JPS6112052Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案はミシンの水平釜に関し、特に縫い始
めにおける第一針目の針糸ループが外釜剣先に捕
捉され、それにより針板下面に引き出された針糸
の自由端が、続く第二針目以降の針糸ループの中
に、下糸と共に布下面において長く縫いこまれる
ことを防止することを目的とする。

この考案の実施例を図面によつて説明すると、
１は外釜であり、機枠（図示しない）に垂直に回
転自在に支持されミシンの主軸に連動して回動す
る釜軸２と、針糸ループを捕捉する剣先３とをも
つ。４は内釜であり、周知のように外釜１内方の
走路溝（図示しない）に対して外周に設けた軌条
５を回動自在に支持すると共に、外釜１の回転に
追従して回転しないように針板下面に掛止める止
指６と、上面に開口するボビン挿入孔７と、その
中央部に起立する中空のボビン軸８と、止指より
外釜１の回転方向（第１図の時計方向）側に剣先
３が捕捉した針糸ループ９の剣先３よりも針側の
針側糸９ａが内釜４の上面に渡るのを助勢する内
側に空隙１０をもつ円曲面１１と、円曲面１１の
一部及び内釜４の外周一部を切り欠いた溝１２と
を形成する。１３は止片であり、基部をボビン軸
８の上端に水平軸１４を中心に回動自在に支持す
ると共に基部にカム部１５を形成し、先端１３ａ
を内釜４の溝１２に遊嵌する。１６は押圧金具で
ありボビン軸８内に上下動自在に遊嵌すると共に
上端に止片１３のカム部１５に対向する上端部１
７を形成する。１８はボビン軸８内に設けたばね
であり、その押圧力により押圧金具１６を第２図
において上方に押圧し、その上端部１７が止片１
３のカム部１５を押して、止片１３に対して第２
図のように止片１３が倒伏位置にあるときには水
平軸１４を中心に時計方向への回転モーメントを
与え、止片１３を水平軸を中心として反時計方向
に90度回わして直立位置としたときには止片１３
を直立位置に係止するよう作用する。

また本願は、止片１３を第２図のように倒伏位
置としたときのばね１８の回転モーメントによる
時計方向への回動は、第４図のようにボビン軸８
に設けた肩部８ａにより係止され、その時の止片
１３の先端１３ａは第５図に示すように内釜４の
溝１２に対して間隙をもつて離隔している。

なお、１９は下糸、２０は針である。

この考案は以上の構成であり、第１図は縫いの
始めにおける第一針目の針２０が布を針板の針孔
（図示しない）を貫通し、最下点に達した後にわ
ずかに上昇することにより形成された針糸ループ
を、外釜１の剣先３が捕捉し、外釜１がさらに回
転した状態である。これにより針糸は、一端の糸
巻側の糸は糸調子器により抵抗が与えられている
ことと、他端が自由端であることから、外釜１の
回転が進むにつれて針糸は糸巻側からは供給され
ずに針糸ループ９の剣先よりも自由端側の針糸９
ｂが内釜４の下方を回わるように引き出される。
このとき使用している針糸がフイラメント糸等の
ような糸の場合、針板下方に引き出された針糸ル
ープ９の自由端が、糸の撚り等の原因によつて、
第１図のように剣先３より針側の針糸ループ９ａ
にまきつき、この状態から外釜１の回転が進む
と、内釜４の下面を回わるように引き出される針
糸の自由端によつて、内釜４の止指６附近の剣先
３よりも針側の糸９ａは、止指６近くの円曲面１
１の内方空隙１０内に引ききまれ、第６図のよう
に止片１３の先端１３ａと溝１２との間に入りこ
むが、止片１３の先端１３ａは第２，３，５図に
示すように、溝１２に対し間隙をもつて離隔して
いるので、それらの間に挾まれない。

