JPH11171515A - 水酸アパタイト皮膜の製造方法 - Google Patents

水酸アパタイト皮膜の製造方法

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JPH11171515A
JPH11171515A JP9356207A JP35620797A JPH11171515A JP H11171515 A JPH11171515 A JP H11171515A JP 9356207 A JP9356207 A JP 9356207A JP 35620797 A JP35620797 A JP 35620797A JP H11171515 A JPH11171515 A JP H11171515A
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善之 横川
Tetsuya Kameyama
哲也 亀山
Yukari Kawamoto
ゆかり 河本
Kaori Nishizawa
かおり 西澤
Fukue Nagata
夫久江 永田
Yasushi Sumi
泰志 墨
Terubumi Okada
光史 岡田
Masahiko Okuyama
雅彦 奥山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐熱性の低い基材であっても、その表面に均
質な皮膜を形成することができる水酸アパタイト皮膜の
製造方法を提供する。 【解決手段】 基材を、特に酸性の第1水溶液、例え
ば、塩酸の水溶液に浸漬し、取り出して乾燥した後、ア
ルカリ性の第2水溶液に浸漬する。この第2水溶液とし
ては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を
使用することができる。また、第2水溶液から取り出し
た基材を実質的に飽和乃至過飽和濃度のアパタイト成分
を溶解させた第3水溶液に浸漬することもできる。これ
によってより厚膜の水酸アパタイト皮膜を容易に形成す
ることができる。基材としては、金属、セラミックス、
有機高分子材料等からなるものを使用することができ
る。本発明の製造方法では、高温に加熱する必要がない
ため、特に合成繊維等からなる織物等、耐熱性の低い基
材にも適用することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定の2種類或い
は3種類の水溶液を用い、必要に応じて特定の条件の下
に、基材の表面に水酸アパタイト皮膜を製造する方法に
関する。本発明の方法によれば、各種の基材の表面に生
体活性に優れる水酸アパタイト皮膜を形成することがで
き、各種の医療用具、医療用材等に応用することができ
る。また、織物、不織布等を基材として、それらを構成
する繊維の表面に水酸アパタイト皮膜を形成し、マスク
及び各種のフィルタ材等とすることもできる。
【0002】
【従来の技術】基材の表面に水酸アパタイト皮膜を形成
する方法としては、プラズマ溶射法(特開昭62−34
559号公報、特開昭62−57548号公報、特開昭
63−160663号公報)、カルシウムとリンとを含
む溶液又は化合物を基材の表面に塗布し、焼結させる方
法(特開昭62−231669号公報、特開昭63−2
4952号公報、特開昭63−46165号公報)等が
挙げられる。また、スパッタリング法(特開昭58−1
09049号公報)、フレーム溶射法(日本セラミック
ス協会1988第1回秋季シンポジウム講演予稿集p.
