JPH1181033A - 分散染料可染性セルロース繊維およびその製造方法ならびに繊維製品 - Google Patents

分散染料可染性セルロース繊維およびその製造方法ならびに繊維製品

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JPH1181033A
JPH1181033A JP10139292A JP13929298A JPH1181033A JP H1181033 A JPH1181033 A JP H1181033A JP 10139292 A JP10139292 A JP 10139292A JP 13929298 A JP13929298 A JP 13929298A JP H1181033 A JPH1181033 A JP H1181033A
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cellulose
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spinning
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Tatsu Taniguchi
龍 谷口
Shuji Takasu
修二 鷹巣
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】フィルターの詰まりや糸切れなどの製造上の不
都合を生じることがなく製造でき、分散染料で染色可能
で、分散染料での均一な染色性を有し、優れた光沢性、
高鮮明深色性および発色性を示し、さらに力学物性に優
れた分散染料可染性セルロース繊維、その製造方法、繊
維製品を提供する。 【解決手段】(1) 分散染料により染色可能な重合体微粒
子を1〜40重量%含有するセルロース繊維であって、上
記重合体を構成する繰り返し単位として、(A) −COOR、
−SO3Rおよび−PO3R(但し、R は水素原子、アルカリ金
属またはNH4 す)から選ばれる電離性官能基の少なくと
も一種を有するモノマーと、 (B)−OH基、−NHR1基およ
び−CONHR1基(R1は水素原子または炭素数1〜6の有機
す)から選ばれる親水性官能基の少なくとも一種を有す
るモノマーがそれぞれ1〜25重量%の範囲で共重合され
ており、かつ(A) と(B) の総量が2〜30重量%である分
散染料可染性セルロース繊維。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は分散染料可染性セル
ロース繊維、さらに詳しくは糸切れやフィルター詰ま
り、紡口詰まり等の製造上の不都合が生じることなく、
また優れた、製糸性、繊維物性および高光沢性を有する
分散染料可染性のセルロース繊維およびその製造方法な
らびに繊維製品に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、セルロース繊維の染色は、直接染
料、反応染料、バット染料などによって行われてきた。
しかし、直接染料では水堅牢性や洗濯堅牢性などの湿潤
状態での堅牢性に問題があった。反応染料では堅牢性は
良好であるが、染色工程で繊維が傷みやすく、染色コス
トが高くなるという問題があった。バット染料では、染
色コストが高くなり、色彩のバリエーションに乏しいと
いう問題があった。これらの問題を解決するために、セ
ルロース繊維をカチオン化やアニオン化し、酸性染料や
塩基性染料により染色する検討がなされている(例え
ば、特開昭48−98120号、特開昭51−1210
62号、特開昭52−26561号、特開昭53−35
016号、特開平2−274738号、特開平8−17
0220号公報)。しかし、これらの技術では、セルロ
ース溶液に可溶な化合物やセルロースを変性させる化合
物が添加されているために、繊維物性やセルロース特有
の風合いが損なわれ、染色性や堅牢性が充分ではないな
どの問題があった。
【0003】近年、衣料用繊維の分野では、セルロース
と他素材との複合繊維製品に注目が集まり、特にセルロ
ースとポリエステル繊維との複合製品は、その風合や吸
湿性等の機能の面から大きな市場を占めている。しか
し、セルロース繊維とポリエステル繊維との複合製品の
染色では、ポリエステルを分散染料で染色する工程とセ
ルロースを反応性染料や直接染料、バット染料で染色す
る工程の工程が必要となり、染色に手間や時間がかか
り、染色コストが高くなるという問題があった。
【0004】そこで、これら従来のセルロース繊維の染
色性の問題や、ポリエステル繊維等との複合製品の染色
の問題を解決するために、セルロース繊維を分散染料で
可染化する検討がなされている。これらの検討は、主に
繊維製造後の後加工法の改質によってなされている。例
えば、特開昭50−18778号、特開昭51−991
85号、特開昭55−152884号、特開昭58−7
6586号公報には、アシル化剤などを用いてセルロー
ス水酸基にアルコールやカルボン酸基を有する化合物を
反応させ、セルロースをセルロースエーテル誘導体やセ
ルロースエステル誘導体に改質することで、親水性のセ
ルロース水酸基の量を減らして繊維を疎水化させ、分散
染料に対する親和性を持たせる技術が開示されている。
【0005】また、特開昭54−156883号、特開
昭57−89687号、米国特許第4273552号で
は、セルロース繊維にビニル化合物を含浸後、重合開始
剤の存在下で加熱処理または電子線照射を行い、セルロ
ースにビニル化合物をグラフト化させ、分散染料に対す
る親和性を持たせる技術が開示されている。しかし、こ
れら後加工による改質はセルロース水酸基や水酸基に隣
接する炭素原子に化合物を反応させているために、セル
ロース繊維が本来有している風合いや親水性、吸水性、
吸湿性が損なわれ、濃色に染色することが困難であると
いう問題があった。さらには、分散染料で染色可能な程
度にまで繊維を疎水化するためには、化合物の置換度を
高くしなければならず、反応効率を高くするための前処
理が必要となり、また発生した未反応物や副反応物の洗
浄処理が必要になり、コストが高くなる問題があった。
【0006】一方、セルロースの改質ではなく染料の改
質によって分散染料可染化する技術も検討されている。
例えば、特開昭54−23784号では、分散染料を水
溶性ポリウレタン樹脂および尿素と混合した染料糊を布
帛に塗付した後に、熱処理またはスチーミング処理する
ことで、セルロースに分散染料を染着せしめる技術が開
示されている。また、英国特許第2050438号で
は、分散染料染色時に高沸点のポリアルキレンポリオー
ル化合物を添加し熱セットすることで、セルロース内部
に分散染料を保持させる技術が開示されている。しか
し、これらの方法では、セルロース繊維独特の風合が損
なわれ、濃色に染色ができず、また堅牢性が不十分であ
るという問題があった。
【0007】これらの後加工法の欠点を克服するため
に、紡糸原液に分散染料で染色可能な化合物を添加する
という原糸段階での改質の検討もされている。米国特許
第3793419号では、ポリアミン−アミドをビスコ
ース原液に添加して紡糸することで、分散染料可染のビ
スコース繊維が得られることが開示されている。しか
し、このポリアミン−アミドの製造方法は複雑で、分散
染料の染着量を増やして高度の発色性を有する繊維を製
造しようとした場合には、ポリマーの添加量を増やさな
ければならず、製造コストが高くなるという欠点があっ
た。
【0008】また特開平8−74118号、特開平8−
74183号、特開平8−170219号、特開平8−
170280号、特開平9−78336号、特開平10
−60215号公報では、ポリエステル微粒子やアクリ
ル・スチレン系重合体微粒子、アクリル系重合体微粒子
などの分散染料で染色可能な微粒子を、紡糸原液に添加
して紡糸して、分散染料可染化する技術が開示されてい
る。しかし、上記方法では、重合体微粒子が疎水性であ
り、また、電気的にも中性に近いために、アルカリ濃度
の高いセルロース原液内で凝集が起こりやすく、さらに
は凝集した粗大な粒子が繊維内部で異物として作用する
ために得られる繊維の物性も低下するという大きな問題
があった。また、使用可能なポリマーとして、メチルメ
タアクリレート・メタクリル酸共重合体、メチルメタア
クリレート・メタクリル酸・スチレン共重合体、アクリ
ル酸・スチレン系共重合体等の酸成分含有ポリマーも挙
げられているが、酸成分含有モノマーを特定量共重合す
ること、それにより達成される粒子の分散性については
一切記載されていない。また、セルロース原液内で粒子
を良好に分散せしめるために、界面活性剤を添加する技
術が開示されているが、添加する粒子量が多い場合や、
粒子径が小さい場合には、大量の界面活性剤を使用しな
ければならず、セルロース原液の発泡や、凝固浴や回収
溶液での発泡等の工程上の不都合や、繊維構造形成に悪
影響を与えるために繊維物性が低下する等の問題があっ
た。
【0009】また、これら界面活性剤による分散技術で
は、良好な製糸性と繊維物性を維持したまま、繊維内で
の微粒子の粒子径が0.05μm以下になるような超微
分散化は困難であった。繊維内の粒子径が0.05〜5
μmと大きい場合には、繊維内部での粒子の分散状態が
疎となり、繊維断面での均一な染色ができず、染色斑が
でやすいという問題があった。さらに、これら粒子の大
きさはサブミクロン〜ミクロンオーダーの可視光の波長
と同等またはそれ以上であるために、添加量が多くなる
と糸が完全に白濁し、いわゆるダル調の繊維となって、
透明性が高く光沢のある糸を得ることができず、染色し
た際には、鮮明でいわゆる高発色の色彩を発現すること
が困難となり、その用途に大きな制約があった。
【0010】さらに、平均粒径が0.05μmより小さ
くなると、凝集が起りやすくなったり、染色堅牢性が低
下する。特に特開平9−78336号には、その比較例
として平均粒径0.03μmの微粒子を添加した例が開
示されている。しかし、この公報で開示されている微粒
子は、粒子自体が疎水性が強く、また粒子表面の負の荷
電密度が低いためにアルカリ性であるセルロース原液に
添加すると粒子の凝集が起り、繊維物性や製糸性の低下
を引き起すなどの問題が生じる。このセルロース原液中
での微粒子の凝集は、繊維性能および工程通過性上の大
きな問題となる。一方、特公昭37−12014号、特
公昭44−32011号公報には、酸性基を有するモノ
マーを共重合したビニル系重合体をビスコース原液に添
加することで、重合体添加による凝集や物性低下を抑制
する技術が開示されている。しかし、これらの技術で使
用されている重合体の添加では、繊維物性は改善される
ものの、酸性モノマーの共重合量が多いために、重合体
がアルカリ可溶性または高水膨潤性となり、分散染料を
吸着はするものの、水洗や還元洗浄によって大きく退色
してしまい、高発色、高堅牢性の繊維を得ることができ
なかった。以上のように、従来の分散染料可染性のセル
ロース繊維では、製造コスト、光沢性、鮮明性、深色
性、凝集や粗大粒子による繊維物性や工程通過性の低下
等に問題があった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記従来技
術の問題点を解決し、フィルターの詰まりや糸切れ、毛
羽立ちなどの製造上の不都合を生じることがなく安価に
生産性よく製造することができる、分散染料で染色可能
であり、かつ分散染料で染色した際の繊維断面における
均一な染色性を有し、優れた光沢性、高鮮明深色性およ
び発色性を示し、さらに力学物性に優れた分散染料可染
性セルロース繊維およびその製造方法ならびに繊維製品
を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本願で特許請求される発
明は以下のとおりである。 (1)分散染料により染色可能な重合体微粒子を1〜4
0重量%含有するセルロース繊維であって、上記重合体
を構成する繰り返し単位として、(A) −COOR、−S
3 Rおよび−PO3 R(但し、Rは水素原子、アルカ
リ金属またはNH4 を示す)から選ばれる電離性官能基
の少なくとも一種を有するモノマーと、(B)−OH基、
−NHR1 基および−CONHR1 基(R1 は水素原子
または炭素数1〜6の有機基を示す)から選ばれる親水
性官能基の少なくとも一種を有するモノマーがそれぞれ
1〜25重量%の範囲で共重合されており、かつ(A) と
(B)の総量が2〜30重量%であることを特徴とする分
散染料可染性セルロース繊維。 (2)前記重合体微粒子の平均粒子径が0.01〜0.
05μmで、セルロース繊維の横断面における該重合体
微粒子の数が10〜1000個/μm2 であることを特
徴とする(1)記載の分散染料可染性セルロース繊維。 (3)前記セルロース繊維が銅アンモニアレーヨンであ
ることを特徴とする(1)または(2)記載の分散染料
可染性セルロース繊維。 (4)前記セルロース繊維がビスコースレーヨンである
ことを特徴とする(1)または(2)記載の分散染料可
染性セルロース繊維。 (5)乳化重合法によって固形分濃度1〜40重量%と
なるように重合された微粒子状重合体であり、該重合体
を構成する繰り返し単位として、(A) −COOR、−S
3 Rおよび−PO3 R(但し、Rは水素原子、アルカ
リ金属またはNH4 を示す)から選ばれる電離性官能基
の少なくとも一種を有するモノマーと、(B)−OH基、
−NHR1 基および−CONHR1 基(R1 は水素原子
または炭素数1〜6の有機基を示す)から選ばれる親水
性官能基の少なくとも一種を有するモノマーがそれぞれ
1〜25重量%の範囲で共重合されており、かつ(A) と
(B)の総量が2〜30重量%であるビニル系重合体微粒
子を、セルロース原液に添加、混合し、紡糸口金から凝
固浴に紡出して繊維化することを特徴とする分散染料可
染性セルロース繊維の製造方法。 (6)前記微粒子状重合体の平均粒径が0.01〜0.
