JP2001049519A - カチオン染料可染セルロース繊維 - Google Patents

カチオン染料可染セルロース繊維

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JP2001049519A
JP2001049519A JP11220397A JP22039799A JP2001049519A JP 2001049519 A JP2001049519 A JP 2001049519A JP 11220397 A JP11220397 A JP 11220397A JP 22039799 A JP22039799 A JP 22039799A JP 2001049519 A JP2001049519 A JP 2001049519A
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fine particles
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cellulose
spinning
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English (en)
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Tatsu Taniguchi
龍 谷口
Shuji Takasu
修二 鷹巣
Toshihide Tsukatani
才英 塚谷
Shinichi Umetani
慎一 梅谷
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Nicca Chemical Co Ltd
Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Nicca Chemical Co Ltd
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 優れた発色性、鮮明染色性、染色堅牢性を示
し、力学特性、工程通過性に優れたカチオン染料可染セ
ルロース繊維の提供。 【解決手段】 スチレンスルホン酸ソーダ3〜20重量
%、スチレン50〜92重量%および架橋剤5〜20重
量%をモノマー成分として含む重合体粒子を1〜40重
量%含有することを特徴とするカチオン染料可染セルロ
ース繊維。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はカチオン染料にて鮮
明にかつ堅牢性よく染色可能なセルロース繊維に係り、
詳しくはアクリル繊維の汎用染色法でカチオン染料で染
色され、ソーピングされた際に、鮮明で優れた発色性お
よび染色堅牢性を有する染色物を得ることができるカチ
オン染料可染セルロース繊維およびこれを含む繊維製品
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】セルロース繊維は、一般に、直接染料、
反応染料、バット染料などによって染色される。カチオ
ン染料は、鮮明な色彩と高い発色性を有し、アクリル繊
維や改質ポリエステル繊維などの染色に汎用され、美麗
で鮮やかな色彩の繊維製品の創出に使用されてきた。カ
チオン染料はセルロースを染めないので、セルロース繊
維をカチオン染料で染色することはできない。そこで、
カチオン染料特有の鮮明で高発色の色彩に染まるセルロ
ース繊維を得るために、セルロース繊維を改質する試み
がなされ、セルロース繊維自体を変成してアニオン化す
る方法とアニオン基を有する化合物をセルロース繊維に
含有せしめる方法とが知られている。
【0003】セルロース繊維自体をアニオン化する方法
としては、セルロース繊維をカルボキシメチル化やグラ
フト共重合化する技術が特公昭40−13025号公報
などで開示されているが、これらの技術ではセルロース
を直接変成せしめるために繊維物性が大きく低下した
り、変成処理が非常に高コストになる。一方、セルロー
ス繊維にアニオン基を有する化合物を含有せしめる方法
としては、アニオン性基を有する化合物を分子オーダー
で分散せしめる方法(アロイ化)と微粒子状にして分散
せしめる方法とが知られている。
【0004】アロイ化して分散せしめる方法には、ポリ
アクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、イソブチレン/
無水マレイン酸共重合体等のカルボキシル基やスルホン
酸基を有するポリマーをセルロース原液に溶解せしめた
後に繊維化する方法が、例えば、特公昭37−1201
4号公報、特公昭47−31405号公報、特開昭61
−146810号公報、特開昭61−174485号公
報などに開示されている。しかし、これらによる改質繊
維は、セルロース繊維中にアロイ化して分散したアニオ
ン性ポリマーの親水性が非常に高いために、染色時ある
いは加工時、洗濯時にポリマーが脱落しやすく、染色堅
牢性が極めて劣り、特に、湿潤時の機械物性)が極めて
低く低下させる。
【0005】アロイ化法に対して、アニオン性基を有す
るポリマーを微粒子状にして繊維中に分散せしめる方法
については、特公昭38−23259号公報にエポキシ
基を有する乳化重合による重合体微粒子をスルホン化し
たものを紡糸原液中に添加する技術が開示されている
が、この方法は重合体が架橋していないので、改質繊維
中のアニオン性基を含有する微粒子が水やアルカリで膨
潤して、染色堅牢性を著しく低下させてしまう欠点があ
る。特公昭44−32011号公報には、カルボン酸基
やスルホン酸基などのアニオン性基を有するモノマーと
疎水性モノマーとを乳化重合により共重合した重合体微
粒子を紡糸原液に添加して繊維中に分散せしめる技術が
開示されている。この方法においても、重合体が架橋し
ていないために、改質繊維に含まれる改質剤が水やアル
カリで膨潤してしまい染色堅牢性が著しく低下してしま
う欠点がある。また、特開平8−158263号公報に
は、ジヒドロキシジフェニルスルホン・スルホン酸塩縮
合物をエポキシ架橋剤で架橋処理した不溶性重合物をセ
ルロース繊維に含有せしめる技術が開示されている。こ
の改質方法では、架橋により重合体微粒子の水やアルカ
リによる膨潤は抑制ある程度抑制されてはいるものの、
改質剤の全繰り返し単位中に水酸基やスルホン酸塩基等
の親水性基が含有されているので、重合体微粒子の分子
内部まで水が入り込み染色後のソーピングでの色落ちが
激しく、重合体微粒子の粒径が大きいことによる紡糸や
加工時の毛羽発生や糸切れ等の工程上の不都合が起こる
