JP5159220B2 - 生体インプラント及びその製造方法 - Google Patents

生体インプラント及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP5159220B2
JP5159220B2 JP2007231461A JP2007231461A JP5159220B2 JP 5159220 B2 JP5159220 B2 JP 5159220B2 JP 2007231461 A JP2007231461 A JP 2007231461A JP 2007231461 A JP2007231461 A JP 2007231461A JP 5159220 B2 JP5159220 B2 JP 5159220B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
porous layer
crystal
calcium
bone
substrate
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007231461A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2009061104A (ja
Inventor
真二郎 笠原
武憲 澤村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NGK Spark Plug Co Ltd
Original Assignee
NGK Spark Plug Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NGK Spark Plug Co Ltd filed Critical NGK Spark Plug Co Ltd
Priority to JP2007231461A priority Critical patent/JP5159220B2/ja
Publication of JP2009061104A publication Critical patent/JP2009061104A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5159220B2 publication Critical patent/JP5159220B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Materials For Medical Uses (AREA)

Description

本発明は、生体インプラント及びその製造方法に関し、特に骨又は歯に近い力学的特性を有し、かつ、生体インプラントを体内に埋設した際に、骨と結合する機能を有する生体インプラント及びその製造方法に関する。
骨が大きく欠損した場合の治療方法として、患者自身の正常な骨を一部切り取って患部に移植する自家骨移植、又は人工材料から成る人工骨を移植する人工骨移植が行われている。しかし、自家移植は、採取できる骨量に制限があり、さらに正常な細胞を傷つけることになるので、患者の身体的負担は大きいうえ、自家骨移植に用いる自家骨移植用骨を患者自身の正常な骨から切り取ることによって新たな欠損部が生じるから、骨が大きく欠損した場合の本質的な治療方法とはいえない。また、人工骨移植では、工業的に生産される人工骨を使用するから自家骨移植の様な問題はないが、人工骨の力学的及び生物学的特性は本来の骨と異なるから、人工骨の前記特性に応じて用途が限定されるという問題を有する。例えば、人工骨の材質としてチタン合金の金属材料を選択すると、金属材料は、通常、高強度である反面、弾性率が高く靭性に欠けるので、大きな荷重が連続的にかかるような部位に埋入すると、周りの骨との力学的特性の差によりストレスシールディングが生じるといった問題や、骨と直接に結合しないといった問題がある。また、人工骨の材質として水酸アパタイト等のバイオセラミックスを選択すると、バイオセラミックスは、通常、生体適合性が良いうえに、生体活性が高くて、骨との結合性に優れている反面、外部衝撃に弱いので、大きな荷重が瞬間的にかかるような部位には用いることができないという問題がある。さらに、人工骨の材料として超高分子量ポリエチレン等のポリマーを選択すると、ポリマーは、通常、柔軟性に優れる反面、生体活性に欠けるので、骨と直接に結合しないという問題がある。
これらの問題を解決することのできる材料として、ポリマーと生体活性を有するバイオセラミックスとを組み合わせて、お互いの欠点を補うような材料の開発が盛んに行われている。
例えば、ポリマーの中でもポリエーテルエーテルケトン(PEEK)は、その力学的特性が本来の骨と近く、また生体適合性も優れていることから、高強度が要求される部位での整形外科材料としての応用が期待されている。ただし、PEEK自身は生体活性に欠けることから骨との結合性を有さない。骨との結合性が要求される部位への生体インプラントとしてPEEKを利用するためには、生体活性を有している必要があることから、PEEK表面に生体活性を有する水酸アパタイトを被覆する試みが幾つかされている。
特許文献1では、「本発明によれば、人工寛骨臼カップが、PEEK樹脂と少なくとも20〜40%のカーボン短繊維とを含む複合材料で作られた支承表面層、ならびに障壁および/または多孔度および/または粗さをもたらすための裏打ち層を含む。」(特許文献1の段落番号0009参照)、「裏打ち層は、必要であれば、生体活性材料で被覆することができる。」(特許文献1の段落番号0010参照)、「裏打ち層は、複合材料と骨細胞との間に障壁を生み出すため、例えばチタニウム、タンタル、またはニオブなどの金属から製作でき、あるいは例えば純粋なPEEKから製作できる。」(特許文献1の段落番号0013参照)と記載されている。
上記記載によれば、特許文献1に記載の人工寛骨臼カップは、少なくとも支承表面層と裏打ち層とを有しており、また、裏打ち層を生体活性材料で被覆することもできる、となっており、裏打ち層と生体活性材料で形成された被膜とは、積層されている。また、支承表面層は、PEEK樹脂と少なくとも20〜40%のカーボン短繊維とを含む複合材料で構成されており、一方裏打ち層は、金属又は純粋なPEEKで構成されており、支承表面層と裏打ち層とは材料が異なっている。
特許文献2では、「特に医療インプラントおよびプロテーゼ用であって、
(A)表面層の可変部分がリン酸カルシウム相からなり、
(B)層の厚さが0.1〜50.0μmであり、そして
(C)表面層が多孔質に構成されている生体活性表面層において、
(D)表面層が無定形またはナノ結晶質リン酸カルシウムを含有し、
(E)Ca/P比が表面層全体にわたって0.5〜2.0の範囲内であり、
(F)表面層内に沈着されたCaイオンとPO4イオンが金属酸化物層全体に分布しており、
(G)表面層の表面の細孔密度が104〜108細孔/mm2であり、
(H)表面層が25〜95原子百分率の割合の金属酸化物を含有することを特徴とする表面層。」(特許文献2の請求項1参照)、
「基質がプラスチック、主にポリオキシメチレン(POM)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアリルエーテルケトン(PAEK)、ポリエーテルイミド(PEI)または液晶高分子(LCP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PESUまたはPES)、ポリエチレンテレフタレート(PETP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)または超高分子ポリエチレン(UHMW−PE)からなり、基質がバルブメタルからなる金属層を備えていることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載の表面層を有する基質。」(特許文献2の請求項15参照)、
「バルブメタルまたはその合金上にリン酸カルシウム含有生体活性多孔質表面層を製造しまた基質上にバルブメタルコーティングも製造する方法であって、被覆される基質が陽極的に水性電解質に曝され、この電解質内にカルシウムイオンとリン酸塩イオンが含有されており、これらのイオンが生成した層内に沈着され、電解質内で陽極プラズマ化学的表面改質が直流電圧もしくは直流電圧パルスでの火花放電と電圧の時間的変化のもとで行われる方法において、
(A)水性電解質がカルシウムとリン酸塩を添加して0より大きいかまたは等しいpH値に調整され、かつ以下の成分
(B1)濃度範囲0.01〜6.00mol/lの単数または複数の有機キレート剤または無機錯化剤、
(B2)濃度範囲0.01〜6.00mol/l、主に0.01〜0.05mol/lの単数または複数のリン酸塩化合物、
(B3)所要のカルシウム/リン酸塩比を調整するために濃度範囲0.01〜6.00mol/lの単数または複数の水溶性カルシウム化合物、
(B4)所要のpH値を調整するために濃度範囲0.01〜6.00mol/lの単数または複数の塩基性添加物を含有することを特徴とする方法。」(特許文献2の請求項16参照)
が提案されている。
