JP3638706B2 - 鋼の連続鋳造用モールドパウダー - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の連続鋳造においてモールド内に添加して使用される、鋼の連続鋳造用モールドパウダーに関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、ポルトランドセメント、合成珪酸カルシウム、ウォラストナイト、黄リンスラグなどを主原料とし、必要に応じシリカ質原料を加え、更にはソーダ灰、蛍石、フッ素化合物、アルカリ金属化合物や炭酸塩と、溶融速度調整剤として炭素質原料を添加したものが一般的である。
【0003】
モールドパウダーは、モールド内の溶鋼表面に添加され、種々の役割を果たしながら消費される。主な役割としては、▲1▼モールドと凝固シェルの潤滑、▲2▼溶鋼から浮上する介在物の溶解及び吸収、▲3▼溶鋼の保温、▲4▼抜熱速度のコントロールなどが主要な役割である。
【0004】
▲1▼及び▲2▼は、モールドパウダーの軟化点、粘度などを調整することが重要であり、化学組成の選定が肝要である。▲3▼については主に炭素質原料によって調整される溶融速度やかさ比重、拡がり性などの粉体特性が重要とされている。▲4▼については、凝固温度などを調整することが必要で、化学組成の選定が肝要である。
【0005】
我が国における連続鋳造技術の進歩には目覚ましいものがあり、更に発展し続けている。また、HCR、HDR比率の向上、高速鋳造などが積極的に進められている。従って、鋳片品質や操業安定性に多大な影響を与えるモールドパウダーに対する要求も一段と厳しくなっており、必要とされるモールドパウダーも多種多様になっているのが現状である。
【0006】
従来使用されているモールドパウダーは、基材原料として、ポルトランドセメント、リンスラグ、合成スラグ、ウォラストナイトなとが使用され、溶融調整剤としてNa2CO3、Li2CO3、MgCO3、CaCO3、SrCO3、MnCO3、BaCO3などの炭酸塩や、更には、NaF、Na3AlF6、蛍石、MgF2、LiF、硼砂、スポジュメンなどを使用し、溶融速度調整剤として炭素質原料を添加しているのが一般的である。
【0007】
一方、基材原料に合成珪酸カルシウムを使用したタイプ(セミプリメルトタイプ)や炭素粉を除いたモールドパウダーを予め溶解し、適切な粒度に粉砕し、その後に炭素粉を添加する完全溶融型モールドパウダー(プリメルトタイプ)も使用されている。
【0008】
しかしながら、近年、高速鋳造化は著しく、スラブ連鋳においても1.5m/分以上の高速鋳造が実施されている。このような条件下で安定に使用されるモールドパウダーは周知の通り適当な粘度と凝固温度に調整する必要がある。
【0009】
また、近年、特に鋼の高品質化の要求は著しく、これらの厳格な鋼の連鋳化に際し、介在物起因の欠陥がしばしば大きな問題となっている。
【0010】
この介在物起源は、主に脱酸生成物であるAl2O3やモールドパウダーが主体であり、鋼の高品質化には溶鋼の高清浄化とパウダー性介在物の低減が極めて重要なことは周知の通りである。
【0011】
溶鋼の高清浄化については、精錬方法や設備等の改善の手段を講じているが、パウダー性介在物を低減させるためには、モールドパウダーの粘度を高粘度化したり、高表(界)面張力化する手段が一般的であるが、その手段を講じることで、モールドと凝固シェルとの潤滑性が低下したり、抜熱が不均一になり、鋳片表面割れが発生する場合や、安定操業が損なわれることがあり、これらの手段を講じたモールドパウダーだけでは、好ましいモールドパウダーは得られない。
【0012】
一方、高Al鋼を対象としたSiO2添加量の低いモールドパウダーが、例えば特公昭63−56019号公報、特開平3−77753号公報に開示されている。しかし、これらの公報に開示されている組成に調合したモールドパウダーを実機で使用すると、高融点原料と、低融点原料や溶融調整剤との温度差が大きいため、低融点原料や溶融調整剤が先に軟化溶融し、溶融スラグ層の化学成分が不均一になり、そのため不均一流入するだけでなく、鋳片品質を極端に劣化させる。更には、ブレークアウトを感知させるため、鋳型銅板に熱電対を設置しているが、この熱電対温度が大きくばらつき、ブレークアウト警報の誤作動を招き、安定した操業ができない問題も存在し、また、上述のような厳格な鋼種には適用できない。
【0013】
従って、本発明の目的は、鋼品質を大幅に改善でき、且つ操業安定性にも寄与できる鋼の連続鋳造用モールドパウダーを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解消するために種々検討を重ねた結果、パウダー性介在物の発生メカニズムを明らかにし、上述のごとき欠点をすべて克服できることを見出した。
【0015】
本発明に係る鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として70重量%以上(ただし、CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物として酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られた合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下で、遊離炭素が実質上不在であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として55重量%以上(ただし、CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、SiO2を15重量%以下、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物としての酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られた合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下で、遊離炭素が実質上不在であることを特徴とする。
【0017】
更に、本発明に係る鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として70重量%以上(CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物としての酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られる合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下、遊離炭素含量が1.0重量%以下であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として55重量%以上(CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、SiO2を15重量%以下、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物としての酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られた合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下、遊離炭素含量が1.0重量%以下であることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、種々の研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
