JP2004256936A - 高難燃性アクリル系繊維の製造法 - Google Patents
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Abstract
【課題】難燃性の強化され光沢、透明性及び染色後の発色性に優れた高難燃性アクリル系繊維を工業的容易に且つ安価に提供する。
【解決手段】アクリロニトリル30〜80重量%とハロゲン含有モノマー及びスルホン酸基含有モノマー20〜70重量%とよりなるアクリロニトリル系重合体を有機溶媒に溶解した紡糸原液にトリエタノールアミンを少なくとも0.5重量%含有し及び平均粒径50〜150nmで且つ水分散系におけるpHが6.5〜9.0の五酸化アンチモン分散液を添加することを特徴とする高難燃性アクリル系繊維の製造法。
【選択図】なし
【解決手段】アクリロニトリル30〜80重量%とハロゲン含有モノマー及びスルホン酸基含有モノマー20〜70重量%とよりなるアクリロニトリル系重合体を有機溶媒に溶解した紡糸原液にトリエタノールアミンを少なくとも0.5重量%含有し及び平均粒径50〜150nmで且つ水分散系におけるpHが6.5〜9.0の五酸化アンチモン分散液を添加することを特徴とする高難燃性アクリル系繊維の製造法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光沢、透明性及び染色後の発色性に優れた高難燃性アクリル系繊維を製造するに際し、紡糸操業性に優れた製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、難燃アクリル系合成繊維の殆どがモダクリル系繊維であり、製品の腰感、バルキー性、染色性等の性能において通常のアクリロニトリル系合成繊維と大差ない。難燃アクリル系合成繊維は、衣料品及び毛布、シーツなどの寝装品、あるいはカーテン、カーぺットのインテリア製品など目的に応じ、ポリエステル、羊毛、木綿など各種の汎用燃焼と混紡、交織して製品化する場合、難燃性が低下する。この為、最近の難燃規制にともない、より高難燃性のモダクリル繊維が必要となる。
【0003】
従来、高難燃性のモダクリル繊維の製造には三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化マグネシウムなどを紡糸原液に添加する方法が取られている。特に光沢、透明性に優れた高難燃性アクリル系繊維の製造には五酸化アンチモンを添加する方法が取られている。
【0004】
しかし、これらは粒子が微小な為分散安定性が悪く2次凝集を起こしやすく、紡糸時の濾過圧上昇、糸切れの原因となり、著しく操業性を低下させる恐れが有る。例えば、三酸化アンチモンについて言えば、1.0〜0.5μmが用いられるため、この粒径の範囲では隠蔽力が強く、ダル調の製品になり高度の難燃性を付与できるものの、透明性、光沢及び染色後の発色性において満足できるものではない。
【0005】
そこで、ブライト調製品を得るためには、特公昭53−1517号公報においては、100nm以下の酸化アンチモン粒子を紡糸原液に混合し、ゲル状繊維の内部水分率を繊維形成重合体に対して50〜130重量%に調整している。しかしながら、100nm以下の酸化アンチモン粒子を公知の攪拌機にて分散混合させても、その酸化アンチモン分散紡糸原液は2次凝集による口金圧の上昇を起こし、操業性が悪くなることがおおい。
【0006】
又、特開昭55−142715号公報においては、100μm以下の五酸化アンチモンを有機溶媒と水との混合物中に懸濁させ、紡糸原液に混入する方法が記載されている。しかしながら、懸濁液中の水が20〜40重量%もあると通常の紡糸原液と混合する場合、紡糸原液のゲル化を起こし、又、酸化アンチモンの2次凝集による口金圧上昇が起こるなど操業上問題となる。
本発明者らは上記欠点を改善すべく鋭意研究の結果、本発明を完成したのである。
【0007】
【特許文献1】
特公昭53−1517号公報
【特許文献2】
特開昭55−142715号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、難燃性を満足しかつ各種商品ニーズに応える為に、光沢、透明性に優れた高難燃性アクリル系繊維を工業的容易に且つ安価に提供することにある。他の目的は、五酸化アンチモンの2次凝集による濾過圧上昇がなく、長時間安定紡糸でき、しかも紡糸中糸切れの少ない高難燃性アクリル系繊維の製造法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため以下の構成をとる。
