JP2009243373A - 圧縮機用スラスト軸受 - Google Patents
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Abstract
【課題】スラスト軸受の摩擦損失を確実に低減することができ高効率の圧縮機を実現できる圧縮用スラスト軸受を提供する。
【解決手段】この圧縮機用スラスト軸受53は、対向面に複数の溝85と前記複数の溝85に囲まれた複数の受圧部83とが形成された一方の摺動面と、前記受圧部83に対向して摺動接触する他方の摺動面とからなり、受圧部83の頂面外周部には、内周側から外周側に向かうにしたがい高さが低くなるダレR部83bが形成され、このダレR部の断面半径は25mm以上になされている。
【選択図】図3
【解決手段】この圧縮機用スラスト軸受53は、対向面に複数の溝85と前記複数の溝85に囲まれた複数の受圧部83とが形成された一方の摺動面と、前記受圧部83に対向して摺動接触する他方の摺動面とからなり、受圧部83の頂面外周部には、内周側から外周側に向かうにしたがい高さが低くなるダレR部83bが形成され、このダレR部の断面半径は25mm以上になされている。
【選択図】図3
Description
本発明は、圧縮機の可動フレームと固定フレームとの間にかかるスラスト荷重を支持する圧縮機用スラスト軸受に関する。
一般に、スクロール型圧縮機は、ハウジングに固定された固定スクロールと、この固定スクロールに対向配置され回転軸によって固定スクロールに対して旋回する可動スクロールとを有しており、これら固定スクロールと可動スクロールとによって流体を圧縮するようになっている。この可動スクロールは、可動スクロール背面の圧力と、圧縮される流体の圧力との圧力差によってスラスト方向の力を受けているが、このスラスト方向の力はスラスト軸受によって支持されている。
可動スクロールは公転運動をするため、スラスト軸受をスクロール型圧縮機に用いた場合の摺速は、スラスト軸受を回転運動機器に用いた場合の摺速に比べて小さい。このため、摺動面における潤滑油の油膜形成が難しく焼き付き等を起こしやすい。
特に、二酸化炭素冷媒を使用した冷凍サイクルで用いられる圧縮機では、圧縮される冷媒の圧力が高いため、上記スラスト方向の力も大きくなりスラスト軸受の摺動面における油膜の形成がより重要な課題となる。
従来、摺動面に種々の工夫を施したスクロール型圧縮機が提案されている。
特許文献1には、スラスト軸受面に複数のテーパーランド軸受機構が形成されたスクロール圧縮機が開示されており、このテーパーランド軸受機構には、旋回方向に傾斜をつけたテーパ部と一定高さのランド部が多数円形状に形成されている。
この特許文献1に記載のスラスト軸受は、スラスト軸受の摺動面において、くさび効果により油膜を発生させようとするものであるが、テーパー部及びランド部の形状、寸法についての規定がなく、その使用条件において必ずくさび効果による良好な流体潤滑状態が確保されるとは限らない。そのため、使用条件によっては、スラスト軸受の摩擦損失を低減することができず、圧縮機の高効率化を実現できないという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決することを課題とし、スラスト軸受の摩擦損失を確実に低減することができ高効率の圧縮機を実現できる圧縮用スラスト軸受を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明は、固定フレーム(38)に対向配置され前記固定フレーム(38)に対して旋回運動することで流体を圧縮する可動フレーム(32)と、この可動フレーム(32)の背面側に設けられ可動フレームの受ける軸方向の力を支持する支持部(15d)と、の間に設けられ、潤滑油が供給される圧縮機用スラスト軸受であって、スラスト軸受(53)は、対向面に複数の溝(85)と複数の溝(85)に囲まれた複数の受圧部(83)とが形成された一方の摺動面と、前記受圧部(83)に対向して摺動接触する他方の摺動面とからなり、受圧部(83)の頂面外周部には、内周側から外周側に向かうにしたがい高さが低くなるダレR部(83b)が形成され、このダレR部の断面半径は25mm以上になされている手段を採用することができる。
この手段を採用することによって、流体潤滑状態を確実に実現し摩擦損失を確実に低減することができる。
また、上記課題を解決するため、ダレR(83b)の断面半径は3000mm以下になされている手段を採用することができる。したがって、受圧部の受圧面積が減少することを防止することができ、この部分に過大な面圧が加わることを防ぐことができる。
