JPH11320058A - 連続鋳造用モールドパウダおよび連続鋳造方法 - Google Patents
連続鋳造用モールドパウダおよび連続鋳造方法Info
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Abstract
場合に、表面品質が良好な鋳片を得ることが可能な連続
鋳造用モールドパウダおよびこのモールドパウダを用い
た連続鋳造方法の提供。 【解決手段】パウダは、CaO、SiO2 およびフッ素
化合物を基本成分とし、下記式で表されるCaO’とS
iO2 の重量%との比CaO’/SiO2 が0.9〜
2.8、フッ素化合物がCaF2 換算で約5〜60重量
%、さらにNa2 Oを0〜25重量%、Cを0〜10重
量%含んでいる。 CaO’=T.CaO−F ×(56/38) ここで、T.CaO:パウダ中の全Ca含有率のCaO
換算量(重量%) F:パウダ中の全F含有率(重量%)
Description
る場合に、または中炭素鋼等の鋼を鋳造する場合に、表
面品質が良好な鋳片を得ることが可能な連続鋳造用モー
ルドパウダに関する。さらに本発明は、このモールドパ
ウダを用いる連続鋳造方法に関する。
る自動車の外装用鋼板などは、通常、250mm程度の
厚みの連続鋳造鋳片から製造されている。その理由は、
表面品質と内部品質ともに良好な鋳片を用いるためと高
い生産性を得るためである。また、鋳造速度は2〜3m
/分程度が一般的である。これ以上の鋳造速度で鋳造し
た場合には、鋳片表面に縦割れが発生したり、鋳片内部
に非金属介在物が残存しやすく製品の欠陥の原因になる
場合があるからである。
と簡易な熱間圧延設備を、一つの製造ライン上に配置し
た電炉ミニミルプロセスが採用されている。この薄スラ
ブ連続鋳造法では、生産性の確保のため、少なくとも5
m/分程度の鋳造速度での操業を目標にしている。
包晶反応を起こすことから、鋳片の表面に縦割れが発生
しやすい。この中炭素鋼を、さらに薄スラブ連続鋳造法
で高速の鋳造速度で鋳造すると、鋳片の縦割れの発生が
助長される。低合金鋼についても、割れ感受性を高める
合金成分を含む場合には、鋳片に縦割れが発生しやす
い。
ウダとは、密接な関係があることは良く知られている。
連続鋳造法においては、浸漬ノズルから鋳型内へ溶鋼を
供給するとともに、鋳造中の鋳型内の溶鋼の表面にモー
ルドパウダを投入する。通常、このモールドパウダに
は、複数種類の酸化物、炭素等の粉体を混合したものが
使用される。鋳型内へ投入されたモールドパウダは、溶
鋼の持つ熱により溶融し、溶鋼表面において溶融スラグ
層が形成される。この溶融スラグ層は鋳型内壁と凝固殻
との間隙に流入し、スラグフィルムを形成する。このス
ラグフィルムは、鋳型との接触で冷却され鋳型内壁に沿
って凝固する。凝固部は、ガラス質部分と結晶質部分か
らなる。
は、以下の作用がある。
酸化防止 2)溶鋼中に存在し溶鋼表面に浮上してくる気泡および
介在物の吸収 3)鋳型内壁と凝固殻との間の潤滑性の確保 4)溶融スラグの伝熱抵抗の調整による凝固殻の冷却速
度の調整。
には、3)に示す溶融スラグによる潤滑性の確保が重要
である。また、鋳片表面の縦割れの防止に対しては、
4)の鋳型内の凝固殻、すなわち凝固初期の鋳片表面の
冷却速度の調整が重要である。
高速化を図ると、鋳型内壁と凝固殻との間隙への溶融ス
ラグの流入量は減少する。溶融スラグの流入量が減少
し、スラグフィルム厚みが減少した場合、潤滑不良によ
り凝固殻が鋳型内壁に拘束され、極端な場合にはブレー
クアウトなどの操業事故が起こる。そこで、溶融スラグ
の流入量の確保のため、モールドパウダ溶融時の凝固点
(以下、モールドパウダの凝固点)を低下させたり、粘
度を低下させる。しかし、モールドパウダの凝固点と粘
度を低下させると、スラグフィルムの厚さが不均一にな
りやすい。そのため、鋳型内の凝固殻の冷却速度が不均
