JPH11343346A - 熱硬化性オキセタン組成物およびその硬化方法ならびに該方法により得られる硬化物 - Google Patents

熱硬化性オキセタン組成物およびその硬化方法ならびに該方法により得られる硬化物

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JPH11343346A
JPH11343346A JP10149472A JP14947298A JPH11343346A JP H11343346 A JPH11343346 A JP H11343346A JP 10149472 A JP10149472 A JP 10149472A JP 14947298 A JP14947298 A JP 14947298A JP H11343346 A JPH11343346 A JP H11343346A
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JP10149472A
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Hidemasa Okamoto
秀正 岡本
Yoshiyuki Miwa
孔之 三輪
Masaru Kunimura
勝 国村
Tsutomu Funakoshi
勉 船越
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Ube Corp
Original Assignee
Ube Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、機械的性質、電気的性質、接着
性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などに優れ、塗料、コー
ティング剤、接着剤、電気絶縁材料、半導体封止材料、
土木建築材料などの用途分野に、エポキシ樹脂の代替品
として有用な新規な硬化物製造用の熱硬化性オキセタン
組成物、該組成物の硬化方法、およびその方法によって
得られる新規な硬化物を提供する。 【解決手段】 本発明は、反復構造単位の側鎖に1個の
オキセタン環を有する重合体と、分子中に2または3個
のチオール基を有する化合物と、場合によりさらに第四
オニウム塩とからなる熱硬化性オキセタン組成物、該組
成物を無溶媒状態下では重合体の融点または酸無水物の
融点のいずれか低い方の温度以上、300℃以下の温度
で、また、反応溶媒中では50〜300℃の温度で、付
加反応を繰り返し行わしめて得られる三次元網目構造を
有する新規な硬化物、および、その製造方法に関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規な硬化物製造
用の、オキセタン環を側鎖に有する重合体とチオール化
合物とを含む熱硬化性オキセタン組成物、該組成物の硬
化方法、およびその方法により得られる新規な硬化物に
関する。さらに詳しくは、反復構造単位の側鎖に1個の
オキセタン環を有する重合体と、分子中に2または3個
のチオール基を有する化合物とを含み、好ましくはこれ
ら重合体および化合物に加えてさらに第四オニウム塩を
含み、加熱することによって新規な硬化物を製造し得る
熱硬化性オキセタン組成物;触媒としての第四オニウム
塩の存在下または不存在下、前記熱硬化性オキセタン組
成物を、無溶媒状態下では前記重合体の融点もしくは前
記チオール化合物の融点のいずれか低い方の温度以上、
かつ300℃以下の温度に、また、反応溶媒中では50
〜300℃の温度に加熱して、前記重合体と前記チオー
ル化合物との付加反応を繰り返し行わしめることからな
る前記熱硬化性オキセタン組成物の硬化方法;および該
硬化方法によって製造される新規な硬化物に関する。
【0002】本発明の熱硬化性オキセタン組成物は、熱
または熱および第四オニウム塩触媒の作用を受けて分子
間架橋による硬化反応(前記反復構造単位の側鎖に1個
のオキセタン環を有する重合体と前記チオール化合物と
の付加反応の繰り返し)を起こし、不溶不融の三次元網
目構造の新規な硬化物を形成することにより、優れた機
械的性質(引張強さ、硬さなど)、電気的性質(電気絶
縁性など)、接着性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などを
示すものであり、エポキシ樹脂の代替品として、塗料や
コーティング剤、接着剤、電気絶縁材料、ICや超LS
I封止材料、積層板およびその他の電気・電子部品、コ
ンクリート構造物の補修、新旧コンクリートの打継、補
強鋼板の接着、各種ライニングなどの土木建築用途、複
合材料用途などの分野への使用が大いに期待できる。
【0003】
【従来の技術】4員環の環状エーテル化合物であるオキ
セタンは、炭素−酸素間の結合が分極していることから
高い反応性を示し、ルイス酸などを反応開始剤に用いた
オキセタンの開環重合(S.Inoue and T.Aida,Ring Open
ing Polymerization,K.J.Ivinand T.Saegusa,Eds.,Else
vier,London,1984,Vol.1,pp.185〜298 など参照)や、
トリアルキルアルミニウム−水反応生成物を触媒として
用いたオキシメチルオキセタンのトリメチルシリルエー
テルの開環重合(特開平2−29429号公報参照)な
どが報告されている。
【0004】また最近では、カチオン重合におけるオキ
セタンの高い反応性を利用し、カチオン性光重合開始剤
の存在下での光カチオン重合も報告されている。例え
ば、特開平6−16804号公報には、下記式(II)
【0005】
【化4】
【0006】(式中、R3 は、水素原子、フッ素原子、
1価の炭化水素基、1価のフッ素置換炭化水素基などで
あり、R4 は、線状または分岐状アルキレン基、線状ま
たは分岐状ポリ(アルキレンオキシ)基、ケイ素含有
基、芳香族環含有炭化水素基などの2〜4価の多価基で
あり、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、mは、
2、3または4である)で示される3−置換オキセタン
モノマーと、トリアリールスルホニウム塩などのカチオ
ン性光重合開始剤との混合物を紫外線に暴露することを
特徴とする、前記3−置換オキセタンモノマーを含む光
硬化性オキセタン組成物、これらのオキセタンモノマー
の硬化方法、および該硬化方法によって得られる架橋プ
ロピルオキシポリマーが開示されている。
【0007】しかしながら、有機化学反応のなかでオキ
セタン化合物の付加反応を応用した報告例をみると、オ
キセタン化合物とアシルクロライドとの付加反応(K.Sa
to,A.Kameyama and T.Nishikubo,Macromolecules,25
1198(1992)を参照)や、オキセタン化合物と活性エステ
ルとの付加反応(T.Nishikubo and S.Kazuya,Chem.Let
t.,697(1991)を参照)が報告されているにすぎない。
【0008】そして、オキセタン化合物を用いた高分子
の合成を幅広く展開することを目的として、触媒に第四
オニウム塩やクラウンエーテル錯体を用いてビスオキセ
タン化合物とビスアシルハライドとの重付加反応につい
て検討を行った報告も幾つかなされている(A.Kameyam
a,Y.Yamamoto and T.Nishikubo,J.Polym.Sci.,Part A:P
olym.Chem.,31, 1639〜 1641(1993)およびA.Kameyam
a,Y.Yamamoto andT.Nishikubo,Macromol.Chem.Phys.,
197,1147 〜1157(1996)」などを参照)。これらの報告
例によれば、この重付加反応は、前記の触媒を用いると
穏和な条件下で速やかに進行し、側鎖に反応性クロロメ
チル基を有するポリエステルが高収率で合成できること
が明らかにされている。
【0009】一方、四員環化合物であるオキセタンとチ
オール化合物との付加反応、特にこれを用いた高分子の
合成に関して、本出願人は、分子中にx個のオキセタン
環を有するオキセタン化合物の少なくとも1種と、分子
中にy個のチオール基を有するチオール化合物の少なく
とも1種と、場合によりさらに触媒としての第四オニウ
ム塩との混合物(ここにxは2、3または4であり、y
は2または3である。ただし、xが2のときyは3であ
り、xが3または4のときyは2または3である)から