即ち、本発明は、アクリロニトリル30〜80重量%とハロゲン含有モノマー15〜65重量%及びスルホン酸基含有モノマー5重量%以下とよりなるアクリロニトリル系重合体を有機溶媒に溶解した溶液に、下記特徴を有する五酸化アンチモン水分散液を添加した紡糸原液を用いて、湿式紡糸することを特徴とするアクリロニトリル系合成繊維の製造方法である。
1)五酸化アンチモンの粒径が50〜150nm
2)五酸化アンチモンに対しトリエタノールアミンを少なくとも0.5重量%含有する
3)pHが6.5〜9.0
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるアクリロニトリル系重合体はアクリロニトリル30〜80重量%であり、アクリロニトリル系合成繊維の特徴である耐熱性、風合い、染色性が活かされる。ハロゲン含有モノマーは15〜65重量%であり難燃性に必要であり、スルホン酸基含有モノマー5重量%以下とよりなる。
【0011】
ハロゲン含有モノマーとしては塩化ビニル、塩化ビニリデンであり、またスルホン酸基を含有するモノマーとしては、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム等である。スルホン酸基を含有するモノマーを5重量%以下共重合せしめることにより、湿式紡糸に際し、微小なボイドの発生を抑制することにより緻密な繊維が得られ、1〜4重量%共重合したものが繊維の発色性から好ましい。
【0012】
五酸化アンチモンの分散液に関して、五酸化アンチモンの平均粒径は50〜150nm、好ましくは80〜120nmである。50nmより小さいと再凝集しやすく150nmを超えると繊維の透明性が低下する。
【0013】
分散液中のトリエタノールアミンは少なくとも0.5重量%含有し、好ましくは少なくとも1.0重量%含有する。トリエタノールアミンが0.5重量%より少ないと分散液の安定性が低下する。
【0014】
水分散液のpHは6.5〜9.0で好ましくは7.0〜8.5である。pHが6.5より小さい場合分散液の安定性が低下し、pHが9.0より大きいと繊維の着色が大きくなり耐光性も悪化する。pHを調整するには有機溶媒に可溶な少量のアンモニア水などを用いることが出来る。
【0015】
五酸化アンチモン分散液の濃度(五酸化アンチモンの割合)は20重量%以上が好ましく、重合体のポリマー濃度は20重量%以上が紡糸操業性から好ましい。
【0016】
紡糸原液は、通常アクリルニトリル系重合体の有機溶媒に五酸化アンチモンの水性コロイドとを混合せしめて調整するが、混合方法は公知の攪拌機を使用して、アクリルニトリル系重合体の有機溶剤へ五酸化アンチモン水性コロイドを投入する場合、有機溶剤中のアクリル系重合体が析出し、五酸化アンチモン添加紡糸原液の濾過性が悪くなることがある。この場合予めアクリルニトリル系重合体の有機溶剤を分散液に混合した水性コロイドを投入するのが好ましい。
【0017】
紡糸凝固液に使用する有機溶剤は、紡糸原液と同じ有機溶剤が好ましい。紡糸後の水洗、延伸、前オイル付与、乾燥、延伸、後オイル付与、クリンパー、クリンプセット、乾燥などの工程は、もちろん、モダクリル繊維の通常の工程をそのまま適用できる。
【0018】
[増粘性]
五酸化アンチモン分散液の増粘性は分散液に同量のDMFを混合し、60℃で2日間の分散液の増粘で評価した。
・増粘性 ○:2日後0.1Pa・s未満 △:2日後0.1Pa・s以上だがゲル化に至らず ×:ゲル化
【0019】
[紡糸濾過性]
紡糸原液の濾過性は下記の評価を実施した。
濾過面積7cm2、濾過布ゴーザミン、0.06mmφ×5000孔の口金を使い、吐出量320ml/min、巻き取り速度10.5m/minで紡糸を1時間行った。そして、この時の濾過布での圧力上昇(濾過性)および単糸切れ状況(糸切れ)にて評価した。
・濾過性 ○:0以上0.5未満 △:0.5以上1.0未満 ×:1.0以上 (各数値は圧上昇値:0.1MPa)
【0020】
[耐光性]
繊維の耐光性は下記の評価を実施した。
63℃×50%RH、時間20時間、強エネルギーキセノンフェードメータにて変色を評価した。
・耐光性 ○:変色が殆どない △:僅かに黄変 ×:黄変
【0021】
[透明性]