一になり、鋳片表面に縦割れが発生しやすくなる。この
ように、鋳造速度の高速化に効果的な潤滑性と、鋳片表
面の縦割れを防止するのに効果的な凝固殻の冷却速度の
均一性の、両方の性質を併せ持つモールドパウダを作る
ことは、重要な技術課題である。
防止対策に関して、下記に示す方法が提案されている。
すなわち、特開平3−193248号公報では、モール
ドパウダにZrO2 、TiO2 、Sc2 O3 、Y2 O3
等のIII A族およびIV族の元素の酸化物を結晶析出促進
剤として添加する方法が提案されている。また、この公
報では、溶融スラグの粘度を、1300℃で1pois
e以下に低下させることにより、鋳造速度の高速化が達
成されるとされている。このモールドパウダは、溶融状
態から冷却される過程で結晶を析出し、この結晶が鋳型
内の鋳片表面を緩冷却する。この鋳片表面の緩冷却が、
鋳片表面の冷却速度を均一化する。
溶融スラグの粘度を下げることと、T.CaOのSiO
2 に対する重量%の比T.CaO/SiO2 を大きくす
ることが提案されている。ここで、T.CaOは、モー
ルドパウダ中に含有されるCaOと、CaF2 として存
在すると推定されるCa分をCaOに換算したものとの
和であって、下記の(Z)式で定義されている。
程度に大きくすると、溶融スラグの冷却する過程で結晶
が析出し、この結晶が鋳型内の鋳片表面を緩冷却すると
されている。
公報および特開平5−15955号公報で提案されてい
るモールドパウダを、包晶鋼を含む中炭素鋼に用いた場
合に、ある程度以上の高速で鋳造すると、モールドパウ
ダによる鋳片表面の緩冷却効果が不十分で、鋳片表面に
縦割れが発生する場合がある。つまり、このモールドパ
ウダを用いても、2〜3m/分程度以上の鋳造速度で鋳
造すると、鋳片表面に縦割れが発生する場合がある。
高いモールドパウダが、特開平5−269560号公報
で提案されている。このモールドパウダは、CaO/S
iO2 を1.1〜1.8とし、さらにCaO/Fが9〜
40の条件を満足するものである。
は、CaO/SiO2 の比較的高いモールドパウダが提
案されている。つまり、CaO/SiO2 を0.6〜
1.4とし、蛍石を10重量%まで配合することを提案
している。
合金鋼および低炭素鋼を、5m/分程度あるいはそれ以
上の鋳造速度で鋳造する場合に、鋳片表面の縦割れの発
生を防止するためには、モールドパウダの性能をさらに
向上させる必要がある。
続鋳造法に代表されるような高速での鋳造、また、中炭
素鋼のような鋳片表面に縦割れが発生しやすい鋼の連続
鋳造に好適なモールドパウダおよびそのモールドパウダ
を用いる連続鋳造方法を提供することを目的とする。
(1)、(2)および(3)に示す鋼の連続鋳造用モー
ルドパウダおよび(4)に示す鋼の連続鋳造方法にあ
る。
物を基本成分とし、下記(X)式で表されるCaO’の
重量%と、SiO2 の重量%との比CaO’/SiO2
が、0.9〜2.8であり、下記(Y)式で表されるC
aF2 含有率が、下記条件(A)または条件(B)のい
ずれかを満足し、さらにNa2 Oを0〜25重量%、C
を0〜10重量%含有することによる鋼の連続鋳造用モ
ールドパウダ。
1.9以下のとき CaF2 含有率が15〜60重量% (B)CaO’/SiO2 が1.9を超えて2.8以下
のとき CaF2 含有率が5〜60重量% ここで、CaO’=T.CaO−F ×(56/38) ・・・(X) CaF2 =F×(78/38) ・・・(Y) T.CaO:パウダ中の全Ca含有率のCaO換算量
(重量%) F:パウダ中の全F含有率(重量%) (2)CaO’/SiO2 が0.9以上、1.9以下の
とき、CaF2 含有率が20〜60重量%である上記
(1)に記載の鋼の連続鋳造用モールドパウダ。
poise以下である上記(1)または(2)に記載の
鋼の連続鋳造用モールドパウダ。
記載のモールドパウダを用いることによる鋼の連続鋳造
方法。