05μmであることを特徴とする(5)記載の分散染料
可染性セルロース繊維の製造方法。 (7)(1)ないし(4)のいずれかに記載の分散染料
可染性セルロース繊維を含む繊維製品。
【0013】本発明において、セルロース繊維とは、綿
などの天然セルロース繊維以外の化学セルロース繊維を
意味し、短繊維、長繊維の両方の繊維を含む。具体的に
は銅アンモニアレーヨン繊維およびビスコースレーヨン
繊維、セルロースカルバメート繊維などの再生セルロー
ス繊維、冷水酸化ナトリウムや冷硫酸などの水性溶媒に
セルロースを直接溶解後紡糸して得られるセルロース繊
維等をいう。また本発明における繊維製品には、本発明
の分散染料可染性セルロース繊維のみから構成される
糸、中空糸、多孔糸、綿、紐、編物、織物、不織布およ
びこれらを使用した衣類、医療用器具、生活資材、産業
用資材等はもちろんのこと、該セルロース繊維を少なく
とも一部に使用した繊維製品が含まれる。本発明の分散
染料可染性セルロース繊維は、特にポリエステルやポリ
アミド、セルロースアセテート等の分散染料可染性繊維
との複合製品に適する。
【0014】本発明に用いられる分散染料により染色可
能な重合体微粒子は、セルロース繊維中に含有させる
が、該重合体を構成する繰り返し単位は、(A) −COO
R、−SO3 Rおよび−PO3 R(但し、Rは水素原
子、アルカリ金属またはNH4 を示す)から選ばれる電
離性官能基の少なくとも一種を有するモノマーと、 (B)
−OH基、−NHR1 基および−CONHR1 基(R1
は水素原子または炭素数1〜6の有機基を示す)から選
ばれる親水性官能基の少なくとも一種を有するモノマー
がそれぞれ1〜25重量%の範囲で共重合されており、
かつ(A) と(B) の総量が2〜30重量%である。
【0015】セルロース繊維の原液は、水酸化ナトリウ
ム液や銅アンモニア溶液などのアルカリ溶液であり、ナ
トリウムイオン、銅イオン、アンモニウムイオン等の正
に荷電したイオンが過剰に存在する溶液である。これら
の過剰イオン下では、非イオン状態に比べて凝集が起り
やすいが、本発明においては、上記の特定の電離性官能
基を有する重合体を用いるため、セルロース繊維の製造
工程での粒子の凝集による粗大粒子の生成を抑制するこ
とができ、後述するように0.01〜0.05μmの平
均粒径を有する超微粒子をも繊維内に均一に分散させる
ことができ、セルロース繊維の透明性、光沢性、発色性
等が損われることがない。また重合体微粒子が分散染料
可染であるためには、重合体が疎水性であることが必要
があるが、このような疎水性の微粒子を水系溶液に添加
する場合には、疎水−疎水結合による強い凝集が起こる
ことが知られている。
【0016】凝集基礎理論(DLVO理論)によれば、
粒子の表面電位が高くなるほど、また、粒子濃度が低い
ほど凝集は起こりにくく、一方、対イオン(粒子表面と
は反対符号の荷電をしているイオン、本発明ではナトリ
ウムイオン、銅イオン、アンモニウムイオンなどが該当
する)の濃度が高くなるほど凝集が起りやすい(例え
ば、最新コロイド化学、講談社:北原文雄、古澤邦
夫)。また所定組成のセルロース原液に所定量の疎水性
粒子を添加する場合には、凝集を抑制する手段として
は、粒子の表面電位を高くすること、粒子表面の親水性
を高くすること、混合、分散温度を低くすることが効果
的であり、特に粒子の表面電位を高くすることおおよび
粒子表面の親水性を高くすることが効果的である。本発
明の場合には、粒子表面の負の荷電が大きいほど効果的
であり、重合体微粒子の表面に水中で電離して負に荷電
する電離性官能基を有する化合物を含有させることによ
り、粒子表面電位(負の荷電)を高くすることができ
る。
【0017】本発明において、電離性官能基としては、
COOR基、SO3 R基、PO3 R基(但し、Rは水素
原子、アルカリ金属またはNH4 を示す)が用いられ
る。重合体中に電離性官能基を含有させる方法として
は、ポリマーを重合後、加水分解によって電離性官能基
を末端に形成する方法、電離性官能基を含有するモノマ
ーを共重合する方法、電離性官能基を含有するモノマー
を共重合した後加水分解する方法、ハロゲン原子含有モ
ノマー等を共重合後、官能基を置換する方法などが挙げ
られる。
【0018】加水分解により電離性官能基が形成される
ポリマーとしては、主鎖または側鎖にカルボン酸エステ
ル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、アミド等の
結合を有するポリマーが挙げられる。主鎖が加水分解さ
れて電離性末端を形成するポリマーとして、例えば、ポ
リエチレンテレフタレートやポリトリエチレンテレフタ
レート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル
類、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド類が挙げ
られる。
【0019】また側鎖が加水分解されて電離性官能基を
形成するポリマーとしては、メチル(メタ)アクリレー
ト、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)ア
クリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso
−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メ
タ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレ
ート、フェニル(メタ)アクリレート、オクチル(メ
タ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、4
−カルボキシフェニル(メタ)アクリレート、ヒドロキ
シエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシ(メ
タ)プロピルアクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)
アクリレート、1,1−ジメチルエチル(メタ)アクリ
レート、ヘプチル(メタ)アクリレート、1−メトキシ
エチル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メ
タ)アクリレート、1−メチルヘキシル(メタ)アクリ
レート、1−メチルヘプチル(メタ)アクリレート、2
−メチルペンチル(メタ)アクリレート、2−メチルブ
チル(メタ)アクリレート、3−メチルブチル(メタ)
アクリレート、3−メチルフェニル(メタ)アクリレー
ト、4−メチルフェニル(メタ)アクリレート等の(メ
タ)アクリル酸誘導体類、ビニルホスホン酸ジメチル、
2−(ジエトキシホスフィノル)エチルアクリレート等
のリン含有誘導体類、(メタ)アクリルアミド、N−メ
チル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アク
リルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミ
ド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−se
c−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−iso−ブチ
ル(メタ)アクリルアミド、N−tert−ブチル(メ
タ)アクリルアミド、N−n−オクチル(メタ)アクリ
ルアミド、N−n−ドデシル(メタ)アクリルアミド、
N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−アリ
ル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アク
リルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド等の
(メタ)アクリルアミド誘導体類、無水マレイン酸、マ
レイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジ
アミド、ムコン酸ジエチル、メサコン酸ジメチル、無水
イタコン酸等の二塩基酸誘導体類、p−ビニルベンゼン
スルホン酸メチル、p−ビニルベンゼンスルホン酸エチ
ル等のスチレン誘導体類などを含むビニル系重合体が挙
げられる。
【0020】加水分解はどのような方法を用いてもよい
が、コストおよび処理効率の面から、エステル結合を有
する重合体の場合にはアルカリ加水分解、アミド結合を
有する重合体の場合には酸加水分解が一般的である。あ
らかじめ重合体に電離性官能基を付与する方法として
は、電離性官能基を有するモノマーを共重合する方法が
挙げられる。ポリエステルやポリアミドなどの重縮合ポ
リマーの共重合モノマーとしては、例えば、5−ナトリ
ウムスルホイソフタル酸、2−ナトリウムスルホイソフ
タル酸、1,8−ジカルボキシナフタレン−3−スルホ
ン酸ナトリウムまたはこれら化合物のカリウム塩、リチ
ウム塩等のスルホン酸含有ジカルボン酸等が挙げられ
る。
【0021】ビニル系重合体の共重合モノマーとして
は、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソク
ロトン酸、cis−2−ペンテン酸、trans−2−
ペンテン酸、2−エチル(メタ)アクリル酸、アンジェ
リカ酸、チグリン酸、3,3−ジメチルアクリル酸、
2,3−ジエチル(メタ)アクリル酸、3,3−ジエチ
ル(メタ)アクリル酸、3−プロピル(メタ)アクリル
酸、2−イソプロピル(メタ)アクリル酸、3−イソプ
ロピル(メタ)アクリル酸、トリメチル(メタ)アクリ
ル酸、2−ブチル(メタ)アクリル酸、3−ブチル(メ
タ)アクリル酸、3−tert−ブチル(メタ)アクリ
ル酸、cis−3−メチル−3−エチル(メタ)アクリ
ル酸、trans−3−メチル−3−エチル(メタ)ア
クリル酸、cis−2−オクテン酸、trans−2−
オクテン酸、2−ペンチル(メタ)アクリル酸、2−ブ
チルクロトン酸、4−エチル−2−ヘキセン酸、2−エ
チル−3−プロピル(メタ)アクリル酸、2−ヘキシル
(メタ)アクリル酸、α−アセトキシ(メタ)アクリル
酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、4−カル
ボキシフェニル(メタ)アクリレート、フマル酸、マレ
イン酸、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェ
ニルマレイン酸、マレアミド酸、イタコン酸、ムコン
酸、cis−グルタコン酸、trans−グルタコン
酸、N−アクリロイルアラニン等のカルボン酸含有モノ
マー、ビニルスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン
酸、2−スルホエチルメタアクリレート、2−アクリル
アミドプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−
ブタンスルホン酸、2−アクリルアミド−n−ヘキサン
スルホン酸、2−アクリルアミド−n−オクタンスルホ
ン酸、2−アクリルアミド−n−ドデカンスルホン酸、
4−メタアクリルアミドベンゼンスルホン酸等のスルホ
ン酸含有モノマーおよびこれら化合物のナトリウム塩、
カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩等が挙げられ
る。
【0022】また共重合後に官能基を置換する方法とし
ては、ビニルベンジルクロライド、2−クロロフェニル
アクリレート、2−クロロエチルアクリレート等の含ハ
ロゲンビニル誘導体を共重合した後に亜硫酸ソーダを反
応させ、ハロゲンをスルホン酸ソーダに置換する方法な
どが挙げられる。重合コストおよび操作性の面から、ポ
リエステルやポリアミドの場合には、電離性官能基を共
重合後加水分解する方法が好ましく、ビニル重合体の場
合には、反応性、重合コスト、粒子荷電の均一性、小粒
径化等の観点から、直接電離性官能基含有モノマーを共
重合する方法が好ましい。これら電離性官能基(誘導
体)含有モノマーの重合は、ブロック共重合、グラフト
共重合、ランダム共重合のいずれの方法で行っても良
い。特に乳化重合法により製造されるビニル系重合体の
場合には、乳化重合終了時近くにこれら電離性官能基
(誘導体)含有モノマーを添加すると、これらモノマー
が粒子表面に選択的に共重合され、粒子表面の電離性官
能基密度が増加し、分散性がより良好になるので好まし
い。
【0023】なお、アニオン性界面活性剤を使用しても
粒子表面を負に荷重させることができるが、セルロース
原液内での重合体の分散性を向上させるためには、多量
の活性剤を使用する必要がある。この場合、紡糸原液や
凝固浴に多量の泡が発生したり、得られる繊維の物性が
低下したりするので、アルカリ水溶液に溶出しないよう
に界面活性剤と粒子を化学的に結合させることが好まし
い。ビニル系重合体微粒子の場合、粒子と化学的に結合
する反応性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンア
ルキルプロペニルフェニルエーテル、メタクリル酸アル
キルエステルのスルホン酸塩、メタクリル酸ポリアルキ
ルオキシエステルのスルホン酸エステル塩、アルキルア
リルコハク酸ジエステルのスルホン酸塩、コハク酸ジエ
ステルのスルホン酸塩などが挙げられる。さらにビニル
系重合体の場合には、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウ
ム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩を触媒として使
用すると、重合体の末端が硫酸基になり粒子の表面荷電
が高くなるので好ましい。
【0024】本発明において、重合体中の電離性官能基
を有する繰返し単位の比率は、1〜25重量%、好まし
くは2〜20重量%、より好ましくは3〜10重量%で
ある。該繰り返し単位が1重量%未満では、粒子の表面
電位が高くならず十分に凝集を抑制できない。また25
重量%を超えると、凝集は抑制できるようになるが、ア
ルカリ膨潤性、親水性が強くなりすぎて、アルカリ可溶
性になったり水に対する膨潤度が著しく高くなって、分
散染料との親和性が弱くなり、染料染着率や堅牢性が低
下する。本発明に用いられる分散染料により染色可能な
重合体の重合には、上記電離性官能基を有するモノマー
(A) とともに、−OH基、NHR1 基および−CONH
1 (R1 は水素原子または炭素数1〜6の有機基を示
す)から選ばれる親水性官能基の少なくとも1種を有す
るモノマー(B) が用いられる。。
【0025】本発明において、電離性官能基により重合
体粒子表面の電位を高くするとともに、粒子表面を親水
化することで、よりいっそうの微分散化と凝集の抑制が
可能となり、これによって粒子無添加の場合と全く同等
の力学物性を有する分散染料可染セルロース繊維を得る
ことができる。すなわち、本発明におけるセルロース繊
維は、主にポリエステルやポリアミド等の合成繊維やセ
ルロースアセテートなどとの複合製品として用いられる
が、これらの複合製品は、市場が要求する、従来公知の
ビスコース繊維や銅アンモニアレーヨン繊維と同等の繊
維物性を備えることができる。繊維中に1〜40重量%
の範囲で異物である重合体微粒子を含有しているにもか
かわらず、物性が全く低下しない理由としては、凝集の
抑制によって粗大粒子が減少するため、および繊維構造
中でセルロースと微粒子との界面間に水素結合が形成さ
れ、重合体微粒子が繊維中で異物としてではなくセルロ
ースとの連続体として存在しているためと推定される。
【0026】重合体微粒子の表面を親水性、親セルロー
ス性に改質する方法としては、水、セルロースと親和性
の高い官能基を有するモノマーを共重合する方法、重合
後に加水分解や置換によって官能基を付与する方法等が
挙げられる。水、セルロースと親和性の高い官能基とし
ては、上記した−OH基、−NHR1 基、−CONHR
1 基(R1 は水素原子、または炭素数1〜6の有機基を
示す)等の水素結合形成能力を有する親水性官能基が挙
げられる。微粒子表面への官能基の付与方法としては、
ポリエステルやポリアミドの場合には、アルカリや酸に
よる主鎖の加水分解、ビニル系重合体の場合には、共重
合および共重合後の加水分解などの方法が挙げられる。
【0027】ビニル系重合体で直接共重合に用いられる
モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテ
ル、2−アミノエチルビニルエーテル、ビニルエチルア
ミン、ビニルブチルアミン、2−n−ブチルアミノエチ
ルビニルエーテル等のビニル誘導体類、2−ヒドロキシ
エチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸誘
導体類、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)
アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体類等
が挙げられ、重合後の加水分解によって親セルロース性
となるモノマーとしては、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラ
ウリル酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビ
ニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
【0028】これらのモノマーの重合は、ランダム共重
合、ブロック共重合、グラフト共重合のいずれの形態で
もよい。特に、乳化重合法にて粒子を製造する場合に
は、重合性、コスト、取り扱い性の点から、電離性官能
基を有するモノマーを直接共重合する方法が最も好まし
く、重合終了時近くに親水性官能基含有モノマーを集中
的に添加すると、粒子表面に選択的に共重合されるの
で、より効率的に凝集抑制と強度低下の抑制ができる。
−NHR1 基または−CONHR1 基が粒子表面に有る
場合、効果的にセルロースと水素結合をするためには、
1 は水素原子または炭素数1〜6の有機基であること
が必要である。立体障害の点からはR1 は水素原子また
は炭素数1〜3の有機基であることが好ましく、水素結
合強度、凝集抑制の点からは水素原子が特に好ましい。
【0029】本発明において、重合体中の親水性官能基
を有する繰り返し単位の比率は、1〜25重量%、好ま
しくは2〜20重量%、より好ましくは3〜10重量%
である。この比率が1重量%未満では、凝集抑制、物性
低下抑制効果が十分に得られず、セルロースとの相互作
用が強くなり、繊維強度の低下が抑制できなくなる。一
方、25時重量%を超えると、親水性官能基が比較的高
い水膨潤性を有することから、分散染料の吸着性や堅牢
性が低下する。重合体の繰返し単位には、親水性官能基
が2個以上含有されていても、また2種類以上の官能基
が含有されていてもよい。さらに、マレアミド酸、N−
メチルマレアミド酸、β−ジアミノアクリル酸等の電離
性官能基と親水性官能基の両方を有するモノマーを使用
してもよい。これら両性モノマーは、一分子で両官能基
の効果を発現することができるため、本発明において、
これら両性モノマーを使用した場合には、半分量を電離
性官能基含有モノマー、もう半分量を親水性官能基含有
モノマーとして扱う。
【0030】電離性官能基を有するモノマーと親水性官
能基を有するモノマーは、いずれか一方のみを使用して
も、ある程度の凝集抑制効果と物性低下抑制効果は得ら
れるが、重合体微粒子の完全微分散化を図り、粒子無添
加繊維と全く同等の物性を達成するためには重合体が両
方の官能基を有していることが必要である。電離性官能
基含有モノマーと親水性官能基含有モノマーの使用量は
それぞれ1〜25重量%の範囲であるが、各モノマーの
総量が多すぎると、親水性が強くなりすぎて分散染料染
色性、染色堅牢性が低下し、一方、総量は少なすぎる
と、分散性、物性が低下するため、本発明では、共重合
に用いる電離性官能基含有モノマーと親水性基含有モノ
マーとの総量は2〜30重量%、好ましくは4〜20重
量%、さらに好ましくは6〜10重量%の範囲とされ
る。
