JP2005112716A - アパタイト複合体の製造方法。 - Google Patents

アパタイト複合体の製造方法。 Download PDF

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Abstract

【課題】生体適合性、骨結合能、特定物質吸着能、触媒担持能などの機能を有し、耐剥離性に優れたアパタイトよりなる複合体を、特別な装置を用いることなく簡便かつ効率的に製造し得る方法を提供する。
【解決手段】少なくともその表面が親水性を有する基材表面にリン酸カルシウムからなるアパタイト核形成剤が固定化された基材とリン酸カルシウム過飽和溶液を接触させてアパタイト複合体を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、人工骨等の医療材料、有害物質吸着剤等の環境材料、触媒担持材等として有用なアパタイト複合体の製造方法に関する。
アパタイトを基材表面に被覆してなるアパタイト複合体の製造技術は数多く報告されている。例えば、(1)プラズマ溶射法(非特許文献1)、(2)交互浸漬法(特許文献1)、(3)不安定リン酸カルシウム過飽和溶液からの析出法(非特許文献2)、(4)安定リン酸カルシウム過飽和溶液からの析出法(特許文献2〜5)、等が知られている。
しかし、(1)の方法では、適用できる基材の種類が限定されている上、特別な装置を必要とする。(2)の方法では、得られるリン酸カルシウムの組成と構造を制御することが困難である上、アパタイトを得るためには数十回もの浸漬操作を繰り返す必要がある。
(3)及び(4)の方法では、用いるリン酸カルシウム過飽和溶液の組成を選ぶことによりアパタイトの組成と構造をある程度までは制御することができる。しかし、(3)の方法では、用いる溶液が極めて不安定であるので、処理する直前にその都度溶液調整を行う必要がある。しかも、基材表面だけでなく処理容器の壁面等にもアパタイトが形成されてしまうので効率が悪い。(4)の方法では、シランカップリング処理、生体活性ガラス粉末による処理、リン酸エステル化処理等、面倒な前処理を必要とする等の問題点があった。
他方、リンを含む溶液に基材を浸漬後、その表面に溶液を付着させたまま乾燥させ、次いでカルシウムを含む溶液に数時間浸漬する、またはカルシウムを含む溶液に浸漬後、その表面に溶液を付着させたまま乾燥させ、次いでリンを含む溶液に浸漬する方法(特許文献6)が開発された。しかしこの方法では、アパタイトの組成と構造を制御することは困難であり、アパタイト以外の結晶も形成されてしまうことがある。確実にアパタイトのみを得るためには、アパタイトに対して過飽和な溶液に、さらに数日間も浸漬する必要がある。また、基材表面に付着させた溶液を用いてアパタイトを形成させているので、基材とアパタイトの接着強度が低い恐れがある。
したがって、特別な装置を必要とせず、種々の基材に適用可能で、形成されるアパタイトの組成と構造を制御することができ、アパタイトを基材表面に強固に固定化することのできる、簡便で安価なアパタイト複合体の製造方法の開発が強く要請されている。
特許公開2000−327314号公報 特開2003−213026号公報 特開平6−293504号公報、 特開平8−260348号公報 特開2002−325834号公報 特開平11−171516 J. Biomed. Mater. Res.,21, 1375-87 (1987) J. Am. Ceram. Soc.,85, 517-22 (2002)
本発明の目的は、生体適合性、骨結合能、特定物質吸着能、触媒担持能などの機能を有するアパタイト薄膜を、基材表面に強固に固定化させてなるアパタイト複合体を、特別な装置を用いることなく簡便かつ効率的に製造し得る方法を提供することにある。
本発明者等は、従来のアパタイト複合体の製造方法にみられる、複雑な製造工程を必要とする、適用基材が限定される、アパタイトの組成と構造を制御し難い、アパタイトと基材の接着性が悪い、等の問題点を克服するために鋭意検討した結果、リン酸カルシウムからなるアパタイト核形成剤を表面に固定化した基材を用いると、意外にも従来の問題点が解消されることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)少なくともその表面が親水性を有する基材表面にリン酸カルシウムからなるアパタイト核形成剤が固定化されてなる基材とリン酸カルシウム過飽和溶液を接触させることを特徴とするアパタイト複合体の製造方法。
(2)アパタイト核形成剤が固定化されてなる基材が、下記工程により得られるものであることを特徴とする上記(1)に記載のアパタイト複合体の製造方法。
(イ)基材を、少なくともカルシウムを含む溶液で処理する工程
(ロ)カルシウム溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
(ハ)水処理後のカルシウムイオン吸着基材を、少なくともリンを含む溶液で処理する工程
(ニ)リン溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