なる熱硬化性オキセタン組成物;該熱硬化性オキセタン
組成物を、無溶媒状態下では前記オキセタン化合物の融
点もしくは前記チオール化合物の融点のいずれか低い方
の温度以上、かつ300℃以下の温度に加熱して、ま
た、反応溶媒中では50〜300℃の温度に加熱して、
前記オキセタン化合物と前記チオール化合物との付加反
応を繰り返し行わしめることによる硬化物の製造方法;
および、該製造方法により得られる分子間架橋された三
次元網目構造を有する不溶不融の新規な熱硬化物につい
て、先に報告した(特願平10−3093号明細書を参
照)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、オキセ
タン化合物とチオール化合物との付加反応を応用した高
分子合成の更なる展開として、例えば、反復構造単位の
側鎖に1個のオキセタン環を有する重合体と分子中に2
個以上のチオール基を有するチオール化合物との付加反
応の繰り返しによる三次元網目構造の熱硬化物を製造す
ることに関する研究報告は未だ皆無であった。本発明の
目的は、優れた機械的性質、電気的性質、接着性、耐熱
性、耐湿性、耐薬品性などを示すことによってエポキシ
樹脂の代替品としての利用が大いに期待できる新規な硬
化物製造用の、オキセタン環を側鎖に有する重合体と分
子中に2または3個のチオール基を有するチオール化合
物と場合によってはさらに第四オニウム塩とを含む熱硬
化性オキセタン組成物、該組成物の硬化方法、およびそ
の方法によって得られる新規な硬化物を提供することで
ある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために、オキセタン環の新しい反応の開発
とその高分子合成への展開を目的として、反復構造単位
の側鎖に1個のオキセタン環を有する重合体と分子中に
2個以上のチオール基を有するチオール化合物との付加
反応について鋭意検討を重ねた結果、触媒としての第四
オニウム塩の存在下または不存在下に、前記重合体と前
記分子中に2または3個のチオール基を有するチオール
化合物との混合物からなる熱硬化性オキセタン組成物
を、無溶媒状態下では前記重合体の融点もしくは前記チ
オール化合物の融点のいずれか低い方の温度以上、かつ
300℃以下の温度に、また、反応溶媒中では50〜3
00℃の温度に加熱して、前記重合体の側鎖中に存在す
るオキセタン環の開環と該開環部分への前記チオール化
合物の付加反応を繰り返し行わしめることにより、分子
間架橋された三次元網目構造を有する不溶不融の新規な
熱硬化物が得られることを見い出し、本発明を完成する
に至った。
【0012】すなわち、請求項1に記載の第1の発明
は、下記一般式(I)
【化5】
【0013】(式中、R1 は、水素原子またはメチル基
を示し、R2 は、水素原子または1〜6個の炭素原子を
有するアルキル基を示す)で表わされる反復構造単位か
らなる重合体(A)の少なくとも1種と、分子中に2ま
たは3個のチオール基を有する化合物(B)の少なくと
も1種とからなる熱硬化性オキセタン組成物を提供する
ことで達成できる。請求項2に記載の第2の発明は、前
記一般式(I)(式中、R1 は、水素原子またはメチル
基を示し、R2 は、水素原子または1〜6個の炭素原子
を有するアルキル基を示す)で表わされる反復構造単位
からなる重合体(A)の少なくとも1種と、前記分子中
に2または3個のチオール基を有する化合物(B)の少
なくとも1種との混合物を加熱することを特徴とする硬
化物の製造方法を、また請求項3に記載の第3の発明
は、前記一般式(I)(式中、R1 は、水素原子または
メチル基を示し、R2 は、水素原子または1〜6個の炭
素原子を有するアルキル基を示す)で表わされる反復構
造単位からなる重合体(A)の少なくとも1種と、前記
分子中に2または3個のチオール基を有する化合物
(B)の少なくとも1種との混合物を加熱して得られる
硬化物を、それぞれ、提供することで達成できる。
【0014】請求項4に記載の第4の発明は、前記第1
の発明に係わる重合体(A)の少なくとも1種および化
合物(B)の少なくとも1種と、第四オニウム塩とを含
んでなる熱硬化性オキセタン組成物を提供することで達
成できる。そして、請求項5に記載の第5の発明は、重
合体(A)の少なくとも1種と化合物(B)の少なくと
も1種との混合物を第四オニウム塩の存在下に加熱する
ことを特徴とする前記第2の発明に係わる硬化物の製造
方法を、請求項6に記載の第6の発明は、前記第3の発
明に係わる重合体(A)の少なくとも1種および化合物
(B)の少なくとも1種と、第四オニウム塩との混合物
を加熱して得られる硬化物を、それぞれ、提供すること
で達成できる。
【0015】また、請求項7に記載の第7の発明は、重
合体(A)の少なくとも1種と化合物(B)の少なくと
も1種との混合物を、無溶媒状態下、該重合体(A)の
融点または該化合物(B)の融点のいずれか低い方の温
度以上、かつ300℃以下の温度に加熱することを特徴
とする前記第2の発明に係わる硬化物の製造方法を、請
求項8に記載の第8の発明は、重合体(A)の少なくと
も1種と化合物(B)の少なくとも1種との混合物を、
反応溶媒中、50〜300℃の温度に加熱することを特
徴とする前記第2の発明に係わる硬化物の製造方法を、
請求項9に記載の第9の発明は、重合体(A)の少なく
とも1種と化合物(B)の少なくとも1種との混合物を
第四オニウム塩の存在下に加熱することを特徴とする前
記第7または第8の発明に係わる硬化物の製造方法を、
それぞれ、提供することで達成できる。
【0016】さらにまた、請求項10に記載の第10の
発明、請求項11に記載の第11の発明および請求項1
2に記載の第12の発明は、それぞれ、第四オニウム塩
がテトラn−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフ
ェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホ
ニウムブロマイドおよびテトラフェニルホスホニウムア
イオダイドからなる群から選ばれる第四ホスホニウム塩
であることを特徴とする、前記第4の発明に係わる熱硬
化性オキセタン組成物、前記第5または第9の発明に係
わる硬化物の製造方法および前記第6の発明に係わる硬
化物を提供することで達成できる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を詳しく説明す
る。本発明の熱硬化性オキセタン組成物は、反復構造単
位の側鎖に1個のオキセタン環を有する重合体(A)の
少なくとも1種と、分子中に2または3個のチオール基
を有するチオール化合物(B)の少なくとも1種との混
合物、または、前記重合体(A)の少なくとも1種と前
記チオール化合物(B)の少なくとも1種と第四オニウ
ム塩との混合物であり、後述する硬化方法によって本発
明の新規な硬化物を製造し得るものである。
【0018】そこでまず、本発明の熱硬化性オキセタン
組成物の一成分である前記重合体(A)について述べ
る。本発明に用いられる前記重合体(A)は、前述した
ように、前記一般式(I)(式中、R1 は、水素原子ま
たはメチル基を示し、R2 は、水素原子または1〜6個
の炭素原子を有するアルキル基を示す)で表わされる反
復構造単位からなる重合体、すなわち、反復構造単位の
側鎖に1個のオキセタン環を有する重合体である。従っ
て、前記重合体(A)は、下記一般式(III)
【0019】
【化6】
【0020】(ただし式中、R1 は、前記一般式(I)
におけるR1 と同じく、水素原子またはメチル基を示
し、R2 は、前記一般式(I)におけるR2 と同じく、
水素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基
を示し、nは2〜3000、好ましくは10〜2000
の整数である)で表わされる高分子化合物である。1〜
6個の炭素原子を有するアルキル基を例示すると、メチ
ル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n
−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ter
t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオ
ペンチル基、n−ヘキシル基およびイソヘキシル基など
の直鎖または分岐鎖のアルキル基が挙げられる。上記の