上記パウダー性介在物は、モールド内で生成する粒鉄が溶鋼中に落下する際に生じる。悪影響を及ぼすこの粒鉄は、モールド内で次のように反応して生成する:
(a)モールドパウダーが溶融し、形成された溶融スラグ層と溶鋼界面で溶鋼が酸化される;
(b)生成した酸化鉄はスラグ中に侵入し、溶融層と焼結層(反応層)界面に拡散移動する;
(c)拡散移動した酸化鉄は、反応層もしくは焼結層中の未反応の炭素により還元され、再び溶鋼中に落下する;
(d)落下する際、介在物キャリアーとなって、パウダー性介在物の発生を促進させる。
【0020】
この粒鉄の生成を抑制させるためには、まず、モールド内で溶鋼の酸化を防止することと、炭素と還元反応を起こさせないこと、更にはモールドパウダー中に不可避不純物として存在する酸化鉄の含有量を0.5重量%以下にすることが重要である。
【0021】
溶鋼を酸化する要因は、モールドパウダーを構成する炭酸塩が分解する際に生成するCO2ガスや、モールドパウダー中の炭素質原料が酸化する際に生成するCOガスの一部が溶融スラグ層に溶解し、これらのガス成分とFeが反応して酸化される。更には、モールドパウダー中に含まれる酸化鉄でも同様に溶鋼を酸化する。即ち、炭酸塩や酸化鉄、更には、炭素質原料を含有させないことで、溶鋼の酸化を防止できる。また、モールドパウダー中の遊離炭素含量を1.0重量%以下とすることで、炭素が速やかにかつ完全に酸化するため、炭素との還元反応が起こらず、酸化鉄はそのままスラグ中に溶解する。そのことで、粒鉄が落下する際に、溶融層を形成している溶融スラグも溶鋼中に落下させることがなく、パウダー性介在物の低減に貢献できる。
【0022】
更には、鋼中のAlとモールドパウダー中のSiO2が反応し、鋼中のAlと酸素の平衡が崩れ、その結果、溶鋼を酸化し、上述のごとく粒鉄の生成が促進される。即ち、粒鉄の生成を抑制するためには、モールドパウダー中の炭酸塩原料の使用量並びにSiO2含量をできるだけ少なくすることが好ましい。
【0023】
本発明のモールドパウダーは、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨とするところは、(1)必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として70重量%以上(ただし、CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物としての酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られた合成基材原料を少なくとも45重量%使用すること;(2)モールドパウダー中のSiO2含量を15重量%以下とすること;(3)モールドパウダー中の遊離炭素を実質上不在とすること;(4)モールドパウダー中のF含量を15重量%以下とすること;(5)モールドパウダー中のMgO含量を15重量%以下とすること、にある。
【0024】
上記知見からも明らかなように、モールドパウダー中のSiO2含量を低減させる必要がある。しかし、周知のようにSiO2は網目形成酸化物であり、SiO2に代わる網目形成酸化物が必要となり、本発明のモールドパウダーにおいては、網目形成酸化物としてAl2O3を使用する。
【0025】
また、上述のように、モールドパウダーを構成する高融点原料と低融点原料や溶融調整剤の間の融点の幅が大きければ、低融点原料や溶融調整剤が先に軟化溶融して不均一溶融を呈するため好ましくなく、そのため、CaO、Al2O3を予め溶解したものを合成基材原料として使用すれば、この問題は解決できる。
【0026】
合成基材原料を構成するCaOとAl2O3の合計量は70重量%以上、71〜95重量%であることが好ましい。CaOとAl2O3の合計量が70重量%未満であると、他成分の含量が過剰になりすぎ、合成基材原料製造時の炉内でスラグが不均一になり、成分のばらつきが大きくなるだけでなく、モールドパウダー使用時に、不均一溶融を助長することになり好ましくない。
【0027】
また、合成基材原料のCaOとAl2O3の重量比を5.0以下に設定することにより、モールドパウダーにAl2O3原料、特に微細Al2O3を使用することができ、それによって、鋳造条件に適したかさ比重や安息角などの粉体特性を容易に調整できる利点がある。なお、合成基材原料のCaOとAl2O3の重量比が5.0を超えると、モールドパウダーに過剰量のAl2O3原料を使用する必要が生じ、それによって、かさ比重が小さくなり、作業環境が悪くなるだけでなく、実機使用時のモールド内で、モールドパウダー中のAl2O3原料が偏析し易くなり、逆に、不均一溶融を助長することもある。また、合成基材原料を製造する際に、非晶質になりにくいため、合成基材原料のCaOとAl2O3の重量比は5.0以下、好ましくは1〜4.5とするのが良い。
【0028】
なお、該合成基材原料において、必須成分であるAl2O3を15重量%までのSiO2に置換することもできる。この場合、SiO2含量が多くなれば、合成基材原料の融点が低下して製造上は有利であるが、SiO2が過剰に存在すると必然的にモールドパウダーの化学組成としてのSiO2含量が増加し、溶鋼の酸化や、溶鋼中のAlとの反応を促進してしまうため、合成基材原料中にSiO2が存在する場合、SiO2含量は15重量%以下である。なお、SiO2が上限の15重量%の量で存在する場合、合成基材原料を構成するCaOとAl2O3の合計量はSiO2の含量に共なって低下し、従って、55重量%以上含有していれば特に問題はない。
【0029】
更に、本発明のモールドパウダーに使用する合成基材原料を製造する際に、CaO成分とAl2O3成分(場合によりSiO2成分)のみでは、融点が高くなり、溶融温度が高くなりすぎ、製造が困難であるため、F含有化合物、MgO質原料、アルカリ金属酸化物等を添加して融点を下げることができる。
【0030】
合成基材原料中のF含量は10重量%以下が好ましい。合成基材原料中のF含量が10重量%を超えると、合成基材原料を製造する際に、炉壁の損傷が大きくなるだけでなく、蒸発が著しくなり、合成基材原料の化学組成のばらつきが大きくなるために好ましくない。
【0031】
また、合成基材原料中のMgO含量は10重量%以下、より好ましくは0.5〜7重量%が良い。合成基材原料中のMgO含量が多くなると、合成基材原料を溶融冷却後、結晶が晶出し易くなる。
【0032】
更に、合成基材原料中のアルカリ金属酸化物含量は10重量%以下、より好ましくは4〜10重量%が良い。アルカリ金属酸化物の含有量が多くなると、Fと同様に合成基材原料を製造する際に炉壁の損傷が大きくなることがあり、また、溶融時に比重差からスラグが層分離し、均一なスラグが得られ難くなるために好ましくない。ここで、アルカリ金属酸化物としては、Na2O、Li2O、K2O等を例示することができる。なお、合成基材原料がアルカリ金属酸化物を含有することにより、モールドパウダーを製造する際に、後述するような溶融調整剤の添加量を低減でき、モールドパウダーのよりスムーズな溶融を提供することができる。なお、合成基材原料へ配合するアルカリ金属酸化物原料としては、上述のようなアルカリ金属酸化物またはNa2CO3、Li2CO3、K2CO3等の炭酸塩等を使用することができる。
