JP2008286148A - 圧縮機 - Google Patents

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Abstract

【課題】製造コストが低く、様々な使用条件においても、軸受摺動面の摩耗量が少なく焼付き防止性に優れたスラスト軸受を有する圧縮機を提供する。
【解決手段】本発明のスクロール型圧縮機11は、一方の摺動面(100)と、該一方の摺動面(100)に対向する他方の摺動面(101)とを有するスラスト軸受(53)を備えており、上記一方の摺動面(100)には、溝(85)に囲まれて互いに独立した浮島形状の複数の受圧部(83)が形成されており、上記他方の摺動面(101)は、上記受圧部(83)と対向する部分が上記一方の摺動面(100)に比べて平坦に形成されており、上記他方の摺動面(101)の最表面には、ダイヤモンドライクカーボン層(101a)が形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は圧縮機に関し、特にスラスト軸受を備えた圧縮機に関する。
従来、さまざまな種類の圧縮機が用いられている。例えば、冷凍サイクルで用いられるスクロール型圧縮機がある。
一般に、スクロール型圧縮機は、ハウジングに固定された固定スクロールと、この固定スクロールに対向配置され、回転軸によって固定スクロールに対して旋回する可動スクロールとを有しており、これら固定スクロールと可動スクロールとによって流体を圧縮するようになっている。この可動スクロールは、可動スクロール背面の圧力と、圧縮される流体の圧力との圧力差によってスラスト方向の力を受けているが、このスラスト方向の力は、スラスト軸受によって支持されている。
可動スクロールは公転運動をするため、スラスト軸受をスクロール型圧縮機に用いた場合の摺動速度は、スラスト軸受を回転運動する機器に用いた場合の摺動速度に比べて小さい。このため、摺動面における潤滑油の油膜形成が難しく、焼付き等を起こしやすい。
特に、二酸化炭素冷媒を使用した冷凍サイクルで用いられる圧縮機では、圧縮される冷媒の圧力が高いため、上記スラスト方向の力も大きくなりスラスト軸受の摺動面における油膜の形成がより重要な課題となる。
例えば、特許文献1には、可動スクロールの摺動面と固定された摺動面とからなるスラスト軸受を備えるスクロール型圧縮機において、可動スクールの軸の後背部に圧力をかけて、摺動面が受ける荷重を低減する背圧機構を有し、且つこの摺動面がダイヤモンドライクカーボン層により皮膜されているスクロール型圧縮機が提案されている。
しかし、この背圧機構は制御が複雑であり、コストアップにつながる。そして製造コストを低減するために、この背圧機構を設けない場合には、スラスト軸受において、摩耗が増加し、焼付きが生じる可能性がある。
特開2001−115959号公報
本発明は、上記問題点を解決することを課題とし、製造コストが低く、様々な使用条件においても、軸受摺動面の摩耗量が少なく焼付き防止性に優れたスラスト軸受を有する圧縮機を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、一方の摺動面(100)と、該一方の摺動面(100)に対向する他方の摺動面(101)とを有するスラスト軸受(53)を備えた圧縮機において、上記一方の摺動面(100)には、溝(85)に囲まれて互いに独立した浮島形状の複数の受圧部(83)が形成されており、上記他方の摺動面(101)は、上記一方の摺動面(100)に比べて平坦に形成されており、上記他方の摺動面(101)には、ダイヤモンドライクカーボン層(101a)が形成されていることを特徴とする。
これにより、スラスト軸受(53)の摺動面における摩耗または焼付きが防止される。また、一方の摺動面(100)と他方の摺動面(101)との摺動により、受圧部(83)になじみが生じ、摺動面に流体潤滑が形成され易くなるので、スラスト軸受(53)における摩耗または焼付きがさらに防止される。このようにして、背圧機構を設ける必要がないので、圧縮機の製造コストを低減できる。また、なじみ運転により、受圧部(83)になじみが形成されるので、受圧部(83)の形状を、精度良く形成しておく必要がなく、圧縮機の製造コストをさらに低減できる。
また、その上にダイヤモンドライクカーボン層(101a)が形成される、他方の摺動面(101)の基材(101b)として、一方の摺動面(100)の形成材料よりも安価なものを用いることにより、圧縮機の製造コストをさらにまた低減できる。
請求項2に記載の発明は、上記受圧部(83)は略円形状、長円形状、楕円形状、3角形状またはそれ以上の多角形状のいずれかであり、複数の該受圧部(83)が、千鳥配置されていることを特徴とする。
これにより、受圧部(83)を高密度に配置することができ、単位面積当たりの油膜形成面積を増加させて、高荷重を支持することができる。
請求項3に記載の発明は、上記他方の摺動面(101)における表面の最大粗さが、上記受圧部(83)における表面の最大粗さよりも小さいことを特徴とする。
これにより、他方の摺動面(101)の平滑性が保証されるので、スラスト軸受(53)における摩耗または焼付き防止性が確実になる。
請求項4に記載の発明は、固定スクロール(38)と、回転軸(21)によって該固定スクロール(38)に対して旋回することで流体を圧縮する可動スクロール(32)とを備え、上記スラスト軸受(53)は、上記可動スクロール(32)が受ける軸方向の力を受けることを特徴とする。さらに、請求項4に記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、上記流体が二酸化炭素を含み、吐出される該流体の圧力が二酸化炭素の臨界圧力を超える圧縮機に適用されることが好ましい。
請求項6に記載の発明は、上記他方の摺動面(101)の基材(101b)が、機械構造用合金鋼材または圧延鋼板材により形成されていることを特徴とする。
これにより、圧縮機の製造コストを一層低減できる。
請求項7に記載の発明は、上記他方の摺動面(101)には、該他方の摺動面(101)の基材(101b)と、上記ダイヤモンドライクカーボン層(101a)との間に、中間層(101c)が形成されており、上記中間層(101c)が、クロム、アルミニウム、タングステン、タンタル、モリブデン、ニオブ、炭素およびチタンよりなる群から選択される1つまたは複数の金属から形成されていることを特徴とする。
これにより、他方の摺動面(101)の基材(101b)と、ダイヤモンドライクカーボン層(101a)との密着性が高められる。
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
以下、本発明の一実施形態につき、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるスクロール型圧縮機11を示す縦断面図である。以下二酸化炭素冷媒を使用し、吐出される二酸化炭素の圧力が臨界圧力を超える冷凍回路中で用いられる給湯機用の圧縮機を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施形態におけるスクロール型圧縮機11は、密閉容器13内に電動機部27と圧縮機構部10とを収容した密閉型電動圧縮機である。