反復構造単位の側鎖に1個のオキセタン環を有する重合
体(A)としては、前記一般式(III)において、R1
よびR2 が共に水素原子であるポリ(3−オキセタニ
ル)メチルアクリレート、R1 が水素原子で、R2 がメ
チル基であるポリ(3−メチル−3−オキセタニル)メ
チルアクリレート、R1 が水素原子で、R2 がエチル基
であるポリ(3−エチル−3−オキセタニル)メチルア
クリレート、R1 がメチル基で、R2 が水素原子である
ポリ(3−オキセタニル)メチルメタクリレート、R1
およびR2 が共にメチル基であるポリ(3−メチル−3
−オキセタニル)メチルメタクリレートおよびR1 がメ
チル基で、R2 がエチル基であるポリ(3−エチル−3
−オキセタニル)メチルメタクリレートの使用が好まし
く、これらの中でもポリ(3−メチル−3−オキセタニ
ル)メチルアクリレート、ポリ(3−エチル−3−オキ
セタニル)メチルアクリレート、ポリ(3−メチル−3
−オキセタニル)メチルメタクリレートおよびポリ(3
−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレートの
使用が特に好ましい。
【0021】本発明に用いられる上述したような前記一
般式(III)で示される、反復構造単位の側鎖に1個のオ
キセタン環を有する重合体(A)は、次のようにして製
造され得る。例えば、まず、下記一般式(IV)
【0022】
【化7】
【0023】(ただし、式中、R5 は、前記一般式
(I)におけるR2 と同じく、水素原子または1〜6個
の炭素原子を有するアルキル基を示す)で表わされる3
−アルキル−3−ヒドロキシメチルオキセタンを、下記
反応式(1)のように、パティソン(Pattison)(J.A
m.Chem.Soc.,1957,79を参照)の方法により、1,3
−ジオールから合成する。
【0024】
【化8】
【0025】具体的には、前記一般式(IV)においてR
5 がエチル基である3−エチル−3−ヒドロキシメチル
オキセタンは、トリメチロールプロパンと炭酸ジエチル
から上記パティソンの方法により得られる。
【0026】次に、上記得られた3−アルキル−3−ヒ
ドロキシメチルオキセタンとメチル(メタ)アクリレー
トとから、下記反応式(2)に示す方法で、オキセタン
環を側鎖に有する重合体(A)の前駆体である単量体
(V)を合成する。
【0027】
【化9】
【0028】ただし、上記反応式(2)において、R5
は、前記一般式(IV)におけるR5と同じく、水素原子
または1〜6個の炭素原子を有するアルキル基を示し、
6は、前記一般式(I)におけるR1 と同じく、水素
原子またはメチル基を示す。
【0029】続いて、ラジカル重合開始剤を使用して、
上記単量体(V)をラジカル重合することによって、前
記一般式(III)で表わされる反復構造単位の側鎖に1個
のオキセタン環を有する重合体(A)が得られる。重合
条件は、通常用いられるラジカル重合条件で良く、40
〜120℃、好ましくは50〜90℃の温度で、1〜2
0時間、好ましくは3〜8時間重合させればよい。ま
た、ラジカル重合開始剤としては、例えば、メチルエチ
ルケトンパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイ
ド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,
5−トリメチルシクロヘキサン、n−ブチル−4,4−
ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,5−ジ
メチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、
ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチル
パーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジ
メチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサ
ン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオ
キシ)ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイドなどの
有機過酸化物類、あるいは例えば、1,1’−アゾビス
(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−〔(1
−シアノ−1−メチルエチル)アゾ〕ホルムアミド、2
−フェニルアゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチル−バ
レロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロ
ニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、
2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタ
ン)、2,2’−アゾビス(2−アセトキシプロパ
ン)、2,2’−アゾビス(2−アセトキシブタン)な
どのアゾ系化合物が挙げられ、これらは単独または2種
以上組み合わせて用いられる。なお、これらラジカル重
合開始剤は、重合条件に応じ所望のものを適宜選択でき
る。
【0030】本発明では、前記熱硬化性オキセタン組成
物を構成する、反復構造単位の側鎖に1個のオキセタン
環を有する重合体(A)として、前述したような前記一
般式(I)で表わされる反復構造単位からなる重合体
(A)の具体例から選ばれる1種類が単独使用されても
よく、また、これらの2種類以上が併用されたものであ
ってもよい。
【0031】一方、本発明の熱硬化性オキセタン組成物
のもう一つの構成成分であるチオール化合物(B)は、
前述したように、分子中に2または3個のチオール基を
有する化合物である。分子中に2個のチオール基を有す
るチオール化合物としては、下記一般式(VI)
【0032】
【化10】
【0033】(ただし、式中、R7 は、オルソフェニレ
ン基、メタフェニレン基、パラフェニレン基、
【0034】
【化11】
【0035】および
【0036】
【化12】
【0037】からなる群から選択され、R8 、R9 およ
びR10は、それぞれ、1〜4個の炭素原子を有するアル
キル基であり、R11およびR12は水素原子または1〜4
個の炭素原子を有するアルキル基であり、X1 は、CH
2 、C(CH3 2 、O、Sおよび
【0038】
【化13】
【0039】からなる群から選択され、aは2〜18の
整数であり、R8 とR9 とR10、およびR11とR12は、
それぞれ、互いに同一でも異なっていてもよい)で示さ
れるジチオールが挙げられる。
【0040】ここに、1〜4個の炭素原子を有するアル
キル基を例示すると、メチル基、エチル基、n−プロピ
ル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、
sec−ブチル基およびtert−ブチル基などが挙げ
られる。したがって、上記ジチオールとして具体的に
は、ジチオカテコール、ジチオレゾルシン、ジチオヒド
ロキノン、2,3−ジメルカプトトルエン、2,4−ジ
メルカプトトルエン、2,5−ジメルカプトトルエン、
2,6−ジメルカプトトルエン、3,4−ジメルカプト
トルエン、2,3−ジメルカプトフェニルエタン、2,
4−ジメルカプトフェニルエタン、2,5−ジメルカプ
トフェニルエタン、2,6−ジメルカプトフェニルエタ
ン、3,4−ジメルカプトフェニルエタン、2,2’−
ビス(4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパ
ン、ビフェニル−4,4’−ジチオール、4,4’−ビ
スメルカプトフェニルメタン、2,2’−ビス(4−メ
ルカプトフェニル)プロパン、4,4’−ビスメルカプ
トフェニルエーテル、4,4’−ビスメルカプトフェニ
ルスルフィド、4,4’−ビスメルカプトフェニルスル
ホキシド、エチレンジチオグリコール、プロピレンジチ
オグリコール、トリメチレンジチオグリコール、1,2
−ブタンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,
4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、