繊維をハンドカードで引きそろえ、3cmの長さに切断し、これを0.04g測り、20mmガラスセルにベンジルアルコールと共に入れる。562nmにて光の透過率を分光光度計で測定し、ベンジルアルコールを透過率100として比較した。
・透明性 ○:70以上 △:40以上70未満 ×:40未満
【0022】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。尚、実施例中の%は、特に断りのない限り「重量%」を表す。
【0023】
実施例1〜7、比較例1〜3
AN/塩化ビニリデン/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(以下SAMと略称)=69/16/15からなる重合体(以下SRと略称)を、DMF中にてアゾビスイソバレロニトリルを開始剤として重合した。さらにAN/塩化ビニリデン=58/42を、DMF中にてアゾビスイソバレロニトリルを開始剤として重合するに際し上記SRを10%添加重合し残存モノマーの除去を行いアクリロニトリル系重合体を得た。その後、アクリロニトリル系重合体濃度を29%に調製した。
【0024】
表−1に示す25重量%の五酸化アンチモン分散液を上記アクリロニトリル系重合体溶液に五酸化アンチモンの添加量がポリマーに対して8%になるように添加し紡糸原液を調製した。該紡糸原液を22℃,58%DMF水溶液中に紡出し、脱溶媒をさせながら延伸、水洗した後、油剤を付与して、乾燥及び乾燥緻密化を行った。この繊維は延伸、収縮、クリンプの各工程を通した後、湿熱105℃にて湿熱処理を行いアクリル系合成繊維を得た。それらの結果を表1に示す。実施例1〜7の分散液の増粘、紡糸濾過圧、耐光性及び透明性は良好であった。しかし、比較例1の耐光性は悪く、比較例2〜3の分散液の増粘は不良で1日後でゲル化し紡糸濾過性も悪かった。尚、粒子径はレーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD−7000)にて測定した。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例8〜10、比較例4〜5
実施例1のアクリロニトリル系重合体に表−2に示す五酸化アンチモン分散液をアクリロニトリル系重合体溶液に五酸化アンチモンの添加量がポリマーに対して8%になるように添加し、実施例1と同様に紡出、延伸、水洗、油剤、乾燥、延伸、収縮、クリンプ及び湿熱処理を行いアクリル系合成繊維を得た。それらの結果を表2に示す。実施例8〜10の分散液の増粘、紡糸濾過圧、耐光性及び透明性は良好であった。しかし、比較例4の分散液の増粘は不良で1日後でゲル化し紡糸濾過性も悪かった。比較例5のアクリル系合成繊維はダル調で透明な繊維は得られなかった。
【0027】
【表2】
【0028】
比較例6
AN/塩化ビニリデン=29/71を、DMF中にてアゾビスイソバレロニトリルを開始剤として重合するに際し実施例1のSRを10%添加重合し残存モノマーの除去を行いアクリロニトリル系重合体を得た。その後、アクリロニトリル系重合体濃度を29%に調製し、五酸化アンチモンの添加量がポリマーに対して8%になるように添加し紡糸原液とした。該紡糸原液を紡糸したが延伸切れが多発し繊維は得られなかった。
【0029】
比較例7
AN/塩化ビニリデン=81/19を、DMF中にてアゾビスイソバレロニトリルを開始剤として重合するに際し実施例1のSRを10%添加重合し残存モノマーの除去を行いアクリロニトリル系重合体を得た。その後、アクリロニトリル系重合体濃度を29%に調製し、五酸化アンチモンの添加量がポリマーに対して8%になるように添加し紡糸原液とした。該紡糸原液を紡糸し実施例1と同様の工程でアクリル系合成繊維を得た。難燃性の低下が著しく高難燃性アクリル系繊維が得られなかった。
【0030】
【発明の効果】本発明は、光沢、透明性に優れた高難燃性アクリル系繊維を製造するに際し、紡糸操業性に優れた製造法に関する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、光沢、透明性及び染色後の発色性に優れた高難燃性アクリル系繊維を製造するに際し、紡糸操業性に優れた製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、難燃アクリル系合成繊維の殆どがモダクリル系繊維であり、製品の腰感、バルキー性、染色性等の性能において通常のアクリロニトリル系合成繊維と大差ない。難燃アクリル系合成繊維は、衣料品及び毛布、シーツなどの寝装品、あるいはカーテン、カーぺットのインテリア製品など目的に応じ、ポリエステル、羊毛、木綿など各種の汎用燃焼と混紡、交織して製品化する場合、難燃性が低下する。この為、最近の難燃規制にともない、より高難燃性のモダクリル繊維が必要となる。
