JPS624417Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 −技術分野− 本考案は溝加工を行うエンドミルとしての機能
と穴あけ加工を行うドリルとしての機能とを併せ
持つドリル兼用エンドミルに関し、特に、切刃の
すべてがスローアウエイチツプにより構成されて
上記両機能を果たし得るようにされたものに関す
る。

−従来技術− 今日、切削工具の切刃をスローアウエイチツプ
で形成するという工具のスローアウエイ化はめざ
ましいものがあるが、溝加工を行うエンドミルと
穴あけ加工を行うドリルとは、互いに別の工具と
してそれぞれのスローアウエイ化が進められてき
た。ドリルの切刃を構成するスローアウエイチツ
プの配置とエンドミルの切刃を構成するスローア
ウエイチツプの配置とが両立し難かつたからであ
り、そのために溝加工にはエンドミルを、また穴
あけ加工には別工具たるドリルをそれぞれ使用す
る必要があつた。

もつとも、深さが10mm程度以下のごく限られた
浅穴や浅溝の加工については、スローアウエイチ
ツプ自体の大きさの範囲内でエンドミルとドリル
とを兼ねることもできなくはなかつた。事実、そ
のような工具はある。

しかしながら、スローアウエイチツプの大きさ
を超える深穴や深溝の加工については、兼用する
ことが困難であり、また、そのような兼用化を図
つた工具は未だ知られていない。

そのため、深穴・深溝加工の組合せが多いよう
なワークの加工（例えば金型加工等）において、
溝切削から穴あけに、または穴あけから溝切削に
加工形態が変わる度に、いちいち工具の交換をし
なければならなかつたり、あるいは各々専用の加
工機を設置してワークを流したりする必要があ
り、加工能率や加工設備費などの面で問題があつ
た。

−考案の目的− 本考案は上記のような事情を背景として為され
たものであり、その目的とするところは、すべて
の切刃がスローアウエイチツプにより構成される
切削工具であつて、浅穴、浅溝の切削のみならず
深穴、深溝の切削も行うことができるドリル兼用
エンドミルを提供することにある。

−考案の構成− そのような目的を達成するために、本考案にお
いては、軸心まわりに回転させられる本体に、側
面切削用のスローアウエイチツプ、穴内周部切削
用のスローアウエイチツプ及び穴外周部切削用の
スローアウエイチツプ（以下各々をチツプとも略
称する）をそれぞれ固定するようにした。

上記本体は、その外周部に２本の切粉排出溝を
備える。それらの溝は本体の軸心に平行な溝でも
ねじれ溝でもよいが、いずれにしても本体の長手
方向に沿つて形成され、それら溝と溝との間が所
定の幅を有する堤状の部分、すなわちランドとな
る。そして、上記２本の切粉排出溝の回転方向向
きの溝面に、それぞれ１個以上の側面切削用スロ
ーアウエイチツプが、チツプ表面が回転方向に向
くとともに切刃が一仮想円筒面上に位置し、且
つ、一方の溝面のチツプと他方の溝面のチツプと
が、本体の長手方向に互い違いにずれたいわゆる
千鳥配置となるように固定される。言い換れば、
双方のチツプの回転円筒軌跡が一部で重なり合う
ようにそれらの軸方向位置を定めるのである。

そのように互い違いに配置する結果、一方の溝
面の最も先端側のチツプが他方の溝面の最も先端
側のチツプよりさらに先端側に位置することとな
るが、その最も先端側の側面切削用チツプが固定
された溝面の回転方向後方のランドの先端面、つ
まりは本体の先端面に、穴内周部切削用スローア
ウエイチツプをチツプ表面が本体の軸心に平行な
状態より直角な状態に近くなる姿勢で固定するの
である。一方、その最先端側の側面切削用チツプ
に対して、他方の切粉排出溝の溝面に固定の側面
切削用チツプは、先端側のものでも上記互い違い
にされた分だけ本体の基端側に引つ込んだ軸方向
の位置を占める。その溝面のスペースに、穴外周
部切削用のスローアウエイチツプをチツプ表面が
本体の回転方向向きとなる姿勢で固定する。その
穴外周部切削用チツプは、そこの溝面を形成して
いるランドの先端面よりは先端側に突出する位置
を占め、また側部にも切刃を備えて、そこが上記
溝切削用チツプと共通の一仮想円筒面上の位置を
占めるようにされる。