1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオ
ール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジ
チオール、1,10−デカンジチオール、1,11−ウ
ンデカンジチオール、1,12−ドデカンジチオール、
1,13−トリデカンジチオール、1,14−テトラデ
カンジチオール、1,15−ペンタデカンジチオール、
1,16−ヘキサデカンジチオール、1,17−ヘプタ
デカンジチオール、1,18−オクタデカンジチオー
ル、2−アミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジ
ン、2−ジメチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−
トリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプ
ト−s−トリアジン、2−ジ−n−プロピルアミノ−
4,6−ジメルカプト−s−トリアジンおよび2−ジ−
n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリア
ジンなどが挙げられる。
【0041】一方、分子中に3個のチオール基を有する
チオール化合物として、例えば、トリチオグリセリン、
トリチオピロガロール、トリチオフロログルシンおよび
2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジンなどのト
リチオールが挙げられる。
【0042】本発明においては、上記チオール化合物の
中でも、1,9−ノナンジチオールおよび2−ジ−n−
ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン
などのジチオールや、トリチオピロガロールおよび2,
4,6−トリメルカプト−s−トリアジンなどのトリチ
オールの使用が好ましい。また、本発明では、前記熱硬
化性オキセタン組成物を構成する分子中に2または3個
のチオール基を有する化合物(B)として、前述の分子
中に2個のチオール基を有するジチオール、あるいは、
前述の分子中に3個のチオール基を有するトリチオール
から選ばれる1種類が単独使用されてもよく、また、こ
れらジチオールおよびトリチオールの中から適当な2種
類以上が併用されてもよい。
【0043】ところで、本発明では、前述の一般式
(I)(ただし、式中、R1 は、水素原子またはメチル
基を示し、R2 は、水素原子または1〜6個の炭素原子
を有するアルキル基を示す)で表わされる反復構造単位
からなる重合体(A)、すなわち、前述の一般式(III)
(ただし、式中、R1 およびR2 は、それぞれ、前記一
般式(I)におけるR1 およびR2 と同じく、nは2〜
3000、好ましくは10〜2000の整数である)で
示される、反復構造単位の側鎖に1個のオキセタン環を
有する重合体(A)の少なくとも1種と、前述の分子中
に2または3個のチオール基を有するチオール化合物
(B)の少なくとも1種との混合物を少なくとも含んで
なる熱硬化性オキセタン組成物を、後述する方法で加熱
することによって硬化反応を行わしめ、硬化物を製造す
るのである。この硬化反応は、前述したように、前記重
合体(A)と前記チオール化合物(B)との付加反応が
繰り返し進行することによって達成される。前記付加反
応は、下記反応式(3)に示したように、前記重合体
(A)の反復構造単位の側鎖中に含まれるオキセタン環
への前記チオール化合物、すなわち前記化合物(B)の
攻撃による開環と該開環部分への前記化合物(B)の付
加反応によって進行するが、該反応は、前記重合体
(A)の反復構造単位の側鎖中に含まれるオキセタン環
1個に対して前記化合物(B)中に含まれるチオール基
1個が反応する形で行われる。
【0044】
【化14】
【0045】なお、前記反応式(3)において、R
1 は、前記一般式(III)におけるR1 と同様、水素原子
またはメチル基であり、R2 は、前記一般式(III)にお
けるR2と同様、水素原子または1〜6個の炭素原子を
有するアルキル基である。また、nは、前記一般式(II
I)におけるnと同じ意味を表わす。
【0046】以上述べたように、前記付加反応におい
て、前記重合体(A)の反復構造単位の側鎖中に含まれ
るオキセタン環1個に対して前記化合物(B)中に含ま
れるチオール基1個が反応することになるから、本発明
における前記重合体(A)に対する前記化合物(B)の
化学量論量は、前記重合体(A)の反復構造単位の側鎖
中に含まれるオキセタン環1個、すなわち、1当量に対
して、前記化合物(B)中に含まれるチオール基が1
個、すなわち、1当量となるような量である。そこで、
この化学量論量を前記重合体(A)の反復構造単位の側
鎖中に含まれるオキセタン環1当量に対する前記化合物
(B)のモル数として求めると、以下のようになる。例
えば、前記化合物(B)が分子中に2個のチオール基を
有するジチオールであるとき、前記重合体(A)の反復
構造単位の側鎖中に含まれるオキセタン環1当量に対し
て該ジチオールが0.5モルである。また、前記化合物
(B)が分子中に3個のチオール基を有するトリチオー
ルであるとき、前記重合体(A)の反復構造単位の側鎖
中に含まれるオキセタン環1当量に対して該トリチオー
ルが1/3モルである。本発明では、前記重合体(A)
に対し、上記化学量論量の0.5〜2倍量、好ましくは
0.7〜1.5倍量の前記化合物(B)を使用すること
が望ましい。前記化合物(B)の使用量が前記化学量論
量の0.5倍より少ないと、前記重合体(A)と前記化
合物(B)との付加反応が十分進行せず、得られる硬化
物の架橋度が低く、優れた機械的性質、電気的性質、接
着性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などを示す本発明の目
的硬化物が得られない。また、前記化合物(B)の使用
量が前記化学量論量の2倍を越えると、得られた硬化物
中に前記化合物(B)が未反応のまま大量に残存するこ
とになるので好ましくない。
【0047】すなわち、本発明の一つの態様である熱硬
化性オキセタン組成物は、前述したように、前記一般式
(III)(ただし、式中、R1 は、水素原子またはメチル
基を示し、R2 は、水素原子または1〜6個の炭素原子
を有するアルキル基を示し、nは2〜3000、好まし
くは10〜2000の整数である)で示される反復構造
単位の側鎖に1個のオキセタン環を有する重合体である
ポリオキセタン化合物(A)の少なくとも1種と、前記
分子中に2または3個のチオール基を有するチオール化
合物(B)の少なくとも1種とを上述したような割合で
配合してなる混合物である。
【0048】次に、本発明のもう一つの態様である硬化
方法は、上記熱硬化性オキセタン組成物を加熱し、熱硬
化させることを特徴とするものであり、詳細は、以下に
述べる通りである。本発明において、前記重合体(A)
の反復構造単位の側鎖中に含まれるオキセタン環への前
記化合物(B)中に含まれるチオール基の攻撃による該
オキセタン環の開環と該開環部分への前記化合物(B)
の付加反応(以下単に「前記重合体(A)と前記化合物
(B)との付加反応」という)は、無溶媒状態下または
反応溶媒中で行われる。反応溶媒を用いる場合、前記重
合体(A)と前記化合物(B)との付加反応が後述する
ように高温下で行われるため、本発明の反応溶媒は、高
沸点であることが望ましく、さらに前記重合体(A)お
よび/または前記化合物(B)を溶解もしくは膨潤する
作用を有し、かつ、これら重合体(A)および化合物
(B)と反応性を有しないものが用いられ得る。
【0049】上記反応溶媒としては、N,N−ジメチル
ホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミ
ド(DMAC)およびヘキサメチルリン酸トリアミド
(HMPA)などのアミド化合物、ジエチレングリコー
ルエチルエーテル、ジグライム(ジエチレングリコール
ジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリ
コールジメチルエーテル)、アニソールおよびフェネト
ールなどのエーテル化合物、o−ジクロロベンゼン、m
−ジクロロベンゼンおよび3,4−ジクロロトルエンな