(3)アパタイト核形成剤が固定化されてなる基材が、下記工程により得られるものであることを特徴とする上記(1)に記載のアパタイト複合体の製造方法。
(イ)基材を、少なくともリンを含む溶液で処理する工程
(ロ)リン溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
(ハ)水処理後のリン酸イオン吸着基材を、少なくともカルシウムを含む溶液で処理する工程
(ニ)カルシウム溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
(4)(イ)から(ニ)の処理工程を所定回数繰り返すことを特徴とする上記(1)乃至(3)に記載のアパタイト複合体の製造方法。
(5)基材が、金属、セラミックス、または高分子であることを特徴とする請求項(1)乃至(4)何れかに記載のアパタイト複合体の製造方法。
(6)基材表面が、親水化処理されていることを特徴とする上記(1)乃至(5)何れかに記載のアパタイト複合体の製造方法。
本発明方法によれば、アパタイト層を基材表面に強固に固定化させてなる複合体を、特別な装置を用いることなく簡便かつ効率的に製造することができる。本発明方法で得られる複合体の構成成分であるアパタイトは、高い生体親和性、骨結合能、有害物質、タンパク質、ウィルス、細胞、細菌等を吸着する性質、及び、触媒活性を有する粒子や金属イオンを担持する性質を有する。また、同アパタイト層は、ナノからマイクロスケールの微細構造を有し、しかも基材表面に強固に固定化されている。さらに、同アパタイトの構造と組成は、用いるリン酸カルシウム過飽和溶液の条件を選ぶことによって制御可能である。従って本発明に係る複合体は、人工骨、人工歯、骨接合材、バイオチップ、経皮端子、細胞培養用足場等の医療用材料や、有害物質、イオン、タンパク質、ウィルス、細胞、細菌等の吸着、除去、分離剤や、クロマトグラフィー用カラムや、触媒担持材等として好適に使用することができる。
本発明のアパタイト複合体の製造方法は、少なくともその表面が親水性である基材、または親水化処理(粗面化処理を含む)された基材表面にリン酸カルシウムからなるアパタイト核形成剤を固定化した基材とリン酸カルシウム過飽和溶液を接触させることを特徴としている。
本発明では、少なくともその表面が親水性を有する基材を用いることが必要である。基材表面が親水性でないと、基材表面と処理溶液との接触が不十分となり、基材の表面全面にアパタイト核形成剤が導入されないからである。
ここで、少なくともその表面が親水性を有する基材とは、基材自体が親水性を有するものはもちろんのこと、基材自体は親水性を有するものではないが、親水化処理(粗面化処理を含む)によって、表面が親水性となるものも包含される。
親水化処理としては、それ自体公知のものが何れも適用でき、グロー放電処理、コロナ放電処理、アルカリ溶液処理、酸溶液処理、酸化剤処理、親水性官能基のグラフト処理、シランカップリング処理、陽極酸化処理、粗面化処理、などを採ればよい。
上記条件を満たすものであれば、基材は特に限定されず、無機、有機何れの材料も使用することができる。無機基材としては、金属、セラミックスなどが、有機基材としては、高分子などが使用される。
具体的には、金属としては、例えば、チタン、タンタル、ニオブ、コバルト、クロム、モリブデン、プラチナ、アルミニウム、またはこれらの2種以上の金属の合金、ステンレス、真ちゅうなどが、セラミックスとしては、例えば、焼結アパタイト、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、部分安定化ジルコニア、コージェライト、ゼオライト、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化チタン、ダイアモンド、シリカガラス、ソーダ石灰ガラス、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、カルコゲンガラス、ハンダガラス、コパール用ガラス、Pyrexガラス、これらの結晶化ガラスなどが、高分子としては、例えば、シリコーンポリマーなどの珪素含有ポリマー、ポリエチレングリコール、ポリアルキレングリコール、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン等の含酸素ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスルフォン、ポリアミン、ポリウレア、ポリイミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル等の合成高分子、こられの共重合体、セルロース、アミロース、アミロペクチン、キチン、キトサン等の多糖類、コラーゲン等のポリペプチド、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類等の天然高分子が好ましく挙げられる。
また、本発明で用いる上記基材の形状は限定されない。例えば、平板状、フィルム状、膜状、棒状、筒状、メッシュ状、繊維状、多孔体状、粒子状等が好ましく挙げられる。