そのように上記３種類のチツプ、すなわち側面
切削用、穴内周部切削用及び穴外周部切削用の
各々のものを固定することにより、本体が軸心方
向に前進させられるときは、穴内周部切削用及び
穴外周部切削用のスローアウエイチツプが穴あけ
加工を行い、また、軸心に直角な方向に移動させ
られるときには、穴外周部切削用及び側面切削用
のスローアウエイチツプが溝加工を行うドリル兼
用エンドミルが得られるのである。

−考案の効果− 一般にスローアウエイチツプによる溝切削にお
いて平滑な溝面を形成するためには、上記のよう
に側面切削用チツプを双方の溝面に互い違いに固
定し、各側面切削用チツプの回転軌跡をオーバラ
ツプさせて不連続部のない完全な仮想円筒面が構
成されるようにすることが必要である。そのよう
にしないと、切削残りやスジ等が生じるからであ
る。なお、側面切削用チツプとして一個の長いチ
ツプを使用すればその必要はないか、そのような
チツプを製作することは困難であり、現実的では
ない。

そして、側面切削用チツプを双方の溝面に互い
違いに固定することを前提とすると、チツプの軸
方向位置が本体の基端側にずれる方の溝面には、
穴外周部切削用のチツプを固定するためのスペー
スがそれほど困難なく確保できる。しかしながら
最も先端側の側面切削用チツプが固定される方の
溝面には、穴内周部切削用のチツプを固定したく
てもそのためのスペースは僅かしか残らず、そこ
への固定は実質的に困難である。また、仮りにで
きたとしても非常に小さいチツプでしかなく、満
足な切削機能を果たし得るとは言い難い。従来、
スローアウエイ式のドリル兼用エンドミルが提供
され得なかつた大きな原因はこの点にある。

本考案においては、従来、穴内周部切削用チツ
プの固定部位としては考えつかなかつた、いわば
盲点と言える部位、すなわちその固定用スペース
が得難い側の溝面を形成するランドの先端面に、
上記のように穴内周部切削用のチツプを固定する
ようにした。それにより、穴外周部切削用のもの
が上記溝面にあり、また穴内周部切削用のものが
上記ランド先端面にあつて、しかも前者がいわば
起立した姿勢に、また後者はそれに対して横にな
つたような姿勢を呈して、かなり特異な形態を示
すこととなる。この特異な形態の採用によつて始
めて側面切削用チツプと干渉し合うことなく比較
的大きな穴内周部切削用チツプを固定して十分な
穴切削機能を保証することが可能となり、名実と
もにドリル兼用エンドミルとして使用し得るもの
が提供でき、浅溝や浅穴の加工はもちろんのこと
深溝や深穴の加工においても、工具交換などの煩
らしい作業を何ら必要としないで、１つの工具で
能率よく加工を行うことが可能なつたのである。

−実施例− 以下、本考案の一実施例を図面に基づいて詳細
に説明する。

第１図において、２は軸状の本体であり、先端
側のボデイ４と後端側のシヤンク６とを有し、シ
ヤンク６において回転切削機械の主軸に取り付け
られて軸心まわりに矢印で示す方向に回転させら
れる。本体２はそのボデイ４の外周部にＶ形断面
の２本の切粉排出溝８，１０を備えている。それ
らの溝８，１０は、180度の等角度間隔で本体２
の先端から基端側に向つて形成されているが、本
体２の回転方向においてそれぞれの溝８，１０の
先端側の方が基端側より先行する向きに各々所定
角度、例えば10゜〜30゜傾斜させられている。ま
た本体２には切削油を導く油通路１１が先端に開
口するように設けられている。

上記切粉排出溝８，１０はそれぞれ本体２の回
転方向向きの溝面１２，１４を有していて、双方
の溝面１２，１４には、それぞれ２個ずつの側面
切削用のスローアウエイチツプ、すなわちチツプ
１６ａ，１６ｂ及びチツプ１８ａ，１８ｂが固定
されている。それらチツプの各々は、いずれもチ
ツプ表面が本体２の回転方向に向くとともに、各
切刃が本体２の軸心と同心的な一仮想円筒面上に
位置し、且つ、一方の溝面１２のチツプ１６ａ，
１６ｂと他方の溝面１４のチツプ１８ａ，１８ｂ
とが、本体２の軸心方向に互い違いの軸方向位置
を占めるようにされて、各々のものの回転円筒軌
跡が軸方向で互いにオーバラツプして全体として
不連続部のない回転円筒軌跡が描かれるようにな
つている。なお、各チツプ表面が回転方向に向く
といつても、本実施例の場合、第２図及び第３図
から明らかなように本体２の軸心を含む平面に対
して一定角度傾斜させられている。