どのハロゲン化芳香族炭化水素、ニトロベンゼン、ジメ
チルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、テトラメ
チル尿素およびN−メチル−2−ピロリドン(NM
P)、あるいはこれらの溶媒の2種以上の混合物など、
無極性もしくは極性の低い溶媒から極性の高い溶媒まで
種々の溶媒を好適に用いることができるが、これらの中
でもDMF、DMAC、HMPA、DMSOおよびNM
Pなどの使用が好ましい。
【0050】反応溶媒の使用量は、前記重合体(A)お
よび/または前記化合物(B)を溶解もしくは膨潤する
に足る量以上であればよく、使用される反応溶媒の種類
はもちろんのこと、前記重合体(A)や前記化合物
(B)の仕込み量、後述する触媒の種類と使用量、反応
温度および反応時間など、前記重合体(A)と前記化合
物(B)との間で繰り返し進行される付加反応の条件、
さらには、これら付加反応に際して、前記重合体(A)
および/または前記化合物(B)を反応溶媒中に溶解す
るのか、それとも反応溶媒で膨潤するのかにより異なる
ので、一概に規定することは困難である。したがって、
例えば、前記反応溶媒としてHMPA、DMSO、DM
ACおよびNMPなどの極性溶媒を使用する場合、反応
溶媒の使用量は、前記重合体(A)の1〜10倍量(容
量/重量比)が好ましい。該使用量が1倍量未満では、
前記重合体(A)および/または前記化合物(B)の上
記極性反応溶媒への溶解が十分ではなく、反応が不均一
系で進行するようになるので、均一な付加反応が行われ
ず、得られる硬化物の品質にばらつきが生じることがあ
る。一方、10倍量を越える上記極性反応溶媒を使用し
ても、前記重合体(A)および/または前記化合物
(B)を溶解もしくは膨潤して付加反応を均一系で進行
せしめるという反応溶媒の効果はすでに達成されてしま
っているので、それ以上の効果は期待できないばかり
か、所望により硬化物から反応溶媒を除去・回収するこ
とが必要となる場合、反応溶媒の反応系からの回収に必
要以上のエネルギーを消費するなど、採算上好ましくな
い。
【0051】また、本発明の硬化方法では、前記重合体
(A)と前記化合物(B)との付加反応が触媒としての
第四オニウム塩の存在下または不存在下に行われ得る。
該触媒は、前記反応式(3)に示したような前記重合体
(A)と前記化合物(B)との付加反応の繰り返しによ
る三次元網目構造を有する不溶不融の新規な硬化物の生
成を促進する作用を有するものである。
【0052】本発明の硬化方法における触媒の第四オニ
ウム塩は、下記一般式(VII)
【0053】
【化15】
【0054】(式中、R13〜R19は、互いに同一でも異
なっていてもよい水素原子、ヒドロキシアルキル基、ア
ルキル基、アリール基またはアルアルキル基を表わし、
これらがアルキル基もしくはアルアルキル基である場合
は、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状または環状の炭化
水素基である。M1 は、窒素原子、リン原子、砒素原子
またはアンチモン原子を表わし、M2 は、酸素原子、硫
黄原子、セレン原子または錫原子を表わし、そしてM3
は、ヨウ素原子を表わす。またX2 は、ハロゲン原子、
水酸基、アルコキシド、炭酸基、重炭酸基、リン酸二水
素基および重硫酸基からなる群より選ばれる1価の陰イ
オンを表わす)で示される化合物である。
【0055】具体的には、前記一般式(VII)において、
1 が窒素原子である場合のアンモニウム化合物、M1
がリン原子である場合のホスホニウム化合物、M1 が砒
素原子である場合のアルソニウム化合物、M1 がアンチ
モン原子である場合のスチボニウム化合物、M2 が酸素
原子である場合のオキソニウム化合物、M2 が硫黄原子
である場合のスルホニウム化合物、M2 がセレン原子で
ある場合のセレノニウム化合物、M2 が錫原子である場
合のスタンノニウム化合物、そして、M3 がヨウ素原子
である場合のヨードニウム化合物などが挙げられる。そ
して、上記のアンモニウム化合物の具体例として、テト
ラn−ブチルアンモニウムクロライド(TBAC)、テ
トラn−ブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)お
よびテトラn−ブチルアンモニウムアイオダイド(TB
AI)などのテトラn−ブチルアンモニウムハライド
(TBAX)が挙げられる。また、上記のホスホニウム
化合物の具体例としては、テトラn−ブチルホスホニウ
ムクロライド(TBPC)、テトラn−ブチルホスホニ
ウムブロマイド(TBPB)およびテトラn−ブチルホ
スホニウムアイオダイド(TBPI)などのテトラn−
ブチルホスホニウムハライド(TBPX)およびテトラ
フェニルホスホニウムクロライド(TPPC)、テトラ
フェニルホスホニウムブロマイド(TPPB)およびテ
トラフェニルホスホニウムアイオダイド(TPPI)な
どのテトラフェニルホスホニウムハライド(TPPX)
などが挙げられる。
【0056】本発明の硬化方法では、上述した第四オニ
ウム塩触媒の中でも、TBAC、TBABおよびTBA
IなどのTBAX、TBPC、TBPBおよびTBPI
などのTBPX、および、TPPC、TPPBおよびT
PPIなどのTPPXなどのアンモニウム化合物やホス
ホニウム化合物の使用が好ましく、耐熱性に優れたTB
PXやTPPXなどのホスホニウム化合物の使用が特に
好ましい。なお、本発明の硬化方法においては、触媒と
して上記第四オニウム塩の中から選ばれる2種以上を混
合して用いてもかまわない。
【0057】前記付加反応に必要な上記第四オニウム塩
触媒の量は、前記重合体(A)や前記化合物(B)の仕
込み量、無溶媒状態下で前記付加反応を行うか否か、反
応溶媒を使用した場合は反応溶媒の種類および使用量、
反応温度、反応圧力および反応時間などの付加反応の条
件などによって異なり、一概に限定できないが、本発明
の硬化方法における触媒の使用量は、前記重合体(A)
に対して30モル%以下、好ましくは2〜20モル%が
好適である。触媒の使用量を前記重合体(A)の使用量
に対して30モル%より多くしても、該触媒を多量に用
いることによる好ましい反応促進効果の向上はほとんど
認められないので、経済性の面からは好ましくない。な
お、触媒の使用量が前記重合体(A)に対して2モル%
未満では、前記重合体(A)と前記化合物(B)との付
加反応が十分進行せずに、架橋度の高い硬化物を高収率
で得ることができなくなることがある。
【0058】したがって、本発明の一つの態様である前
記熱硬化性オキセタン組成物は、前記重合体(A)と前
記化合物(B)との付加反応を触媒の存在下に行う場
合、前記一般式(III)で示される、反復構造単位の側鎖
に1個のオキセタン環を有する重合体であるポリオキセ
タン化合物、すなわち、前記重合体(A)の少なくとも
1種と、分子中に2個のチオール基を有するジチオール
または分子中に3個のチオール基を有するトリチオー
ル、すなわち、前記化合物(B)の少なくとも1種と、
触媒としての上記第四オニウム塩とを前述したような割
合で配合してなる混合物でもある。
【0059】本発明の硬化方法においては、前記重合体
(A)と前記化合物(B)との付加反応の繰り返し、す
なわち、硬化反応を反応溶媒中均一系で行う場合、前記
重合体(A)および/または前記化合物(B)を前記反
応溶媒中に溶解した状態で、あるいは、前記反応溶媒で
膨潤させた状態で前記硬化反応を行う必要がある。そし
てそのためには、前記硬化反応の進行中、前記反応溶媒
を液体状態に維持すべきである。一方、前記硬化反応を
無溶媒状態下で行う場合は、前記硬化反応の進行中、前
記重合体(A)および/または前記化合物(B)を溶融
状態に維持すべきである。したがって、反応温度は、前
記硬化反応を無溶媒状態下に行う場合、前記重合体
(A)および/または前記化合物(B)が溶融状態であ
るような温度範囲にあるべきであり、少なくとも前記重
合体(A)の融点または前記化合物(B)の融点のいず
れか低い方の温度以上であるべきである。一方、前記硬
化反応を前記反応溶媒中で行う場合には、前記重合体
(A)および/または前記化合物(B)が前記反応溶媒
中に溶解した状態、あるいは、前記反応溶媒で膨潤され
た状態となるように、少なくとも50℃以上である必要
がある。しかしながら、これらの場合、反応温度が30
0℃を越えると、本発明の硬化方法によって得られる硬
化物の望ましくない熱分解反応を併発するようになるの
