JP3817879B2 - 熱硬化性組成物およびそれから得られる硬化物ならびにその製造法 - Google Patents
熱硬化性組成物およびそれから得られる硬化物ならびにその製造法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3817879B2 JP3817879B2 JP00309398A JP309398A JP3817879B2 JP 3817879 B2 JP3817879 B2 JP 3817879B2 JP 00309398 A JP00309398 A JP 00309398A JP 309398 A JP309398 A JP 309398A JP 3817879 B2 JP3817879 B2 JP 3817879B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- compound
- group
- reaction
- cured product
- oxetane
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
- 0 CC1C(*)CCC1 Chemical compound CC1C(*)CCC1 0.000 description 8
- XDTMQSROBMDMFD-UHFFFAOYSA-N C1CCCCC1 Chemical compound C1CCCCC1 XDTMQSROBMDMFD-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
- LYRUCNCUFDQTNN-UHFFFAOYSA-N CCC(C)(C1)C2CC1C(C)C2 Chemical compound CCC(C)(C1)C2CC1C(C)C2 LYRUCNCUFDQTNN-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
- WOUUGQZBYSHHHH-UHFFFAOYSA-N CCCCC=[N]=C Chemical compound CCCCC=[N]=C WOUUGQZBYSHHHH-UHFFFAOYSA-N 0.000 description 1
Images
Landscapes
- Polyethers (AREA)
- Polymers With Sulfur, Phosphorus Or Metals In The Main Chain (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な硬化物製造用の、オキセタン化合物とチオール化合物とを含む熱硬化性組成物、該組成物の硬化方法、およびその方法によって得られる新規な硬化物に関する。さらに詳しくは、分子中に2〜4個のオキセタン環を有するオキセタン化合物および分子中に2または3個のチオール基を有する化合物を含み(ただし、分子中に2個のオキセタン環を有するビスオキセタンと分子中に2個のチオール基を有するジチオールとは同時に含まれない)、好ましくはこれらの化合物に加えてさらに第四オニウム塩を含み、加熱することによって新規な硬化物を製造し得る熱硬化性オキセタン組成物;触媒としての第四オニウム塩の存在下または不存在下、前記熱硬化性オキセタン組成物を、無溶媒状態下では前記オキセタン化合物の融点もしくは前記チオール化合物の融点のいずれか低い方の温度以上、かつ300℃以下の温度に、また、反応溶媒中では50〜300℃の温度に加熱して、前記オキセタン化合物と前記チオール化合物との付加反応を繰り返し行わせしめることからなる前記熱硬化性オキセタン組成物の硬化方法;および該硬化方法によって製造される新規な硬化物に関する。
【0002】
本発明の熱硬化性組成物は、熱、または、熱および第四オニウム塩触媒の作用を受けて分子間架橋による硬化反応(すなわち、前記オキセタン化合物と前記チオール化合物との付加反応の繰り返し)を起こし、不溶不融の三次元網目構造の新規な硬化物を形成することにより、優れた機械的性質(引張強さおよび硬さなど)、電気的性質(電気絶縁性など)、接着性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などを示すものであり、エポキシ樹脂の代替品として、塗料やコーティング剤、接着剤、電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、積層板およびその他の電気・電子部品、コンクリート構造物の補修、新旧コンクリートの打継、補強鋼板の接着、各種ライニングなどの土木建築用途、複合材料用途などの分野への使用が大いに期待できる。
【0003】
【従来の技術】
4員環のエーテル化合物であるオキセタンは、炭素−酸素間の結合が分極していることから高い反応性を示し、ルイス酸などを反応開始剤に用いたオキセタンの開環重合(S.Inoue and T.Aida,Ring Opening Polymerization,K.J.Ivin and T.Saegusa,Eds.,Elsevier,London,1984,Vol.1,pp.185〜298 など参照)や、トリアルキルアルミニウム−水反応生成物を触媒として用いたオキシメチルオキセタンのトリメチルシリルエーテルの開環重合(特開平2−29429号公報参照)などが報告されている。
【0004】
また最近では、カチオン重合におけるオキセタンの高い反応性を利用し、カチオン性光重合開始剤の存在下での光カチオン重合も幾つか報告されている。例えば、特開平6−16804号公報には、下記式(I)
【0005】
【化1】
【0006】
(式中、R1 は、水素原子、フッ素原子、1価の炭化水素基、1価のフッ素置換炭化水素基などであり、R2 は、線状または分岐状アルキレン基、線状または分岐状ポリ(アルキレンオキシ)基、ケイ素含有基、芳香族環含有炭化水素基などの2〜4価の多価基であり、Zは、酸素原子または硫黄原子であり、xは、2、3または4である)で示される3−置換オキセタンモノマーと、トリアリールスルホニウム塩などのカチオン性光重合開始剤との混合物を紫外線に暴露することを特徴とする、前記3−置換オキセタンモノマーを含む光硬化性オキセタン組成物、これらのオキセタンモノマーの硬化方法、および該硬化方法によって得られる架橋プロピルオキシポリマーが開示されている。
【0007】
しかしながら、有機化学反応のなかでオキセタン化合物の付加反応を応用した報告例をみると、オキセタン化合物とアシルクロライドとの付加反応(K.Sato, A.Kameyama and T.Nishikubo,Macromolecules,25, 1198(1992)を参照)や、オキセタン化合物と活性エステルとの付加反応(T.Nishikubo and S.Kazuya,Chem. Lett.,697(1991)を参照)が報告されているにすぎない。
また、オキセタン化合物を用いた高分子の合成に目を向けると、触媒に第四オニウム塩やクラウンエーテル錯体を用いてビスオキセタン化合物とビスアシルハライドとの重付加反応について検討を行った報告もなされている(A.Kameyama, Y.Yamamoto and T.Nishikubo,J.Polym.Sci.,Part A:Polym.Chem.,31, 1639〜1641(1993)およびA.Kameyama,Y.Yamamoto and T.Nishikubo,Macromol.Chem.Phys., 197, 1147〜1157(1996)など参照)。
【0008】
一方、本発明者らは、オキセタン環の新しい反応の開発とその高分子合成への展開を目的として、分子中に1〜4個のオキセタン環を有するオキセタン化合物と分子中に2個以上のカルボキシル基を有するポリカルボン酸との(重)付加反応について鋭意研究した結果、前記オキセタン化合物とポリカルボン酸と場合によりさらに触媒としての第四オニウム塩との混合物からなる熱硬化性オキセタン組成物、該熱硬化性オキセタン組成物を、無溶媒状態下では前記オキセタン化合物の融点もしくは前記ポリカルボン酸の融点のいずれか低い方の温度以上、かつ300℃以下の温度に加熱して、また、反応溶媒中では50〜300℃の温度に加熱して、前記オキセタン化合物の開環と該開環部分への前記ポリカルボン酸の付加反応、ならびに、前記オキセタン化合物中にもともと存在するかまたは前記付加反応によって生成したヒドロキシメチル基と前記ポリカルボン酸との縮合反応を同時、かつ、繰り返し進行せしめることによる硬化物の製造方法、および、該製造方法により得られる分子間架橋された三次元網目構造を有する不溶不融の新規な熱硬化物について、先に報告した(特願平9−203411号明細書を参照)。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、オキセタン化合物とチオール化合物との付加反応の繰り返しによる分子間架橋された三次元網目構造を有する硬化物の製造に関する研究報告は未だ皆無であった。