上記記載によれば、基質と金属層と表面層とが積層して成り、表面層は請求項1により特徴付けられており、基質及び金属層は請求項15により特徴付けられている。基質及び金属層については、材料が示されているのみである。また、生体活性表面層のコーティングは電気的な反応で行うとされている。
特開2006-158953号公報 特表2004-531305号公報
本発明の課題は、骨又は歯に近い力学的特性を有し、かつ、生体インプラントを体内に埋設した後に、骨と結合する機能を有する生体インプラントを提供することである。
本発明の他の課題は、前記のような特徴を有する生体インプラントを簡易な方法で製造する製造方法を提供することである。
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、
表面に多孔質層を有し、カルシウム含有化合物を含まない基材と、
前記基材の表面の一部又は全部に分布している、生体活性物質の結晶が集合してなる複数の結晶集合体と、
を備えてなることを特徴とする生体インプラントであり、
請求項2は、
前記生体活性物質がリン酸カルシウム化合物であることを特徴とする請求項1に記載の生体インプラントであり、
請求項3は、
前記生体活性物質が水酸アパタイト又はβ−リン酸三カルシウム、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体インプラントであり、
請求項4は、
前記結晶集合体は、その直径が1〜50μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体インプラントであり、
請求項5は、
前記基材を形成する物質がエンジニアリングプラスチックであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体インプラントであり、
請求項6は、
前記基材を形成する物質がポリエーテルエーテルケトンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体インプラントであり、
請求項7は、
前記基材の表面に形成された多孔質層は、その厚さが1〜1000μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体インプラントであり、
請求項8は、
請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体インプラントの製造方法であって、
表面に多孔質層を有する基材を製造する工程1と、
工程1で得られた基材を、少なくとも3.75mMのカルシウムイオン及び少なくとも1.5mMのリン酸イオンを含む水溶液中にて水熱処理する工程2と、
を含むことを特徴とする生体インプラントの製造方法であり、
請求項9は、
前記工程2において使用する水溶液が、1.5倍濃度の擬似体液であることを特徴とする請求項8に記載の生体インプラントの製造方法であり、
請求項10は、
前記工程2の前処理として、カルシウムイオン及び/又はリン酸イオンを少なくとも含む水溶液に、工程1で得られた基材を浸漬することを特徴とする請求項8又は9に記載の生体インプラントの製造方法である。
本発明に係る生体インプラントは、表面に多孔質層を有し、カルシウム含有化合物を含まない基材と、前記基材の表面の一部又は全部に分布している、生体活性物質の結晶が集合してなる複数の結晶集合体と、を備えてなるので、生体インプラントを体内に埋設した際に、骨と結合する機能を有する生体インプラントを提供することができる。
また、生体インプラントを体内に埋設した後に、生体インプラント表面の生体活性物質の結晶が種結晶となって、そこから骨との結合が進行する。このとき、基材は、表面に多孔質層を有するので、生体活性物質周辺から形成が進行する新たな骨は、多孔質層に存在する空間を充填するように形成され、さらに多孔質層の内部に樹枝状に形成されることにより、新たに形成された骨と生体インプラントとが強固に結合される。さらに、基材の外部へと生成した新たな骨は生体内の骨と密着するので、生体内の骨と生体インプラントとが強固に結合される。
リン酸カルシウム化合物は、特に生体活性に優れているので、生体インプラントを生体内に埋設した後に骨形成させるのに有利である。リン酸カルシウム化合物の中でも水酸アパタイト及びβ−リン酸三カルシウムはいずれも、特に生体活性及び生体親和性に優れており、骨補填材の材料として臨床使用においても多くの実績があるために好適である。
水酸アパタイトは、実際の骨の無機成分であるので、生体インプラントが、その表面に水酸アパタイトを備えていれば、骨と結合し易くなる。
β−リン酸三カルシウムは、生体吸収性に優れており、経時的に吸収されながら自家骨に置換される特徴を有していることから、近年数多くの症例に対して骨補填材として用いられている。したがって、このようなβ−リン酸三カルシウムは、生体インプラントに好適に使用される。
本発明に係る生体インプラントは、力学的特性が骨又は歯に近いので、骨との結合が必要で、かつ大きな荷重が連続的に長期間かかるような部位に人工骨として適用する場合に、ストレスシールディング、すなわち骨に加わる応力の遮へいによって起こる可能性のある骨減少及び骨密度の低下などを生じることのない、生体活性を有する高強度生体インプラントを提供することができる。
本発明に係る生体インプラントの製造方法は、表面に多孔質層を有する基材を製造する工程と前記基材を所定のイオン濃度を有する水溶液中にて水熱処理する工程とを含む方法であるので、特別な装置を使用する必要が無く、簡易な方法で前記のような特徴を有する生体インプラントを製造することができる。
まず、図1を参照しつつ本発明に係る一実施例である生体インプラントの構成について説明する。
図1に示すように、本発明に係る生体インプラント1は、表面に多孔質層3を有する基材2と、前記基材2の表面の一部又は全部に分布している、生体活性物質の結晶が集合してなる複数の結晶集合体4と、を備えてなる。
基材2を形成する物質は、力学的特性が骨又は歯に近いもの、すなわち、弾性率が10〜50GPa、曲げ強度は100MPa以上であることが望ましい。
このような基材2を形成する物質としては、エンジニアリングプラスチック又は繊維強化プラスチック等がある。エンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリフェニリンオキサイド、ポリブチレンテレフタラート、ポリエチレンテレフタラート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリメチルペンテン、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリオキシメチレン、ポリ四フッ化エチレン等が挙げられる。
繊維強化プラスチックのマトリックスとなるプラスチックとしては、前記エンジニアリングプラスチックに加えて、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、EVA樹脂、EEA樹脂、4−メチルペンテン−1樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、ACS樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、エチレン塩化ビニル共重合体、プロピレン塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアビニルアセトアセタール、ポリフッ化エチレンプロピレン、ポリ三フッ化塩化エチレン、メタクリル樹脂、リノル樹脂、ポリアリルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリケトンスルフィド、ポリスチレン、ポリアミノビスマレイミド、ユリア樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、イソフタル酸系樹脂、アニリン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン、アルキルベンゼン樹脂、グアナミン樹脂、ポリジフェニルエーテル樹脂等が挙げられる。
基材2を形成する物質としては、これらの中でも力学的特性が骨に近く、生体適合性のあるポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が特に好ましい。
前記繊維強化プラスチックにおける繊維としては、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維又は有機繊維が挙げられる。
炭素繊維については、ここではカーボンナノチューブも含まれる
セラミック繊維としては、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、チタン酸カリウム、炭化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、ホウ素等の繊維、
金属繊維としては、タングステン、モリブデン、ステンレス、スチール、タンタル等の繊維、
有機繊維としては、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、アラミド等の繊維、又はこれらの混合物を用いることができる。

