JPH1122656A - 吸収式ヒートポンプ用溶液ポンプおよびその製造方法 - Google Patents

吸収式ヒートポンプ用溶液ポンプおよびその製造方法

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JPH1122656A
JPH1122656A JP17936697A JP17936697A JPH1122656A JP H1122656 A JPH1122656 A JP H1122656A JP 17936697 A JP17936697 A JP 17936697A JP 17936697 A JP17936697 A JP 17936697A JP H1122656 A JPH1122656 A JP H1122656A
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JP
Japan
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pump
gear
inner gear
outer gear
solution
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JP17936697A
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Ryoichi Koga
良一 古閑
Takashi Sawada
敬 澤田
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F04POSITIVE - DISPLACEMENT MACHINES FOR LIQUIDS; PUMPS FOR LIQUIDS OR ELASTIC FLUIDS
    • F04CROTARY-PISTON, OR OSCILLATING-PISTON, POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES FOR LIQUIDS; ROTARY-PISTON, OR OSCILLATING-PISTON, POSITIVE-DISPLACEMENT PUMPS
    • F04C2/00Rotary-piston machines or pumps
    • F04C2/08Rotary-piston machines or pumps of intermeshing-engagement type, i.e. with engagement of co-operating members similar to that of toothed gearing
    • F04C2/10Rotary-piston machines or pumps of intermeshing-engagement type, i.e. with engagement of co-operating members similar to that of toothed gearing of internal-axis type with the outer member having more teeth or tooth-equivalents, e.g. rollers, than the inner member
    • F04C2/102Rotary-piston machines or pumps of intermeshing-engagement type, i.e. with engagement of co-operating members similar to that of toothed gearing of internal-axis type with the outer member having more teeth or tooth-equivalents, e.g. rollers, than the inner member the two members rotating simultaneously around their respective axes
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F04POSITIVE - DISPLACEMENT MACHINES FOR LIQUIDS; PUMPS FOR LIQUIDS OR ELASTIC FLUIDS
    • F04CROTARY-PISTON, OR OSCILLATING-PISTON, POSITIVE-DISPLACEMENT MACHINES FOR LIQUIDS; ROTARY-PISTON, OR OSCILLATING-PISTON, POSITIVE-DISPLACEMENT PUMPS
    • F04C2230/00Manufacture
    • F04C2230/90Improving properties of machine parts
    • F04C2230/91Coating

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  • Rotary Pumps (AREA)
  • Details And Applications Of Rotary Liquid Pumps (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶液ポンプ部を構成するトロコイドギア歯面
の硬度を高め、潤滑性を良くして溶液ポンプの耐久性を
向上させる。 【解決手段】 鉄系の材料で形成したアウターギア10
およびインナーギア11の表面に、それぞれ窒化チタン
膜10a,11aを形成し、この窒化チタン膜10a,
11aにより、ギア表面の硬度を高め、アンモニア水溶
液に対する耐腐食性を良好にして耐磨耗性と耐キャビテ