本発明の目的は、優れた機械的性質、電気的性質、接着性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などを示すことにより、エポキシ樹脂の代替品としての利用が大いに期待できる新規な硬化物製造用のオキセタン化合物およびチオール化合物と、場合によってはさらに第四オニウム塩とを含む熱硬化性オキセタン組成物、該組成物の硬化方法、およびその方法によって得られる新規な硬化物を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するためにオキセタン化合物とチオール化合物との付加反応について鋭意検討を重ねた結果、触媒としての第四オニウム塩の存在下または不存在下に、分子中に2〜4個のオキセタン化合物と分子中に2または3個のチオール基を有する化合物との混合物(ただし、ビスオキセタンとジチオールとの混合物を除く)を、無溶媒状態下では前記オキセタン化合物の融点または前記チオール化合物の融点のいずれか低い方の温度以上、かつ300℃以下の温度に、また、反応溶媒中では50〜300℃の温度に加熱して、前記オキセタン化合物の開環と該開環部分への前記チオール化合物の付加反応を繰り返し進行せしめることにより、分子間架橋された三次元網目構造を有する不溶不融の新規な熱硬化物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の第1の発明は、一般式( II )で表される分子中に2個のオキセタン環を有する化合物(A)(以下、化合物(A)と略記する。)の少なくとも1種と、トリチオピロガロール、トリチオフロログルシンおよび2,4,6−トリメルカプト−S−トリアジンから選ばれる分子中に3個のチオール基を有する化合物(B)(以下、化合物(B)と略記する。)の少なくとも1種とからなる熱硬化性組成物を提供することで達成できる。
請求項2に記載の第2の発明は、化合物(A)の少なくとも1種と化合物(B)の少なくとも1種との混合物を、無溶媒状態下、該化合物(A)の融点または該化合物(B)の融点のいずれか低い方の温度以上、かつ300℃以下の温度に加熱することを特徴とする硬化物の製造方法を、請求項3に記載の第3の発明は、化合物(A)の少なくとも1種と化合物(B)の少なくとも1種との混合物を、反応溶媒中、50〜300℃の温度に加熱することを特徴とする硬化物の製造方法を、また、請求項4に記載の第4の発明は、化合物(A)の少なくとも1種と化合物(B)の少なくとも1種との混合物を加熱して得られる硬化物を、それぞれ、提供することで達成できる。
【0012】
請求項5に記載の第5の発明は、前記第1の発明に係わる化合物(A)の少なくとも1種および化合物(B)の少なくとも1種と、第四オニウム塩とを含んでなる熱硬化性組成物を提供することで達成できる。
そして、請求項6に記載の第6の発明は、化合物(A)の少なくとも1種と化合物(B)の少なくとも1種との混合物を第四オニウム塩の存在下に加熱することを特徴とする前記第2または第3の発明に係わる硬化物の製造方法を、請求項7に記載の第7の発明は、化合物(A)の少なくとも1種および化合物(B)の少なくとも1種と、第四オニウム塩との混合物を加熱して得られる硬化物を、それぞれ、提供することで達成できる。
【0014】
さらにまた、請求項8に記載の第8の発明、請求項9に記載の第9の発明および請求項10に記載の第10の発明は、それぞれ、第四オニウム塩が、テトラn−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイドおよびテトラフェニルホスホニウムアイオダイドからなる群から選ばれる第四ホスホニウム塩であることを特徴とする、前記第5の発明に係わる熱硬化性組成物、前記第6の発明に係わる硬化物の製造方法および前記第7の発明に係わる硬化物を提供することで達成できる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳しく説明する。
本発明の熱硬化性オキセタン組成物(以下「熱硬化性組成物」という)は、分子中にn個のオキセタン環を有する化合物(A)の少なくとも1種と、分子中にm個のチオール基を有する化合物(B)の少なくとも1種との混合物(なお、nは2、3または4であり、mは2または3である。ただし、nが2のとき、mは3であり、nが3または4のとき、mは2または3である)、または、前記オキセタン化合物(A)の少なくとも1種および前記チオール化合物(B)の少なくとも1種と、第四オニウム塩との混合物であり、後述する硬化方法によって本発明の新規な硬化物を製造し得るものである。
【0016】
そこでまず、本発明の熱硬化性組成物の一成分である前記オキセタン化合物(A)について述べる。
本発明に用いられる前記オキセタン化合物(A)は、上述したように、分子中にn個(ただし、nは2、3または4である)のオキセタン環を有する化合物である。分子中に2個のオキセタン環を有する化合物は、下記一般式(II)
【0017】
【化2】
【0018】
(式中、R3 は、水素原子、またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基およびイソヘキシル基などの1〜6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、R4 は、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、2,3−ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基などの1〜12個の炭素原子を有する線状または分岐状アルキレン基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基、ブテニレン基などの1〜12個の炭素原子を有する線状または分岐状不飽和炭化水素基、下記一般式(III)
【0019】
【化3】
で示される芳香族炭化水素基、下記一般式(IV)
【0020】
【化4】
で示される芳香族炭化水素基、下記式
【0021】
【化5】
で示されるカルボニル基、下記一般式(V)
【0022】
【化6】
で示されるカルボニル基を含むアルキレン基、下記式
【0023】
【化7】
などで示されるカルボニル基含有脂環式炭化水素基、下記式
【0024】
【化8】
などで示されるカルボニル基含有芳香族炭化水素基および下記一般式(VI)
【0025】
【化9】
【0026】
で示される基からなる群から選択される2価の原子価を持つ基である。そして、R5は、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基およびtert−ブチル基などの1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基およびtert−ブトキシ基などの1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基およびブトキシカルボニル基などの炭素原子数1〜4の低級アルキル基を有するアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基、ならびにメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基およびブチルカルバモイル基などの炭素原子数1〜4の低級アルキル基を有するN−アルキルカルバモイル基からなる群から選ばれる原子価が1の基であり、R6は、O、S、CH2、NH、SO、SO2、C(CF3)2またはC(CH3)2である。またYは、場合により置換された1〜12個の炭素原子を有する線状または分岐状アルキレン基、下記式
【0027】
【化10】
あるいは
【化11】
で示される基など、場合により置換された原子価2の脂環式炭化水素基、または下記式
【0028】
【化12】
【0029】
あるいは
【化13】
で示される基などの場合により置換されたアリーレン基であり、kは、1〜20の整数である)で表わされるビスオキセタンである。
【0030】
本発明における分子中に2個のオキセタン環を有する化合物としては、前記一般式(II)において、R3 が低級アルキル基のものが好ましく、メチル基およびエチル基のものがより好ましい。そして、前記一般式(II)におけるR4 としては、1〜12個の炭素原子を有する線状アルキレン基のものや前記一般式(III)で示される原子価が2の芳香族炭化水素基のものが好ましく、ヘキサメチレン基、前記一般式(III)においてR5 が水素原子である基のものがより好ましい。
したがって、上記の分子中に2個のオキセタン環を有する化合物の好ましい具体例としては、下記式(1)〜(7)で示されるビスオキセタンなどが挙げられる。
【0031】
【化14】
【0032】