また基材2を形成する物質中に、必要に応じて帯電防止剤、酸化防止剤、ヒンダードアミン系化合物などの光安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、無機充填剤、顔料などの着色料、等の各種添加剤が含有されていても良い。
基材2の表面は多孔質層3を有する。多孔質層3は、表面に開口する気孔、多孔質層3の内部に形成された独立した気孔、及びこれら複数の独立した気孔が連通してなる連通孔を多数有している。多孔質層3は、これら多数の気孔を有することにより網目構造を形成する。多孔質層3の表面に開口する気孔が多数存在することにより、生体活性物質の結晶及び/又はこれらの結晶が集合してなる結晶集合体4が、この表面に開口する気孔に嵌入し、多孔質層3と生体活性物質の結晶及び/又はこれらの結晶が集合してなる結晶集合体4とは強固に密着する。さらに、多孔質層3の内部において生体活性物質の結晶を有する場合がある。多孔質層3の内部は、独立した気孔及び複数の気孔が連通してなる連通孔を有するので、これらの空間に生体活性物質の結晶が存在する。多孔質層3の内部に存在する生体活性物質の結晶と多孔質層3の表面に存在する生体活性物質の結晶及び/又はこれらの結晶が集合してなる結晶集合体4とが結合することにより、基材2と生体活性物質の結晶及び/又はこれらの結晶が集合してなる結晶集合体4とが、さらに強固に密着する。
基材2の表面に多孔質層3を有している場合には、本発明に係る一実施例である生体インプラント1を生体内に埋設した後に、生体活性物質の結晶集合体4を足場にして骨形成が進行する際に、多孔質層3は多数の極微細な空間を有するので、この空間へも骨の形成を進行させることができる。したがって、新たな骨が多孔質層3の外部へ生成するとともに、内部へと樹枝状に広がって生成することができるので、生体インプラント1と新たな骨との結合が強固になる。
多孔質層3の厚さは、1〜1000μmの範囲で選択することができる。例えば、基材2がブロック状で一辺の長さが数mm以上ある場合には、多孔質層3の厚さは、20〜200μmであることが好ましい。多孔質層3が厚すぎると、生体インプラント1の強度が低下するおそれがあり、ある一定の強度を有することが要求される場合には好ましくない。多孔質層3が薄すぎると、生体活性物質の結晶及び/又はこれらの結晶が集合してなる結晶集合体4が、基材2から容易に脱落してしまうおそれがある。また、生体インプラント1を生体内に埋設した後に生成される新たな骨が、生体インプラント1の内部に生成される空間が十分に得られないので、生体インプラント1と新たな骨との強固な結合が得られないおそれがある。
多孔質層3の表面に開口する気孔径、多孔質層3の内部に形成される気孔径、複数の気孔が連通してなる連通孔の長径は、多孔質層3の表面及び断面を走査型電子顕微鏡で観察し、多孔質層3の表面又は断面の写真を使用して、気孔径及び連通孔の長径を測定することにより、求めることができる。また、多孔質層3の気孔率は、多孔質層3の断面を走査型電子顕微鏡により撮影した写真を、画像解析ソフトを使用して、気孔とそれ以外の部分とに2値化する。次に、写真全体の面積に対する気孔の面積の割合を算出することにより、気孔率を推定することができる。他の方法としては、水銀ポロシメーターを使用して、上記気孔径、気孔率を求めることができる。
多孔質層3の断面を走査型電子顕微鏡で観察し、その断面写真を使用して上述した方法で算出した気孔率は、10〜90%が好ましく、20〜80%がより好ましい。10%未満の場合には、生体インプラント1を生体内に埋設した後に新たな骨が生成する際に、新たな骨が多孔質層3の気孔に生成する空間が小さくなってしまい、その場合、基材2と新たな骨との結合性が低下してしまうおそれがある。90%を越えると、生体インプラント1の強度が低下するおそれがあり、ある一定の強度を有することが要求される場合には好ましくない。
多孔質層3の表面に開口する気孔径を水銀ポロシメーターにより測定した場合の気孔径の範囲は、0.1〜200μmであることが好ましい。0.1μm未満の場合は、新たな骨が多孔質層3内に生成する場合に、空間が十分に確保されず、新たな骨が生成されるのを抑制してしまうおそれがある。そうすると多孔質層3の内部に新たな骨が十分に形成されないことから生体インプラント1と新たな骨との結合力が弱くなってしまうことがある。また、200μmを越えると、生体インプラント1の強度が低下するおそれがある。また、気孔径がこの範囲内である場合には、生体活性物質の結晶が気孔に嵌入することにより容易に脱落することがない。
基材2表面への多孔質層3の形成は、濃硫酸又は濃硝酸、クロム酸等の腐食性溶液に浸漬することにより行うことができる。この他にも公知の方法で多孔体を形成することができる。例えば、ショ糖等の低分子水溶性有機物質又は塩化ナトリウム等の低分子水溶性無機物質をポリマーに分散させて溶融成形し、次いで、得られた成形体を前記有機物質又は前記無機物質が溶出する水等の溶媒に所定時間浸漬することにより多孔体を形成することができる。また、発泡剤等を使用する方法及び樹脂の粒子の表面を溶着させて多孔体を形成する方法も採用することができる。
多孔質層3の厚さ、気孔径、気孔率については、濃硫酸に浸漬する方法で気孔を形成する場合には、濃硫酸に浸漬する時間及び/又は温度により多孔層の厚さを調整することができ、また、濃硫酸浸漬に続いて浸漬する洗浄用溶液の種類及び/又は温度によって気孔径や気孔率を調整することができる。洗浄用溶液としては、純水等が挙げられる。
多孔質層3の表面は生体活性物質の結晶が集合してなる複数の結晶集合体4を有し、さらに好ましくは、前記結晶集合体4の他に、結晶が凝集して集合体を形成するのではなく、個々の生体活性物質の結晶を、多孔質層3の表面の一部又は全部に有する。生体活性物質の結晶が集合してなる複数の結晶集合体4及び好ましくは集合体を形成しない状態で存在する個々の結晶が、多孔質層3の表面の一部又は全部に存在することにより、生体インプラント1を生体内に埋設した後に、これらの結晶集合体4及び個々の結晶が足場となって、そこから新たな骨を生成することができる。その結果、生体インプラント1と生体内の骨とが結合することができる。
ここで、結晶集合体4は、生体活性物質の個々の結晶が凝集している形態を取ることがあり、個々の結晶の形態により、例えば、ドーム状又は花弁状となる。
生体活性物質は、生体との親和性が高く、歯を含む骨組織と化学的に反応する性質を有する物質であれば特に限定されず、例えば、リン酸カルシウム化合物、バイオガラス、結晶化ガラス(ガラスセラミックスとも称する。)、炭酸カルシウム等が挙げられる。リン酸カルシウム化合物としては、例えば、リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム水和物、リン酸二水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム水和物、α−リン酸三カルシウム、β−リン酸三カルシウム、ドロマイト、リン酸四カルシウム、リン酸八カルシウム、水酸アパタイト、フッ素アパタイト、炭酸アパタイト及び塩素アパタイト等が挙げられる。バイオガラスとしては、例えば、SiO−CaO−NaO−P系ガラス、SiO−CaO−NaO−P−KO−MgO系ガラス、及び、SiO−CaO−Al−P系ガラス等が挙げられる。結晶化ガラスとしては、例えば、SiO−CaO−MgO−P系ガラス(アパタイトウォラストナイト結晶化ガラスとも称する。)、及び、CaO−Al−P系ガラス等が挙げられる。これらのリン酸カルシウム化合物、バイオガラス及び結晶化ガラスは、例えば、「化学便覧 応用化学編 第6版」(日本化学会、平成15年1月30日発行、丸善株式会社)、「バイオセラミックスの開発と臨床」(青木秀希ら編著、1987年4月10日、クインテッセンス出版株式会社)等に詳述されている。
基材2の表面には、上記生体活性物質の結晶が単独で密着されていても良いし、2種以上の生体活性物質の結晶を組み合わせたものが密着されていても良い。