ダと記す)は、CaO’/SiO2、すなわち塩基度を
高めているので、溶融状態から凝固する過程で結晶の析
出量が多い。ただし、ただ単にパウダの塩基度を高める
だけでは、パウダの凝固点や粘度を高めることになる。
その場合には、鋼を高速で鋳造することが困難となる。
そこで、本発明者らは、パウダの高塩基度化と、凝固点
および粘度の低下というパウダにと両立の困難な特性
を、以下に示す(a)および(b)の手段で解決した。
ち凝固初期の鋳片表面の冷却速度の均一化が重要であ
る。この凝固初期の鋳片表面の冷却速度が不均一の場合
に、凝固殻の厚さは鋳片の幅方向で不均一になる。その
ため、凝固収縮により凝固殻に生じる応力が鋳片の幅方
向で均一に緩和されず、鋳片表面に縦割れが発生する。
下、単にフィルムと記す)を介して、鋳型内の凝固殻を
均一な冷却速度で冷却するためには、フィルムの伝熱抵
抗の増大が重要である。フィルムの伝熱抵抗が小さい
と、凝固殻は、鋳型による冷却効果のばらつきの影響を
大きく受ける。その場合には、鋳型の各位置で凝固殻の
冷却速度のばらつきが大きくなって、凝固殻の厚さが、
鋳型の幅方向で不均一になる。逆に、フィルムの伝熱抵
抗を大きくして、凝固殻の冷却速度を緩やかにすると、
凝固殻の厚さは鋳型の幅方向で均一化される。そのた
め、鋳片表面の縦割れの発生を防止できる。
O/SiO2 に代えて、上述の(X)および(Y)式で
表されるCaO’/SiO2 という新しい指標を採用す
ることにより、CaO−SiO2 −CaF2 を基本成分
とする三元系において結晶の析出しやすい組成範囲が選
択されている。そのため、溶融スラグの凝固過程で結晶
がより多く析出するので、溶融スラグの伝熱抵抗が大き
い。
とする三元系パウダ組成のなかでも、CaO’/SiO
2 が大きいので、溶融スラグの凝固過程で多くの結晶が
析出する。とくに、CaO’/SiO2 が0.9〜2.
8と高いので、結晶の析出量が多い。
を説明するためのCaO’−SiO2 −CaF2 3元系
の組成図である。本発明のパウダは、上述のように配合
するフッ素化合物のほとんどがCaF2 であるので、前
述の(X)および(Y)式から計算されるCaO’の値
と配合されているCaOの含有率は、ほぼ同等な値であ
る。したがって、便宜的に上記の3元系の組成図によっ
て、本発明のパウダを説明する。
0.9〜1.9で、CaF2 含有率が15〜60重量%
(以下、単に%と記す)の範囲の本発明のパウダの化学
組成範囲は、記号(a)で示す範囲である。すなわち、
CaO’/SiO2 が0.9の境界線1(CaO・Si
O2 とCaF2 100%とを結んだ直線)、CaO’/
SiO2 が1.9の境界線2(2CaO・SiO2 とC
aF2 100%とを結んだ直線)、CaF2 含有率が1
5%の直線、CaF2 含有率が60%の直線とで囲まれ
た領域である。
8以下で、CaF2 含有率が5〜60%の範囲の本発明
のパウダの化学組成範囲は、記号(b)で示す範囲であ
る。すなわち、CaO’/SiO2 が1.9の境界線
2、CaO’/SiO2 が2.9の境界線3(3CaO
・SiO2 とCaF2 100%とを結んだ直線)、Ca
F2 含有率が5%の直線、CaF2 含有率が60%の直
線とで囲まれた領域である。
CaF2 含有率が20〜60重量%の範囲の本発明のパ
ウダの化学組成範囲(図1中には、示していない)は、
CaO’/SiO2 が0.9の境界線1、CaO’/S
iO2 が1.9の境界線2、CaF2 含有率が20%の
直線、CaF2 含有率が60%の直線とで囲まれた領域
である。
じく、凝固殻を緩冷却する目的で用いられている従来の
パウダの化学組成範囲を(c)の記号で示した。さら
に、前述した塩基度の高い、浸漬ノズルの溶損防止を目
的とした従来のパウダの化学組成の範囲を(d)の記号
で示した。本発明のパウダは、従来のパウダに比べてC
aO’/SiO2 の値、すなわち塩基度が高いことが明