また、上記課題を解決するため、ダレR部(83b)は、受圧部の頂面(83a)から下方に1μm以上の範囲に形成されている手段を採用することができる。したがって、これより下側の部分の設計の自由度を向上させることができる。
また、上記課題を解決するため、圧縮機は、スラスト荷重が大きいスクロール型圧縮機である手段を採用することができる。したがって、高荷重による軸受摺動面の焼付きや磨耗を防止することができる。
上記課題を解決するため、圧縮機は圧力が高く潤滑条件が厳しいCO2用圧縮機である手段を採用することができる。したがって、高荷重による軸受摺動面の焼付きや磨耗をさらに一層防止し、CO2圧縮機の信頼性を向上させることができる。
なお、上記各手段に付した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
以下、本発明の一実施形態につき、図1ないし図5を参照して説明する。
図1は、本実施形態におけるスラスト軸受を有するスクロール型圧縮機11を示す縦断面図である。以下二酸化炭素冷媒を使用し、吐出される二酸化炭素の圧力が臨界圧力を超える冷凍回路中で用いられる給湯機用の圧縮機を例にして説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
本実施形態におけるスクロール型圧縮機11は、密閉容器13内に電動機部27と圧縮機構部10とを収容した密閉型電動圧縮機である。
密閉容器13は、円筒形をなす円筒ケース13aと、この円筒ケース13aの両端に組みつけられた電動機側端部ケース13b、圧縮機構側端部ケース13cとを備えている。
電動機部27は、円筒ケース13aの内周面に固定された固定子25と、電動機部27によって回転駆動されるシャフト21に固定される回転子23とを備えている。
圧縮機構部10は、円筒ケース13a内において上記固定子25に隣接する位置に固定されたミドルハウジング15と、ミドルハウジング15に設けられた主軸受17によって支持されたクランク機構28により公転する可動スクロール32と、ミドルハウジング15の反固定子25側において、円筒ケース13aに固定され、可動スクロール32と対向配置されて共に後述する作動室45を形成する固定スクロール38とを備えている。
尚、シャフト21は、円筒ケース13a内において、固定子25と電動機側端部ケース13bとの間に設けられた円盤状の支持部材14に固定された副軸受19と、上記主軸受17とによって略水平に支持されている。
可動スクロール32は、略円盤状の可動側板33と、可動側板33の端面から固定スクロール38側に向かってインボリュート曲線状に立設した可動側渦巻41と、可動側渦巻41と反対側の端面からミドルハウジング15側に向かって円筒状に立設したボス部35を備える。
固定スクロール38は、円筒ケース13aに固定された固定側板39と、固定側板39の可動スクロール32側の端面に設けられた渦巻状の溝によって形成された固定側渦巻43を備える。
ミドルハウジング15は、電動機部27側から固定スクロール38側に向かって、順次径が大きくなる3段円筒状をなしており、電動機部27に近い最も小径の円筒15aは主軸受17を構成し、真ん中の円筒15bはクランク機構28を収容するクランク室29を構成し、固定スクロール38に近い最も大径の円筒15cは内部に可動スクロール32を収容するスクロール収納部31を形成すると共に、円筒ケース13aの内周面に焼き嵌めなどの固定手段によって固定されている。
クランク機構28は、シャフト21の圧縮機構部10側の端部に一体に設けられた偏心軸37と可動スクロール32のボス部35によって構成されている。偏心部37は、上記主軸受17及び副軸受19の軸中心から所定量だけ偏心するように設けられている。
ミドルハウジング15を構成する上記大径の円筒15cと真ん中の円筒15bとを繋ぐ円板部15dの可動スクロール32側の端面(以下、円板部スクロール側端面15eと称する)には、図示しないオルダムカップリングが配置されており、可動スクロール32の自転を防止している。これにより、可動スクロール32は公転のみが許容されている。圧縮機構部10は、可動側渦巻41と固定側渦巻43の噛み合いによって形成される複数の作動室45が、可動スクロール32が固定スクロール38に対して旋回することで体積を縮小することにより固定側渦巻43の最外周側に連通する吸入室46に供給された冷媒を圧縮する。