【0003】
従来、高難燃性のモダクリル繊維の製造には三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化マグネシウムなどを紡糸原液に添加する方法が取られている。特に光沢、透明性に優れた高難燃性アクリル系繊維の製造には五酸化アンチモンを添加する方法が取られている。
【0004】
しかし、これらは粒子が微小な為分散安定性が悪く2次凝集を起こしやすく、紡糸時の濾過圧上昇、糸切れの原因となり、著しく操業性を低下させる恐れが有る。例えば、三酸化アンチモンについて言えば、1.0〜0.5μmが用いられるため、この粒径の範囲では隠蔽力が強く、ダル調の製品になり高度の難燃性を付与できるものの、透明性、光沢及び染色後の発色性において満足できるものではない。
【0005】
そこで、ブライト調製品を得るためには、特公昭53−1517号公報においては、100nm以下の酸化アンチモン粒子を紡糸原液に混合し、ゲル状繊維の内部水分率を繊維形成重合体に対して50〜130重量%に調整している。しかしながら、100nm以下の酸化アンチモン粒子を公知の攪拌機にて分散混合させても、その酸化アンチモン分散紡糸原液は2次凝集による口金圧の上昇を起こし、操業性が悪くなることがおおい。
【0006】
又、特開昭55−142715号公報においては、100μm以下の五酸化アンチモンを有機溶媒と水との混合物中に懸濁させ、紡糸原液に混入する方法が記載されている。しかしながら、懸濁液中の水が20〜40重量%もあると通常の紡糸原液と混合する場合、紡糸原液のゲル化を起こし、又、酸化アンチモンの2次凝集による口金圧上昇が起こるなど操業上問題となる。
本発明者らは上記欠点を改善すべく鋭意研究の結果、本発明を完成したのである。
【0007】
【特許文献1】
特公昭53−1517号公報
【特許文献2】
特開昭55−142715号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、難燃性を満足しかつ各種商品ニーズに応える為に、光沢、透明性に優れた高難燃性アクリル系繊維を工業的容易に且つ安価に提供することにある。他の目的は、五酸化アンチモンの2次凝集による濾過圧上昇がなく、長時間安定紡糸でき、しかも紡糸中糸切れの少ない高難燃性アクリル系繊維の製造法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため以下の構成をとる。
即ち、本発明は、アクリロニトリル30〜80重量%とハロゲン含有モノマー15〜65重量%及びスルホン酸基含有モノマー5重量%以下とよりなるアクリロニトリル系重合体を有機溶媒に溶解した溶液に、下記特徴を有する五酸化アンチモン水分散液を添加した紡糸原液を用いて、湿式紡糸することを特徴とするアクリロニトリル系合成繊維の製造方法である。
1)五酸化アンチモンの粒径が50〜150nm
2)五酸化アンチモンに対しトリエタノールアミンを少なくとも0.5重量%含有する
3)pHが6.5〜9.0
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いるアクリロニトリル系重合体はアクリロニトリル30〜80重量%であり、アクリロニトリル系合成繊維の特徴である耐熱性、風合い、染色性が活かされる。ハロゲン含有モノマーは15〜65重量%であり難燃性に必要であり、スルホン酸基含有モノマー5重量%以下とよりなる。
【0011】
ハロゲン含有モノマーとしては塩化ビニル、塩化ビニリデンであり、またスルホン酸基を含有するモノマーとしては、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム等である。スルホン酸基を含有するモノマーを5重量%以下共重合せしめることにより、湿式紡糸に際し、微小なボイドの発生を抑制することにより緻密な繊維が得られ、1〜4重量%共重合したものが繊維の発色性から好ましい。
【0012】