密閉容器13は、円筒形をなす円筒ケース13aと、この円筒ケース13aの両端に組みつけられた電動機側端部ケース13b、圧縮機構側端部ケース13cとを備えている。
電動機部27は、円筒ケース13aの内周面に固定された固定子25と、電動機部27によって回転駆動されるシャフト21に固定される回転子23とを備えている。
圧縮機構部10は、円筒ケース13a内において上記固定子25に隣接する位置に固定されたミドルハウジング15と、ミドルハウジング15に設けられた主軸受17によって支持されたクランク機構28により公転する可動スクロール32と、ミドルハウジング15の反固定子25側において、円筒ケース13aに固定され、可動スクロール32と対向配置されて共に後述する作動室45を形成する固定スクロール38とを備えている。
尚、シャフト21は、円筒ケース13a内において、固定子25と電動機側端部ケース13bとの間に設けられた円盤状の支持部材14に固定された副軸受19と、上記主軸受17とによって略水平に支持されている。
可動スクロール32は、略円盤状の可動側板33と、可動側板33の端面から固定スクロール38側に向かってインボリュート曲線状に立設した可動側渦巻41と、可動側渦巻41と反対側の端面からミドルハウジング15側に向かって円筒状に立設したボス部35を備える。
固定スクロール38は、円筒ケース13aに固定された固定側板39と、固定側板39の可動スクロール32側の端面に設けられた渦巻状の溝によって形成された固定側渦巻43を備える。
ミドルハウジング15は、電動機部27側から固定スクロール38側に向かって、順次径が大きくなる3段円筒状をなしており、電動機部27に近い最も小径の円筒15aは主軸受17を構成し、真ん中の円筒15bはクランク機構28を収容するクランク室29を構成し、固定スクロール38に近い最も大径の円筒15cは内部に可動スクロール32を収容するスクロール収納部31を形成すると共に、円筒ケース13aの内周面に溶接などの固定手段によって固定されている。
クランク機構28は、シャフト21の圧縮機構部10側の端部に一体に設けられた偏心軸37と可動スクロール32のボス部35によって構成されている。偏心部37は、上記主軸受17及び副軸受19の軸中心から所定量e(図2(a))だけ偏心するように設けられている。この偏心量eが、可動スクロール32の公転半径となる。
ミドルハウジング15を構成する上記大径の円筒15cと真ん中の円筒15bとを繋ぐ円板部15dの可動スクロール32側の端面(以下、円板部スクロール側端面15eと称する)には、図示しないオルダムカップリングが配置されており、可動スクロール32の自転を防止している。これにより、可動スクロール32は公転のみが許容されている。圧縮機構部10は、可動側渦巻41と固定側渦巻43の噛み合いによって形成される複数の作動室45が、可動スクロール32が固定スクロール38に対して旋回することで体積を縮小することにより固定側渦巻43の最外周側に連通する吸入室46に供給された冷媒を圧縮する。
また、円板部スクロール側端面15eと、可動スクロール32のボス部35が設けられた側の端面(以下、可動スクロール背面32aと称する)との間には、スラスト軸受53が配置されている。このスラスト軸受53は、冷媒を圧縮する時の圧縮反力と、可動スクロール背面32a側の圧力によるスラスト方向の力との差によって結果として可動側板33が受ける軸方向の力(本実施形態においては固定スクロール38側から円板部15dに向けて可動側板33を押す力)を受けながら可動スクロール背面32aと円板部スクロール側端面15eとを摺動させるすべり軸受である。このスラスト軸受53については後に詳述する。
上記吸入室46は、固定側板39の側面に設けられており、円筒ケース13aを貫通し、密閉容器13外部の冷媒回路から冷媒を吸入する吸入管47が接続されている。
固定側渦巻43の中心部には、固定側板39を軸方向に貫通する吐出口49が設けられている。可動スクロール32と固定スクロール38とによって圧縮された冷媒はこの吐出口49から吐出室50に吐出される。
吐出室50は、固定側板39の反可動スクロール32側の端面(以下、固定スクロール背面38aと称する)と、該固定スクロール背面38aに固定されたセパレータブロック55の固定側板39側の端面に設けられた凹部によって構成されている。尚、吐出室50内には吐出された冷媒が逆流することを防止する吐出弁61が配置されている。
吐出室50に吐出された高温高圧の冷媒は、吐出室50から上方に延びる冷媒流路57を経てオイルセパレータ63に導かれる。
オイルセパレータ63は、内筒63aと外筒63bとを有する遠心分離式のオイルセパレータであり、2重円筒状をなしている。
冷媒流路57は、吐出室50から固定スクロール背面38aに沿って上方に延びた後、遠心分離式のオイルセパレータ63の内筒63aと外筒63bの間の空間に概略接線方向に接続している。内筒63aと外筒63bの間の空間に概略接線方向から流入した冷媒は、内筒63aと外筒63bの間の空間を旋回し、冷媒に含まれていたオイルが遠心分離された後、内筒63a内を通り、吐出管59を経て密閉容器13外部の冷媒回路へと送られる。ここで、本実施形態におけるオイルはポリアルキレングリコールまたはポリビニルエーテルまたはポリオールエステルのいずれか一つ、またはこれらのうちの複数を混合した潤滑油を主成分とすると好ましい。
尚、オイルセパレータ63の外筒63bはセパレータブロック55に設けられた円筒状の穴によって構成されており、内筒63aは外筒63bを構成する円筒状の穴内に圧入やサークリップ等の固定手段によって固定されている。
また、吐出管59は、密閉容器13の内外を貫通し、外筒63bを構成する円筒状の穴の上端に気密に挿入されている。尚、セパレータブロック55と圧縮機構側端部ケース13cとの間の空間は吐出される冷媒の圧力に比べて低圧の雰囲気となっている。
オイルセパレータ63によって分離されたオイルは、外筒63bの内壁面に沿って、重力によって下方に移動し、外筒63bを構成する円筒状の穴の下端に設けられた小径孔64を介して高圧貯油室65に貯えられる。
高圧貯油室65は、セパレータブロック55内に設けられ、吐出室50と外筒63bを構成する円筒状の穴の下方に位置している。セパレータブロック55は、高圧貯油室65に貯留できる高圧のオイルの量を多くするため、外筒63bを構成する円筒状の穴に対応する上部よりも高圧貯油室65を構成する下部の方が圧縮機構側端部ケース13c側に突出している。
高圧貯油室65に貯えられたオイルは、固定側渦巻43よりも下方において、固定側板39を貫通するオイル戻し通路67を通って可動側板33内部に設けられたオイル通路69に導かれる。尚、オイル戻し通路67の出口には、小径の絞り部67aが設けられている。
オイル通路69の入口は、可動側板33の可動側渦巻41が設けられた面に開口している。このオイル通路69の入口は、可動スクロール32の公転運動によってオイル戻し通路67の出口と間欠的に連通するようになっている。また、オイル通路69の出口は、シャフト21の端部とボス部35の底面との間の空間に連通するようにボス部35の内壁に開口している。
尚、高圧貯油室65に蓄えられたオイルは、冷媒の吐出圧力を帯び高圧となっているが、絞り部67aおよび可動スクロール32の公転運動によるオイル戻し通路67とオイル通路69との間欠的な連通によって、所望の圧力まで減圧される。