p.401- 402) 、ガラスフリットによる焼付法
〔第9回バイオマテリアル学会大会予稿集(1987)
p.6〕、電気泳動法(日本セラミックス協会1988
第1回秋季シンポジウム講演予稿集p.p.417−4
18) なども知られている。
【0003】更に、生体における骨形成のメカニズムを
模倣し、基材の表面に予め水酸アパタイトの核生成を誘
導するサイトを導入した後、これを擬似体液に浸漬して
核を成長させる方法も提案されている。この核生成誘導
サイトを導入する方法としては、生体活性ガラスを用い
る方法(特開平4−141177号公報、特開平6−2
93506号公報、特公平6−29126号公報、特公
平7−24686号公報)、及び基材をリン酸エステル
化する方法(特開平8−260348号公報)等があ
る。
【0004】しかしながら、プラズマ溶射法等、高温で
の処理を必要とする方法では、有機高分子材料などから
なる耐熱性の低い基材には適用が難しい。また、形成さ
れる水酸アパタイト皮膜が、生体におけるアパタイトと
は異なる種類のものである等の問題もある。一方、生体
における骨形成のメカニズムを模倣した方法では、セラ
ミックス等の耐熱性の高い材料ばかりでなく、有機高分
子材料等の耐熱性の低い材料からなる基材であっても、
生体におけるとほぼ同様のアパタイト皮膜を形成させる
ことができる。しかし、生体活性ガラスを用いて、アパ
タイト核の誘導サイトを基材の表面に導入する方法で
は、CaO−SiO2系のガラスを溶融し、これを粉
砕、分級して所要のガラス粒子を調製する必要がある。
また、基材をリン酸エステル化する方法では、基材をリ
ン酸エステル化した後、部分的に加水分解するといった
工程が必要であり、何れにしても面倒な操作を要する。
【0005】そこで、本発明者らは、先に、これらの面
倒な操作を必要としない水酸アパタイト皮膜の形成方法
を提案した。即ち、基材を、少なくともカルシウムとリ
ンとを含む水溶液に浸漬した後、これを水溶液から取り
出し、乾燥する工程と、乾燥後の基材を、実質的に飽和
乃至過飽和濃度の水酸アパタイト成分が溶解した水溶液
に浸漬する工程によって、基材の表面に水酸アパタイト
皮膜を形成させるものである。この方法によれば簡易な
操作で水酸アパタイトを析出させることができる。しか
し、基材が大きい場合など、その全表面に水酸アパタイ
トを十分に析出させることができなかったり、或いは均
一に析出させることができないことがある。これは、乾
燥工程において、水酸アパタイト核を誘導するサイトで
あるリン酸カルシウム塩が、基材の表面に均一に析出し
ないためであると考えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の従来
の問題を解決するものであり、少なくともカルシウムと
リンとを含む水溶液等、特定の2種類或いは3種類の水
溶液を用いて、特に高温での処理を要することなく、基
材の表面に水酸アパタイト皮膜を形成するものである。
このように、本発明は、耐熱性の低い基材にも容易に適
用することができ、また、基材の大小にかかわらず、そ
の表面に均一な水酸アパタイト皮膜を形成することがで
きる水酸アパタイト皮膜の製造方法を提供することを目
的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】第1発明の水酸アパタイ
ト皮膜の製造方法は、少なくともカルシウムとリンとを
含む第1水溶液に基材を浸漬した後、該第1水溶液から
該基材を取り出して乾燥する第1工程と、乾燥後の上記
基材をアルカリ性の第2水溶液に浸漬する第2工程と、
を備え、上記基材の表面に水酸アパタイト皮膜を形成さ
せることを特徴とする。
【0008】また、第2発明の水酸アパタイト皮膜の製
造方法は、少なくともカルシウムとリンとを含む第1水
溶液に基材を浸漬した後、該第1水溶液から該基材を取
り出して乾燥する第1工程と、乾燥後の上記基材をアル
カリ性の第2水溶液に浸漬する第2工程と、該第2水溶
液から取り出した上記基材を、実質的に飽和乃至過飽和
濃度のアパタイト成分を含有する第3水溶液に浸漬する
第3工程と、を備え、上記基材の表面に水酸アパタイト
皮膜を形成させることを特徴とする。
【0009】上記「第1水溶液」は酸性、中性、アルカ
リ性のいずれであってもよいが、第3発明のように、そ
のpHを酸性領域、特に「1〜5」の酸性領域に調整す