生体活性物質としては、これらの中でも生体活性に優れる点でリン酸カルシウム化合物が好ましく、さらに、実際の骨の無機成分であり、体内環境における安定性が優れており、体内で顕著な溶解性を示さないことから水酸アパタイトが特に好ましく、水酸アパタイトと比較すると生体内での溶解性は高いものの、同じく顕著な溶解性は示さず、また、骨補填材の材料としての性能及び安全性について多くの実績があることからリン酸三カルシウムが特に好ましい。
また、生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4は、その直径が、1〜50μmであることが好ましい。結晶集合体4の直径がこの範囲内である場合には、結晶集合体4が多孔質層3の表面に開口する気孔に嵌入し、容易に脱落することがないからである。
生体活性物質の結晶が集合してなる複数の結晶集合体4の基材2の表面積に対する割合は、少なくとも0.5%であるのが好ましい。生体活性物質の結晶が集合してなる複数の結晶集合体4が、基材2の表面積に対して少なくとも0.5%の面積割合で基材2の表面に密着されていることにより、生体インプラント1を生体内に埋設した場合に、この結晶集合体4が足場となって新たな骨の形成が進行する。基材2の表面積に対する結晶集合体4の面積割合が大きいほど、骨との初期の結合サイトが多くなるので、その結果、早期に骨と生体インプラント1とが結合し易くなる。
基材2の表面積に対する生体活性物質の結晶が集合してなる複数の結晶集合体4の面積割合は、上述した気孔率の測定方法と同様にして求めることができる。つまり、表面に結晶集合体4を有する基材2の表面を走査型電子顕微鏡により撮影した写真を、画像解析ソフトを使用して、結晶集合体4とそれ以外の部分とに2値化する。次に、写真全体の面積に対する結晶集合体4の面積の割合を算出することにより、基材2の表面積に対する結晶集合体4の割合を求めることができる。
生体活性物質の結晶は、多孔質層3の内部に存在していても良い。この場合、多孔質層3の体積に対する生体活性物質の結晶の割合は3〜70%であるのが好ましい。生体活性物質の結晶は、多孔質層3の内部に独立した状態、多孔質層3の表面に露出した状態、及びこれらの生体活性物質の結晶が連結して樹枝状に多孔質層3内部に張り巡らされた状態で存在する。したがって、上記範囲内の生体活性物質の結晶を多孔質層3が有すれば、多孔質層3の表面に存在している生体活性物質の結晶及びこれらが集合してなる結晶集合体4が、多孔質層3の内部に存在する生体活性物質の結晶との結合に助けられて、容易に多孔質層3から脱落しない。また、生体インプラント1を生体内に埋設した場合に、多孔質層3の表面に存在する生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4から外部へ又は多孔質層3の内部へと新たな骨が生成されるとともに、多孔質層3の内部に存在する生体活性物質の結晶も新たな骨の生成に役立つ。このとき、独立して存在する生体活性物質の結晶を足場にして新たな骨が生成する場合には、生体活性物質の結晶の周囲に存在する空間及び気孔を充填するように新たな骨が生成されるので、独立して存在していた生体活性物質の結晶同士が新たな骨の生成により繋がり、これらの生体活性物質の結晶及び新たな骨が、多孔質層3の内部にさらに複雑に樹枝状に広がって形成されることになる。したがって、上記範囲内の生体活性物質の結晶を多孔質層3が有すれば、生体インプラント1と新たな骨とが、さらに強固に結合されることになる。
多孔質層3に含まれる生体活性物質の結晶の体積割合は、上述した多孔質層3の表面積に対する生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4の面積割合を測定する方法と同様にして求めることができる。つまり、多孔質層3の断面における生体活性物質の結晶の面積割合を算出することができれば、この算出値から生体活性物質4の体積割合を推定することができる。
次に、本発明に係る生体インプラントの製造方法の一実施例を説明する。
本発明に係る生体インプラント1の製造方法は、表面に多孔質層3を有する基材2を製造する工程1と、工程1で得られた基材2を、少なくとも3.75mMのカルシウムイオン及び少なくとも1.5mMのリン酸イオンを含む水溶液中にて水熱処理する工程2と、を含むことを特徴とする。
工程1として、具体的には、原基材、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)の表面部に、前述した、いずれかの方法、例えば濃硫酸を使用する方法により、多孔質層3を形成して、表面に多孔質層3を有する基材2を製造する。基材2を所定のイオン濃度を有する水溶液に浸漬し、さらに結晶生成を促す条件で水溶液を反応させることにより、多孔質層3の表面に生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4を形成させようとする場合に、多孔質層3の表面に開口する気孔が存在すると、この気孔に水溶液中のイオンにより生成された結晶集合体4が嵌め込まれたように形成されることにより、結晶集合体4が基材2と強固に密着できる。また、基材2が表面に多孔質層3を有することにより、生体内に最終製造物である生体インプラント1を埋設した場合に、多孔質層3が有する空間に新たな骨を生成することができるので、生体インプラント1と新たな骨とを強固に結合することができるからである。
工程2としては、具体的には、次のような処理をする。工程1で得られたところの、表面に多孔質層3を有する基材2を、少なくとも3.75mMのカルシウムイオン及び少なくとも1.5mMのリン酸イオンを含む水溶液に浸漬し、所定時間ミニオートクレーブ容器中にて水熱処理を行う。
このカルシウムイオン及びリン酸イオンを少なくとも含む水溶液は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、炭酸イオン、ケイ酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、塩素イオン、水素イオン、フッ素イオンなどを含んでいても良い。カルシウムイオン及びリン酸イオンを含む水溶液としては、通常、水溶性が高く、人体に悪影響を与えない化合物の水溶液を挙げることができ、カルシウムイオン源としては、例えば、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、蟻酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酪酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびこれらの混合物等が挙げられ、塩化カルシウムが特に好ましい。リン酸イオン源としては、例えば、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、およびこれらの混合物等が挙げられ、リン酸水素二ナトリウムまたはリン酸水素二カリウムが特に好ましい。
工程2において使用される、カルシウムイオン及びリン酸イオンを少なくとも含む水溶液に、マグネシウムイオンが含まれている場合、このマグネシウムイオンの濃度により、生成されるリン酸カルシウム化合物の組成や結晶性を変化させることができ、本発明の効果を損なわず、リン酸カルシウム化合物が生成される範囲内で含まれていても良い。
また、少なくとも3.75mMのカルシウムイオン及び少なくとも1.5mMのリン酸イオンを含む水溶液として、1.5倍濃度の擬似体液を使用することもできる。擬似体液とは、人の血漿とほぼ等しい無機イオン濃度を有し、アパタイトに対して過飽和な溶液であり、詳細は、大槻ら「Mechanizm of apatite formation on CaO−SiO−P glasses in a simulated body fluid」、ジャーナル オブ ノン−クリスタリン ソリッド(Jornal of Non−Crystaline Solides)、第143巻、84〜92頁、1992年の論文に記載されている。