【0033】
また、前記合成基材原料は、必要に応じてSrO質原料やMnO質原料を使用することもできる。SrO質原料やMnO質原料をモールドパウダーへ配合することにより、また、SrO質原料やMnO質原料を使用すれば、モールドパウダーが溶融し、モールド−凝固シェル間に流入し、順次スラグフィルムを形成する際、ガラス化が促進できたり、パウダーの凝固温度を調整できる点でも有効である。しかし、合成基材原料中のSrO含量が3重量%を超えとガラス化を著しく促進し、場合によっては抜熱が不均一になり、鋳片に割れが発生するため、SrO含量は3重量%以下とすることが好ましい。また、モールドパウダー中のMnO含量が1重量%を超えと、MnOは溶鋼を酸化し、粒鉄の生成を促進するので、MnO含量は1重量%以下とすることが好ましい。従って、合成基材原料に由来するSrOや、MnOとの合計量が上述のような範囲内でSrO質原料やMnO質原料を使用することができる。
【0034】
更に、合成基材原料に不可避不純物として存在する酸化鉄の含量は極力少ない方が良い。即ち、合成基材原料中の酸化鉄含量が多いと、溶鋼の酸化によって粒鉄が生成することがあるが、合成基材原料中の酸化鉄含量が1.0重量%以下であれば、後述するモールドパウダー中の遊離炭素含量を1.0重量%以下とすることにより反応が起こりにくくなるが、モールドパウダー製造時にミキサーなどからスケールのような不純物として酸化鉄が混入する場合も考えられ、合成基材原料中の酸化鉄含量は0.5重量%以下とすることが望ましく、更に、実質上酸化鉄が不在であることが好ましくい。
【0035】
本発明に使用する合成基材原料は、上述のような化学組成となるように原料を所定割合で混合し、例えば電気炉などの溶融加熱炉で例えば1400℃以上の温度で溶解し、水砕急冷し、次に、100℃以上の温度に加熱乾燥し、ボールミルなどのような粉砕機を使用して100μm以下が50%以上になるように粉砕することにより得ることができる。
【0036】
このようにして得られる合成基材原料は非晶質の溶融水砕物であるため、成分が均一で酸化鉄含有量が少なく、水和性鉱物も少ないため、造粒も比較的容易にできる利点がある。
【0037】
なお、従来から、炭素質原料を除く成分の全てを予め溶融粉砕するプリメルトタイプの技術があるが、完全にプリメルトすると、かさ比重、拡がり性などの粉体特性の調整が困難になるだけでなく、コストも非常に高くなるといった欠点がある。そこで、前記合成基材原料のように、モールドパウダーに使用する原料の一部を予め溶解し、適正な粒度に粉砕するセミプリメルトタイプで、合成基材原料を使用することが望ましい。また、セミプリメルトすることにより、不可避不純物としての酸化鉄含量が極めて低い合成基材原料を使用できるという効果もある。
【0038】
次に、本発明のモールドパウダーの化学組成について記載する。
本発明のモールドパウダーは、上記合成基材原料を少なくとも45重量%使用することを特徴とするものであり、それによって、合成基材原料の不可避不純物である酸化鉄含量を0.5重量%以下、好ましくは実質上不在な状態にとすることができるため、モールドパウダー全体の酸化鉄含量を0.5重量%以下に容易に調整でき、酸化鉄に付随する問題点を解決することができる。
【0039】
なお、モールドパウダー中のCaOとAl2O3の含量は、それぞれCaO10〜65重量%、好ましくは15〜62重量%の範囲内であり、Al2O310〜50重量%、好ましくは12〜45重量%の範囲内にある。また、モールドパウダーのCaO/Al2O3重量比は5.5以下とすることが好ましい。CaO/Al2O3重量比が5.5を超えると、融点が高くなりすぎ、モールドパウダーとしては不適当になるが、CaO/Al2O3重量比が5.5以下であれば、該合成基材原料と他の原料例えば溶融調整剤と組み合わせることで適正な融点に調整することができる。モールドパウダーのCaO/Al2O3重量比を5.5以下とすることで、低粘性にも調整できるだけでなく、凝固温度の調整がより容易になり、適正なモールドパウダー物性値を得ることができる。
【0040】
また、アルミキルド鋼を鋳造する際、モールドパウダー中のSiO2と溶鋼中のAlなどとが反応し、モールドパウダーの組成変動が生ずる。モールドパウダーの組成変動が生じれば、初期設定した粘度や凝固温度が変化し、目的とする効果が発揮できないだけでなく、操業が不安定となったり鋼品質が低下するという欠点が生じてしまう。
【0041】
しかし、本発明のモールドパウダーの組成は、合成基材原料を使用することで、モールドパウダー自体のCaO/Al2O3重量比を5.5以下とし、更に、SiO2含量を15重量%以下とすることができ、それによってSiO2の活量が小さく、且つAl2O3の活量が大きくなり、上述のように反応が抑制され、モールドパウダーの組成変動を防止できる。なお、モールドパウダー中のSiO2含量が15重量%を超えるとSiO2の活量が大きくなり、溶鋼中のAlと反応し易くなるだけでなく、Pb、Tiのような元素が添加される鋼には適用できないという欠点が生まれる。
【0042】
また、前記合成基材原料は、10重量%以下のアルカリ金属酸化物を含有しており、それによって、モールドパウダーに、Na2CO3、Li2O3、K2CO3、CaCO3、MnCO3、BaCO3、SrCO3などのような炭酸塩の使用量を低減できる。そのため炭酸塩が分解する際に生ずるCO2ガスによって溶鋼が酸化されず、パウダー性介在物の発生を抑制することができる。
【0043】
なお、本発明に使用するモールドパウダーには、溶融調整剤として、上述のような炭酸塩を除く例えばNaF、Na3AlF6、B2O3、蛍石、MgF2、LiF、硼砂、スポジュメンなどを配合することができる。溶融調整剤の配合割合は3〜40重量%、好ましくは5〜25重量%である。ただし、溶融調整剤としてB2O3を使用する場合は、5重量%を超えると溶鋼中に入り、鋼を汚染し、鋼の物性を変化させるため5重量%以下の量での使用が好ましい。ここで、溶融調整剤の配合割合が3重量%未満であると、モールドパウダーの軟化点が著しく高くなり、スムーズに溶融しないために好ましくなく、また、該配合割合が40重量%を超えると滓化が著しくなり、調整が困難になるために好ましくない。
【0044】
また、前記合成基材原料は、アルカリ金属酸化物を10重量%以下の範囲で含有しており、このアルカリ金属酸化物がモールドパウダーにアルカリ金属酸化物を提供することとなり、それによってモールドパウダーの粘度や軟化点、凝固温度を容易に調整することができる。モールドパウダーのアルカリ金属酸化物としては、Na2O、Li2O、K2Oが有効であるが、高温時での蒸発と溶融スラグの均一性からNa2OとLi2Oの含量はそれぞれ10重量%以下が好ましく、K2Oの含量5重量%以下であることが好ましい。
【0045】