従来のこの種の水平釜においては、止片１３を
第７図のように倒伏位置としたときのばね１８の
回転モーメントによる時計方向への回動は、止片
１３の先端１３ａ下面を内釜の溝１２上端面に圧
接させて係止させていたので、第１図の状態から
外釜１の回転が進むと、前述のように止指６附近
の針側糸９ａが自由端側の針糸９ｂの下方への移
動により、止指附近の円曲面１１内方の空隙１０
内に引きこまれたまま移動し、針側糸９ａの途中
が円曲面１１の溝１２に達すると、その部分の糸
が溝１２に沿つて上方に移動して第６図のように
溝１２と止片１３の先端１３ａとの間に挾まれ、
針糸の自由端は針板下方に引き出され、布は一縫
目分送られる。この第６図の状態となつたまま次
の第二針目の針が下降し、その針糸ループを外釜
１の剣先が捕捉して、針糸ループが内釜の周囲を
回わり天秤により取り上げられると、その第二針
目の針糸ループ中に、下糸と、一端が布に連なり
他端が円曲面の溝１２と止片１３の先端１３ａと
に挾持され布送りによつて張力が強くなつた第一
針目の針糸とが入るので、天秤により内釜周囲を
回わつた針糸ループを取り上げたとき、それら二
本の糸によつて布面における針糸ループの抵抗が
増大し、このため針糸は余分に糸巻きから引き出
される。

この状態は第１針目の針糸の溝１２と止片１３
の先端１３ａとに挾持された自由端側の針糸が、
布送りによつて徐々に消費され、自由端がその挾
持部分を通過するまで続く。この結果縫い始めの
複数針形成する間、布の下面に引きだされた針糸
の環ができると共に、布下面に針糸の自由端と下
糸との二本の糸がわたる見苦しい状態となる。

この円曲面１１内方の空隙１０内に針糸が引き
こまれる現象は、糸切り機構をもつ水平釜におい
て多く発生する。即ち水平釜の糸切り機構は、切
断した下糸１６の端を、第１図の下糸１６の右端
の位置で保持しており、このため内釜からでて保
持部に至る下糸１９により、止指６下方附近の針
糸が下方に押され、この結果前述のように針糸が
円曲面１１下方の空隙９内にさらに入りこみ易い
状況を作る。

以上のようにこの考案は、ばね１８の作用力に
より倒伏位置となつた止片１３を、ボビン軸８の
肩部８ａに押圧係止させ、先端１３ａは内釜４の
溝１２に対し間隙をもつて離隔させたので、従来
の水平釜においてこの糸が挾まれることによつて
生ずる、縫い始めに複数針縫目を形成する間、布
下面に針糸の環が形成されたり、布下面に針糸の
自由端と下糸との二本の糸がわたる見苦して縫目
が形成されるのを防止し、縫いの始めから正常な
上下糸による縫目が形成でき、縫い合わせが確実
となると共に縫目もきれいに形成されて縫製品の
商品価値が向上する効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は縫い始めの第一針目の針糸ループを外
釜剣先が捕捉しわずかに回転したときの斜視図、
第２図は第１図の−部の内釜拡大断面図、第
３図は止片１３部分の部分平面図、第４，５図は
それぞれ第３図の−、−断面図、第６図
は従来の釜において発生する糸の状態を示す斜視
図、第７図は従来の釜の第２図と同じ部分の断面
図である。 図中１は外釜、４は内釜、８はボビン軸、８ａ
は肩部、１２は溝、１３は止片、１３ａは止片の
先端、１６は押圧金具、１８はばねである。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 針糸ループを捕捉するように円周上に配置する
   剣先をもち主軸に連動し垂直軸線を中心に回転す
   る外釜１と、 外釜内に回動自在に支持し針板下面に掛止める
   ように外周面から突出する止指６及び上面に開口
   するボビン挿入孔７及びその中央部に起立する筒
   状のボビン軸８及び止指６よりも外釜の回転方向
   側の外周面を下方へ湾曲し且つ内側に下方へ開口
   する空隙１０をもつ円曲面１１並びに円曲面の一
   部を放射方向へ切り欠いた溝１２とを形成した内
   釜４と、 基部をボビン軸上端に水平軸を中心に回動自在
   に支持しボビン軸８内の基部にカム部１５を形成
   すると共に自由端に円曲面の溝１２に遊嵌する先
   端１３ａとを形成した止片１３と、 水平倒伏時及び垂直起立時の止片１３のカム部
   １５に係合可能とした上端を設けボビン軸８内に
   おいて上下動自在に支持した押圧金具１６と、 常に押圧金具を上方に押圧するようにボビン軸
   ８に支持したばね１８とを備えた釜において、 倒伏時の止片１３の基部をボビン軸８の肩部８
   ａに押圧係止し、先端１３ａを内釜４の溝１２に
   対し間隙を保つて離隔するように関連させたこと
   を特徴とするミシンの水平釜。