JPS6327459B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は織編物製品においてきわめて新鮮な外
観、様相を与えると共にフイラメント糸もしくは
フイラメント加工糸の機能性などを十分に発揮し
得る部分嵩高糸に関するものである。 合成繊維フイラメント糸による布帛は、ウオツ
シユアンドウエア性や防皺性などのすぐれた特徴
から、衣料品に占める位置はゆるぎなく大きなも
のとなつてきた。しかるにこれら機能的にすぐれ
たフイラメント糸による織編物も、近年その単調
な外観や、粗剛なロー質感を有した手触り感など
が嫌われ、特にフイラメント糸の均一性がフアブ
リツクに無表情性を与える点が昨今の消費者に好
まれない所以となつている。したがつて、このよ
うなマルチフイラメント糸の単調な均一性を無く
し、織編物に自然のアクセントや新鮮な意匠効果
を与えることが強く求められており、例えば糸条
の長手方向に糸斑もしくはスラブなどを有したい
わゆるシヤンタン調のフイラメント糸条が強く望
まれている。そこで近年マルチフイラメント糸条
を使つたスラブ糸、ネツプ糸あるいは糸条の長手
方向に捲縮性が異なる部分捲縮糸などが多数紹介
されるところとなつた。 しかしながら、従来かかるスラブ、ネツプ等を
有する糸条は合撚機、意匠撚糸機あるいは仮撚機
などによつて製造されていて、そのほとんどのも
のは芯糸に対して他の糸条が捲回してスラブ部あ
るいはネツプ部を固定するものであり、糸条には
過大な撚が付与されている。このため糸条は含気
性を失い、粗硬となり、したがつて柔軟性、ふく
らみのある布帛が得がたい。また糸条の旋回性
（トルク）が強く、このため製編織工程で糸が取
り扱いにくく、ひいては生産能率の低下や品質低
下を招きやすく、更には商品企画や設計面で制約
を受け、汎用性に乏しいなどの欠点を有してい
る。 また糸条の長手方向に捲縮性が異なる部分捲縮
糸は捲縮部と非捲縮部との太細差が比較的小さい
ことに加え、捲縮部の形態堅牢性も悪いために、
布帛上でスラブ様の効果が今一歩得られないのが
現状である。 本発明は前記従来糸の有する欠点を解消し、フ
イラメント糸条の機能面のすぐれた特徴を維持
し、しかも糸条の長手方向に自然の糸斑あるいは
シヤンタン調のスラブ等を有し、きわめて自然味
に溢れ、含気性や柔軟性に富む織編物製品を容易
に安定して製造し得る部分嵩高糸を提供すること
を目的とするものであり、流体噴射加工によつ
て、製造される。 従来流体噴射加工により糸条にループ、たるみ
を間歇的に形成させる方法として、断続的に噴射
させた流体により処理する方法、糸条に張力を断
続的に付与させて処理する方法などが公知であ
る。しかしこれらの方法では、流体の噴射が停止
した時あるいは糸条に張力が付与された時、ジエ
ツトノズルと供給ローラーの間で糸がたるみ、供
給ローラーへの捲付を生ずる。このため流体処理
ゾーンにおいて一時的に実質のフイード率を多量
に与えることができず、したがつて起生されるル
ープ、たるみ部はきわめて細いものであつて、ス
ラブ様の明瞭な外観効果が得られない。 本発明者はこれらの欠点を解消する加工法とし
て、すでに特願昭55―13184号において、流体噴
射加工によるジエツトノズルへの糸条供給を適宜
量瞬時増大させ、スラブ部の太さ、長さを任意に
変化し得るフアンシーヤーンの製造方法を提案し
たが、その後もスラブ部及び非スラブ部の形態と
布帛の外観、風合との関連性について鋭意研究を
重ねた結果、特定条件下で本発明者の前記提案の
技術を巧みに活用することによつて、きわせて上
品で、自然味のある外観、風合を呈する糸条が得
られることを見い出し、本発明を完成するに至つ
たものである。本発明は前記目的を達成するため
に次のごとき構成を有する。 すなわち本発明は、少なくとも１本の熱可塑性
合成繊維のマルチフイラメント糸条から成り、該
糸条の長手方向に沿つて個々の単フイラメントに
起生されたループやたるみが絡まり合つて成る嵩
高交絡部と、無撚で各々のフイラメントが強く絡
まり合うことなく集束されていて、しかもループ