また、カルシウムイオンを少なくとも3.75mM及びリン酸イオンを少なくとも1.5mM含む水溶液に浸漬するのが好ましい。カルシウムイオン濃度が3.75mM未満又はリン酸イオン濃度が1.5mM未満の場合には、生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4が、多孔質層3の表面に十分に生成しないことがあり、カルシウムイオン濃度が2.50mM未満及びリン酸イオン濃度が1.0mM未満になると、生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4が、全く生成しない。
表面に多孔質層3を有する基材2を、カルシウムイオン及びリン酸イオンを少なくとも含む水溶液に浸漬して、オートクレーブ容器中で水熱処理をする時間は、1〜72時間が好ましく、24〜48時間が特に好ましい。水熱処理をする時間が1時間以上の場合には、多孔質層3の表面に生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4を生成させることができる。水熱処理をする時間が72時間を超えても、特に問題はないが、生体インプラント1の製造時間が長くなることを考慮の上、製造管理の観点から水熱処理をする時間を適宜選択するのが好ましい。
表面に多孔質層3を有する基材2を、カルシウムイオン及びリン酸イオンを少なくとも含む水溶液に浸漬して、オートクレーブ容器中で水熱処理をする際の温度は、100〜150℃が好ましく、110〜140℃が特に好ましい。温度が、100〜150℃の場合には、基材2の表面に生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4を生成させることができる。
工程2の前処理として、好ましくは、カルシウムイオン及び/又はリン酸イオンを少なくとも含む水溶液に、工程1で得られたところの、表面に多孔質層3を有する基材2を浸漬しても良い。工程2の水熱処理をする前に、カルシウムイオン及び/又はリン酸イオンを少なくとも含む水溶液に、基材2を浸漬することにより、基材2表面に工程2で得られる結晶及び結晶集合体4が生成しやすくなるので、その結果として基材2表面に多くの結晶集合体4を保持させることが出来る。この場合、生体インプラントを体内に埋設した際の生体骨との初期の結合サイトが多くなることから、早期の骨との結合速度を向上させるうえで好適である。
工程2の前処理における、カルシウムイオン及び/又はリン酸イオンを少なくとも含む水溶液は、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、炭酸イオン、ケイ酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、塩素イオン、水素イオン、フッ素イオンなどを含んでいても良い。カルシウムイオン及びリン酸イオンを含む水溶液としては、通常、水溶性が高く、人体に悪影響を与えない化合物の水溶液を挙げることができ、カルシウムイオン源としては、例えば、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、蟻酸カルシウム、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、酪酸カルシウム、乳酸カルシウム、およびこれらの混合物等が挙げられ、塩化カルシウムが特に好ましい。リン酸イオン源としては、例えば、リン酸、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、およびこれらの混合物等が挙げられ、リン酸水素二カリウムが特に好ましい。
基材2は、カルシウムイオンを少なくとも含みリン酸イオンを含まない水溶液のみに浸漬させても良いし、リン酸イオンを少なくとも含みカルシウムイオンを含まない水溶液のみに浸漬させても良いし、前記2種類の水溶液両方にいずれか先に浸漬させても良いし、カルシウムイオン及びリン酸イオンの両方を少なくとも含む水溶液に浸漬させても良い。基材2を、少なくともカルシウムイオンを含みリン酸イオンを含まない水溶液に浸漬した後に、リン酸イオンを少なくとも含みカルシウムイオンを含まない水溶液に浸漬した場合には、基材2表面に生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4のみでなく、この結晶集合体4を形成している個々の結晶と同様のリン酸カルシウム化合物が、基材2表面の一部又は全部に密着して形成されるので、新たな骨の生成を促し、早期に生体インプラント1と生体内の骨とを結合させようとする場合には好適である。
工程2の前処理における、カルシウムイオン及び/又はリン酸イオンを少なくとも含む水溶液は、カルシウムイオン濃度は少なくとも10mMであるのが好ましく、少なくとも25mMであるのが特に好ましい。リン酸イオン濃度は少なくとも10mMであるのが好ましく、少なくとも25mMであるのが特に好ましい。前処理におけるカルシウムイオン及びリン酸イオンの濃度がこの範囲であれば、その後の水熱反応の結晶生成を促進するための種結晶を基材2の表面に生成させることができる。
工程2の前処理における、カルシウムイオン及び/又はリン酸イオンを少なくとも含む水溶液に、基材2を浸漬する時間は、1分〜5時間が好ましく、3分〜3時間が特に好ましい。基材2を上記水溶液に浸漬する時間が1分〜5時間の範囲内であれば、十分にカルシウムイオン及び/又はリン酸イオンが基材2の内部まで染み込み、種結晶が、基材2の多孔質層3の表面及び内部に生成されると考えられる。その結果、工程2の前処理を行った後に、工程2の水熱処理をする場合には、この種結晶からリン酸カルシウム化合物の結晶が成長し、多数の結晶集合体4が生成され、さらに集合体を形成しない状態で存在する個々の結晶が、多孔質層3の内部に存在する気孔及び表面に開口する気孔に生成する場合もある。
最終工程として、適宜、工程2における水熱処理をした後の処理基材を、超音波照射をしつつ純水に浸漬して洗浄した後に、乾燥させると、表面に多孔質層3を有する基材2と、前記基材2の表面の一部又は全部に分布している、生体活性物質の結晶が集合してなる複数の結晶集合体4と、を備えてなる生体インプラント1を得ることができる。
本発明に係る生体インプラント1は、生体内の使用部位に合わせて様々な形状、例えば、粒子状、繊維状、ブロック状、フィルム状等で用いられる。好ましくは、本発明の生体インプラント1が補填される骨欠損部又は歯欠損部等の形状と同様の形状、又は骨欠損部又は歯欠損部等の形状に相当する形状、例えば、相似形等に、成形、整形及び/又は調製されて用いられる。
本発明に係る生体インプラント1は、原基材を所望の形状に成形、整形及び/又は調製した後に、多孔質層3を原基材の表面部に形成し、前記多孔質層3の表面に生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4を形成させることもできるし、原基材に多孔質層3を形成させた後に、生体インプラント1を所望の形状に成形、整形及び/又は調製し、その後に多孔質層3の表面に生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4を形成させることもできるし、原基材に多孔質層3を形成させた後に、多孔質層3の表面に生体活性物質の結晶が集合してなる結晶集合体4を形成させて、処理基材を所望の形状に成形、整形及び/又は調製することもできる。
多孔質層3は、原基材の全表面部に形成させても良いし、また骨又は歯との結合が必要な面のみに形成させても良い。
本発明に係る生体インプラント1は、骨補填材、人工関節、骨接合材、人工椎体、椎体間スペーサ、椎体ケージ及び人工歯根などに適用することができる。