ることが好ましい。リン酸カルシウム塩は中性からアル
カリ性の領域においては水に対する溶解度が低いが、酸
性領域においては溶解度が著しく高くなる。そのため、
第1水溶液を酸性の溶液とすれば、カルシウムとリンと
を高濃度で含む水溶液とすることができる。それによっ
て、より多くのリン酸カルシウム塩を析出させることが
でき、基材の表面に均一な水酸アパタイト皮膜を形成す
ることができる。
【0010】また、上記「第2水溶液」としては、アル
カリ性の水溶液であれば何を使用してもよい。例えば、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウ
ム、アンモニア等を水に溶解した液を用いることができ
る。この第2水溶液のpHは8〜14、特に9〜12の
範囲が好ましい。更に、上記「第2工程」における水酸
アパタイトの析出をより均一にするため、上記「第1工
程」において、第4発明のように、第1溶液に浸漬中の
基材に「超音波を照射」することが好ましい。この超音
波の照射によって基材の細部にまで溶液が浸入する。そ
れによって、乾燥後、細部にまでリン酸カルシウム塩が
付着した基材を得ることができ、これを第2水溶液に浸
漬することによって、より均一な水酸アパタイト皮膜を
形成することができる。
【0011】尚、第1及び第2工程は10〜50℃程度
の温度において実施することができ、常温付近、即ち、
20〜35℃において操作することができる。このよう
に、第1及び第2工程は、加熱も冷却も特に必要とはせ
ず、簡易な装置で、容易に実施することができる。ま
た、浸漬時間は温度にもよるが特に限定はされず、第1
工程は数分から数時間、第2工程は数時間から数十時間
とすることができる。
【0012】基材は親水性であることが好ましい。基材
が疎水性である場合は、水溶液が基材に十分に濡れない
ため、リン酸カルシウムが均一に付着しないことがあ
る。この基材の表面を水溶液に濡れ易くするため、第5
発明のように、「親水基」を有する基材を使用するか、
第6発明のように、基材の表面に予め「親水基」を導入
しておくことが好ましい。また、第7発明のように、基
材の表面を予め「粗面化」しておくことによって、基材
の表面を水に濡れ易くすることもできる。このようにし
て基材の表面の親水性を向上させることによって、より
均質な水酸アパタイト皮膜を形成することができる。
【0013】第1及び第2発明において、上記「基材」
は特に限定されず、金属、セラミックス、有機高分子材
料など、いずれも用いることができる。本発明では、高
温での処理を必要としないため、特に、第8発明のよう
に、上記「有機高分子材料」のような、耐熱性が低く、
高温での処理によって変質してしまう材料からなる基材
にも適用することができる。このような耐熱性の低い基
材としては、各種の天然繊維、合成繊維からなる織布、
不織布、編み物及びフェルト等の布地が挙げられる。ま
た、ポリウレタン、ポリスチレン及びポリエチレン、ポ
リプロピレン等のポリオレフィンなど、各種の樹脂から
なる連泡型の発泡体を使用することもできる。更に、ポ
リエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質フィルム
及び多孔質中空糸膜を用いることもできる。このような
基材を使用することにより、各種のフイルタ材等を得る
ことができる。
【0014】本発明では、第1発明のように、第1工程
と第2工程とによって、基材の表面に、実用上、十分な
性能を有する水酸アパタイト皮膜を形成することができ
る。また、第2発明のように、第1発明の第2工程に続
いて上記「第3工程」を実施することによって、基材の
表面に水酸アパタイトをより均一に、且つ多量に析出さ
せることができる。
【0015】この第3工程において用いられる上記「第
3水溶液」は、第9発明のように、そのpHを「5〜
9」とすることが好ましい。このpHが5未満では、水
酸アパタイトが水に溶解してしまって、却って皮膜が薄
くなってしまうことがある。また、pHが9を越える
と、溶液中に水酸アパタイトの沈殿が生成し、選択的に
基材の表面に析出させることが難しくなる。更に、第1
0発明のように、第3水溶液として「1〜1.5倍濃
度」の「擬似体液」を用いることが好ましい。この程度
の濃度の擬似体液では、そのイオンの状態が長時間安定
に保たれるため好ましい。