シャフト21の端部とボス部35の底面との間の空間に導かれたオイルは、シャフト21内部を軸方向に貫通するオイル通路71に流入する。
オイル通路71を通過したオイルは、密閉容器13内において、電動機側端部ケース13bと支持部材14との間に導かれる。支持部材14、ミドルハウジング15、固定側板39には、円筒ケース13aとの間に図示しない隙間があり、電動機側端部ケース13bと支持部材14との間に導かれたオイルは、密閉容器13内の全領域において下方に貯留される。密閉容器13内の全領域の下方は低圧貯油室66を構成している。
低圧貯油室66に貯留されたオイルは、ミドルハウジング15の円板部15dの下方に設けられたオイル戻し孔73を通ってスクロール収納部31に至る。
オイル通路71には、主軸受17及び副軸受19に対応する部位に径方向孔71a、71bがオイル通路71から分岐するように設けられている。
径方向孔71aの出口はシャフト21に設けられたシャフト溝21aに連通しており、径方向孔71aに流入したオイルは、主軸受17、クランク機構28、スラスト軸受53を潤滑した後、スクロール収納部31に至る。尚、真ん中の円筒15bには、シャフト21よりも上部のスラスト軸受53へオイルを導くため、シャフト21よりも上部において、径方向孔71aとスラスト軸受53とを連通させるオイル溝72が形成されている。
一方、径方向孔71bに流入したオイルは、副軸受19を潤滑した後、低圧貯油室66内に落下し、オイル戻し孔73によってスクロール収納部31に至る。
オイル戻し通路67、オイル通路69、71、径方向穴71aは、オイルセパレータ63によって分離されたオイルの圧力とスラスト軸受53が配置される部位の圧力との圧力差によってスラスト軸受53にオイルを供給するオイル供給手段をなしている。
スクロール収納部31に至ったオイルは、可動スクロール32と固定スクロール38の摺動面に供給され、作動室45で冷媒と共に圧縮され、再びオイルセパレータ63によって冷媒から分離される。
次に、本発明のスラスト軸受53について説明する。本実施形態におけるスラスト軸受53は、可動スクロール背面32aに固定されたスクロール側プレート53aと、円板部スクロール側端面15eに固定されたハウジング側プレート53bとから構成されている。
スクロール側プレート53aは、ドーナツ形状に形成され、中心部の穴をボス部35が貫通している。スクロール側プレート53aのハウジング側プレート53bと摺動接触する端面には、図2に示すような略円形の凹凸が形成されている。
尚、図2(a)は、図1をスクロール側プレート53aのハウジング側プレート53bと摺動接触する端面が見えるように切った図1のA−A断面図であり、図2(b)は図2(a)を略円形の凹凸面の断面が見えるように切ったB−B断面図であり、図2(c)は図2(a)中符号Gで示す部位の拡大図である。尚、図2(a)において、破線で示したハウジング側プレート53b及びハウジング側プレート53bの内径側の縁53cは、本来図2(a)の断面に現れない構成であるが、ハウジング側プレート53aとの相対的な位置関係を示すため、図2(a)上にその位置を示してある。
略円形の凹凸の凹部は、複数の溝85によって構成されている。この複数の溝85には上記オイル供給手段によってオイルが供給されるとともに、網目状に交差しており、その交差点85aは他の部位よりも溝幅が広くなっている。また、図2(b)に示す溝85の底面は、表面粗さが、12.5Rz以上となっており、後述する受圧部83よりも表面粗さが粗くなっている。複数の溝85のうち、最外周に位置する溝(以下、最外周溝)85bはスクロール側プレート53aの縁に沿ってスクロール側プレート53aの縁を一周しており、蛇行している。この最外周溝85bとスクロール側プレート53aの縁との間は、全周において常にハウジング側プレート53bと摺動接触することによって摺動面からの潤滑油の流出量を少なくする外周シール部81を形成している。シール部81は最外周溝85bの蛇行によりスクロール側プレート53aの径方向内側に張り出すように湾曲した凸部81cを備える。この凸部81cは、後述する受圧部83と同様、図2(c)に示すように、可動スクロール32の旋回運動によって凸部81cの面する全方向からオイルを引き込み、油膜を形成する役割を果たしている。
上記複数の溝85の相互間において、溝85に囲まれて形成された凸部は、浮島形状の受圧部83となっており、この受圧部83は略円形に形成されるとともに、上記最外周の溝85の蛇行に合わせて千鳥配置されている。尚、受圧部83の直径は異物の排出性や面圧の低減の為に、可動スクロール32の公転半径eに対して、e以上、2e未満、摺動面における溝85との面積比率は受圧部83が50%以上を占めることが望ましい。また、シール部81の上面と受圧部83は、摺動面として平滑になされており略同一平面内に位置している。尚、図2(b)に示すように、シール部81、受圧部83の縁には油膜のくさび効果を発生する為のテーパ部もしくはダレ部81b、83bが設けられており、ハウジング側プレート53bと摺動接触するのは平坦部81aと83aである。
また、本実施形態では、スラスト軸受53は、可動スクロール32に固定されたスクロール側プレート53aに凹凸を設けているため、凹凸部を形成する複数の溝85が可動スクロールの旋回に伴って、シャフト21に対して相対移動するように構成されている。
ハウジング側プレート53bは、スクロール側プレート53bとの摺動面が鏡面仕上げされたプレーンな平面となっており、スクロール側プレート53aと同じくドーナツ形状をなしている。
上記の構成により、溝85に保持されたオイルは、スクロール側プレート53aとハウジング側プレート53bとの摺動接触により、受圧部83の周囲に形成されるダレ部およびテーパ部81b、83bによるくさび効果によって受圧部83上に図3に示す油膜86を形成する。この油膜86は、潤滑油内に冷媒が溶解している状態である。
次に、本実施形態のスラスト軸受53について、更に以下に説明する。
スラスト軸受53は、図4に示すように、一対の摺動面100,101を有している。一方の摺動面100は、スクロール側プレート53aの面で、ハウジング側プレート53bと対向している。他方の摺動面101は、ハウジング側プレート53bの面で、スクロール側プレート53aと対向している。
本実施形態では、一方の摺動面100を備えたスクロール側プレート53aが、可動スクロール32と別体に形成されているが、一体に形成されていてもよい。
上述したように、一方の摺動面100には、図2(a)に示すように、多数の浮島状の受圧部83が形成されている。また、他方の摺動面101は、図4に示すように、一方の摺動面100に比べて平坦となっている。具体的には、他方の摺動面101は、一方の摺動面100における受圧部83と対向する部分が、実質的に平坦となっている。本実施形態では、他方の摺動面101は、全体がプレーンな平面となっている。
このように、受圧部83は略円形状であり、溝85に囲まれて互いに独立した浮島形状の複数の該受圧部83が、スクロール側プレート53a上に千鳥配置されている。
尚、図4において、溝85が記載されているが、この溝は、他の溝85a、85bであっても良い。
