JP2892187B2 - フアンシーヤーンおよびその製造方法 - Google Patents

フアンシーヤーンおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、糸条の長手方向に
嵩高性の大きい部分と小さい部分とが交互に存在するフ
アンシーヤーンの製造方法に関し、さらに詳しくは各部
分の長さ、太さは規則的にあるいは不規則的である紡錘
形状に優れたフアンシーヤーンの製造方法に関するもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来、マルチフイラメント糸条を用いた
編織物製品は伸縮性、嵩高性、防しわ性など機能的に優
れた特徴を持ちあわせていることから、衣料用製品に占
める位置を確立してきた。
【0003】しかしながら、近年、前記従来のマルチフ
イラメント糸条による編織物製品はその単調な外観や風
合の点で消費者に敬遠される傾向が強まり、自然の太さ
斑や嵩高斑からくる変化に富んだ表面効果と新鮮な風合
が強く望まれている。
【0004】これらを改善する技術として、消費者のニ
ーズに即対応でき製品をより高級化したり特品化したり
することができるような、例えばコンピュータなどで糸
製造条件を瞬時に制御し、かつ高速製造できる技術が要
求されている。
【0005】例えば、特開昭61−186544号公報
に示されている可変速糸条供給方法がある。しかしこの
提案では、供給量の変速としてインバータを用いた糸加
工方法であるため、糸供給の可変信号に対する時間遅れ
(立ち上がり、立ち下がり)が大きく、特に糸加工速度
が高速では糸供給量が緩慢になり、糸加工速度が高くな
ればなるほどこの傾向は拡大する傾向がある。その結
果、斑の太さや長さに限界があり製品をさらに高級化し
たり特品化したりするには、問題があり合理的な生産を
実現するには致命的な欠陥になる。
【0006】その結果、斑の太さや長さに限界があり製
品をさらに高級化したり特品化したりするには、問題が
あり合理的な生産を実現するには致命的な欠陥になる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
したような点に鑑みて糸加工速度が速くなっても、流体
噴射加工における糸条の供給量を瞬時に容易に極めて精
度良く制御し、太さ斑、長さ斑の変化に富んだ表面効果
と新鮮なスパンライク風合を有するフアンシーヤーンの
製造方法を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
本発明のフアンシーヤーンの製造方法は、以下の構成か
らなる。
【0009】すなわち、走行する単糸条のマルチフイラ
メント糸に水を付与した後、流体噴射処理を施し、ルー
プ、絡まりあるいはたるみの嵩高性を付与するに際し、
該マルチフイラメント糸を巻き付け型フイードローラに
より流体噴射処理系へ供給する単位時間当たりの糸供給
量を瞬時に規則的あるいは不規則的に制御することを特
徴とするフアンシーヤーンの製造方法である。
【0010】
【発明実施の形態】以下、さらに詳しく本発明について
説明をする。
【0011】まず本発明において、フアンシーヤーンの
嵩高性の大きい部分は流体噴射処理を受けた多数のルー
プや絡まりあるいはたるみから紡錘型に構成された部分
である。嵩高性の大きい部分は比較的サイズの小さいル
ープや絡まりあるいはたるみなどから形成され、逆に嵩
高性の小さい部分ではこれらの個数が少なく、嵩高性が
小さく均一な部分であったり、嵩高性が小さく不均一な
部分であったりする。なお、紡錘型とは紡績工程に用い
られる管糸あるいはコップの形状、もしくは実質的にこ
れらの形状に近似した形状をいう。
【0012】各部分の糸長さは、糸供給量の供給時間や
供給速度の組み合わせによって決まるが、短い長さで
0.5cm、長いものでは数千m以上の範囲まで自由に
選択できる。
【0013】具体的に嵩高性の大きい部分の長さとし
て、実用的にはネップ狙いで1〜3cm、スラブ狙いで
10〜15cm、玉糸狙いで15〜20mが好ましい範
囲である。
【0014】また、嵩高性の部分の太さについて、嵩高
性の大きい部分は小さい部分に比較して見掛け糸径から
いえば1.1〜7倍にあるが、あまり太すぎると工程通
過性を下げるので好ましくなく、一般的には1.5〜5
倍の範囲のものが好ましい。さらにまた嵩高性の部分の
太さは一定の太さではなくいわゆるランダム性のあるも
のであるが、糸斑の程度を表すU%では、糸長さ方向に
平均20%以下のレベルが好ましい。