つまり、式(1)〜(4)で示される化合物は、前記一般式(II)において、R3 がエチル基であり、R4 が、それぞれ、エチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基およびオクタメチレン基であるビスオキセタンである。式(5)で示される化合物は、前記一般式(II)において、R3 がエチル基、R4 が前記一般式(III)でR5 が水素原子であるビスオキセタンである。また、式(6)で示される化合物は、前記一般式(II)において、R3 がエチル基、R4 がカルボニル基であるビスオキセタンである。そして、式(7)で示される化合物は、前記一般式(II)において、R3 がエチル基、R4 が式
【0033】
【化15】
で示されるカルボニル基含有芳香族炭化水素基であるビスオキセタンである。
【0034】
本発明に用いられる分子中に3または4個のオキセタン環を有する化合物は、下記一般式(VII)
【0035】
【化16】
【0036】
(式中、R7 は、前記一般式(II)におけるR3 と同様の基であり、R8 は、炭化水素基、置換された炭化水素基、下記一般式(VIII)
【0037】
【化17】
で示される基、および下記一般式(IX)
【0038】
【化18】
【0039】
で示される基からなる群より選択される原子価が3または4の多価基であり、yは、3もしくは4である。なお、上記一般式(VIII)および一般式(IX)において、Z1 およびZ2 は、いずれも場合により置換されている原子価が3または4の脂肪族、脂環式または芳香族炭化水素基であり、pおよびqは、共に3もしくは4である)で表わされる化合物である。
【0040】
前記3または4価の炭化水素基、あるいは、置換された3または4価の炭化水素基としては、下記式(8)〜(10)で示される多価基などの炭素原子数1〜12の分岐状アルキレン基を例示することができる。
【0041】
【化19】
【0042】
上記式(8)において、R9 は、水素原子、またはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基あるいはtert−ブチル基などの1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基である。
【0043】
また、前記一般式(VIII)において、場合により置換されている3または4価の炭化水素基であるZ1 としては、下記式
【0044】
【化20】
【0045】
で示される3価の芳香族炭化水素基を挙げることができる。さらにまた、前記一般式(IX)において、場合により置換されている3または4価の炭化水素基であるZ2 としては、下記式
【0046】
【化21】
【0047】
あるいは
【化22】
で示される3価の脂環式または芳香族炭化水素基を挙げることができる。
【0048】
そして、本発明に用いられる分子中に3または4個のオキセタン環を有する化合物として、具体的には、前記一般式(VII)において、R7 が低級アルキル基であり、R8 が前記式(8)で示される原子価が3で炭素原子数1〜12の分岐状アルキレン基や、前記一般式(VIII)で示される基であるものが好ましい。さらには、前記一般式(VII)において、R7 がエチル基であり、R8 が、前記式(8)でR9 がエチル基であるもの、または、前記一般式(VIII)でZ1 が下記式
【0049】
【化23】
で示される芳香族炭化水素基、かつpが3であるものがより好ましい。
【0050】
本発明に用いられる上述したような分子中に2〜4個のオキセタン環を有する化合物(A)は、次のようにして製造され得る。
例えば、前記一般式(II)において、R4 が1〜12個の炭素原子を有する線状または分岐状アルキレン基、1〜12個の炭素原子を有する線状または分岐状不飽和炭化水素基、あるいは前記一般式(III)または前記一般式(IV)で示される芳香族炭化水素基である分子中に2個のエーテル基を含むビスオキセタン化合物は、1,3−ジオールを出発原料として以下のように合成することができる。
すなわち、下記式(11)に示す如く、パティソン(Pattison)(J.Am.Chem.Soc.,1957,79を参照)の方法により、1,3−ジオールから分子中に1個のオキセタン環を有する化合物を合成する。
【0051】
【化24】
【0052】
なお、前記式(11)において、R3 は、前記一般式(II)におけるR3 と同様の基であり、具体的には、R3 がエチル基である3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンは、トリメチロールプロパンと炭酸ジエチルから上記パティソンの方法により得られる。
【0053】
続いて、上記合成された3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンと、ジハライドとから、下記式(12)のようにして、前記ビスオキセタン化合物を合成し得る。
【0054】
【化25】
【0055】
前記式(12)において、R4aは、1〜12個の炭素原子を有する線状または分岐状アルキレン基、1〜12個の炭素原子を有する線状または分岐状不飽和炭化水素基、あるいは前記一般式(III)または前記一般式(IV)で示される芳香族炭化水素基であり、X1 は、臭素原子、塩素原子またはヨウ素原子である。
また、前記一般式(II)において、R4 が、前記一般式(V)でkが1〜6の整数であるカルボニル基を含むアルキレン基または前述の式
【0056】
【化26】
などで示されるカルボニル基含有芳香族炭化水素基である分子中に2個のエステル基を含むビスオキセタン化合物は、前記式(11)のパティソンの方法により合成された3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンと、ジエステル化合物とから、米国特許第3278554号明細書に記載されているように、エステル交換反応を用いて次式(13)のように調製することができる。
【0057】
【化27】
【0058】
なお、前記式(13)において、R10は、1〜6個の炭素原子を有する線状または分岐状アルキレン基、または下記式
【0059】
【化28】
【0060】
で示される芳香族炭化水素基であり、R11は、場合により置換された脂肪族、脂環式あるいは芳香族炭化水素基である。
また、前記一般式(VII)において、nが3または4である、すなわち、分子中に3または4個のオキセタン環を有する化合物は、前述のビスオキセタン化合物と同様にして調製することができる。例えば、前記式(12)においてR4aが3または4個の置換可能基を含む直鎖もしくは分岐鎖のアルキレン基であるときに、適当な前記一般式(VII)で表わされる化合物が合成され得る。
【0061】
本発明では、前記熱硬化性組成物を構成する分子中に2〜4個のオキセタン環を有する化合物(A)として、前述の分子中に2個のオキセタン環を有するビスオキセタン化合物、あるいは、前述の分子中に3または4個のオキセタン環を有する化合物から選ばれる1種類が単独使用されてもよく、また、それぞれの群から選ばれる2種類以上が併用されたものであってもよい。
【0062】
次に、本発明に用いられるもう一つの成分であるチオール化合物(B)は、前述したように、分子中にm個(ただし、mは2または3である)のチオール基を有する化合物である。mが2のとき、該チオール化合物(B)は、下記一般式(X)
【0063】
【化29】
【0064】
(式中、R12は、オルソフェニレン基、メタフェニレン基、パラフェニレン基、
【0065】
【化30】
および
【化31】
【0066】
からなる群から選択され、R13、R14およびR15は、それぞれ、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、R16およびR17は水素原子または1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であり、X2 は、CH2 、C(CH3 )2 、O、Sおよび
【0067】
【化32】
からなる群から選択され、aは2〜18の整数であり、R13とR14とR15、およびR16とR17は、それぞれ、互いに同一でも異なっていてもよい)で示される、分子中に2個のチオール基を有するジチオールである。
【0068】