で、本発明の硬化反応における反応温度は、該硬化反応
を無溶媒状態下で行う場合、前記重合体(A)の融点ま
たは前記化合物(B)の融点のいずれか低い方の温度以
上、かつ、300℃以下の範囲であること、そして、該
硬化反応を前記反応溶媒中で行う場合は、50〜300
℃の範囲であることが好ましい。
【0060】本発明の硬化方法では、前記重合体(A)
と前記化合物(B)との付加反応において反応圧力は特
に制限されるものではなく、減圧、常圧および加圧のい
ずれの状態下においても実施可能である。しかし、加圧
下で実施する場合は、製造設備に耐圧性能が要求される
し、また、減圧下で実施する場合には、減圧設備が必要
になるなど、経済性の面からは常圧下で実施するのが好
ましい。しかし、前記反応溶媒中で、前記重合体(A)
と前記化合物(B)との付加反応の繰り返し、すなわ
ち、硬化反応を行う場合は、前述したように、該硬化反
応の進行中、前記反応溶媒が液体状態を維持し得るよう
な圧力条件が保持されなければならない(したがって、
前記硬化反応が加圧条件下で行われる場合もあり得る)
ことは言うまでもない。また、前記硬化反応は、高温で
ある程反応速度が速いので、得られる硬化物の架橋度を
高める必要がある場合、反応温度は、前述の範囲内でで
きるだけ高温にした方がよい。しかしながら、前記硬化
反応の反応時の温度が高すぎると、反応が不均一にな
り、得られる硬化物の熱的性質や機械的性質などの品質
に悪影響が生じたり、使用する反復構造単位の側鎖に1
個のオキセタン環を有する重合体(A)、チオール化合
物(B)および反応溶媒などが熱的に不安定となったり
する恐れがある。したがって、このような場合、反応系
を減圧にして、前記反応温度を低めに維持することが好
ましい。
【0061】本発明の硬化方法における反応時間につい
ても、前記重合体(A)および前記化合物(B)の仕込
み量、無溶媒状態下で付加反応を行うか否か、反応溶媒
を使用した場合は前記反応溶媒の種類および使用量、前
記触媒の種類および使用量、ならびに、反応温度などの
付加反応の条件によって異なるが、1〜70時間程度、
好ましくは2〜50時間程度が好適である。反応時間が
約1時間より短いと、前記重合体(A)と前記化合物
(B)との付加反応がほとんど進行しないし、また、約
70時間より長くなると、得られる硬化物が長時間の熱
履歴を受けて、熱劣化による品質の低下を招く場合があ
り、いずれの場合も好ましくない。
【0062】また、本発明の硬化方法における付加反応
は、得られる硬化物の望ましくない酸化などによる劣化
を防止するために、不活性ガス雰囲気下に行われること
が好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガスの他、アル
ゴンガスやヘリウムガスなどの希ガスが好適に使用され
得る。
【0063】そして、本発明では、前記重合体(A)と
前記化合物(B)との付加反応の繰り返しによる硬化物
の製造方法、すなわち、硬化方法は、特に限定されるも
のではなく、常法に従って行えばよい。例えば、所望に
より所定量の前記重合体(A)および前記化合物(B)
の少なくとも一方を所定量の前記反応溶媒に溶解もしく
は膨潤した後、これら重合体(A)および化合物(B)
を必要に応じて適当な加熱装置を備えた反応容器に供給
し、さらに、所望により触媒として所定量の前記第四オ
ニウム塩を添加し、常圧、あるいは、所定の減圧または
加圧下に所定温度に加熱し、所定時間反応を行えばよ
い。この場合、前記化合物(B)は、所定量を一度に加
えることなく、適宜量に分割して加えることも可能であ
る。また、前記第四オニウム塩触媒も、反応系に所定量
を一度に添加してもよく、または、適当な回数に分割し
て添加してもよい。
【0064】本発明の硬化方法では、以上のようにし
て、前記重合体(A)の少なくとも1種と前記化合物
(B)の少なくとも1種との混合物、または、前記重合
体(A)の少なくとも1種、前記化合物(B)の少なく
とも1種および前記第四オニウム塩の混合物である前記
熱硬化性オキセタン組成物を適切な形状の離型性のある
反応容器に充填し、無溶媒状態下、あるいは前記反応溶
媒中、前述した反応温度で前述した反応時間加熱するこ
とにより、例えば前記反応式(3)に示したような前記
重合体(A)と前記化合物(B)との付加反応の繰り返
し、すなわち、硬化反応を行わしめた後、空冷、水冷な
どの常法により常温まで冷却して得られた反応混合物を
前記反応容器から取り出し、場合によっては続いて、熱
風乾燥、真空乾燥および凍結乾燥などの公知の方法によ
り100℃以下の温度で2〜16時間乾燥すればよい。
これにより、本発明のもう一つの態様である三次元網目
構造を有する不溶不融の新規な硬化物が成形品として得
られるのである。なお、前記重合体(A)と前記化合物
(B)とを出発原料とする硬化反応を前記反応溶媒中で
行う場合は、該硬化反応の終了後、得られた反応混合物
から前記反応溶媒を蒸発せしめ、次いで常温まで冷却
し、場合によっては続けて前記乾燥を行うことにより、
上記硬化物を得てもよいし、また、前記硬化反応の終了
後、得られた反応混合物を常温まで冷却し、前記反応溶
媒を含んだままの柔軟性のある硬化物として使用しても
かまわない。
【0065】本発明の熱硬化性オキセタン組成物は、使
用に際し、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、
公知の各種添加剤、例えば、無機充填剤、強化材、着色
剤、安定剤(熱安定剤、耐候性改良剤など)、増量剤、
粘度調節剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色
防止剤、抗菌剤、防黴剤、老化防止剤、帯電防止剤、可
塑剤、滑剤、発泡剤、離型剤などを添加・混合すること
ができる。上記着色剤としては、直接染料、酸性染料、
塩基性染料、金属錯塩染料などの染料、カーボンブラッ
ク、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカなどの無機
顔料およびカップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラ
キノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系、フタロシ
アニン系などの有機顔料などが挙げられる。また、上記
安定剤としては、ヒンダードフェノール系、ヒドラジン
系、リン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール
系、オキザリックアシッドアニリド系などの化合物が挙
げられる。さらにまた、上記無機充填剤としては、ガラ
ス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、アル
ミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒
化ホウ素繊維、窒化珪素繊維、塩基性硫酸マグネシウム
繊維、ホウ素繊維、ステンレス鋼繊維、アルミニウム、
チタン、銅、真鍮、マグネシウムなどの無機質および金
属繊維、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、錫、鉛、ステンレス
鋼、アルミニウム、金および銀などの金属粉末、木粉、
マグネシア、カルシアなどの酸化物、珪酸アルミニウ
ム、ケイソウ土、石英粉末、タルク、クレイ、各種金属
の水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ホ
ウ珪酸塩、アルミノ珪酸塩、チタン酸塩、塩基性硫酸
塩、塩基性炭酸塩およびその他の塩基性塩、ガラス中空
球、ガラスフレークなどのガラス材料、炭化珪素、窒化
アルミ、ムライト、コージェライトなどのセラミック、
およびフライアッシュやミクロシリカなどの廃棄物など
が挙げられる。
【0066】
【実施例】次に、実施例を述べて本発明をさらに詳しく
説明するが、本発明は、これら実施例によって何ら限定
を受けるものではない。なお、以下の合成例および実施
例において、原料の、反復構造単位の側鎖に1個のオキ
セタン環を有する重合体であるポリオキセタン化合物
(以下単に「ポリオキセタン化合物」という)、該ポリ
オキセタン化合物と所定のチオール化合物と所定の触媒
とを所定の割合で混合した熱硬化性オキセタン組成物
(以下単に「原料混合物」という)、および、生成物の
