JP2673077B2 - 鋼の連続鋳造用鋳型添加剤及び連続鋳造方法 - Google Patents

鋼の連続鋳造用鋳型添加剤及び連続鋳造方法

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JP2673077B2
JP2673077B2 JP4066185A JP6618592A JP2673077B2 JP 2673077 B2 JP2673077 B2 JP 2673077B2 JP 4066185 A JP4066185 A JP 4066185A JP 6618592 A JP6618592 A JP 6618592A JP 2673077 B2 JP2673077 B2 JP 2673077B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼の連続鋳造において
鋳型内に散布して使用される鋼の連続鋳造用鋳型添加剤
及び該鋳型添加剤を使用する鋼の連続鋳造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】鋼の連続鋳造用鋳型添加剤(以下、パウ
ダーと略称する)はポルトランドセメント、黄燐スラ
グ、合成珪酸カルシウム、ウォラストナイトなどを主原
料とし、必要に応じてSiO2質原料を加え、ソーダ灰
や蛍石などのフラックス原料、溶融速度調整剤としての
炭素質原料を添加したものが一般的である。
【0003】パウダーは鋳型内へ注入された溶鋼表面上
へ添加され、種々の役割を果たしながら消費される。特
に、鋳型と凝固シェルの潤滑、溶鋼から浮上する介
在物の溶解及び吸収、溶鋼の保温などが主要な役割で
ある。とはパウダーの軟化点、粘度などを調整する
ことが必要であり、化学組成の選定が肝要である。ま
た、の溶鋼保温については主に炭素質原料によって調
整される溶融速度や嵩比重、拡がり性などの粉体特性が
重要とされている。
【0004】我が国における連続鋳造技術の進展は目覚
ましく、粗鋼の95%以上が連続鋳造によって生産され
ている。更に、HCR(ホットチャージ)、HDR(ホッ
トダイレクトローリング)比率の向上、高速鋳造などが
積極的に進められている。従って、鋳片品質や操業安定
度に多大な影響を与えるパウダーに対する要求も一段と
厳しいものがあり、必要とされるパウダーも多種多様と
なっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】近年の高速鋳造化は著
しく、スラブ連鋳でも1.5〜3.0m/分の高速鋳造が
実施されている。このような条件下では周知の通り、よ
り低粘度パウダーが必要であり、従来のパウダーより多
量のフッ素を含有するパウダーが使用されている。その
結果、鋳型内で使用される浸漬ノズルの溶損速度が増大
するという問題が引き起こされている。浸漬ノズルはパ
ウダースラグと接触する部分が損傷し易いため、パウダ
ースラグに対する溶解度の低いZrO2を主成分とした
ZrO2−C(カーボン)系材料で補強されたものが一般
に使用されている。しかし、フッ素含有量の高いパウダ
ースラグに対しては必ずしも十分な耐用を示さないこと
が多い。従って、高速鋳造や多連鋳を安定に実施するた
めにはZrO2−C系材料を損傷しにくい低腐食性パウ
ダーの開発が必要である。
【0006】また、最近、浸漬ノズル溶損低減を目的
に、ZrO2をパウダー中に含有させる方法も提案され
ているが、ZrO2はパウダースラグへの溶解度、溶解
速度が低いため、短時間では均一なスラグが得られず、
パウダーの本来の機能を果たし得ない。仮に、溶解した
としても粘度や結晶化温度を上昇させるため使用範囲が
限定されるという欠点を有する。また、ZrO2を含有
させたとしても多量のフッ素を含有させると溶損速度が
大きくなり期待する結果は得られない。
【0007】従って、本発明の目的は、浸漬ノズルを損
傷することがないモールドパウダー及びそれを使用した