ーション性を向上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、吸収式ヒートポン
プの作動溶液を搬送する溶液ポンプ、特にアンモニアを
冷媒とする吸収式ヒートポンプに用いる溶液ポンプにお
ける摺動部のアンモニア水溶液中での潤滑性および耐磨
耗性の技術およびその溶液ポンプの製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来の吸収式ヒートポンプ特に、アンモ
ニア水溶液を作動流体とする冷凍機に用いられている溶
液ポンプは、一般に油圧ポンプ駆動形のダイアフラムポ
ンプが用いられていた。この種のポンプは、粘度が高
く、潤滑性の良い作動油を用いることによって高いポン
プ効率が確保できるピストン型の油圧ポンプと、この油
圧ポンプで発生する油圧により、全面が駆動されるダイ
アフラムとを有する油圧ポンプ駆動型ダイアフラムポン
プとで構成されていた。この種のポンプは、アンモニア
などの冷媒の粘度が作動油の粘度と比較して極めて低
く、用いる冷媒の腐食性が高いことから、ダイアフラム
で媒体とポンプ機構部とを分離させてポンプ効率とポン
プ信頼性とを確保していた。
【0003】しかしながら、溶液ポンプとして、上記の
ような油圧ポンプ駆動形のダイアフラムポンプを用いる
場合には、ピストン型油圧ポンプと油圧ポンプ駆動型ダ
イアフラムポンプとの2種類のポンプを組み合わせるこ
とが必要で、機器の小型化およびコストの面で問題点が
あった。また高圧で動作するダイアフラムポンプは、一
種の往復動ポンプであるため、脈動が大きく、ポンプ自
体の騒音とともに、配管系で共振して生ずる騒音値が高
くなるという問題点があった。さらに、ダイアフラムの
油圧駆動に用いる作動油、および、可撓性のある樹脂材
料あるいはゴムで成形されるダイアフラム自体は、定期
的なメンテナンスが必要な部品であり、家庭用機器とし
ては不向きなポンプであった。
【0004】このダイアフラムポンプに代わるポンプと
して、通常の油圧機器に用いられている往復動型よりも
脈動の少ない回転型の容積ポンプを、アンモニアの溶液
ポンプに適用した場合、性能、耐久性の面で大きな問題
点があった。
【0005】従来の油圧機器に用いられている回転型の
容積ポンプは、作動流体として潤滑性が優れ、かつ、粘
度が数百cpと流体潤滑が充分に可能な粘度の作動油を
使用していた。従ってポンプ差圧が高い条件でも、充分
に潤滑されるため、摺動部の材料も通常の鉄系の材料の
組み合わせで性能および信頼性を確保することができて
いた。しかしながら、作動流体がアンモニア水溶液とな
った場合、流体粘度が0.5cpと油圧用ポンプの場合
の1/100程度になるため、潤滑条件が非常に厳しく
なり、かつアンモニア水溶液によりポンプ摺動部に腐食
が発生してくるため、従来の油圧用ポンプの構成および
材質ではそのまま用いることはできないという問題点が
あった。
【0006】そこで、回転型の容積ポンプの中でも、圧
力の脈動が少ないトロコイド型の溶液ポンプの適用が検
討されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
トロコイド型の溶液ポンプにあっては、以下に説明する
ような課題を有していた。
【0008】アンモニアを冷媒とする吸収式のヒートポ
ンプでは、アンモニア水溶液が溶液ポンプの作動流体と
なるので、冷凍サイクルの動作範囲から、溶液ポンプの
動作点は、圧力差が20kg/cm2 、流体粘度は常温
の水の半分程度の0.5cpとなる。そして、長時間に
わたり摺動部の信頼性を確保するためには、摺動部での
流体潤滑状態、すなわち、摺動面で流体潤滑膜が形成さ
れて物体同士の直接接触がない潤滑状態をできるだけ確
保する必要がある。また、流体粘度が0.5cpの場
合、摺動面に形成される流体潤滑膜は、摺動部の面圧に
もよるが1μm以下と想定する必要がある。
【0009】従って、物体同士の直接接触がない流体潤
滑状態を実現しようとすれば、摺動面に要求される精度
は、形状精度と表面粗さともにサブミクロンの精度が必
要となり、摺動面の表面状態は、鏡面に近い状態を実現
する必要がある。しかし、摺動面に形成する流体潤滑膜
は、特にギアの歯面に形成する場合には、潤滑膜を形成
する機構上の問題から精度高く形成し難いため、例え
ば、油圧用のギアポンプの場合には、面圧が高い部分に
おける作動油には、その粘度を上昇させるような極圧添
加剤を添加して使用している。しかし、アンモニア吸収
式のヒートポンプの場合には、冷媒中にこのような添加
剤を添加することができないため、さらにギアの歯面の
精度、表面粗さを改善する必要があった。
【0010】また、この流体潤滑状態は常に確保できる
とは限らず、ポンプの起動時や停止時などには、この流
体潤滑膜は破壊された状態となることがある。特に、ポ
ンプがガスのみ運転状態になった場合は摺動面が直接接
触して衝撃的な力が作用することも考えられるため、潤
滑膜が破壊されて摺動部が直接接触した場合でも、摺動
面の磨耗が促進されることがないように、摺動面の表面
粗さ、形状精度を維持する必要があった。
【0011】さらに、吸収式ヒートポンプシステムにお
ける溶液ポンプの場合、溶液ポンプが吸い込むアンモニ
ア水溶液の過冷却度が十分でないこともあり、アンモニ
ア水溶液が飽和、すなわち、過冷却度0degに近い吸
い込み条件で動作する可能性もある。このような吸い込
み条件では、ポンプの内部でガスのみ、あるいはキャビ
テーションが非常に起こり易くなり、キャビテーション
エロージョンにより、トロコイドギアの歯面が磨耗する
という課題があった。
【0012】このトロコイドギアの歯面の磨耗に関わる
基本的な要素としては、材料の表面硬度,形状精度,表
面粗さ,材料の境界潤滑性能,化学的な腐食,相互に摺
動させる材料の組み合わせなどが関係している。これら
の要素を高いレベルで満たす究極の材料としては、特に
水溶液中での潤滑性に優れ、かつ、硬度が高く、形状精
度の面でも優れている珪素系のセラミック材料がある。
