横断面図、第２図
は本考案変速ベルトの部分側断面図、第３図は本
考案変速ベルトと従来の変速ベルトの走行試験結
果を示すグラフである。また、第４図は本考案変
速ベルトの他の実施例に係る部分側断面図であ
る。 ａ……ベルト本体、ｂ……コグ部、２，２′…
…上下クツシヨンゴム層、３……伸縮性帆布、４
……圧縮ゴム層、５……短繊維群、６，６′，
６″……スダレ層、７……コグ部外周の伸縮性帆
布。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 低伸度高強力のロープ抗張体を縦方向並列状に
   埋設したクツシヨンゴム層表面に１〜複数層のゴ
   ム付帆布を積層貼着し、かつ、抗張体下部にコグ
   状の圧縮ゴム層を設けたローエツジタイプのコグ
   付Ｖベルトにおいて、前記圧縮ゴム層のコグ部全
   域の内面にわたり複数層の横方向スダレ層をコグ
   部におけるスダレ層間にゴムを介在せしめ、か
   つ、抗張体から離れるに従い大きな波形状をなす
   と共に少なくとも最外層のスダレ層はほぼコグ形
   状に沿うようにして埋設すると共に圧縮ゴム層全
   面に短繊維群を横方向に埋設し、更にコグ部外周
   面をコグ付伸縮性帆布で被覆したことを特徴とす
   る変速ベルト。