鋼の連続鋳造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らはパウダース
ラグによる浸漬ノズルの溶損を防止するために種々検討
した結果、CaO/SiO2重量比、CaO/F重量比
を規制することにより浸漬ノズルのパウダーラインに使
用されているZrO2−C系材料の溶損速度を著しく低
減できることを見出した。
【0009】即ち、CaO/SiO2重量比を1.1〜
1.8に、CaO/F重量比を9〜40に規制すること
により浸漬ノズルのパウダーラインの溶損速度が軽減で
き、浸漬ノズルの耐用を大幅に向上できることが判明し
た。
【0010】また、パウダーラインに使用するZrO2
−C系材料の骨材に使用するZrO2原料としてはCa
Oを3〜30%添加したCaO−ZrO2系原料が好ま
しく、その配合量を30〜80%とすることによりZr
2−C系材料の溶損速度は最も低くなる。更に、前記
したパウダーとZrO2−C系材料を少なくともパウダ
ーラインに配した浸漬ノズルを併用することにより浸漬
ノズルの耐用時間は大幅に伸び、安定した多連鋳、高速
鋳造が可能であることが判明した。
【0011】即ち、本発明に係るパウダーは、CaO、
Al23 、SiO2 及びCを主成分とし、且つSを実質
上含まないパウダーであって、CaO/SiO2重量比
が1.1〜1.8で、CaO/F重量比が9〜40である
ことを特徴とする。
【0012】更に、本発明に係る鋼の連続鋳造方法は、
CaO−ZrO2系原料を主骨材とするZrO2−C系材
料を少なくともパウダーラインに配した浸漬ノズルと上
記パウダーを併用することを特徴とする。
【0013】
【作用】浸漬ノズルのパウダーラインに使用されるZr
2−C系材料の骨材原料としてはCaO、MgO、Y2
3などを添加した部分安定化あるいは安定化ZrO2
使用されている。ZrO2−C系材料の実使用時におけ
る損傷は主にこれらZrO2原料粒子のパウダースラ
グへの溶解と、パウダースラグとの接触による脱安定
化に伴う粒子の崩壊、細粒化によって進むと考えられ
る。
【0014】しかし、ZrO2は基本的にCaO−Si
2系スラグへの溶解度が非常に低く、ZrO2−C系材
料の損傷には大きく影響していないと考える。事実、実
機で使用された浸漬ノズルの損傷状態を観察すると、Z
rO2粒子の細粒化が顕著であり、溶解による損傷形態
は殆ど観察されない。即ち、ZrO2−C系材料のパウ
ダースラグによる損傷は骨材として使用されている部分
安定化あるいは安定化ZrO2原料の脱安定化に伴う細
粒化現象を抑制することにより軽減できると考えられ
る。
【0015】そこで、本発明者らは部分安定化、安定化
ZrO2の脱安定化に及ぼすパウダー成分の影響に着目
し、本発明を見出した。即ち、脱安定化現象はパウダー
スラグの 1)CaO/SiO2が低い場合(従って、SiO2が多
い)、 2)CaO/Fが低い場合、 に顕著であることが確認された。
【0016】本発明者らの実験結果を図1〜3に示す。
図1はパウダーのフラックス成分を同一(Na2O=10
%、F=6%)とし、CaO/SiO2重量比(塩基度)だ
けを変化させたときのCaO添加部分安定化ZrO2
料の安定化度の変化(1500℃/30分間加熱)、及び
CaO添加ZrO2−C系材料の溶損速度指数(1600
℃/3時間加熱)を示している。高塩基度パウダーほど
安定化度の変化が小さく溶損速度指数も低いことが判
る。なお、CaO添加ZrO2−C系材料は、CaO安
定化ZrO245重量%、バッデライト30重量%、黒
鉛20重量%、SiC5重量%よりなるものである。
【0017】図2はCaO、MgO、Y23により安定
化させたZrO2原料を骨材としたZrO2−C系材料の
実機における溶損速度を示している。表1にZrO2
C系材料の配合、物性値及び溶損速度指数を示す。ま
た、パウダーとしては後述の実施例中の本発明品2を使
用した。
【0018】
【表1】
【0019】表1及び図2から明らかなようにMgO安
定化ZrO2を使用したZrO2−C系材料のの溶損速度