外、改質繊維の機械物性が大きく低下してその用途が限
定されてしまう問題がある。
【0006】以上のように、従来のカチオン染料可染性
のセルロース繊維は、カチオン染料で染色した際の染色
後のソーピング処理における色落ち、繊維製品の染色堅
牢性、繊維物性、工程通過性、製造コスト等に係わる様
々な解決されるべき問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従
来技術の課題を解決し、カチオン染料で染色した際に、
優れた鮮明性、発色性、染色堅牢性を有し、かつ、実用
的な繊維物性、工程通過性を有するカチオン染料可染性
セルロース繊維ならびにカチオン染料可染セルロース繊
維を含む繊維製品を提供するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、スチレン
スルホン酸化合物3〜20重量%、スチレン50〜92
重量%、架橋剤5〜20重量%をモノマ−としてなる重
合体微粒子を繊維全体の重量に対して1〜40重量%含
有するセルロース繊維がカチオン染料で染色された際
に、カチオン染料特有の鮮明な色彩を発現して、かつ染
色堅牢性に優れることを見いだした。
【0009】すなわち本発明は、スチレンスルホン酸化
合物3〜20重量%、スチレン50〜92重量%、架橋
剤5〜20重量%をモノマー成分として含む重合体微粒
子を繊維全体の重量に対して1〜40重量%含有するセ
ルロース繊維およびその繊維製品である。本発明におい
て、セルロース繊維とは、綿などの天然セルロース繊維
以外の化学セルロース繊維を意味し、短繊維、長繊維の
両方の繊維を含む。具体的には銅アンモニアレーヨン繊
維およびビスコースレーヨン繊維、セルロースカーバメ
ート繊維などの再生セルロース繊維、冷水酸化ナトリウ
ムや冷硫酸などの水性溶媒にセルロースを直接溶解後紡
糸して得られるセルロース繊維などをいう。
【0010】本発明において、カチオン染料可染セルロ
ース繊維を含む繊維製品には、本発明のカチオン染料可
染性セルロース繊維のみから構成される糸、中空糸、多
孔糸、綿、紐、編物、織物、不織布およびこれらを使用
した衣類、医療用器具、生活資材、産業用資材等はもち
ろんのこと、該セルロース繊維を少なくとも一部に使用
した繊維製品が含まれる。
【0011】本発明のカチオン染料可染セルロース繊維
は、ポリエステル繊維やポリアミド繊維、セルロースア
セテート繊維、ポリウレタン繊維、アクリル繊維、羊
毛、絹等の他素材との複合製品に適しており、特にアク
リル繊維、カチオン染料可染ポリエステル繊維、等のカ
チオン染料可染性繊維との複合繊維製品に適するセルロ
ース繊維素材である。
【0012】本発明に用いられる重合体微粒子はセルロ
ース繊維中に含有させるが、重合体が、モノマー成分と
して、スチレンスルホン酸化合物を3〜20重量%、ス
チレンを50〜92重量%、架橋剤を5〜20重量%の
範囲で含むことが重要である。ここでスチレンスルホン
酸化合物とは、スチレンスルホン酸およびそのアルカリ
金属塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩である。重合
性、染色性、繊維の熱安定性の点からアルカリ金属塩が
好ましくナトリウム塩が特に好ましい。
【0013】本発明のカチオン染料可染セルロース繊維
は、繊維中の重合体微粒子がカチオン染料に染まる必要
がある。一般に、重合体微粒子の構成単位としてアニオ
ン性官能基を有するモノマーを共重合すれば、重合体が
カチオン染料に染まるようになるが、本発明では、特
に、重合体微粒子にアニオン性基含有モノマーとしてス
チレンスルホン酸化合物が3〜20重量%含まれること
が重要である。アニオン性基含有モノマーとして(メ
タ)アクリル酸やイタコン酸、クロトン酸、マレイン酸
等のカルボン酸基を有するモノマーを共重合した場合、
カルボン酸はカチオン染料の染着性が低いために、大量
に共重合しても発色性が不十分であり、また、重合体が
示す平衡吸尽率が低いために温水洗浄やソーピングで染
着した染料の脱落が起こりやすい。一方、(メタ)アリ
ルスルホン酸ソーダ、2−アクリルアミド−2−メチル
プロパンスルホン酸ソーダ等の非芳香族系のスルホン酸
基含有モノマーは、親水性が高いために、乳化重合にお
ける共重合性に乏しい。また、これらモノマーの共重合
比率が高いコポリマーは親水性が高いために架橋構造を
有していてもセルロースの繊維化の過程で、水相側に溶
出する割合が高く、結果として重合体微粒子中のスルホ
ン酸基量が低くなり、鮮明に染色することができない。
一方、スルホン酸に疎水性の芳香環が隣接しているスチ
レンスルホン酸化合物は、乳化重合時の共重合性が高
く、乳化剤を適宜選定することにより共重合量を高くす
ることが可能であり、また、スルホン酸基を有するため
に、カチオン染料の染着性、堅牢性に優れる。
【0014】重合体微粒子中のスチレンスルホン酸化合
物の含有量は、繊維に対する重合体微粒子の量により若
干の差はあるが、3〜20重量%の範囲であることが好
ましい。スチレンスルホン酸化合物の量は、3重量%以
下であると染料の染着座席が少なく中濃色の深い色彩の
発現ができなくなる。一方、20重量%以上である場
合、染料の染着座席が増えて濃厚な染色が可能となる
が、重合体微粒子の親水性が高くなりすぎて、重合体微
粒子を架橋しても微粒子の膨潤が起こってしまい、温水
洗浄やソーピング時に染料が脱落しやすくなり堅牢性が
低下する問題が起こる。このため、重合体微粒子中のス
チレンスルホン酸化合物の量は、3〜20重量%の範囲
であることが好ましく、さらに好ましくは5〜15重量
%の範囲である。
【0015】本発明のカチオン染料可染セルロース繊維
に含まれる重合体微粒子には、前述のスチレンスルホン
酸ソーダ以外に、主成分としてスチレンが50〜92重
量%の範囲で共重合されていることが重要である。本発
明者らはスチレンスルホン酸化合物以外の成分にスチレ
ンおよび架橋剤を適量共重合した場合に、ソーピング処
理や温水洗浄時の染色堅牢性が著しく向上することを見
いだした。
【0016】スチレンは重合体微粒子の主成分モノマー
として共重合されるが、繊維へのカチオン染料の染着は
繊維のアニオン基と染料のカチオン基とのイオン結合の
外にも染料の疎水部と繊維の疎水部との疎水−疎水結合
によっても起こるが、この疎水−疎水結合の形成に芳香
環を有するスチレンが大きく寄与する。スチレンは乳化
重合適性が高く、スチレンを共重合することで、小粒径
の重合体微粒子を効率よく安定に重合することが可能と
なる。スチレンの共重合量が50重量%以下の場合には
染色堅牢性が低くなるので、共重合量は50〜92重量