珪素系のセラミック材料の中でも、軸受などの摺動部材
に使用されている炭化珪素あるいは窒化珪素などは、水
溶液中での潤滑性が特に優れている。しかし、これらの
珪素系セラミック材料をギアポンプのギアに適用するに
は、耐衝撃性などに対する信頼性の面,ギア形状を高精
度にかつ量産的に加工する加工法の面,およびコストの
面などで問題点があり、量産品のギアが適用できるまで
には、まだ多くの解決すべき課題がある。
【0013】量産性の面からは、鉄系材料を用いたギア
が一般的だが、熱処理をしない鉄系素材の硬度は低く、
何らかの硬度を高める手段を検討する必要がある。そし
て、ギアの歯面の硬度を高める手段としては、一般には
焼き入れによる硬化法があるが、焼き入れによる歪は大
きく、ギア歯面の形状精度を低下させ、耐磨耗性が低下
し、また、騒音が発生し易いなどの問題点を有してい
る。
【0014】金属系のギアの表面硬度を高める手段とし
て、PVD(Physical Vapor Depo
sition.物理的気相成長法)処理あるいはCVD
(Chemical Vapor Depositio
n.化学的気相成長法)処理により金属表面に薄いセラ
ミック膜を付着させる方法があるが、長時間の使用を前
提とすると、金属母材に薄いセラミック膜を付着させた
場合に付着強度が弱いという課題があった。
【0015】また、トロコイドギアは、その量産性を確
保するために焼結法により製造される場合があるが、焼
結法により金属組織がポーラス状になるため、加工油が
ポーラス層に浸透し、PVD処理あるいはCVD処理な
どにより真空高温雰囲気中で硬化処理すると、浸透した
加工油が、不純物としてチャンバー内に浮遊し、膜の付
着強度を低下させるという課題であった。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、溶液ポンプに
おける容積型ポンプを構成するトロコイドギアの歯面を
所定の形状精度を有し、所定の表面粗さに維持しなが
ら、ギア歯面の表面硬度を高くして耐磨耗性と耐キャビ
テーション性を向上させ、また歯面の境界潤滑性を向上
させ、さらにトロコイドギアの耐腐食性を向上させるこ
とを目的としている。
【0017】本発明は上記の課題を解決し、その目的を
達成するために、トロコイドギアの歯面表面に、耐食性
に優れた硬化膜を形成することとしている。硬化膜を形
成する際の硬化処理によるギアの変形を少なくするに
は、PVD処理あるいはCVD処理などにより形成する
ことができる。このようにして形成するセラミック系の
硬化膜は、膜厚が数μmのオーダーとなり、歯面の形状
精度をほとんど変更することがなく、所定の表面粗さを
維持しながら歯面の表面に強固に付着させることがで
き、硬度もHv2000〜Hv3000程度と高く、キ
ャビテーションエロージョンに対しても耐久性が優れ、
かつ、耐腐食性にも優れたものとなる。その硬化膜とし
ては、窒化チタンもしくは窒化クロムのいずれかの薄膜
が、硬度,アンモニア水に対する耐腐食性、および付着
力の面から優れている。なお、摺動性の面では、アウタ
ーギアとインナーギアとの互いに接触して摺動する部分
に形成する硬化膜としては、窒化チタンの薄膜同士の組
合せ、窒化チタンの薄膜と窒化クロムの薄膜との組合せ
が良好である。
【0018】また、トロコイドギアの歯面の表面に形成
する硬化層の最外層として、自己潤滑性を有するDLC
(Diamond Like Carbon)あるいは
水溶液中でのトライボケミカル反応による潤滑性を有す
る窒化珪素の薄膜を、例えばCVD処理により形成する
こととしている。特に、DLCの薄膜と窒化珪素の薄膜
とを組み合わせたものが良好であり、さらに、水溶液中
で潤滑性を発揮するカーボン繊維を含有した樹脂、例え
ばPPS樹脂によりアウターギアを形成し、インナーギ
アを金属系あるいはセラミック系の材料で形成すると潤
滑性が良好となる。
【0019】さらに、ギアを形成する母材とこれの表面
に形成して被覆する硬化層との硬度差による段差が発生
しないように、母材を窒化処理し、その上に硬化層を形
成するか、あるいは形成する硬化層を多層にすることと
している。
【0020】そして、アンモニア溶液を作動流体とする
溶液ポンプの主要部を構成するトロコイドギアの表面に
は、歯面の精度への影響が少なく、硬度が十分に高く、
また付着力が優れている窒化チタンもしくは窒化クロム
の少くとも1種からなる硬化層が形成されることによ
り、歯面の硬度を高め、耐磨耗性の向上と耐キャビテー
ションエロージョン性の向上をはかることができる。
【0021】また、トロコイドギアの歯面の最外層とし
て、自己潤滑性を有するDLCの薄膜あるいは水溶液中
でのトライボケミカル反応による潤滑性が機能する窒化
珪素の薄膜が形成されているか、あるいは、潤滑性を発
揮するカーボン繊維を含有した樹脂、例えばPPS樹脂
によりギアを形成することにより、トロコイドギアの歯
面の潤滑性が向上し、摩擦損失が低減されるとともに、
耐磨耗性を大幅に向上させることができる。
【0022】さらに、硬化膜の付着力を強化するため
に、トロコイドギアの歯面に、まず付着力の強い窒化チ
タンあるいは窒化クロムの薄膜を形成し、この上に窒化
珪素あるいはDLCの薄膜を形成して多層化すると、硬
化膜全体の付着力が強化されるとともに、薄膜を形成す
る時の母材との熱膨脹係数の違いによる割れを防止する
こともできる。また、母材から最外層に至る硬度のレベ
ルは、最外層側に至るに従い高くすることにより、層間
の硬度の段差を少なくすることができ、被覆する硬化膜
の硬度を高めることができる。また、母材自体を窒化処
理などにより硬化処理し、この窒化層の上に硬化膜を形
成することにより、母材と硬化膜との硬度差が縮小され
て硬化膜の実効硬度を高めることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明は、各請求項に記載された
形態により実施されるものであり、その形態について以
下説明する。