次に、この発明を実施例及び比較例を挙げて説明するが、この発明は、以下の実施例及び比較例に限定されない。
(実施例1)
生体インプラントを形成する物質としてポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を使用した場合の実施例である。
下記の手順により生体インプラントを作製した。
工程1として、PEEKで構成される円盤状の原基材(直径10mm、厚さ2mm、Victrex製450G)の表面をサンドペーパー(#1000)で研磨し、濃硫酸に5分間浸漬した。濃硫酸から取り出した原基材を純水に10分間浸漬し、その後この純水のpHが中性になるまで繰り返し洗浄し、表面に多孔質層を有する基材を得た。
工程2として、この多孔質層を有する基材を、表1に示す組成に調整した1.5倍濃度の擬似体液30mlに浸漬し、120℃で48時間、ミニオートクレーブ容器に入れて、水熱処理をした。
最終工程として、水熱処理をした後の処理基材を純水中に30分浸漬して洗浄した後、120℃で3時間乾燥して、生体インプラントを得た。
Figure 0005159220
上記のように作製した生体インプラントについて、各処理段階での処理表面を走査型電子顕微鏡で観察した(拡大率:図3は3000倍、図4は500倍)。
濃硫酸に浸漬処理した後の基材の表面を図2に示す。基材は表面に多数の気孔を有し、内部は網目構造となっており、表面に認められる気孔径はほとんどが2μm以下で極微細であった。
水熱処理をした後の処理基材の表面を図3、4に示す。多孔質層の表面に直径約15μmのドーム状の結晶集合体が多数析出していた。この結晶集合体をX線回折装置により分析した結果を図5に示す。X線回折パターンには、β−リン酸三カルシウムに帰属するピークが確認された。
この多孔質層の表面に密着されているβ−リン酸三カルシウムの割合は、図4を画像解析ソフト(Scion Image)を使用して、β−リン酸三カルシウムの結晶集合体とそれ以外の部分とに2値化することにより、写真全体の面積に対するβ−リン酸三カルシウムの結晶集合体の面積割合を算出したところ、43.4%であった。
(実施例2)
水熱処理する時間を24時間とした以外は、実施例1と同様にして生体インプラントを得た。
水熱処理をした後の処理基材の表面には、実施例1と同様の大きさ及び結晶形態を有する結晶集合体が析出していたが、その析出量は実施例1と比較すると少なかった。また、実施例1と同様の結晶形態を有することから、この結晶集合体は、β−リン酸三カルシウムであると推察される。
(実施例3)
工程2で使用される、1.5倍濃度の擬似体液からマグネシウム成分を除去した以外は、実施例1と同様にして生体インプラントを得た。
作製した生体インプラントについて、各処理段階での処理表面を走査型電子顕微鏡で観察した(拡大率:図6は100倍、図7は3000倍)。
水熱処理をした後の処理基材の表面を図6、7に示す。処理基材の表面に直径約30μmの花弁状の結晶集合体が一部析出していた。この結晶集合体をX線回折装置により分析した結果を図8に示す。X線回折パターンには、水酸アパタイトに帰属するピークが確認されたが、結晶の析出量が少なかったためか、明確に同定することができなかった。しかし、結晶集合体を形成する個々の結晶が次の実施例4(図9及び図10参照。)と同様の結晶形態を有することから、この結晶集合体は、水酸アパタイトであると推察される。
この処理基材の表面に密着していた水酸アパタイトの割合は、図6を画像解析ソフト(Scion Image)を使用して、水酸アパタイトの結晶集合体とそれ以外の部分とに2値化することにより、写真全体の面積に対する水酸アパタイトの結晶集合体の面積割合を算出したところ、0.6%であった。
(実施例4)
水熱処理をする工程2の前処理として、基材を25mMの塩化カルシウム水溶液に1時間浸漬し、続いて、25mMのリン酸水素2カリウム水溶液に1時間浸漬した以外は、実施例3と同様にして生体インプラントを得た。
作製した生体インプラントについて、各処理段階での処理表面を走査型電子顕微鏡で観察した(拡大率:図9は1000倍、図10は10000倍)。
水熱処理をした後の処理基材の表面を図9、10に示す。処理基材の表面に直径約30μmの花弁状の結晶集合体が析出していた。また、結晶集合体の他に、結晶集合体を形成する個々の結晶と同形状の微細な結晶が、処理基材の全表面に析出していた。この結晶集合体及び微細な結晶をX線回折装置により分析した結果を図11に示す。X線回折パターンには、水酸アパタイトに帰属するピークが確認された。
(実施例5)
水熱処理をする工程2の前処理として、25mMの塩化カルシウム水溶液に1時間浸漬した以外は、実施例3と同様にして生体インプラントを得た。
作製した生体インプラントについて、各処理段階での処理表面を走査型電子顕微鏡で観察した(拡大率1000倍)。
水熱処理をした後の処理基材の表面を図12に示す。処理基材の表面に直径約5μmの花弁状の結晶集合体が多数析出していた。結晶集合体を形成する個々の結晶は、実施例4(図9及び図10参照。)と同様の結晶形態を有することから、この結晶集合体は、水酸アパタイトであると推察される。
(実施例6)
水熱処理をする工程2の前処理として、25mMのリン酸水素2カリウム水溶液に1時間浸漬した以外は、実施例3と同様にして生体インプラントを得た。
作製した生体インプラントについて、各処理段階での処理表面を走査型電子顕微鏡で観察した(拡大率1000倍)。
水熱処理をした後の処理基材の表面を図13に示す。処理基材の表面に直径約3μmの花弁状の結晶集合体が多数析出していた。結晶集合体を形成する個々の結晶は、実施例4(図9及び図10参照。)と同様の結晶形態を有することから、この結晶集合体は、水酸アパタイトであると推察される。
(比較例1)
工程2で使用される擬似体液を1倍濃度とした以外は、実施例1と同様にして生体インプラントの試験体を作製した。
水熱処理をした後の処理基材の表面に、析出物は認められなかった。
図1は、本発明の一例である生体活性インプラントの模式図である。 図2は、実施例1において、濃硫酸処理した後の基材表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図3は、実施例1において、水熱処理した後の処理基材の表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図4は、実施例1において、水熱処理した後の処理基材の表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図5は、実施例1において、水熱処理した後の処理基材表面のX線回折パターンである。 図6は、実施例3において、水熱処理した後の処理基材の表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図7は、実施例3において、水熱処理した後の処理基材の表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図8は、実施例3において、水熱処理した後の処理基材表面のX線回折パターンである。 図9は、実施例4において、水熱処理した後の処理基材の表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図10は、実施例4において、水熱処理した後の処理基材の表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図11は、実施例4において、水熱処理した後の処理基材表面のX線回折パターンである。 図12は、実施例5において、水熱処理した後の処理基材の表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。 図13は、実施例6において、水熱処理した後の処理基材の表面を撮影した走査型電子顕微鏡写真である。
符号の説明
1 生体インプラント
2 基材
3 多孔質層
4 結晶集合体