%の範囲であることが好ましい。
【0017】本発明の重合体微粒子は、5〜20重量%
の架橋剤が共重合されていることが重要である。本発明
の重合体微粒子は3〜20重量%の範囲で、スチレンス
ルホン酸化合物が共重合されているが、スチレンスルホ
ン酸化合物は親水性が高いために、水、温水、アルカリ
水溶液等で繊維を処理した場合に、重合体微粒子が膨潤
してしまい、染着した微粒子中の染料が溶出しやすく堅
牢性が低下してしまうので、架橋剤により重合体分子間
を架橋し膨潤を抑制する必要がある。
【0018】本発明において架橋剤とは、2官能以上
(多官能)のラジカル重合性不飽和基を持つ化合物であ
る。本発明において使用可能な架橋剤としては、エチレ
ングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリ
コールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコル
ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコール
ジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ
(メタ)アクリレート等、2官能(メタ)アクリルモノ
マーや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレ
ート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート
等、3官能(メタ)アクリルモノマーや、ペンタエリス
リトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリス
リトールヘキサ(メタ)アクリレートなど、4官能以上
の(メタ)アクリルモノマー、ジビニルベンゼン、ジベ
ニルアジペートなどの公知の架橋剤、或いは、(メタ)
アクリル酸アリルなど、アリル基とアクリロイル基を合
わせ持つ化合物を使用できる。この中でも、反応性と取
り扱いの容易さから、2官能或いは3官能の(メタ)ア
クリレート類を好適に使用することができる。
【0019】架橋剤の共重合量は、少なすぎると重合体
微粒子の膨潤抑制の効果が小さく、実用上十分な堅牢性
が得られなくなる。一方、架橋剤の共重合量が多すぎる
と、重合時に粒子が凝集し小粒径の微粒子を安定に製造
できなくなったり、重合体中への染料の拡散を阻害した
りするので、好ましくは5〜20重量%、さらに好まし
くは7〜15重量%の範囲で共重合されていることが好
ましい。
【0020】また本発明の繊維に含まれる重合体微粒子
には、上述のスチレン、スチレンスルホン酸化合物、架
橋剤の他に、必要に応じてその他の化合物を共重合して
たものであってよい。共重合可能な化合物としては、メ
チル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレー
ト、プロピル(メタ)アクリレート、nーブチル(メ
タ)アクリレート、iーブチル(メタ)アクリレート、
t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル
(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレー
ト、ステアリル(メタ)アクリレートなど、アルキル
(メタ)アクリレート類、シクロヘキシル(メタ)アク
リレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボニル
(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレー
トなど脂環・芳香環、複素環アクリレート類、2−ヒド
ロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピ
ル(メタ)アクリレートなど水酸基含有(メタ)アクリ
レート類、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、
2−エトキシエチル(メタ)アクリレートなどアルコキ
シ含有(メタ)アクリレート類、アクリル酸、メタクリ
ル酸、イタコン酸、β−カルボキシエチルアクリレー
ト、コハク酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、
マレイン酸2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、フ
タル酸(メタ)アクリロイルオキシエチル、テトラヒド
ロフタル酸(メタ)アクリロイルオキシエチルなど、カ
ルボキシル基含有(メタ)アクリレート類、ジメチルア
ミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチ
ル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノエチル
(メタ)アクリレート類、その他の化合物として(メ
タ)アクリロニトリル、(メタ)アリルアルコール、酢
酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ブタジエン、
(メタ)アクリルアミド、N−メチルピロリドン、N−
ビニルホルムアミドなど(メタ)アクリロイル基以外の
不飽和2重結合を含有する化合物を挙げることができ
る。
【0021】本発明の繊維中の重合体微粒子の含有量
は、少なすぎると染料の染着座席が不十分となり鮮明な
発色ができなくなるため1重量%以上であることが好ま
しく、さらに好ましくは4重量%、特に好ましくは7重
量%以上であることが望ましい。一方、重合体微粒子含
有量が多すぎると染色性は高くなるが、繊維物性が低下
し、毛羽や糸切れ等の工程上の不都合が起こりやすくな
るので、好ましくは40重量、さらに好ましくは30重
量%、特に好ましくは20重量%以下であることが望ま
しい。
【0022】本発明においては、重合体微粒子の他に、
必要に応じて二酸化チタンや二酸化ケイ素などの艶消し
剤や滑剤、セルロース変成剤、粘度低下剤などの物質を
添加してもよく、必要であれば複数種類の物質を添加す
ることができる。本発明に用いられる重合体微粒子の平
均粒径には特に制限はないが、粒径が大きすぎると良好
に分散していても粒子は異物として作用してしまい、物
性低下、工程通過性が悪くなる等の問題が起こりやすく
なる。重合体微粒子の平均粒径は1μm以下であること
が好ましく、さらに好ましくは200nm以下、特に好
ましくは100nm以下であることが望ましい。一方、
粒径が小さすぎると微粒子中に染料が入りこめなくなる