らかである。
CaF2 含有率が15〜60%の場合には、溶融状態か
らの冷却過程で、カスピディンと称する3CaO・2S
iO2 ・CaF2 または3CaO・2SiO2 の分子式
で表される結晶が多く析出する。
2.8以下の場合には、溶融スラグが冷却される過程
で、(6−x)CaO・2Si02 ・xCaF2 (x:
0〜6の任意の数)、4CaO・2SiO2 ・CaF2
の分子式で表される結晶が析出する。
凝固点と溶融速度の適正化 鋼の連続鋳造時のフィルムの厚みは、鋳型内壁と鋳型内
の凝固殻の間隙への溶融パウダの流入量によって決ま
る。過剰に流入した場合には、流入量の少ない位置と多
い位置との間でフィルムの厚みの差が大きくなり、凝固
殻の冷却速度が不均一になる。また、流入量が過度に少
ない場合には、フィルムの厚みが全体的に薄くなる。こ
のとき、フィルムの厚みのわずかな差が、凝固殻の冷却
速度を不均一にしやすい。このように溶融スラグの流入
量が多くても、また少なくても、鋳片表面に縦割れが発
生しやすい。また、溶融スラグの流入量が極端に少ない
場合には、ブレークアウトの操業事故となる場合があ
る。
グの鋳型内壁と鋳型内の凝固殻の間隙への流入量が減少
する傾向があるので、フィルムの厚みの確保と均一化が
重要な技術課題である。
固点および溶融時の粘度を適正範囲に調整することによ
り制御できる。
2 を含ませることにより、パウダの凝固点の低下と粘度
の低下を図っている。すなわち、CaO’/SiO2 が
0.9〜1.9の場合には、CaF2 を15〜60%含
有させることにより、適正な凝固点と粘度を得ている。
さらに、CaO’/SiO2 が1.9を超えて2.8以
下の場合には、CaF2 を5〜60%含有させることに
より、適正な凝固点と粘度を得ている。
を用いた連続鋳造方法について、以下に具体的に説明す
る。
素化合物の3成分である。それぞれのおおよその含有率
は、CaOが25〜70%、SiO2 が15〜35%、
フッ素化合物がCaF2 換算で5〜60%程度である。
本発明で、とくに重要なのは、CaO’とSiO2 の比
CaO’/SiO2 およびCaF2 含有率である。
れて凝固する過程で、多量の結晶が析出する。結晶が析
出する場合には、前述のように伝熱抵抗が大きくなるの
で、鋳型内壁と鋳型内の凝固殻の間に存在するフィルム
は、凝固殻、すなわち鋳片表面が急速に冷却されるのを
防止する作用を発揮する。以下、本発明のパウダの化学
組成について、溶融スラグの冷却過程での結晶析出の関
係を基に、その適正な範囲を説明する。
CaO’とSiO2 の比CaO’/SiO2 の値の算出
に用いるCaO’は、前述の(X)および(Y)式によ
って求められる値である。すなわち、パウダ中のT.C
aの分析値から、そのすべてがCaOであると仮定して
求められるCaOではない。まず、前述の(Y)式で示
したようにFの分析値からFの全量がCaF2 として存
在するものと仮定して、CaF2 含有率を求める。次
に、このCaF2 の形態で存在するCaを除いたCaが
CaOであるとして、CaO’を求める。また、SiO
2 の値は、パウダ中のSiの分析値を基にして求められ
る値である。
O2 の値が0.9以上、2.8以下とする。CaO’/
SiO2 がこの範囲内の場合には、溶融スラグが冷却さ
れて凝固する際に十分な量の結晶が析出する。CaO’
/SiO2 が0.9未満の場合には、十分な量の結晶の
析出が起こらない。また、CaO’/SiO2 が2.8
を超える場合には、パウダの凝固点が高すぎるので、鋼
を鋳造する際の溶鋼の温度ではパウダが溶融しにくい。
そのような場合には、鋳型内の溶鋼表面の溶融スラグの
厚みおよび鋳型内壁と鋳片の凝固殻との間のフィルムの
厚みを適正化するのが難しいため、連続鋳造の操業に支
障をきたす。したがって、CaO’/SiO2 は0.9
〜2.8とする。
の値が1.9とその前後、0.9とその近傍および2.