【0031】本発明のセルロース繊維に含有される重合
体は微粒子状であることが重要である。重合体が繊維中
で分子分散(アロイ化)している場合には、分散染料の
染着性や堅牢性が低下するばかりでなく、アルカリや熱
水処理等の後加工工程で重合体が溶出するという問題が
生じる。このため、電離性官能基含有モノマーおよび親
水性官能基含有モノマーの共重合量が多い場合には、架
橋性モノマーを共重合して形態保持と膨潤抑制を行うこ
とが後加工性、染色性、堅牢性の点で好ましい。乳化重
合やマイクロエマルジョン重合法等の直接共重合法で架
橋性モノマーを共重合する場合には、電離性官能基や親
水性官能基が粒子表面に出にくくなり、凝集抑制効果、
物性低下抑制効果が小さくなるため、重合終了時近くに
これら官能基含有モノマーを添加することが好ましい。
【0032】本発明において、これらの重合体微粒子
は、分散染料にて染色可能であることが必要であるが、
前述の電離性官能基含有モノマーおよび親水性官能基含
有モノマーの部分は親水性であり、分散染料を吸着しに
くいので、その他の成分(重合体微粒子の主成分)が分
散染料にて染色可能でなければならない。
【0033】分散染料で染色可能な化合物としては、例
えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリエチレン
テレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリ
エステルおよびそれらを主成分とする共重合体、ナイロ
ン6、ナイロン66等のポリアミドおよびそれらを主成
分とする共重合体、ポリメチルメタアクリレート、ポリ
フェニルメタアクリレート、ポリアクリロニトリル、ス
チレン・メチルメタアクリレート系重合体、スチレン・
アクリルアミド系重合体、スチレン・アクリロニトリル
系重合体、エチルヘキシルアクリレート・メチルメタア
クリレート共重合体、エチルヘキシルアクリレート・ア
クリルアミド共重合体、エチルヘキシルアクリレート・
アクリロニトリル共重合体、メチルメタアクリレート・
ブチルアクリレート共重合体、メチルメタアクリレート
・アクリルアミド共重合体、メチルメタアクリレート・
アクリロニトリル共重合体、メチルメタアクリレート・
フェニルメタアクリレート共重合体、メチルメタアクリ
レート・安息香酸ビニル共重合体、メチルメタアクリレ
ート・ベンジルメタアクリレート共重合体、スチレン・
メチルメタアクリレート・アクリロニトリル共重合体、
スチレン・メチルメタアクリレート・アクリルアミド共
重合体、スチレン・メチルメタアクリレート・ブチルア
クリレート共重合体、スチレン・メチルメタアクリレー
ト・ヒドロキシエチルアクリレート共重合体、スチレン
・メチルメタアクリレート・安息香酸ビニル共重合体、
スチレン・メチルメタアクリレート・ベンジルメタアク
リレート共重合体、エチルヘキシルアクリレート・メチ
ルメタアクリレート・ブチルアクリレート共重合体、エ
チルヘキシルアクリレート・メチルメタアクリレート・
アクリルアミド共重合体、メチルメタアクリレート・ア
クリロニトリル・アクリルアミド共重合体、メチルメタ
アクリレート・アクリロニトリル・ブチルアクリレート
共重合体、メチルメタアクリレート・フェニルメタアク
リレート・ブチルアクリレート共重合体等の単元または
多元のビニル系重合体およびこれらの架橋物などが挙げ
られる。
【0034】これらの分散染料可染重合体のうち、微粒
子の製造コストおよび平均粒径の均質度の点から、乳化
重合法で製造されるビニル系重合体が好ましく、さらに
染色性および堅牢性の観点からはメチルメタアクリレー
ト、フェニルメタアクリレート、ベンジルメタアクリレ
ート、安息香酸ビニルなどを主成分とする重合体がより
好ましい。特に安息香酸ビニル、フェニルメタアクリレ
ート、ベンジルメ タアクリレートのように芳香環を有
し、芳香環および隣接する炭素原子にエステル基やエー
テル基を有する平面性の高い化合物を20重量%以上共
重合している場合に、ポリエステルとの同浴染色におい
て優れた同色性を示す。これら重合体微粒子は1種また
は2種以上混合して使用してもよく、同種の重合体であ
っても、平均粒径や粒度分布または分子量の異なる微粒
子を混合してもよい。
【0035】本発明において、セルロース繊維に含有す
る重合体微粒子の量は、染色性、発色性、繊維物性、工
程通過性などの点から1〜40重量%である。重合体微
粒子の含有量が1重量%未満では、単位繊維重量あたり
の分散染料の染着量が少なくなり、明瞭な色合いの繊維
が得られなくなる。また40重量%を超えると、粒子同
士の衝突によって凝集し易くなり、製造工程で単糸切れ
や毛羽の発生が起こりやすく、得られた繊維の引張り強
度などの物性が低下し、またセルロース特有の吸湿性や
吸水性などの機能が低下する。得られる繊維の分散染料
染色後の色合いや工程通過性や繊維物性のバランスか
ら、重合体微粒子の含有量は5〜30重量%が好まし
く、より好ましくは、10〜20重量%である。この範
囲であれば、力学物性の良好なセルロース繊維を得るこ
とができる。また本発明においては、分散染料で染色可
能な微粒子の他に、必要に応じて二酸化チタンや二酸化
ケイ素などの艶消し剤や滑剤、セルロース変成剤、粘度
低下剤などの物質を添加してもよく、必要であれば複数
種類の物質を添加してもよい。
【0036】本発明に用いられる重合体微粒子の平均粒
径には特に制限はないが、粒径が大きすぎると良好に分
散していても粒子は異物として作用してしまうため、1
μm以下が好ましく、電離性官能基および親水性官能基
を含有する重合体を使用するために、粒子径が極めて微
小な粒子をセルロース原液に添加しても凝集が起こら
ず、粗大な二次粒子が生成しない。これによって、セル
ロースに含有されている微粒子の平均粒径が0.01〜
0.05μmと従来の技術では到底達成することのでき
なかった超微粒子の微分散化が可能となった。また重合
体微粒子の形状にも特に制約はないが、フラットな平面
を持たない楕円状や球状が好ましく、長径の小さい真球
状がより好ましい。
【0037】本発明において、重合体微粒子とは、セル
ロース繊維に含有する重合体粒子の一次粒子と、該一次
粒子が凝集して生成した凝集粒子(二次粒子)の両方を
意味し、セルロース繊維内に二次粒子が存在する場合に
は、二次粒子を1つの重合体微粒子として定義する。た
だし、二次粒子とは、5個以上の一次粒子が凝集したも
のであって、接合することによって個々の一次粒子の形
態が変形しているものをいう。
【0038】分散染料可染性の重合体微粒子を含有した
セルロース繊維において、鮮明で深く濃厚な色彩を得る
ためには、添加微粒子の粒子径を小さくすることが重要
であり、特に平均粒径が0.05μm以下の重合体微粒
子を含有したセルロース繊維では、粒子無添加の繊維に
近い透明性と光沢性が得られ、分散染料で染色した際に
鮮明で深色な高発色の色彩の発現が可能となる。この理
由は、平均粒径が0.05μmよりも大きくなると、可
視光の波長(0.38μm〜0.75μm)と同等また
はそれ以上の大きさの2次粒子や粒度分布の大粒径側の
一次粒子の量が増えて、白色光を全反射しやすくなり、
失透、白濁し、いわゆるダル調の繊維となり、染色した
際には粒子内の染料に照射する光量が減り、薄い色の褪
せた色合になってしまうが、平均粒径が0.05μm以
下の場合には、微粒子の白色光の全反射がほとんど無く
なり、粒子内の染料の発色基に照射する光量が多くなる
ためと考えられる。
【0039】また重合体微粒子の平均粒径が小さいと、
セルロース原液内で微粒子とセルロース原液との密度差
に起因する沈降や分離、濃度勾配の発生が起こりにく
く、繊維内部においても微粒子の分布状態の均一な斑の
少ないセルロース繊維が得られる。さらに後述するよう
に繊維内部に存在する微粒子の数が多いと、繊維内での
微粒子の分布状態が密となり、染色後の染料も局在化せ
ず密に分布するため、より均一な染色が可能となる。こ
れら添加微粒子の小粒子径化によって透明性向上、白色
光の反射率の減少、微粒子の繊維断面内均一分散化が達
成され、より鮮やかで深みのある高発色の色彩の発現が
可能となり、従来技術の繊維では展開できなかった極濃
色の用途での使用が可能となる。特にフォーマルウェア
の用途では、極混色の黒色に染色可能であることが要求
されるが、分散染料可染セルロース繊維として、微分散
・微小粒子含有繊維を用いることにより、フォーマルブ
ラック分野にも適用可能な高発色の繊維が得られる。
【0040】さらに微粒子の平均粒径が小さい場合に
は、平均粒径の大きい微粒子を含有させる場合に比べて
染料染着能力は同等であるにもかかわらず、より鮮明で
深色に発色するので、同レベルの発色度の繊維を得る場
合には、添加する微粒子の量を半分近く減らすことがで
き、微粒子添加量を増やした際の弊害(物性低下、工程
通過性悪化)を少なくすることができる。さらに繊維内
部の重合体微粒子の平均粒径が0.01〜0.05μm
の場合には、既存のセルロール繊維と同等の力学物性
(強度・伸度)の繊維が得られる。この理由は、前述の
親水性官能基による粒子とセルロースとの水素結合形成
に加えて、平均粒径が大きい場合には、応力集中点が減
ることで一点にかかる力が大きく、大きな欠陥ができや
すいが、粒径の小さい粒子が微分散している場合には応
力集中が起こりにくくなるためと考えられる。
【0041】このように、繊維内に存在する微粒子の平
均粒径は、小さいほど、良好な光沢性、鮮明性、深色性
を有し、強度低下が小さく、工程通過性の良好な繊維が
得られる。従って、微粒子の平均粒径は1μm以下、特
に0.05μm以下であることが好ましい。また粒径の
下限としては分散染料(分散染料粒子の大きさは約0.
002μm)の粒子内部への染着を考慮すると0.01
μmとするのが好ましい。より好ましい重合体微粒子の
平均粒子径は0.01〜0.045μm、さらに好まし
くは0.02〜0.04μmである。なお、本発明にお
いて、重合体微粒子の平均粒径とは、セルロース繊維の
横断面における重合体微粒子の平均粒径をいう。該平均
粒径は、例えば、セルロース繊維の横断面を電子顕微鏡
を用いて5000〜50000倍の倍率で観察した画像
を市販の画像解析装置を用いて前処理した後、該装置の
微粒子解析モードを用いて円相当の平均粒子径を算出し
て得ることができる。
【0042】本発明において、セルロース繊維に含有す
る重合体微粒子の数は、該セルロース繊維の横断面にお
いて、10〜1000個/μm2 であるのが好ましく、
より好ましくは50〜500個/μm2 、さらに好まし
くは100〜300個/μm 2 である。繊維内の粒子の
数が多いほど、断面方向や糸長方向での粒子の局在化が
緩和され、染色斑の少ない繊維が得られるようになり、
また応力集中点の分散による繊維強度低下を抑制できる
ようになるが、逆に多すぎると凝集が起こりやすくな
り、セルロース原液中での微粒子濃度を下げる必要が生
じる。
【0043】さらに一次粒子の凝集により形成される粗
大な凝集粒子(二次粒子)の数は、10個/μm2 以下
が好ましく、より好ましくは5個/μm2 以下、さらに
好ましくは3個/μm2 、さらに好ましくは1個/μm
2 以下である。二次粒子の数が少ないほど高い光沢性、
鮮明性、深色性を有する繊維が得られる。この理由は、
平均粒径が小さい粒子群であってもその中に可視光の波
長と同等以上の粒子径を有する粗大な二次粒子が存在す
ると、白色光の反射量が増えるためと考えられる。また
二次粒子の数が多くなると、二酸化チタン等の艶消し剤
を添加した場合と同じように、繊維は白濁、失透し、光
沢が無くなり、より鮮明で濃厚な高発色の色彩が発現し
にくくなる。
【0044】さらに本発明に用いられる重合体粒子の表
面には、セルロース繊維との親和性を高める官能基が導
入されていることが好ましい。重合体微粒子はセルロー
ス繊維原液に分散されるが、分散染料可染性の微粒子は
一般的にセルロースとの相互作用が小さく、繊維の強度
低下が生じ易くなるためである。本発明では、重合体微
粒子の凝集を抑制し、繊維内部の微粒子の平均粒径を小
さくすることで、繊維の強度低下を抑制することができ
るが、上記表面改質を行うことにより、さらに繊維の強
度低下を抑制することができる。
【0045】次に本発明の分散染料可染性セルロース繊
維の製造方法について説明する。セルロースに添加され
る重合体微粒子は、粉砕−加水分解法や直接重合法によ
って得ることができる。粉砕−加水分解法は、ポリエス
テルやポリアミドの微粒子を製造する際に用いられる。
膨潤処理や結晶化処理や劣化処理等の前処理をしたポリ
マーを、公知の湿式粉砕機や乾式粉砕機によって物理的
に粉砕後、分級し、アルカリや酸によって加水分解する
ことで微粒子を得ることができるが、前処理や後処理、
複数回の粉砕処理が必要であったり、微粒子の収率が低
くなるので、重合過程で粒子を形成していく方法が、製
造コストの面から好ましい。
【0046】重合によって直接微粒子を製造する方法と
しては、分散重合、懸濁重合、乳化重合、マイクロエマ
ルジョン重合などがあり、いずれの方法でもビニル系重
合体微粒子を製造することができるが、平均粒径がサブ
ミクロンオーダー以下の微細な粒子を得る場合には、乳
化重合法が好適である。乳化重合法によりセルロース原
液に添加しても凝集しない粒子(特に平均粒径0.01
〜0.05μmの微細な粒子)を安定して得るために
は、重合時の最終固形分濃度を40%以下に下げること
が重要である。これら微粒子は中空であってもよく、中
空の数は1つであってもまた多孔であってもよい。ま
た、重合した微粒子を、ノニオン性界面活性剤の存在下
でアルカリ処理し部分溶解することによって、微粒子の
平均粒径を制御してもよい(例えば、Colloid
& Polymer Science、272:152
1−1525(1994)))。
【0047】乳化重合法の場合、従来公知の方法を用
い、固形分濃度を40%以下に下げることで、本発明に
用いられる重合体微粒子を得ることができる。触媒とし
ては、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アン
モニウム等の過硫酸塩、過酸化水素/第一鉄塩、ter
t−ブチルヒドロペルオキシド/第一鉄塩、p−クメン
ヒドロペルオキシド/第一鉄塩、クメンヒドロペルオキ
シド/ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、
クメンヒドロペルオキシド/N−アルキルエチレンジア
ミン、過酸化ベンゾイル/ジメチルアニリン等のレドッ
クス系開始剤を使用することができる。また、必要に応
じてn−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタ
ン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプ
タン、メルカプトプロピオン酸エステル、チオグリコー
ル酸等の連鎖移動剤、α−メチルスチレンダイマー等の
重合遅延剤を使用することができる。
【0048】さらに、必要に応じては架橋剤を使用して
も良く、使用可能な架橋剤としては、アリル(メタ)ア
クリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、エチレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレング
リコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリ
コールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)
アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アク
リレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレ
ート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレ
ート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレー
ト等の(メタ)アクリレート類、N,N’−メチレンビ
ス(メタ)アクリルアミド、1,1−ビス(メタ)アク
リルアミドエタン、1,2−ビス(メタ)アクリルアミ
ドエタン、1,3−ビス(メタ)アクリルアミドプロパ
ン、1,6−ビス(メタ)アクリルアミドヘキサン、
1,10−ビス(メタ)アクリルアミドドデカン等の
(メタ)アクリルアミド類、ブタジエン、1−アセトキ
シブタジエン、1−カルボエトキシブタジエン、イソプ
レン、2,3−ジメチルブタジエン等のジエン類、ジビ
ニルベンゼン、ジビニルアジペート等の公知の架橋性化
合物があげられる。
【0049】本発明で使用可能な乳化剤としては、ノニ
オン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン界
面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤として
は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキ
シエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチ
レン誘導体類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキ
シエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエ
チレンソルビトール脂肪酸エステル類、グリセリン脂肪
酸エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル
類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシ
エチレンアルキルアミン類、アルキルアルカノールアミ
ド類、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体類などがあげ
られる。
【0050】アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸類
(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、
オレイン酸)、アルキルスルホン酸(例えばセチルスル
ホン酸)、アルキル硫酸エステル(例えばラウリル硫酸
エステル、ミリスチル硫酸エステル、パルミチル硫酸エ
ステル、ステアリル硫酸エステル、オレイル硫酸エステ
ル)、アルキルスルホコハク酸(例えば、ジオクチルス
ルホコハク酸、スルホコハク酸ジ−2−エチルヘキシル
エステル)、アルキルベンゼンスルホン酸(例えばドデ
シルベンゼンスルホン酸)、アルキルジフェニルエーテ
ルスルホン酸(例えばラウリルジフェニルエーテルスル
ホン酸)、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルリ
ン酸、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、ポリ
オキシエチレンアルキルアリルエステル、ナフタレンス
ルホン酸ホルマリン縮合物、ポリカルボン酸等の化合物
のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウ
ム塩などが好適に用いられる。
【0051】また、乳化重合によって微粒子を製造する
場合には、ビニル基を有する反応性の界面活性剤を使用
してもよい。反応性界面活性剤の場合には、化学的・物
理的な力を受けても、活性剤が粒子からはがれることが
ないために、セルロース原液に溶出して繊維構造形成に
悪影響を与えることがないので、繊維物性の面から好ま
しい。アニオン性の反応性界面活性剤としては、ポリオ
キシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテルのス
ルホン酸エステル類、スチレンのスルホン酸類、メタク
リル酸アルキルエステルのスルホン酸類、メタクリル酸
ポリアルキルオキシエステルのスルホン酸エステル類、
アルキルアリルコハク酸ジエステルのスルホン酸類、ア
ルキル(アリルオキシアルキル)コハク酸ジエステルの