なお、合成基材原料や溶融調整剤に由来するモールドパウダー中のアルカリ金属酸化物含量は25重量%以下、好ましくは3〜20重量%の範囲内である。ここで、アルカリ金属酸化物含量が25重量%を超えると、表面張力が著しく低下し、スラグフィルムを形成した際にフィルムの切断が起こり易くなり好ましくない。
【0046】
また、合成基材原料や溶融調整剤に由来するモールドパウダー中のF含量は15重量%以下、好ましくは1.0〜15重量%の範囲内である。ここで、F含量が15重量%を超えると、浸漬ノズルの溶損が著しくなるために好ましくない。
【0047】
更に、モールドパウダーへのMgO質原料の添加も有効であり、モールドパウダーの物性値を設定する上で必要に応じて添加できる。しかし、モールドパウダーの化学組成としてMgOが15重量%を超えると、モールドパウダー自体の凝固温度が高くなり、結晶化傾向も著しく強くなり、潤滑性が阻害され易くなるため、合成基材原料に由来するMgOとの合計量で、15重量%以下とすることが好ましい。
【0048】
更に、粒鉄の生成の点から、モールドパウダー中の遊離炭素含量は1.0重量%以下であることが好ましい。モールドパウダー中の遊離炭素含量が1.0重量%以下であれば、上述の反応は起こらない。従って、モールドパウダーには、溶融調整剤として遊離炭素含量が1.0重量%以下となるような範囲内で炭素質原料を添加することもできる。
【0049】
また、本発明のモールドパウダーにはSiO2質原料を添加することもできるが、モールドパウダーのSiO2含量、即ち、合成基材原料に由来するSiO2と、モールドパウダーへ配合されるSiO2質原料の合計量が15重量%以下、より好ましくは12重量%以下の範囲となるような量でSiO2質原料を使用することが必須である。
【0050】
更に、本発明のモールドパウダーにはAl2O3質原料を添加することもできる。ここで、Al2O3質原料は、上述した理由からモールドパウダーへ配合する方が好ましいが、前記溶融調整剤の配合量が10重量%以下の場合には使用しなくても良い。Al2O3原料の粒度は、粉体の流動性、保温性を目的とするかさ比重等になるように自由に選ぶことができ、かさ比重を小さくする場合には極力小さいものを用いることが好ましい。なお、Al2O3質原料の配合量は、40重量%以下の範囲が好ましく、且つ合成基材原料に由来するAl2O3との合計量が前述の範囲内となり、且つモールドパウダーのCaOとAl2O3の重量比の規定を満たす範囲内とすることが肝要である。
【0051】
更に、本発明のモールドパウダーには、モールドパウダーの保温性を向上し、溶融速度を調整するために、必要に応じて、金属成分を添加することもできる。しかし、5重量%を超える金属成分を使用すると、酸化剤としてのFeOやNa2CO3などを添加しないため、溶融速度が著しく遅くなるだけでなく、金属が未酸化となり、この金属元素が溶鋼を汚染し、清浄度の高い鋼を製造することができなくなるため、5重量%以下の量で使用することが好ましい。
【0052】
金属成分としては種々の金属を使用することができるが、上述のようにFe系合金を使用すると、酸化した際に酸化鉄が生成されるために好ましくなく、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カルシウム、スカンジウム、バナジウム、クロム、ニッケル、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、バリウム、ランタン、セリウム、セシウム等及びこれらの合金等を例示することができる。
【0053】
本発明によるモールドパウダーは、上述のような化学組成になるように合成基材原料並びに他の原料を配合した後、ミキサーで均一に混合することにより得られる。また、原料混合物に液体と必要に応じて有機若しくは無機バインダーを添加し、押出造粒、撹拌造粒、転動造粒、流動造粒、噴霧造粒などの方法で造粒した顆粒状にして使用することができる。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明のモールドパウダーを更に説明する。
実施例
合成基材原料の調製:
所定の配合割合にて、原料混合物を調製し、電気炉にて1400℃の温度で2時間加熱することによりで溶解し、次に、得られた溶融物を水砕急冷し、次に、110℃の温度で加熱乾燥し、ボールミルを使用して100μm以下が50%以上になるように粉砕することにより合成基材原料1〜7を得た。得られた合成基材原料1〜7の化学組成を表1に併記する。なお、表1中のFe2O3は、不可避不純物として混入したものである。
【0055】
【表1】
【0056】
モールドパウダーの調製:
以下の表2に記載する配合割合にて、合成基材原料並びに他の原料を配合して本発明品並びに比較品のモールドパウダーを得た。なお、本発明品2は、粉末原料混合物を加水混練し、押出造粒機によって柱状(平均直径1mm、平均高さ3mm)に造粒した顆粒品であり、本発明品4及び比較品3は、粉末原料混合物に水及びバインダー(有機バインダー)を添加して撹拌造粒した顆粒品である。また、その他は粉末原料混合物をV型ミキサーにて混合した粉末品である。
得られたモールドパウダーの化学組成を表2に併記する。
【0057】
【表2】
【0058】
表2中、合成珪酸カルシウムは、CaO/SiO2重量比1.10のものである。
【0059】
次に、得られたモールドパウダーをそれぞれ5〜10チャージ使用し、得られた鋳片をスカーフし、表面割れを確認し、更に、冷延後のコイルで介在物を確認したものである。また、操業安定度は鋳型銅板の熱電対温度を測定し、評価した結果である。
【0060】
【発明の効果】
本発明のモールドパウダーは、必須成分として合成基材原料を使用することにより、鋼品質の大幅な改善だけではなく、操業の安定性にも効果を奏するものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の連続鋳造においてモールド内に添加して使用される、鋼の連続鋳造用モールドパウダーに関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、ポルトランドセメント、合成珪酸カルシウム、ウォラストナイト、黄リンスラグなどを主原料とし、必要に応じシリカ質原料を加え、更にはソーダ灰、蛍石、フッ素化合物、アルカリ金属化合物や炭酸塩と、溶融速度調整剤として炭素質原料を添加したものが一般的である。
【0003】
モールドパウダーは、モールド内の溶鋼表面に添加され、種々の役割を果たしながら消費される。主な役割としては、▲1▼モールドと凝固シェルの潤滑、▲2▼溶鋼から浮上する介在物の溶解及び吸収、▲3▼溶鋼の保温、▲4▼抜熱速度のコントロールなどが主要な役割である。
【0004】
▲1▼及び▲2▼は、モールドパウダーの軟化点、粘度などを調整することが重要であり、化学組成の選定が肝要である。▲3▼については主に炭素質原料によって調整される溶融速度やかさ比重、拡がり性などの粉体特性が重要とされている。▲4▼については、凝固温度などを調整することが必要で、化学組成の選定が肝要である。
【0005】
我が国における連続鋳造技術の進歩には目覚ましいものがあり、更に発展し続けている。また、HCR、HDR比率の向上、高速鋳造などが積極的に進められている。従って、鋳片品質や操業安定性に多大な影響を与えるモールドパウダーに対する要求も一段と厳しくなっており、必要とされるモールドパウダーも多種多様になっているのが現状である。