本明細書において、「実質的に平坦」とは、受圧部83と、該受圧部83と対向する他方の摺動面101の部分との間において、そこに介在する潤滑油と冷媒との混合流体に、くさび効果による圧力が発生する程度に、上記部分が平坦であることを意味する。
図4に示すように、受圧部83は、その周縁部に形成されたダレ部83bと、その内側で該ダレ部83bと連設している平坦部83aとを有している。ダレ部83bは、上記混合流体が流入してくる受圧部83の周縁部に設けられている。本実施形態では、可動スクロール32の旋回運動によって受圧部83の全周縁部から上記混合流体を引き込むので、ダレ部83bが、受圧部83の全周縁部に形成されている。
ダレ部83bは、その幅が略一定であり、受圧部83の周縁部に円環状に形成されている。円環状のダレ部83bの内側に位置する平坦部83aは、円形状を有している。
ダレ部83bは他方の摺動面101側に凸状に湾曲した形状でも良いし、平坦な面を有していてもよい。
一方の摺動面100と他方の摺動面101とは、受圧部83のくさび効果により、流体潤滑状態が得られやすくなっている。
受圧部83の高さについては、平坦部83aと溝85との間を、該平坦部83aと直交する方向に測定した長さが、0.1〜0.5mmであることが、油膜を効果的に発生させると共に、異物の排出と受圧部83での耐荷重性を確保する上で好ましい。本実施形態では、溝85、85a、85bそれぞれは、同じ高さに形成されている。
また、平坦部83aとダレ部83bの外周縁との高さの差を、該平坦部83aと直交する方向に測定した長さは、0.5〜5μmであることが、同様の観点から好ましい。シール部81、その平坦部81aおよびダレ部81bの寸法についても、上述した説明が適用される。
上述した一方の摺動面100及び他方の摺動面101を有するスラスト軸受53は、受圧部83におけるくさび効果により、所定の使用条件の下で流体潤滑状態となる。
次に、スラスト軸受53の流体潤滑状態について、以下に更に説明する。
流体潤滑状態において、一方の摺動面100と他方の摺動面101との間には、上記混合流体による連続した油膜が形成されている。そのため、一方の摺動面100と他方の摺動面101とは、該油膜により分離されている。即ち、両摺動面100,101は、互いには接触していない。
スラスト軸受53の摺動面において、流体潤滑状態を確保するためには、いわゆる油膜パラメータΛが、Λ≧3の関係を満たすことが好ましい。
油膜パラメータは、最小油膜厚さと複合表面粗さとの比である。最小油膜厚さは、受圧部83と他方の摺動面101との間の長さが最も近接している部分における油膜の厚さである。油膜厚さが最小となる部分は、具体的には、平坦部83aの部分になる。
また、複合表面粗さは、摺動面100、101それぞれにおける表面粗さの標準偏差を、二乗和して平方根をとったものである。
油膜パラメータΛが、Λ≧3の関係を満たすことにより、最小油膜厚さが、複合表面粗さよりも十分に大きくなるので、受圧部83と他方の摺動面101との間には、常に連続した油膜が存在して、両摺動面100,101は分離されている。つまり、スラスト軸受53に流体潤滑状態が形成される。
このように、スラスト軸受53に流体潤滑状態を形成する上で、受圧部83にダレ部83bが、精度よく均一に形成されていることが好ましい。
また、本実施形態では、他方の摺動面101の最表面には、図4および図5に示すように、ダイヤモンドライクカーボン層101aが形成されている。ダイヤモンドライクカーボン層101aは、硬度および化学的安定性が高く、潤滑性、耐摩耗性および耐焼付き性に優れている。図5は、図4において、4角で囲んだ他方の摺動面101の表面部分を拡大した図である。
このように、他方の摺動面101が、ダイヤモンドライクカーボン層101aにより覆われているので、スラスト軸受53が境界潤滑または混合潤滑の状態にあっても、摩耗および焼付きが防止される。
ダイヤモンドライクカーボン層101aの膜厚は、1〜10μm、特に1〜3μmであることが好ましい。膜厚が1μm以上であることにより、他方の摺動面101と一方の摺動面100との間の摩耗および焼付きを防止することができる。また、膜厚を10μm以下にすることにより、ダイヤモンドライクカーボン層101aの製造コストを抑えることができる。
また、ダイヤモンドライクカーボン層101aが成膜される前の他方の摺動面101の基材100bにおける表面は、平滑であることが好ましい。具体的には、他方の摺動面101における表面の最大粗さが、受圧部83における表面の最大粗さよりも小さいことが好ましい。ここで、受圧部83の表面の最大粗さは、平坦部83aの表面の最大粗さである。また後述するように、ならし運転前の状態であって、受圧部83にダレ部83bが形成されていない場合には、受圧部83の表面の最大粗さは、その受圧部83の平坦な部分の表面の最大粗さを意味する。
そのために、本実施形態では、基材101bの表面の最大粗さが、0.4μm以下、特に0.2μm以下となっている。基材101bの最大粗さが0.4μmよりも大きいと、基材101b上に成膜されたダイヤモンドライクカーボン層101aには、基材101bの表面粗さに対応した凹凸が形成されて、摺動時に一方の摺動面100を摩耗してしまうおそれがある。
基材101bの表面の最大粗さを上述した範囲に加工することは、例えばラップ加工またはバレル加工により行うことができる。
また、他方の摺動面101には、該他方の摺動面101の基材101bと、ダイヤモンドライクカーボン層101aとの間に、中間層101cが形成されており、基材101bとダイヤモンドライクカーボン層101aとの密着性が高められている。詳しくは後述するが、基材101bは鋼材により形成されており、中間層101cの形成材料は、この鋼材と密着性のよいものを用いることが好ましい。
具体的には、この中間層101cは、クロム、アルミニウム、タングステン、タンタル、モリブデン、ニオブ、炭素またはチタンよりなる群から選択される1つまたは複数の金属から形成されていることが好ましい。
上記中間層101cは、図5に示すように、基材101b側から第1層、第2層、第3層および第4層からなる積層構造を有している。
この中間層101cにおいて、基材101b側の層を構成するクロムおよび/またはアルミニウムの金属からなる層(第1層)は、基材101bとなる鋼材と相性が良く、この鋼材に対しても良好な密着性を発揮するものとなる。そして、こうした基材101b側の層(上記第1層)を介在させることによって、基材101bと中間層101c(第1層)との密着性を確保することができる。
上記ダイヤモンドライクカーボン層101aは、非晶質膜であることが、中間層101cとの密着性を高める上で好ましい。
中間第3層は、タングステン、タンタル、モリブデン、ニオブまたはチタンよりなる群から選択される1種以上の金属層からなるものであり、中間第2層は、上記第1層を構成する金属と第3層を構成する金属の混合層からなる層であるが、これらの層を介在させることによって、上記中間第1層と第3層の密着性を確保することができる。
上記第2層においては、上記第1層側(基材101b側)からダイヤモンドライクカーボン層101a側(表面層側)に向けて、金属が段階的または連続的に減少する(即ち、第3層を構成する元素濃度が0%から100%に増加する)様な傾斜組成とすることが好ましい。こうした膜構成を採用することによって、多層膜の機械的特性を基材101b側からダイヤモンドライクカーボン層101a側に段階的または連続的に変化させることができ、これによってサーマルショック等による局所的な応力集中による剥離を防止することができる。