のない非嵩高部とを任意間隔で交互に有する糸条
であつて、該嵩高部においてはその長さ及び見か
け太さの異なるものが混在しており、非嵩高部に
比べて明らかに短く、かつ見かけが太く、更に隣
り合う嵩高交絡部と非嵩高部の繊度比が1.2〜7.5
を満足することを特徴とする部分嵩高糸である。 ここでいうループとはクルノールド状のルー
プ、たるみとはアーチ状のループをそれぞれ意味
し、嵩高交絡部においては該クルノールド状のル
ープとアーチ状のループとが混在して多量に起生
されていて、これらのループが強固に絡まり合つ
て形成されている。一方非嵩高部においてはクル
ノールド状のループは皆無に近いが、アーチ状の
ループであれば若干起生されていても支障はな
い。また該非嵩高部は無撚でしかも各々のフイラ
メントがほとんど交絡されていないかもしくはフ
イラメントが分繊しない程度に軽く交絡されてい
る。 本発明は上記の構成により次のごとき効果を有
する。 (1) 本発明の部分嵩高糸はループやたるみが絡ま
り合つて成る嵩高交絡部とループのない非嵩高
部とにより構成されていて、嵩高交絡部、非嵩
高部ともに撚や交絡などでしめつけられること
なく、ふくらみを有するため、柔軟で含気性に
富み、自然なシヤンタン風の外観、風合を呈す
る。 (2) 嵩高交絡部は明瞭なスラブ形態を呈し、見か
け太さ及び長さの異なるものが混在し、よりシ
ヤンタン風のスラブ効果を高め得る。 (3) 非嵩高部は嵩高交絡部に比べて長く、糸条に
占める割合が高いので地糸となる。供給糸条と
ほぼ同様の形態と性能を保つているため、交編
糸条もしくは交織糸条として特殊な糸条を用い
ることなく、前記供給糸条と同一の糸条を使用
することによつて、交編織糸条と非嵩高部との
違和感をなくして、より一層のスラブ効果が得
られる。（一般にスラブ糸は製品の風合、外観
あるいはコスト低下などを目的として、普通の
糸条と交編あるいは交織されるケースが多い
が、この場合地糸と交編・織糸の形態が極端に
異なると、スラブ糸が筋状に出現し、品位的に
好ましい結果が得られず、したがつて地糸、す
なわち非スラブ部の構造が例えば強撚、強い絡
まり、ループが付与されるなど特殊なほど、ス
ラブ糸の汎用性が低下することになる。） (4) 嵩高交絡部と非嵩高部の太細差が大きいた
め、該嵩高交絡部はスラブとしてのすぐれた外
観効果を有する。本発明者は嵩高交絡部と非嵩
高部の形態と布帛でのフアンシー効果とについ
て克明に研究を行つた結果、嵩高交絡部と非嵩
高部の繊度比が1.2以上である糸条を編織物に
供した場合に、自然の太さ斑やシヤンタン風の
スラブ調などの外観上の意匠効果が高く、美的
感覚にすぐれた製品が得られることを見い出し
た。しかしながら該繊度比が7.5を超えると、
製織工程において走行する糸条の張力斑が大き
くなり、品質低下の要因となるほか、編針の損
傷や綜絖、筬などに引掛かつて糸切れなどの障
害を起しやすく、またピリングやスナツギング
などの物性が低下するので好ましくない。 (5) 嵩高交絡部はループ、たるみが絡まり合つて
交絡されているため形態安定性にすぐれ、布帛
製造過程において、該嵩高交絡部が消失される
ことがなく、このため製品上にスラブ効果を有
効に具現できる。 本発明の糸条は、高オーバーフイード率下での
流体処理によつてループ、たるみを起生し得るジ
エツトノズル（噴射流体撹乱装置）を使用して、
少なくとも１本の熱可塑合成繊維から成るマルチ
フイラメント糸条を、ループやたるみが起生され
得ないような低過給率で供給し、糸条供給ローラ
ーとジエツトノズルとの間で一時的に走行中の糸
条に抵抗を付与してジエツトノズルへの供給量を
減少させ、一方該抵抗を付与する位置と供給ロー
ラーの間で該抵抗によつて一時的に過剰供給され
る糸条を負圧吸引流により吸い込ませて滞留した
糸道を形成し、次いで糸条から前記抵抗を解除し
てジエツトノズルの噴出力により該滞留糸条を瞬
時に元の糸道状態に復帰させて、ジエツトノズル
への実質的な過給率を瞬時増大させ、糸条の長手
方向に沿つて間歇的に多量のループ、たるみが絡
り合つたスラブ、ネツプ様の嵩高交絡部を起生さ