これらジチオールは、具体的には、ジチオカテコール、ジチオレゾルシン、ジチオヒドロキノン、2,3−ジメルカプトトルエン、2,4−ジメルカプトトルエン、2,5−ジメルカプトトルエン、2,6−ジメルカプトトルエン、3,4−ジメルカプトトルエン、2,3−ジメルカプトフェニルエタン、2,4−ジメルカプトフェニルエタン、2,5−ジメルカプトフェニルエタン、2,6−ジメルカプトフェニルエタン、3,4−ジメルカプトフェニルエタン、2,2’−ビス(4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビフェニル−4,4’−ジチオール、4,4’−ビスメルカプトフェニルメタン、2,2’−ビス(4−メルカプトフェニル)プロパン、4,4’−ビスメルカプトフェニルエーテル、4,4’−ビスメルカプトフェニルスルフィド、4,4’−ビスメルカプトフェニルスルホキシド、エチレンジチオグリコール、プロピレンジチオグリコール、トリメチレンジチオグリコール、1,2−ブタンジチオール、1,3−ブタンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,7−ヘプタンジチオール、1,8−オクタンジチオール、1,9−ノナンジチオール、1,10−デカンジチオール、1,11−ウンデカンジチオール、1,12−ドデカンジチオール、1,13−トリデカンジチオール、1,14−テトラデカンジチオール、1,15−ペンタデカンジチオール、1,16−ヘキサデカンジチオール、1,17−ヘプタデカンジチオール、1,18−オクタデカンジチオール、2−アミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジメチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジエチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジン、2−ジ−n−プロピルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンおよび2−ジ−n−ブチルアミノ−4,6−ジメルカプト−s−トリアジンなどが挙げられる。
【0069】
mが3のとき、上記チオール化合物(B)としては、例えば、トリチオグリセリン、トリチオピロガロール、トリチオフロログルシンおよび2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジンなどのトリチオールが挙げられる。
【0070】
本発明では、前記熱硬化性組成物を構成する分子中に2または3個のチオール基を有する化合物(B)として、前述の分子中に2個のチオール基を有するジチオール、あるいは、前述の分子中に3個のチオール基を有するトリチオールから選ばれる1種類が単独使用されてもよく、また、これらジチオールおよびトリチオールの2種類以上が併用されてもよい。
【0071】
ところで、本発明では、前述の分子中に2個のオキセタン環を有するビスオキセタン化合物(A)の少なくとも1種と、前述の分子中に3個のチオール基を有するトリチオール(B)の少なくとも1種との混合物、あるいは、前述の分子中に3または4個のオキセタン環を有するオキセタン化合物(A)の少なくとも1種と、前述の分子中に2個のチオール基を有するジチオール(B)または前記トリチオール(B)の少なくとも1種との混合物を少なくとも含んでなる熱硬化性組成物を、後述する方法で加熱することによって硬化反応を行わしめ、硬化物を製造するのである。
この硬化反応は、前述したように、前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応が繰り返し進行することによって達成される。
前記付加反応は、下記反応式(14)および(15)に示したように、前記化合物(A)中に含まれるオキセタン環の開環と該開環部分への前記化合物(B)の付加によって進行するが、該反応は、前記化合物(A)中に含まれるオキセタン環1個に対して、前記化合物(B)中に含まれるチオール基1個が反応する形で行われる。
【0072】
【化33】
【0073】
【化34】
【0074】
なお、前記反応式(14)および(15)において、R3 およびR4 は、それぞれ、前記一般式(II)におけるR3 およびR4 と同様の基であり、R7 およびR8 は、それぞれ、前記一般式(VII)におけるR7 およびR8 と同様の基であり、yは前記一般式(VII)におけるyと同じ意味を表わす。
【0075】
以上述べた如く、本発明における前記化合物(A)に対する前記化合物(B)の化学量論量は、前記化合物(A)中に含まれるオキセタン環1個、すなわち、1当量に対して、前記化合物(B)中に含まれるチオール基が1個、すなわち、1当量となるような量である。
そこで、この化学量論量を前記化合物(A)の1モル当たりに必要とされる前記化合物(B)のモル数として求めると、以下のようになる。例えば、前記化合物(A)として分子中に2個のオキセタン環を有するビスオキセタン化合物が使用されるとき、前記化合物(B)として分子中に3個のチオール基を有するトリチオールが使用されるので、ビスオキセタン化合物1モルに対してトリチオール中に含まれるチオール基が2個、つまり、トリチオールが2/3モルである。また、前記化合物(A)として分子中に3個のオキセタン環を有する化合物が使用されるとき、前記化合物(B)として分子中に2個のチオール基を有するジチオールまたは前記トリチオールが使用されるので、前記化合物(A)1モルに対して前記ジチオールまたは前記トリチオール中に含まれるチオール基が3個、つまり、前記ジチオールが3/2モルまたは前記トリチオールが1モルである。さらにまた、前記化合物(A)として分子中に4個のオキセタン環を有する化合物が使用されるとき、前記化合物(B)として前記ジチオールまたは前記トリチオールが使用されるので、前記化合物(A)1モルに対して前記ジチオールまたは前記トリチオール中に含まれるチオール基が4個、つまり、前記ジチオールが2モルまたは前記トリチオールが4/3モルである。
【0076】
本発明では、前記化合物(A)に対して、上記化学量論量の0.5〜2倍量、好ましくは0.7〜1.5倍量の前記化合物(B)を使用することが望ましい。
前記化合物(B)の使用量が前記化学量論量の0.5倍より少ないと、前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応が十分進行せず、硬化物の分子量が十分増加しないため、優れた機械的性質、電気的性質、接着性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などを示す本発明の目的硬化物が得られない。また、前記化合物(B)の使用量が前記化学量論量の2倍を越えると、得られた硬化物中に前記化合物(B)が未反応のまま大量に残存することになるので好ましくない。
【0077】
すなわち、本発明の一つの態様である熱硬化性組成物は、前述したように、前記分子中にn個のオキセタン環を有する化合物(A)の少なくとも1種と、前記分子中にm個のチオール基を有する化合物(B)の少なくとも1種(ここに、nは2、3または4であり、mは2または3である。ただし、nが2のとき、mは3であり、nが3または4のとき、mは2または3である)とを上述したような割合で配合してなる混合物である。
【0078】
次に、本発明のもう一つの態様である硬化方法は、上記熱硬化性組成物を加熱し、熱硬化させることを特徴とするものであり、詳細は、以下に述べる通りである。
本発明において、前記オキセタン化合物(A)中に含まれるオキセタン環の開環と該開環部分への前記化合物(B)の付加反応(以下、単に「前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応」という)は、無溶媒状態下あるいは反応溶媒中で行われる。
反応溶媒を用いる場合、前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応が後述するように高温下で行われるため、本発明の反応溶媒は、高沸点であることが望ましく、さらに前記化合物(A)および/または前記化合物(B)を溶解もしくは膨潤する作用を有し、かつ、これら化合物(A)および化合物(B)と反応性を有しないものが用いられ得る。
【0079】
上記反応溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)およびヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)などのアミド化合物、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、トリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、アニソールおよびフェネトールなどのエーテル化合物、o−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼンおよび3,4−ジクロロトルエンなどのハロゲン化芳香族炭化水素、ニトロベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、テトラメチル尿素およびN−メチル−2−ピロリドン(NMP)、あるいはこれらの溶媒の2種以上の混合物など、無極性もしくは極性の低い溶媒から極性の高い溶媒まで種々の溶媒を好適に用いることができるが、これらの中でもDMF、DMAC、HMPA、DMSOおよびNMPなどの使用が好ましい。
【0080】