【0016】また、第3水溶液の温度は、第11発明の
ように「10〜70℃」の範囲とすることが好ましい。
この液温が10℃未満では、水酸アパタイトの析出量が
極端に低下する。一方、液温が70℃を越えると、水酸
アパタイトではなく、第三リン酸カルシウム(TCP)
等、他のリン化合物が生成する。この第3水溶液の温度
は20〜60℃、特に25〜45℃とすることが好まし
い。この範囲の液温であれば、所要量の水酸アパタイト
を析出させることができる。尚、第3水溶液への浸漬時
間は特に限定はされないが、数日間程度とすることがで
きる。
【0017】本発明の方法によって基材の表面に水酸ア
パタイト皮膜が形成されるメカニズムは明らかではない
が、以下のように推察される。先ず、第1工程におい
て、第1水溶液が付着した基材を乾燥させると、溶液の
濃度が高くなり、溶液中に含まれるCa2+とH2PO4 1-
又はHPO4 2-がリン酸カルシウム塩として基材の表面
に析出する。このリン酸カルシウム塩は酸性塩であるC
a(H2PO42として析出する。
【0018】その後、乾燥させた基材をアルカリ性の第
2水溶液に浸漬すると、Ca(H2PO42は易溶性で
あるため一旦溶液中に溶解する。しかし、基材近傍では
リン酸或いはカルシウムイオンの濃度が上昇し、過飽和
となり、また、リン酸カルシウムはアルカリ領域では極
めて溶解度が低いため、直ちに弱アルカリ塩である水酸
アパタイトとなって析出し、基材の表面に水酸アパタイ
ト皮膜が形成される。次いで、この基材を第3水溶液に
浸漬すると、第2工程で形成された水酸アパタイト皮膜
に溶液中のCa2+とHPO4 2-が取り込まれることによ
り、この水酸アパタイト皮膜が厚くなっていく。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、実施例によって本発明を詳
しく説明する。 実施例1 第1工程;先ず、塩酸水溶液にTCPを25ミリモル/
リットルの濃度となるように溶解し、第1水溶液を調製
した。この水溶液のpHは約2であった。この酸性の水
溶液20ミリリットルを超音波洗浄機の浴槽内に入れ、
100%セルロースの織物からなる重量約0.03gの
基材を浸漬した。水溶液の温度は25℃とした。浸漬時
間は10分とし、その間、基材に超音波を照射した。そ
の後、基材を洗浄機から取り出し、その表面に水溶液が
付着したまま60℃に調温された恒温槽に入れて乾燥し
た。
【0020】第2工程;乾燥後の基材を濃度1Nの水酸
化ナトリウム水溶液に、25℃で24時間浸漬した。こ
の第2工程の操作によって、基材のほぼ全面に水酸アパ
タイト皮膜が形成された(図1の「第2工程後」を参
照)。また、この基材の重量は約0.005g増加して
おり、これは形成された水酸アパタイト皮膜の重量であ
る。
【0021】実施例2 第2工程における第2水溶液を濃度1Nのアンモニウム
水溶液に代えた他は実施例1と同様にして操作した。そ
の結果、基材のほぼ全面に水酸アパタイト皮膜が形成さ
れた。この基材の重量は約0.007g増加していた。 実施例3 第2工程における第2水溶液を飽和濃度の水酸化カルシ
ウム水溶液に代えた他は実施例1と同様にして操作し
た。その結果、基材のほぼ全面に水酸アパタイト皮膜が
形成された。この基材の重量は約0.003g増加して
いた。
【0022】実施例4 第1水溶液を約200ミリリットル使用し、約1.5g
の基材を用いた他は実施例2と同様にして操作した。そ
の結果、基材のほぼ全面に水酸アパタイト皮膜が形成さ
れた。この基材の重量は約0.15g増加していた。こ
のように本発明の方法では、大きな基材であっても、水
酸アパタイトが十分に、且つ均一に析出することが分か
る。 実施例5 100%セルロースの不織布からなる重量約0.14g
の基材を使用した他は実施例4と同様にして操作した。
その結果、基材のほぼ全面に水酸アパタイト皮膜が形成
された。この基材の重量は約0.01g増加していた。
【0023】実施例6〜8 実施例1〜3において得られた水酸アパタイト皮膜が形
成された基材を、表1のイオン組成及びイオン濃度を有
する第3水溶液(1.5倍濃度の擬似体液に相当す
る。)250ミリリットルにそれぞれ浸漬した。この第
3水溶液のpHは、トリスヒドロキシメチルアミノメタ
ンと塩酸によって約7.2に調整した。水溶液の温度を
36.5℃とし、48時間浸漬した。その後、基材を取