8とその近傍の場合には、結晶の析出がやや起こりにく
いので、もっとも好ましい範囲は1.1〜1.7および
2.1〜2.6である。
F2 含有率は、前述の(Y)式によって求められる値で
ある。したがって、CaF2 のみならず、フッ化ナトリ
ウム等のすべてのフッ素化合物中のF分を含んだFの分
析値をCaF2 含有率に換算した値である。ただし、本
発明のパウダの場合、配合するフッ素化合物は、ほとん
どがCaF2 である。
2 の含有率は、CaO’/SiO2が0.9〜1.9の
場合には15〜60%、1.9を超え2.8以下の場合
には5〜60%である。CaF2 が、それぞれこの範囲
内の含有率の場合には、溶融スラグが冷却されて凝固す
る際に十分な量の結晶が析出する。
CaF2 含有率が15〜60%の場合には、前述のとお
り、溶融状態からの冷却過程で、カスピディンと称する
結晶が多く析出する。図2は、この溶融スラグからのカ
スピディン結晶の析出量指数とCaO’/SiO2 との
関係を示した図である。CaO’/SiO2 が0.9〜
1.9の範囲では結晶の析出が多いが、0.9未満では
結晶の析出が少ない。従来のパウダでは緩冷却効果が不
十分で鋳片表面に縦割れが発生しやすいのは、このため
である。また、図2からCaO’/SiO2 が0.9〜
1.9の場合、好ましい範囲は1.1〜1.7であるこ
とが分かる。
結晶析出量に及ぼすCaF2 含有率の影響を示す図であ
る。CaF2 含有率が15%以上になると、急激に結晶
の析出が多くなり、CaF2 含有率が60%を超えると
析出量が少なくなる。また、CaF2 含有率が60%を
超えると、連続鋳造に用いられる浸漬ノズルが溶融スラ
グによって溶損されやすくなる。
〜1.9の場合には、CaF2 含有率は15〜60%と
した。好ましいCaF2 含有率は20〜60%、さらに
好ましくは25〜50%である。CaO’/SiO2 と
CaF2 含有率との組み合わせでもっとも好ましい範囲
は、CaO’/SiO2 の値で1.1〜1.7で、Ca
F2 含有率が25〜50%である。
2.8以下の場合には、前述のとおり、溶融スラグが冷
却される過程で、(6−x)CaO・2Si02 ・xC
aF2 (x:0〜6の任意の数)の分子式で表される結
晶などが析出する。図2に、溶融スラグからのこれらの
結晶の析出量指数とCaO’/SiO2 との関係を示
す。CaO’/SiO2 が1.9を超えて2.8以下の
範囲では結晶の析出量が多い。CaO’/SiO2 が
0.9〜1.9の場合に比べると、析出する結晶が相違
し、結晶の種類が多いこと、さらに析出量が多いという
特徴がある。図2から、CaO’/SiO2 が1.9を
超えて2.8以下の場合、好ましい範囲は、2.1〜
2.6であることが分かる。
え2.8以下の場合の結晶の析出指数とCaF2 含有率
との関係を示した。CaF2 含有率が5%を超えると結
晶の析出量が増加している。CaO’/SiO2 が高い
ために、CaF2 含有率が低くても結晶が析出しやすい
傾向がある。これらの結晶の析出量は、CaF2 含有率
が60%を超えると減少するとともに、連続鋳造に用い
られる浸漬ノズルが溶融スラグによって溶損されやすく
なる。
を超え2.8以下の場合には、CaF2 含有率は5〜6
0%とした。好ましいCaF2 含有率は20〜60%、
さらに好ましくは25〜50%である。CaO’/Si
O2 とCaF2 含有率との組み合わせでもっとも好まし
い範囲は、CaO’/SiO2 が2.1〜2.6で、C
aF2 含有率が25〜50%である。
速度 5m/分またはそれ以上の速度で鋳造する場合には、前
述のとおり、フィルムの厚みを確保しにくい。このフィ
ルムの厚みを確保するためには、溶融スラグの粘度を適
正な範囲にすることが必要である。
融時の粘度は、1300℃で1.5poise以下が望
ましい。鋼種によっては、1.5poiseを超える粘
度の場合には、鋳型内壁と鋳型内の凝固殻との間隙に流
入する溶融スラグの量が不足し、鋳片表面に縦割れが発
生したり、連続鋳造が困難となることがある。
には、大部分のパウダの凝固点は1100〜1300℃
程度となる。このパウダの凝固点の範囲は、前述の高速
で鋳造する場合に適した凝固点である。ただし、本発明
で規定する化学組成範囲のパウダであっても、パウダの