五酸化アンチモンの分散液に関して、五酸化アンチモンの平均粒径は50〜150nm、好ましくは80〜120nmである。50nmより小さいと再凝集しやすく150nmを超えると繊維の透明性が低下する。
【0013】
分散液中のトリエタノールアミンは少なくとも0.5重量%含有し、好ましくは少なくとも1.0重量%含有する。トリエタノールアミンが0.5重量%より少ないと分散液の安定性が低下する。
【0014】
水分散液のpHは6.5〜9.0で好ましくは7.0〜8.5である。pHが6.5より小さい場合分散液の安定性が低下し、pHが9.0より大きいと繊維の着色が大きくなり耐光性も悪化する。pHを調整するには有機溶媒に可溶な少量のアンモニア水などを用いることが出来る。
【0015】
五酸化アンチモン分散液の濃度(五酸化アンチモンの割合)は20重量%以上が好ましく、重合体のポリマー濃度は20重量%以上が紡糸操業性から好ましい。
【0016】
紡糸原液は、通常アクリルニトリル系重合体の有機溶媒に五酸化アンチモンの水性コロイドとを混合せしめて調整するが、混合方法は公知の攪拌機を使用して、アクリルニトリル系重合体の有機溶剤へ五酸化アンチモン水性コロイドを投入する場合、有機溶剤中のアクリル系重合体が析出し、五酸化アンチモン添加紡糸原液の濾過性が悪くなることがある。この場合予めアクリルニトリル系重合体の有機溶剤を分散液に混合した水性コロイドを投入するのが好ましい。
【0017】
紡糸凝固液に使用する有機溶剤は、紡糸原液と同じ有機溶剤が好ましい。紡糸後の水洗、延伸、前オイル付与、乾燥、延伸、後オイル付与、クリンパー、クリンプセット、乾燥などの工程は、もちろん、モダクリル繊維の通常の工程をそのまま適用できる。
【0018】
[増粘性]
五酸化アンチモン分散液の増粘性は分散液に同量のDMFを混合し、60℃で2日間の分散液の増粘で評価した。
・増粘性 ○:2日後0.1Pa・s未満 △:2日後0.1Pa・s以上だがゲル化に至らず ×:ゲル化
【0019】
[紡糸濾過性]
紡糸原液の濾過性は下記の評価を実施した。
濾過面積7cm2、濾過布ゴーザミン、0.06mmφ×5000孔の口金を使い、吐出量320ml/min、巻き取り速度10.5m/minで紡糸を1時間行った。そして、この時の濾過布での圧力上昇(濾過性)および単糸切れ状況(糸切れ)にて評価した。
・濾過性 ○:0以上0.5未満 △:0.5以上1.0未満 ×:1.0以上 (各数値は圧上昇値:0.1MPa)
【0020】
[耐光性]
繊維の耐光性は下記の評価を実施した。
63℃×50%RH、時間20時間、強エネルギーキセノンフェードメータにて変色を評価した。
・耐光性 ○:変色が殆どない △:僅かに黄変 ×:黄変
【0021】
[透明性]
繊維をハンドカードで引きそろえ、3cmの長さに切断し、これを0.04g測り、20mmガラスセルにベンジルアルコールと共に入れる。562nmにて光の透過率を分光光度計で測定し、ベンジルアルコールを透過率100として比較した。
・透明性 ○:70以上 △:40以上70未満 ×:40未満
【0022】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。尚、実施例中の%は、特に断りのない限り「重量%」を表す。
【0023】
実施例1〜7、比較例1〜3
AN/塩化ビニリデン/2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム(以下SAMと略称)=69/16/15からなる重合体(以下SRと略称)を、DMF中にてアゾビスイソバレロニトリルを開始剤として重合した。さらにAN/塩化ビニリデン=58/42を、DMF中にてアゾビスイソバレロニトリルを開始剤として重合するに際し上記SRを10%添加重合し残存モノマーの除去を行いアクリロニトリル系重合体を得た。その後、アクリロニトリル系重合体濃度を29%に調製した。
【0024】
表−1に示す25重量%の五酸化アンチモン分散液を上記アクリロニトリル系重合体溶液に五酸化アンチモンの添加量がポリマーに対して8%になるように添加し紡糸原液を調製した。該紡糸原液を22℃,58%DMF水溶液中に紡出し、脱溶媒をさせながら延伸、水洗した後、油剤を付与して、乾燥及び乾燥緻密化を行った。この繊維は延伸、収縮、クリンプの各工程を通した後、湿熱105℃にて湿熱処理を行いアクリル系合成繊維を得た。それらの結果を表1に示す。実施例1〜7の分散液の増粘、紡糸濾過圧、耐光性及び透明性は良好であった。しかし、比較例1の耐光性は悪く、比較例2〜3の分散液の増粘は不良で1日後でゲル化し紡糸濾過性も悪かった。尚、粒子径はレーザ回折式粒度分布測定装置(島津製作所製:SALD−7000)にて測定した。