Claims (10)

  1. 表面に多孔質層を有し、カルシウム含有化合物を含まない基材と、
    前記基材の表面の一部又は全部に分布している、生体活性物質の結晶が集合してなる複数の結晶集合体と、
    を備えてなることを特徴とする生体インプラント。
  2. 前記生体活性物質がリン酸カルシウム化合物であることを特徴とする請求項1に記載の生体インプラント。
  3. 前記生体活性物質が水酸アパタイト又はβ−リン酸三カルシウム、又はこれらの混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の生体インプラント。
  4. 前記結晶集合体は、その直径が1〜50μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の生体インプラント。
  5. 前記基材を形成する物質がエンジニアリングプラスチックであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の生体インプラント。
  6. 前記基材を形成する物質がポリエーテルエーテルケトンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の生体インプラント。
  7. 前記基材の表面に形成された多孔質層は、その厚さが1〜1000μmであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体インプラント。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の生体インプラントの製造方法であって、
    表面に多孔質層を有する基材を製造する工程1と、
    工程1で得られた基材を、少なくとも3.75mMのカルシウムイオン及び少なくとも1.5mMのリン酸イオンを含む水溶液中にて水熱処理する工程2と、
    を含むことを特徴とする生体インプラントの製造方法。
  9. 前記工程2において使用する水溶液が、1.5倍濃度の擬似体液であることを特徴とする請求項8に記載の生体インプラントの製造方法。
  10. 前記工程2の前処理として、カルシウムイオン及び/又はリン酸イオンを少なくとも含む水溶液に、工程1で得られた基材を浸漬することを特徴とする請求項8又は9に記載の生体インプラントの製造方法。
JP2007231461A 2007-09-06 2007-09-06 生体インプラント及びその製造方法 Active JP5159220B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007231461A JP5159220B2 (ja) 2007-09-06 2007-09-06 生体インプラント及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007231461A JP5159220B2 (ja) 2007-09-06 2007-09-06 生体インプラント及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009061104A JP2009061104A (ja) 2009-03-26
JP5159220B2 true JP5159220B2 (ja) 2013-03-06