凝固点が1300℃以上になる場合がある。
含有率を高くし、パウダの凝固点を下げるのがよい。N
a2 Oの含有率は、上述の効果を得る場合には2%以上
とするのが望ましい。一方、Na2 O含有率が25%を
超えると、それ以上配合しても凝固点の低下効果が小さ
い。したがって、Na2 Oを配合する場合には、2〜2
5%とするのが望ましい。また、凝固点の調整には、凝
固点を下げる場合には、Na2 Oの他にLi2 O等の酸
化物、凝固点を上げる場合には、ZrO2 、MgO等の
酸化物を適宜配合するのが良い。
られた場合に、徐々に燃焼するので、パウダの溶融速度
を調整する添加剤として有効であり、必要により配合す
ればよい。その効果を得るためには、含有率は1%以上
とするのが望ましい。一方、Cの含有率が10%を超え
ると、パウダの溶融速度が過度に遅くなるので、連続鋳
造操業が困難となる。したがって、Cを配合する場合に
は、1〜10%とするのが望ましい。
に使用されているパウダの原料で構わない。CaO原料
として生石灰、石灰石、セメント、SiO2 原料として
は、珪砂、軽藻土、CaF2 原料としては、蛍石、さら
にNa2 O原料としては、ソーダ灰、炭酸ナトリウムな
どが挙げられる。
が望ましい。なお、これらの原料にはAl2 O3 、Mg
O、Fe2 O3 、Fe3 O4 等の酸化物が含有されてお
り、パウダにも不可避的に含まれるようになるが、これ
らの不純物が存在しても、とくに差し支えない。
法 これら本発明のパウダを用いることにより、鋼、なかで
もC含有率が0.05〜0.20%の鋼を、鋳片表面に
縦割れを発生することなく高速で安定して連続鋳造する
ことができる。
の鋼は、溶鋼からの凝固過程で包晶反応と呼ばれる相変
態を起こす。この相変態により、鋳片表面に縦割れが発
生しやすくなる。加えて、高速で鋳造する場合には、鋳
型内の凝固殻に不均一冷却の影響が加わり、鋳片表面の
縦割れが、さらに発生しやすい。
n、Cr、Ni、Ti、Mo、Nb、V等の鋳片の割れ
感受性を高める合金元素を含有している低合金鋼は、こ
れらの合金元素とCとの相乗作用で鋳片に縦割れが発生
しやすい。
も、とくに5m/分程度またはそれ以上の高速で鋳造す
る場合に、鋳片表面に縦割れが発生しやすい。
合に、本発明のパウダを用いることにより、5m/分ま
たはそれ以上の鋳造速度で、鋳片表面の縦割れの発生す
ることなく、連続鋳造が可能である。本発明のパウダ
は、C含有率が0.05%未満の鋼の連続鋳造にも好適
であることは言うまでもない。
鋼を2.0m/分程度の低速度の鋳造速度で鋳造して
も、フィルムの厚みの確保は十分であり、また鋳片表面
に縦割れも発生しない。
m、幅1000mmの鋳片を連続鋳造した。
および低炭高Mn鋼を対象に、低炭素鋼は、鋳造速度6
m/分、それ以外の鋼は、鋳造速度5m/分で鋳造し
た。
れを調査した。縦割れの発生程度は評価A〜Eで表示す
ることとし、その評価基準は下記のとおりである。
の発生長さの合計値が、評価Aは5mm未満、評価Bは
5〜10mm未満、評価Cは10〜100mm未満、評
価Dは100〜500mm未満、そして評価Eは500
mm以上である。評価C〜Eの鋳片は、そのまま圧延す
ると製品品質上問題となるが、評価AおよびBの鋳片
は、そのまま圧延しても実用上支障はない。
ダを用いた鋳造試験は、本発明例の連続鋳造方法の試験
であることをも意味している。
〜1.9、CaF2 含有率が15〜60%である本発明
例のパウダおよび従来の塩基度の低い比較例のパウダを
用い、表1に示した鋼No.1の中炭素鋼を鋳造した。
明例のパウダを用いた本発明例の試験であり、試験N
o.16〜18は、CaO’/SiO2 が本発明で規定
する下限を外れた比較例のパウダを用いた比較例の試験
である。
〜6に用いたパウダは、CaO、SiO2 およびCaF
2 の基本成分系を配合したパウダである。試験No.6
に用いたパウダは、フッ素化合物としてCaF2 以外に
若干のNaFを含有するパウダである。試験No.7〜
11に用いたパウダは、基本成分系にNa2 Oを配合し
たパウダで、試験No.12および13に用いたパウダ
は、基本成分系にCを配合したパウダで、試験No.1
4および15に用いたパウダは、基本成分系にNa2 O
およびCを配合したパウダである。これらの試験No.