【0024】請求項1のように、アンモニア水溶液を作
動流体とする容積型ポンプ部を、鉄系の材料で形成した
アウターギアとインナーギアとを有するトロコイド型ポ
ンプで構成し、前記アウターギアとインナーギアとの表
面を、窒化チタンもしくは窒化クロムの薄膜によりいず
れかの硬化層により被覆することによりギア歯面の硬度
が向上し、耐磨耗性,耐キャビテーション性,耐腐食性
を向上させることができる。
【0025】また、請求項2のように、アンモニア水溶
液を作動流体とする容積型ポンプ部を、鉄系の材料で形
成したアウターギアとインナーギアとを有するトロコイ
ド型ポンプで構成し、前記アウターギアとインナーギア
との表面に窒化処理層を形成し、この窒化処理層を、窒
化クロムもしくは窒化チタンのいずれかの硬化層により
被覆することにより、ギア歯面の硬度をより向上させる
ことができる。
【0026】また、請求項3のように、アンモニア水溶
液を作動流体とする容積型ポンプ部を、アウターギアと
インナーギアとを有するトロコイド型ポンプで構成し、
前記アウターギアは、カーボン繊維を含有した樹脂で形
成し、前記インナーギアは鉄系もしくはセラミック系の
材料で形成し、これらギアの表面に、窒化チタンもしく
は窒化クロムのいずれかの硬化層を形成して、ギア歯面
の潤滑性を向上させることができる。
【0027】また、請求項4のように、アンモニア水溶
液を作動流体とする容積型ポンプ部を、鉄系の材料で形
成したアウターギアとインナーギアとを有するトロコイ
ド型ポンプで構成し、前記アウターギアとインナーギア
との表面に、積層状の硬化層を形成し、この硬化層の最
外層を炭化珪素の薄膜とすることにより、ギア歯面は、
表面に近い程、硬度が高くなり、ギアの磨耗を低減させ
ることができる。
【0028】また、請求項5のように、アンモニア水溶
液を作動流体とする容積型ポンプ部を、アウターギアと
インナーギアとを有するトロコイド型ポンプで構成し、
前記アウターギアとインナーギアとの表面に、炭化珪素
の焼結層を形成することにより、ギア歯面における初期
の形状精度などに対するなじみ性を向上させることがで
きる。
【0029】また、請求項6のように、アンモニア水溶
液を作動流体とする容積型ポンプ部を、鉄系の材料で形
成したアウターギアとインナーギアとを有するトロコイ
ド型ポンプで構成し、前記アウターギアとインナーギア
との表面に、レーザによる焼き入れ硬化層を形成するこ
とにより、ギア歯面の実効硬度を高めることができる。
【0030】また、請求項7のように、アンモニア水溶
液を作動流体とする容積型ポンプ部を、鉄系の材料で形
成したアウターギアとインナーギアとを有するトロコイ
ド型ポンプで構成し、前記アウターギアとインナーギア
との表面を、硬化層薄膜および窒化珪素薄膜の積層膜に
より被覆することにより、ギア歯面に平滑な薄膜が形成
され摺動性が良好となる。
【0031】また、請求項8のように、アンモニア水溶
液を作動流体とする容積型ポンプ部を、鉄系の材料で形
成したアウターギアとインナーギアとを有するトロコイ
ド型ポンプで構成し、前記アウターギアとインナーギア
との表面を、硬化層薄膜およびダイヤモンドライクカー
ボンの薄膜の積層膜により被覆することにより、ギア歯
面の摺動性が良好となり、耐磨耗性を向上させることが
できる。
【0032】また、請求項9のように、アンモニア水溶
液を作動流体とする容積型ポンプ部を、鉄系の焼結材料
で形成したアウターギアとインナーギアとを有するトロ
コイド型ポンプで構成し、前記アウターギアとインナー
ギアとの表面を、窒化珪素薄膜およびダイヤモンドライ
クカーボン薄膜の積層膜により被覆することにより、ダ
イヤモンドライクカーボン薄膜を強固に付着・保持させ
ることができる。
【0033】さらに、請求項10のように、焼結材によ
り形成したアウターギアおよびインナーギアを、真空炉
中で段階的に温度を上昇させて加熱し、ついで、前記の
アウターギアおよびインナーギアの表面にイオンを照射
したのち、このアウターギアおよびインナーギアの表面
に硬化層を形成することにより、ギア歯面に被覆膜を強
固に形成することができる。
【0034】
【実施例】以下本発明の実施例について図1ないし図2
2を参照して説明する。
【0035】(実施例1)実施例1について、図1〜図
6を参照して説明する。直流ブラシレスモータ1の固定
子2は、その内側に挿入されたライナー3により回転子
4と気密に分離されている。回転型の容積型ポンプ部5
がボディー6の前側に一体に構成されており、この容積
型ポンプ部5は、回転子4に圧入された主軸7により駆
動され、2段で昇圧するトロコイド型ポンプで構成して
いる。そして、アンモニア吸収式ヒートポンプでは、ポ
ンプ差圧として20kg/cm2 程度が必要であるの
で、上記のトロコイド型ポンプの昇圧構成は、一段で1
0kg/cm2 昇圧させることにより、トロコイドギア
などの摺動部に加わる負荷を低減させ、ポンプの耐久性
を高めている。
【0036】容積型ポンプ部5の主要部材は、ボディー
6の前側に設けられた空洞6aの中に圧入された積層構
造としている。積層されるポンプの主要部材のうち最も
底面に位置するのが側板A8で、中央部に、直流ブラシ
レスモータ1の主軸7の軸受け機能を有する軸受A8a
を備えている。側板A8に偏心リングA9を積層し、こ
の偏心リングA9は、トロコイド形状のアウターギアA
10回転自在に保持し、かつアウターギアA10がイン
ナーギアA11と適正な偏心量を形成するように保持し
ている。なお、アウターギアA10およびインナーギア
A11は、量産性に優れた鉄系の焼結材により形成し、
その表面には、各々窒化チタン膜A10a,窒化チタン
膜A11aがPVD処理により形成されている(図2参
照)。また、偏心リングA9は、アウターギアA10お
よびインナーギアA11の厚さ方向のクリアランスを適
正な値に保持する機能も有する。なお、主軸7とインナ
ーギアA11とはDカット7aにより固定されている。
【0037】偏心リングA9に中間スペーサ12を積層