反応溶媒の使用量は、前記化合物(A)および/または前記化合物(B)を溶解もしくは膨潤するに足る量以上であればよく、使用される反応溶媒の種類は勿論のこと、前記化合物(A)や前記化合物(B)の仕込み量、後述する触媒の種類と使用量、反応温度および反応時間などの付加反応の条件、さらには、これら付加反応に際して、前記化合物(A)および/または前記化合物(B)を反応溶媒中に溶解するのか、それとも反応溶媒で膨潤するのかにより異なるので、一概に規定することは困難である。
したがって、例えば、前記反応溶媒としてHMPA、DMSO、DMACおよびNMPなどの極性溶媒を使用する場合、反応溶媒の使用量は、前記オキセタン化合物(A)の使用量に対して1〜10倍量(容量/重量比)が好ましい。該使用量が1倍量未満では、前記化合物(A)および/または前記化合物(B)の上記極性反応溶媒への溶解もしくは膨潤が十分ではなく、反応が不均一系で進行するようになるので、均一な付加反応が行われず、得られる硬化物の品質にばらつきが生じることがある。一方、10倍量を越える上記極性反応溶媒を使用しても、前記化合物(A)および/または前記化合物(B)を溶解もしくは膨潤して付加反応を均一系で進行せしめるという反応溶媒の効果はすでに達成されてしまっているので、それ以上の効果は期待できないばかりか、所望により硬化物から反応溶媒を除去・回収することが必要となる場合、反応溶媒の反応系からの回収に必要以上のエネルギーを消費するなど、採算上好ましくない。
【0081】
また、本発明の硬化方法において、前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応は、触媒としての第四オニウム塩の存在下または不存在下に行われ得る。
該触媒は、前記反応式(14)および(15)に示したような前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応の繰り返しによる三次元網目構造を有する不溶不融の新規な硬化物の生成を促進する作用を有するものである。
【0082】
本発明の硬化方法における触媒の第四オニウム塩は、下記一般式(XI)
【0083】
【化35】
【0084】
(式中、R18〜R24は、互いに同一でも異なっていてもよい水素原子、ヒドロキシアルキル基、アルキル基、アリール基またはアルアルキル基を表わし、これらがアルキル基もしくはアルアルキル基である場合は、炭素数1〜30の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基である。M1 は、窒素原子、リン原子、砒素原子またはアンチモン原子を表わし、M2 は、酸素原子、硫黄原子、セレン原子または錫原子を表わし、そしてM3 は、ヨウ素原子を表わす。またX3 は、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシド、炭酸基、重炭酸基、リン酸二水素基および重硫酸基からなる群より選ばれる1価の陰イオンを表わす)で示される化合物である。
【0085】
具体的には、前記一般式(XI)において、M1 が窒素原子である場合のアンモニウム化合物、M1 がリン原子である場合のホスホニウム化合物、M1 が砒素原子である場合のアルソニウム化合物、M1 がアンチモン原子である場合のスチボニウム化合物、M2 が酸素原子である場合のオキソニウム化合物、M2 が硫黄原子である場合のスルホニウム化合物、M2 がセレン原子である場合のセレノニウム化合物、M2 が錫原子である場合のスタンノニウム化合物、そして、M3 がヨウ素原子である場合のヨードニウム化合物などが挙げられる。
そして、上記のアンモニウム化合物の具体例として、テトラn−ブチルアンモニウムクロライド(TBAC)、テトラn−ブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)およびテトラn−ブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)などのテトラn−ブチルアンモニウムハライド(TBAX)が挙げられる。また、上記のホスホニウム化合物の具体例としては、テトラn−ブチルホスホニウムクロライド(TBPC)、テトラn−ブチルホスホニウムブロマイド(TBPB)およびテトラn−ブチルホスホニウムアイオダイド(TBPI)などのテトラn−ブチルホスホニウムハライド(TBPX)およびテトラフェニルホスホニウムクロライド(TPPC)、テトラフェニルホスホニウムブロマイド(TPPB)およびテトラフェニルホスホニウムアイオダイド(TPPI)などのテトラフェニルホスホニウムハライド(TPPX)などが挙げられる。
【0086】
本発明の硬化方法では、上述した第四オニウム塩触媒の中でも、TBAC、TBABおよびTBAIなどのTBAX、TBPC、TBPBおよびTBPIなどのTBPX、および、TPPC、TPPBおよびTPPIなどのTPPXなどのアンモニウム化合物やホスホニウム化合物の使用が好ましく、TBPBなどのTBPXやTPPC、TPPBおよびTPPIなどのTPPXなど、耐熱性に優れたホスホニウム化合物の使用が特に好ましい。
なお、本発明の硬化方法においては、触媒として上記第四オニウム塩の中から選ばれる2種以上を混合して用いてもかまわない。
【0087】
前記付加反応に必要とされる上記第四オニウム塩触媒の量は、前記化合物(A)や前記化合物(B)の仕込み量、無溶媒状態下で前記付加反応を行うか否か、反応溶媒を使用した場合は反応溶媒の種類および使用量、反応温度、反応圧力および反応時間などの付加反応の条件などによって異なり、一概に限定できないが、本発明の硬化方法における触媒の使用量は、前記化合物(B)の使用量に対して30モル%以下、好ましくは2〜20モル%が好適である。
触媒の使用量を前記化合物(B)の使用量に対して30モル%より多くしても、該触媒を多量に用いることによる好ましい反応促進効果の向上はほとんど認められないので、経済性の面からは好ましくない。なお、触媒の使用量が前記化合物(B)の使用量に対して2モル%未満では、前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応が十分進行せずに、高分子量の硬化物を高収率で得ることができなくなることがある。
【0088】
よって、本発明の一つの態様である前記熱硬化性組成物は、前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応を触媒の存在下に行う場合、前記分子中にn個のオキセタン環を有する化合物(A)の少なくとも1種および前記分子中にm個のチオール基を有する化合物(B)の少なくとも1種(ここに、nは2、3または4であり、mは2または3である。ただし、nが2のとき、mは3であり、nが3または4のとき、mは2または3である)と、触媒としての上記第四オニウム塩とを前述したような割合で配合してなる混合物でもある。
【0089】
本発明の硬化方法においては、前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応の繰り返しによる硬化反応を反応溶媒中均一系で行う場合、前記化合物(A)および/または前記化合物(B)を前記反応溶媒中に溶解した状態で、あるいは、前記反応溶媒で膨潤させた状態で前記硬化反応を行う必要があり、そのためには、前記硬化反応の進行中、前記反応溶媒を液体状態に維持すべきである。一方、前記硬化反応を無溶媒状態下で行う場合は、前記硬化反応の進行中、前記化合物(A)および/または前記化合物(B)を溶融状態に維持すべきである。
したがって、反応温度は、前記硬化反応を無溶媒状態下に行う場合、前記化合物(A)および/または前記化合物(B)が溶融状態であるような温度範囲にあるべきであり、少なくとも、前記化合物(A)の融点または前記化合物(B)の融点のいずれか低い方の温度以上であるべきである。一方、前記硬化反応を前記反応溶媒中で行う場合には、前記化合物(A)および/または前記化合物(B)が前記反応溶媒中に溶解した状態、あるいは、前記反応溶媒で膨潤された状態となるように、少なくとも50℃以上である必要がある。
しかしながら、これらの場合、反応温度が300℃を越えると、本発明の硬化方法によって得られる硬化物の望ましくない熱分解反応を併発するようになるので、本発明の硬化反応における反応温度は、該硬化反応を無溶媒状態下で行う場合、前記化合物(A)の融点または前記化合物(B)の融点のいずれか低い方の温度以上、かつ、300℃以下の範囲であること、そして、該硬化反応を前記反応溶媒中で行う場合は、50〜300℃の範囲であることが好ましい。
【0090】
本発明の硬化方法における前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応において、反応圧力は特に制限されるものではなく、減圧、常圧および加圧のいずれの状態下においても実施可能である。しかし、加圧下で実施する場合は、製造設備に耐圧性能が要求されるし、また、減圧下で実施する場合には、減圧設備が必要になるなど、経済性の面からは常圧下で実施するのが好ましい。