1〜15に用いたパウダの1300℃での粘度は0.1
9〜0.83poiseで、凝固点は1124〜122
7℃である。
た鋳片の縦割れの評価は、試験No.2、8および11
を除き、評価Aで良好であった。試験No.2および試
験No.8に用いたパウダは、CaO’/SiO2 が
0.9および1.0と低めで、結晶の析出量がやや少な
く、鋳片の緩冷却効果がやや小さいパウダであったた
め、鋳片の縦割れ評価は、いずれも評価Bであった。
0℃における粘度が0.19とやや低いため、このパウ
ダを用いて鋳造した鋳片の縦割れ評価は、評価Bであっ
た。試験No.14の場合は、CaO’/SiO2 が
1.0と低めである。鋳片には縦割れがまったく発生し
なかった。その理由は、Cを添加してパウダの溶融速度
の調整を行ったためである。
較例のパウダは、本発明例のパウダと同じくCaO、S
iO2 およびCaF2 を基本成分系とし、Na2 Oおよ
びCを配合したものである。しかし、CaO’/SiO
2 が0.5〜0.7で、本発明で規定する下限を外れて
いる。
て鋳造した鋳片には、縦割れ評価D〜Eの著しい縦割れ
が発生した。したがって、CaO’/SiO2 が本発明
で規定する下限値0.9に満たないパウダを用いた場
合、中炭素鋼を5m/分の高速の鋳造速度で鋳造するの
は、鋳片の品質上困難である事が確認された。
を超えて2.8以下、CaF2 含有率が5〜60%であ
る本発明例のパウダおよび従来の塩基度の低い比較例の
パウダを用い、表1に示した鋼No.2の中炭素鋼を鋳
造した。
発明例のパウダを用いた本発明例の試験であり、試験N
o.27および28は、CaO’/SiO2 またはCa
F2含有率が本発明で規定する下限を外れた比較例のパ
ウダを用いた比較例の試験である。
19および20に用いたパウダは、基本成分系のCa
O、SiO2 およびCaF2 にCを配合したパウダで、
試験No.21〜26に用いたパウダは、基本成分系に
Na2 OおよびCを配合したパウダである。試験No.
20に用いたパウダは、フッ素化合物としてCaF2 以
外に若干のNaFを含有するパウダである。これらの試
験No.19〜26に用いたパウダの1300℃での粘
度は0.31〜0.41poiseで、凝固点は116
3〜1224℃である。
た鋳片の縦割れの評価は、試験No.23、24および
26を除き、評価Aで良好であった。試験No.23お
よび24に用いたパウダは、CaO’/SiO2 が2.
4〜2.6であるが、CaF2 含有率が10〜12%と
低く、溶融スラグの流入量がやや少ないパウダであった
ため、鋳片の縦割れ評価は、いずれも評価Bであった。
2 含有率が7%と低いが、CaO’/SiO2 が2.7
と高く、結晶の析出量が多いため、鋳片の縦割れ評価
は、評価Aで良好であった。
C含有率が0.5%と低く、溶融スラグ層の厚みが過度
に大きくなり、溶融スラグの流入量が不均一になったた
め、鋳片の縦割れ評価は、評価Bであった。
パウダは、本発明例のパウダと同じく、基本成分系のC
aO、SiO2 およびCaF2 にNa2 OおよびCを配
合したものである。しかし、CaO’/SiO2 が0.