本発明方法では、基材として、少なくともその表面が親水性を有する基材表面にリン酸カルシウムからなるアパタイト核形成剤が固定化されてなる基材を用いる。基材表面にアパタイト核形成剤を固定化する手段は特に制約されないが、以下のような工程を組み合わせる方法を採ることが好ましい。
(イ)基材を、少なくともカルシウムを含む溶液で処理する工程
(ロ)カルシウム溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
(ハ)水処理後のカルシウムイオン吸着基材を、少なくともリンを含む溶液で処理する工程
(ニ)リン溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
(イ)の工程は、まず、基材の表面にカルシウムイオンを吸着させることを主眼としたものであり、通常、CaCl水溶液などのカルシウムイオンを含む溶液に基材を浸漬することにより行われる。浸漬時間は通常1秒〜100分好ましくは10〜60秒である。また基材の引き上げ速度は、通常1〜100cm/分、好ましくは15〜60cm/分である。カルシウムイオンの濃度は特に制約されないが、通常1〜1000mM、好ましくは100〜500mM、さらに好ましくは200〜250mMである。
(ロ)の工程は、本発明方法において極めて重要であり、(イ)の行程で基材表面に付着したカルシウム溶液を基材から除くことを主眼としたものである。この工程により、水素結合等により吸着したカルシウムイオンが、基材表面に選択的に残存する。この水処理工程を欠くと、アパタイト核形成剤が厚く形成されてしまうので、その上に設けられるアパタイト層と基材との接着強度が弱くなるだけでなく、リン酸カルシウム以外の結晶も多量に析出してしまうので、本発明の初期の目的を達成することができない。
(ロ)の工程は通常、水を含む媒体中に、カルシウム溶液が付着した基材を浸漬することにより行われる。浸漬時間は通常1〜60秒、好ましくは1〜5秒である。また基材の引き上げ速度は、通常1〜100cm/分、好ましくは15〜60cm/分である。乾燥時間は、通常10秒〜60分、好ましくは1〜10分である。
(ハ)の工程は、前記(ロ)の工程で得られる基材の表面に吸着したカルシウムイオンとリン酸イオンを反応させて、リン酸カルシウムからなるアパタイト核形成剤を得ることを主眼としたものである。浸漬時間は通常1秒〜100分好ましくは10〜60秒である。また基材の引き上げ速度は、通常1〜100cm/分、好ましくは15〜60cm/分である。リン酸イオンの濃度は特に制約されないが、通常1〜1000mM、好ましくは100〜500mM、さらに好ましくは200〜250mMである。
(ニ)の行程は通常、水を含む媒体中に、リン溶液が付着した基材を浸漬することにより行われる。浸漬時間は通常1〜60秒、好ましくは1〜5秒である。また基材の引き上げ速度は、通常1〜100cm/分、好ましくは15〜60cm/分である。乾燥時間は、通常10秒〜60分、好ましくは1〜10分である。この工程により、基材表面にアパタイト核形成剤が固定化される。
この場合、カルシウム溶液とリン溶液への浸漬順序は上記のような態様に特に限定されるものではなく、カルシウム溶液とリン溶液への浸漬の順番を下記のごとく変更し、アパタイト核形成剤の固定化手段として、以下の工程をとっても良い。
(イ)基材を、少なくともリンを含む溶液で処理する工程
(ロ)リン溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
(ハ)水処理後のリン酸イオン吸着基材を、少なくともカルシウムを含む溶液で処理する工程
(ニ)カルシウム溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
本発明方法は、通常、前記(イ)→(ロ)→(ハ)→(二)の工程順により行われるが、アパタイト核形成剤の導入量を多くし、また親水性の十分高くない基材表面にも確実に、かつ基材の表面全面にアパタイト核形成剤を固定化するためには、工程(イ)〜(二)の浸漬工程を、(イ)→(ロ)→(ハ)→(二)→(イ)→(ロ)・・・の如く所定回数繰り返せばよい。ただし、繰り返す回数を多くすると、基材と、その表面に形成されるアパタイト層の間の接着強度が低くなってしまうので、繰り返す回数は通常1回以上、4回以内とするのが好ましい。
本発明で用いる、少なくともカルシウムを含む溶液は特に限定されない。例としては、医療用カルシウム輸液剤、塩化カルシウム溶液、乳酸カルシウム溶液、酢酸カルシウム溶液、グルコン酸カルシウム溶液、クエン酸カルシウム溶液などが挙げられる。溶液の温度、及びpHは限定されないが、好ましくは温度10〜50℃、pH6〜13、特に好ましくは温度20〜40℃、pH7〜10である。溶媒は限定されないが、カルシウム成分の溶解度の点から、水溶媒の使用が好ましい。基材との親和性を高めるために、エタノールなどの有機溶媒や、有機溶媒と純水の混合溶液を使用しても良い。また、本発明の所望の目的が損なわれない範囲において他の分子やイオンが存在していても良い。