しかし、前記反応溶媒中で前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応の繰り返し、つまり、硬化反応を行う場合は、前述したように、該硬化反応の進行中、前記反応溶媒が液体状態を維持し得るような圧力条件が保持されなければならない(したがって、前記硬化反応が加圧条件下で行われる場合もあり得る)ことは言うまでもない。また、前記硬化反応は、高温である程反応速度が速いので、得られる硬化物の収量や重合度を高める必要がある場合、反応温度は、前述の範囲内でできるだけ高温にした方がよい。しかしながら、前記硬化反応の反応時の温度が高すぎると、反応が不均一になり、得られる硬化物の熱的性質や機械的性質などの品質に悪影響が生じたり、使用するオキセタン化合物(A)、チオール化合物(B)および反応溶媒などが熱的に不安定となったりする恐れがある。したがって、このような場合は、反応系を減圧にして、前記反応温度を低めに維持することが好ましい。
【0091】
本発明の硬化方法における反応時間についても、前記化合物(A)および前記化合物(B)の仕込み量、無溶媒状態下で付加反応を行うか否か、反応溶媒を使用した場合は前記反応溶媒の種類および使用量、前記触媒の種類および使用量、ならびに、反応温度などの付加反応の条件によって異なるが、1〜70時間程度、好ましくは2〜50時間程度が好適である。反応時間が約1時間より短いと、前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応がほとんど進行しないし、また、約70時間より長くなると、目的生成物の三次元網目構造を有する硬化物の収量および分子量におけるそれ以上の向上が望めないばかりか、得られる硬化物が長時間の熱履歴を受けて、熱劣化による品質の低下を招く恐れがあるなど、いずれの場合も好ましくない。
【0092】
また、本発明の硬化方法における付加反応は、得られる硬化物の望ましくない酸化などによる劣化を防止するために、不活性ガス雰囲気下に行われることが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガスの他、アルゴンガスやヘリウムガスなどの希ガスが好適に使用され得る。
【0093】
そして、本発明において、前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応の繰り返しによる硬化物の製造方法、すなわち、硬化方法は、特に限定されるものではなく、常法に従って行えばよい。例えば、所望により所定量の前記化合物(A)および前記化合物(B)の少なくとも一方を所定量の前記反応溶媒に溶解もしくは膨潤した後、これら化合物を必要に応じて適当な加熱装置を備えた反応容器に供給し、さらに、所望により触媒として所定量の前記第四オニウム塩を添加し、常圧、あるいは、所定の減圧または加圧下に所定温度に加熱し、所定時間反応を行えばよい。この場合、前記化合物(B)は、所定量を一度に加えることなく、適宜量に分割して加えることも可能である。また、前記第四オニウム塩触媒も、反応系に所定量を一度に添加してもよく、または、適当な回数に分割して添加してもよい。
【0094】
本発明の硬化方法では、以上のようにして、前記化合物(A)の少なくとも1種と前記化合物(B)の少なくとも1種との混合物、または、前記化合物(A)の少なくとも1種、前記化合物(B)の少なくとも1種および前記第四オニウム塩の混合物である前記熱硬化性組成物を適切な形状の離型性のある反応容器に充填し、無溶媒状態下、あるいは前記反応溶媒中、前述した反応温度で前述した反応時間加熱することにより、例えば前記反応式(14)および(15)に示したような前記化合物(A)と前記化合物(B)との付加反応の繰り返しによる硬化反応を行わしめた後、空冷、水冷などの常法により常温まで冷却して得られた反応混合物を前記反応容器から取り出し、場合によっては続いて、熱風乾燥、真空乾燥および凍結乾燥などの公知の方法により100℃以下の温度で2〜16時間乾燥すればよい。これにより、本発明のもう一つの態様である三次元網目構造を有する不溶不融の新規な硬化物が成形品として得られるのである。
また、前記熱硬化性組成物を金属、ゴム、プラスチック、成形部品、フィルム、紙、木、ガラス布、コンクリートおよびセラミックなどの基材に塗布した後、所定温度で所定時間加熱することにより、上記硬化物を皮膜とする基材を得ることもできる。
なお、前記化合物(A)と前記化合物(B)との硬化反応を前記反応溶媒中で行う場合は、該硬化反応の終了後、得られた反応混合物から前記反応溶媒を蒸発せしめ、次いで常温まで冷却し、場合によっては続けて前記乾燥を行うことにより、上記硬化物を得てもよいし、また、前記硬化反応の終了後、得られた反応混合物を常温まで冷却し、前記反応溶媒を含んだままの柔軟性のある硬化物として使用してもかまわない。
【0095】
本発明の熱硬化性組成物は、使用に際し、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、公知の各種添加剤、例えば、無機充填剤、強化材、着色剤、安定剤(熱安定剤、耐候性改良剤など)、増量剤、粘度調節剤、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、変色防止剤、抗菌剤、防黴剤、老化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、発泡剤、離型剤などを添加・混合することができる。
上記着色剤としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、金属錯塩染料などの染料、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、マイカなどの無機顔料およびカップリングアゾ系、縮合アゾ系、アンスラキノン系、チオインジゴ系、ジオキサゾン系、フタロシアニン系などの有機顔料などが挙げられる。また、上記安定剤としては、ヒンダードフェノール系、ヒドラジン系、リン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、オキザリックアシッドアニリド系などの化合物が挙げられる。
さらにまた、上記無機充填剤としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化ホウ素繊維、窒化珪素繊維、塩基性硫酸マグネシウム繊維、ホウ素繊維、ステンレス鋼繊維、アルミニウム、チタン、銅、真鍮、マグネシウムなどの無機質および金属繊維、銅、鉄、ニッケル、亜鉛、錫、鉛、ステンレス鋼、アルミニウム、金および銀などの金属粉末、木粉、マグネシア、カルシアなどの酸化物、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、石英粉末、タルク、クレイ、各種金属の水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ホウ珪酸塩、アルミノ珪酸塩、チタン酸塩、塩基性硫酸塩、塩基性炭酸塩およびその他の塩基性塩、ガラス中空球、ガラスフレークなどのガラス材料、炭化珪素、窒化アルミ、ムライト、コージェライトなどのセラミック、およびフライアッシュやミクロシリカなどの廃棄物などが挙げられる。
【0096】
【実施例】
次に、実施例および比較例を述べて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これら実施例および比較例により何ら限定を受けるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、原料の分子中に2〜4個のオキセタン環を有するオキセタン化合物(以下、単に「オキセタン化合物」という)および生成物の三次元網目構造を有する硬化物(以下、単に「硬化物」という)の特性は、下記の方法によって求めた。
【0097】
(1)オキセタン化合物の赤外線吸収スペクトル(IR)
(株)パーキン−エルマー製1750型フーリエ赤外分光光度計を用い、微量のオキセタン化合物の液体試料をKBr結晶板上に塗布して測定した。
【0098】
(2)硬化物の赤外線吸収スペクトル(IR)
(株)パーキン−エルマー製1750型フーリエ赤外分光光度計を用い、予め60℃で10時間以上減圧乾燥して水分を除いた硬化物の試料1mgをKBr(Merck社製)150mgに混合し、60℃で10時間以上減圧乾燥して水分を除去した後、加圧錠剤を形成して測定した。
【0099】
また、以下の実施例において用いた試薬は、それぞれ、下記の通りである。
(a)オキセタン化合物
1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼン(以下、「XDO」と略記)は、東亜合成(株)製の市販品(分子量:334.5、無色液体)を使用した。
【0100】
(b)チオール化合物
2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジン(以下、「TMST」と略記)は、東京化成(株)製の市販品(分子量:177.3、融点:300℃以上(分解)、黄色粉末)を使用した。