し、この中間スペーサ12の側板A8側の面には、図5
に示すように、ポンプ吸入口13と連通する切り欠き1
4を設け、この切り欠き14は、中間スペーサ12の側
板A8側の面に設けた吸入溝15と連通している。ま
た、中間スペーサ12の側板A8側には吐出溝16を設
け、この吐出溝16には吐出孔16aを形成している。
このように、側板A8と中間スペーサ12との間に、ア
ウターギアA10およびインナーギアA11を介在させ
ることにより、1段目のポンプ部を構成するポンプ部A
17を形成している(図2参照)。
【0038】中間スペーサ12に偏心リングB18を積
層し、この偏心リングB18の偏心方向は、偏心リング
A9の偏心方向に対し180度反転させた方向に設定さ
れている。中間スペーサ12の偏心リングB18側の面
には、図6に示すように、中間スペーサ12の偏心リン
グA9側と同様に、吸入溝19と吐出溝20が設けてあ
るが、それぞれ吸入溝15と吐出溝16に対し180度
ずらした位置に設けられている。中間スペーサ12の偏
心リングA9側の面に設けた吐出溝16の吐出孔16a
は、偏心リングB18側の面に設けた吸入溝19と連通
している。偏心リングB18は、トロコイド形状のアウ
ターギアB22を、インナーギアB23と適正な偏心量
を保持しながら回転自在に保持し、また、この偏心リン
グB18は、アウターギアB22およびインナーギアB
23の厚さ方向のクリアランスを適正な値に保持する機
能も有する。
【0039】アウターギアB22およびインナーギアB
23も、一段目のポンプ部A17のギアと同様に鉄系の
焼結材で構成されている。アウターギアB22およびイ
ンナーギアB23の表面には、各々窒化チタン膜B22
a,23aがPVD処理により形成されている(図3参
照)。主軸7とインナーギアB23とはDカット7aに
より固定されている。さらに、偏心リングB18には側
板B24が積層されており、この側板B24には、中間
スペーサ12の吐出溝20に対応する位置に吐出ポート
が設けられている。このように、中間スペーサ12と側
板B24との間に、アウターギアB22およびインナー
ギアB23を介在させることにより、2段目のポンプを
構成するポンプ部B25を形成している(図3参照)。
【0040】以上説明したように、1段目のポンプ部A
17と2段目のポンプ部B25とは、中間スペーサ12
を介して積層されて容積型ポンプ部5を構成している。
ポンプ部A17およびポンプ部B25の基本寸法は、イ
ンナーギアA11およびインナーギアB23の幅および
外径で決まり、ポンプ部A17およびポンプ部B25で
は同一の寸法値に設定している。なお、ボディー6の前
側に設けられ、容積型ポンプ部5が存在する空洞6a
は、ポンプ蓋26により密閉されている。また、ボディ
ー6の前側には流路A27が設けられ、ボディー6の後
側には、軸受28,スペーサ29,通路30,31が設
けられている。
【0041】上記のように構成した溶液ポンプの動作に
ついて、以下説明する。直流ブラシレスモータ1の回転
子4が回転すると、回転子4に圧入してある主軸7が回
転する。主軸7が回転すると、Dカット7aにより主軸
7に固定されたインナーギアA11およびインナーギア
B23が回転し、これらのギアと各々噛み合うアウター
ギアA10およびアウターギアB22は従動ギアとして
回転し、ポンプ部A17およびポンプ部B25において
トロコイドポンプとしてのポンプ動作を行う。このポン
プ動作は、ポンプ部A17およびポンプ部B25によ
り、直列に2段で行われ、ポンプ部A17におけるイン
ナーギアA11とアウターギアA10とで1段目のポン
プ作用が行われ、ポンプ部25におけるインナーギアB
23とアウターギアB22とで2段目のポンプ作用が行
われ、2段階の昇圧作用に分割される。したがって、一
段当たりの昇圧量は最大で10kg/cm2 と負荷が低
減され、耐久性を高めることができる。
【0042】また、インナーギアA11とアウターギア
A10とは、それぞれの表面に形成した窒化チタン膜A
11a,10aを介し、インナーギアB23とアウター
ギアB22とは、それぞれの表面に形成した窒化チタン
膜B23a,22aを介して接触しており、これらイン
ナーギア,アウターギアは、高硬度でしかも化学的にア
ンモニア水溶液に対して侵されない窒化チタン膜により
ギア内部が保護されているので、ギアの歯面における形
状精度,表面粗さは維持され、表面硬度が高くなって耐
磨耗性と耐キャビテーション性とが向上する。また、窒
化チタンをPVD処理によりコーティングして窒化チタ
ン膜を形成するので、歯面母材との付着力が強く、剥離
し難くなり、また、窒化チタン膜同志がギアの摺動によ
って焼き付くことはなく、良好な摺動効果を奏する。
【0043】さらに、窒化チタンは、ビッカース硬度が
Hv2500程度と非常に硬く、耐キャビテーションエ
ロージョンに対しても効果があり、PVD処理による窒
化チタン被覆は現在最も量産化されている処理法であ
り、品質の安定性も高いものである。
【0044】なお、アウターギアA10,インナーギア
A11,アウターギアB22,インナーギアB23の表
面を被覆する膜として窒化チタン(TiN)について説
明したが、窒化クロム(CrN)でも同様の効果が得ら
れ、膜の形成にはCVD処理を用いることもでき、これ
らについては、以下に説明する実施例においても同様で
ある。
【0045】(実施例2)実施例2について、図7およ
び図8を参照して説明する。実施例1の場合と比較して
異なる構成は、インナーギアA11,インナーギアB2
3および、アウターギアA10,アウターギアB22を
形成する材質をニッケルおよびクロムを含有する特殊鋼
とし、加工方法としては粉末を焼結するのではなく、鍛
造により形成し、アウターギアA10,インナーギアA
11,アウターギアB22,インナーギアB23の表面
にガス窒化された硬度の高い窒化薄膜A10b,窒化薄
膜A11b,窒化薄膜B22b,窒化薄膜B23bを形