本発明で用いる、少なくともリンを含む溶液は限定されない。例としては、医療用リン酸輸液剤、酸緩衝生理的食塩水、リン酸溶液、リン酸水素二カリウム溶液、リン酸二水素カリウム溶液、リン酸水素二ナトリウム溶液、リン酸二水素ナトリウム溶液、リン酸二水素ナトリウムアンモニウム溶液などが挙げられる。溶液の温度、及びpHは限定されないが、好ましくは温度10〜50℃、pH6〜13、特に好ましくは温度20〜40℃、pH7〜10である。溶媒は限定されないが、リン成分の溶解度の点から、水溶媒の使用が好ましい。基材との親和性を高めるために、エタノールなどの有機溶媒や、有機溶媒と純水の混合溶液を使用しても良い。また、本発明の所望の目的が損なわれない範囲において他の分子やイオンが存在していても良い。
また、少なくともカルシウムを含む溶液は、カルシウムを少なくとも含む1種または2種類以上の試薬粉末または溶液を純水等の溶媒に溶解することで調整することができる。少なくともリンを含む溶液は、リンを少なくとも含む1種または2種類以上の試薬粉末または溶液を純水等の溶媒に溶解することで調整することができる。
また、少なくともカルシウムを含む溶液、及び少なくともリンを含む溶液は、医療用輸液剤、透析・腹膜灌流液、輸液の補正用製剤、カルシウム製剤、透析・腹膜灌流液の補充液の中から選ばれた1種又は2種以上の粉末または溶液を混合することで調整することもできる。
水を含む媒体溶液は限定されない。このような溶液としては、例えば、純水や、メタノール、エタノール、アセトン等の有機溶媒と純水の混合溶液が挙げられるが、前記(イ)及び(ハ)の工程で用いる処理溶液との混和性の点からみて純水の使用が好ましい。また、本発明の所望の目的が損なわれない範囲において該溶液中に分子やイオンが存在していても良い。
また、本発明においては、少なくともカルシウムを含む溶液、少なくともリンを含む溶液、及び水を含む媒体には、さらにpH緩衝剤を加えてもいい。pH6以上でpHを緩衝するものであれば、pH緩衝剤は限定されない。例えばトリスヒドロキシメチルアミノメタン、HEPES{2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic Acid}、中性リン酸カリウム緩衝液などを挙げることができる。
本発明で用いるリン酸カルシウムからなるアパタイト核形成剤は、その全てがアモルファスリン酸カルシウムであることが好ましいが、その一部に他の結晶性のリン酸カルシウムを含むものであってもよい。
本発明で用いるアパタイト核形成剤は、基材表面に固定化されている必要がある。該核形成剤の厚みは、ナノスケールと極めて薄いことは、透過型電子顕微鏡観察及びX線光電子分光法により確認されており、通常0.1〜400nm、好ましくは10〜200nmである。すなわち、本発明のアパタイト核形成剤は、従来の方法で基材上に形成されるアパタイト皮膜のように、数μmといった極めて厚い層ではなく、恰もカルシウム及びリン酸イオンが基材表面に吸着しているような態様のものであり、その厚みが200nm以下という、透過型電子顕微鏡観察及びX線光電子分光法における精密測定等の解析手段によって、はじめて測定することが可能な超薄膜であるということができる。本発明に係るアパタイト核形成剤が基材表面に強固に固定される理由は、現時点では明らかではないが、基材表面の親水性基と、アパタイト核形成剤との間の水素結合等の相互作用によるものと推定される。
つぎに、本発明方法においては、前記アパタイト核形成剤を表面に有する基材に、リン酸カルシウム過飽和溶液を接触させてアパタイト複合体を製造する。
ここで、リン酸カルシウム過飽和溶液とは、リン酸カルシウムの溶解度以上にカルシウムとリンが溶けている溶液のことを意味し、安定リン酸カルシウム過飽和溶液と、不安定リン酸カルシウム過飽和溶液の2つに分けることができる。
安定リン酸カルシウム過飽和溶液とは、溶液調整完了後から少なくとも8日間は、燐酸カルシウムを析出しない溶液のことである。このような安定リン酸カルシウム過飽和溶液には、ハンクス溶液やヒトの体液とほぼ等しい無機イオン濃度及びpHを有する水溶液(擬似体液)などがある。また、不安定リン酸カルシウム過飽和溶液とは、溶液調整後7日以内に、自発的核形成によって燐酸カルシウムを析出する溶液のことである。
燐酸カルシウム過飽和溶液は、少なくともカルシウムを含む試薬粉末/溶液、少なくともリンを含む試薬粉末/溶液、少なくともカルシウムとリンの両者を含む試薬粉末/溶液、さらに必要であればpH緩衝剤を順次水に溶解してゆくことで調整することができる。これらの試薬粉末/溶液の添加順序は、該過飽和溶液調整中または調整後10秒以内に燐酸カルシウムの自発的核形成を誘起しない限り、特に制限はない。
リン酸カルシウム過飽和溶液中には、自発的核形成までに要する時間を遅延する1種または2種以上の成分を含む試薬粉末/溶液をさらに混合してもよい。
リン酸カルシウム過飽和溶の調整に用いる、少なくともカルシウムを含む粉末/溶液、及び少なくともリンを含む粉末/溶液、及び、少なくともカルシウムとリンの両者を含む粉末/溶液は限定されない。少なくともカルシウムを含む粉末/溶液の例としては、塩化カルシウム粉末/溶液、乳酸カルシウム粉末/溶液、酢酸カルシウム粉末/溶液、グルコン酸カルシウム粉末/溶液、クエン酸カルシウム粉末/溶液などが挙げられる。少なくともリンを含む粉末/溶液の例としては、リン酸緩衝生理的食塩水、リン酸溶液、リン酸水素二カリウム粉末/溶液、リン酸二水素カリウム粉末/溶液、リン酸水素二ナトリウム粉末/溶液、リン酸二水素ナトリウム粉末/溶液などが挙げられる。少なくともカルシウムとリンの両者を含む溶液としては、ハンクス溶液や擬似体液のような安定燐酸カルシウム過飽和溶液や、燐酸カルシウム不飽和溶液を挙げることもできる。