三次元網目構造を有する硬化物(以下単に「硬化物」と
いう)の特性は、それぞれ、下記の方法によって求め
た。
【0067】(1)ポリオキセタン化合物の数平均分子
量(Mn)および重量平均分子量(Mw) 下記条件により、ゲルパーミエーション(GPC)法に
よって測定した。 GPC測定装置:東ソー(株)製HLC−8020 カラム:Shodex KF−80M,2本 溶離液:THF 濃度:0.3重量/容量% 流量:1.0ml/min 標準試料:ポリメチルメタクリレート
【0068】(2)ポリオキセタン化合物の分子量分布
(Mw/Mn) 前記第(1)項で求められた重量平均分子量(Mw)を
同じく前記第(1)項で求められた数平均分子量(M
n)で除すことにより求めた。
【0069】(3)原料混合物および硬化物の赤外線吸
収スペクトル(IR) 原料混合物および硬化物について、それぞれ、(株)パ
ーキン−エルマー製1750型フーリエ赤外分光光度計
を用い、予め60℃で10時間以上減圧乾燥して水分を
除いた試料1mgをKBr(Merck社製)150m
gに混合し、60℃で10時間以上減圧乾燥して水分を
除去した後、加圧錠剤を形成して測定した。
【0070】(4)硬化物の溶媒溶解性 予め60℃で10時間以上減圧乾燥して水分を除いた硬
化物の試料0.5gを各種溶媒20ml中に添加し、激
しく攪拌した後静置し、各種溶媒への硬化物の溶解性を
目視により観察した。
【0071】また、以下の実施例において用いた試薬
は、それぞれ、下記の通りである。 (a)チオール化合物 2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s
−トリアジン(以下、「ジスネットDB」と略記)は、
三協化成(株)製の市販品(分子量:272.4、融
点:137℃以上(分解)、白色粉末)を使用した。ま
た、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン(以
下、「TMST」と略記)は、東京化成(株)製の市販
品(分子量:177.3、融点:300℃以上(分
解)、黄色粉末)を使用した。
【0072】(b)触媒 テトラフェニルホスホニウムブロマイド(以下、「TP
PB」と略記)は、和光純薬工業(株)製試薬一級品
(分子量:419.3、融点:295〜298℃、無色
粉末)を使用した。
【0073】(c)溶媒 N,N−ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略
記)、ジメチルスルホキシド(以下、「DMSO」と略
記)、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と略
記)、クロロホルムおよびアセトンは、それぞれ、市販
品を使用した。
【0074】また、以下の実施例において用いたポリオ
キセタン化合物は、下記の方法により製造した。 合成例1 〔ポリ(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタク
リレートの合成〕冷却管を備えた容量300mlの丸底
フラスコに、窒素ガス気流下、(3−エチル−3−オキ
セタニル)メチルメタクリレート(以下、「EHO−M
MA」と略記);10g(54.3ミリモル)とDM
F;50gとを加えて攪拌し、EHO−MMAをDMF
に溶解した。次に、上記EHO−MMAのDMF溶液に
ラジカル重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチ
ロニトリル(以下、「AIBN」と略記);22.7m
g(0.14ミリモル、したがって、EHO−MMAに
対して0.25モル%)を加えて80℃に昇温した。続
いて、この温度に保持して4時間後、得られた反応混合
物を前記丸底フラスコから取り出し、メタノール中に投
入したところ、沈澱物が析出した。そこで、この沈澱物
をジオキサン−メタノールでの再沈澱により精製後、濾
過・回収し、50℃で減圧乾燥することによって、ポリ
(3−エチル−3−オキセタニル)メチルメタクリレー
ト(以下、「polyEHO−MMA」と略記)が収率
50%で得られた。上記得られたpolyEHO−MM
Aは、Mn=3.3×104 、Mw=7.0×104
よびMw/Mn=2.1の重合体であった。なお、EH
O−MMAは、前記化学反応式(2)に示した如く、適
当なエステル化触媒の存在下に、メチルメタクリレート
(MMA)を3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセ
タン(以下、「EHO」と略記)でエステル交換するこ
とによって得ることができる。
【0075】実施例1 前記合成例1で得られたpolyEHO−MMA;1.
0g(Mn=3.3×104 、オキセタン環の当量数:
5.4)とジスネットDB;0.74g(2.7ミリモ
ル)とを予め粉末化して内容積30mlのキャップ付ガ
ラス容器(スクリュー管瓶)に仕込み、さらに、触媒と
してTPPB;0.228g(0.54ミリモル、原料
のpolyEHO−MMA中のオキセタン環1当量当た
り0.1モル)を前記キャップ付ガラス容器に添加し、
窒素ガスで置換後密栓した。したがって、ポリオキセタ
ン化合物中のオキセタン環の当量数/チオール化合物の
モル数/第四オニウム塩触媒のモル数の比として表わさ
れる原料の仕込み比(以下、単に「原料の仕込み比
(A)」という)は、polyEHO−MMA/ジスネ
ットDB/TPPB=1/0.5/0.1であった。そ
こで、170℃の恒温槽中に前記ガラス容器を浸漬して
これら原料を加熱溶融させた。続いて、前記ガラス容器
を170℃の恒温槽中で10時間保持した。所定時間経
過後、前記ガラス容器を恒温槽から取り出し、次いで反
応物を常温まで冷却後、前記ガラス容器から取り出して
硬化状態を観察した。得られた硬化物の溶媒溶解性を調
べたところ、極性の高い有機溶媒であるDMF、DMS
O、THF、クロロホルムおよびアセトンのいずれにも
不溶であった。このことから、polyEHO−MMA
とジスネットDBとを出発原料とする付加反応の繰り返
しによる硬化反応が進行し、本発明の目的とする硬化物
が得られたことが分かった。
【0076】さらに、上記硬化反応を確認するために、
上記硬化物の赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)
測定を行った。そして比較のために、原料の仕込み比
(A)を本実施例と同様にpolyEHO−MMA/ジ
スネットDB/TPPB=1/0.5/0.1とし、こ
れらの原料を十分に混合することによって別に得た原料
混合物をIRスペクトル測定に供した。そこで、該原料
混合物のIRスペクトルを図1に、そして、上記硬化物
のIRスペクトルを図2にそれぞれ示す。この結果、図
1と図2とを比較すると、上記硬化物(硬化前の熱硬化
性オキセタン組成物の組成:polyEHO−MMA中
のオキセタン環/ジスネットDB/TPPB=1当量/
0.5モル/0.1モル)のIRスペクトルにおいて、
980cm-1のオキセタン基に基づく吸収が、硬化前の
原料混合物(組成:polyEHO−MMA中のオキセ
タン環/ジスネットDB/TPPB=1当量/0.5モ
ル/0.1モル)のそれと比べてかなり減少しているこ
とから、原料のpolyEHO−MMA中のオキセタン
環へのジスネットDB中のチオール基の攻撃による該オ
キセタン環の開環に始まる前記硬化反応が進行し、本発
明の目的とする硬化物が得られたことが分かった。
【0077】実施例2 触媒としてのTPPBの使用量を0.228g(0.5
4ミリモル、原料のpolyEHO−MMA中のオキセ
タン環1当量当たり0.1モル)に変えて0gにしたこ
と、すなわち、TPPBを使用しなかったこと、およ
び、キャップ付ガラス容器を170℃の恒温槽中に浸漬
してからの保持時間を10時間に変えて15時間にした
こと以外は、実施例1と全く同様の操作を行った。した
がって、チオール化合物のモル数に対するポリオキセタ
ン化合物中のオキセタン環の当量数の比として表わされ
る原料の仕込み比(以下、単に「原料の仕込み比(B)
という)は、polyEHO−MMA/ジスネットDB
=1/0.5であった。得られた硬化物の溶媒溶解性を
調べたところ、極性の高い有機溶媒であるDMF、DM
SO、THF、クロロホルムおよびアセトンのいずれに
も不溶であったことから、polyEHO−MMAとジ
スネットDBとを出発原料とする付加反応の繰り返しに