【0015】本発明においては嵩高性の大きい部分の形
状は紡錘形状から構成されているので、編織物に供した
とき、見栄えの良い自然感のある太さ斑外観を有する。
また長さの組み合わせでは太い嵩高部分より細い嵩高部
分の糸長さが長くなるような組み合わせにするとパター
ンが自然的に見える。平均長さ比率では1:1〜1:2
000の範囲が優れており、上品で自然感がある。なお
この比率は、後述する図2に示した糸供給量を瞬時に可
変制御する装置つまりコンピュータ制御によって容易に
変更できるものである。
【0016】特殊な用い方として、この比率を200
0:1〜1:1の範囲に逆転させることも可能である。
【0017】嵩高性の大きい部分と嵩高性の小さい部分
はそれぞれが任意の長さで糸長手方向に交互に存在し、
交互の周期が不規則的なものとなって、自然感のある表
面が得られる。
【0018】布帛の風合は、フイラメント糸の生糸を基
にするが、嵩高部分の存在により、スパンライクな風合
になる。用いるフイラメント糸のデニールが細くなれば
柔らかいタッチになり、さらに、収縮率の異なる単繊維
フイラメント糸を混繊するとふくらみ感を、糸断面形状
を変形にするとハリ、腰あるいはドレープ性のある製品
を得ることができる。
【0019】本発明の方法により得られる糸形態モデル
外観を図1に例示した。イは嵩高性の小さい部分を、ロ
は嵩高性の大きい部分をそれぞれ示した。
【0020】また、図7に嵩高性の大きい部分の一例を
拡大して示した。図8に嵩高性の小さい部分の一例を拡
大して示した。図9に嵩高性の小さい部分の他の一例を
拡大して示した。
【0021】次に、製造方法について説明する。
【0022】図2は、本発明に係るマルチフイラメント
糸条に流体噴射処理を施すことにより、ループやタルミ
の嵩高性を付与する糸加工法の一例を示す工程図であ
る。マルチフイラメント糸条1はフイードローラ2から
供給されるが、該フイードローラ2の回転数は瞬時可変
制御されているので、糸供給量は絶えず変化しながら流
体乱流処理ノズル4へ供給される。流体乱流処理を受け
た該マルチフイラメント糸条はデリベリローラ5から引
き取られ巻取ローラ6によってチーズに巻き取られる。
【0023】フイードローラ2の回転数はコンピュータ
装置7によって制御されているので、要求される斑のパ
ターンを容易に設計することができる。供給された糸
は、水付与ローラ3によって水付与されノズル4で処理
される。単位時間当たりの糸供給量が多くなると嵩高性
は大きく、糸供給量が少なくなると嵩高性は小さくなり
太さに変化を付けることができ、また、糸供給時間が長
いと嵩高性は大きく糸長は長く、糸供給時間が短いと嵩
高性は小さく糸長は短くなる。
【0024】マルチフイラメント糸条1は、ポリアミ
ド、ポリエステル等の合成繊維やアセテート、レーヨン
等の半合成繊維などからなり、そのうちポリアミドやポ
リエステルのマルチフイラメント糸条がループやタルミ
の嵩高性形成に適している。構成フイラメント数では例
えば、75デニールのマルチフイラメント糸では、24
〜96本が好ましい。また丸型よりY型、三角などの異
形断面の方が太さ斑部を形成しやすく、さらにデニール
ミックス、収縮差混繊、シックアンドシン、分割型繊維
などを組み合わせることにより、さらに高品質の製品を
得ることができる。
【0025】フイードローラ2の回転数はコンピュータ
装置7を利用し瞬時に可変制御するが、具体的にはロボ
ット機械の位置決めなどに用いられているサーボモータ
を利用する。
【0026】高速度回転におけるモータの回転数を瞬時
可変制御するためには、その応答速度は極めて速い条件
が要求される。増速変更あるい減速変更したとき、信号
に対する遅れ時間(立上がりあるいは立ち下がり)は3
0ms以下とすることが好ましい。例えば、300m/
minで糸を走行させるとき、少なくとも30ms以下
の遅れ時間で増速変更あるいは減速変更させると、30
cm以下の短いスラブ部を有するフアンシーヤーンを形
成することができる。30msを越えると、増速変更あ
るいは減速変更の時間遅れが長くなり、その結果緩慢な
動きになり短い長さのものを得ることができなくなる。
【0027】応用例として、さらに、チーズに巻き上げ
る前に再熱セットを施したり、同種あるいは前記したデ
ニール、断面形状、収縮率、あるいは光沢、素材など異
種の糸条を複数本引き揃え、流体乱流処理を施したりす
ることができる。
【0028】また糸供給量の代わりに糸引取り量、つま
り図2に示したデリベリローラの速度を変更してもよ
い。
【0029】見掛け太さの測定法は、デニール当り0.
