JPS634570Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 技術分野 本考案は溝加工を行うエンドミルとしての機能
と穴あけ加工を行うドリルとしての機能とを備え
た、スローアウエイチツプ形式のドリル兼用エン
ドミルに関するものである。

従来技術 超硬合金或いはセラミツク等の切削工具材料で
形成されたスローアウエイチツプ（以下チツプと
いう）を用いて深溝加工可能なエンドミルを構成
する場合には、一般に、円柱状を成して軸心まわ
りに回転させられる工具本体にその先端面から長
手方向に沿つて複数の切屑排出用の溝を形成し、
その溝内の回転方向向き溝面に側面切削用チツプ
を軸方向において互い違いに固定することが一般
的である。そのように固定することにより、各チ
ツプの切刃の回転軌跡が全体としてオーバーラツ
プさせられることにより、連続した円筒面が構成
されるようにするものである。そして、斯る形式
のエンドミルに比較的大径の穴あけ機能を更に設
けるためには、単一のチツプでは足りないため少
なくとも穴外周部切削用チツプおよび穴内周部切
削用チツプを工具本体に固定しなければならない
場合がある。しかしながら、前記側面切削用チツ
プの先端部側のもののうち最も基端部側のものが
固定された溝面の先端面には穴外周部切削用チツ
プを固定するためのスペースをそれほど困難なく
確保できるが、側面切削用チツプの先端部側のも
ののうち最も先端部側のものが固定された溝面に
は、穴内周部切削用チツプを固定するためのスペ
ースが僅かしか得られず、そこへの固定は実質的
に困難である。また、仮に固定し得たとしても、
非常に小さなチツプを製造しなければならないた
めに十分な切削機能が得られず、また内周部切削
用のチツプを固定する溝面を確保するために溝の
深さを略軸心まで深くしなければならないため、
溝間に挟まれたランドの強度が低下する恐れがあ
つた。

考案の目的 本考案は以上の事情を背景として為されたもの
であり、その目的とするところは、内周部切削用
チツプとして一般的な形状のものを固定し得るよ
うに構成されて十分な穴内周部切削能力を備える
とともに、十分な機械強度を備えたドリル兼用エ
ンドミルを提供することにある。

考案の構成 斯る目的を達成するため、本考案の要旨とする
ところは、(イ)前記切屑排出用の溝内の回転方向向
きの溝面に前記側面切削用チツプを少なくとも一
個、そのチツプの表面が回転方向に向くとともに
切刃が一円筒面状に位置し且つ一つの溝面のチツ
プが他のの溝面のチツプと軸方向位置が互い違い
となるように固定し、(ロ)且つ前記溝間に形成され
たランドであつて、前記側面切削用チツプの最も
先端部側のものが固定された溝面を形成している
ランドの先端面に前記穴内周部切削用チツプをチ
ツプ表面が前記軸心に平行な状態より直角な状態
に近くなる姿勢で固定する一方、(ハ)前記各溝面に
固定された前記先端部側の各側面切削用チツプの
うち最も基端部側のものが固定された溝面に、前
記穴外周部切削用チツプをそのチツプ表面が前記
回転方向向きとなり、且つその一切刃が前記一円
筒状に位置する姿勢で固定したことにある。

考案の効果 このようにすれば、穴内周部切削用チツプが軸
心に平行な姿勢より直角な状態に近くなる姿勢で
ランドの先端面に固定されるので、特別にチツプ
を小さく形成する必要はなく、穴内周部の十分な
切削能力が得られるのである。また、穴内周部切
削用チツプを取り付けるためのスペースを溝面状
に確保する必要がないので、切屑排出用溝を深く
する必要がなく、エンドミル本体の強度が低下さ
せられることがないのである。

実施例 以下、本考案の一実施例を示す図面に基づいて
詳細に説明する。

第１図および第２図において、円柱状の本体１
０にはその先端部側に切削部１２が、基端部側に
シヤンク部１４が設けられている。シヤンク部１
４が回転切削機械の主軸に取り付けられることに
より、本体１０がその軸心１６まわりに回転させ
られるのである。本体１０の切削部１２外周部に
はＶ型断面の４本の切屑排出溝１８，２０，２
２，２４が形成されている。それ等溝１８，２
０，２２，２４は軸心１６まわりにおいて90゜の
等角度間隔で切削部１２の先端から基端部側へ向
かつて本体１０の長手方向に沿つて形成されてい
るが、その先端部側へ向かう程回転方向へ向かう
ように10゜乃至30゜傾斜させられた螺旋状とされて
いる。また、本体１０には切削油を先端部に導く
ための油通路２６が縦通させられている。