【0101】
(c)触媒
テトラフェニルホスホニウムブロマイド(以下、「TPPB」と略記)は、和光純薬工業(株)製試薬一級品(分子量:419.3、融点:295〜298℃、無色粉末)を使用した。
【0102】
(d)反応溶媒
N−メチル−2−ピロリドン(以下、「NMP」と略記)は、キシダ化学(株)製の市販品を使用した。
【0103】
実施例1
内容積50mlの蓋付ガラス容器(スクリュー管瓶)に、TSMT;1.77g(10ミリモル)と、触媒としてのTPPB;0.21g(0.5ミリモル)を仕込み、さらに反応溶媒のNMP;10gを加えてから、窒素ガスで置換後密栓した。そして、この蓋付ガラス容器を150℃に設定されたオイルバス中に浸漬し加熱するこよにより、前記TSMTおよびTPPBを反応溶媒のNMPに溶解した。
次いで、前記ガラス容器を前記オイルバス中に浸漬したまま開栓し、XDOを5.02g(15ミリモル)加えた後、該ガラス容器内のガスを窒素ガスで再び置換してから密栓した。したがって、原料の仕込み比は、XDO/TSMT=3/2(モル比)であった。
そこで、前記オイルバス中に浸漬した前記ガラス容器を時々振盪しながら150℃で加熱を続けた。反応溶液は3時間後に流動性を失い、寒天状に固化した。さらに加熱を続け、全反応時間として13時間後に前記ガラス容器をオイルバスから取り出して放冷した後、前記ガラス容器内の内容物を取り出したところ、弾力性のある褐色の固化物が得られた。
続いて、得られた固化物を細かく砕き、その4.19gを秤り取り、アセトンを用いてソックスレー抽出器にて6時間抽出し、その抽出残渣を40℃で8時間減圧乾燥することによって1.49gの粉末状固形物を得た。したがって、原料のXDOとTSMTの合計量に対する得られた固形物の収量の比(重量百分率)で表わされる回収率は、89.0%であった。
【0104】
さらに、原料のXDOとTSMTとの付加反応、すなわち、硬化反応を確認するために、原料として用いた前記XDOおよび前記得られた固形物の赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)測定を行った。そこで、前記XDOおよび前記固形物のIRスペクトルを、それぞれ、図1および図2に示す。
上記測定の結果、図1の原料XDOのIRスペクトルに見られる980cm-1のオキセタン環の環の逆対称伸縮振動による吸収ピークは、図2の反応生成物(固形物)のIRスペクトルでは極僅かしか出現せず、前記硬化反応が十分進行していることが分かった。また、ホットプレスを使用して、前記の抽出生成物を170℃、圧力20kgf/cm2 で5分間加圧したところ、溶融せず粉末状となった。これは、反応生成物(固形物)が本発明の目的とする三次元網目状の硬化物となっていることを示している。
【0105】
実施例2
触媒としてのTPPBの使用量を0.21g(0.5ミリモル)に変えて0gにしたこと、すなわち、TPPBを使用しなかったこと以外は、実施例1と全く同様の操作を行ったところ、実施例1の場合と同様、弾力性のある褐色の固化物が得られた。なお、実施例1と同様なアセトン抽出による回収率は85.0%であった。
そこで、実施例1と同様な操作により、上記得られた固化物のIRスペクトルを測定し、その結果を図3に示した。図3によれば、実施例1の場合と同様、980cm-1のオキセタン環に基づく吸収ピークは、極僅かしか出現しておらず、硬化反応が十分進行していることが分かった。また、ホットプレスを使用しての前記実施例1と同様の加圧操作においても、実施例1の場合と同様に抽出生成物は粉末状となり、本発明の目的とする三次元網目状の硬化物であることが分かった。
【0106】
実施例3
実施例1と同様の内容積50mlの蓋付ガラス容器を用い、該ガラス容器に、XDO;5.02g(15ミリモル)とTSMT;1.77g(10ミリモル)(したがって、原料の仕込み比は、モル比でXDO/TSMT=3/2)を仕込み、窒素ガスで置換後密栓してから、150℃に設定されたオイルバス中に浸漬した。
次いで、該ガラス容器を時々振盪しながら、オイルバス中、150℃で加熱を続けた。TSMTはXDOに溶解しないが、該ガラス容器を前記オイルバス中に浸漬してから3.5時間後に系の増粘が始まり、10時間後に系は固化した。そこで、前記ガラス容器をオイルバスから取り出して放冷した後、前記ガラス容器内の内容物を取り出したところ、黄色で硬い粉末状の固化物が得られた。なお、実施例1と同様なアセトン抽出による回収率は76.0%であった。
続いて、実施例1と同様な操作により、上記得られた固化物のIRスペクトルを測定し、その結果を図4に示した。図4によれば、980cm-1のオキセタン環に基づく吸収ピークは、実施例1および2の場合ほどではないが、図1に示される原料XDOのIRスペクトルにおけるそれと比較して減少しており、硬化反応が進行していることが分かった。また、ホットプレスを使用しての前記実施例1と同様の加圧操作においても、実施例1の場合と同様に抽出生成物は粉末状となり、本発明の目的とする三次元網目状の硬化物が得られたことが分かった。
【0107】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、特定のオキセタン化合物および特定のチオール化合物と場合によってはさらに第四オニウム塩とを特定の割合で含む新規な硬化物製造用の熱硬化性組成物、および、該熱硬化性組成物を加熱することにより製造され、優れた機械的性質、電気的性質、接着性、耐熱性、耐湿性、耐薬品性などを示し、かつ、三次元網目構造を有する新規な硬化物が得られる。
また、本発明によれば、上記熱硬化性組成物を加熱することによってオキセタン化合物とチオール化合物との付加反応の繰り返しにより、上記新規な硬化物を効率よく高収率で製造し得る硬化方法を提供することができる。
したがって、本発明の新規な硬化物は、上述の特性を利用して塗料やコーティング剤、接着剤、電気絶縁材料、ICや超LSI封止材料、積層板およびその他の電気・電子部品、コンクリート構造物の補修、新旧コンクリートの打継、補強鋼板の接着、各種ライニングなどの土木建築用途、注型用化合物、印刷インキ、シーラント、フォトレジスト、織物被覆剤、含浸テープおよび印刷プレートなどのエポキシ樹脂の代替品としての用途が大いに期待され得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1〜3において硬化物製造用原料として用いられた1,4−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕ベンゼンのIRスペクトルを示した図である。
【図2】実施例1で得られた硬化物のIRスペクトルを示した図である。
【図3】実施例2で得られた硬化物のIRスペクトルを示した図である。
【図4】実施例3で得られた硬化物のIRスペクトルを示した図である。
Claims (10)
- 下記一般式( II )で表される分子中に2個のオキセタン環を有する化合物(A)(以下、化合物(A)と略記する。)の少なくとも1種と
R 4 は、下記一般式( III )で示される芳香族炭化水素基、
そして、R 5 は、水素原子、1〜4個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖のアルキル基、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、炭素原子数1〜4の低級アルキル基を有するアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、カルバモイル基、ならびに炭素原子数1〜4の低級アルキル基を有するN−アルキルカルバモイル基からなる群から選ばれる原子価が1の基であり、R 6 は、O、S、CH 2 、NH、SO、SO 2 、C(CF 3 ) 2 またはC(CH 3 ) 2 である。)
トリチオピロガロール、トリチオフロログルシンおよび2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジンから選ばれる分子中に3個のチオール基を有する化合物(B)(以下、化合物(B)と略記する。)の少なくとも1種とからなる熱硬化性組成物。 - 化合物(A)の少なくとも1種と化合物(B)の少なくとも1種との混合物を、無溶媒状態下、該化合物(A)の融点または該化合物(B)の融点のいずれか低い方の温度以上、かつ300℃以下の温度に加熱することを特徴とする硬化物の製造方法。
- 化合物(A)の少なくとも1種と化合物(B)の少なくとも1種との混合物を、反応溶媒中、50〜300℃の温度に加熱することを特徴とする硬化物の製造方法。
- 化合物(A)の少なくとも1種と化合物(B)の少なくとも1種との混合物を加熱して得られる硬化物。
- 化合物(A)の少なくとも1種および化合物(B)の少なくとも1種と、第四オニウム塩とを含んでなる熱硬化性組成物。