ため、好ましくは10nm以上、さらに好ましくは25
nm以上、特に好ましくは40nm以上であることが望
ましい。
【0023】重合体微粒子の形状には特に制約がない
が、フラットな平面を持たない楕円状や球状が好まし
く、長径の小さい真球状がより好ましい。以下に、本発
明のカチオン染料可染性セルロース繊維の製造方法につ
いて説明する。セルロースに添加される重合体微粒子
は、不飽和2重結合をもつ上記必須成分および他の化合
物とを、乳化重合法を用いることで合成することができ
る。乳化重合の手法には特に制限はなく、公知の手法を
用いて重合体微粒子を得ることができる。
【0024】使用可能な重合開始剤としては、過硫酸カ
リウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの
過硫酸塩類、過硫酸塩/ 重亜硫酸ナトリウム、過酸化水
素/Fe2+塩、等のレドックス系開始剤などが挙げられ
る。必要に応じて、nーオクチルメルカプタン、nード
デシルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン類、チ
オグリコール酸エステル、メルカプトプロピオン酸エス
テル、チオグリコール酸などの連鎖移動剤を使用するこ
とができる。乳化剤としてはアニオン界面活性剤、カチ
オン界面活性剤、ノニオン界面活性剤など公知の乳化剤
を単独または2種以上併用して使用することができる
が、重合時の安定性、およびセルロース繊維中への分散
を考慮するとラウリル硫酸Na、ステアリン酸Na、ラ
ウロイルサルコシン酸Na、ラウリル(スルホフェノキ
シ)ベンゼンスルホン酸ジNaなどのアニオン系界面活
性剤、あるいはアニオン系界面活性剤とノニオン系界面
活性剤の併用が好ましい。重合時に反応性界面活性剤を
共重合させることで、ソープフリーの条件で乳化重合を
行うことも可能である。特に本発明において重合体微粒
子はスルホン酸基を含有するため、スチレンスルホン酸
ソーダを反応性界面活性剤として使用することで、他の
反応性界面活性剤を使用することなくソープフリー乳化
重合にて重合体微粒子を合成することも可能である。
【0025】乳化重合の操作・手順に関しては公知の手
法を用いることができる。モノマーの反応槽への添加方
法に関しては、一括して添加する方法、逐次滴下してい
く方法、少量を重合初期に一括添加しその後残りモノマ
ーを滴下していく方法、水溶性のモノマーと油溶性のモ
ノマーとを水中で混合・乳化後滴下するプレエマルジョ
ン法などを用いることができる。重合開始剤の添加方法
は、一括で初期に添加する方法と、分割して順次添加し
ていく方法などを用いることができる。
【0026】重合体微粒子は、最終的には水性エマルジ
ョンとして得られ、必要に応じて水や化合物を添加した
後に、適量セルロース原液に添加される。エマルジョン
は調製後速やかにセルロース原液に添加することが望ま
しい。添加までに時間が開く場合には、劣化、分散安定
性の点から、熱、冷却、光を避けて貯蔵すること、具体
的には10〜40℃の恒温の暗室に貯蔵しておくことが
望ましい。
【0027】本発明に用いるセルロースの原料は、木材
パルプ、綿リンター、綿リントなどが好適に用いられ、
紡糸原液中のセルロースの重合度は200〜1100の
範囲であることが好ましく、さらに好ましくは250〜
1000であり、特に好ましくは300〜900であ
る。重合度が小さすぎると、得られる繊維の物性、特に
引っ張り強度等の力学物性の低下が大きくなる場合が
る。また重合度が大きすぎると原液粘度の上昇や溶解性
の低下を引き起こして曳糸性が悪くなり、生産性が低下
する場合がある。紡糸に用いられる原液のセルロース濃
度は、紡糸原液の種類によって若干差はあるが、3〜1
5重量%が好ましく、5〜12重量%がさらに好まし
い。セルロース濃度が低すぎると、製造コストが高くな
るばかりか、紡糸時の凝固が遅くなり、曳糸性の低下や
繊維の強度も低下する場合がある。一方、セルロース濃
度が高すぎると、原液濃度の上昇や溶解性の低下を引き
起こして曳糸性が悪くなり、さらには単糸切れや毛羽が
発生しやすくなって、生産性が低下する場合がある。
【0028】重合体微粒子の添加は、セルロース原料を
仕込む工程から紡糸原液が紡出される紡糸工程までの任
意の工程で行うことがでる。セルロースの溶解の前に添
加しても後で添加してもよく、必要であれば複数の工程
で段階的に添加してもよい。微粒子の添加においては、
微粒子を凝集させることなく原液内に均一に分散せしめ
ることが重要で、凝集が起こった場合には、フィルター
詰まりやノズル詰まり、単糸切れや毛羽等の工程通過性
のトラブルが生じるばかりか、得られる糸の透明性や光
沢性、発色性、繊維物性も低下してしまう。分散液中の
微粒子の濃度は、高すぎると分散液自体の凝集が起こり
やすくなり、また低すぎると紡糸原液のセルロース濃度
が低くなってしまうので、好ましくは5〜35重量%、
特に10〜30重量%の微粒子濃度に調製することが好
ましい。微粒子分散液の添加によって紡糸原液の組成比
は変わるので、最終の紡糸原液のセルロース濃度や溶媒
の濃度が所望の濃度になるように、予め微粒子分散液に
紡糸原液の溶媒や添加物質を添加しておいてもよい。微
粒子の分散安定性の点から、分散液を撹拌しながら均一
に添加することが望ましい。
【0029】微粒子を分散液内で安定に微分散させる方
法には特に限定されず、慣用の微分散法、例えば、撹拌
機、超音波、粉砕媒体などを利用する微分散法を使用で
きる。微粒子分散液は、分散液を調製後紡糸原液に添加
するまでの間、粉砕媒体と粉砕媒体を撹拌するための回
転手段を兼ね備えた装置や、通常の撹拌機に入れて撹拌
しておくことが、分散性の面から好ましい。紡糸原液を
撹拌し過ぎると気泡が混入して紡糸性に悪影響を与えた
り、発熱によって紡糸原液が劣化したり、微粒子の凝集
が起こるおそれがあるため、分散液調製後の撹拌は低速
で行うことが好ましく、特に高速撹拌機にて分散液の調
製を行った後は、低速で撹拌しておくことが好ましい。
【0030】微粒子分散液の紡糸原液への混合は、微粒
子分散液を必要に応じて濾過した後に、セルロースを含
むドープに添加すればよいが、微粒子をドープ内に均一
に含有せしめるために、添加後さらに撹拌、混練処理を
施すことが好ましい。微粒子の混合、撹拌は公知の混合
装置が使用可能で、ホモミキサー、インラインミキサー
などの混合装置では、微粒子分散液を添加直後に高速で
撹拌、混合されるため、微粒子の凝集が起らず、均質な
ドープを調製することができる。特に、密閉性の高いイ
ンラインミキサーの使用が好ましく、これら密閉型の混