上記切屑排出溝１８および２０は、対を成し、
それぞれ本体１０の回転方向向きの溝面２８，３
０を備え、それ等溝面２８および３０には３個の
側面切削用チツプ３２および４個の側面切削用チ
ツプ３４がボルトによつて着脱可能に固定されて
いる。それ等チツプ３２，３４の各々は何れもチ
ツプ表面が本体１０の回転方向に向くことにより
各切刃が本体１０の軸心と同心の一仮想円筒面上
に位置し、且つ一方の溝面２８のチツプ３２と他
方の溝面３０のチツプ３４とが本体１０の軸心方
向において互い違いに配設されている。このた
め、各々のチツプの切刃の回転軌跡が軸方向で互
いにオーバーラップして全体として連続的な円筒
面が描かれるようになつている。なお、各チツプ
表面が回転方向に向くといつても、本実施例の場
合には、第３図にも示すように本体１０の軸心を
含む平面に対して一定角度たとえば７乃至15゜傾
斜させられている。

上記のように側面切削用チツプ３２，３４が互
い違いに固定されている結果、両溝面２８，３０
の内の一方の溝面３０に固定されたチツプ３４の
先端部側に位置するものが、側面切削用チツプの
うちの最も先端部側に位置するチツプとなり、そ
れよりも更に先端部側に残された溝面３０のスペ
ースは小さい。

前記溝２２と２４も対を成し、溝１８および２
０と同様に、それ等の回転方向向きの溝面３６お
よび３８に３個の側面切削用チツプ４０および４
個の側面切削用チツプ４２が固定されている。

一方、切削部１２に溝１８，２０，２２，２４
が形成された結果、残された堤状の部分がそれぞ
れランド４４，４６，４８，５０を形成し、それ
等ランド４４，４６，４８，５０はそれぞれ溝面
２８，３０，３６，３８を形成しているものであ
る。

そして、上記溝面２８，３０，３６，３８のう
ち最も先端側の側面切削用チツプ３４，４２が固
定されている溝面３０，３８を形成するランド４
６，５０の先端面に穴内周部切削用チツプ５２，
５４がそれぞれ着脱可能に固定されている。この
チツプ５２，５４は平行四辺形板状のものであつ
て、チツプ表面が本体１０の軸心に対して直角な
平面に略平行となる姿勢で保持されている。チツ
プ５２，５４の一つの角部が軸心１６上に位置さ
せられる一方、それ等の回転方向側の辺が切刃５
６，５８を形成し、それら切刃５６，５８に対向
する辺が軸心方向において切刃５６，５８よりも
稍基端部側に位置させられるようにチツプ５２，
５４が固定されている。この結果、ランド４６，
５０の端面にチツプ５２，５４が固定されること
により、最先端側の側面切削用チツプ３４，４２
との干渉を回避し得、またそれに制約されないで
機能的に十分な大きさのチツプを用いることがで
きるので、十分な切削性能を得ることができるの
である。また、穴内周部切削用チツプを取り付け
るためのスペースを溝面３０，３８の先端部側に
形成するために溝２０，２４の深さを大きくする
必要がないので、切削部１２の強度が損なわれず
十分な強度を維持できる。

他方、側面切削用のチツプ３２，４０が固定さ
れた溝面２８，３６の先端部側には比較的広いス
ペースが存在するのでこのスペースには穴外周部
切削用チツプ６０，６２がそれぞれ固定されてい
る。それ等チツプ６０，６２はチツプ表面が回転
方向向きとなる姿勢であつて、軸心１６を含む平
面と略平行に配設され、それ等の切刃６４，６６
がランド４４，４８の先端面から更に突き出され
るとともに、その切刃の外端が本体先端側に位置
されるようにされている。その切刃６４，６６の
回転軌跡は、第４図に示すように、穴内周部切削
用チツプ５２，５４の切刃５６，５８の回転軌跡
とオーバーラツプさせられることにより、軸心１
６に直角な円面を形成するようにされている。な
お、第４図においては、チツプ６０と６２、およ
びチツプ５２と５４が軸心１６に対して対称位置
にあるため、チツプ５２と６０の軌跡が示されて
いる。また、チツプ６０，６２の他方の切刃６
８，７０は前記側面切削用チツプ３２，３４，４
０，４２の切刃の回転軌跡が形成する円筒面とオ
ーバーラツプさせられるようにされており、深溝
切削にも関与する。