【0006】
従来使用されているモールドパウダーは、基材原料として、ポルトランドセメント、リンスラグ、合成スラグ、ウォラストナイトなとが使用され、溶融調整剤としてNa2CO3、Li2CO3、MgCO3、CaCO3、SrCO3、MnCO3、BaCO3などの炭酸塩や、更には、NaF、Na3AlF6、蛍石、MgF2、LiF、硼砂、スポジュメンなどを使用し、溶融速度調整剤として炭素質原料を添加しているのが一般的である。
【0007】
一方、基材原料に合成珪酸カルシウムを使用したタイプ(セミプリメルトタイプ)や炭素粉を除いたモールドパウダーを予め溶解し、適切な粒度に粉砕し、その後に炭素粉を添加する完全溶融型モールドパウダー(プリメルトタイプ)も使用されている。
【0008】
しかしながら、近年、高速鋳造化は著しく、スラブ連鋳においても1.5m/分以上の高速鋳造が実施されている。このような条件下で安定に使用されるモールドパウダーは周知の通り適当な粘度と凝固温度に調整する必要がある。
【0009】
また、近年、特に鋼の高品質化の要求は著しく、これらの厳格な鋼の連鋳化に際し、介在物起因の欠陥がしばしば大きな問題となっている。
【0010】
この介在物起源は、主に脱酸生成物であるAl2O3やモールドパウダーが主体であり、鋼の高品質化には溶鋼の高清浄化とパウダー性介在物の低減が極めて重要なことは周知の通りである。
【0011】
溶鋼の高清浄化については、精錬方法や設備等の改善の手段を講じているが、パウダー性介在物を低減させるためには、モールドパウダーの粘度を高粘度化したり、高表(界)面張力化する手段が一般的であるが、その手段を講じることで、モールドと凝固シェルとの潤滑性が低下したり、抜熱が不均一になり、鋳片表面割れが発生する場合や、安定操業が損なわれることがあり、これらの手段を講じたモールドパウダーだけでは、好ましいモールドパウダーは得られない。
【0012】
一方、高Al鋼を対象としたSiO2添加量の低いモールドパウダーが、例えば特公昭63−56019号公報、特開平3−77753号公報に開示されている。しかし、これらの公報に開示されている組成に調合したモールドパウダーを実機で使用すると、高融点原料と、低融点原料や溶融調整剤との温度差が大きいため、低融点原料や溶融調整剤が先に軟化溶融し、溶融スラグ層の化学成分が不均一になり、そのため不均一流入するだけでなく、鋳片品質を極端に劣化させる。更には、ブレークアウトを感知させるため、鋳型銅板に熱電対を設置しているが、この熱電対温度が大きくばらつき、ブレークアウト警報の誤作動を招き、安定した操業ができない問題も存在し、また、上述のような厳格な鋼種には適用できない。
【0013】
従って、本発明の目的は、鋼品質を大幅に改善でき、且つ操業安定性にも寄与できる鋼の連続鋳造用モールドパウダーを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解消するために種々検討を重ねた結果、パウダー性介在物の発生メカニズムを明らかにし、上述のごとき欠点をすべて克服できることを見出した。
【0015】
本発明に係る鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として70重量%以上(ただし、CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物として酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られた合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下で、遊離炭素が実質上不在であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として55重量%以上(ただし、CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、SiO2を15重量%以下、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物としての酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られた合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下で、遊離炭素が実質上不在であることを特徴とする。
【0017】
更に、本発明に係る鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として70重量%以上(CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物としての酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られる合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下、遊離炭素含量が1.0重量%以下であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る鋼の連続鋳造用モールドパウダーは、必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として55重量%以上(CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、SiO2を15重量%以下、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物としての酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られた合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下、遊離炭素含量が1.0重量%以下であることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、種々の研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
上記パウダー性介在物は、モールド内で生成する粒鉄が溶鋼中に落下する際に生じる。悪影響を及ぼすこの粒鉄は、モールド内で次のように反応して生成する:
(a)モールドパウダーが溶融し、形成された溶融スラグ層と溶鋼界面で溶鋼が酸化される;
(b)生成した酸化鉄はスラグ中に侵入し、溶融層と焼結層(反応層)界面に拡散移動する;
(c)拡散移動した酸化鉄は、反応層もしくは焼結層中の未反応の炭素により還元され、再び溶鋼中に落下する;
(d)落下する際、介在物キャリアーとなって、パウダー性介在物の発生を促進させる。
【0020】
この粒鉄の生成を抑制させるためには、まず、モールド内で溶鋼の酸化を防止することと、炭素と還元反応を起こさせないこと、更にはモールドパウダー中に不可避不純物として存在する酸化鉄の含有量を0.5重量%以下にすることが重要である。
【0021】