スルホン酸類等の化合物のナトリウム塩、カリウム塩、
リチウム塩、アンモニウム塩が挙げられる。
【0052】また、ノニオン性の反応性界面活性剤とし
ては、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニル
エーテル類、アクリル酸のポリオキシエチレンアルキル
エーテルのエステル類、メタアクリル酸のポリオキシエ
チレンアルキルエーテルのエステル類、アクリル酸のポ
リオキシプロピレンのエステル類、メタアクリル酸のポ
リオキシプロピレンのエステル類、アクリル酸のポリオ
キシプロピレンアルキルエーテルのエステル類、メタア
クリル酸のポリオキシプロピレンアルキルエーテルのエ
ステル類、アクリル酸のポリオキシエチレンポリオキシ
プロピレンのエステル類、メタアクリル酸のポリオキシ
エチレンポリオキシプロピレンのエステル類、アクリル
酸のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル
エーテルのエステル類などがあげられる。これらの界面
活性剤は、単独で使用しても複数の活性剤を併用しても
よく、アニオン性活性剤/ノニオン性活性剤や非反応性
活性剤/反応性活性剤などの種類の異なる活性剤を組み
合わせて使用することもできる。
【0053】重合体微粒子は、最終的には固形分濃度1
〜40重量%の水性エマルジョンとして得られ、必要に
応じて水や化合物を添加した後に、適量セルロース原液
に添加される。エマルジョンは調整後速やかにセルロー
ス原液に添加することが望ましいが、添加までに時間が
開く場合には、劣化、分散安定性の点から、熱、冷却、
光を避けて貯蔵すること、具体的には10〜40℃の恒
温の暗室に貯蔵しておくことが望ましい。
【0054】本発明に用いるセルロースの原料として
は、木材パルプ、綿リンター、綿リントなどが好適に用
いられ、紡糸原液中のセルロースの重合度は200〜1
100の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは
250〜1000であり、特に好ましくは300〜90
0である。重合度が小さすぎると、得られる繊維の物
性、特に引張り強度等の力学物性の低下が大きくなる場
合がある。また重合度が大きすぎると原液粘度の上昇や
溶解性の低下を引き起こして曳糸性が悪くなり、生産性
が低下する場合がある。紡糸に用いられる原液のセルロ
ース濃度は、紡糸原液の種類によって若干差はあるが、
3〜15重量%が好ましく、5〜12重量%がさらに好
ましい。セルロース濃度が低すぎると、製造コストが高
くなるばかりか、紡糸時の凝固が遅くなり、曳糸性の低
下や繊維の強度も低下が起こる場合がある。一方、セル
ロース濃度が高すぎると、原液粘度の上昇や溶解性の低
下を引き起こして曳糸性が悪くなり、さらには単糸切れ
や毛羽が発生しやすくなって、生産性が低下する場合が
ある。
【0055】重合体微粒子の添加は、セルロース原料を
仕込む工程から紡糸原液が紡出される紡糸工程までの任
意の工程で行うことができ、セルロースの溶解の前に添
加しても後で添加してもよく、必要であれば複数の工程
で段階的に添加してもよい。微粒子の添加において重要
なことは、微粒子を凝集させることなく原液内に均一に
分散せしめることである。凝集が起こった場合には、フ
ィルター詰まりやノズル詰まり、単糸切れや毛羽等の工
程通過性のトラブルが生じるばかりか、得られる糸の透
明性や光沢性、発色性、繊維物性も低下してしまう。微
粒子粉末を直接紡糸原液に添加する方法は凝集が起こり
易いため、予め任意の濃度の微粒子の水性分散液を調製
してから原液に添加する方法が好ましい。分散液中の微
粒子の濃度は、高すぎると分散液自体の凝集が起こりや
すくなり、また低すぎると紡糸原液のセルロース濃度が
低くなってしまうので、好ましくは5〜35重量%、特
に10〜30重量%の微粒子濃度に調製することが好ま
しい。また、微粒子分散液の添加によって紡糸原液の組
成比は変わるので、最終の紡糸原液のセルロース濃度や
溶媒の濃度が所望の濃度になるように、予め微粒子分散
液に紡糸原液の溶媒や添加物質を添加しておいてもよ
い。特に、水酸化ナトリウム溶液や銅アンモニア溶液等
の陽イオン性化合物を添加する場合は、微粒子の分散安
定性の点から、分散液を攪拌しながら可及的ゆっくりと
徐々に添加していくことが望ましい。
【0056】微粒子を分散液内で安定に微分散させる方
法には特に限定されず、慣用の微分散法、例えば、攪拌
機、超音波、粉砕媒体などを利用する微分散法を使用で
きる。微粒子分散液は、分散液を調製後紡糸原液に添加
するまでの間、粉砕媒体と粉砕媒体を攪拌するための回
転手段を兼ね備えた装置や、通常の攪拌機に入れて攪拌
しておくことが、分散性の面から好ましいが、攪拌し過
ぎると気泡が混入して紡糸性に悪影響を与えるおそれが
あるため、分散液調製後の攪拌は低速で行うことが好ま
しく、特に高速攪拌機にて分散液の調製を行った後、低
速で攪拌しておくことが好ましい。
【0057】微粒子分散液の紡糸原液への混合は、微粒
子分散液を必要に応じて濾過した後に、セルロースを含
むドープに添加すればよいが、微粒子をドープ内に均一
に含有せしめるために、添加後さらに攪拌、混練処理を
施すことが好ましい。微粒子の混合、攪拌は公知の混合
装置が使用可能で、ホモミキサー、インラインミキサー
などの混合装置では、微粒子分散液を添加直後に高速で
攪拌、混合されるため、微粒子の凝集が起らず、均質な
ドープを調製することができる。特に、密閉性の高いイ
ンラインミキサーの使用が好ましく、これら密閉型の混
合装置では、気泡が混入せず、微粒子添加後に脱泡処理
を省略できるようになるので、微粒子添加直後でも紡糸
が行え、微粒子含有量の異なる繊維や微粒子無添加繊維
等の銘柄変更が容易にできるようになり、さらに銘柄変
更時のロスも減らせ、より低コストでの製造が可能とな
る。
【0058】また、微粒子とセルロース原液との混合温
度は、低温ほど微粒子の分散性がよくなる。高速攪拌混
合装置を使用する場合には、発熱によって混合温度が高
くなるので、装置を冷水もしくは冷媒によって冷却して
使用することが望ましい。しかし、混合時に冷却しすぎ
るとセルロース原液や微粒子分散液が凍結するので、混
合温度としては−5℃〜10℃の範囲が好ましい。微粒
子の分散安定性の点からは、微粒子分散液を紡糸原液に
添加後は、可及的速やかに紡糸を行うことが好ましい。
一方、製糸性、繊維物性の点から、必要に応じては、微
粒子添加後に紡糸原液の脱泡を行ってもよく、ビスコー
ス溶液等の低粘度原液の場合には1〜10時間の真空脱
泡、銅アンモニアセルロース溶液等の高粘度原液の場合
には10〜40時間の静置脱泡を行うことが好ましい。
さらに、製糸性の点から、紡糸原液の濾過を行い、混合
異物や粗大粒子を除去することが好ましく、紡糸口金か
ら吐出されるまでに、孔径1〜20μmの微細なフィル
ターで1段以上濾過することが特に好ましい。
【0059】また、分散液や紡糸原液中での微粒子の分
散状態を安定化するために、界面活性剤を使用してもよ
い。界面活性剤を添加する場合、小量だと分散効果が十
分発現せず、また、多量に添加すると消泡性の低下や繊
維物性の低下をきたすので、微粒子に対して1〜10重
量%の範囲で添加することが好ましい。界面活性剤とし
ては上記した乳化剤などを用いることができる。最終的
な紡糸原液組成は、重合体微粒子が対セルロース1〜4
0重量%入っている以外は、従来公知の組成とほとんど
同じ原液で繊維化が可能である。具体的には、例えば、
ビスコースレーヨンの場合、セルロース7〜10重量
%、二硫化炭素1〜4重量%、水酸化ナトリウム5〜9
重量%、微粒子1〜40重量%対セルロース、温度20
〜50℃である。また、銅アンモニアレーヨンの原液組
成としては、セルロース5〜12重量%、銅2〜5重量
%、アンモニア5〜9重量%、微粒子1〜40重量%対
セルロース、温度10〜40℃であり、アルカリ可溶セ
ルロースの原液組成としては、セルロース3〜7重量
%、水酸化ナトリウム7〜9.5重量%、微粒子1〜4
0重量%対セルロース、温度−10〜10℃である。
【0060】このようにして調製された紡糸原液の繊維
化は、凝固性、凝固速度が従来の紡糸原液と大きく変ら
ないので、従来公知の紡糸方法をそのまま用いることが
できる。具体的には、例えばビスコースレーヨンの場
合、硫酸8〜12重量%、硫酸ソーダ12〜30重量
%、硫酸亜鉛1〜3重量%、温度45〜65℃の凝固浴
に、0.01〜0.2mmφ(直径、以下同じ)の紡糸
口金より、吐出線速度50〜1200m/分で紡糸原液
を吐出し、曳糸速度50〜1200m/分で紡糸され
る。また、銅アンモニアレーヨンの場合、硫酸0〜20
重量%、温度30〜60℃の凝固浴に、0.1〜2mm
φの紡糸口金より、吐出線速度5〜200m/分で紡糸
原液を吐出し、硫酸1〜20重量%、温度20〜60℃
の再生浴を経て、曳糸速度50〜1500m/分で紡糸
される。さらに、アルカリ可溶セルロースの場合には、
硫酸10〜70重量%、温度−10〜20℃の凝固浴
に、0.01〜2mmφの紡糸口金より、吐出線速度5
〜100m/分で紡糸原液を吐出し、曳糸速度10〜2
00m/分で紡糸される。
【0061】紡糸装置についても、従来公知の装置を使
用することができ、例えば、遠心式紡糸機、ハンク式紡
糸機、ボビン式紡糸機、ホフマン式連続紡糸機、デュレ
ッタ式連続紡糸機、ネルソン式連続紡糸機、ドラム式連
続紡糸機、ネットプロセス式連続紡糸機、インダストリ
アル式連続紡糸機、オスカーコーホン式連続紡糸機、ク
ルジャン式連続紡糸機等を使用することができる。特に
衣料分野で使用する場合には、収縮率や染色性等の糸長
方向の糸特性の均一性の点から、特性斑が少ない連続紡
糸機類の使用が好ましい。紡糸後の精練、水洗、乾燥に
ついても従来公知の装置、条件をそのまま適用すること
ができる。また、本発明のセルロース繊維は、公知の鞘
芯型紡糸やサイドバイサイド型紡糸によって製造される
複合繊維や、異形紡口を使用して製造される三角断面、
扁平断面、星形断面、十字形断面、C形断面、T字形断
面、Y形断面等の異形断面繊維、ガスインジェクション
型紡糸によって製造される中空繊維等の特殊繊維にも適
用できる。
【0062】本発明のセルロース繊維は熱可塑性の重合
体を含有しているために、従来のセルロース繊維では得
られなかった熱セット性、プリーツ性を示す。この性質
によって本発明のセルロース繊維は、これまで使用する
ことのできなかった用途についても、セルロース100
%使いまたはセルロース繊維の混合率を高くした製品で
展開することができ、特に婦人用のブラウスやスカート
などのアウター分野では、独特の風合と吸湿性を有する
セルロース繊維の使用率および展開分野を広げられる意
義は大きい。
【0063】また、本発明のセルロース繊維は、汎用の
染色機を用いて工業的に染色することを考慮すると通常
の分散染料染色条件における染料吸尽率は40%以上、
好ましくは60%以上、特に好ましくは80%以上の繊
維であることが望まれる。本発明のセルロース繊維は、
分散染料にて鮮明で深色に染色可能であり、熱セット
性、プリーツ性等の従来のセルロース繊維にはなかった
機能を有しているので、セルロース繊維単独の繊維製品
として展開できるのは勿論のことであるが、ポリエステ
ル繊維やポリアミド繊維、セルロースアセテート繊維等
の分散染料可染性繊維との複合製品として使用した場合
に、その効果が最も有効に現れる。すなわち、染色工程
が従来の2段2浴染色から1段1浴染色に合理化され、
染色時間および染色コストの削減ができて、さらに、染
色後のセルロースおよび相手素材の色彩が高い同色性を
有する。特に、セルロース/ポリエステルの複合繊維製
品は需要が多く、この分野で本発明のセルロース繊維を
使用することによる染色工程の合理化、微分散化による
発色性向上さらには、従来のセルロースと全く同等の物
性を有することによって、これまでの複合製品と同様の
混率、同様の加工法、加工形態をそのまま適用できる意
義は非常に大きい。
【0064】
【発明の実施の形態】以下に実施例を示し、本発明をさ
らに詳しく説明するが、本発明はこれらのみに限定され
るものではない。なお、例中の%は特に示さないかぎり
重量%を意味する。また本発明において、エマルジョン
平均粒径、エマルジョン固形分濃度、繊度、乾強度・伸
度、湿潤強度、光沢度、染料吸尽率、鮮明度、深色度、
繊維内の微粒子の平均粒径、二次粒子個数、粒子個数は
以下の方法で測定した。
【0065】(1)エマルジョン平均粒径:セルロース
原液添加前の重合体微粒子エマルジョンについて、マイ
クロトラック粒度分布測定装置を用い、粒度分布を測定
し、その最高ピーク点粒度(MV値)を平均粒径とし
た。 (2)エマルジョン固形分濃度:重合体微粒子エマルジ
ョン10.00gを精秤し、105℃で18時間乾燥
し、乾燥後の不揮発分の重量を精秤する。不揮発分重量
(Ag)から、次式により固形分濃度を算出した。 固形分濃度=A/10.00×100(%) (3)繊度:JIS−L1013−7.3 (4)乾強度・乾伸度:JIS−L1013−7.5.
1 (5)湿潤強度:JIS−L1013−7.5.2 (6)光沢度:JIS−L1013−7.21(B法)
に準じて測定をおこなった、この値が高いほど光沢性が
高いことを示す。
【0066】(7)染料吸尽率:試料はセルロース繊維
の一口編地を用い、スコアロール400を2g/リット
ルの濃度で含有している温水を用いて、70℃、20分
間精練処理し、染液を添加して40℃から120℃まで
昇温速度2℃/分で昇温後、さらにそのまま120℃で
40分間保持して染色を行った。染色終了後の編地を、
NaOHを1g/リットル、硫酸ナトリウムを1g/リ
ットル、アミラジン(第一工業製薬社製)を1g/リッ
トルの濃度で含有している温水を用いて、40℃、20
分間還元洗浄を行い、さらに水洗を30分間行った後
に、60℃、10分間タンブラー乾燥機で乾燥を行っ
た。染料は、カヤロンポリエステルブルー3RSF(日
本化薬社製)を使用し、6%owf、浴比1:50で染
色した。分散剤はニッカサンソルト7000(日華化学
社製)を0.5g/リットル使用し、酢酸0.25ml
/リットルと酢酸ナトリウム1g/リットルを加え、p
Hを5に調製した。
【0067】染料吸尽率は、染料原液をアセトン水溶液
(アセトン/水=1/1容量比)により所定の希釈度で
希釈調製した溶液の吸光度をA、染色後の染液をアセト
ン水溶液(アセトン/水=1/1容量比)により所定の
希釈度で希釈調製した溶液の吸光度aを分光光度計(日
本分光社製、V−530型)から求め、以下の式に代入
して求めた。吸光度は当該染料の最大吸収波長である5
80nmでの値を採用した。 染料吸尽率=(A−a)/A×100(%)
【0068】(8)鮮明度(鮮明性を表す尺度):染料
にミケロンポリエステルレッドFL(三井東圧社製)を
用い、染料濃度を2、4、8、16%owfの4水準と
する以外は、(7)と同じ処方で染色、還元洗浄、乾燥
を行い、乾燥後、測色を行った。測色はスガ試験機社製
カラーコンピュータ(SM−4)を用い、染料濃度を変
えて得られた4種の染色物の色濃度C* と鮮明度B*
測定した。測定結果を縦軸にB* 、横軸にC* を取り、
縦軸、横軸の目盛りをそれぞれ2〜6、9〜15とする
グラフを作成した。この際に縦軸と横軸の長さをそれぞ
れ12cm、20cmとした。得られた4点のデータを
プロットして得られる曲線は、右上に凸となる形状を示
すが、この曲線(縦軸の目盛り、横軸の目盛り)から
(2、9)の点までがもっとも長くなる距離(単位:c
m)を鮮明度と定義する。この値が大きい程、鮮明に染
色されていることを示す。こうして得られる鮮明度は、
人が見て感じる鮮明性と極めてよい相関がある。
【0069】(9)深色度(深色性を表す尺度):深色
度については、有彩色および無彩色の2種類の色につい
て評価した。 (9−A)有彩色の深色度:owfを8%とする以外は
(7)と同じの処方の染色条件で染色、還元洗浄、乾燥
を行った後に、測色を行った。測色は、分光光度計(D
CI(株)製スペクトラフラッシュ500)を用いて、
K/Sを評価した。この値は、染色後のサンプル布の分
光反射率Rを測定し、以下に示すクベルカ−ムンク(K
ubelka−Munk)の式から求め、本発明ではK
/Sを有彩色の深色度と定義した。Rは当該染料の最大
吸収波長である580nmでの値を採用した。 K/S=(1−R)2 /2R この値が大きいほど、深色効果が大きいこと、すなわ
ち、よく発色されていることを示す。こうして得られた
深色度は、人が見て感じる深色性と極めてよい相関があ
る。 (9−B)無彩色の深色度:染料にスミカロンブラック
S−BF(住友化学社製)を用い、染料濃度を16%o
wfとする以外は、(7)と同じ処方で染色、還元洗
浄、乾燥を行った後に、測色を行った。測色はスガ試験
機社製カラーコンピュータ(SM−4)を用い、L値を
測定した。本発明においては、このL値を無彩色の深色
度と定義した。この深色度は数字が小さいほど深色性が
高いことを示す。こうして得られる深色度は、人が見て
感じる深色性と極めてよい相関がある。
【0070】(10)繊維内の重合体微粒子の平均粒径
(実施例1〜4および比較例1〜7の測定):平均粒径
は、繊維の横断面を電子顕微鏡を用いて50000倍の
倍率で観察した画像(1μm四方)を、市販の画像解析
装置(IP1000:旭化成工業社製)を用いて前処理
後、該装置の微粒子解析モードを用いて円相当の平均粒
子径を算出し、5回の観察の平均値を平均粒径とした。
ただし、微粒子の平均粒径が大きい場合には、倍率を1
000〜10000倍に下げた画像を用い、同様の手法
により算出した。
【0071】(11)繊維内の重合体微粒子の平均粒径
(実施例5〜27および比較例9〜21の測定):セル
ロース繊維の断面を以下の方法によって、撮影し、画像
処理方法の異なる2種類の平均粒径を求めた。セルロー
ス繊維をエポキシモノマー(ケトール812:日新EM
社製)と硬化剤(ドデシルサクソニックアンハイドライ
ド、メチルナディックアンハイドライド)の混合溶液に
浸漬した後、開始剤(DMP−30:日新EM社製)を
加え、60℃の加熱条件下で24時間処理して重合を行
い、繊維を樹脂によって包埋する。繊維を包埋した樹脂
をミクロトームで繊維長方向に70nmの厚みの繊維横
断面切片を調製する。透過電子顕微鏡を用いて、得られ
た切片の倍率5000〜50000倍の写真(画像)を
撮影した。電子顕微鏡でのコントラストが不十分な場合
には、四酸化ルテニウムにて粒子を染色して観察を行っ
た。撮影したネガ画像を画像解析装置(IP1000−
PC:旭化成工業社製)を用いて、以下の方法で計測し
た。
【0072】(11−A)非前処理法:スキャナー(J
X−330)を使用して、ネガ画像を白黒256階調
(ガンマ補正値は2.2)で取り込んだ。取り込み領域
は、1×1μm〜10×10μmの範囲で、撮影倍率に
よって選択した。取り込んだ256階調の画像に対し、
2値化処理を行った。この際に設定したパラメーター
は、(1)しきい値(=自動)、(2)シェーティング
補正処理(=有り)、(3)穴埋め処理(=有り)、
(4)ガンマ補正処理(=補正値γ=2.2)、(5)
小図形面積(300nm以下除去)である。得られた2
値化画像より、計測エリアラインに接触して、一部が計
測範囲から外れた粒子を除去した後に、粒子解析を行
い、対象粒子の円相当径を求めた。5視野計測した後
に、計測した全粒子の円相当径について算術平均値を計
算し、当該粒子の平均粒径とした。 (11−B)前処理法:撮影写真上の個々の粒子の輪郭
をハンドでトレースし、粒子の境界を明確にする。この
画像から(11−A)と同様の装置、手法で平均粒径を
算出した。
【0073】(12)繊維内の二次粒子の個数:(1
0)または(11)で得られた画像から、目視で二次粒
子数を計測し、5回の観察の平均値を二次粒子個数とし
た。ただし二次粒子は、5個以上の一次粒子が凝集した
ものであって、接合することによって個々の一次粒子の
形態が変形しているものと定義した。 (13)繊維内の重合体微粒子の個数:(10)または
(11)と同じ画像、画像解析装置を用いて粒子数を計
測し、5回の観察の平均値を粒子個数とした。
【0074】実施例1 水1248部、ドデシルベンゼンスルホン酸40部およ
びスチレンスルホン酸ソーダ20部を仕込み80℃に昇
温後、窒素雰囲気に置換し、攪拌しながらスチレン4.