そして、中間層101cにおける最表面層側の層(上記第4層)として、脆弱な炭化物層を形成させずに、第3層を構成する金属と炭素との非晶質層とする。ここで、非晶質層とは、透過型電子顕微鏡で結晶相を確認できないものを言う。この様に、中間第4層を微細な析出物層を内部に含まない層とすることによって、中間層101c自体に脆弱な部分がなくなり、内部での剥離や破壊を防ぐことができる。また中間第3層に対しても、格子のミスマッチ等に伴う応力の発生が緩和され、同種の金属元素を用いることによって、密着性が確保できる。更に最表面層を形成するダイヤモンドライクカーボン層101aにおいても非晶質膜であるので、上記の様な金属元素と炭素の混合層からなる非晶質層との密着性も良くなる。
ただし、隣接する各層を構成する金属元素は、必ずしも同一である必要はなく、一方の層に含まれる金属元素と他方の層に含まれる金属元素を異なるものとしても上記効果が発揮されるものであるが[例えば、クロム層(第1層)とアルミニウム/タングステン層(第2層)]、好ましくは両者の金属元素を同一にするか[例えば、クロム層(第1層)とクロム/タングステン層(第2層)]、少なくとも一方の層に含まれる元素を他方の層で含むように[例えば、タングステン/モリブデン層(第3層)とタングステン/炭素層(第4層)するのが良い。
上記第4層においても上記第2層と同様に、第3層側(基材101b側)からダイヤモンドライクカーボン層101a側(表面層側)に向けて、金属が段階的または連続的に減少する(即ち、炭素濃度を0%から100%に増加する)様な傾斜組成とすることが好ましい。こうした膜構成を採用することによって、多層膜の機械的特性を基材101b側からダイヤモンドライクカーボン層101a側に段階的または連続的に変化させることができ、これによってサーマルショック等による局所的な応力集中による剥離を防止することができる。ただし、金属濃度(即ち、炭素濃度)が一定であっても、非晶質であればよい。
中間層101cにおいては、タングステン、タンタル、モリブデン、ニオブおよびチタンよりなる群から選択される1種以上の金属からなる層(上記中間第3層)を炭化タングステン(WC)を主成分とする化合物(例えば、超硬合金材料)に置き換えることも可能である。またこのような場合には、タングステン、タンタル、モリブデン、ニオブまたはチタンに比べて、より安価なターゲット材料を用いても皮膜形成できるという利点もある。
こうした第3層を形成する際には、上記の様に隣接する中間第2、4層の組成も第3層の組成に応じて適切に組成制御を行えば良い。また、こうした膜構成を採用する場合においても、第2層と第4層は、隣接する層の組成を考慮して、それらに近づく様に段階的に組成を変化させることは局部的な応力の集中による剥離を防止する上で効果的である。
中間層101cにおいては、いずれの構成を採用するにしても、上記中間第4層と最表面層であるダイヤモンドライクカーボン層101aとの間に、炭素からなる応力緩和層を形成することも有効であり、この応力緩和層は、上記中間第3層側の界面では第3層に近い硬度を有し、最表面層側になるにつれて段階的または連続的に硬度が上昇し、最表面層近傍ではダイヤモンドライクカーボン層を主体とする膜に近い硬度を有する様に構成されたものであることが好ましい。
上述した中間層101cの膜厚は、ダイヤモンドライクカーボン層101aと中間層101cとを併せた多層膜全体の厚さの10〜50%であることが好ましい。膜厚が10%以上であることにより、ダイヤモンドライクカーボン層101aと基材101bとの密着性を十分に確保できる。また、膜厚を50%以下にすることにより、摺動時における中間層101cの剥離を防止すると共に中間層101cの製造コストを抑えることができる。
ダイヤモンドライクカーボン層101aのビッカース硬度は、他方の摺動面101と対向して摺動する受圧部83のビッカース硬度の2倍以上であることが好ましい。具体的には、ダイヤモンドライクカーボン層101aのビッカース硬度は、1500HV以上であることが好ましい。また、受圧部83のビッカース硬度は、700〜900HVであることが好ましい。
ダイヤモンドライクカーボン層101aのビッカース硬度が、受圧部83の2倍以上であることにより、他方の摺動面101における摩耗および焼付きを効果的に防止することができる。また、後述するように、なじみ運転により、受圧部83にダレ部83bを容易に形成することが可能となる。
また、なじみ運転前の状態において、受圧部83にダレ部83bが形成されていなくても、他方の摺動面101にダイヤモンドライクカーボン層101aが被膜されていることにより、他方の摺動面101は、混合潤滑または境界潤滑状態において、摩耗および焼付きが防止される。また、なじみ運転中においても、他方の摺動面101における摩耗および焼付きが防止される。
また、他方の摺動面101の基材101bのビッカース硬度は、700〜900HVであることが、他方の摺動面101に高面圧が加わっても、基材101bの変形を抑制して、ダイヤモンドライクカーボン層101aが基材101bから剥離することを防止する上で好ましい。
基材101bおよび受圧部83のビッカース硬度は、これらを構成する材料を適宜選択することにより上述した範囲に設定することができる。
次に、上述したダイヤモンドライクカーボン層101aまたは中間層101cの成膜方法について以下に説明する。
ダイヤモンドライクカーボン層101aまたは中間層101cの成膜には、スパッタリング法やイオンプレーティング法などの物理的蒸着法(PVD法)、および化学的蒸着法(CVD法)などの方法を用いることができる。これらの成膜方法の中でも、スパッタリング法、特に、アンバランスド・マグネトロン・スパッタリング法(以下、単にUBMスパッタリング法ともいう)を用いることが好ましい。
UBMスパッタリング法では、スパッタリング時に発生したプラズマが磁力線に沿って基板付近まで拡散するので、通常のスパッタリングに比べて、緻密で高硬度なダイヤモンドライクカーボン層を形成することが可能となる。またこうしたUBMスパッタリング法によれば、中間層においては、炭化物形成能の高いタングステン、タンタル、モリブデン、ニオブまたはチタン等についても炭化物を形成することなく、均一な非晶質層を形成することができる。
中間層101cを製造するに当たり、第2層または第4層において上記の様な傾斜組成にするに際しては、スパッタリング法(好ましくは上記UBMスパッタリング法)によってこれらの層を形成すると共に、スパッタ電力を制御する様にすれば良い。また、応力緩和層を形成した中間層101cを製造するに当たり、応力緩和層の硬度を連続的または段階的に変化させるに際しては、基材101bに印加される直流またはパルスのバイアス電圧の制御によって調整する様にすれば良い。
中間第1〜第3層を形成するに当たっては、基材101bにこれらの層を形成する段階で基材温度を150〜350℃、好ましくは250〜350℃に制御することで、中間第1層中の金属元素の基材101bへの拡散、および各層間の拡散を促進し、第1層と基材101bとの密着性および第1〜第3層の各層相互間の密着性がより向上するので好ましい。ただし、ダイヤモンドライクカーボン層101a(および炭素を含む第4層)を形成する場合には、これらの層は熱に弱いので、各層の形成段階では基材温度を300〜100℃程度とすることが好ましく、より好ましくは200〜100℃程度に制御するのが良い。