合装置では、気泡が混入せず、微粒子添加後に脱泡処理
を省略できるようになるので、微粒子添加直後でも紡糸
が行え、微粒子含有量の異なる繊維や微粒子無添加繊維
等の銘柄変更が容易にできるようになり、さらに銘柄変
更時のロスも減らせ、より低コストでの製造が可能とな
る。
【0031】また、微粒子とセルロース原液との混合温
度は、低温ほど微粒子の分散性がよくなる。高速攪拌混
合装置を使用する場合には、発熱によって混合温度が高
くなるので、装置を冷水もしくは冷媒によって冷却して
使用することが望ましい。しかし、混合時に冷却しすぎ
るとセルロース原液や微粒子分散液が凍結するので、混
合温度としては−5℃〜10℃の範囲が好ましい。
【0032】微粒子の分散安定性の点からは、微粒子分
散液を紡糸原液に添加後は、時間を空けず速やかに紡糸
を行うことが好ましい。一方、製糸性、繊維物性の点か
ら、必要に応じては、微粒子添加後に紡糸原液の脱泡を
行ってもよく、ビスコース溶液等の低粘度原液の場合に
は1〜10時間の真空脱泡、銅アンモニアセルロース溶
液等の高粘度原液の場合には10〜40時間の静置脱泡
を行うことが好ましい。さらに、製糸性の点から、紡糸
原液の濾過を行い、混合異物や粗大粒子を除去すること
が好ましく、紡糸口金から吐出されるまでに、孔径1〜
20μmの微細なフィルターで1段以上濾過することが
特に好ましい。
【0033】分散液や紡糸原液中での微粒子の分散状態
を安定化するために、界面活性剤を使用してもよい。界
面活性剤を添加する場合、小量だと分散効果が十分発現
せず、また、多量に添加すると消泡性の低下や繊維物性
の低下をきたすので、微粒子に対して1〜10重量%の
範囲で添加することが好ましい。界面活性剤としては、
従来公知の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性
剤、カチオン性界面活性剤をそのまま使用することがで
きる。
【0034】最終的な紡糸原液組成は、重合体微粒子が
対セルロース1〜40重量%含まれている以外は、従来
公知の組成とほとんど同じ原液で繊維化が可能である。
具体的には、例えば、ビスコースレーヨンの場合、セル
ロース7〜10重量%、二硫化炭素1〜4重量%、水酸
化ナトリウム5〜9重量%、微粒子1〜40重量%対セ
ルロース、温度20〜50℃である。銅アンモニアレー
ヨンの原液組成は、セルロース5〜12重量%、銅2〜
5重量%、アンモニア5〜9重量%、微粒子1〜40重
量%対セルロース、温度10〜40℃であり、アルカリ
可溶セルロースの原液組成としては、セルロース3〜7
重量%、水酸化ナトリウム7〜9.5重量%、微粒子1
〜40重量%対セルロース、温度−10〜10℃であ
る。
【0035】このようにして調製された紡糸原液の繊維
化は、凝固性、凝固速度が従来の紡糸原液と大きく変ら
ないので、従来公知の紡糸方法をそのまま用いることが
できる。具体的には、例えばビスコースレーヨンの場
合、硫酸8〜12重量%、硫酸ソーダ12〜30重量
%、硫酸亜鉛1〜3重量%、温度45〜65℃の凝固浴
に、0.01〜0.2mmφ(直径、以下同じ)の紡糸
口金より、吐出線速度50〜1200m/分で紡糸原液
を吐出し、曳糸速度50〜1200m/分で紡糸され
る。また、銅アンモニアレーヨンの場合、硫酸0〜20
重量%、温度30〜60℃の凝固浴に、0.1〜2mm
φの紡糸口金より、吐出線速度5〜200m/分で紡糸
原液を吐出し、硫酸1〜20重量%、温度20〜60℃
の再生浴を経て、曳糸速度50〜1500m/分で紡糸
される。さらに、アルカリ可溶セルロースの場合には、
硫酸10〜70重量%、温度―10〜20℃の凝固浴
に、0.01〜2mmφの紡糸口金より、吐出線速度5
〜100m/分で紡糸原液を吐出し、曳糸速度10〜2
00m/分で紡糸される。
【0036】紡糸装置についても、従来公知の装置を使
用することができ、例えば、遠心式紡糸機、ハンク式紡
糸機、ボビン式紡糸機、ホフマン式連続紡糸機、デュレ
ッタ式連続紡糸機、ネルソン式連続紡糸機、ドラム式連
続紡糸機、ネットプロセス式連続紡糸機、インダストリ
アル式連続紡糸機、オスカーコーホン式連続紡糸機、ク
ルジャン式連続紡糸機等を使用することができる。特に
繊維が衣料分野で使用される場合には、収縮率や染色性
等の糸長方向の糸特性の均一性の点から、物性斑や収縮
斑、繊維構造差等の差が少ない連続紡糸機類の使用が好
ましい。紡糸後の精練、水洗、乾燥についても従来公知
の装置、条件をそのまま適用する事が出来る。
【0037】また、本発明の繊維は、公知の鞘芯型紡糸
やサイドバイサイド型紡糸によって製造される複合繊維
や、異形紡口を使用して製造される三角断面、扁平断
面、星形断面、十字形断面、C形断面、T字形断面、Y
形断面等の異形断面繊維、ガスインジェクション型紡糸
や凝固性液体インジェクション紡糸によって製造される
中空繊維等の特殊繊維にも適用できる。
【0038】以上のようにして得られた本発明のカチオ
ン染料可染セルロース繊維は、カチオン染料にて鮮明に
染色可能であり、従来の直接染料や反応染料では得られ
なかった高い発色性、鮮明深色性を有し、併せて優れた
染色堅牢性、十分な力学物性を有する。本発明のカチオ
ン染料可染セルロース繊維を含む繊維製品は、汎用の加
工方法、例えば編成、織成等の公知の手段を適用して加
工、製品化したものであり、その形態はどのようなもの
でもよい。また、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、
セルロースアセテート繊維、アクリル繊維やスパンデッ
クス繊維、通常のセルロース繊維、羊毛、絹等との複合
繊維製品であることができる。特に、アクリル繊維、カ
チオン染料可染ポリエステル繊維等のカチオン染料可染
繊維との複合製品に適している。すなわち、セルロース
繊維/アクリル繊維、または、セルロース繊維/カチオ
ン染料可染ポリエステル繊維の染色は汎用の2段2浴染
色(直接染料/カチオン染料、または、反応染料/カチ
オン染料)から1段1浴染色(カチオン染料のみ)に合
理化され、染色時間および染色コストの削減ができるよ
うになる。
【0039】
【発明の実施の形態】以下に実施例を示し、本発明をさ
らに詳しく説明するが、本発明はこれらのみに限定され
るものではない。実施例中の%は特に示さないかぎり重
量%を意味する。なお、実施例において、エマルジョン
平均粒径、エマルジョン固形分濃度、微粒子添加率、繊
度、乾強度・伸度、染料吸尽率、発色性、堅牢性は以下
の方法により測定ないし評価したものである。
【0040】(1)エマルジョン平均粒径:光散乱光度
計ELS−800(大塚電子(株)製)を用い、エマル