燐酸カルシウムの自発的核形成までに要する時間を遅延する成分としては、例えば、塩化カリウム、塩化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛等の無機塩、ポリビニルアルオール、ポリエチレングリコールなどの水溶性ポリマー等を挙げることができる。
リン酸カルシウム過飽和溶の調整に用いる、少なくともカルシウムを含む粉末/溶液、少なくともリンを含む粉末/溶液、少なくともカルシウムとリンを含む粉末/溶液、燐酸カルシウムの自発的核形成までに要する時間を遅延する成分を含む粉末/溶液は、各々1種類の粉末/溶液でも良いし、組成の異なる複数種の粉末/溶液から成っていても良い。
pH緩衝剤としては、pH5〜9の間でpHを緩衝するものであれば、限定されない。そのようなpH緩衝剤としては具体的には、トリスヒドロキシルアミノメタン、HEPES{2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic Acid}、中性リン酸カリウム緩衝液などを挙げることができる。
リン酸カルシウム過飽和溶液とは具体的には、例えばCa−P−Na−K−Cl系及び、Ca−P−Na−K−Mg−Cl−HCO系のある特定組成範囲の水溶液である。安定リン酸カルシウム過飽和溶液になるか不安定リン酸カルシウム過飽和溶液になるかは、各成分濃度、pHによって決まる。
また、本発明で用いるリン酸カルシウム過飽和溶液は、医療用輸液剤、透析・腹膜灌流液、輸液の補正用製剤、カルシウム製剤、透析・腹膜灌流液の補充液の中から選ばれた1種又は2種以上の粉末または溶液を混合することで調整することもできる。
ところで、本発明で用いるアパタイト核形成剤は、リン酸カルシウム過飽和溶液、たとえば擬似体液内において、短時間(3時間)内にアパタイトの形成を誘導する性質を有する。すなわち、後記で説明するように、リン酸カルシウム過飽和溶液浸漬後にあっては、前記アパタイト核形成剤を導入した基材表面には、アパタイト層が形成される。
本発明方法において、基材表面にアパタイトが形成されるメカニズムはほぼ次のように説明される。
基材表面には、交互浸漬処理等によりアパタイト核形成剤となるリン酸カルシウムが固定化される。このリン酸カルシウムは主としてアモルファスリン酸カルシウムからなり、アパタイトに対して過飽和な溶液中において、アパタイトに対して低い界面エネルギーを与えることによりアパタイトの核形成を誘起するだけでなく、それ自体もアパタイトに相転移する。一旦アパタイトの核が形成されると、それらは過飽和溶液中からリン酸及びカルシウムイオンを取り込んで自発的にアパタイト層に成長する。
表面にアパタイト核形成剤を有する基材が、リン酸カルシウム過飽和溶液中で3時間という短時間内にその表面にアパタイト層を形成するのは、主としてアモルファスリン酸カルシウムよりなる核形成剤表面におけるアパタイトの核形成速度が極めて速いため、すなわち、アモルファスリン酸カルシウムよりなる核形成剤が、極めて高いアパタイト核形成能を有しているためと考えられる。
本発明方法で得られるアパタイト層は、ScotchRメンディングテープによる引きはがし試験によっても基材表面から剥離しない、耐剥離性に優れたものである。アパタイト層が基材表面に強固に固定される理由は、現時点では明らかではないが、主としてアモルファスリン酸カルシウムよりなるアパタイト核形成剤の働きによって、基材表面に多数のアパタイト核が形成されるため、また、これらの核が、アパタイト核形成剤、及び基材表面の親水性基を介して、基材と強固に結合するためと推定される。
本発明方法で得られるアパタイトは、ナノからマイクロスケールの微細構造を有しており、しかもその構造、及び組成を制御することができる。例えば、燐酸カルシウム過飽和溶液として擬似体液を用いると、生体骨中のアパタイトと類似した組成と構造を有するアパタイトよりなる複合体を得ることができる。
したがって、本発明方法で得られるアパタイト複合体は、人工骨、人工歯、骨接合材、バイオチップ、経皮端子、細胞培養用足場等の医療用材料として好適に適用することができる。また、タンパク質、ウィルス、細胞、細菌等を吸着する性質、及び、触媒活性を有する粒子や金属イオンを担持する性質を有することから、医療用材料の他に、有害物質、イオン、タンパク質、ウィルス、細胞、細菌等の吸着、除去、分離剤や、クロマトグラフィー用カラムや、触媒担持材等として好適に使用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。本発明はこの実施例に限定されるものではない。
参考例1
[表面にアパタイト核形成剤が固定化された基材の製造]