- 化合物(A)の少なくとも1種と化合物(B)の少なくとも1種との混合物を第四オニウム塩の存在下に加熱することを特徴とする請求項2または3に記載の硬化物の製造方法。
- 化合物(A)の少なくとも1種および化合物(B)の少なくとも1種と、第四オニウム塩との混合物を加熱して得られる硬化物。
- 第四オニウム塩が、テトラn−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイドおよびテトラフェニルホスホニウムアイオダイドからなる群から選ばれる第四ホスホニウム塩であることを特徴とする請求項5に記載の熱硬化性組成物。
- 第四オニウム塩が、テトラn−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイドおよびテトラフェニルホスホニウムアイオダイドからなる群から選ばれる第四ホスホニウム塩であることを特徴とする請求項6に記載の硬化物の製造方法。
- 第四オニウム塩が、テトラn−ブチルホスホニウムブロマイド、テトラフェニルホスホニウムクロライド、テトラフェニルホスホニウムブロマイドおよびテトラフェニルホスホニウムアイオダイドからなる群から選ばれる第四ホスホニウム塩であることを特徴とする請求項7に記載の硬化物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP00309398A JP3817879B2 (ja) | 1998-01-09 | 1998-01-09 | 熱硬化性組成物およびそれから得られる硬化物ならびにその製造法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP00309398A JP3817879B2 (ja) | 1998-01-09 | 1998-01-09 | 熱硬化性組成物およびそれから得られる硬化物ならびにその製造法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11199670A JPH11199670A (ja) | 1999-07-27 |
JP3817879B2 true JP3817879B2 (ja) | 2006-09-06 |
Family
ID=11547740
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP00309398A Expired - Lifetime JP3817879B2 (ja) | 1998-01-09 | 1998-01-09 | 熱硬化性組成物およびそれから得られる硬化物ならびにその製造法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3817879B2 (ja) |
Families Citing this family (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4960135B2 (ja) * | 2007-01-30 | 2012-06-27 | 日立化成工業株式会社 | 含硫黄多分岐化合物及び不飽和基含有多分岐化合物 |
JP4941942B2 (ja) * | 2008-01-30 | 2012-05-30 | 日立化成工業株式会社 | 含硫黄多分岐化合物及び不飽和基含有多分岐化合物 |
-
1998
- 1998-01-09 JP JP00309398A patent/JP3817879B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11199670A (ja) | 1999-07-27 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
Laskoski et al. | Synthesis and properties of aromatic ether phosphine oxide containing oligomeric phthalonitrile resins with improved oxidative stability | |
CN103180367B (zh) | 聚芳撑硫醚的制造方法及聚芳撑硫醚 | |
JP3629911B2 (ja) | 熱硬化性オキセタン組成物 | |
JP3629907B2 (ja) | 熱硬化性オキセタン組成物 | |
EP2880079B1 (en) | Synthesis of and curing additives for phthalonitriles | |
EP3299404B1 (en) | Phthalonitrile resin | |
US8981036B2 (en) | Synthesis of and curing additives for phthalonitriles | |
US20140275472A1 (en) | Synthesis of and curing additives for phthalonitriles | |
JPH11269370A (ja) | 熱硬化性オキセタン組成物およびその硬化方法ならびにその方法により得られる硬化物 | |
JP3817879B2 (ja) | 熱硬化性組成物およびそれから得られる硬化物ならびにその製造法 | |
JPH11343346A (ja) | 熱硬化性オキセタン組成物およびその硬化方法ならびに該方法により得られる硬化物 | |
CN114213659B (zh) | 耐热含硅聚芳硫醚及其制备方法 | |
JP3575245B2 (ja) | 熱硬化性組成物およびそれから得られる硬化物ならびにその製造方法 | |
US20040122204A1 (en) | Process for preparing substituted polyarylene ethers | |
JP2011093965A (ja) | ポリエーテル類の製造方法 | |
US3305494A (en) | Oxazolidonyl sulfones and method of making same | |
JPS5939448B2 (ja) | ポリアリ−レンスルフイドの製造方法 | |
EP0310882A2 (en) | Photoactive and thermally active polymeric iodonium salts, use, and method for making | |
JP3601271B2 (ja) | 熱硬化性組成物およびそれから得られる硬化物ならびにその製造方法 | |
WO2015183518A1 (en) | Synthesis of and curing additives for phthalonitriles | |
JP3575268B2 (ja) | 熱硬化性オキセタン組成物およびその硬化方法ならびにその方法により得られる硬化物 | |
US6716956B2 (en) | Process for preparing polyarylene ethers | |
Marcos-Fernández et al. | Novel aromatic polyamides with 1, 3-benzoazole groups in the main chain. 1. Polymers derived from 2-(4-carboxyphenyl) benzoxazole-5-and 6-carboxylic acids. Synthesis and characterization | |
JPH0586185A (ja) | 高分子量の任意に枝分かれしていることもあるポリ硫化アリーレンの製造方法 | |
JPH11315181A (ja) | 熱硬化性オキセタン組成物およびその硬化方法ならびに該方法により得られる硬化物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050318 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050329 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20050525 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20051004 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20051129 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20060523 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20060605 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100623 Year of fee payment: 4 |