また、円板部スクロール側端面15eと、可動スクロール32のボス部35が設けられた側の端面(以下、可動スクロール背面32aと称する)との間には、スラスト軸受53が配置されている。このスラスト軸受53は、冷媒を圧縮する時の圧縮反力と、可動スクロール背面32a側の圧力によるスラスト方向の力との差によって結果として可動側板33が受ける軸方向の力(本実施形態においては固定スクロール38側から円板部15dに向けて可動側板33を押す力)を受けながら可動スクロール背面32aと円板部スクロール側端面15eとを摺動させるすべり軸受である。このスラスト軸受53については後に詳述する。
上記吸入室46は、固定側板39の側面に設けられており、円筒ケース13aを貫通し、密閉容器13外部の冷媒回路から冷媒を吸入する吸入管47が接続されている。
固定側渦巻43の中心部には、固定側板39を軸方向に貫通する吐出口49が設けられている。可動スクロール32と固定スクロール38とによって圧縮された冷媒はこの吐出口49から吐出室50に吐出される。
吐出室50は、固定側板39の反可動スクロール32側の端面(以下、固定スクロール背面38aと称する)と、該固定スクロール背面38aに固定されたセパレータブロック55の固定側板39側の端面に設けられた凹部によって構成されている。尚、吐出室50内には吐出された冷媒が逆流することを防止する吐出弁61が配置されている。
吐出室50に吐出された高温高圧の冷媒は、吐出室50から上方に延びる冷媒流路57を経てオイルセパレータ63に導かれる。
オイルセパレータ63は、内筒63aと外筒63bとを有する遠心分離式のオイルセパレータであり、2重円筒状をなしている。
冷媒流路57は、吐出室50から固定スクロール背面38aに沿って上方に延びた後、遠心分離式のオイルセパレータ63の内筒63aと外筒63bの間の空間に概略接線方向に接続している。内筒63aと外筒63bの間の空間に概略接線方向から流入した冷媒は、内筒63aと外筒63bの間の空間を旋回し、冷媒に含まれていたオイルが遠心分離された後、内筒63a内を通り、吐出管59を経て密閉容器13外部の冷媒回路へと送られる。ここで、本実施形態におけるオイルはポリアルキレングリコールまたはポリビニルエーテルまたはポリオールエステルのいずれか一つ、またはこれらのうちの複数を混合した潤滑油を主成分とすると好ましい。
尚、オイルセパレータ63の外筒63bはセパレータブロック55に設けられた円筒状の穴によって構成されており、内筒63aは外筒63bを構成する円筒状の穴内に圧入やサークリップ等の固定手段によって固定されている。
また、吐出管59は、密閉容器13の内外を貫通し、外筒63bを構成する円筒状の穴の上端に気密に挿入されている。尚、セパレータブロック55と圧縮機構側端部ケース13cとの間の空間は吐出される冷媒の圧力に比べて低圧の雰囲気となっている。
オイルセパレータ63によって分離されたオイルは、外筒63bの内壁面に沿って、重力によって下方に移動し、外筒63bを構成する円筒状の穴の下端に設けられた小径孔64を介して高圧貯油室65に貯えられる。
高圧貯油室65は、セパレータブロック55内に設けられ、吐出室50と外筒63bを構成する円筒状の穴の下方に位置している。セパレータブロック55は、高圧貯油室65に貯留できる高圧のオイルの量を多くするため、外筒63bを構成する円筒状の穴に対応する上部よりも高圧貯油室65を構成する下部の方が圧縮機構側端部ケース13c側に突出している。
高圧貯油室65に貯えられたオイルは、固定側渦巻43よりも下方において、固定側板39を貫通するオイル戻し通路67を通って可動側板33内部に設けられたオイル通路69に導かれる。尚、オイル戻し通路67の出口には、小径の絞り部67aが設けられている。
オイル通路69の入口は、可動側板33の可動側渦巻41が設けられた面に開口しており、この入口は、オイル通路69の他の部位よりも大きくな断面積となるように座ぐりが設けられている。このオイル通路69の入口は、可動スクロール32の公転運動によってオイル戻し通路67の出口と間欠的に連通するようになっている。また、オイル通路69の出口は、シャフト21の端部とボス部35の底面との間の空間に連通するようにボス部35の内壁に開口している。
尚、高圧貯油室65に蓄えられたオイルは、冷媒の吐出圧力を帯び高圧となっているが、絞り部67aおよび可動スクロール32の公転運動によるオイル戻し通路67とオイル通路69との間欠的な連通によって、所望の圧力まで減圧される。
シャフト21の端部とボス部35の底面との間の空間に導かれたオイルは、シャフト21内部を軸方向に貫通するオイル通路71に流入する。