り出し、水洗後60℃で乾燥した。この第3工程の操作
によって、基材のほぼ全面により多量の水酸アパタイト
が析出し、厚い皮膜が形成された(図1の「第3工程
後」を参照)。これらの基材の重量はそれぞれ約0.0
28g、0.026g及び0.026g増加しており、
これは形成された水酸アパタイト皮膜の重量である。こ
のように、第3工程を経ていない実施例1〜3の場合に
比べて水酸アパタイトの析出量が著しく増大しているこ
とが分かる。
【0024】 表 1 1.5倍濃度の擬似体液の組成(ミリモル/リットル) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− イオン種 Na+ K+ Ca2+ Mg2+ Cl- HCO3 - HPO4 2- SO4 2- −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 組成 213 7.5 3.8 2.3 223 6.3 1.5 0.75 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0025】実施例9 実施例4において得られた水酸アパタイト皮膜が形成さ
れた基材を、上記と同様にしてpH調整された第3水溶
液2リットルに同じ温度で7日間浸漬した他は実施例6
〜8と同様にして第3工程を実施した。この操作により
基材のほぼ全面に水酸アパタイト皮膜が形成された。こ
の基材の重量は約0.51g増加していた。
【0026】実施例10 実施例5において得られた水酸アパタイト皮膜が形成さ
れた基材を、上記と同様にしてpH調整された第3水溶
液250ミリリットルに同じ温度で5日間浸漬した他は
実施例6〜8と同様にして第3工程を実施した。この操
作により基材のほぼ全面に水酸アパタイト皮膜が形成さ
れた。この基材の重量は約0.08g増加していた。
【0027】図1は、水酸アパタイト皮膜を形成する前
の基材の表面(「基材のみ」と表記)、及び実施例1に
おいて第1工程を実施した後の基材の表面、並びに第2
工程を実施した後の、基材の表面に水酸アパタイト皮膜
が形成された積層体の表面(「第1工程後」及び「第2
工程後」と表記)のX線回折のチャートである。また、
実施例6において実施例1の水酸アパタイト皮膜が形成
された基材を用いた場合の、第3工程を実施した後の積
層体の表面(「第3工程後」と表記)のX線回折のチャ
ートである。図1によれば、基材のみ及び第1工程後で
は、水酸アパタイトの回折ピークはまったく現れていな
い。一方、第2工程後では、水酸アパタイトの2本の回
折ピーク(2θ=26°及び32°)が明らかに観察さ
れる。更に、第3工程後では、これらピークの回折強度
が非常に大きくなっており、これによっても水酸アパタ
イトの析出量の増大が裏付けられている。
【0028】比較例1 第1水溶液として、上記の実施例6〜10において第3
水溶液として用いたものを使用し、この水溶液200ミ
リリットルに、100%セルロースの織物からなる重量
約1.5gの基材を浸漬した。水溶液の温度は25℃と
した。浸漬時間は10分とし、水溶液から取り出した基
材を60℃で乾燥した。その後、第2水溶液として、上
記と同様に実施例6〜10において第3水溶液として用
いたものを使用し、基材を、36.5℃に調温されたこ
の水溶液2リットルに10日間浸漬した。しかし、この
操作によっては基材のほぼ全面に均一に水酸アパタイト
皮膜を形成することができず、水酸アパタイトが基材表
面の一部のみに析出し、皮膜が偏在していた。また、こ
の基材の重量は約0.24g増加しており、これは不均
質ではあるが、形成された水酸アパタイト皮膜の重量で
ある。
【0029】比較例2 基材を100%セルロースの不織布0.14gとし、第
2水溶液として上記と同様にしてpH調整された第3水
溶液250ミリリットルを用い、6日間浸漬した他は比
較例1と同様にして操作した。しかし、この操作では水
酸アパタイト皮膜は形成されず、基材の重量にも変化は
なかった。 比較例3 アンモニウム水溶液に浸漬する第2工程を実施しなかっ
た他は実施例10と同様にして操作した。しかし、この
操作では水酸アパタイト皮膜は形成されず、基材の重量
にも変化はなかった。
【0030】
【発明の効果】第1発明の水酸アパタイト皮膜の製造方
法によれば、特に、合成繊維等からなる織布、不織布