成し、この窒化薄膜10b,11b,22b,23bの
上に、それぞれ窒化チタン膜A10a,窒化チタン膜B
11a,窒化チタン膜A22a,窒化チタン膜B23a
を形成した点である。焼結した金属を窒化処理すると、
窒化層が焼結金属の空孔を経て内部にまで浸透し、焼結
金属の表面に固いけれども脆い層が形成されるのに対
し、鍛造により形成された金属の表面は緻密に構成さ
れ、窒化処理により固く、しかも強度の高い窒化層の薄
膜A10b,薄膜A11b,薄膜B22b,薄膜B23
bが形成される。この窒化層の薄膜は、等価的には母材
である鉄系の材料の硬度が高くなったと同様の効果があ
り、この上に形成される窒化チタンの薄膜は、母材の上
に直接窒化チタンの薄膜を形成した場合と比較して高い
実効硬度を実現することができ、また、ギアを形成する
ニッケルおよびクロムを含有する特殊鋼は、窒化処理に
より硬度の高い窒化物を析出し、硬度を高める上で効果
が高いものとなる。
【0046】(実施例3)実施例3について、図9およ
び図10を参照して説明する。実施例1の場合と比較し
て異なる構成は、カーボンファイバーを含有したPPS
樹脂を用い、射出成形により形成したアウターギアA1
0c,アウターギアB22cとを有する点であり、これ
らのアウターギアA10cと鉄系の焼結材料により形成
したインナーギアA11とを組合せ、アウターギアB2
3cと鉄系の焼結材料により形成したインナーギアB2
3とを組合せている。ギアの歯面の潤滑性を向上させる
ためには、摺動面の馴染み性、すなわち初期エージング
運転時に摺動面が早期に平滑化されるとともに面のズレ
ミスアラインメントが補正されて、流体潤滑状態に移行
することが望ましいが、アウターギアA10cおよびア
ウターギアB23cを形成するカーボンファイバーを充
填剤としたPPS樹脂は、鉄系の材料に対する馴染み性
が良く、また、カーボンファイバー自体が、水溶液での
境界潤滑性に優れているため、耐久性の面で良好な特性
が得られる。
【0047】(実施例4)実施例4について、図11お
よび図12を参照して説明する。実施例2の場合と比較
して異なる構成は、アウターギアA10,インナーギア
A11,アウターギアB22,インナーギアB23の表
面に形成した窒化チタン膜10a,11a,22a,2
3aの上に、さらに炭化珪素の薄膜10d,11d,2
2d,23dを形成した点である。
【0048】各ギアの母材となる鉄系の材料の硬度は、
ビッカース硬度で300程度であり、これを窒化処理し
て形成した窒化層の薄膜10b,11b,22b,23
bのビッカース硬度は500程度まで上昇する。さら
に、この窒化層の薄膜10b,11b,22b,23b
の上に形成される窒化チタンの薄膜10a,11a,2
2a,23aのビッカース硬度は2500程度となる。
そして、この上にビッカース硬度が3000程度の炭化
珪素の薄膜10d,11d,22d,23dを形成する
ので、アウターギアA10,インナーギアA11,アウ
ターギアB22,インナーギアB23は表面層が表面に
なるほど硬度が高くなっている。その結果、ギアの材料
内部における硬度の不連続により生ずる内部応力が緩和
され、母材側に強固に保持されるので、膜の強度を高め
ることができる。また、炭化珪素は水溶液中の摺動材料
として非常に優れ、また化学的にも安定していることか
ら、ギアの磨耗を低減する上で非常に効果がある。
【0049】(実施例5)実施例5について、図13,
図14を参照して説明する。実施例1の場合と比較して
異なる構成は、アウターギアA10,インナーギアA1
1,アウターギアB22,インナーギアB23のそれぞ
れの表面に、炭化珪素(Sic)の焼結層A10e,焼
結層A11e,焼結層B22e,焼結層B23eを形成
している点である。
【0050】炭化珪素は、水溶液中での摺動性が非常に
優れており、材料が非常に硬いので、初期の形状精度や
表面粗さに敏感となって好ましく、また焼結した炭化珪
素は、ポーラスに形成され、ギア歯面での初期のなじみ
性の改善に効果がある。
【0051】(実施例6)実施例6について、図15,
図16を参照して説明する。この実施例では、実施例1
の場合において、窒化チタン膜10a、11a、22
a、23aを形成するアウターギアA10,インナーギ
アA11、アウターギアB22,インナーギアB23の
それぞれの表面に、レーザ焼き入れによる硬化層A10
f,硬化層A11f,硬化層B22f,硬化層B23f
をそれぞれ形成している。
【0052】ギアを焼結材により構成すると、量産性は
高くなるが、母材硬度を高めるために加熱炉で焼き入れ
処理をする場合、大幅に寸法が変化し、トロコイドポン
プ用のギアとして要求される精度から大幅にずれること
がある。レーザによる焼き入れは、ギアのごく表面のみ
を加熱して熱処理するので、特に磨耗が問題となる歯面
のみを硬化させるのに適した処理であり、焼結材の組成
を最適化することで、ビッカース硬度で800程度まで
上昇させることが可能となる。
【0053】このレーザ焼き入れにより形成した硬化層
10f,11f,22f,23fは、等価的に母材であ
る鉄系の材料の硬度が高くなったと同様の効果があり、
この上に形成される窒化チタン薄膜10a,11a,2
2a,23aは、母材の上に直接窒化チタンの薄膜を形
成した場合と比較して高い実効硬度を実現することがで
きる。また、このレーザ焼き入れをした硬化層に窒化処
理をし、さらに硬度を高めることも可能である。
【0054】(実施例7)実施例7について図17,図
18を参照して説明する。この実施例では、実施例5の
場合における炭化珪素の焼結層10e,11e,22
e,23eの代りに、インナーギアA11,インナーギ
アB23,アウターギアA10,アウターギアB22の
それぞれの表面に、窒化珪素(SiN)薄膜A11g,
薄膜B23g,薄膜A10g,薄膜B22gを形成して
いる。
【0055】窒化珪素の薄膜10g,11g,22g,
23gを形成するには、CVD法により行うので、PV