1gの張力下で糸長さを固定し、リーダプリンターにて
5倍に拡大した投影形態の糸径を測定したものである。
【0030】
【実施例】実施例1 図2に示す加工工程によって下記の条件で糸加工を行な
った。
【0031】 供給糸条 ポリエステルマルチフイラメント糸 75デニール72フイラメント 三角断面糸 糸加工速度 400m/min 糸供給量変更の繰り返し単位 (矩形波の入力信号…図3) (a)20ms×393m/min (b)200ms×318m/min 立上がり遅れ時間 5ms 立下がり遅れ時間 5ms 流体乱流処理ノズル圧力 6.0kg/cm2 その結果次のフアンシーヤーンを得た。
【0032】 当該糸を、経糸がポリエステルフイラメント糸75デニ
ールの織物の緯糸に用いたところ、自然な斑感のあるシ
ャンタン調の外観でスパンライクな風合いを有する製品
を得た。特に、嵩高部の小さい部分は均一な太さムラを
有するものであった。
【0033】実施例2 図2に示す加工工程によって下記の条件で糸加工を行な
った。
【0034】 供給糸条 ポリエステルマルチフイラメント糸 75デニール72フイラメント 三角断面糸 糸加工速度 170m/min 糸供給量変更の繰り返し単位 (SIN波の入力信号…図4) (c)10ms×p160m/min (d)20ms× 140m/min (e) 5ms×p150m/min (f) 2ms×p143m/min×4サイクル (g)50ms× 140m/min 立ち上がり時間遅れ 4ms 立ち下がり時間遅れ 4ms p:ピーク 流体乱流処理ノズル圧力 6.0kg/cm2 その結果次のフアンシーヤーンを得た。
【0035】 嵩高部(大) 見掛け太さ 1.5〜4.5倍 … 濃色部 長さ 2〜35cm 平均見掛け繊度 98デニール 嵩高部(小) 長さ 3〜150cm … 淡色部 平均見掛け繊度 76デニール いずれもランダムに表れた。
【0036】当該糸を、経糸がポリエステルフイラメン
ト糸75デニールの織物の緯糸に用いたところ、自然な
斑感と濃淡差のあるシックアンドシン調の外観でスパン
ライクな風合いを有する製品を得た。特に、嵩高部の小
さい部分に微少な太さ斑を有する。
【0037】実施例3 図2に示す加工工程によって下記の条件で糸加工を行な
った。
【0038】 供給糸条 ポリエステルマルチフイラメント糸 75デニール72フイラメント 三角断面糸 糸加工速度 170m/min 糸供給量変更の繰り返し単位 (SIN微小波の入力信号…図5) (h)2ms×140〜143m/min 流体乱流処理ノズル圧力 6.0kg/cm2 その結果次のフアンシーヤーンを得た。
【0039】 嵩高部(大) 見掛け太さ 1.5〜2.5倍 … 濃染部 長さ 1.2〜3.2cm 嵩高部(小) 長さ 1.5〜3.5cm … 淡染部 当該糸を、経糸がポリエステルフイラメント糸75デニ
ールの織物の緯糸に用いたところ、微少な斑感と濃淡差
のあるスパンライクな風合いを有する製品を得た。
【0040】実施例4 図2に示す加工工程によって下記の条件で糸加工を行な
った。
【0041】 供給糸条 ポリエステルマルチフイラメント糸 75デニール72フイラメント 三角断面糸 糸加工速度 300m/min 糸供給量変更の繰り返し単位 (SIN長周期波の入力信号…図6) (i)300m/min (j)471m/min (k) 1sec 流体乱流処理ノズル圧力 6.0kg/ cm2 嵩高部(大) 見掛け太さ 1.1〜3.0倍 … 濃染部 長さ 1.1〜1.3cm 平均見掛け繊度 88デニール 嵩高部(小) 長さ 2.3〜2.7cm … 淡色部 平均見掛け繊度 78デニール 当該糸を、経糸がポリエステルフイラメント糸75デニ