8部、メチルメタアクリレート34部、亜硫酸水素ナト
リウム3.52部および水60部を添加した。さらに、
攪拌しながら過硫酸ナトリウム8部および水60部を添
加し、重合反応を開始させ、反応開始15分後から18
0分間かけてスチレン31.2部、メチルメタアクリレ
ート286部およびアクリルアミド24部を滴下し、そ
れと並行して反応開始20分後から175分間かけて水
80部、水酸化ナトリウム1.4部および過硫酸ナトリ
ウム6部を滴下した。滴下終了後、さらに90分間攪拌
し、反応を進め、固形分濃度20.1%、平均粒径0.
029μmの重合体微粒子エマルジョンを得た。
【0075】このエマルジョン555部に40%水酸化
ナトリウム水溶液99.8部を徐々に添加混合して調製
したアルカリエマルジョンを、ホモミキサーを用い、常
法により調製されたビスコース溶液5000部(セルロ
ース:8.7%、水酸化ナトリウム:6.1%、二硫化
炭素:1.8%)に10分間かけて添加混合した後、さ
らに20分間1000回転/分の速度で攪拌を行い、7
6mmHgの減圧下1時間の真空脱泡を行い、セルロー
ス濃度7.7%、微粒子の対セルロース添加率25%、
水酸化ナトリウム濃度6.1%の微粒子添加ビスコース
原液を得た。
【0076】この原液を20μmフィルターで濾過した
後に、0.06mm×50ホールの一重配列紡糸口金よ
り、凝固浴(硫酸:140g/l、硫酸ナトリウム:2
60g/l、硫酸亜鉛:15g/l、浴温度58℃)へ
吐出量15ml/分で吐出し、従来公知の連続紡糸機を
用いて、そのまま連続して再生、水洗、乾燥を行った後
に巻取速度120m/分にて巻取った。紡糸性は良好
で、5時間の紡糸で毛羽や糸切れ等のトラブルやフィル
ターの詰りは発生しなかった。得られた糸状は、繊度1
20.7d、乾強度1.57g/d、湿潤強度0.71
g/dと実用上問題のないレベルであり、光沢度は3
0.2とブライトに近い高い光沢を示した。繊維断面内
の微粒子の平均粒径は0.033μmであり、二次粒子
数は0.6個/μm2 、粒子数は201.4個/μm2
であった。また、染料吸尽率は93.5%と高く、得ら
れた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度は、
19.9、38.7、17.3であり、極めて優れた鮮
明深色性を示した。
【0077】実施例2 実施例1において、紡糸原液での重合体微粒子の量を対
セルロース3%とする以外は実施例1と同様にして対応
するビスコースを得た。5時間の紡糸時間内に毛羽や糸
切れ、フィルターの詰り等のトラブルは発生しなかっ
た。得られた糸状は、繊度108.9d、乾強度1.8
1g/d、湿潤強度0.79g/d、光沢度は34.7
であった。繊維断面内の微粒子の平均粒径は0.028
μmであり、二次粒子数は0個/μm2 、粒子数は2
0.8個/μm2 であった。また、染料吸尽率は52.
9%、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩色
深色度は、13.1、9.0、22.8であった。
【0078】実施例3 実施例1において、モノマー滴下量をメチルメタアクリ
レート230部、スチレン31.2部、アクリルアミド
80部およびネオペンチルグリコールジメタアクリレー
ト40部とする以外は実施例1と同様にして重合を行
い、固形分濃度21.6%、平均粒径0.033μmの
エマルジョンを得た。このエマルジョンを用い、実施例
1と同様にして紡糸原液の調製、紡糸を行った。紡糸性
は良好で、5時間の紡糸で毛羽や糸切れ等のトラブルや
フィルターの詰りは発生しなかった。得られた糸状は、
繊度120.2d、乾強度1.60g/d、湿潤強度
0.61g/dと高い強度を示し、光沢度は30.5と
優れた光沢性を示した。繊維断面内の微粒子の平均粒径
は0.035μmであり、二次粒子数は1.0個/μm
2 、粒子数は197.0個/μm2 であった。また、染
料吸尽率は90.1%、得られた染色物の鮮明度、有彩
色深色度、無彩色深色度は、19.7、39.2、 1
7.3であり、極めて優れた鮮明深色性を示した。
【0079】実施例4 実施例1で得られたエマルジョン637部にラウリル硫
酸エステルナトリウム25%水溶液25.5部を添加し
た乳化液を、インラインミキサーを用いて、常法により
調製された銅アンモニアレーヨン溶液5000部(セル
ロース:10%、銅:3.5%、アンモニア:7%、水
酸化ナトリウム:0.5%)に添加混合し、セルロース
濃度8.9%、微粒子の対セルロース添加率25%の微
粒子添加銅アンモニアセルロース原液を得た。原液調製
後、連続して20μm焼結フィルター、5μmフィルタ
ーを通して0.7mm×45ホールの紡糸口金より、凝
固浴(一次紡水:温度36℃、紡水量450ml/分、
二次紡水:温度55℃、紡水量400ml/分)へ吐出
量11.2ml/分で吐出し、従来公知の連続紡糸機を
用いて、ロール上で再生、水洗、乾燥を行って、巻取速
度150m/分にて巻取り銅アンモニアレーヨン糸状を
得た。紡糸性は良好で、5時間の紡糸時間中に、フィル
ター詰り、糸切れ等のトラブルは発生しなかった。得ら
れた糸状は繊度82.3dで、乾強度1.95g/d、
湿潤強度1.24g/dと高い性能を示し、光沢度は2
7.3であった。繊維断面内の微粒子の平均粒径は0.
040μmであり、二次粒子数は3.4個/μm2 、粒
子数は131.8個/μm2 であった。また、染料吸尽
率は93.9%、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色
度、無彩色深色度は、19.2、33.9、17.5と
極めて優れた鮮明深色性を示した。
【0080】比較例1 実施例1において、スチレンスルホン酸ソーダ20部に
代えてイタコン酸12部を添加し、反応開始後の滴下モ
ノマーをメチルメタアクリレート306部、スチレン4
3.2部とし、固形分濃度を高くする以外は実施例1と
同様にして乳化重合を行い、固形分濃度35.5%、平
均粒径0.95μmのエマルジョンを得た。このエマル
ジョンの固形分濃度が20%になるように希釈した後
に、実施例1と同様にして原液調製、紡糸を行い、対応
するビスコース繊維を得た。紡糸性は不良で、5時間の
紡糸で6回の毛羽の発生があった。得られた糸状は、繊
度120.3d、乾強度1.39g/d、湿潤強度0.
52g/dと低めであり、光沢度は9.6と完全なダル
調の失透、白濁した繊維であった。繊維断面内の微粒子
の平均粒径は0.95μmであり、二次粒子数は0個/
μm2 、粒子数は0.29個/μm2 であった。また、
染料吸尽率は94.5%と高いものの、得られた染色物
の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度は、14.3、
23.6、18.3であり、極めて低い発色性であっ
た。
【0081】比較例2 比較例1において、初期モノマー仕込量を増やす以外は
比較例1と同様にして乳化重合を行い、固形分濃度2
1.2%、平均粒径0.065μmのエマルジョンを得
た。このエマルジョンを用い、実施例1と同様の原液調
製、紡糸を行い、対応するビスコース繊維を得た。得ら
れた糸状は、繊度122.5d、乾強度1.44g/
d、湿潤強度0.55g/dであり、光沢度は27.2
と低下した。繊維断面内の微粒子の平均粒径は0.06
8μmであり、二次粒子数は4.0個/μm2 、粒子数
は81.2個/μm2 であった。また、染料吸尽率は9
3.7%、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無
彩色深色度は、18.8、34.8、17.8であり、
実施例1と比較して発色性の低下が見られた。
【0082】比較例3 比較例1において、イタコン酸を添加しない以外は比較
例1と同様の処方により重合を行い、固形分濃度19.
7%、平均粒径0.039μmのエマルジョンを得た。
このエマルジョンを用い、実施例1と同様にして原液調
製、紡糸を行ったところ、紡糸開始直後よりフィルター
詰り、紡口詰りが多発し、安定した繊維化が不能であっ
た。紡口径を0.1mmφと大きくしたが、同様に紡口
詰りが発生し紡糸不能であった。紡糸原液を光学顕微鏡
で観察したところ、多数の凝集粒子が生成していた。
【0083】比較例4 実施例1において、スチレンスルホン酸ソーダ20部に
代えてメタアクリル酸3部を添加し、反応開始後の滴下
モノマーをメチルメタアクリレート327部およびスチ
レン31.2部とする以外は実施例1と同様にして重合
を行い、固形分濃度21.1%、平均粒径0.042μ
mのエマルジョンを得た。このエマルジョンを用いて実
施例1と同様に原液調製、紡糸を行った。紡糸性は5時
間の紡糸時間で4回の単糸切れがあった。得られた繊維
は、繊度122.0d、乾強度1.43g/d、湿潤強
度0.51g/dであったが、得られた繊維の光沢度が
15.3とややダル調となっていた。繊維断面内の微粒
子の平均粒径は0.28μm、二次粒子数は18.4個
/μm2 、粒子数は34.6個/μm2 と凝集が起って
いた。染料吸尽率は93.8%、得られた染色物の鮮明
度、有彩色深色度、無彩色深色度は、18.7、33.
3、18.0と発色性が低下していた。
【0084】比較例5 比較例4において、メタアクリル酸添加量を3部から1
40部に増やし、滴下モノマーをメチルメタアクリレー
ト130部、スチレン31.2部およびネオペンチルグ
リコールジメタアクリレート24部とする以外は比較例
4と同様にして重合を行い、固形分濃度19.9%、平
均粒径0.049μmのエマルジョンを得た。このエマ
ルジョンを用いて実施例1と同様に原液調製、紡糸を行
った。湿潤時の強度が低いためか、5時間の紡糸時間内
に乾燥時に熱収縮による単糸切れが10回以上発生し
た。得られた糸状の繊度、光沢度は、119.8d、2
9.9と大きく変らなかったが、乾強度1.21g/
d、湿潤強度0.30g/dと特に湿潤強度の低下が大
きかった。繊維断面内の微粒子の平均粒径は0.049
μmであり、二次粒子数は2.4個/μm2 、粒子数は
101.0個/μm2 であった。染料吸尽率は65.5
%とある程度の染料の吸尽はしたが、還元洗浄時に染料
の脱離があったため、得られた染色物の鮮明度は測定不
能であり、有彩色深色度、無彩色深色度は、5.3、1
9.7と低く、十分な染色物を得ることができなかっ
た。
【0085】比較例6 比較例1において、固形分濃度を下げる以外は比較例1
と同様の処方で重合を行い、固形分濃度19.6%、平
均粒径0.041μmのエマルジョンを得た。このエマ
ルジョンを用いて微粒子添加量を対セルロース添加量を
100%とする以外は、実施例1と同様にして原液調
製、紡糸を行ったところ、紡糸開始より1時間後からフ
ィルター詰り、紡口詰りが発生し、2時間後からは紡糸
不能となった。また、セルロース濃度が低くなったため
か、凝固再生時の単糸切れが多発した。
【0086】比較例7 比較例1の微粒子を用いて、実施例4と同様にして原液
調製、紡糸を行った。紡糸開始後3時間で、10kg/
cm2 以上のGP圧力上昇があり、1回の糸切れが発生
した。得られた糸状は、繊度82.2d、乾強度1.7
9g/d、湿潤強度1.13g/dとやや低めであり、
光沢度は11.3と完全に白濁、失透していた。繊維断
面内の微粒子の平均粒径は1.03μmであり、二次粒
子数は0個/μm2 、粒子数は0.22個/μm2 、染
料吸尽率は95.3%、得られた染色物の鮮明度、有彩
色深色度、無彩色深色度は、13.8、21.9、1
8.2であり、極めて低い発色性であった。
【0087】比較例8 比較例1において、固形分濃度を高くする以外は比較例
1と同様の方法で固形分濃度45%のエマルジョンを重
合した。エマルジョンの平均粒径は0.23μmとな
り、粒度分布は0.04μmを中心とする一次粒子と
0.3μmを中心とする二次粒子の2山の分布を示し、
紡糸原液添加前のエマルジョンの段階で凝集が起ってい
た。実施例1〜4および比較例1〜8における重合およ
び原液調整条件を表1に、また得られた繊維の性能を表
2にまとめて示す。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】実施例5 メチルメタアクリレート212.5部、スチレン25
部、イタコン酸2.5部、アクリルアミド10部、アデ
カリアソープSE10(旭電化社製)の25%水溶液1
0部、エマルゲン920(花王社製)の25%水溶液1
0部、エマルゲン950(花王社製)の25%水溶液3
0部、過硫酸カリウム3.73部および蒸留水400部
を添加し、ホモミキサーで攪拌を行いプレ乳化物を作製
した。別に、攪拌機付きフラスコに蒸留水300部、ニ
ューコール707SF(日本乳化剤社製)の25%水溶
液20部を仕込み、83℃に昇温し、過硫酸カリウム
0.60部を水12部に溶解したものを添加する。5分
放置後、これに前記プレ乳化物を4時間かけて連続滴下
する。その後2時間は同温度にて攪拌を続けた後に、3
0℃以下まで冷却し、80メッシュの金網を用いて濾過
を行った。濾過後、25%濃度のアンモニア水でpHを
8に調整し、固形分濃度21.7%、平均粒径0.03
9μmの重合体微粒子エマルジョンを得た。
【0091】このエマルジョンを、常法により調製され
た銅アンモニアセルロース溶液(セルロース:10%、
銅:3.5%、アンモニア:7%、水酸化ナトリウム:
0.5%)に、インラインミキサーを用いて、混合温度
10℃、ミキサー回転数1000rpmで添加、混合
し、微粒子の対セルロース添加率13%の微粒子/セル
ロース混合液を得た。混合後、そのまま連続して20μ
m焼結フィルター、5μm焼結フィルターを通して0.