このように、本実施例によれば、穴内周部切削
用チツプ５２，５４がランド４６，５０の端面に
固定されているので、それ等チツプ５２，５４の
取り付けスペースを比較的容易に得ることができ
る。このため、切削機能が十分得られない小型形
状のチツプを用いる必要がなく、穴加工に際して
その内周部の切削能力が十分に得られるととも
に、内周部切削用チツプ５２，５４を取り付ける
ためのスペースを溝面３０，３８に確保する必要
がないので切削部１２の強度が十分に維持される
のである。

以上、本考案の一実施例を示す図面に基づいて
説明したが、本考案はその他の態様においても適
用される。

たとえば、前述の実施例において穴切削用チツ
プとして穴内周部切削用チツプ５２，５４と穴外
周部切削用チツプ６０，６２とが用いられている
が、比較的大きな穴径の穴あけ加工を行う場合に
は、それ等チツプ５２，５４の切刃５６，５８の
回転軌跡とチツプ６０，６２の切刃６４，６６の
回転軌跡との間に連続的に接続する回転軌跡を形
成する切刃を備えた他のチツプを固定しても良い
のである。要するに、穴最内周部切削用チツプが
ランドの端面に固定される形式のドリル兼用エン
ドミルであれば本考案の効果が得られるのであ
る。

また、前述の実施例において、溝面２８に固定
されたチツプ３２と溝面３０に固定されたチツプ
３４とが対を成し、溝面３６に固定されたチツプ
４０と溝面３８に固定されたチツプ４２とが対を
成しているが、溝面２８，３０，３６，３８にそ
れぞれ固定された側面切削用チツプがそれぞれ軸
方向において互に違いにずらされて固定されてい
ても良いのである。

また、前記実施例においては、切屑排出溝が４
本配設されているが、３本以上形成されたドリル
兼用エンドミルであれば、本考案が適用され得る
のである。

また、前述の実施例において、穴内周部切削用
チツプ５２，５４は平行四辺形の板状を成してい
るが、三角形、菱形或いは円形の板状であつても
差支えない。

なお、上述したのはあくまでも本考案の一実施
例であり、本考案はその精神を逸脱しない範囲に
おいて種々変更が加えられ得るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例であるドリル兼用エ
ンドミルの正面図である。第２図は第１図のエン
ドミルの端面図である。第３図は第１図の矢視
図であつて要部側面図である。第４図は第１図の
エンドミルの穴内周部切削用チツプおよび穴外周
部切削用チツプの回転軌跡を示す図である。 １０：本体、１８，２０，２２，２４：切屑排
出溝、３２，３４，４０，４２：側面切削用チツ
プ、４４，４６，４８，５０：ランド、５２，５
４：穴内周部切削用チツプ、６０，６２：穴外周
部切削用チツプ。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 円柱状をなして軸心まわりに回転させられる本
   体と、該本体の先端面から該本体の長手方向に沿
   つて形成された３本以上の切屑排出用の溝とを備
   え、該本体の先端部に着脱可能に固定された穴外
   周部切削用スローアウエイチツプおよび穴内周部
   切削用スローアウエイチツプによつて穴あけ加工
   を行うとともに、それ等チツプよりも基端部側に
   着脱可能に固定された側面切削用スローアウエイ
   チツプによつて深溝加工を行い得るドリル兼用エ
   ンドミルであつて、 前記溝内の回転方向向きの溝面に、前記側面切
   削用スローアウエイチツプを少なくとも１個、該
   チツプの表面が回転方向に向くとともに切刃が一
   円筒面上に位置し且つ一つの溝面のチツプが他の
   溝面のチツプと軸方向位置が互い違いとなるよう
   に固定し、且つ前記溝間に形成されたランドであ
   つて前記側面切削用スローアウエイチツプの最も
   先端側のものが固定された溝面を形成しているラ
   ンドの先端面に前記穴内周部切削用スローアウエ
   イチツプをチツプ表面が前記軸心に平行な状態よ
   り直角な状態に近くなる姿勢で固定する一方、前
   記各溝面に固定された前記先端部側の各側面切削
   用スローアウエイチツプのうち最も基端部側のも
   のが固定された溝面に、前記穴外周部切削用スロ
   ーアウエイチツプをそのチツプ表面が前記回転方
   向向きとなり且つその一切刃が前記一円筒上に位
   置する姿勢で固定したことを特徴とするドリル兼
   用エンドミル。