次に、受圧部83のダレ部83bの形成方法について以下に説明する。
上述したようなダレ部83bは、例えばラップ加工またはバレル加工により作成することができる。これらの加工方法を用いれば、受圧部83間の溝の幅の広い部分では、周縁部にダレ部83bを精度よく均一に形成することが容易である。一方、受圧部83間の溝の幅の狭い部分に、ダレ部83bを精度よく均一に形成することには、時間や手間がかかる場合もある。
上述したように、ダレ部83bを精度よく均一に形成することにより、くさび効果により受圧部83に良好な流体潤滑状態を形成できる。
そこで、なじみ運転により受圧部83にダレ部83bを形成することが、ダレ部83bを精度よく均一に形成すると共に、スクロール型圧縮機11の製造コスト上有利である。
次に、なじみ運転によるダレ部83bの形成方法について、図6(a)から図6(c)に示す例を参照して、以下に詳述する。
図6(a)に示すように、最初、スクロール型圧縮機11の組み立てに用いられるスラスト軸受53は、ダレ部83bを有さない受圧部83を有する一方の摺動面100を備えている。この初期状態では、受圧部83は、円柱状の形状を有しており、平坦部のみを有している。
次に、図6(b)に示すように、スラスト軸受53に荷重をかけ、受圧部83と他方の摺動面101とを接触させる。その結果、受圧部83と、該受圧部と対向する他方の摺動面101の部分には、面圧Pが発生して、主に他方の摺動面101が弾性変形する。受圧部83に生じた面圧Pは、図6(b)に示すように、受圧部83の周縁部に高い圧力分布を有し、内側の領域には略一定の面圧分布を有する。このように、受圧部83のエッジの部分にスパイク状の面圧Pが生じることが、下記に述べるように、ダレ部83bを形成する理由となる。なお、受圧部83も、図6(b)には明確に示していないが、特に周縁部が、他方の摺動面101の弾性変形と対応する形状に若干変形する。
この状態で、一方の摺動面100を、可動スクロール32と共に、ミドルハウジング15に固定された他方の摺動面101に対して旋回させることにより、硬度の低い受圧部83を主に摩耗させる。その結果、スパイク状の高い面圧Pを有する受圧部83の周縁部に沿って、この受圧部にダレ部83bが形成され始める。一方、受圧部83の内側の領域は、面圧が低く且つその面圧が略一定なので、摩耗がほとんど生じないか、または、摩耗が生じたとしても平坦状に摩耗される。
次に、ダレ部83bの摩耗が進み、所定量のダレ部83bが受圧部83に形成されると、受圧部83が受ける面圧Pは、図6(c)に示すように、均一な圧力分布に変化する。この状態では、ダレ部83bのそれ以上の形状の変化が止まるので、なじみ運転を終了する。
また、上述したなじみ運転によって、シール部81にも同様にダレ部81bが形成される。
上述したスクロール型圧縮機11のなじみ運転の条件について、以下にさらに述べる。
まず、スラスト軸受53におけるなじみ運転開始初期の潤滑条件は、境界潤滑または混合潤滑条件を用いる。
また、受圧部83の面圧および他方の摺動面101に対する摺動速度は、限界PV値以下とすることが好ましい。限界PV値とは、スラスト軸受53の形成材料の凝着が起こり始める面圧と摺動速度の積である。
また、なじみ運転は、一方の摺動面100および他方の摺動面101に潤滑油を含む流体を供給した状態で行うことが好ましい。
このように、なじみ運転を行うことにより、上述したダレ部83bを、受圧部83の平坦部83aの周りに形成することができる。なお、スラスト軸受53以外のスクロール型圧縮機の部分は、常法に従い製造することができる。
次に、一方の摺動面100および他方の摺動面101の基材101bの形成材料について以下に説明する。
本実施形態では、一方の摺動面100および他方の摺動面101の基材101bが、鋼材により形成されている。この鋼材としては、例えば、高炭素クロム軸受け鋼材、機械構造用合金鋼材、圧延鋼板材、ニッケルクロム鉄鋼材、ニッケルクロムモリブデン鉄鋼材、クロム鉄鋼材、クロムモリブデン鉄鋼材、機械構造用マンガン鉄鋼材、マンガンクロム鉄鋼材、及び焼入性を保証した構造用鉄鋼材等のJIS規格で定められている各種鋼材料が好ましく用いられる。
特に、その上にダイヤモンドライクカーボン層101aが形成される、他方の摺動面101の基材101bが、機械構造用合金鋼材または圧延鋼板材により形成されることは、製造コストを低減する観点から好ましい。
更に詳述すると、高炭素クロム軸受け鋼材としては、SUJ2,SUJ3及びSUJ4が好ましい。また、機械構造用炭素鉄鋼材としては、SCr415,SCr420,SCr440,SCM415,SCM420,SNCM420、SCM435、SCM440SNCM630、S10Cが好ましい。また、圧延鋼板材としては、SPCC,SPCD、SPCE、SPCEN、SK5が好ましい。
ここで、圧縮機の製造コストを低減する観点から、ダイヤモンドライクカーボン層101aなどにより覆われる他方の摺動面101の基材101bは、安価な鋼材を用いることが好ましい。
また、一方の摺動面100の摩耗性を高める観点から、一方の摺動面100の形成材料としては、他方の摺動面101の基材101bよりも耐摩耗性に優れる鋼材を用いることが好ましい。
一方の摺動面100の硬度を増加するため、上述した鋼材に、焼入れ処理、焼戻し処理、浸炭処理、浸窒処理又は浸炭浸窒処理等を施すことも好ましい。該処理条件としては、公知の条件を用いることもできる。
上記浸炭処理としては、固体浸炭処理、液体浸炭処理、ガス浸炭処理及び真空浸炭処理等の公知の方法が挙げられる。
また、上記浸炭処理に替えて、上記浸窒処理を、鋼材に施すことも好ましい。上記浸窒処理としては、例えばアンモニア又は窒化化合物を用いた公知の方法が挙げられる。
更に、鋼材に上記浸炭処理と共に上記浸窒処理を施すために、上記浸炭浸窒処理を用いることも好ましい。上記浸炭浸窒処理としては、鋼材を、浸炭処理雰囲気下において、上記浸窒処理を施すことが挙げられる。
鋼材の表面近傍における炭素又は窒素濃度を増加させる処理は、該鋼材の表面近傍の硬度を増加しつつ、内部の軟らかさを保つため、該鋼材から形成されるスクロール側プレート53aの耐摩耗性及び耐疲労性を向上する上で好ましい。
上述した本実施形態のスクロール型圧縮機11によれば、他方の摺動面101の最表面にダイヤモンドライクカーボン層101aを形成することにより、スラスト軸受53の摺動面における摩耗および焼付きを防止することができる。また、このような構成を採用することで、背圧機構を設ける必要がないので、スクロール型圧縮機の製造コストを低減できる。
また、一方の摺動面100と他方の摺動面101との摺動により、受圧部83になじみが生じ、摺動面に流体潤滑が形成され易くなるので、スラスト軸受53における摩耗または焼付きが防止される。具体的には、受圧部83のダレ部83bが、スクロール型圧縮機11のなじみ運転により精度よく均一に形成される。このダレ部83bおよび平坦部83aを有する受圧部83と、対向配置される他方の摺動面101とからなるスラスト軸受53は、その摺動時には、くさび効果による油膜を形成して、流体潤滑状態を形成する。