D法により窒化チタンあるいは窒化クロムの薄膜を形成
する場合と比較して、内周面に均等に膜が付着し易くア
ウターギアA10およびアウターギアB22の歯面側に
も確実に膜を形成することができる。また、窒化珪素
は、化学的にもアンモニア水溶液に対して侵されること
がなく、ギア内部を保護することができ、また窒化珪素
はトライボケミカル反応で摺動面が平滑化され、摺動性
が良好となる。さらに、窒化珪素はセラミックスの中で
は高い靱性をもち、ギア歯面での接触圧にも耐えること
ができる。
【0056】(実施例8)実施例8について、図19,
図20を参照して説明する。この実施例では、実施例5
の場合における炭化珪素の焼結層10e,11e,22
e,23eの代りに、インナーギアA11,インナーギ
アB23,アウターギアA10,アウターギアB22の
それぞれの表面に、DLC薄膜A11h,薄膜B23
h,薄膜A10h,薄膜B22hを形成している。
【0057】DLC薄膜は摺動性がたいへん優れている
ため、ギアの歯面同士磨耗に対して効果がある。
【0058】(実施例9)実施例9について、図21,
図22を参照して説明する。この実施例では、実施例7
において、インナーギアA11,インナーギアB23,
アウターギアA10,アウターギアA22の表面に形成
した窒化珪素の薄膜A11g,薄膜B23g,薄膜A1
0g,薄膜B22gの上に、さらにDLCの薄膜A11
i,薄膜B23i,薄膜A10i,薄膜B22iを設け
ている。DLC薄膜は、ビッカース硬度がHv3000
程度と高く、また自己潤滑性に優れ、相手材を攻撃しな
い材料であるが、硬度が高いために、内部応力が高く、
膜厚を厚く形成することができない。しかし、窒化珪素
の薄膜は、DLCの薄膜との親和性が高く、DLCの薄
膜を強固に保持することができるので、もしDLCの薄
膜の一部が欠落しても、DLCの薄膜と窒化珪素の薄膜
との組み合わせによる摺動性が良く、ギアの磨耗を防止
する上で効果がある。
【0059】(実施例10)鉄系の焼結材により形成
し、サイジング工程で歯面精度を確保したトロコイド形
状のアウターギアとインナーギアとの表面に、上記実施
例1〜9で説明したように、PVD処理、CVD処理な
どにより、窒化チタン膜,窒化クロム膜,炭化珪素薄
膜,窒化珪素薄膜,DLC薄膜などの硬化層を形成する
場合、PVD処理,CVD処理は、高温真空中で処理が
行われるが、処理する歯表面が清浄でないと、硬化層の
付着性が悪くなる。また、ギアを形成する焼結材は、ポ
ーラスな材質でガス成分などを吸着し易く、加工過程で
使用する加工油を吸着しているので、これらの不純物を
取り除く必要がある。
【0060】そこで、コーティング処理前に、真空炉中
でアウターギアおよびインナーギアを加熱して脱ガスの
前処理を行なう。すなわち、最初に100℃程度の温度
に加熱して吸着されている油を除去し、ついで、焼結材
内部に残存する油の量と油の種類に応じて、温度をステ
ップ状に上げながら最終450℃程度にまで加熱する
と、焼結体内に吸着されて残存している不純物が分離、
脱着されるので、ギアのサイジング工程でギア中に侵入
した油などの不純物を、ギア表面に焼きつかすことな
く、完全に除去することができる。さらに、コーティン
グ処理前に、真空炉中でイオン照射を行い、ギアの表面
をクリーニングして清浄面を確保すれば、硬化層を強固
にギアの表面に付着させることができる。
【0061】
【発明の効果】以上に説明するような形態で実施される
本発明の吸収式ヒートポンプ用溶液ポンプによれば、次
に記載するような効果が得られる。
【0062】請求項1によれば、鉄系の材料を母材とす
るアウターギアとインナーギアとの表面に、窒化チタン
あるいは窒化クロムのいずれかの薄膜を形成しているた
め、ギア表面の硬度が高まるとともに、アンモニア水溶
液に対する耐腐食性が確保され、耐磨耗性と耐キャビテ
ーション性とを向上させることができる。
【0063】また、請求項2あるいは6によれば、鉄系
の材料を母材とするアウターギアとインナーギアとの表
面を、窒化処理あるいはレーザ焼き入れ処理により母材
の硬度を高めたのち、窒化クロムあるいは窒化チタンの
薄膜を形成しているため、窒化クロムあるいは窒化チタ
ンの薄膜の実効硬度が高まるとともに、この薄膜の付着
強度が高まり、耐磨耗性と耐キャビテーション性を向上
させることができる。
【0064】また、請求項3によれば、インナーギアを
鉄系の材料で構成し、アウターギアをカーボン繊維を含
有した樹脂により構成することにより、水溶液中での自
己潤滑性が優れたものとなり、また初期なじみ性が良く
なり、アンモニア水溶液中での耐磨耗性を向上させるこ
とができる。
【0065】また、請求項5あるいは7によれば、水溶
液中でのトライボケミカル反応により摺動性に優れ、か
つ硬度の高い炭化珪素系のセラミックス層を、ギアの表
面に形成しているため、耐磨耗性が大幅に向上されると
ともに、キャビテーションに対する耐久性を大幅に向上
させることができる。
【0066】また、請求項8あるいは9によれば、鉄系
の材料で構成されたアウターギアおよびインナーギアの
表面に、潤滑性が優れ、かつ硬度の高いダイヤモンドラ
イクカーボンの薄膜を形成し、かつ、この薄膜のベース
として窒化珪素の薄膜を形成することにより、優れた耐
磨耗性と耐キャビテーション性を発揮することができ
る。
【0067】さらに、請求項10によれば、焼結材によ
り形成したアウターギア,インナーギアを、真空炉中に
おいてステップ状に昇温して加熱し、かつイオン照射す
ることにより、焼結材に残存する不純物を除去し、その
表面の清浄性を確保して硬化層を強固に付着させること
ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1における吸収式ヒートポンプ
用溶液ポンプの概略断面図
【図2】同溶液ポンプにおける1段目ポンプ部の要部断
面図
【図3】同溶液ポンプにおける2段目ポンプ部の要部断
面図
【図4】同溶液ポンプにおける中間スペーサの断面図