上記のように側面切削用チツプが互い違いに固
定されている結果、両溝面１２，１４のうち一方
の溝面１２側のチツプ１６ａが本体２の最も先端
側に位置する側面切削用チツプとなり、それより
更に先端側に残された溝面１２のスペースは小さ
い。

一方、本体ボデイ４に２本の切粉排出溝８，１
０が設けられている結果、第４図に示すように、
残された堤状の部分がそれぞれランド２０，２２
として、溝８，１０に沿つた方向に長く形成され
ている。そのうち一方のランド２０が溝面１２を
形成しているものであり、他方のランド２２が溝
面１４を形成しているものである。

そして、上記両溝面１２，１４のうち最も先端
側のチツプ１６ａが固定されている方の溝面１２
の回転方向後方のランド２０の先端面２４に、穴
内周部切削用のスローアウエイチツプ２６が固定
されている。この穴内周部切削用のチツプ２６
は、方形板状のものであつて、チツプ表面が本体
２の軸心に平行な状態より直角な状態に近くなる
姿勢に保持されている。さらに詳しくは、本体２
の軸心に直角な平面に対して、まず半径方向にお
いて内周側より外周側の部分の方が本体先端側に
位置するように20度程度傾斜させられ、また本体
２の回転方向においては、回転先行側の切刃（切
削作用を為し得る切刃）が回転後行側の切刃（切
削作用を為し得ない切刃）より本体先端側に位置
するように５〜10度程度傾斜させられている。

更に平面的に見れば、第４図から明らかなよう
にチツプ２６の一つの角部が本体２の軸心上に位
置させられる一方、その角部と対角位置にあるも
う一つの角部は前記側面切削用チツプ１６ａ，１
６ｂ，１８ａおよび１８ｂの回転軌跡である円筒
面上あるいはそれより内側に位置させられて、回
転先行側の切刃が切削を行つた後の空間を後行側
の切刃が追従していくように、チツプ２６の固定
姿勢が選ばれている。なお、このチツプ２６が固
定されているランド２０の端面２４には、チツプ
固定用の受け座が設けられており、ボルトで締付
けられたチツプ２６の２つの切刃の位置を規定し
ている。

上記のようにランド端面２４に穴内周部切削用
のチツプ２６が固定されていることにより、最先
端側の側面切削用チツプ１６ａとの干渉を回避し
得、またそれに制約されないで、機能的に十分な
大きさのチツプ２６とすることができる。

一方、側面切削用のチツプ１８ａ，１８ｂが固
定されている側の溝面１４には、チツプ１８ａよ
り更に先端側に比較的広いスペースが存在する。
このスペースに、穴外周部切削用のスローアウエ
イチツプ２８が固定されている。このチツプ２８
はチツプ表面が本体の回転方向向きとなる姿勢、
特に本実施例では本体２の軸心に平行となる姿勢
に保持され、且つ本体先端側の切刃がランド２
０，２２の先端面から更に突出させられるととも
に、その切刃の外端（本体２の軸心から遠い側の
端）が内端より本体先端側に位置するようにされ
ている。なお、この切刃の内端は本体２の軸心ま
では達していない。またこのチツプ２８は、本体
外周側にも切刃を有し、それが前記側面切削用チ
ツプ１６ａ・ｂ，１８ａ・ｂと共通の一仮想円筒
面上に位置し、且つチツプ１６ａと回転軌跡がオ
ーバラツプするように軸方向の位置が互い違いと
されていて、側面切削用チツプと共に溝切削にも
参加するようにされている。なお、このチツプ２
８も溝面１４に形成された受け座にボルト締めさ
れている。

そして、穴外周部切削用チツプ２８と上記穴内
周部切削用チツプ２６との回転切削軌跡を合成す
ると第５図に示すようになり、その結果、穴切削
時に生じる切粉は４分割されることとなるから切
粉の有効な処理を行うことができる。また第１図
から明らかなように、切粉排出溝８はその先端側
において本体２の軸心寄りに深く彫り込まれてそ
の溝底が穴内周部切削用チツプ２６の内端近傍に
位置するようにされており、従つて比較的排出さ
れにくい穴内周部側の切粉も排出させ易くなつて
いる。