ジョンの平均粒径を測定した。 (2)エマルジョン固形分濃度:エマルジョンを約5g
を試料皿に入れ熱風循環炉中で105℃にて3時間乾燥
後、不揮発分重量を測定することにより算出した。
【0041】(3)微粒子添加率(対セルロース):重
合体微粒子分散液の混合量をC(g、または、g/
分)、重合体微粒子分散液の固形分濃度をD(重量
%)、セルロース原液の混合量をE(g、または、g/
分)、セルロース原液中のセルロース濃度をF(重量
%)として次式より 微粒子添加率=C×D/(E×F)×100(%) (4)繊度:JIS―L1013―7.3に準じて測定
した。
【0042】(5)乾強度・伸度:JIS―L1013
―7.5.1に準じて測定した。 (6)染料吸尽率:試料はセルロース繊維の一口編地を
用い、炭酸ナトリウムを1g/リットル、スコアロール
FC−250(花王社製)を2g/リットルの濃度で含
有している温水を用いて、70℃、10分間精練処理
し、染液を添加して40℃から95℃まで昇温速度1℃
/分で昇温後、さらにそのまま95℃で30分間保持し
て染色を行った。染料はCATHILON RED G
TLH(保土ヶ谷化学社製)を使用し、PH調製のため
酢酸0.5ml/リットル、ぼう硝3g/リットルを添
加し、1%owf、浴比1:30で染色後、30分間水
洗を行った後に、60℃、10分間タンブラー乾燥機で
乾燥を行った。
【0043】染料吸尽率は、染料原液をアセトン水溶液
(アセトン/水=1/1容量比)により所定の希釈度で
希釈調製した溶液の吸光度をA、染色後の染液をアセト
ン水溶液(アセトン/水=1/1容量比)により所定の
希釈度で希釈調製した溶液の吸光度aを分光光度計(日
本分光社製、V―530型)から求め、以下の式に代入
して求めた。吸光度は当該染料の最大吸収波長である5
10nmでの値を採用した。
【0044】 染料吸尽率=(A−a)/A×100(%) (7)発色性:(6)で得られた布帛を下記の条件で測
色を行った。測色は、分光光度計(DCI社製スペクト
ラフラッシュ500)を用いて、K/Sを評価した。こ
の値は、染色後のサンプル布の分光反射率Rを測定し、
以下に示すクベルカ―ムンク(Kubelka―Mun
k)の式から求め、本発明ではK/Sを有彩色の深色度
と定義した。Rは当該染料の最大吸収波長である510
nmでの値を採用した。
【0045】K/S=(1−R)2 /2R この値が大きいほど、深色効果が大きいこと、すなわ
ち、よく発色されていることを示す。こうして得られた
発色性は、人が見て感じる発色性と極めてよい相関があ
る。 (8)堅牢性:染色終了後の編地をリポトールB−12
(日華化学社製)を3g/リットル含有する温水を用い
て、70℃、30分間ソーピングを行い、さらに水洗を
30分間行った後に、60℃、10分間タンブラー乾燥
機で乾燥を行った。得られた布帛を、(7)と同じ処方
で測色を行い、ソーピング布帛の発色性を測定した。水
洗のみの布帛の発色性をS0、ソーピング後の布帛の発
色性をSとして、次式にてソーピングに対する堅牢性を
評価した。
【0046】ソーピング堅牢性=(S0 −S)/S0 ×
100この値が大きいほど、ソーピングに対する堅牢性
が高いことを意味する。
【0047】
【実施例】実施例1 環流冷却管付き反応容器にイオン交換水84部、ラウリ
ル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸ジNa1部
を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温
後、スチレンスルホン酸ソーダ2.1部、スチレン1
1.4部、トリメチロールプロパントリメタクリレート
1.5部を仕込み攪拌・乳化後、過硫酸カリウム0.0
1部を添加し、乳化重合を開始した。2時間後再び過硫
酸カリウム0.01部を添加した後、70℃にて2時間
反応後冷却して、固形分濃度16重量%、平均粒径96
nmの重合体微粒子エマルジョンを得た。
【0048】このエマルジョンを、常法により調製され
たビスコースレーヨン溶液(セルロース:8.7%、水
酸化ナトリウム6.1%、二硫化炭素1.8%)に、イ
ンラインミキサーを用いて、混合温度−5℃、ミキサー
回転数1000rpmで添加、混合し、微粒子の対セル
ロース添加率11.1重量%の微粒子/セルロース混合
液を得た。混合後、そのまま連続して20μmフィルタ
ーで濾過した後に、0.06mm×50ホールの一重配
列紡糸口金より、凝固浴(硫酸:140g/l、硫酸ナ
トリウム:260g/l、硫酸亜鉛:15g/l、浴温
度58℃)へ吐出量15ml/分で吐出し、そのまま連
続して再生、水洗、乾燥を行った後に巻取速度120m
/分にて巻取った。紡糸性は良好で、5時間の紡糸で毛
羽や糸切れ等のトラブルやフィルターの詰りは発生しな
かった。
【0049】得られた糸状は、繊度124.1d、乾強
度1.58g/d、乾伸度11.2%と実用的な物性で
あった。当該繊維の染料吸尽率は95.5%と非常に高
いカチオン染料染着性を示し、発色性は17.7、リポ
トール洗浄堅牢性は100と非常に優れた発色性、堅牢
性を示した。得られた結果を表1にまとめて示す。 実施例2 環流冷却管付き反応容器にイオン交換水73部、ラウリ
ル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸ジNa2部
を仕込み窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温後、
過硫酸カリウム0.01部を添加し、スチレンスルホン
酸ソーダ水溶液(スチレンスルホン酸ソーダ0.75
部、水10部)および、スチレン12.75部とネオペ
ンチルグリコールジメタクリレート1.5部との混合液
を1時間かけて滴下した。1時間後再び過硫酸カリウム
0.01部を添加した後、70℃にて2時間反応後冷却
して、固形分濃度17重量%、平均粒径34nmの重合
体微粒子エマルジョンを得た。この微粒子を実施例1と
同じ処方で紡糸原液に添加し、紡糸、染色を行った。
【0050】実施例3 環流冷却管付き反応容器にイオン交換水73部、ラウリ
ル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸ジNa1部
を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温
後、スチレンスルホン酸ソーダ1.5部、スチレン12
部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート1.5部