このように、なじみ運転により、受圧部83になじみが形成されるので、受圧部83には、あらかじめダレ部83bを形成しないか、または、ダレ部83bを精度よく均一に形成しておく必要がないため、スクロール型圧縮機の製造コストを低減できる。
また、複数の溝85を網の目状に設け、溝85に囲まれた受圧部83を浮島形状としたので、受圧部83は、全周囲が溝に囲まれることとなり、可動スクロール32の旋回運動によって全方向からくさび効果による油膜86を形成することができる。更に、網の目状の複数の溝85の交差点85aの溝幅を、他の部位よりも太くしたので、複数の溝85にオイルを充分に行き渡らせることができる。
また、受圧部83を略円形の浮島形状とし、千鳥配置したため、受圧部83を高密度に配置することができ、単位面積当たりの油膜形成面積を増加させて、高荷重を支持することができる。
上述した実施形態のスクロール型圧縮機11は、その用途に応じて様々な使用条件で用いられる。特に、スクロール型圧縮機11は、その耐久性を確保する観点から、スラスト軸受53がもっぱら流体潤滑領域で使用されることが好ましい。
このような観点から、スクロール型圧縮機11は、スラスト軸受53の摺動面100,101に、潤滑油と冷媒とを含む混合流体を供給し、他方の摺動面101に対する受圧部83の摺動速度を0.5m/sec以上とし、該受圧部83に平均面圧0.5〜20MPaの荷重をかけて、上記混合流体の使用状態における動粘度が0.1〜10cstで使用するようになされている。潤滑油は、上記オイルに含まれていることが好ましい。
このスクロール型圧縮機11の使用条件について、更に説明すると、スクロール型圧縮機11は、上記オイル供給手段により、上記混合流体がスラスト軸受53の摺動面100,101に供給される。
また、可動スクロール32が公転することにより、該可動スクロール32に固定されている一方の摺動面100が、ミドルハウジング15に固定されている他方の摺動面101に対して摺動する。この摺動速度は、他方の摺動面101に対して0.5m/sec以上、好ましくは0.6〜5m/secである。
また、このスラスト軸受53は、冷媒を圧縮する時の圧縮反力と、可動スクロール背面32a側の圧力によるスラスト方向の力との差によって結果として、受圧部83には他方の摺動面101に向って荷重がかかる。この荷重による受圧部83の平均面圧は0.5〜20MPaであり、好ましくは2〜15MPaである。
更に、上記混合流体は、上述したスクロール型圧縮機11の使用条件において、スラスト軸受53の摺動面100、101における動粘度が0.1〜10cstであり、好ましくは4〜10cstである。尚、1cstは、約1×10−6/secである。
上記各実施形態のスクロール型圧縮機11を、上述した使用条件で用いることにより、受圧部83と、該受圧部83と対向する他方の摺動面101の部分との間に、油膜が形成されるので、スラスト軸受53を、もっぱら流体潤滑状態で使用することができる。その結果、該スラスト軸受53における摩耗を防止して、スクロール型圧縮機11の性能を維持しつつ、長く使用することができる。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されない。
例えば、上述した上記実施形態では、中間層101cが4層の積層構造を有していたが、中間層101cは、少なくとも1層あればよく、つまり、2層または3層でもよく、または4層より多くてもよい。
また、上述した上記実施形態では、上記受圧部83が円形状であったが、受圧部83は、長円形状、楕円形状、3角形またはそれ以上の多角形状のいずれかであってもよい。
以下、本発明のスクロール型圧縮機における摺動面100,101の作用効果について、本発明の実施例および本発明と比較するための比較例を用いて更に説明する。ただし、本発明はかかる実施例に制限されるものではない。
[実施例1]
一方の摺動面100を有するスクロール側プレート53aの試験片110として、図7(a)および図7(b)に示すように、3つの円柱形状の受圧部111を有する鋼材のプレートを用意した。3つの受圧部それぞれは、図7(b)に示すように、その中心が、正三角形の頂点に位置するように形成した。また、他方の摺動面101を有するハウジング側プレート53bの試験片112として、鋼材のプレートを用意して、このプレートの一方の面に、ダイヤモンドライクカーボン層および中間層を成膜した。
このようにして、上記試験片Aおよび試験片Bからなる実施例1を得た。
[比較例]
試験片Bにダイヤモンドライクカーボン層および中間層を成膜していない他は、実施例1と同様にして、比較例を得た。
[焼付き防止性の評価]
上述した実施例1及び比較例を用いて、焼付き防止性の評価を次のように行った。
図7(a)に示すように、試験片110と試験片112とを、二酸化炭素雰囲気下において、受圧部111と、試験片112のダイヤモンドライクカーボン層とが対向して接触するように配置した。受圧部111と、試験片112のダイヤモンドライクカーボン層とが接触している部分を、潤滑油に浸漬させた。試験片110を固定した状態で、この試験片110に荷重をかけながら、試験片112を所定の回転速度で回転させた。試験片110に加える荷重の向きは、試験片112の方向であり、受圧部111と、試験片112のダイヤモンドライクカーボン層とを摺動させた状態で、荷重の大きさを段階的に増加させていった。試験片110側の摩擦トルクを計測し、このトルクが急激に増加した時点で焼付きが生じたと判定した。そして、摩擦トルクが急激に増加した時の荷重値を、摺動面の面圧に換算して、焼付き限界面圧とした。
その結果を図8に示す。
本発明の実施例1の焼付き限界面圧は、比較例の約3倍であり、焼付き防止性に優れていることが分かった。
[実施例2]
他方の摺動面101の基材101bの上に、ダイヤモンドライクカーボン層101aおよび中間層101cを成膜し、図1に示すスクロール型圧縮機を用意して、実施例2を得た。ダイヤモンドライクカーボン層101aおよび中間層101cの成膜は、実施例1と同様にして行った。
[なじみ運転による受圧部のダレ部形成の評価]
実施例2のスクロール型圧縮機を用いて、上述したなじみ運転条件に従って、なじみ運転を行った。なじみ運転の時間は、数時間であった。
その結果を図9に示す。図9は、なじみ運転前後における受圧部83の形状を示している。
本発明の実施例2は、なじみ運転前の受圧部83における周縁部には、図9(a)に示すように、ダレ部はなく、曲率半径Rが略ゼロであったのが、なじみ運転後の受圧部83における周縁部には、図9(b)に示すように、曲率半径Rが約30mmであるダレ部83bが生成された。
[実施例3]
一方の摺動面100を有するスクロール側プレート53aの試験片として鋼材を用い、他方の摺動面101を有するハウジング側プレート53bの試験片の基材として鋼材を用いて、この基材の表面に中間層を形成し、この中間層の上にさらにダイヤモンドライクカーボン層を形成して、実施例1を得た。
他方の摺動面101において、ダイヤモンドライクカーボン層と中間層とを併せた膜厚は約2μmであった。また、他方の摺動面101におけるダイヤモンドライクカーボン層の表面の最大粗さは、約0.2μmであった。
[実施例4]