溶鋼を酸化する要因は、モールドパウダーを構成する炭酸塩が分解する際に生成するCO2ガスや、モールドパウダー中の炭素質原料が酸化する際に生成するCOガスの一部が溶融スラグ層に溶解し、これらのガス成分とFeが反応して酸化される。更には、モールドパウダー中に含まれる酸化鉄でも同様に溶鋼を酸化する。即ち、炭酸塩や酸化鉄、更には、炭素質原料を含有させないことで、溶鋼の酸化を防止できる。また、モールドパウダー中の遊離炭素含量を1.0重量%以下とすることで、炭素が速やかにかつ完全に酸化するため、炭素との還元反応が起こらず、酸化鉄はそのままスラグ中に溶解する。そのことで、粒鉄が落下する際に、溶融層を形成している溶融スラグも溶鋼中に落下させることがなく、パウダー性介在物の低減に貢献できる。
【0022】
更には、鋼中のAlとモールドパウダー中のSiO2が反応し、鋼中のAlと酸素の平衡が崩れ、その結果、溶鋼を酸化し、上述のごとく粒鉄の生成が促進される。即ち、粒鉄の生成を抑制するためには、モールドパウダー中の炭酸塩原料の使用量並びにSiO2含量をできるだけ少なくすることが好ましい。
【0023】
本発明のモールドパウダーは、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨とするところは、(1)必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として70重量%以上(ただし、CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物としての酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られた合成基材原料を少なくとも45重量%使用すること;(2)モールドパウダー中のSiO2含量を15重量%以下とすること;(3)モールドパウダー中の遊離炭素を実質上不在とすること;(4)モールドパウダー中のF含量を15重量%以下とすること;(5)モールドパウダー中のMgO含量を15重量%以下とすること、にある。
【0024】
上記知見からも明らかなように、モールドパウダー中のSiO2含量を低減させる必要がある。しかし、周知のようにSiO2は網目形成酸化物であり、SiO2に代わる網目形成酸化物が必要となり、本発明のモールドパウダーにおいては、網目形成酸化物としてAl2O3を使用する。
【0025】
また、上述のように、モールドパウダーを構成する高融点原料と低融点原料や溶融調整剤の間の融点の幅が大きければ、低融点原料や溶融調整剤が先に軟化溶融して不均一溶融を呈するため好ましくなく、そのため、CaO、Al2O3を予め溶解したものを合成基材原料として使用すれば、この問題は解決できる。
【0026】
合成基材原料を構成するCaOとAl2O3の合計量は70重量%以上、71〜95重量%であることが好ましい。CaOとAl2O3の合計量が70重量%未満であると、他成分の含量が過剰になりすぎ、合成基材原料製造時の炉内でスラグが不均一になり、成分のばらつきが大きくなるだけでなく、モールドパウダー使用時に、不均一溶融を助長することになり好ましくない。
【0027】
また、合成基材原料のCaOとAl2O3の重量比を5.0以下に設定することにより、モールドパウダーにAl2O3原料、特に微細Al2O3を使用することができ、それによって、鋳造条件に適したかさ比重や安息角などの粉体特性を容易に調整できる利点がある。なお、合成基材原料のCaOとAl2O3の重量比が5.0を超えると、モールドパウダーに過剰量のAl2O3原料を使用する必要が生じ、それによって、かさ比重が小さくなり、作業環境が悪くなるだけでなく、実機使用時のモールド内で、モールドパウダー中のAl2O3原料が偏析し易くなり、逆に、不均一溶融を助長することもある。また、合成基材原料を製造する際に、非晶質になりにくいため、合成基材原料のCaOとAl2O3の重量比は5.0以下、好ましくは1〜4.5とするのが良い。
【0028】
なお、該合成基材原料において、必須成分であるAl2O3を15重量%までのSiO2に置換することもできる。この場合、SiO2含量が多くなれば、合成基材原料の融点が低下して製造上は有利であるが、SiO2が過剰に存在すると必然的にモールドパウダーの化学組成としてのSiO2含量が増加し、溶鋼の酸化や、溶鋼中のAlとの反応を促進してしまうため、合成基材原料中にSiO2が存在する場合、SiO2含量は15重量%以下である。なお、SiO2が上限の15重量%の量で存在する場合、合成基材原料を構成するCaOとAl2O3の合計量はSiO2の含量に共なって低下し、従って、55重量%以上含有していれば特に問題はない。
【0029】
更に、本発明のモールドパウダーに使用する合成基材原料を製造する際に、CaO成分とAl2O3成分(場合によりSiO2成分)のみでは、融点が高くなり、溶融温度が高くなりすぎ、製造が困難であるため、F含有化合物、MgO質原料、アルカリ金属酸化物等を添加して融点を下げることができる。
【0030】
合成基材原料中のF含量は10重量%以下が好ましい。合成基材原料中のF含量が10重量%を超えると、合成基材原料を製造する際に、炉壁の損傷が大きくなるだけでなく、蒸発が著しくなり、合成基材原料の化学組成のばらつきが大きくなるために好ましくない。
【0031】
また、合成基材原料中のMgO含量は10重量%以下、より好ましくは0.5〜7重量%が良い。合成基材原料中のMgO含量が多くなると、合成基材原料を溶融冷却後、結晶が晶出し易くなる。
【0032】
更に、合成基材原料中のアルカリ金属酸化物含量は10重量%以下、より好ましくは4〜10重量%が良い。アルカリ金属酸化物の含有量が多くなると、Fと同様に合成基材原料を製造する際に炉壁の損傷が大きくなることがあり、また、溶融時に比重差からスラグが層分離し、均一なスラグが得られ難くなるために好ましくない。ここで、アルカリ金属酸化物としては、Na2O、Li2O、K2O等を例示することができる。なお、合成基材原料がアルカリ金属酸化物を含有することにより、モールドパウダーを製造する際に、後述するような溶融調整剤の添加量を低減でき、モールドパウダーのよりスムーズな溶融を提供することができる。なお、合成基材原料へ配合するアルカリ金属酸化物原料としては、上述のようなアルカリ金属酸化物またはNa2CO3、Li2CO3、K2CO3等の炭酸塩等を使用することができる。
【0033】
また、前記合成基材原料は、必要に応じてSrO質原料やMnO質原料を使用することもできる。SrO質原料やMnO質原料をモールドパウダーへ配合することにより、また、SrO質原料やMnO質原料を使用すれば、モールドパウダーが溶融し、モールド−凝固シェル間に流入し、順次スラグフィルムを形成する際、ガラス化が促進できたり、パウダーの凝固温度を調整できる点でも有効である。しかし、合成基材原料中のSrO含量が3重量%を超えとガラス化を著しく促進し、場合によっては抜熱が不均一になり、鋳片に割れが発生するため、SrO含量は3重量%以下とすることが好ましい。また、モールドパウダー中のMnO含量が1重量%を超えと、MnOは溶鋼を酸化し、粒鉄の生成を促進するので、MnO含量は1重量%以下とすることが好ましい。従って、合成基材原料に由来するSrOや、MnOとの合計量が上述のような範囲内でSrO質原料やMnO質原料を使用することができる。
【0034】