せることによつて得られる。すなわち供給糸条の
フイード率をきわめて小さく設定して流体処理を
施すことによつてループのない非嵩高部を形成
し、さらに該流体処理ゾーンの実質的なフイード
率を間歇的に瞬時増大させることによつて多量の
ループ、たるみが絡まり合つてなる前記嵩高部を
形成する。 ここで重要な点では、流体処理ゾーンの過給率
を、糸条に抵抗を与えない通常の流体処理ではル
ープ、たるみが起生されないように、きわめて低
く設定することである。該設定過給率は供給糸条
の本数あるいは性質、他の処理条件（圧力、糸速
など）、ジエツトノズルの噴射力などによつて異
なるが、概ね２〜５％以下に設定するのが好まし
い。該過給率が高い場合は非嵩高部にもループ、
たるみが多量に起生されて、スラブ、ネツプ形態
の明瞭性が低下するので好ましい結果が得られな
い。しかし該非嵩高部は糸の取り扱いの面から、
フイラメントが分繊しない程度に交絡されている
のが好ましい。このため、ジエツトノズルとして
はループ、たるみの起生を目的としたものであつ
て、かつ低オーバーフイード率下においては若干
のインターレース効果が得られるようなものを用
いるのが好ましい。この場合若干のアーチ状のル
ープが発生するが、前記効果に支障を与えるほど
のものではない。 もう一つの重要な点は、前述したごとく糸条に
抵抗を付与すると共に過剰供給糸条を吸引滞留さ
せることによつて、明瞭なスラブ効果を有する嵩
高交絡部の形成を可能ならしめることである。す
なわち糸条に単に抵抗を付与するだけでは、該抵
抗によつて一時的に過剰供給となつた糸条がフイ
ードローラー等に捲きつきやすく、したがつて実
質の過給率を多量に与えることができず、このた
め明瞭なスラブ効果が得られない。 更にもう一つの重要な点は、前記滞留糸条を瞬
時ジエツトノズルにより噴出させて、嵩高交絡部
を形成させることであり、本発明は該嵩高交絡部
の太さ、長さを適宜変化させることによつて、よ
り自然なシヤンタン調のスラブ効果を高めること
ができる。この嵩高交絡部はジエツトノズルの噴
射力、吸引流の負圧、糸速などの関連において、
糸条への抵抗付与時間を適宜変化させることによ
つて、容易に種々形態の異なるものを混在させる
ことができる。 また本発明の糸条は、少なくとも１本がマルチ
フイラメント糸条である同種又は異種の２本以上
の糸条を同時にジエツトノズルに供給し、一方の
糸条は常に一定の過給率で変化なく走行させ、他
の少なくとも１本のマルチフイラメント糸条に前
記のごとく抵抗を間歇的に付与して過給率の増大
をもたらして、多数のループ、たるみを有する嵩
高交絡部と非嵩高部とを交互に形成させることに
よつて製造することもできる。 次に本発明の部分嵩高糸の前記製造方法につい
てさらに図面を用いて詳しく説明する。 一対の供給ローラ２と引取ローラ７との速度比
によつて決定される。一定の過給率によつて走行
するマルチフイラメント糸条１は、供給ローラ２
と引取ローラ７との間を糸条進行方向から順に負
圧糸条吸引装置４、間歇作動する糸条抵抗付与装
置５及びジエツトノズル６を設けた加工域に供給
される。糸条抵抗付与装置５の作動が停止して抵
抗付与を受けない場合、糸条１は負圧糸条吸引装
置４の入口を横切つて進行し、直線状の糸条走行
糸道が形成される。すなわち、該負圧糸条吸引装
置４は常時空気吸引状態に保たれてはあるが、糸
条抵抗付与装置５が作用しないときは走行糸条１
はジエツトノズル６の糸条走行推進力によつて、
負圧糸条吸引装置４の吸引力に抗して、吸引され
ることなく一定の過給率、すなわち前記のごとく
ループやたるみを起生することのできない低過給
率でジエツトニノズル６へ導入され、供給糸条１
の形態のままの非嵩高部が形成される。一方、糸
条抵抗付与装置５が作用する場合は、供給ローラ
２と引取ローラ７の間で一定の低過給状態で糸条
が走行しているために糸条抵抗付与装置５とジエ
ツトノズル６との間の過給率は低下し、当然なが
ら供給ローラ２と糸条抵抗付与装置５の間の走行
糸条はたるみを生じ、該たるみ糸条は常時吸引状
態にある負圧糸条吸引装置４へ吸込まれ、点線３