7mm×45ホールの紡糸口金より、凝固浴(一次紡
水:温度36℃、紡水量450ml/分、二次紡水:温
度55℃、紡水量400ml/分)へ吐出量11.2m
l/分で吐出し、従来公知の連続紡糸機を用いて、再
生、水洗、乾燥を行って、巻取速度150m/分にて巻
取り銅アンモニアレーヨン糸状を得た。紡糸性は良好
で、5時間の紡糸時間中に、フィルター詰り、紡口詰
り、毛羽や単糸切れ等のトラブルは1度も発生しなかっ
た。得られた糸状は、繊度82.5d、乾強度2.48
g/d、乾伸度13.2%、湿潤強度1.51g/dと
通常の銅アンモニアレーヨン糸とほぼ同等の性能であ
り、光沢度も39.5と完全なブライト調であった。繊
維断面内の微粒子の平均粒径は、非前処理法で0.04
7μm、前処理法で0.043μmであり、二次粒子数
は0.2個/μm2 、粒子数は103.2個/μm2
凝集もなく完全に微分散化されていた。また、染料吸尽
率は93.1%と十分な染色性を示し、得られた染色物
の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度も、17.7、
30.5、17.9と優れた鮮明深色性を示した。
【0092】実施例6 実施例5において、メチルメタアクリレートを210
部、イタコン酸を7.5部およびアクリルアミドを7.
5部とする以外は実施例5と同様の処方により乳化重合
を行い、固形分濃度21.5%、平均粒径0.043μ
mの重合体微粒子エマルジョンを得た。このエマルジョ
ンを実施例5と同様の処方で紡糸を行ったところ、紡糸
性は良好で、5時間の紡糸中に、フィルター詰まり、紡
口詰まり、糸切れなどのトラブルは1度も発生しなかっ
た。得られた糸状は、繊度80.5d、乾強度2.55
g/d、乾伸度13.5%、湿潤強度1.62g/dと
通常の銅アンモニアレーヨンと同等の性能であった。光
沢度も40.5と高く、繊維断面内の微粒子の平均粒径
は、非前処理法で0.045μm、前処理法で0.04
3μmであり、二次粒子数は0個/μm2 、粒子数は1
05.4個/μm2 と極めて優れた分散性を示した。ま
た、染料吸尽率は91.2%と十分な染色性を示し、得
られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度
は、18.1、34.3、16.9と優れた鮮明深色性
を示した。
【0093】実施例7 実施例5において、メチルメタアクリレートを211.
25部、イタコン酸を10部およびアクリルアミドを
3.75部とする以外は実施例5と同様の処方により乳
化重合を行い、固形分濃度22.3%、平均粒径0.0
35μmの重合体微粒子エマルジョンを得た。このエマ
ルジョンを実施例5と同様の処方で紡糸を行ったとこ
ろ、紡糸性は良好で、5時間の紡糸中にフィルター詰ま
り、紡口詰まり、糸切れなどのトラブルは1度も発生し
なかった。得られた糸状は、繊度81.3d、乾強度
2.39g/d、乾伸度13.3%、湿潤強度1.55
g/dと実用上全く問題のないレベルであった。光沢度
は38.9、繊維断面内の微粒子の平均粒径は、非前処
理法で0.047μm、前処理法で0.042μmであ
り、二次粒子数は0.4個/μm2 、粒子数は103.
8個/μm2 と優れた分散性を示した。また、染料吸尽
率は92.1%と十分な染色性を示し、得られた染色物
の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度は、17.9、
31.3、17.5と優れた発色性を示した。
【0094】実施例8 実施例7において、メチルメタアクリレートを146.
25部、メタアクリル酸を50部およびトリメチロール
プロパントリアクリレートを25部とする以外は実施例
7と同様の処方で乳化重合を行い、固形分濃度21.3
%、平均粒径0.050μmの重合体微粒子エマルジョ
ンを得た。得られたエマルジョンを実施例5と同様の処
方で紡糸を行ったところ、紡糸性は良好で、5時間の紡
糸中にフィルター詰まり、紡口詰まり、糸切れなどのト
ラブルは1度も発生しなかった。得られた糸状は、繊度
82.1d、乾強度2.32g/d、乾伸度12.8
%、湿潤強度1.27g/dと実用上問題のないレベル
であった。光沢度は35.2、繊維断面内の微粒子の平
均粒径は、非前処理法で0.072μm、前処理法で
0.053μmであり、二次粒子数は1.2個/μ
2 、粒子数は88.2個/μm 2 と良好な分散性を示
した。また、染料吸尽率は85.3%とまずまずの染色
性を示し、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無
彩色深色度は、16.2、27.4、18.3と優れた
発色性を示した。
【0095】実施例9 実施例5において、メチルメタアクリレートを210
部、スチレンを22.5部、イタコン酸を10部、アク
リルアミドを3.75部および2−ヒドロキシエチルメ
タアクリレートを3.75部とする以外は実施例5と同
様の処方にて重合を行い、固形分濃度21.5%、平均
粒径0.042μmの重合体微粒子エマルジョンを得
た。このエマルジョンを実施例5と同様の処方で紡糸を
行ったところ、紡糸性は良好で、5時間の紡糸中にフィ
ルター詰まり、紡口詰まり、糸切れなどのトラブルは1
度も発生しなかった。得られた糸状は、繊度81.3
d、乾強度2.33g/d、乾伸度13.1%、湿潤強
度1.53g/dと実用上問題のないレベルであった。
光沢度は38.7と高く、繊維断面内の微粒子の平均粒
径は、非前処理法で0.045μm、前処理法で0.0
42μmであり、二次粒子数は0.2個/μm2 、粒子
数は104.0個/μm2 と優れた分散性であった。ま
た、染料吸尽率は90.7%と十分な染色性を示し、得
られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度
は、18.0、33.5、17.2と優れた発色性を示
した。
【0096】実施例10 実施例5において、微粒子の対セルロースあたりの添加
量を3%とする以外は実施例5と同様の処方にて紡糸、
染色を行った。紡糸性は良好で、5時間の紡糸中にフィ
ルター詰まり、紡口詰まり、毛羽、単糸切れなどのトラ
ブルは1度も発生しなかった。得られた糸状は、繊度7
7.5d、乾強度2.53g/d、乾伸度13.5%、
湿潤強度1.63g/dと通常糸と全く同等であった。
光沢度は41.2と高く、繊維断面内の微粒子の平均粒
径は、非前処理法、前処理法ともに0.043μmであ
り、二次粒子数は0個/μm2 、粒子数は23.6個/
μm2 と優れた分散性であった。また、染料吸尽率は6
9.2%と実用レベルの染色性を示し、得られた染色物
の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度は、14.2、
17.9、19.5とまずまずの発色性を示した。
【0097】実施例11 実施例5において、微粒子の対セルロースあたりの添加
量を25%とする以外は実施例5と同様の処方にて紡
糸、染色を行った。紡糸性は良好で、5時間の紡糸中に
フィルター詰まり、紡口詰まり、毛羽、単糸切れなどの
トラブルは1度も発生しなかった。得られた糸状は、繊
度83.8d、乾強度2.21g/d、乾伸度16.1
%、湿潤強度1.43g/dとやや伸度が高めになった
ものの実用上問題のないレベルであった。光沢度は3
0.2、繊維断面内の微粒子の平均粒径は、非前処理法
で0.045μm、前処理法で0.042μmであり、
二次粒子数は0.4個/μm2 、粒子数は211.2個
/μm2 と良好な分散性であった。また、染料吸尽率は
92.1%と充分な染色性を示し、得られた染色物の鮮
明度、有彩色深色度、無彩色深色度は、20.3、4
0.5、17.0と優れたの発色性を示した。
【0098】実施例12 実施例5において、微粒子の対セルロースあたりの添加
量を40%とする以外は実施例5と同様の処方にて紡
糸、染色を行った。紡糸性は良好で、5時間の紡糸中に
2.5kg/cm2 のギヤポンプ圧力の上昇と、2回の
毛羽、単糸切れが発生したものの断糸や紡口詰まり等の
重大なトラブルは発生しなかった。得られた糸状は、繊
度83.8dであり、物性は微粒子添加量が多いため、
乾強度1.78g/d、乾伸度10.3%、湿潤強度
0.78g/dとやや低めであった。光沢度は21.3
とややつやがなく、繊維断面内の微粒子の平均粒径は、
非前処理法で0.083μm、前処理法で0.069μ
mであり、二次粒子数は4.4個/μm2 、粒子数は2
32.8個/μm2 とまずまずの分散性であった。ま
た、染料吸尽率は92.3%と充分な染色性を示し、得
られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度
は、19.7、38.8、17.4と優れたの発色性を
示した。
【0099】実施例13 実施例5において、プレ乳化物の組成を、メチルメタア
クリレート200部、スチレン25部、イタコン酸7.
5部、スチレンスルホン酸ナトリウム7.5部およびア
クリルアミド10部とする以外は実施例5と同様の手法
により重合を行い、固形分濃度20.9%、平均粒径
0.023μmの重合体微粒子を得た。このエマルジョ
ンを用いて、微粒子添加量を対セルロース25%とする
以外は実施例5と同様の処方で紡糸を行った。紡糸性は
良好で、5時間の紡糸中に圧力上昇やフィルター詰ま
り、紡口詰まり、糸切れや毛羽などのトラブルが一度も
発生しなかった。得られた糸状は、繊度81.7d、乾
強度2.23g/d、乾伸度17.2%、湿潤強度1.
48g/dと優れた物性であった。光沢度は33.3と
高く、繊維断面内の微粒子の平均粒径は、非前処理法で
0.038μm、前処理法で0.033μmであり、二
次粒子数は0個/μm2 、粒子数は210.4個/μm
2と極めたて優れた微粒子微分散性であった。また、染
料吸尽率は95.6%と十分であり、得られた染色物の
鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度は、20.1、3
8.1、16.7と極めて優れた鮮明深色性を示した。
【0100】実施例14 水1248部、ドデシルベンゼンスルホン酸40部およ
びスチレンスルホン酸ソーダ20部を仕込み80℃に昇
温後、窒素雰囲気に置換し、攪拌しながらスチレン4.
8部、メチルメタアクリレート34部、亜硫酸水素ナト
リウム3.52部および水60部を添加した。さらに、
攪拌しながら過硫酸ナトリウム8部および水60部を添
加し、重合反応を開始させ、反応開始15分後から18
0分間かけてスチレン31.2部、メチルメタアクリレ
ート286部およびアクリルアミド24部を滴下し、そ
れと並行して反応開始20分後から175分間かけて水
80部、水酸化ナトリウム1.4部および過硫酸ナトリ
ウム6部を滴下した。滴下終了後、さらに90分間攪拌
し、反応を進めて固形分濃度20.1%、平均粒径0.
029μmの重合体微粒子エマルジョンを得た。このエ
マルジョンを用いて、実施例13と同様の処方で紡糸を
行った。紡糸性は良好で、5時間の紡糸中に圧力上昇や
フィルター詰まり、紡口詰まり、糸切れや毛羽などのト
ラブルが一度も発生しなかった。得られた糸状は繊度8
2.3dで、乾強度1.95g/d、乾伸度16.2
%、湿潤強度1.24g/dと高い性能を示した。光沢
度は27.3とつやがあり、繊維断面内の微粒子の平均
粒径は非前処理法で0.047μm、前処理法で0.0
40μmであり、二次粒子数は3.4個/μm2 、粒子
数は131.8個/μm2 であった。また、染料吸尽率
は93.9%、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色
度、無彩色深色度は、19.2、33.9、17.5と
優れた鮮明深色性を示した。
【0101】実施例15 実施例14において、モノマー滴下量をメチルメタアク
リレート230部、スチレン31.2部、アクリルアミ
ド80部およびネオペンチルグリコールジメタアクリレ
ート40部とする以外は実施例14と同様にして重合を
行い、固形分濃度21.6%、平均粒径0.033μm
のエマルジョンを得た。このエマルジョンを用い、実施
例14と同様にして紡糸原液の調製、紡糸を行った。紡
糸性は良好で、5時間の紡糸で毛羽や糸切れ等のトラブ
ルやフィルターの詰りは発生しなかった。得られた糸状
は、繊度82.4d、乾強度2.02g/d、乾伸度1
6.7%、湿潤強度1.35g/dと極めて高い物性で
あった。光沢度は24.1、繊維断面内の微粒子の平均
粒径は非前処理法で0.063μm、前処理法で0.0
47μmであり、二次粒子数は0.6個/μm2 、粒子
数は90.8個/μm2 であった。また染料吸尽率は9
1.4%、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無
彩色深色度は、18.9、32.5、18.0と良好な
発色性を示した。
【0102】実施例16 実施例13で調製したエマルジョンを、常法により調製
されたビスコースレーヨン溶液(セルロース:8.7
%、水酸化ナトリウム6.1%、二硫化炭素1.8%)
に、インラインミキサーを用いて、混合温度−5℃、ミ
キサー回転数1500rpmで添加、混合し、微粒子の
対セルロース添加率25%の微粒子/セルロース混合液
を得た。混合後、そのまま連続して20μmフィルター
で濾過した後に、0.06mm×50ホールの一重配列
紡糸口金より、凝固浴(硫酸:140g/l、硫酸ナト
リウム:260g/l、硫酸亜鉛:15g/l、浴温度
58℃)へ吐出量15ml/分で吐出し、従来公知の連
続紡糸機を用いて、そのまま連続して再生、水洗、乾燥
を行った後に巻取速度120m/分にて巻取った。紡糸
性は良好で、5時間の紡糸で毛羽や糸切れ等のトラブル
やフィルターの詰りは発生しなかった。得られた糸状
は、繊度122.1dで、乾強度1.79g/d、乾伸
度15.1%、湿潤強度0.72g/dと実用上十分な
高い性能を示した。光沢度は34.8と高く、繊維断面
内の微粒子の平均粒径は非前処理法で0.050μm、
前処理法で0.044μm、二次粒子数は0.8個/μ
2 、粒子数は132.6個/μm2 と良好な分散状態
であった。また、染料吸尽率は95.5%、得られた染
色物は、鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度が、それ
ぞれ、20.2、40.8、16.8と優れた鮮明深色
性を示した。
【0103】実施例17 微粒子の対セルロース添加率を13%とする以外は、実
施例16と同様の処方により重合、混合、紡糸を行っ
た。紡糸性は良好で、5時間の紡糸で毛羽や糸切れ、フ
ィルターや紡口の詰まりなどのトラブルは発生しなかっ
た。得られた糸状は、繊度115.7dで、乾強度1.
85g/d、乾伸度17.0%、湿潤強度0.72g/
dと微粒子無添加のビスコースレーヨン糸と全く同等の
優れた物性であった。光沢度も49.7と完全なブライ
ト調であり、繊維断面内の微粒子の平均粒径は非前処理
法で0.043μm、前処理法で0.038μm、二次
粒子数は0.2個/μm2 、粒子数は107.4個/μ
2 と極めて良好な微粒子微分散状態であった。また、
染料吸尽率は92.4%、得られた染色物の鮮明度、有
彩色深色度、無彩色深色度は、それぞれ、17.7、3
1.2、17.7と鮮明な発色レベルであった。
【0104】実施例18 水1248部、ドデシルベンゼンスルホン酸40部およ
びスチレンスルホン酸ソーダ20部を仕込み80℃に昇
温後、窒素雰囲気に置換し、攪拌しながらスチレン4.
8部、メチルメタアクリレート34部、亜硫酸水素ナト
リウム3.52部および水60部を添加した。さらに、
攪拌しながら過硫酸ナトリウム8部および水60部を添
加し、重合反応を開始させ、反応開始15分後から18
0分間かけてスチレン31.2部、メチルメタアクリレ
ート286部およびアクリルアミド24部を滴下し、そ
れと並行して反応開始20分後から175分間かけて水
80部、水酸化ナトリウム1.4部、過硫酸ナトリウム
6部を滴下した。滴下終了後、さらに90分間攪拌し反
応を進めて、固形分濃度20.1%、平均粒径0.02
9μmの重合体微粒子エマルジョンを得た。このエマル
ジョン555部に40%水酸化ナトリウム水溶液99.