ールの織物の緯糸に用いたところ、長周期の嵩高斑感と
濃淡差のあるスパンライクな風合いを有する製品を得
た。
【0042】
【発明の効果】以上述べた通りの本発明のフアンシーヤ
ーンの製造方法によれば、嵩高性の小さい部分はストレ
ートな生糸の状態に近く、集束性は高く開繊することは
少ないので、解舒性や製編織性などの工程通過性は良好
である。
【0043】また集束性は高いので、編織物製品の表面
や組織の綾目が美しい。
【0044】嵩高性の大きい部分は多数のループ、絡ま
り、たるみを有した紡錘型のスラブ形状を有するので、
ふくらみ感があり見栄えがよい。
【0045】該スラブの長さは糸長手方向にランダムに
存在するので、斑の長さパターンに自然感のある表面効
果のあるスパンライクな風合いを得ることができる。
【0046】特に、該スラブ形状は糸供給量を滑らかな
SIN波の信号入力により制御しながら製造することに
より極めて糸足の長い紡錘形の糸形状と滑らかな凹凸感
のある風合いを得ることができる。
【0047】太さ斑および長さ斑の周期はコンピュータ
の入力信号により自由に変更すことができるので、斑の
周期が重なり合ってイラツいたり縞状の斑が生じること
はない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によって得られるフアンシーヤーンの一
例を示す外観図である。
【図2】本発明のフアンシーヤーンの製造方法の一例を
示す工程図である。
【図3】本発明の実施例1における矩形波の入力信号図
である。
【図4】本発明の実施例2におけるSIN波の入力信号
図である。
【図5】本発明の実施例3におけるSIN微小波の入力
信号図である。
【図6】本発明の実施例4におけるSIN長周期波の入
力信号図である。
【図7】本発明によって得られるフアンシーヤーンの嵩
高性の大きい部分の一例を示す外観図である。
【図8】本発明によって得られるフアンシーヤーンの嵩
高性の小さい部分の一例を示す外観図である。
【図9】本発明によって得られるフアンシーヤーンの嵩
高性の小さい部分の他の一例を示す外観図である。
【符号の説明】
1:マルチフイラメント糸 2:フイードローラ 3:水付与ローラ 4:流体乱流処理ノズル 5:デリベリローラ 6:巻取ローラ 7:コンピュータ装置

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】走行する単糸条のマルチフイラメント糸に
    水を付与した後、流体噴射処理を施し、ループ、絡まり
    あるいはたるみの嵩高性を付与するに際し、該マルチフ
    イラメント糸を巻き付け型フイードローラにより流体噴
    射処理系へ供給する単位時間当たりの糸供給量を瞬時に
    規則的あるいは不規則的に制御することを特徴とするフ
    アンシーヤーンの製造方法。
  2. 【請求項2】コンピュータから指令する増速あるいは減
    速の信号入力点に対し、糸供給の立ち上がり遅れ時間あ
    るいは立ち下がり遅れ時間が、30ms以下で糸供給量
    を制御することを特徴とする請求項記載のフアンシー
    ヤーンの製造方法。
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JPS57121633A (en) * 1981-01-20 1982-07-29 Unitika Ltd Partialy bulky yarn
JPS61186544A (ja) * 1985-02-13 1986-08-20 三菱レイヨン株式会社 可変速糸条供給方法

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