を仕込み攪拌・乳化後、過硫酸カリウム0.01部を添
加し、乳化重合を開始した。2時間後再び過硫酸カリウ
ム0.01部を添加した後、70℃にて2時間反応後冷
却して、固形分濃度16重量%、平均粒径47nmの重
合体微粒子エマルジョンを得た。この微粒子を実施例1
と同じ処方で紡糸原液に添加し、紡糸、染色を行った。
【0051】実施例4 環流冷却管付き反応容器にイオン交換水84部、ラウリ
ル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸ジNa1部
を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温
後、スチレンスルホン酸ソーダ1.5部、スチレン1
0.5部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート
1.5部、片末端メタクリル変成ジメチルシリコーン
1.5部を仕込み攪拌・乳化後、過硫酸カリウム0.0
1部を添加し、乳化重合を開始した。2時間後再び過硫
酸カリウム0.01部を添加した後、70℃にて2時間
反応後冷却して、固形分濃度16重量%、平均粒径48
nmの重合体微粒子エマルジョンを得た。この微粒子を
実施例1と同じ処方で紡糸原液に添加し、紡糸、染色を
行った。
【0052】実施例5 実施例1で得られた重合体微粒子エマルジョンを、常法
により調製された銅アンモニアセルロース溶液(セルロ
ース:10%、銅:3.5%、アンモニア:7%、水酸
化ナトリウム:0.5%)に、インラインミキサーを用
いて、混合温度10℃、ミキサー回転数1000rpm
で添加、混合し、微粒子の対セルロース添加率11.1
重量%の微粒子/セルロース混合液を調製し、混合後そ
のまま連続して20μm焼結フィルター、5μm焼結フ
ィルターを通して0.7mm×45ホールの紡糸口金よ
り、凝固浴(一次紡水:温度36℃、紡水量450ml
/分、二次紡水:温度55℃、紡水量400ml/分)
へ吐出量11.2ml/分で吐出し、連続紡糸機を用い
て、再生、水洗、乾燥を行って、巻取速度150m/分
にて巻取り銅アンモニアレーヨン糸状を得た。紡糸性は
良好で、5時間の紡糸時間中に、ギヤポンプ圧力の上
昇、フィルター詰り、紡口詰り、糸切れ等のトラブルは
1度も発生しなかった。得られた繊維を、実施例1と同
様の処方で染色を行った。
【0053】〔比較例〕 比較例1 環流冷却管付き反応容器にイオン交換水84.5部、ラ
ウリル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸ジNa
0.5部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃
に昇温後、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンス
ルホン酸Naの50%水溶液4.5部、メチルメタクリ
レート9部、スチレン2.25部、ネオペンチルグリコ
ールジメタクリレート1.5部を仕込み、攪拌・乳化
後、過硫酸カリウム0.01部を添加し、乳化重合を開
始した。2時間後、再び過硫酸カリウム0.01部を添
加した後、70℃にて2時間反応後冷却して、固形分濃
度15.5重量%、平均粒径152nmの重合体粒子エ
マルジョンを得た。このエマルジョンを用いて実施例1
と同様の処方で、紡糸、染色を行った。
【0054】比較例2 環流冷却管付き反応容器にイオン交換水84.5部、ラ
ウリル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸ジNa
0.5部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃
に昇温後、メタリルスルホン酸Na2.25部、メチル
メタクリレート9部、スチレン2.25部、ネオペンチ
ルグリコールジメタクリレート1.5部を仕込み、攪拌
・乳化後、過硫酸カリウム0.01部を添加し、乳化重
合を開始した。2時間後、再び過硫酸カリウム0.01
部を添加した後、70℃にて2時間反応後冷却して、固
形分濃度15.5重量%、平均粒径98nmの重合体粒
子エマルジョンを得た。このエマルジョンを用いて実施
例1と同様の処方で紡糸を行ったところ、紡糸開始直後
からフィルター詰まりが発生し、紡糸することができな
かった。
【0055】比較例3 環流冷却管付き反応容器にイオン交換水84.5部、ラ
ウリル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸ジNa
0.5部を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃
に昇温後、アリルスルホン酸Na2.25部、メチルメ
タクリレート9部、スチレン2.25部、ネオペンチル
グリコールジメタクリレート1.5部を仕込み、攪拌・
乳化後、過硫酸カリウム0.01部を添加し、乳化重合
を開始した。2時間後、再び過硫酸カリウム0.01部
を添加した後、70℃にて2時間反応後冷却して、固形
分濃度15.5重量%、平均粒径106nmの重合体粒
子エマルジョンを得た。このエマルジョンを用いて実施
例1と同様の処方で紡糸を行ったところ、紡糸開始直後
からフィルター詰まりが発生し、紡糸することができな
かった。
【0056】比較例4 環流冷却管付き反応容器にイオン交換水84部、ラウリ
ル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸ジNa1部
を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温
後、スチレンスルホン酸ソーダ2.1部、メチルメタク
リレート9.15部、スチレン2.25部、ネオペンチ
ルグリコールジメタクリレート1.5部を仕込み、攪拌
・乳化後、過硫酸カリウム0.01部を添加し、乳化重
合を開始した。2時間後、再び過硫酸カリウム0.01
部を添加した後、70℃にて2時間反応後冷却して、固
形分濃度16重量%、平均粒径197nmの重合体粒子
エマルジョンを得た。このエマルジョンを用いて実施例
1と同様の処方で、紡糸、染色を行った。
【0057】比較例5 環流冷却管付き反応容器にイオン交換水83部、ラウリ
ル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸ジNa2部
を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温
後、過硫酸カリウム0.01部を添加し、グリシジルメ
タクリレート1.5部、n−ブチルアクリレート12.