また、第５図から明らかなように、本体２の軸
心方向における穴内周部切削用チツプ２６の先端
位置Ｐと、同じく穴外周部切削用チツプ２８の先
端位置Ｑとの位置関係をみると、チツプ２６の先
端位置Ｐは、チツプ２８の先端位置Ｑを含み本体
２の軸心に直角な平面Ａ上に位置させられてい
る。そのため溝切削の場合に溝底面を平担な面と
することができる。またチツプ２６の先端位置Ｐ
がその平面Ａより後方側（本体基端側）に引つ込
んでいる場合も同様である。もつとも、溝切削の
際に溝底面を平面とする必要がないような場合に
は、チツ２６の先端位置Ｐを上記平面Ａより更に
先端側に位置させるようにしても不都合はない。

以上のように構成されたドリル兼用エンドミル
においては、本体２が回転駆動されつつ前進させ
られるときは、穴内周部切削用及び穴外周部切削
用のチツプ２６，２８が穴あけ加工を行い、本体
２が軸心に直角な方向に移動させられるときに
は、側面加工用チツプ１６ａ，１６ｂ及び１８
ａ，１８ｂ、更に穴外周部切削用のチツプ２８が
溝加工を行う。その結果、例えば40cmや50cmクラ
スの深穴、深溝の加工も、本実施例の工具のみで
連続的に加工でき、もちろん浅穴、浅溝の加工の
組合せも自在に行うことが可能で、例えば金型の
型彫り加工などに大きな力を発揮する。

また側面切削用チツプの数を双方の溝面１２，
１４について各々３個、４個と多くしてこれらの
回転軌跡からなる円筒面を長くすれば、より深い
加工にドリルとエンドミルとを兼用できることと
なる。

更に上記実施例では、穴内周部切削用のチツプ
２６として角形のものが用いられていたが、第６
図乃至第８図に示すように、円形のチツプ３０を
用いることも可能である。それら各図において他
の部分には上記実施例と同様の符号を付して対応
関係を示す。

更に付言すれば、穴内周部切削用及び穴外周部
切削用チツプの相互の回転切削軌跡、ひいては
各々のチツプの固定位置及び姿勢は、穴切削時の
切粉が必ずしも４分割となるように選定しなくて
も３分割、２分割となるように選定することもで
きる。

その他、実用新案登録請求の範囲を逸脱するこ
となく、種々の変更、改良、組合せ等を施した態
様で本考案を実施し得ることはもちろんである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例であるドリル兼用エ
ンドミルの正面図であり、第２図，第３図及び第
４図はそれぞれ第１図における矢視図、矢視
図及び矢視図である。第５図は同エンドミルの
穴内周部切削用及び穴外周部切削用の各チツプの
回転切削軌跡を合成して示す説明図である。第６
図は本考案の別の実施例を示す部分正面図であり
第７図は第６図における矢視図である。第８図
はその別の実施例の穴内周部切削用及び穴外周部
切削用の各チツプの回転切削軌跡を合成して示す
説明図で、第５図に対応する図である。 ２：本体、８，１０：切粉排出溝、１２，１
４：溝面、１６ａ，１６ｂ，１８ａ，１８ｂ：側
面切削用スローアウエイチツプ、２０：ランド、
２４：ランド先端面、２６，３０：穴内周部切削
用スローアウエイチツプ、２８：穴外周部切削用
スローアウエイチツプ。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 長手形状をなして軸心まわりに回転させられる
   本体の先端部に取り外し可能に固定された穴外周
   部切削用および穴内周部切削用スローアウエイチ
   ツプによつて穴あけ加工を行うとともに、それら
   チツプより基端部側に取り外し可能に固定された
   側面切削用スローアウエイチツプによつて深溝加
   工を行い得るドリル兼用エンドミルであつて、 前記本体の長手方向に沿つて形成した２本の切
   粉排出溝の回転方向向きの溝面に、それぞれ前記
   側面切削用スローアウエイチツプを少なくとも１
   個、チツプ表面が回転方向に向くとともに切刃が
   一仮想円筒面上に位置し、且つ、一方の溝面のチ
   ツプと他方の溝面のチツプとの軸方向の位置が互
   い違いとなるように固定し、且つ、該両溝面のう
   ち該側面切削用スローアウエイチツプの最も先端
   側のものが固定された溝面の回転方向後方のラン
   ドの先端面に前記穴内周部切削用スローアウエイ
   チツプをチツプ表面が前記軸心に平行な状態より
   直角な状態に近くなる姿勢で固定する一方、該両
   溝面の他方には前記穴外周部切削用スローアウエ
   イチツプをチツプ表面が前記回転方向向きとな
   り、且つ一切刃が前記一仮想円筒面上に位置する
   姿勢で固定したことを特徴とするドリル兼用エン
   ドミル。