が最も大きいことが分かる。また、溶損部分を観察する
と骨材であるZrO2原料粒子が著しく細粒化している
ことが判明した。一方、Y23粒子を添加したZrO2
を使用したZrO2−C系材料は最も溶損速度が低く、
ZrO2粒子の細粒化の程度もMgO添加品に比べ非常
に小さいことが確認できる。しかし、Y23添加ZrO
2は価格も非常に高く現実的には使用は難しい。従っ
て、ZrO2−C系材料の骨材としてはCaOを添加し
た安定化あるいは部分安定化ZrO2が最も好ましい。
即ち、パウダースラグに対する安定性(脱安定化挙動)と
価格の面からCaO添加による安定化あるいは部分安定
化ZrO2がZrO2−C系材料の骨材として最も好まし
い。
【0020】図3はCaO/F重量比のZrO2−C系
材料の溶損に及ぼす影響を示している。図3から明らか
なようにCaO/F重量比が9を超えると溶損速度が著
しくなることが分かる。従来の組成範囲のパウダーでは
高フッ素になると一般に溶損速度が大きくなるが、本発
明のようにCaO/Fを大きくすることにより同一フッ
素量としてもZrO2原料の脱安定化現象を軽減でき、
ZrO2−C系材料の溶損速度を低減できることが判明
した。なお、溶損速度は実操業データより算出したもの
であり、ZrO2−C系材料は表1のDを使用した。
【0021】ここで、各成分の添加量、構成比を規定す
る理由について述べる。CaO/SiO2重量比は1.1
〜1.8とする。本発明の場合、粘度低下に効果がある
フッ素量が少ないためCaO/SiO2重量比が1.1未
満では目的とする粘性が得られないのと、SiO2量が
多くなるためZrO2粒子の細粒化現象が顕著になる問
題がある。該重量比が1.8を超えると結晶化温度や溶
融温度が高くなり過ぎるためパウダーとして適当でな
い。また、安定化あるいは部分安定化ZrO2粒子(以
下、単にZrO2粒子と言う)の脱安定化に伴う細粒化は
CaO/Fが9未満になると顕著になるため、9以上、
好ましくは12以上が良い。しかし、該重量比が40を
超えるとパウダースラグの結晶化温度が著しく上昇し、
パウダー本来の役割である鋳型と凝固シェル間の潤滑に
問題を生ずるためCaO/F重量比は9〜40、好まし
くは12〜30の範囲内が好ましい。
【0022】パウダーに添加されている他成分について
は使用条件(鋳造条件)に応じて自由に選択、調整するこ
とが可能であり、本発明の効果を損なうものではない。
各種成分の最適添加量について以下に述べる。
【0023】主に溶融性調整剤として使用されるアルカ
リ金属の酸化物は、3重量%未満では十分な効果がな
く、20重量%を超えると溶融温度が低くなり過ぎるた
め添加量としては3〜20重量%が好ましい。Al23
は高濃度になるとパウダースラグ中に比較的高融点の2
CaO・Al23・SiO2を生成させ、潤滑性に問題
が起き易くなるため8重量%以下が良い。MgOは主に
軟化温度、溶融温度を調整するために添加するが、1重
量%未満では効果が小さく、10重量%を超えると結晶
化温度が高くなり過ぎるなどの問題があり、添加すると
しても1〜10重量%が好ましい。
【0024】その他のフラックス成分としてMnO、B
aO、B23、TiO2などが考えられるが、これらは
基本的にはZrO2−C系材料の耐用を低下させる成分
であり、パウダーの溶融特性を調整する目的で使用する
としても1〜5%程度が妥当である。
【0025】炭素質原料はパウダーの溶融速度調整のた
め添加するが、0.5重量%未満では効果がなく、8重
量%を超えると溶融速度が遅くなり過ぎるため0.5〜
8重量%が好ましい。
【0026】浸漬ノズルのパウダーラインに使用するZ
rO2−C系材料には、CaOを3〜30重量%添加し
たZrO2を骨材として使用することが好ましい。Ca
Oが3重量%未満では安定化率が低く、加熱、冷却時に
粒子の割れ、材料の崩壊現象が見られ好ましくない。ま
た、30重量%を超えるとZrO2本来の特徴が失わ
れ、パウダースラグへの溶解速度も極端に大きくなるた