更に、合成基材原料に不可避不純物として存在する酸化鉄の含量は極力少ない方が良い。即ち、合成基材原料中の酸化鉄含量が多いと、溶鋼の酸化によって粒鉄が生成することがあるが、合成基材原料中の酸化鉄含量が1.0重量%以下であれば、後述するモールドパウダー中の遊離炭素含量を1.0重量%以下とすることにより反応が起こりにくくなるが、モールドパウダー製造時にミキサーなどからスケールのような不純物として酸化鉄が混入する場合も考えられ、合成基材原料中の酸化鉄含量は0.5重量%以下とすることが望ましく、更に、実質上酸化鉄が不在であることが好ましくい。
【0035】
本発明に使用する合成基材原料は、上述のような化学組成となるように原料を所定割合で混合し、例えば電気炉などの溶融加熱炉で例えば1400℃以上の温度で溶解し、水砕急冷し、次に、100℃以上の温度に加熱乾燥し、ボールミルなどのような粉砕機を使用して100μm以下が50%以上になるように粉砕することにより得ることができる。
【0036】
このようにして得られる合成基材原料は非晶質の溶融水砕物であるため、成分が均一で酸化鉄含有量が少なく、水和性鉱物も少ないため、造粒も比較的容易にできる利点がある。
【0037】
なお、従来から、炭素質原料を除く成分の全てを予め溶融粉砕するプリメルトタイプの技術があるが、完全にプリメルトすると、かさ比重、拡がり性などの粉体特性の調整が困難になるだけでなく、コストも非常に高くなるといった欠点がある。そこで、前記合成基材原料のように、モールドパウダーに使用する原料の一部を予め溶解し、適正な粒度に粉砕するセミプリメルトタイプで、合成基材原料を使用することが望ましい。また、セミプリメルトすることにより、不可避不純物としての酸化鉄含量が極めて低い合成基材原料を使用できるという効果もある。
【0038】
次に、本発明のモールドパウダーの化学組成について記載する。
本発明のモールドパウダーは、上記合成基材原料を少なくとも45重量%使用することを特徴とするものであり、それによって、合成基材原料の不可避不純物である酸化鉄含量を0.5重量%以下、好ましくは実質上不在な状態にとすることができるため、モールドパウダー全体の酸化鉄含量を0.5重量%以下に容易に調整でき、酸化鉄に付随する問題点を解決することができる。
【0039】
なお、モールドパウダー中のCaOとAl2O3の含量は、それぞれCaO10〜65重量%、好ましくは15〜62重量%の範囲内であり、Al2O310〜50重量%、好ましくは12〜45重量%の範囲内にある。また、モールドパウダーのCaO/Al2O3重量比は5.5以下とすることが好ましい。CaO/Al2O3重量比が5.5を超えると、融点が高くなりすぎ、モールドパウダーとしては不適当になるが、CaO/Al2O3重量比が5.5以下であれば、該合成基材原料と他の原料例えば溶融調整剤と組み合わせることで適正な融点に調整することができる。モールドパウダーのCaO/Al2O3重量比を5.5以下とすることで、低粘性にも調整できるだけでなく、凝固温度の調整がより容易になり、適正なモールドパウダー物性値を得ることができる。
【0040】
また、アルミキルド鋼を鋳造する際、モールドパウダー中のSiO2と溶鋼中のAlなどとが反応し、モールドパウダーの組成変動が生ずる。モールドパウダーの組成変動が生じれば、初期設定した粘度や凝固温度が変化し、目的とする効果が発揮できないだけでなく、操業が不安定となったり鋼品質が低下するという欠点が生じてしまう。
【0041】
しかし、本発明のモールドパウダーの組成は、合成基材原料を使用することで、モールドパウダー自体のCaO/Al2O3重量比を5.5以下とし、更に、SiO2含量を15重量%以下とすることができ、それによってSiO2の活量が小さく、且つAl2O3の活量が大きくなり、上述のように反応が抑制され、モールドパウダーの組成変動を防止できる。なお、モールドパウダー中のSiO2含量が15重量%を超えるとSiO2の活量が大きくなり、溶鋼中のAlと反応し易くなるだけでなく、Pb、Tiのような元素が添加される鋼には適用できないという欠点が生まれる。
【0042】
また、前記合成基材原料は、10重量%以下のアルカリ金属酸化物を含有しており、それによって、モールドパウダーに、Na2CO3、Li2O3、K2CO3、CaCO3、MnCO3、BaCO3、SrCO3などのような炭酸塩の使用量を低減できる。そのため炭酸塩が分解する際に生ずるCO2ガスによって溶鋼が酸化されず、パウダー性介在物の発生を抑制することができる。
【0043】
なお、本発明に使用するモールドパウダーには、溶融調整剤として、上述のような炭酸塩を除く例えばNaF、Na3AlF6、B2O3、蛍石、MgF2、LiF、硼砂、スポジュメンなどを配合することができる。溶融調整剤の配合割合は3〜40重量%、好ましくは5〜25重量%である。ただし、溶融調整剤としてB2O3を使用する場合は、5重量%を超えると溶鋼中に入り、鋼を汚染し、鋼の物性を変化させるため5重量%以下の量での使用が好ましい。ここで、溶融調整剤の配合割合が3重量%未満であると、モールドパウダーの軟化点が著しく高くなり、スムーズに溶融しないために好ましくなく、また、該配合割合が40重量%を超えると滓化が著しくなり、調整が困難になるために好ましくない。
【0044】
また、前記合成基材原料は、アルカリ金属酸化物を10重量%以下の範囲で含有しており、このアルカリ金属酸化物がモールドパウダーにアルカリ金属酸化物を提供することとなり、それによってモールドパウダーの粘度や軟化点、凝固温度を容易に調整することができる。モールドパウダーのアルカリ金属酸化物としては、Na2O、Li2O、K2Oが有効であるが、高温時での蒸発と溶融スラグの均一性からNa2OとLi2Oの含量はそれぞれ10重量%以下が好ましく、K2Oの含量5重量%以下であることが好ましい。
【0045】
なお、合成基材原料や溶融調整剤に由来するモールドパウダー中のアルカリ金属酸化物含量は25重量%以下、好ましくは3〜20重量%の範囲内である。ここで、アルカリ金属酸化物含量が25重量%を超えると、表面張力が著しく低下し、スラグフィルムを形成した際にフィルムの切断が起こり易くなり好ましくない。
【0046】
また、合成基材原料や溶融調整剤に由来するモールドパウダー中のF含量は15重量%以下、好ましくは1.0〜15重量%の範囲内である。ここで、F含量が15重量%を超えると、浸漬ノズルの溶損が著しくなるために好ましくない。
【0047】
更に、モールドパウダーへのMgO質原料の添加も有効であり、モールドパウダーの物性値を設定する上で必要に応じて添加できる。しかし、モールドパウダーの化学組成としてMgOが15重量%を超えると、モールドパウダー自体の凝固温度が高くなり、結晶化傾向も著しく強くなり、潤滑性が阻害され易くなるため、合成基材原料に由来するMgOとの合計量で、15重量%以下とすることが好ましい。
【0048】
更に、粒鉄の生成の点から、モールドパウダー中の遊離炭素含量は1.0重量%以下であることが好ましい。モールドパウダー中の遊離炭素含量が1.0重量%以下であれば、上述の反応は起こらない。従って、モールドパウダーには、溶融調整剤として遊離炭素含量が1.0重量%以下となるような範囲内で炭素質原料を添加することもできる。
【0049】
また、本発明のモールドパウダーにはSiO2質原料を添加することもできるが、モールドパウダーのSiO2含量、即ち、合成基材原料に由来するSiO2と、モールドパウダーへ配合されるSiO2質原料の合計量が15重量%以下、より好ましくは12重量%以下の範囲となるような量でSiO2質原料を使用することが必須である。