のごとく滞留した糸道を形成することとなる。次
いで糸条抵抗付与装置５による抵抗を解除するこ
とによつて、滞留した糸条は一時的にループやた
るみを起生することのできる高過給率に増加して
ジエツトノズル６へ導入され、嵩高交絡部を形成
する。ここで前記糸条抵抗付与装置５は、例えば
電磁石を利用してワツシヤー等の吸引により糸条
を圧迫する装置を用いて、あらかじめプログラミ
ングされた別の指令装置によつて任意の間隔で作
用させるとともに、抵抗付与の大きさについても
自在に操作し、かつ抵抗の解除速度をも変更し
て、ジエツトノズル６への過給率を制御すること
で嵩高交絡部分の形態を種々変化に富ませること
ができる。 以下実施例により本発明を更に詳しく説明す
る。 実施例 １ 第１表の条件下で本発明の部分嵩高糸の製造を
行つた。糸条に抵抗付与する方法は、あらかじめ
作用間隔をプログラミングしている別の指令装置
からの電気的指令により励磁される電磁石によつ
て、磁性体ワツシヤーが糸条を圧迫して糸条の走
行に抵抗を付与したり解除したりする糸条抵抗付
与装置を用いた。

【表】 上記条件で得られた糸条は、第１図に示すごと
く、ループやたるみが多数起生し、該ループやた
すみが堅固で形態堅牢性が強く、スラブ様の明瞭
な形態を呈した嵩高交絡部ａと供給糸条にほぼ近
いマルチフイラメント形態を呈した非嵩高部ｂと
を長手方向に交互に有しており、糸条100m当り
30コの嵩高交絡部を有し、該嵩高交絡部は平均繊
度280デニール（最も細いもの180デニール、最も
太いもの350デニール）、平均長さ10.5cmであり、
非嵩高部は平均繊度102デニール、平均長さ320cm
で、隣り合う嵩高交絡部と非嵩高部との繊度比は
1.8〜3.6であつた。 当該糸条を織編物に供したところ、さわやかな
ドレープ性を有し、しかもＷ＆Ｗ性、プリーツ性
などにすぐれた性能を発揮し、自然なスラブが点
在した製品が得られた。 実施例 ２ 糸条抵抗付与装置は実施例１と同じものを使用
して、第２表に示す条件下で本発明の部分嵩高糸
の加工を行つた。なお供給糸条Ｂは供給糸条Ａと
は別の供給ローラーにより、糸条抵抗付与装置を
通過させることなく直接ジエツトノズルに供給し
た。

【表】 かくして得られた糸条は、第２図に示すごと
く、ループやたるみを有する嵩高交絡部ｃと仮撚
糸のクリンプが混在した非嵩高部ｄとを有し、こ
の糸条を使用して編織物を製造したところ全体に
伸縮性とボリウム感を有し、Ｗ＆Ｗ、防皺性にす
ぐれ、シヤンタン調のスラブ効果を呈する製品が
得られた。なお当該糸条100m当りについて測定
した嵩高交絡部の平均繊度は430デニール、平均
長さは12.5cm、非嵩高部の平均繊度は155デニー
ル、平均長さは280cmであり、隣り合う嵩高交絡
部と非嵩高部との繊度比は2.1〜3.5であつた。

【図面の簡単な説明】

第１図は実施例１により得られた本発明の糸条
の模式図、第２図は実施例２により得られた本発
明の糸条の模式図及び第３図は本発明の糸条を製
造するための加工工程図の一例をおのおの示す。 ａ…嵩高交絡部、ｂ…非嵩高部、ｃ…嵩高交絡
部、ｄ…非嵩高部、１…供給糸条、２…供給ロー
ラー、４…負圧糸条吸引装置、５…電磁式糸条抵
抗付与装置、６…ジエツトノズル、７…引取ロー
ラ、８…巻取ロール。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 少なくとも１本の熱可塑性合成繊維のマルチ
   フイラメント糸条から成り、該糸条の長手方向に
   沿つて個々の単フイラメントに起生されたループ
   やたるみが絡まり合つて成る嵩高交絡部と、無撚
   で各々のフイラメントが強く絡まり合うことなく
   集束されていて、しかもループのない非嵩高部と
   を任意間隔で交互に有する糸条であつて、該嵩高
   交絡部においてはその長さ及び見かけ太さの異な
   るものが混在しており、非嵩高部に比べて明らか
   に短く、かつ見かけが太く、更に隣り合う嵩高交
   絡部と非嵩高部との繊度比が1.2〜7.5を満足する
   ことを特徴とする部分嵩高糸。