8部を徐々に添加混合して調製したアルカリエマルジョ
ンを、ホモミキサーを用い、常法により調製されたビス
コース溶液5000部(セルロース:8.7%、水酸化
ナトリウム:6.1%、二硫化炭素:1.8%)に10
分間かけて添加混合した後、さらに20分間1000回
転/分の速度で攪拌を行い、76mmHgの減圧下1時
間の真空脱泡を行い、セルロース濃度7.7%、微粒子
の対セルロース添加率25%、水酸化ナトリウム濃度
6.1%の微粒子添加ビスコース原液を得た。
【0105】この原液を20μmフィルターで濾過した
後に、0.06mm×50ホールの一重配列紡糸口金よ
り、凝固浴(硫酸:140g/l、硫酸ナトリウム:2
60g/l、硫酸亜鉛:15g/l、浴温度58℃)へ
吐出量15ml/分で吐出し、従来公知の連続紡糸機を
用いて、そのまま連続して再生、水洗、乾燥を行った後
に巻取速度120m/分にて巻取った。紡糸性は良好
で、5時間の紡糸で毛羽や糸切れ等のトラブルやフィル
ターの詰りは発生しなかった。得られた糸状は、繊度1
20.7d、乾強度1.57g/d、乾伸度15.0
%、湿潤強度0.71g/dと高い物性を示し、光沢度
は30.2と優れた光沢性を示した。繊維断面内の微粒
子の平均粒径は非前処理法で0.046μm、前処理法
で0.033μmであり、二次粒子数は0.6個/μm
2 、粒子数は201.4個/μm2 であった。また、染
料吸尽率は93.5%、得られた染色物の鮮明度、有彩
色深色度、無彩色深色度は、19.9、38.7、1
7.3であり、極めて優れた鮮明深色性を示した。
【0106】実施例19 実施例18において、紡糸原液での重合体微粒子の量を
対セルロース3%とする以外は実施例18と同様にして
対応するビスコースを得た。5時間の紡糸時間内に毛羽
や糸切れ、フィルターの詰り等のトラブルは発生しなか
った。得られた糸状は、繊度108.9d、乾強度1.
81g/d、乾伸度17.0%、湿潤強度0.79g/
d、光沢度は34.7であった。繊維断面内の微粒子の
平均粒径は非前処理法で0.036μm、前処理法で
0.028μmであり、二次粒子数は0個/μm2 、粒
子数は20.8個/μm2 であった。また、染料吸尽率
は52.9%、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色
度、無彩色深色度は、13.1、9.0、22.8であ
った。
【0107】実施例20 実施例15で重合したエマルジョンを用い、実施例16
と同様にして紡糸原液の調製、紡糸を行った。紡糸性は
良好で、5時間の紡糸で毛羽や糸切れ等のトラブルやフ
ィルターの詰りは発生しなかった。得られた糸状は、繊
度120.2d、乾強度1.60g/d、乾伸度13.
8%、湿潤強度0.61g/dと高い性能を示し、光沢
度は30.5と優れた光沢性を示した。繊維断面内の微
粒子の平均粒径は非前処理法で0.050μm、前処理
法で0.035μmであり、二次粒子数は1.0個/μ
2 、粒子数は197.0個/μm2 であった。また、
染料吸尽率は90.1%、得られた染色物の鮮明度、有
彩色深色度、無彩色深色度は、19.7、39.2、1
7.3であり、優れた鮮明深色性を示した。
【0108】実施例21 実施例6において、プレ乳化物の乳化剤を、エレミノー
ルJS−2(三洋化成社製)の25%水溶液5部、エマ
ルゲン985(花王社製)の25%水溶液14部、エマ
ルゲン950の25%水溶液30部、攪拌機付きフラス
コに仕込む乳化剤として、さらににエレミノールJS−
2の25%水溶液6部を追加する以外は実施例6と同様
の処方にて重合を行い、固形分濃度21.2%、平均粒
径0.073μmの重合体微粒子エマルジョンを得た。
このエマルジョンを用いて、実施例6と同様の処方で紡
糸原液の調製、紡糸を行った。紡糸性は良好で、5時間
の紡糸で毛羽や糸切れ等のトラブルやフィルターの詰り
は発生しなかった。得られた糸状は、繊度82.1d、
乾強度2.51g/d、乾伸度13.1%、湿潤強度
1.59g/dと高い性能を示し、光沢度は35.3で
あった。繊維断面内の微粒子の平均粒径は非前処理法で
0.079μm、前処理法で0.075μmであり、二
次粒子数は0.4個/μm2 、粒子数は83.2個/μ
2 であった。また、染料吸尽率は91.1%、得られ
た染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度は1
7.2、29.4、18.0であり、実施例6よりやや
劣るものの充分な発色性を示した。
【0109】実施例22 メチルメタアクリレート210部、スチレン25部、イ
タコン酸7.5部、アクリルアミド7.5部、アデカリ
アソープSE10の25%水溶液5部、エマルゲン92
0の25%水溶液5部、過硫酸アンモニウム0.63部
および蒸留水400部を添加し、ホモミキサーで攪拌を
行い、プレ乳化物を作製した。別に、攪拌機付きフラス
コに蒸留水300部、レベノールWZ(花王社製)の2
5%水溶液0.3部およびエマルゲン920の25%水
溶液0.3部を仕込み、78℃に昇温し、過硫酸アンモ
ニウム0.10部を水12部に溶解したものを添加す
る。5分放置後、実施例1と同様の処方で重合を行い、
固形分濃度20.8%、平均粒径0.20μmの重合体
微粒子エマルジョンを得た。このエマルジョンを実施例
5と同様の処方で紡糸を行ったところ、紡糸性は良好
で、5時間の紡糸中にギヤポンプの圧力上昇はなく、フ
ィルター詰まり、紡口詰まり、糸切れなどのトラブルは
1度も発生しなかった。得られた糸状は、繊度81.9
d、乾強度2.49g/d、乾伸度12.9%、湿潤強
度1.55g/dと実用上問題のないレベルであった。
光沢度は18.5とつやが小さく、繊維断面内の微粒子
の平均粒径は、非前処理法で0.19μm、前処理法で
0.19μmであり、二次粒子数は0個/μm2 、粒子
数は5.2個/μm2 と疎であるものの良好に分散して
いた。また、染料吸尽率は91.7%と十分な染色性を
示し、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩色
深色度は、15.3、26.2、18.9と実用上問題
のない発色性であった。
【0110】実施例23 実施例5において、メチルメタアクリレートを336
部、スチレンを40部、イタコン酸を12部、アクリル
アミドを12部および過硫酸アンモニウムを2部とする
以外は実施例5と同様にしてプレ乳化物を作製した。別
に、蒸留水150部、実施例22で作製したエマルジョ
ン3部を、78℃に昇温し、過硫酸アンモニウム0.4
部を水5部に溶解したものを添加する。5分放置後、実
施例5と同様の処方で重合を行い、固形分濃度38.5
%、平均粒径0.45μmの重合体エマルジョンを得
た。
【0111】このエマルジョンを実施例5と同様の処方
で紡糸を行ったところ、紡糸性は良好で、5時間の紡糸
中にギヤポンプの圧力上昇は0.3kg/cm2 と小さ
く、フィルター詰まり、紡口詰まりは発生せず、乾燥工
程で毛羽が1度発生したのみであった。得られた糸状
は、繊度83.0d、乾強度2.42g/d、乾伸度1
2.2%、湿潤強度1.48g/dと実用上問題のない
レベルであった。光沢度は10.2とつやがなく、繊維
断面内の微粒子の平均粒径は、非前処理法、前処理法と
もに0.44μmであり、二次粒子数は観測されず、粒
子数は1.2個/μm2 と疎であるものの良好に分散し
ていた。また、染料吸尽率は90.9%と十分な染色性
を示し、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩
色深色度は、14.2、24.4、19.2と実用上問
題のない発色性であった。
【0112】実施例24 実施例5において、添加モノマーを安息香酸ビニル10
0部、メチルメタアクリレートを112.5部、スチレ
ンを22.5部、イタコン酸を7.5部およびアクリル
アミドを7.5部とする以外は実施例5と同様の処方で
重合を行い、固形分濃度21.3%、平均粒径0.04
2μmの重合体微粒子エマルジョンを得た。このエマル
ジョンを実施例5と同様の処方で紡糸を行ったところ、
紡糸性は良好で、5時間の紡糸中にギヤポンプの圧力上
昇はなく、フィルター詰まり、紡口詰まり、糸切れなど
のトラブルは1度も発生しなかった。得られた糸状は、
繊度81.5d、乾強度2.61g/d、乾伸度13.
4%、湿潤強度1.55g/dと微粒子無添加の銅アン
モニアレーヨン糸と全く遜色のないレベルであった。光
沢度は40.9と完全なブライト調であり、繊維断面内
の微粒子の平均粒径は、非前処理法で0.044μm、
前処理法で0.043μmであり、二次粒子数は0.2
個/μm2 、粒子数は109.6個/μm2 と良好に微
分散していた。また、染料吸尽率は93.5%と優れた
染色性を示し、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色
度、無彩色深色度は、18.7、34.9、17.5と
優れた鮮明性、深色性を示した。
【0113】実施例25 実施例24において、安息香酸ビニル100部をメタク
リル酸フェニル100部に代える以外は実施例25と同
様の処方で重合を行い、固形分濃度21.9%、平均粒
径0.045μmの重合体微粒子エマルジョンを得た。
このエマルジョンを実施例5と同様の処方で紡糸を行っ
たところ、紡糸性は良好で5時間の紡糸中にギヤポンプ
の圧力上昇はなく、フィルター詰まり、紡口詰まり、糸
切れなどのトラブルは1度も発生しなかった。得られた
糸状は、繊度82.1dであり、乾強度2.47g/
d、乾伸度12.9%、湿潤強度1.49g/dと高い
物性を示した。光沢度は38.3とブライト調であり、
繊維断面内の微粒子の平均粒径は、非前処理法で0.0
45μm、前処理法で0.043μmであり、二次粒子
個数は0個/μm2 、粒子数は104.2個/μm2
良好に微分散していた。また、染料吸尽率は93.9%
と優れた染色性を示し、得られた染色物の鮮明度、有彩
色深色度、無彩色深色度は、1 9.0、35.8、1
7.2と優れた鮮明性、深色性を示した。
【0114】実施例26 実施例24において、スチレン22.5部をアクリロニ
トリル22.5部に代える以外は実施例24と同様の処
方で重合を行い、固形分濃度22.2%、平均粒径0.
050μmの重合体微粒子エマルジョンを得た。このエ
マルジョンを実施例5と同様の処方で紡糸を行ったとこ
ろ、紡糸性は良好で5時間の紡糸中にギヤポンプの圧力
上昇はなく、フィルター詰まり、紡口詰まり、糸切れな
どのトラブルは1度も発生しなかった。得られた糸状
は、繊度81.7dであり、乾強度2.44g/d、乾
伸度12.7%、湿潤強度1.44g/dと高い物性を
示した。光沢度は36.3とブライト調であり、繊維断
面内の微粒子の平均粒径は、非前処理法で0.052μ
m、前処理法で0.049μmであり、二次粒子個数は
0.2個/μm2 、粒子数は103.2個/μm2 と良
好に微分散していた。また、染料吸尽率は92.7%と
優れた染色性を示し、得られた染色物の鮮明度、有彩色
深色度、無彩色深色度は、18.3、34.3、17.
8と優れた発色性を示した。
【0115】実施例27 実施例26において、メチルメタアクリレートを62.
5部に減らし、新たにフタル酸ジアリルと50部を加え
る以外は実施例26と同様の処方で重合を行い、固形分
濃度21.3%、平均粒径0.048μmの重合体微粒
子エマルジョンを得た。このエマルジョンを実施例5と
同様の処方で紡糸を行ったところ、紡糸性は良好で5時
間の紡糸中にギヤポンプの圧力上昇はなく、フィルター
詰まり、紡口詰まり、糸切れなどのトラブルは1度も発
生しなかった。得られた糸状は、繊度80.5dであ
り、乾強度2.33g/d、乾伸度12.5%、湿潤強
度1.42g/dと高い物性を示した。光沢度は33.
4とブライト調であり、繊維断面内の微粒子の平均粒径
は、非前処理法で0.053μm、前処理法で0.04
9μmであり、二次粒子個数は0.8個/μm2 、粒子
数は97.0個/μm2 と良好に微分散していた。ま
た、染料吸尽率は94.2%と非常に優れた染色性を示
し、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深
色度は、19.2、35.1、17.4と優れた鮮明深
色性を示した。
【0116】実施例28 実施例14で作製した銅アンモニアレーヨン繊維の一口
編み地を、スコアロール400を2g/リットルの濃度
で含有している温水を用いて、70℃、20分間精練処
理した。精練後、銅アンモニアレーヨン繊維と等量の7
5d/24fのポリエチレンテレフタレート繊維の一口
編地と同じ染色浴に投入し、染液を添加して40℃から
120℃まで昇温速度2℃/分で昇温後、さらにそのま
ま120℃で40分間保持して染色を行った。染色終了
後の編地を、NaOHを1g/リットル、硫酸ナトリウ
ムを1g/リットル、アミラジン(第一工業製薬社製)
を1g/リットルの濃度で含有している温水を用いて、
40℃、20分間還元洗浄を行い、さらに水洗を30分
間行った後に、60℃、10分間タンブラー乾燥機で乾
燥を行った。染料は、ミケロンポリエステルレッドFL
(三井東圧社製)を使用し、4%owf、浴比1:50
で染色した。分散剤はニッカサンソルト7000(日華
化学社製)を0.5g/リットル使用し、酢酸0.25
ml/リットルと酢酸ナトリウム1g/リットルを加
え、pHを5に調製した。得られた銅アンモニアレーヨ
ン染色物とポリエステル染色物は、極めて高い同色性を
示した。
【0117】実施例29 実施例18で得られたビスコース繊維を、実施例28と
同様の処方により、ポリエステル繊維と同じ染色浴にて
染色を行った。得られたビスコースレーヨン染色物とポ
リエステル染色物は、高い同色性を示した。
【0118】実施例30 実施例24で作製した銅アンモニアレーヨン繊維の一口
編み地を、スコアロール400を2g/リットルの濃度
で含有している温水を用いて、70℃、20分間精練処
理した。精練後、銅アンモニアレーヨン繊維と等量の7
5d/24fのポリエチレンテレフタレート繊維の一口
編地と同じ染色浴に投入し、染液を添加して40℃から
130℃まで昇温速度1℃/分で昇温後、さらにそのま
ま130℃で60分間保持して染色を行った。染色終了
後の編地を、NaOHを1g/リットル、硫酸ナトリウ
ムを1g/リットル、アミラジン(第一工業製薬社製)
を1g/リットルの濃度で含有している温水を用いて、
40℃、20分間還元洗浄を行い、さらに水洗を30分
間行った後に、60℃、10分間タンブラー乾燥機で乾
燥を行った。染料は、DianixNavyBlueU
N−SE200、DianixOrangeUN−S
E、DianixRubineUN−SE(いずれもダ
イスタージャパン社製)を使用し、owfは各染料2%
ずつ(合計6%)とし、浴比1:50で染色した。分散
剤はニッカサンソルト7000(日華化学社製)を0.