【0050】
更に、本発明のモールドパウダーにはAl2O3質原料を添加することもできる。ここで、Al2O3質原料は、上述した理由からモールドパウダーへ配合する方が好ましいが、前記溶融調整剤の配合量が10重量%以下の場合には使用しなくても良い。Al2O3原料の粒度は、粉体の流動性、保温性を目的とするかさ比重等になるように自由に選ぶことができ、かさ比重を小さくする場合には極力小さいものを用いることが好ましい。なお、Al2O3質原料の配合量は、40重量%以下の範囲が好ましく、且つ合成基材原料に由来するAl2O3との合計量が前述の範囲内となり、且つモールドパウダーのCaOとAl2O3の重量比の規定を満たす範囲内とすることが肝要である。
【0051】
更に、本発明のモールドパウダーには、モールドパウダーの保温性を向上し、溶融速度を調整するために、必要に応じて、金属成分を添加することもできる。しかし、5重量%を超える金属成分を使用すると、酸化剤としてのFeOやNa2CO3などを添加しないため、溶融速度が著しく遅くなるだけでなく、金属が未酸化となり、この金属元素が溶鋼を汚染し、清浄度の高い鋼を製造することができなくなるため、5重量%以下の量で使用することが好ましい。
【0052】
金属成分としては種々の金属を使用することができるが、上述のようにFe系合金を使用すると、酸化した際に酸化鉄が生成されるために好ましくなく、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、カルシウム、スカンジウム、バナジウム、クロム、ニッケル、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、バリウム、ランタン、セリウム、セシウム等及びこれらの合金等を例示することができる。
【0053】
本発明によるモールドパウダーは、上述のような化学組成になるように合成基材原料並びに他の原料を配合した後、ミキサーで均一に混合することにより得られる。また、原料混合物に液体と必要に応じて有機若しくは無機バインダーを添加し、押出造粒、撹拌造粒、転動造粒、流動造粒、噴霧造粒などの方法で造粒した顆粒状にして使用することができる。
【0054】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明のモールドパウダーを更に説明する。
実施例
合成基材原料の調製:
所定の配合割合にて、原料混合物を調製し、電気炉にて1400℃の温度で2時間加熱することによりで溶解し、次に、得られた溶融物を水砕急冷し、次に、110℃の温度で加熱乾燥し、ボールミルを使用して100μm以下が50%以上になるように粉砕することにより合成基材原料1〜7を得た。得られた合成基材原料1〜7の化学組成を表1に併記する。なお、表1中のFe2O3は、不可避不純物として混入したものである。
【0055】
【表1】
【0056】
モールドパウダーの調製:
以下の表2に記載する配合割合にて、合成基材原料並びに他の原料を配合して本発明品並びに比較品のモールドパウダーを得た。なお、本発明品2は、粉末原料混合物を加水混練し、押出造粒機によって柱状(平均直径1mm、平均高さ3mm)に造粒した顆粒品であり、本発明品4及び比較品3は、粉末原料混合物に水及びバインダー(有機バインダー)を添加して撹拌造粒した顆粒品である。また、その他は粉末原料混合物をV型ミキサーにて混合した粉末品である。
得られたモールドパウダーの化学組成を表2に併記する。
【0057】
【表2】
【0058】
表2中、合成珪酸カルシウムは、CaO/SiO2重量比1.10のものである。
【0059】
次に、得られたモールドパウダーをそれぞれ5〜10チャージ使用し、得られた鋳片をスカーフし、表面割れを確認し、更に、冷延後のコイルで介在物を確認したものである。また、操業安定度は鋳型銅板の熱電対温度を測定し、評価した結果である。
【0060】
【発明の効果】
本発明のモールドパウダーは、必須成分として合成基材原料を使用することにより、鋼品質の大幅な改善だけではなく、操業の安定性にも効果を奏するものである。
Claims (4)
- 必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として70重量%以上(ただし、CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物として酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られた合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下で、遊離炭素が実質上不在であることを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドパウダー。
- 必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として55重量%以上(ただし、CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、SiO2を15重量%以下、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物としての酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られた合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下で、遊離炭素が実質上不在であることを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドパウダー。
- 必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として70重量%以上(CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物としての酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られる合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下、遊離炭素含量が1.0重量%以下であることを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドパウダー。
- 必須成分として、CaOとAl2O3とを合計量として55重量%以上(CaO/Al2O3重量比が5.0以下)、SiO2を15重量%以下、Fを10重量%以下、MgOを10重量%以下及びアルカリ金属酸化物を10重量%以下の割合で含有してなり且つ不可避不純物としての酸化鉄が0.5重量%以下の化学組成を有し、且つ原料配合物を溶融、冷却、粉砕することにより得られた合成基材原料を少なくとも45重量%含有してなり、且つモールドパウダーのSiO2含量が15重量%以下、F含量が15重量%以下、MgO含量が15重量%以下、遊離炭素含量が1.0重量%以下であることを特徴とする鋼の連続鋳造用モールドパウダー。
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