オイル通路71を通過したオイルは、密閉容器13内において、電動機側端部ケース13bと支持部材14との間に導かれる。支持部材14、ミドルハウジング15、固定側板39には、円筒ケース13aとの間に図示しない隙間があり、電動機側端部ケース13bと支持部材14との間に導かれたオイルは、密閉容器13内の全領域において下方に貯留される。密閉容器13内の全領域の下方は低圧貯油室66を構成している。
低圧貯油室66に貯留されたオイルは、ミドルハウジング15の円板部15dの下方に設けられたオイル戻し孔73を通ってスクロール収納部31に至る。
オイル通路71には、主軸受17及び副軸受19に対応する部位に径方向孔71a、71bがオイル通路71から分岐するように設けられている。
径方向孔71aの出口はシャフト21に設けられたシャフト溝21aに連通しており、径方向孔71aに流入したオイルは、主軸受17、クランク機構28、スラスト軸受53を潤滑した後、スクロール収納部31に至る。尚、真ん中の円筒15bには、シャフト21よりも上部のスラスト軸受53へオイルを導くため、シャフト21よりも上部において、径方向孔71aとスラスト軸受53とを連通させるオイル溝72が形成されている。
一方、径方向孔71bに流入したオイルは、副軸受19を潤滑した後、低圧貯油室66内に落下し、オイル戻し孔73によってスクロール収納部31に至る。
オイル戻し通路67、オイル通路69、71、径方向穴71aは、オイルセパレータ63によって分離されたオイルの圧力とスラスト軸受53が配置される部位の圧力との圧力差によってスラスト軸受53にオイルを供給するオイル供給手段をなしている。
スクロール収納部31に至ったオイルは、可動スクロール32と固定スクロール38の摺動面に供給され、作動室45で冷媒と共に圧縮され、再びオイルセパレータ63によって冷媒から分離される。
次に、本実施の形態のスラスト軸受53について説明する。このスラスト軸受53は、可動スクロール背面32aに固定されたスクロール側プレート53aと、円板部スクロール側端面15eに固定されたハウジング側プレート53bとから構成されている。
スクロール側プレート53aは、ドーナツ形状に形成され、中心部の穴をボス部35が貫通している。スクロール側プレート53aのハウジング側プレート53bと摺動接触する端面には、図2に示すような略円形の凹凸が形成されている。
尚、図2(a)は、図1をスクロール側プレート53aのハウジング側プレート53bと摺動接触する端面が見えるように切った図1のA−A断面図であり、図2(b)は図2(a)を略円形の凹凸面の断面が見えるように切ったB−B断面図である。尚、図2(a)において、破線で示したハウジング側プレート53b及びハウジング側プレート53bの内径側の縁53cは、本来図2(a)の断面に現れない構成であるが、ハウジング側プレート53aとの相対的な位置関係を示すため、図2(a)上にその位置を示してある。
略円形の凹凸の凹部は、複数の溝85によって構成されている。この複数の溝85には上記オイル供給手段によってオイルが供給されるとともに、網目状に交差しており、その交差点85aは他の部位よりも溝幅が広くなっている。また、図2(b)に示す溝85の底面は、表面粗さが、12.5z以上となっており、受圧部83よりも表面粗さが粗くなっている。複数の溝85のうち、最外周に位置する溝(以下、最外周溝)85bはスクロール側プレート53aの縁に沿ってスクロール側プレート53aの縁を一周しており、蛇行している。この最外周溝85bとスクロール側プレート53aの縁との間は、全周において常にハウジング側プレート53bと摺動接触することによって摺動面からの潤滑油の流出量を少なくする外周シール部81を形成している。シール部81は最外周溝85bの蛇行によりスクロール側プレート53aの径方向内側に張り出すように湾曲した凸部81cを備える。
上記複数の溝85の相互間において、溝85に囲まれて形成された凸部は、浮島形状の受圧部83となっており、この受圧部83は略円形に形成されるとともに、上記最外周の溝85の蛇行に合わせて千鳥配置されている。尚、受圧部83の直径は異物の排出性や面圧の低減の為に可動スクロール32の公転半径をeとすると、e以上、2e未満、摺動面における溝85との面積比率は受圧部83が50%以上を占めることが望ましい。また、受圧部83とシール部81の上部に形成された平坦面83a,81aは、摺動面として平滑になされており略同一平面内に位置しており、これらの平坦面83a、81aがハウジング側プレート53bと摺動接触する。そして、図2(b)に示すように、受圧部83、シール部81の縁部には、それぞれ油膜のくさび効果を発生する為のダレR部83b、81bが形成されている。