75部、ネオペンチルグリコールジメタクリレート0.
75部の混合液を1時間かけて滴下・重合を行った。滴
下終了1時間後さらに過硫酸カリウム0.01部を添加
し、70℃にて2時間反応させた。これを室温まで冷却
後、無水重亜硫酸Na1部、イオン交換水6.67部を
添加し、1時間かけて徐々に80℃まで加熱・昇温後、
2時間反応を行い、エポキシ基のスルホン酸基への変換
を行った。これを冷却して、固形分濃度16.9重量
%、平均粒径60nmの重合体粒子エマルジョンを得
た。このエマルジョンを用いて実施例1と同様の処方で
紡糸を行ったところ、紡糸開始直後からフィルター詰ま
りが発生し、紡糸することができなかった。
【0058】比較例6 環流冷却管付き反応容器にイオン交換水83部、ラウリ
ル(スルホフェノキシ)ベンゼンスルホン酸ジNa2部
を仕込み、窒素雰囲気下で攪拌しながら70℃に昇温
後、過硫酸カリウム0.01部を添加し、グリシジルメ
タクリレート1.5部、n−ブチルアクリレート7.5
部、スチレン6部の混合液を1時間かけて滴下・重合を
行った。滴下終了1時間後さらに過硫酸カリウム0.0
1部を添加し、70℃にて2時間反応させた。これを室
温まで冷却後、無水重亜硫酸Na1部、イオン交換水
6.67部を添加し、1時間かけて徐々に80℃まで加
熱・昇温後、2時間反応を行い、エポキシ基のスルホン
酸基への変換を行った。これを冷却して、固形分濃度1
6.9重量%、平均粒径61nmの重合体粒子エマルジ
ョンを得た。このエマルジョンを用いて実施例1と同様
の処方で、紡糸、染色を行った。
【0059】
【表1】
【0060】
【発明の効果】本発明によるカチオン染料可染セルロー
ス繊維は、工程通過性、繊維物性に優れ、カチオン染料
で染色した際には高発色の優れた色彩を発現し、かつ、
優れた染色堅牢性を併せもつセルロース繊維をである。
本発明によるカチオン染料可染セルロース繊維を含む繊
維製品は、セルロース繊維の100%織編物、あるい
は、カチオン染料可染性繊維、特にアクリル繊維、カチ
オン染料可染ポリエステル繊維、羊毛との混用織編物と
して、インナー分野、アウター分野、スポーツ衣料分
野、裏地分野等の衣料分野での使用において極めて有用
である。
フロントページの続き (72)発明者 鷹巣 修二 宮崎県延岡市旭町6丁目4100番地 旭化成 工業株式会社内 (72)発明者 塚谷 才英 福井県福井市日之出5丁目13番17号 メゾ ンクレールB21 (72)発明者 梅谷 慎一 福井県坂井郡三国町新保第4号17番地 Fターム(参考) 4L035 BB03 CC13 EE07 GG03 JJ23 KK01

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 スチレンスルホン酸化合物3〜20重量
    %、スチレン50〜92重量%及び架橋剤5〜20重量
    %をモノマー成分としてなる重合体微粒子を繊維全体の
    重量に対して1〜40重量%含有することを特徴とする
    カチオン染料可染セルロース繊維。
  2. 【請求項2】 重合体微粒子に含まれる架橋剤が2つ以
    上の不飽和二重結合を持つ化合物であることを特徴とす
    る請求項1記載のカチオン染料可染セルロース繊維。
  3. 【請求項3】 重合体微粒子の平均粒子径が25nm〜
    200nmの間であることを特徴とする請求項1または
    2記載のカチオン染料可染セルロース繊維。
  4. 【請求項4】 重合体微粒子が乳化重合またはソープフ
    リーの乳化重合によって合成されたものであることを特
    徴とする請求項1〜3記載のカチオン染料可染セルロー
    ス繊維。
  5. 【請求項5】 セルロース繊維が銅アンモニアレーヨン
    繊維であることを特徴とする請求項1〜4記載のセルロ
    ース繊維。
  6. 【請求項6】 セルロース繊維がビスコースレーヨン繊
    維であることを特徴とする請求項1〜4記載のカチオン
    染料可染セルロース繊維。
  7. 【請求項7】 請求項1〜6のいずれかに記載のカチオ
    ン染料可染セルロース繊維を含む繊維製品。
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