等、耐熱性の低い基材であっても、その表面に容易に水
酸アパタイト皮膜を製造することができる。また、第2
発明のように、更に、工程を増やすことによって、水酸
アパタイトの析出量を増大させることができ、より厚い
水酸アパタイト皮膜を確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1及び第2発明において、水酸アパタイト皮
膜を形成する前の基材の表面、及び第1工程を実施した
後の基材の表面、並びに第2工程、更には第3工程を実
施した後の、基材の表面に水酸アパタイト皮膜が形成さ
れた積層体の表面のX線回折のチャートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河本 ゆかり 埼玉県浦和市田島4丁目40番7号 ルエス ト浦和105号室 (72)発明者 西澤 かおり 愛知県尾張旭市吉岡町2丁目3番地の27 (72)発明者 永田 夫久江 名古屋市北区中丸町1丁目1番地 中丸団 地1棟804号 (72)発明者 墨 泰志 名古屋市瑞穂区高辻町14番18号 日本特殊 陶業株式会社内 (72)発明者 岡田 光史 名古屋市瑞穂区高辻町14番18号 日本特殊 陶業株式会社内 (72)発明者 奥山 雅彦 名古屋市瑞穂区高辻町14番18号 日本特殊 陶業株式会社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくともカルシウムとリンとを含む第
    1水溶液に基材を浸漬した後、該第1水溶液から該基材
    を取り出して乾燥する第1工程と、乾燥後の上記基材を
    アルカリ性の第2水溶液に浸漬する第2工程と、を備
    え、上記基材の表面に水酸アパタイト皮膜を形成させる
    ことを特徴とする水酸アパタイト皮膜の製造方法。
  2. 【請求項2】 少なくともカルシウムとリンとを含む第
    1水溶液に基材を浸漬した後、該第1水溶液から該基材
    を取り出して乾燥する第1工程と、乾燥後の上記基材を
    アルカリ性の第2水溶液に浸漬する第2工程と、該第2
    水溶液から取り出した上記基材を、実質的に飽和乃至過
    飽和濃度のアパタイト成分を含有する第3水溶液に浸漬
    する第3工程と、を備え、上記基材の表面に水酸アパタ
    イト皮膜を形成させることを特徴とする水酸アパタイト
    皮膜の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記第1水溶液のpHが1〜5である請
    求項1又は2記載の水酸アパタイト皮膜の製造方法。
  4. 【請求項4】 上記第1水溶液に浸漬中の上記基材に、
    超音波を照射する請求項1乃至3のいずれか1項に記載
    の水酸アパタイト皮膜の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記基材が親水基を有している請求項1
    乃至4のいずれか1項に記載の水酸アパタイト皮膜の製
    造方法。
  6. 【請求項6】 上記基材の表面に親水基が導入されてい
    る請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水酸アパタイ
    ト皮膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 上記基材の表面が粗面化されている請求
    項1乃至6のいずれか1項に記載の水酸アパタイト皮膜
    の製造方法。
  8. 【請求項8】 上記基材が有機高分子材料からなるもの
    である請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水酸アパ
    タイト皮膜の製造方法。
  9. 【請求項9】 上記第3水溶液のpHが5〜9である請
    求項2記載の水酸アパタイト皮膜の製造方法。
  10. 【請求項10】 上記第3水溶液が1〜1.5倍濃度の
    擬似体液である請求項2又は9記載の水酸アパタイト皮
    膜の製造方法。
  11. 【請求項11】 上記第3水溶液の温度が10〜70℃
    である請求項2、9又は10記載の水酸アパタイト皮膜
    の製造方法。
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