よる硬化反応が進行し、本発明の目的とする硬化物が得
られたことが分かった。
【0078】実施例3 ジスネットDB;0.74g(2.7ミリモル)に代え
て、TMST;0.32g(1.8ミリモル)を用いた
こと以外は、実施例1と全く同様の操作を行った。した
がって、原料の仕込み比(A)は、polyEHO−M
MA/TMST/TPPB=3/1/0.3であった。
得られた硬化物の溶媒溶解性を調べたところ、極性の高
い有機溶媒であるDMF、DMSO、THF、クロロホ
ルムおよびアセトンのいずれにも不溶であったことか
ら、polyEHO−MMAとTMSTとを出発原料と
する付加反応の繰り返しによる硬化反応が進行し、本発
明の目的とする硬化物が得られたことが分かった。
【0079】実施例4 触媒としてのTPPBの使用量を0.228g(0.5
4ミリモル、原料のpolyEHO−MMA中のオキセ
タン環1当量当たり0.1モル)に変えて0gにしたこ
と、すなわち、TPPBを使用しなかったこと、およ
び、キャップ付ガラス容器を170℃の恒温槽中に浸漬
してからの保持時間を10時間に変えて15時間にした
こと以外は、実施例3と全く同様の操作を行った。した
がって、原料の仕込み比(B)は、polyEHO−M
MA/TMST=3/1であった。得られた硬化物の溶
媒溶解性を調べたところ、極性の高い有機溶媒であるD
MF、DMSO、THF、クロロホルムおよびアセトン
のいずれにも不溶であったことから、polyEHO−
MMAとTMSTとを出発原料とする付加反応の繰り返
しによる硬化反応が進行し、本発明の目的とする硬化物
が得られたことが分かった。
【0080】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、反
復構造単位の側鎖に1個のオキセタン環を有する特定の
重合体と特定のチオール化合物と場合によってはさらに
触媒としての第四オニウム塩とを特定の割合で含む新規
な硬化物製造用の熱硬化性オキセタン組成物、および、
該熱硬化性オキセタン組成物を加熱することにより製造
され、優れた機械的性質、電気的性質、接着性、耐熱
性、耐湿性、耐薬品性などを示し、かつ、三次元網目構
造を有する新規な硬化物が得られる。また、本発明によ
れば、上記熱硬化性オキセタン組成物を加熱することに
よって、前記反復構造単位の側鎖に1個のオキセタン環
を有する重合体と、前記チオール化合物との付加反応を
繰り返して行わしめ、上記新規な硬化物を効率よく高収
率で製造し得る硬化方法を提供することができる。した
がって、本発明の新規な硬化物は、上述の特性を利用し
て塗料やコーティング剤、接着剤、電気絶縁材料、IC
や超LSI封止材料、積層板およびその他の電気・電子
部品、コンクリート構造物の補修、新旧コンクリートの
打継、補強鋼板の接着、各種ライニングなどの土木建築
用途、注型用化合物、印刷インキ、シーラント、フォト
レジスト、織物被覆剤、含浸テープおよび印刷プレート
などのエポキシ樹脂の代替品としての用途が大いに期待
され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】polyEHO−MMA中のオキセタン環/ジ
スネットDB/TPPB=1当量/0.5モル/0.1
モルの組成からなる実施例1で用いた原料混合物のIR
スペクトルを示した図である。
【図2】実施例1で得られた硬化物のIRスペクトルを
示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 船越 勉 大阪府堺市築港新町3−1 宇部興産株式 会社堺工場内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(I) 【化1】 (式中、R1 は、水素原子またはメチル基を示し、R2
    は、水素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキ
    ル基を示す)で表わされる反復構造単位からなる重合体
    (A)の少なくとも1種と、分子中に2または3個のチ
    オール基を有する化合物(B)の少なくとも1種とから
    なる熱硬化性オキセタン組成物。
  2. 【請求項2】 下記一般式(I) 【化2】 (式中、R1 は、水素原子またはメチル基を示し、R2
    は、水素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキ
    ル基を示す)で表わされる反復構造単位からなる重合体
    (A)の少なくとも1種と、分子中に2または3個のチ
    オール基を有する化合物(B)の少なくとも1種との混
    合物を加熱することを特徴とする硬化物の製造方法。
  3. 【請求項3】 下記一般式(I) 【化3】 (式中、R1 は、水素原子またはメチル基を示し、R2
    は、水素原子または1〜6個の炭素原子を有するアルキ
    ル基を示す)で表わされる反復構造単位からなる重合体
    (A)の少なくとも1種と、分子中に2または3個のチ
    オール基を有する化合物(B)の少なくとも1種との混
    合物を加熱して得られる硬化物。
  4. 【請求項4】 請求項1に記載の重合体(A)の少なく
    とも1種および化合物(B)の少なくとも1種と、第四
    オニウム塩とを含んでなる熱硬化性オキセタン組成物。
  5. 【請求項5】 重合体(A)の少なくとも1種と化合物
    (B)の少なくとも1種との混合物を第四オニウム塩の
    存在下に加熱することを特徴とする請求項2に記載の硬
    化物の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項3に記載の重合体(A)の少なく
    とも1種および化合物(B)の少なくとも1種と、第四
    オニウム塩との混合物を加熱して得られる硬化物。
  7. 【請求項7】 重合体(A)の少なくとも1種と化合物
    (B)の少なくとも1種との混合物を、無溶媒状態下、
    該重合体(A)の融点または該化合物(B)の融点のい
    ずれか低い方の温度以上、かつ300℃以下の温度に加
    熱することを特徴とする請求項2に記載の硬化物の製造
    方法。
  8. 【請求項8】 重合体(A)の少なくとも1種と化合物
    (B)の少なくとも1種との混合物を、反応溶媒中、5
    0〜300℃の温度に加熱することを特徴とする請求項
    2に記載の硬化物の製造方法。
  9. 【請求項9】 重合体(A)の少なくとも1種と化合物
    (B)の少なくとも1種との混合物を第四オニウム塩の
    存在下に加熱することを特徴とする請求項7または8に
    記載の硬化物の製造方法。
  10. 【請求項10】 第四オニウム塩がテトラn−ブチルホ
    スホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムク
    ロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイドおよ
    びテトラフェニルホスホニウムアイオダイドからなる群
    から選ばれる第四ホスホニウム塩であることを特徴とす
    る請求項4に記載の熱硬化性オキセタン組成物。
  11. 【請求項11】 第四オニウム塩がテトラn−ブチルホ
    スホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムク
    ロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイドおよ
    びテトラフェニルホスホニウムアイオダイドからなる群
    から選ばれる第四ホスホニウム塩であることを特徴とす
    る請求項5または9に記載の硬化物の製造方法。
  12. 【請求項12】 第四オニウム塩がテトラn−ブチルホ
    スホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムク
    ロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイドおよ
    びテトラフェニルホスホニウムアイオダイドからなる群
    から選ばれる第四ホスホニウム塩であることを特徴とす
    る請求項6に記載の硬化物。
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