【0025】
【表1】
【0026】
実施例8〜10、比較例4〜5
実施例1のアクリロニトリル系重合体に表−2に示す五酸化アンチモン分散液をアクリロニトリル系重合体溶液に五酸化アンチモンの添加量がポリマーに対して8%になるように添加し、実施例1と同様に紡出、延伸、水洗、油剤、乾燥、延伸、収縮、クリンプ及び湿熱処理を行いアクリル系合成繊維を得た。それらの結果を表2に示す。実施例8〜10の分散液の増粘、紡糸濾過圧、耐光性及び透明性は良好であった。しかし、比較例4の分散液の増粘は不良で1日後でゲル化し紡糸濾過性も悪かった。比較例5のアクリル系合成繊維はダル調で透明な繊維は得られなかった。
【0027】
【表2】
【0028】
比較例6
AN/塩化ビニリデン=29/71を、DMF中にてアゾビスイソバレロニトリルを開始剤として重合するに際し実施例1のSRを10%添加重合し残存モノマーの除去を行いアクリロニトリル系重合体を得た。その後、アクリロニトリル系重合体濃度を29%に調製し、五酸化アンチモンの添加量がポリマーに対して8%になるように添加し紡糸原液とした。該紡糸原液を紡糸したが延伸切れが多発し繊維は得られなかった。
【0029】
比較例7
AN/塩化ビニリデン=81/19を、DMF中にてアゾビスイソバレロニトリルを開始剤として重合するに際し実施例1のSRを10%添加重合し残存モノマーの除去を行いアクリロニトリル系重合体を得た。その後、アクリロニトリル系重合体濃度を29%に調製し、五酸化アンチモンの添加量がポリマーに対して8%になるように添加し紡糸原液とした。該紡糸原液を紡糸し実施例1と同様の工程でアクリル系合成繊維を得た。難燃性の低下が著しく高難燃性アクリル系繊維が得られなかった。
【0030】
【発明の効果】本発明は、光沢、透明性に優れた高難燃性アクリル系繊維を製造するに際し、紡糸操業性に優れた製造法に関する。
Claims (3)
- アクリロニトリル30〜80重量%とハロゲン含有モノマー15〜65重量%及びスルホン酸基含有モノマー5重量%以下とよりなるアクリロニトリル系重合体を有機溶媒に溶解した溶液に、下記特徴を有する五酸化アンチモン水分散液を添加した紡糸原液を用いて、湿式紡糸することを特徴とするアクリロニトリル系合成繊維の製造方法。
1)五酸化アンチモンの粒径が50〜150nm
2)五酸化アンチモンに対しトリエタノールアミンを少なくとも0.5重量%含有する
3)pHが6.5〜9.0 - 該アクリロニトリル系重合体中のスルホン酸基含有モノマー量が1〜4重量%である、請求項1記載のアクリロニトリル系合成繊維の製造方法。
- 該五酸化アンチモン水分散液中の、五酸化アンチモンの割合が20重量%以上である請求項1記載のアクリロニトリル系合成繊維の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003046900A JP2004256936A (ja) | 2003-02-25 | 2003-02-25 | 高難燃性アクリル系繊維の製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
JP2003046900A JP2004256936A (ja) | 2003-02-25 | 2003-02-25 | 高難燃性アクリル系繊維の製造法 |
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CN108286084A (zh) * | 2018-02-11 | 2018-07-17 | 张彪 | 一种高结晶聚丙烯腈增强聚丙烯腈复合纤维 |
JP7086069B2 (ja) | 2017-06-15 | 2022-06-17 | 株式会社カネカ | 水処理用多孔質膜 |
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2003
- 2003-02-25 JP JP2003046900A patent/JP2004256936A/ja active Pending
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