Family

ID=40556257

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007231461A Active JP5159220B2 (ja) 2007-09-06 2007-09-06 生体インプラント及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5159220B2 (ja)

Families Citing this family (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2011078624A (ja) * 2009-10-08 2011-04-21 Nagoya Univ 傾斜構造リン酸カルシウム含有複合層をもつ樹脂複合体とその製造方法
JP6222901B2 (ja) * 2012-07-11 2017-11-01 日本特殊陶業株式会社 生体インプラント及び生体インプラントの製造方法
JP5827357B2 (ja) * 2014-03-04 2015-12-02 株式会社ビー・アイ・テック リン酸カルシウム含有複合層をもつ樹脂複合体及びその製造方法
WO2018212209A1 (ja) 2017-05-17 2018-11-22 国立大学法人九州大学 骨結合性に優れる医療用高分子材料

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP3076637B2 (ja) * 1991-09-04 2000-08-14 株式会社アドバンス 複合インプラント
JP3803140B2 (ja) * 1995-07-07 2006-08-02 株式会社アドバンス 歯科用インプラント及び歯科用インプラントの製造方法
JPH119679A (ja) * 1997-06-20 1999-01-19 Nikon Corp インプラントの製造方法
JP2002114859A (ja) * 2000-10-06 2002-04-16 Toyobo Co Ltd リン酸カルシウム系化合物をコーティングした複合材料およびその製造法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2009061104A (ja) 2009-03-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5171090B2 (ja) 生体インプラント及びその製造方法
US10660990B2 (en) Article with foamed surface, implant and method of producing the same
KR100775537B1 (ko) 표면이 개질된 임플란트 제조 방법 및 그에 의해 제조된임플란트
US20040121290A1 (en) Biocompatible implants
CN113527749B (zh) 一种在聚醚醚酮表面制备多尺度多孔结构的方法
JP5210566B2 (ja) 生体インプラント及びその製造方法
US10369253B2 (en) Method for modifying surfaces for better osseointegration
Lu et al. The morphological effect of nanostructured hydroxyapatite coatings on the osteoinduction and osteogenic capacity of porous titanium
JP2019041886A (ja) 椎体スペーサ
JP5159220B2 (ja) 生体インプラント及びその製造方法
JP4254057B2 (ja) ハイドロキシアパタイトの製造方法及び複合体の製造方法
JP5404165B2 (ja) 生体インプラント及び生体インプラントの製造方法
US20140295209A1 (en) Material having pores on surface, and method for manufacturing same
JP5728321B2 (ja) 生体インプラントの製造方法
PL226891B1 (pl) Sposób wytwarzania implantu kostnego iimplant kostny
EP2296718B1 (en) Calcium phosphate coating of ti6ai4v by a na-lactate and lactic acid-buffered body fluid solution
JP7235383B2 (ja) 骨伝導性ポリマー物品を製造する方法、及びこのように製造された骨伝導性ポリマー物品
JP5484030B2 (ja) 生体インプラント
JP5469872B2 (ja) 薬剤徐放体及びその製造方法
JP4606813B2 (ja) リン酸カルシウム複合体、その製造方法、及びそれを用いた人工生体材料。
Pu et al. Research and application of medical polyetheretherketone as bone repair material
JP7333552B2 (ja) 硬組織インプラント
EP3473277A1 (en) Method for biomimetic growth of calcium phosphates ceramics on metal implants
JP4484631B2 (ja) アパタイト複合体の製造方法。
KR101336408B1 (ko) 석출에 의한 세라믹 코팅 방법 및 이에 의해 제조된 생체 분해성 임플란트

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20091209

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120817

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20121011

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20121116

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20121211

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5159220

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20151221

Year of fee payment: 3

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250