8で、本発明で規定する下限を外れている。
には、縦割れ評価Eの著しい縦割れが発生した。したが
って、CaO’/SiO2 が本発明で規定する下限値
0.9に満たないパウダを用いる場合、中炭素鋼を5m
/分の高速の鋳造速度で鋳造するのは、鋳片の品質上困
難である事が確認された。
パウダは、CaO’/SiO2 が2.5であるにもかか
わらず、CaF2 含有率が2.3%で本発明で規定する
下限を外れている。このため、パウダの凝固点が145
0℃と高くなり、鋳造が困難となるため、中炭素鋼の鋳
造試験に用いることができなかった。
〜1.9、CaF2 含有率が15〜60%である本発明
例のパウダおよび従来の塩基度の低い比較例のパウダを
用い、表1に示した鋼No.3の低炭素鋼を鋳造した。
は、本発明例のパウダを用いた本発明例の試験であり、
試験No.31および32は、CaO’/SiO2 が本
発明で規定する下限を外れた比較例のパウダを用いた比
較例の試験である。
は、基本成分系のCaO、SiO2およびCaF2 にC
のみ、またはNa2 OおよびCを配合したパウダであ
る。これらのパウダは、CaO’/SiO2 が1.4〜
1.5、CaF2 含有率が45〜50%、1300℃で
の粘度が0.40〜0.42poise、凝固点が11
96〜1219℃である。
た鋳片の縦割れの評価は、すべて評価Aで良好であっ
た。
た比較例のパウダは、本発明例のパウダと同じくCa
O、SiO2 およびCaF2 を基本成分系とし、Na2
OおよびCを配合したものである。しかし、CaO’/
SiO2 が0.8で本発明で規定する下限を外れてい
る。
いて鋳造した鋳片の縦割れの評価は、ともに評価Bであ
った。縦割れが少ししか発生しなかったのは、低炭素鋼
は、もともと鋳片表面の縦割れの発生が少ないことに起
因する。ただし、この比較例のパウダを用いて鋳造した
鋳片の縦割れ評価Bは、本発明例のパウダを用いて鋳造
した鋳片の縦割れの評価Aよりは悪かった。したがっ
て、低炭素鋼を6m/分の高速の鋳造速度で鋳造する場
合、本発明例の塩基度の高いパウダを用いたほうが良い
事が確認された。
〜1.9、CaF2 含有率が15〜60%である本発明
例のパウダおよび従来の塩基度の低い比較例のパウダを
用い、表1に示す鋼No.4の低炭高Mn鋼を鋳造し
た。
は、本発明例のパウダを用いた本発明例の試験であり、
試験No.35および36は、CaO’/SiO2 が本
発明で規定する下限を外れた比較例のパウダを用いた比
較例の試験である。
例のパウダは、基本成分系のCaO、SiO2 およびC
aF2 にCのみ、またはNa2 OおよびCを配合したパ
ウダである。これらのパウダは、CaO’/SiO2 が
1.4、CaF2 含有率が48〜54%、1300℃で
の粘度が0.38〜0.41poise、凝固点が11
68〜1209℃である。
鋳片の縦割れの評価は、すべて評価Aで良好であった。
た比較例のパウダは、本発明例のパウダと同じくCa
O、SiO2 およびCaF2 の基本成分系にNa2 Oお
よびCを配合したものである。しかし、CaO’/Si
O2 が0.7で本発明で規定する下限を外れている。
片の縦割れの評価は、評価Bおよび評価Cであった。し
たがって、CaO’/SiO2 が本発明で規定する下限
値0.9に満たないパウダを用いた場合、低炭高n鋼を
5m/分の高速の鋳造速度で鋳造するのは、鋳片の品質
上困難な場合がある事が確認された。
ダを用いることにより、薄スラブ連続鋳造法に代表され
るような高速の鋳造速度で、また、中炭素鋼のような鋳
片表面に縦割れが発生しやすい鋼を連続鋳造することが
可能である。
明するためのCaO’−SiO2 −CaF2 3元系の組
成図である。
の析出量指数とCaO’/SiO2 との関係を示した図
である。
の析出量指数とCaF2 含有率との関係を示した図であ
る。
Claims (4)
- 【請求項1】CaO、SiO2 およびフッ素化合物を基
本成分とし、下記(X)式で表されるCaO’の重量%
と、SiO2 の重量%との比CaO’/SiO2 が、
0.9〜2.8であり、下記(Y)式で表されるCaF
2 含有率が、下記条件(A)または条件(B)のいずれ
かを満足し、さらにNa2 Oを0〜25重量%、Cを0
〜10重量%含有することを特徴とする鋼の連続鋳造用
モールドパウダ。 (A)CaO’/SiO2 が0.9以上、1.9以下の
とき CaF2 含有率が15〜60重量% (B)CaO’/SiO2 が1.9を超えて2.8以下
のとき CaF2 含有率が5〜60重量% ここで、CaO’=T.CaO−F ×(56/38) ・・・(X) CaF2 =F×(78/38) ・・・(Y) T.CaO:パウダ中の全Ca含有率のCaO換算量
(重量%) F:パウダ中の全F含有率(重量%) - 【請求項2】CaO’/SiO2 が0.9以上、1.9
以下のとき、CaF2 含有率が20〜60重量%である
ことを特徴とする請求項1に記載の鋼の連続鋳造用モー
ルドパウダ。 - 【請求項3】1300℃における粘度が1.5pois
e以下であることを特徴とする請求項1または請求項2
に記載の鋼の連続鋳造用モールドパウダ。 - 【請求項4】請求項1、請求項2または請求項3に記載
のモールドパウダを用いることを特徴とする鋼の連続鋳
造方法。
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