また、本実施形態では、スラスト軸受53は、可動スクロール32に固定されたスクロール側プレート53aに凹凸を設けているため、凹凸部を形成する複数の溝85が可動スクロールの旋回に伴って、シャフト21に対して相対移動するように構成されている。
ハウジング側プレート53bは、スクロール側プレート53aとの摺動面が鏡面仕上げされたプレーンな平面となっており、スクロール側プレート53aと同じくドーナツ形状をなしている。
上記の構成により、溝85に保持されたオイルは、スクロール側プレート53aとハウジング側プレート53bとの摺動接触により、受圧部83の周囲に形成されるダレR部83bによる楔効果によって受圧部83上に油膜を形成する。
本実施形態では、溝85の底面は面粗度が粗くなされているので、潤滑油をこの粗い面で確実に保持することができる。これにより、スラスト軸受53の摺動面へのオイルの供給が一時的に中断した状態でスクロール型圧縮機11が運転されても、溝85の底面に保持されたオイルによって摺動面の充分な潤滑を行うことができる。
図3は、受圧部83の断面形状を拡大して示した図である。この図にも示されているように、スクロール側プレート53aに形成された浮島状の受圧部83の上面には平坦度1μm以下に加工された平坦面83aが形成されている。また、この平坦面83aの全外周には受圧部83の外周側に向かうにしたがい高さが低くなるように形成されたダレR部83bが形成されている。このダレR部83bは、断面視において、受圧部83の中心軸Cを含む平面内に中心を有する半径Rの円弧の一部もしくはその近似曲線に沿って形成されている。また、ここでいうダレR部83bは、平坦面83aと同一高さの部分から、平坦面83aから少なくとも1μm下降した部分まで(図3において範囲Tで示す部分)をいう。したがって、これ以下の部分の形状は実質的に溝83が形成されていればよく、図中符号84で示すように、受圧部83の側面が円錐面状に形成されていてもよい。
そして、このダレR部83bは、その断面半径Rが25mm以上になるように形成されている。なお、この断面半径Rについては、浮島状受圧部83の平坦部83aの受圧面積減少による過大面圧防止の観点から3000mm以下とし、さらに、ダレR部83bの断面半径Rを大きくすることは加工コストの増大につながるため、500mm以下であることを推奨する。
図4は、スラスト軸受摩擦トルク測定装置201を示す。この摩擦トルク測定装置201は、スラスト軸受SBを格納する容器202に、実機と同一の旋回運動をさせるための偏心シャフト203とモータ204を備え、偏心シャフト203とモータ204との間にトルクメータ205を介装し、このトルクメータ205によってスラスト軸受SBの摩擦トルクを測定するようにしたものである。なお、スラスト軸受SBに負荷する荷重は、油加圧機206によって実機と同等となるように調整し、スラスト軸受SBの潤滑条件も実機と同等となるように潤滑油ポンプ207によって給油している。
図5は、このようなスラスト軸受摩擦トルク測定装置201を用いて、ダレR部83bの断面半径Rと摩擦トルクとの関係を測定し、ダレR部83bの断面半径Rと摩擦係数との関係を算出したものである。この図からも理解できるように、ダレR部の断面半径Rが大きくなるにしたがい摩擦損失は低減する傾向を示し、特に、ダレR部の断面半径Rが25mm以上になると、摩擦係数がほぼ一定になり確実に摩擦係数が低減されていることが確認できる。これは、ダレR部の断面半径Rが25mm以上になると、潤滑油の引き込みにより油膜が形成され、流体潤滑状態が確実に実現していることを示している。
以上説明したように、このスクロール型圧縮機11のスラスト軸受53にあっては、対向面に複数の溝85と前記複数の溝85に囲まれた複数の受圧部83とが形成されたスクロール側プレート53aと、このスクロール側プレート53aの対向面と摺動接触するドーナツ形状のハウジング側プレート53bとを有し、受圧部83の頂面外周部には、内周側から外周側に向かうにしたがい高さが低くなるダレR部83bが形成され、このダレR部83bの半径Rは25mm以上になされているから、潤滑油をダレR部83bとハウジングプレート53bとの間に引き込み油膜を形成することができる。したがって、流体潤滑状態を確実に実現することができ、したがって、摩擦損失を確実に低減することができる。また、ダレR部83bの半径Rは3000mm以下になされているから、受圧部83の受圧面積が減少することを防止することができ、この部分に過大面圧が加わることを防止することができる。