めに好ましくない。また、ZrO2−C系材料への配合
比率は30重量%未満ではZrO2の特徴が生かし切れ
ず期待する耐用は得られない。逆に80重量%を超える
と相対的にカーボンの配合比率が低くなり過ぎるため使
用時の切損、パウダースラグの材料中への浸透が大きく
なるなどの問題が発生する。
【0027】本発明によるパウダーは上述のような化学
組成になるように各原料を配合したのち、V型ミキサー
やナウタミキサーなどで均一に混合することにより得ら
れる(粉末パウダー)。また、原料混合物を加水混練し、
押出造粒機によって柱状体の顆粒を得たり、混合物をス
ラリー化したのち、スプレー造粒法により球状のパウダ
ーを得ることもできる。
【0028】本発明によるパウダーは以下に示すような
一般に使用されている原料で構成できる。 基材原料:ポルトランドセメント、黄リンスラグ、高炉
スラグ、ウォラストナイト、合成珪酸カルシウムなど SiO2原料:パーライト、フライアッシュ、ケイ砂、
ケイ石など Na2O、K2O、Li2O:炭酸塩、ガラス粉、フリッ
ト粉など MgO原料:炭酸塩、海水MgO粉、ドロマイト粉など 炭素質原料:コークス粉、りん状黒鉛、カーボンブラッ
クなど
【0029】
【実施例】
実施例1 以下の表2に、従来品並びに本発明品のパウダーの原料
配合、化学成分、諸特性を記載する。
【0030】
【表2】
【0031】実施例2 パウダーとして本発明品3〜6、パウダーライン材質と
して表1に示すZrO2−C系材料D(ZrO276%、
C20%)を配設した浸漬ノズルを使用して操業した場
合の浸漬ノズルの耐用性を表2の浸漬ノズル溶損指数と
して示す。なお、浸漬ノズルは二孔タイプで、吐出口角
度は下向き25度、パウダーラインの肉厚は25mmの
ものを使用した。対象鋼種は主に低炭素Alキルド鋼、
連続鋳造機は垂直曲げ型スラブCC、連々数4〜7ヒー
ト、鋳造時間(30分/ヒート)の条件で操業した。ま
た、パウダーはスクリュウタイプの自動供給機を用いて
モールド内へ散布した。本実施例において、本発明品は
いずれも従来のパウダー1、2に比べ溶損量が半減し
た。その結果、鋳造中の溶断事故も皆無であった。ま
た、パウダースラグ中のZrO2量は1.0%未満で、多
くの場合0.5%以下であり、ZrO2によるスラグ特性
の変化も小さく、BO予知警報も皆無であった。
【0032】
【発明の効果】本発明によるパウダーは浸漬ノズルの少
なくともパウダーラインに配されたZrO2−C系材料
のパウダースラグによる溶損速度が低いため、 浸漬ノズルの耐用時間が伸び、多連鋳が可能; パウダースラグ中に溶解、懸濁するZrO2濃度が低
く、ブレークアウト頻度が低い、などの効果が得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】パウダーのCaO/SiO2重量比のジルコニ
ア安定化率及びZrO2−C系材料の溶損速度に及ぼす
影響を示すグラフである。
【図2】ZrO2の安定化剤の溶損速度に及ぼす影響を
示すグラフである。
【図3】パウダーのCaO/F重量比の溶損速度に及ぼ
す影響を示すグラフである。

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 CaO、Al23 、SiO2 及びCを主
    成分とし、且つSを実質上含まない鋼の連続鋳造用鋳型
    添加であって、CaO/SiO2重量比が1.1〜1.
    8で、CaO/F重量比が9〜40であることを特徴と
    する鋼の連続鋳造用鋳型添加剤。
  2. 【請求項2】 鋼の連続鋳造方法において、CaO−Z
    rO2系原料を主骨材とするZrO2−C系材料を少なく
    ともパウダーラインに配した浸漬ノズルと請求項1記載
    の鋼の連続鋳造用鋳型添加剤を併用することを特徴とす
    る鋼の連続鋳造方法。
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