5g/リットル使用し、酢酸0.25ml/リットルと
酢酸ナトリウム1g/リットルを加え、pHを5に調製
した。得られた銅アンモニアレーヨン染色物とポリエス
テル染色物は、極めて高い同色性を示した。
【0119】実施例31 実施例25で作製した銅アンモニアレーヨン繊維を用い
る以外は実施例30と同様の処方で染色を行った。得ら
れた銅アンモニアレーヨン染色物とポリエステル染色物
は極めて高い同色性を示した。 実施例32 実施例26で作製した銅アンモニアレーヨン繊維を用い
る以外は実施例30と同様の処方で染色を行った。得ら
れた銅アンモニアレーヨン染色物とポリエステル染色物
は極めて高い同色性を示した。 実施例33 実施例27で作製した銅アンモニアレーヨン繊維を用い
る以外は実施例30と同様の処方で染色を行った。得ら
れた銅アンモニアレーヨン染色物とポリエステル染色物
は極めて高い同色性を示した。
【0120】比較例9 実施例5において、重合モノマーをメチルメタアクリレ
ート217.5部およびスチレン32.5部のみとする
以外は比較例5と同様の処方にて重合を行い、固形分濃
度19.7%、平均粒径0.039μmの重合体微粒子
エマルジョンを得た。得られたエマルジョンを用い実施
例18と同様にして原液調製、紡糸を行ったところ、紡
糸開始直後よりフィルター詰り、紡口詰りが多発し、安
定した繊維化が不能であった。紡口径を0.1mmφと
大きくしたが、同様に紡口詰りが発生し紡糸不能であっ
た。紡糸原液を光学顕微鏡で観察したところ、多数の凝
集粒子が生成していた。
【0121】比較例10 比較例9において、界面活性剤としてラウリル硫酸エス
テルナトリウムを対ラテックス10%添加し、20℃で
18時間攪拌混合後、比較例1と同様の処方により原液
調製、紡糸を行った。紡糸性は不良で紡糸開始後1時間
後から紡口詰まりが発生した。紡口径を0.1mmφと
大きくして紡糸したところ、再び紡口詰まりが発生し、
また、乾燥部分での糸切れや毛羽が多発して安定な紡糸
が困難であったため2時間しか紡糸ができなかった。得
られた糸状は、繊度118.9d、乾強度0.92g/
d、乾伸度4.5%、湿潤強度0.29g/dと実用に
耐えない物性であった。光沢度も10.1と全くつやが
なかった。繊維断面内の微粒子の平均粒径は非前処理法
で1.1μm、前処理法で0.85μmと粗大化してお
り、二次粒子数は0.38個/μm2観察され、また、
粒子数は0.42個/μm2 と疎で、ほとんどの粒子が
凝集していた。染料吸尽率は94.2%であった。得ら
れた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度は、
該繊維を筒編みする際に断糸が多発したため、測定不能
であった。
【0122】比較例11 比較例10において、界面活性剤としてさらにエマルゲ
ン920を対ラテックス10%追加する以外は比較例1
0と同様の処方で原液調製、紡糸を行った。紡糸性は不
良で、3時間の紡糸で乾燥部分での糸切れや毛羽が15
回発生し、3時間後には紡口詰まりが発生した。得られ
た糸状は、繊度121.5d、乾強度1.04g/d、
乾伸度6.1%、湿潤強度0.33g/dと実用に耐え
ない物性であった。光沢度も10.4とつやがなく、繊
維断面内の微粒子の平均粒径は非前処理法で0.58μ
m、前処理法で0.52μmと粗大化しており、二次粒
子数は0.24個/μm2 観察され、また、粒子数は
1.1個/μm2 と疎で、ほとんどの粒子が凝集してい
た。染料吸尽率は96.1%であった。得られた染色物
の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度は、15.3、
26.1、18.7であった。
【0123】比較例12 実施例5において、イタコン酸、アクリルアミドを使用
しない替わりに等量のメチルメタアクリレートを添加す
る以外は実施例5と同様の処方により重合を行い、固形
分濃度21.8%、平均粒径0.035μmのエマルジ
ョンを得た。このエマルジョンを用い、実施例5と同様
にして紡糸を行ったところ、押し出し開始直後よりフィ
ルター詰り、紡口詰りが多発し、安定した繊維化が不能
であった。紡口径を1.2mmφと大きくしたが、同様
に紡口詰りが発生し紡糸不能であった。肉眼で、紡糸原
液中に多数の白小片が観察された。
【0124】比較例13 実施例22において、イタコン酸、アクリルアミドを使
用しない替わりに等量のメチルメタアクリレートを添加
する以外は実施例22と同様の処方により重合を行い、
固形分濃度22.2%、平均粒径0.18μmのエマル
ジョンを得た。このエマルジョンを用い、実施例5と同
様の処方により紡糸を行ったところ、2時間で10kg
/cm2 以上のギアポンプの圧力上昇があり、紡口詰ま
り、糸切れが多発し、紡糸開始後2時間で紡糸不能とな
った。得られた糸状は、繊度80.1d、乾強度1.0
2g/d、乾伸度8.8%、湿潤強度0.69g/dと
実用に耐えない物性であった。光沢度も12.1とつや
が少なかった。繊維断面内の微粒子の平均粒径は非前処
理法で0.58μm、前処理法で0.52μmと粗大化
しており、二次粒子数は0.28個/μm2 観察され、
また、粒子数は0.95個/μm2 で、ほとんどの粒子
が凝集していた。染料吸尽率は93.3%であった。得
られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深色度
は、該繊維を筒編みする際に断糸が多発したため、測定
不能であった。
【0125】比較例14 実施例23において、イタコン酸、アクリルアミドを使
用しない替わりに等量のメチルメタアクリレートを添加
する以外は実施例23と同様の処方により重合を行い、
固形分濃度39.2%、平均粒径0.43μmのエマル
ジョンを得た。このエマルジョンを用い、実施例5と同
様の処方により紡糸をおこなったところ、2時間で10
kg/cm2 以上のギアポンプの圧力上昇があり、紡口
詰まり、糸切れが多発し、紡糸開始後4時間で10kg
/cm2 以上のギアポンプの圧力上昇があり、紡口詰ま
り、毛羽、糸切れが多発し、紡糸開始後4時間で紡糸不
能となった。得られた糸状は、繊度81.2d、乾強度
0.98g/d、乾伸度9.5%、湿潤強度0.70g
/dと実用に耐えない物性であった。光沢度も9.8と
つやが少なかった。繊維断面内の微粒子の平均粒径は非
前処理法、前処理法ともに1.9μm、二次粒子数は
0.01個/μm2 、粒子数は0.07個/μm2 で、
ほとんどの粒子が凝集していた。染料吸尽率は94.2
%、得られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、無彩色深
色度は、14.1、23.5、19.4であった。
【0126】比較例15 実施例14において、イタコン酸を0にしてメタアクリ
ル酸3部を仕込み、反応開始後の滴下モノマーをメチル
メタアクリレート327部およびスチレン31.2部と
する以外は実施例14と同様にして重合を行い、固形分
濃度21.1%、平均粒径0.042μmのエマルジョ
ンを得た。このエマルジョンを用いて実施例15と同様
に原液調製、紡糸を行った。紡糸性は5時間の紡糸時間
で4回の単糸切れがあった。得られた繊維は、繊度12
2.0d、乾強度1.43g/d、乾伸度8.8%、湿
潤強度0.51g/dであったが、得られた繊維の光沢
度が15.3とややダル調となっていた。繊維断面内の
微粒子の平均粒径は非前処理法で0.39μm、前処理
法で0.28μm、二次粒子数は18.4個/μm2
粒子数は34.6個/μm2 と凝集が起っていた。染料
吸尽率は93.8%、得られた染色物の鮮明度、有彩色
深色度、無彩色深色度は、17.4、33.3、18.
0と発色性が低下していた。
【0127】比較例16 比較例15において、メタアクリル酸を140部に増や
し、滴下モノマーをメチルメタアクリレート130部、
スチレン31.2部およびネオペンチルグリコールジメ
タアクリレート24部とする以外は比較例15と同様に
して重合を行い、固形分濃度19.9%、平均粒径0.
049μmのエマルジョンを得た。このエマルジョンを
用いて実施例15と同様に原液調製、紡糸を行った。湿
潤時の強度が低いためか、5時間の紡糸時間内に乾燥時
に熱収縮による単糸切れが10回以上発生した。得られ
た糸状の繊度、光沢度は、119.8d、29.9と大
きく変らなかったが、乾強度1.21g/d、湿潤強度
0.30g/dと特に湿潤強度の低下が大きかった。繊
維断面内の微粒子の平均粒径は非前処理法、前処理法と
もにで0.049μm、二次粒子数は2.4個/μ
2 、粒子数は101.0個/μm2 と良好であった。
しかし、染料吸尽率は65.5%とある程度の染料の吸
尽はしたものの、還元洗浄時に染料の脱離があったた
め、得られた染色物の鮮明度は測定不能であり、有彩色
深色度、無彩色深色度は、5.3、19.7と低く、十
分な染色物を得ることができなかった。
【0128】比較例17 実施例12において、微粒子の対セルロース添加量を1
00%とする以外は実施例12と同様にして原液調製、
紡糸を行ったところ、紡糸開始直後より凝固再生時の単
糸切れが多発して、紡糸不能であった。 比較例18 実施例15において、モノマーをメチルメタアクリレー
ト212.5部、スチレン30部、アクリルアミド3.
75部および2−ヒドロキシエチルメタアクリレート
3.75部とする以外は実施例15と同様の処方で重合
を行い、固形分濃度20.5%、平均粒径0.043μ
mの重合体微粒子エマルジョンをえた。このエマルジョ
ンを用い、実施例5と同じ処方で原液調製、紡糸、染色
を行った。特に紡糸性に問題はなく5時間の紡糸中に、
毛羽、単糸切れ、紡口詰まり、フィルター詰まり等のト
ラブルは発生しなかった。得られた糸状は、繊度82.
2dであり、乾強度1.95g/d、乾伸度11.2
%、湿潤強度1.09g/dと不十分であった。光沢度
は20.2とダル調であり、繊維断面内の微粒子の平均
粒径は、非前処理法で0.12μm、前処理法で0.0
88μmであり、二次粒子個数は4.4個/μm2 、粒
子数は64.2個/μm2 と凝集が起こっていた。染料
吸尽率は92.1%と高かったが、得られた染色物の鮮
明度、有彩色深色度、無彩色深色度は、17.3、3
2.9、18.5とやや低い値であった。
【0129】比較例19 実施例15において、モノマーをメチルメタアクリレー
ト216.25部、スチレン25部、メタアクリル酸
7.5部および2−ヒドロキシエチルメタアクリレート
1.25部とする以外は実施例15と同様の処方で重合
を行い、固形分濃度20.3、平均 粒径0.033μ
mの重合体微粒子エマルジョンをえた。このエマルジョ
ンを用い、実施例5と同じ処方で原液調製、紡糸、染色
を行った。特に紡糸性に問題はなく5時間の紡糸中に、
毛羽、単糸切れ、紡口詰まり、フィルター詰まり等のト
ラブルは発生しなかった。得られた糸状は、繊度83.
4dであり、乾強度2.04g/d、乾伸度11.6
%、湿潤強度1.22g/dと不十分であった。光沢度
は23.8とダル調であり、繊維断面内の微粒子の平均
粒径は、非前処理法で0.083μm、前処理法で0.
074μmであり、二次粒子個数は3.6個/μm2
粒子数は75.0個/μm2 と凝集が起こっていた。染
料吸尽率は90.9%と高かった。得られた染色物の鮮
明度、有彩色深色度、無彩色深色度は、17.9、3
5.1、18.2であった。
【0130】比較例20 実施例15において、モノマーをメチルメタアクリレー
ト216.25部、スチレン25部、メタアクリル酸
1.25部、アクリルアミド3.75部および2−ヒド
ロキシエチルメタアクリレート3.75部とする以外は
実施例15と同様の処方で重合を行い、固形分濃度2
1.2%、平均粒径0.039μmの重合体微粒子エマ
ルジョンを得た。このエマルジョンを用い、実施例5と
同じ処方で原液調製、紡糸、染色を行った。特に紡糸性
に問題はなく5時間の紡糸中に、毛羽、単糸切れ、紡口
詰まり、フィルター詰まり等のトラブルは発生しなかっ
た。得られた糸状は、繊度81.9dであり、乾強度
2.03g/d、乾伸度11.7%、湿潤強度1.20
g/dと不十分であった。光沢度は22.5とダル調で
あり、繊維断面内の微粒子の平均粒径は、非前処理法で
0.094μm、前処理法で0.078μmであり、二
次粒子個数は4.0個/μm2 、粒子数は72.2個/
μm2 と凝集が起こっていた。染料吸尽率は91.5%
と高かった。得られた染色物の鮮明度、有彩色深色度、
無彩色深色度は、17.9、34.2、18.2であっ
た。
【0131】比較例21 常法により、ジメチルテレフタレートとエチレングリコ
ールよりポリエチレンテレフタレートを重合してo−ク
ロロフェノールでの固有粘度が0.60のポリマーを得
た。このポリマーを、76mmHgで減圧下、170
℃、4時間の熱処理を行った後に、従来公知の石臼型湿
式粉砕器を用いて予備粉砕後、さらに湿式メディアミル
により微粉砕を行った。得られた粒子分散液を希釈後、
80メッシュフィルターで濾過を行った。乾燥後、界面
活性剤として、オレイル硫酸ナトリウムおよびエマルゲ
ン920をそれぞれ対微粒子5%添加して固形分濃度1
0.3%、平均粒径2.5μmの微粒子分散液をえた。
この分散液を用い、微粒子添加量を対セルロース10%
とする以外は実施例5と同様の処方で紡糸を行った。紡
糸性は不良で、紡糸開始直後からフィルター詰まりが起
こり、押し出し不能となったため、5μm焼結フィルタ
ーを外して、20μmフィルターのみの濾過にして紡糸
を行った。しかし、3時間の紡糸中に10kg/cm2
以上の圧力上昇があり、毛羽や単糸切れが数十回発生
し、筒編み時にも断糸が多発した。得られた糸状は、繊
度79.2d、乾強度0.82g/d、乾伸度8.9
%、湿潤強度0.61g/dと実用不能な物性であっ
た。光沢度も9.6と全くつやがなかった。繊維断面内
の微粒子の平均粒径は非前処理法、前処理法共に4.3
μmであり、ところどころに直径10μm以上の粗大凝
集粒子群が観察された。二次粒子数は0.001個/μ
2 、また、粒子数は0.005個/μm2 と疎であっ
た。染料吸尽率は98.3%、得られた染色物の鮮明
度、有彩色深色度、無彩色深色度は、14.1、24.
1、18.9であった。実施例5〜27および比較例9
〜21における重合および原液調整条件を表3および表
4に、また得られた繊維の性能を表5および表6にまと
めて示す。
【0132】
【表3】
【0133】
【表4】
【0134】
【表5】
【0135】
【表6】
【0136】上記表から、本発明における特定の電離性
官能基および親水性官能基を特定の割合でを有する重合
体微粒子を含有するセルロース繊維は、製糸性に優れ、
製造上のトラブルの発生が少なく、力学物性に優れ、ま
た重合体微粒子の平均粒径が1μm以下、特に0.05
μm以下の場合にはセルロース繊維内の二次粒子の生成
を抑制しつつ粒子数を増やすことができ、光沢度、鮮明
度および深色度に優れることが示される。
【0137】
【発明の効果】本発明によれば、フィルターの詰まりや
糸切れ、毛羽立ちなどの製造上の不都合を生じることが
なく安価に生産性よく製造することができる、分散染料
で染色可能であり、かつ分散染料で染色した際の繊維断
面における均一な染色性を有し、優れた光沢性、高鮮明
深色性および発色性を示し、さらに力学物性に優れた分
散染料可染性セルロース繊維および繊維製品を得ること
ができる。本発明のセルロース繊維を用いた編織物また
はポリエステル繊維、ポリアミド繊維、セルロースアセ
テート繊維との混用織編物は、特に婦人アウター分野、
裏地分野への応用に極めて有用である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分散染料により染色可能な重合体微粒子
    を1〜40重量%含有するセルロース繊維であって、上
    記重合体を構成する繰り返し単位として、(A)−COO
    R、−SO3 Rおよび−PO3 R(但し、Rは水素原
    子、アルカリ金属またはNH4 を示す)から選ばれる電
    離性官能基の少なくとも一種を有するモノマーと、 (B)
    −OH基、−NHR1 基および−CONHR1 基(R1
    は水素原子または炭素数1〜6の有機基を示す)から選
    ばれる親水性官能基の少なくとも一種を有するモノマー
    がそれぞれ1〜25重量%の範囲で共重合されており、
    かつ(A) と(B) の総量が2〜30重量%であることを特
    徴とする分散染料可染性セルロース繊維。
  2. 【請求項2】 前記重合体微粒子の平均粒子径が0.0
    1〜0.05μmで、セルロース繊維の横断面における
    該重合体微粒子の数が10〜1000個/μm2 である
    ことを特徴とする請求項1記載の分散染料可染性セルロ
    ース繊維。
  3. 【請求項3】 前記セルロース繊維が銅アンモニアレー
    ヨンであることを特徴とする請求項1または2記載の分
    散染料可染性セルロース繊維。
  4. 【請求項4】 前記セルロース繊維がビスコースレーヨ
    ンであることを特徴とする請求項1または2記載の分散
    染料可染性セルロース繊維。
  5. 【請求項5】 乳化重合法によって固形分濃度1〜40
    重量%となるように重合された微粒子状重合体であり、
    該重合体を構成する繰り返し単位として、(A)−COO
    R、−SO3 Rおよび−PO3 R(但し、Rは水素原
    子、アルカリ金属またはNH4 を示す)から選ばれる電
    離性官能基の少なくとも一種を有するモノマーと、(B)
    −OH基、−NHR1 基および−CONHR1 基(R1
    は水素原子または炭素数1〜6の有機基を示す)から選
    ばれる親水性官能基の少なくとも一種を有するモノマー
    がそれぞれ1〜25重量%の範囲で共重合されており、
    かつ(A) と(B) の総量が2〜30重量%であるビニル系
    重合体微粒子を、セルロース原液に添加、混合し、紡糸
    口金から凝固浴に紡出して繊維化することを特徴とする
    分散染料可染性セルロース繊維の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記微粒子状重合体の平均粒径が0.0
    1〜0.05μmであることを特徴とする請求項5記載
    の分散染料可染性セルロース繊維の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1ないし4のいずれかに記載の分
    散染料可染性セルロース繊維を含む繊維製品。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001248014A (ja) * 2000-03-01 2001-09-14 Asahi Kasei Corp 異型断面再生セルロース繊維
JP2007522361A (ja) * 2004-02-17 2007-08-09 フラウンホファー−ゲゼルシャフト ツア フェデルンク デア アンゲヴァンテン フォルシュンク エーファウ セルロースカルバメートおよび/または再生セルロースを含む繊維および他の成形品、ならびにそれらの製造方法
JP2019210585A (ja) * 2018-05-31 2019-12-12 株式会社日本触媒 再生セルロース繊維への機能付与剤

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