溶融成型により得られた厚さ1mmのエチレンビニルアルコール共重合体(エチレン含有量;32モル%)基材を10×10mm2の大きさに切り出し、#2000のSiC研磨紙で研磨した。同基材を、アセトン及びエタノールで超音波洗浄した後、100℃で24時間真空乾燥させた。以後、同基材をEVと略記する。
EVを、20mLの200mM-CaCl2水溶液に10秒間、同量の超純水に1秒間浸した後乾燥させ、次いで、20mLの200mM-K2HPO4・3H2O水溶液に10秒間、同量の超純水に1秒間浸浸した後乾燥させた。同操作を3回繰り返すことにより、EVに交互浸漬処理を施した。以後、同処理後の基材をEVCPと略記する。
[基材の表面構造のX線光電子分光法(XPS)による解析]
EV及びEVCPの表面構造をX線光電子分光法(XPS)により調べた。EV表面のスペクトルには、EVの構成元素であるOとCに帰属されるピークのみが検出されたのに対し、EVCP表面のスペクトルには、OとCに加え、Ca及びPに帰属されるピークが検出された(図1)。この結果から、交互浸漬処理によって、基材表面にリン酸カルシウムが固定化されたことが明らかになった。
[基材の表面構造の透過型電子顕微鏡(TEM)による解析]
EV及びEVCPより超薄切片を切り出し、その構造を透過型電子顕微鏡(TEM)により調べたところ、EVCP表面にのみ、直径数十ナノメートルの超微粒子からなる析出物が観察された(図2)。この析出物の結晶構造を電子線回折により調べたところ、カーボン支持膜由来の2本のリングの他に、面間隔3.0〜3.2Åに相当するブロードなリングが認められた。この結果及びXPSの結果から、交互浸漬処理後に基材表面に形成されたリン酸カルシウムは、主としてアモルファスリン酸カルシウムであると考えられる。
実施例1
[アパタイト複合体の製造]
EV及びEVCPを、ヒトの血しょうとほぼ等しい無機イオン濃度を有する擬似体液、及び擬似体液と同等のナトリウム及び塩素イオン濃度、1.5倍のリン酸及びカルシウムイオン濃度を有する水溶液(CPS)に浸漬した。具体的には、EV及びEVCPを、36.5℃に保った擬似体液10mL、または25℃に保ったCPS 3mLに24時間浸漬した後取り出し、超純水で洗浄し風乾させた。擬似体液は、表1に示す濃度となるよう、NaCl、NaHCO3、KCl、K2HPO4・3H2O、MgCl2・6H2O、CaCl2、Na2SO4を超純水に順に溶解し、トリスヒドロキシメチルアミノメタンと1M-HClを用いてpHを36.5℃で7.40に合わせることにより調整した。またCPSは、表1に示す濃度となるようNaCl、K2HPO4・3H2O、CaCl2を超純水に順に溶解し、トリスヒドロキシメチルアミノメタンと1M-HClを用いてpHを25.0℃で7.40に合わせることにより調整した。
[アパタイト複合体の構造解析]
上記で得たアパタイト複合体の表面構造をTF-XRDにより調べた。EVについては、いずれの溶液に浸漬された基材表面にも、EV由来のピークのみが検出された。一方、EVCPについては、EV由来のピークの他、アパタイトに帰属されるブロードなピークが検出された(図3)。以上の結果から、EVは擬似体液、及びCPS中で24時間後にもその表面にアパタイトを形成しないが、EVCPは低結晶性のアパタイトを形成することが明らかになった。交互浸漬処理によりEVCP表面に導入されたリン酸カルシウムが、アパタイトの形成を誘起したと考えられる。なお、擬似体液に浸漬されたEVCPのアパタイトのピーク強度は、CPSに浸漬されたEVCPのそれよりも小さかった。これは、溶液のアパタイトに対する過飽和度の違い、及び擬似体液に含まれるアパタイト成長阻害成分の影響によるものと考えられる。
擬似体液、またはCPSに浸漬された後のEVCP表面をFE-SEMにより調べたところ、いずれの基材表面にも、微細構造を有する緻密な層が基材の表面全面に観察された(図4)。同層は、擬似体液またはCPS中で形成されたアパタイト層と考えられる。同アパタイト層の微細構造は、擬似体液中で形成されたものと、CPS中で形成されたものとでは、大きく異なっていた。これは、溶液温度と組成の違いによるものと考えられる。
擬似体液、またはCPSに浸漬された後のEVCP表面をXPSにより調べたところ、いずれの基材表面にも、O、Ca、及びPに帰属されるピークが検出された。これらは基材表面に形成されたアパタイトの成分である。Ca/P元素比(焼結水酸アパタイトのCa/P元素比で補正)は、いずれの基材表面においても、化学量論アパタイトのCa/P元素比(1.67)よりも低く、得られたアパタイトがカルシウム欠損アパタイトであることを示している。擬似体液に浸漬された基材表面には、さらに、少量のNa、Mg、Cl、Cが検出された。これらはCPS中には含まれないが、擬似体液中には含まれる成分である。以上の結果から、擬似体液中ではナトリウム、マグネシウム、塩素、及び炭酸イオンを含むカルシウム欠損アパタイトが、CPS中ではカルシウム欠損アパタイトが形成されることが分かった。
以上のTF-XRD、FE-SEM、及びXPSの結果より、アパタイトに対して過飽和なリン酸カルシウム溶液の組成、温度等の条件を選ぶことにより、形成されるアパタイトの量、組成、及び構造を変化させることができることが分かった。なお、擬似体液中で形成されるアパタイトは、ナトリウム、マグネシウム、塩素、及び炭酸イオンを含む、低結晶性のカルシウム欠損アパタイトであるという点で、生体骨中のアパタイトに類似している。