【図5】同中間スペーサの1段目ポンプ部側の平面図
【図6】同中間スペーサの2段目ポンプ部側の平面図
【図7】本発明の実施例2における溶液ポンプの1段目
ポンプ部の要部断面図
【図8】同溶液ポンプの2段目ポンプ部の要部断面図
【図9】本発明の実施例3における溶液ポンプの1段目
ポンプ部の要部断面図
【図10】同溶液ポンプの2段目ポンプ部の要部断面図
【図11】本発明の実施例4における溶液ポンプの1段
目ポンプ部のギアの要部模式図
【図12】同溶液ポンプの2段目ポンプ部のギアの要部
模式図
【図13】本発明の実施例5における溶液ポンプの1段
目ポンプ部の要部断面図
【図14】同溶液ポンプの2段目ポンプ部の要部断面図
【図15】本発明の実施例6における溶液ポンプの1段
目ポンプ部の要部断面図
【図16】同溶液ポンプの2段目ポンプ部の要部断面図
【図17】本発明の実施例7における溶液ポンプの1段
目ポンプ部の要部断面図
【図18】同溶液ポンプの2段目ポンプ部の要部断面図
【図19】本発明の実施例8における溶液ポンプの1段
目ポンプ部の要部断面図
【図20】同溶液ポンプの2段目ポンプ部の要部断面図
【図21】本発明の実施例9における溶液ポンプの1段
目ポンプ部の要部断面図
【図22】同溶液ポンプの2段目ポンプ部の要部断面図
【符号の説明】
5 容積型ポンプ部 10,10c,22,22c アウターギア 11,23 インナーギア 10a,11a,22a,23a 窒化チタン膜 10b,11b,22b,23b 窒化薄膜 10d,11d,22d,23d 炭化珪素薄膜 10e,11e,22e,23e 炭化珪素焼結層 10f,11f,22f,23f 硬化層 10g,11g,22g,23g 窒化珪素薄膜 10h,10i,11h,11i,22h,22i,2
3h,23i DLC薄膜

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アンモニア水溶液を作動流体とする容積型
    ポンプ部を、鉄系の材料で形成したアウターギアとイン
    ナーギアとを有するトロコイド型ポンプで構成し、前記
    アウターギアとインナーギアとの表面に、窒化チタンも
    しくは窒化クロムのいずれかの硬化層を形成した吸収式
    ヒートポンプ用溶液ポンプ。
  2. 【請求項2】アンモニア水溶液を作動流体とする容積型
    ポンプ部を、鉄系の材料で形成したアウターギアとイン
    ナーギアとを有するトロコイド型ポンプで構成し、前記
    アウターギアとインナーギアとの表面に窒化処理層を形
    成し、この窒化処理層の上に、窒化クロムもしくは窒化
    チタンのいずれかの硬化層を形成した吸収式ヒートポン
    プ用溶液ポンプ。
  3. 【請求項3】アンモニア水溶液を作動流体とする容積型
    ポンプ部を、アウターギアとインナーギアとを有するト
    ロコイド型ポンプで構成し、前記アウターギアは、カー
    ボン繊維を含有した樹脂で形成し、前記インナーギアは
    鉄系もしくはセラミック系の材料で形成し、これらギア
    の表面に、窒化チタンもしくは窒化クロムのいずれかの
    硬化層を形成した吸収式ヒートポンプ用溶液ポンプ。
  4. 【請求項4】アンモニア水溶液を作動流体とする容積型
    ポンプ部を、鉄系の材料で形成したアウターギアとイン
    ナーギアとを有するトロコイド型ポンプで構成し、前記
    アウターギアとインナーギアとの表面に、積層状の硬化
    層を形成し、この硬化層の最外層は炭化珪素の薄膜とし
    た吸収式ヒートポンプ用溶液ポンプ。
  5. 【請求項5】アンモニア水溶液を作動流体とする容積型
    ポンプ部を、アウターギアとインナーギアとを有するト
    ロコイド型ポンプで構成し、前記アウターギアとインナ
    ーギアとの表面に、炭化珪素の焼結層を形成した吸収式
    ヒートポンプ用溶液ポンプ。
  6. 【請求項6】アンモニア水溶液を作動流体とする容積型
    ポンプ部を、鉄系の材料で形成したアウターギアとイン
    ナーギアとを有するトロコイド型ポンプで構成し、前記
    アウターギアとインナーギアとの表面に、レーザによる
    焼き入れ硬化層を形成した吸収式ヒートポンプ用溶液ポ
    ンプ。
  7. 【請求項7】アンモニア水溶液を作動流体とする容積型
    ポンプ部を、鉄系の材料で形成したアウターギアとイン
    ナーギアとを有するトロコイド型ポンプで構成し、前記
    アウターギアとインナーギアとの表面を、硬化層薄膜お
    よび窒化珪素薄膜の積層膜により被覆した吸収式ヒート
    ポンプ用溶液ポンプ。
  8. 【請求項8】アンモニア水溶液を作動流体とする容積型
    ポンプ部を、鉄系の材料で形成したアウターギアとイン
    ナーギアとを有するトロコイド型ポンプで構成し、前記
    アウターギアとインナーギアとの表面を、硬化層薄膜お
    よびダイヤモンドライクカーボン薄膜の積層膜により被
    覆した吸収式ヒートポンプ用溶液ポンプ。
  9. 【請求項9】アンモニア水溶液を作動流体とする容積型
    ポンプ部を、鉄系の焼結材料で形成したアウターギアと
    インナーギアとを有するトロコイド型ポンプで構成し、
    前記アウターギアとインナーギアとの表面を、窒化珪素
    薄膜およびダイヤモンドライクカーボン薄膜の積層膜に
    より被覆した吸収式ヒートポンプ用溶液ポンプ。
  10. 【請求項10】焼結材により形成したアウターギアおよ
    びインナーギアを真空炉中で段階的に温度を上昇させて
    加熱し、ついで、前記のアウターギアおよびインナーギ
    アの表面にイオンを照射したのち、このアウターギアお
    よびインナーギアの表面に硬化層を形成する吸収式ヒー
    トポンプ用溶液ポンプの製造方法。
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