他方の摺動面101におけるダイヤモンドライクカーボン層の表面の最大粗さを約0.4μmとした他は、実施例3と同様にして実施例4を得た。
[実施例5]
他方の摺動面101におけるダイヤモンドライクカーボン層の表面の最大粗さを約0.6μmとした他は、実施例3と同様にして実施例5を得た。
[実施例6]
他方の摺動面101におけるダイヤモンドライクカーボン層の表面の最大粗さを約1.0μmとした他は、実施例3と同様にして実施例6を得た。
[摩耗量の評価]
上述した実施例3〜6を用いて、摩耗量の評価を次のように行った。
摩耗量の評価は、図10に示すバーベルプレート試験機を用いて行った。バーベルプレート試験機は、一対の円盤が円柱状の軸に間隔をあけて固定されたバーベル103と、該バーベルが載置されるプレート104とを有している。バーベル103およびプレート104の摺動面は、面状であり、凹凸は有していない。
一対の円盤それぞれをスクロール側プレート53aの試験片から作製し、プレート104をハウジング側プレート53bの試験片から作製した組み合わせを用意した。
一対の円盤それぞれの寸法は、外径14mm、厚み5mmであった。バーベル103における一対の円盤間の長さは、21mmであった。プレート104の寸法は、4辺の長さが30mmであった。
プレート104は潤滑油に浸漬されており、バーベル103とプレート104との摺動面も潤滑油に浸漬されていた。試験は、上方からバーベル103に所定の荷重をかけた状態で、所定の時間、所定の回転数でプレート104を回転させた後、バーベル103の摩耗量を測定するものである。
バーベル103とプレート104との摺動は、他方の摺動面101におけるダイヤモンドライクカーボン層が、一方の摺動面100と摺動するようにした。
測定条件は、荷重及び回転数を組み合わせて、複数の条件で行った。具体的には、荷重は0〜1000N(面圧で0〜500MPa)の範囲であり、回転数は0〜2000rpm(摺動速度で0〜2m/sec)の範囲であった。
まず、実施例3の比摩耗量の測定を以下のように行った。
バーベルプレート試験機を用いて、面圧×摺動距離を変えた測定を複数行って、バーベル103側の試験片の摩耗量を測定した。摺動距離は、回転数×時間により求めた。摩耗量は、試験片が摩耗により減少した体積とした。バーベル103とプレート104との潤滑状態は、境界潤滑とした。
そして、得られた測定結果を用いて、該面圧×摺動距離を横軸とし、摩耗量を縦軸としてプロットして、その傾きから比摩耗量を求めた。
次に、実施例3の推定摩耗量を以下のように求めた。ここで推定摩耗量は、上記比摩耗量を用いて、実機における摩耗量を推定した値である。
所定の条件で実機を運転した場合における、スラスト軸受53の面圧及び摺動距離を用いて、境界潤滑条件における摩耗量Aを、比摩耗量×面圧×摺動距離から求めた。そして、油膜パラメータを考慮して、摩耗量Aから混合潤滑状態における推定摩耗量を求めた。
実施例4〜6についても同様にして各推定摩耗量を求め、実施例3の推定摩耗量を基準として、他の推定摩耗量から、それぞれの摩耗量比を計算した。
その結果を図11に示す。
他方の摺動面101におけるダイヤモンドライクカーボン層の表面の最大粗さが減少するに従って、一方の摺動面100の摩耗量比が低減することが分かった。
図1は、本発明の一実施形態であるスクロール型圧縮機を示す縦断面図である。 図2(a)は、図1に示すスクロール型圧縮機のスラスト軸受の可動側摺動面を示す図であり、図2(b)は、図2(a)のB−B線拡大断面図であり、図2(c)は、図2(a)の領域Gの拡大図である。 図2に示す可動側摺動面の島状受圧部における油膜の形成状態とその圧力を示す図である。 図4は、スラスト軸受の摺動面の要部を拡大して示す模式図である。 図5は、図4の固定側摺動面の要部の拡大図である。 図6(a)は、受圧部のなじみ運転開始前の初期状態を示す模式図であり、図6(b)は、受圧部のなじみ運転開始時の状態を示す模式図であり、図6(c)は、受圧部のなじみ運転終了時の状態を示す模式図である。 図7(a)は、耐焼付き性の評価方法を説明する模式図であり、図7(b)は、図7(a)の固定側試験片の斜視図である。 図8は、焼付き防止性の評価結果を示す図である。 図9(a)は、なじみ運転前の受圧部の形状を示す図であり、図9(b)は、なじみ運転後の受圧部の形状を示す図である。 図10は、摩耗量の評価方法を説明する模式図である。 図11は、摩耗量の評価結果を示す図である。
符号の説明
10 圧縮機構部
11 スクロール型圧縮機
15 ミドルハウジング
27 電動機部
53 スラスト軸受
53a スクロール側プレート
53b ハウジング側プレート
81 外周シール部
83 受圧部
85 溝
85a 交差点
86 油膜
100 一方の摺動面
101 他方の摺動面
101a ダイヤモンドライクカーボン層
101b 基材
101c 中間層

Claims (7)

  1. 一方の摺動面(100)と、該一方の摺動面(100)に対向する他方の摺動面(101)とを有するスラスト軸受(53)を備えた圧縮機において、
    前記一方の摺動面(100)には、溝(85)に囲まれて互いに独立した浮島形状の複数の受圧部(83)が形成されており、前記他方の摺動面(101)は、前記一方の摺動面(100)に比べて平坦に形成されており、
    前記他方の摺動面(101)には、ダイヤモンドライクカーボン層(101a)が形成されていることを特徴とする圧縮機。
  2. 前記受圧部(83)は略円形状、長円形状、楕円形状、3角形状またはそれ以上の多角形状のいずれかであり、複数の該受圧部(83)が、千鳥配置されていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
  3. 前記他方の摺動面(101)における表面の最大粗さが、前記受圧部(83)における表面の最大粗さよりも小さいことを特徴とする請求項1または2に記載の圧縮機。
  4. 固定スクロール(38)と、回転軸(21)によって該固定スクロール(38)に対して旋回することで流体を圧縮する可動スクロール(32)とを備え、前記スラスト軸受(53)は、前記可動スクロール(32)が受ける軸方向の力を受けることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の圧縮機。
  5. 前記流体が二酸化炭素を含み、吐出される該流体の圧力が二酸化炭素の臨界圧力を超えることを特徴とする請求項4に記載の圧縮機。
  6. 前記他方の摺動面(101)の基材(101b)が、機械構造用合金鋼材または圧延鋼板材により形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の圧縮機。
  7. 前記他方の摺動面(101)には、該他方の摺動面(101)の基材(101b)と、前記ダイヤモンドライクカーボン層(101a)との間に、中間層(101c)が形成されており、
    前記中間層(101c)が、クロム、アルミニウム、タングステン、タンタル、モリブデン、ニオブ、炭素およびチタンよりなる群から選択される1つまたは複数の金属から形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の圧縮機。
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