実施例2
EVCP表面におけるアパタイトの形成過程を調べるために、EVCPを25℃に保ったCPSに24時間までの種々の期間浸漬した後取り出し、超純水で洗浄し、風乾させた。基材の表面構造をTF-XRDにより調べた結果を図5に示す。浸漬1時間後まではEV由来のピークしか検出されなかったが、浸漬3時間後にはアパタイトに帰属される微少なピークが検出された。同ピークは、浸漬期間の増大とともに、その強度を増した。
以上の結果から、EVCPはCPS中で、3時間という短時間内にその表面にアパタイトを形成することが分かった。また、EVCP表面におけるアパタイトの形成メカニズムは次のように説明される。EVCP表面には、交互浸漬処理により、主としてアモルファスリン酸カルシウムよりなるリン酸カルシウムが固定化される。同リン酸カルシウムは、アパタイトに対して低い界面エネルギーを与えることによりアパタイトの核形成を誘起するとともに、それ自体もアパタイトに相転移する。CPSはアパタイトに対して過飽和になっているので、基材表面に形成されたアパタイトの核は、溶液中のリン酸及びカルシウムイオンを取り込んで自発的にアパタイト層として成長していく。
実施例3
EVに対し、CaCl2水溶液、K2HPO4・3H2O水溶液、及び超純水からの基材の引き上げ速度、並びに交互浸漬の繰り返し回数を変化させて、参考例1に示したのと同様の交互浸漬処理を行った。同基材を、25℃に保ったCPS
3mLに24時間浸漬した。FE-SEM観察により、基材表面におけるアパタイト形成の有無を調べた結果を表2に示す。交互浸漬操作の繰り返し回数が多いほど、また、引き上げ速度が速いほど、得られる基材のアパタイト形成能が高くなることが分かった。繰り返し回数が多く、または、引き上げ速度が速くなると、基材表面に導入されるリン酸カルシウムの量が多くなるためと推察される。
以上の結果から、引き上げ速度を速くすれば、たった1回の交互浸漬処理でも、基材にアパタイト形成能を付与できることが分かった。
実施例3で得られた複合体の、アパタイト層と基材との間の接着性を、ScotchRメンディングテープによる引きはがし試験により調べたところ、いずれの基材表面に形成されたアパタイトも、基材から剥離しなかった。この結果から、本法によって形成されるアパタイト層は、基材表面に強固に固定されていることが分かった。
また、引き上げ速度50cm/min、繰り返し回数1、2または3回で交互浸漬処理を行った基材表面に、CPS中(浸漬期間7日間、3日後にCPSを交換)で厚さ約10μmのアパタイト層を形成させた後、アパタイト層と基材との間の接着強度を引っ張り試験により調べた。その結果、繰り返し回数1、2、3回の場合の接着強度(6試料の平均値)はそれぞれ、4.1、3.6、2.4 MPaであった。以上から、交互浸漬操作の繰り返し回数を少なくした方が、得られるアパタイト層は基材表面に、より強固に固定されることが分かった。
実施例4
溶融成型により得られた厚さ1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)とポリ-L-乳酸(PLLA)基材、及びSiO-Al2O-CaO-Na2O-K2O-BaO-ZnO系の白板ガラス基材を10×10mm2の大きさに切り出し、#2000のSiC研磨紙で研磨した。また、厚さ1mmのチタン金属基材を10×10mm2の大きさに切り出し、#400のダイアモンドパッドで研磨した。上記基材を、洗浄後、乾燥させた。PETには、1M-NaOH水溶液に室温で10分間浸漬することにより、親水化処理を施した。ガラス及びチタンには、5M-NaOH水溶液に60℃で1時間浸漬することにより、親水化処理を施した。
上記の基材に、参考例1に示したのと同様の方法で交互浸漬処理を施した後、36.5℃に保った擬似体液10mLに24時間浸漬した。TF-XRDによれば、交互浸漬処理された基材はいずれも、擬似体液中で24時間以内にその表面にアパタイトを形成した(図6〜9)。以上より、PET、PLLA、チタン金属及び白板ガラスも、交互浸漬処理に付せば、擬似体液中でその表面にアパタイトを形成することが分かった。すなわち、本処理法は、エチレン‐ビニルアルコール共重合体だけでなく他の高分子材料、無機材料、及び金属材料にも有効である。
実施例5
表面親水化処理の効果を調べるため、実施例4と同様の方法で、5M-NaOH水溶液による親水化処理を施した金属チタン基材と、未処理の金属チタン基材を作製した。各基材の超純水に対する接触角を着滴4分後に調べたところ、未処理の基材の接触角(5回測定の平均値)は59度であったのに対し、親水化処理された基材のそれは21度であった。この結果から、NaOH水溶液処理により、基材表面が親水化されたことが確かめられた。
上記の2種類の基材に、参考例1に示したのと同様の方法で交互浸漬処理を施した後、36.5℃に保った擬似体液10mLに24時間浸漬した。TF-XRD及びSEM観察によれば、親水化処理された基材には、その表面全面にアパタイト層が形成されたのに対し、未処理の試料には、その表面の一部にしかアパタイト層が形成されなかった。疎水性の高い基材の場合には、交互浸漬処理によっても、アパタイトの核形成剤であるリン酸カルシウムが基材の表面全面には固定化されないためと考えられる。