また、ダレR部83bは、受圧部83の平坦面83aから1μm以上の範囲に形成されているから、これより下側の形状が限定されることはなく設計の自由度を向上させることができる。
また、このスラスト軸受53は、スラスト荷重が大きいスクロール型圧縮機に適用されているから、高荷重による軸受摺動面の焼付きや磨耗等を防止することができ、圧縮機の信頼性を向上させることができる。
また、このスラスト軸受53は、圧力が高く潤滑条件が厳しいCO2用圧縮機に適用されているから、高加重による軸受摺動面の焼付きや磨耗等をさらに一層防止するこができ、CO2用圧縮機の信頼性を向上させることができる。
なお、上記実施の形態においては、圧縮機としてスクロール型圧縮機を採用しているが、これに限る必要はなく、スラスト軸受を有する圧縮機であればロータリ圧縮機等他の圧縮機でもよい。
また、上記実施の形態にあっては、スクロール側プレート53aに溝85、受圧部83を形成し、ハウジング側プレート53bを平滑面に形成しているが、これに限る必要はなく、ハウジング側プレート53bに溝85、受圧部83を形成し、スクロール側プレート53aを平滑面に形成してもよい。
また、上記実施の形態では、受圧部83を備えたスクロール側プレート53aが可動スクロール32と別体に形成されているが、一体に形成されていてもよい。同様にハウジング側プレート53bが円板部スクロール側端面15eに一体に形成されていてもよい。
11 スクロール型圧縮機
15d 円板部
32 可動スクロール
38 固定スクロール
53 スラスト軸受
83 受圧部
85 溝
83a 平坦面
83b ダレR部
15d 円板部
32 可動スクロール
38 固定スクロール
53 スラスト軸受
83 受圧部
85 溝
83a 平坦面
83b ダレR部
Claims (5)
- 固定フレーム(38)に対向配置され前記固定フレーム(38)に対して旋回運動することで流体を圧縮する可動フレーム(32)と、この可動フレーム(32)の背面側に設けられ前記可動フレームの受ける軸方向の力を支持する支持部(15d)と、の間に設けられ、潤滑油が供給される圧縮機用スラスト軸受であって、
前記スラスト軸受(53)は、対向面に複数の溝(85)と前記複数の溝(85)に囲まれた複数の受圧部(83)とが形成された一方の摺動面と、前記受圧部(83)に対向して摺動接触する他方の摺動面とからなり、
前記受圧部(83)の頂面外周部には、内周側から外周側に向かうにしたがい高さが低くなるダレR部(83b)が形成され、このダレR部の断面半径は25mm以上になされていることを特徴とする圧縮機用スラスト軸受。 - 前記ダレR(83b)の断面半径は、3000mm以下になされていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機用スラスト軸受。
- 前記ダレR部(83b)は、前記受圧部の頂面(83a)から下方に1μm以上の範囲に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の圧縮機用スラスト軸受。
- 前記圧縮機は、スクロール型圧縮機であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の圧縮機用スラスト軸受。
- 前記圧縮機は、CO2用圧縮機であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の圧縮機用スラスト軸受。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2008091261A JP2009243373A (ja) | 2008-03-31 | 2008-03-31 | 圧縮機用スラスト軸受 |
Applications Claiming Priority (1)
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---|---|---|---|
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Cited By (2)
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2008
- 2008-03-31 JP JP2008091261A patent/JP2009243373A/ja active Pending
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