また、親水化処理された基材表面に形成されたアパタイト層はScotchRメンディングテープによる引きはがし試験によっても剥離しなかったが、未処理の基材表面に形成されたアパタイト層は剥離した。
以上の結果から、基材のアパタイト形成能を高めるため、及び基材とアパタイト層との接着強度を高めるためには、予め基材に親水化処理を施しておくことが有効であることが分かった。
実施例6
三次元多孔構造を有するポリカプロラクトン(PCL)を5M-NaOH水溶液に50℃で48時間浸漬することにより、PCLに親水化処理を施した。同試料に、実施例1に示したのと同様の方法で交互浸漬処理を施した後、36.5℃に保った擬似体液30mL中に24時間浸漬した。SEM観察及びエネルギー分散型X線分光分析によれば、擬似体液浸漬後の試料の表面全面にアパタイト層が形成されていた(図10)。以上より、本処理法は、平板状試料だけでなく、複雑な三次元構造を有する試料に対しても有効であることが分かった。
実施例7
エタノールと純水の等量混合溶液(EH溶液)を溶媒として用い、100mMのCaCl2を含むEH溶液、及び100mMのK2HPO4・3H2Oを含むEH溶液を調整した。グロー放電処理を施したPCL基板を、20mLの上記CaCl2溶液に10秒間、同量のEH溶液に1秒間浸した後乾燥させ、次いで、20mLの上記K2HPO4溶液に10秒間、同量のEH溶液に1秒間浸浸した後乾燥させた。同操作を3回繰り返すことにより、PCL基板に交互浸漬処理を施した。同試料を、36.5℃に保った擬似体液10mL中に24時間浸漬した。TF-XRD及びSEM観察によれば、擬似体液浸漬後の試料表面にはアパタイト層が形成されていた。以上より、少なくともカルシウムを含む溶液、及び少なくともリンを含む溶液の溶媒として、また、水を含む媒体溶液としては、純水だけでなく、有機溶媒を含む溶液も有効であることが分かった。
EV及びEVCP表面のXPSスペクトル EV及びEVCP表面のTEM写真及び電子線回折パターン 擬似体液またはCPSに浸漬されたEVCP表面のTF-XRDパターン 擬似体液またはCPSに浸漬されたEVCP表面のFE-SEM写真 種々の期間CPSに浸漬されたEVCP表面のTF-XRDパターン 未処理のPET、及び交互浸漬処理の後擬似体液に浸漬されたPET表面のTF-XRDパターン 未処理のPLLA、及び交互浸漬処理の後擬似体液に浸漬されたPLLA表面のTF-XRDパターン 未処理のチタン金属、及び交互浸漬処理の後擬似体液に浸漬されたチタン金属表面のTF-XRDパターン 未処理の白板ガラス、及び交互浸漬処理の後擬似体液に浸漬された白板ガラス表面のTF-XRDパターン 未処理のPCL三次元構造体、及び、交互浸漬処理の後、擬似体液に浸漬されたPCL三次元構造体表面のFE-SEM写真

Claims (6)

  1. 少なくともその表面が親水性を有する基材表面にリン酸カルシウムからなるアパタイト核形成剤が固定化されてなる基材とリン酸カルシウム過飽和溶液を接触させることを特徴とするアパタイト複合体の製造方法。
  2. アパタイト核形成剤が固定化されてなる基材が、下記工程により得られるものであることを特徴とする請求項1に記載のアパタイト複合体の製造方法。
    (イ)基材を、少なくともカルシウムを含む溶液で処理する工程
    (ロ)カルシウム溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
    (ハ)水処理後のカルシウムイオン吸着基材を、少なくともリンを含む溶液で処理する工程
    (ニ)リン溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
  3. アパタイト核形成剤が固定化されてなる基材が、下記工程により得られるものであることを特徴とする請求項1に記載のアパタイト複合体の製造方法。
    (イ)基材を、少なくともリンを含む溶液で処理する工程
    (ロ)リン溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
    (ハ)水処理後のリン酸イオン吸着基材を、少なくともカルシウムを含む溶液で処理する工程
    (ニ)カルシウム溶液が付着した基材を、水を含む媒体で処理し乾燥する工程
  4. アパタイト核形成剤が固定化されてなる基材が、(イ)から(ニ)の処理を複数回繰り返す工程により得られるものであることを特徴とする請求項1乃至3何れかに記載のアパタイト複合体の製造方法。
  5. 基材が、金属、セラミックス、または高分子であることを特徴とする請求項1乃至4何れかに記載のアパタイト複合体の製造方法。
  6. 基材表面が、親水化処理されていることを特徴とする請求項1乃至5何れかに記載のアパタイト複合体の製造方法。
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