JPH11156452A - 多段絞り加工方法及び多段絞りプレス機械 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 多段絞り加工において高い絞り率の加工がで
き、工程間移送をなくして作業能率の高い多段絞り加工
方法及びそのプレス機械の提供。 【解決手段】 打抜きダイ１６，初絞りダイ１７，再絞
りダイ１８を同心に順次積層し、各ダイに対応する打抜
きパンチ３３，初絞りパンチ３４，再絞りパンチ３５を
各ダイと同心且つ相対移動可能に嵌挿し、前記パンチを
順に連続して下降させ、ブランク抜き加工，初絞り加
工，再絞り加工して有底筒体の成形後前記各パンチを上
昇させるとともに成形品を再絞りパンチから離脱させる
ようになし、駆動軸の１回転中でブランク加工から絞り
加工までを一軸線上に集約した多工程の１サイクルを終
わることを特徴とする多段絞り加工方法及びそのプレス
機械。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は多段絞り加工方法及
び多段絞りプレス機械に関するものである。更に詳しく
は金属帯板状の素材を打抜き加工してブランクを形成
し、このブランクを初絞り加工してカップ素材を形成
し、このカップ素材を再絞り加工して縮径且つ延伸され
た有底筒体を形成し、絞り成形品を多段で連続的に絞り
加工する方法及びそのプレス機械に係るものである。

【０００２】

【従来の技術】多段絞り加工の従来技術として知られて
いるものに、例えば特開平８−５５６１３号がある。こ
のものは図９に示すように、所望の缶外径よりも大径で
浅いカップ素材を用意し、これを順次絞り径が小さくな
るように、同軸線上に複数個の絞りしごきダイス（本例
では４段）を多段に配置し、最下段のしごきダイスと協
動で所望の缶外径とする一本の長いストレートのパンチ
によって、最上段のダイスに供給されたカップ素材を押
圧して多段のダイスを連続的に通過させることによって
成形品を得るものである。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】上述した従来の技術の
ものでは絞り穴径を順次小径となしたダイスを多段に積
層して、一本のストレートなパンチで絞り加工をする構
成であるので、各段の絞り率としごき率との設定が困難
であるとともに、いずれの加工段においてもしわ押さえ
機構が構成できないので、絞りしごき加工されたワーク
に「しわ」が生じ易いという問題があった。また板材を
打抜き加工してブランクを形成する手段と、このブラン
クを初絞り加工してカップ素材を形成する手段を有しな
いので別途にブランク抜き、このブランクからカップ素
材を形成する手段並びにそれぞれの手段の間にワーク移
送手段が必要となり、多くの労力を必要とし、設備費が
高価となるとともに工程の合理化が図り難いという問題
があった。本発明は従来の技術の有するこのような問題
点に鑑みなされたものであり、その目的すとるところは
ブランク打抜き加工手段，初絞り加工手段，再絞り加工
手段とを駆動軸の１回転中で作動させるようにし、各加
工手段はそれぞれパンチとダイとで加工し、且つ適宜の
加工手段にはしわ押さえ手段を設けて、絞り成形品を多
段で連続的に絞り加工する方法及びそのプレス機械を提
供しようとするものである。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明は、金属帯板状の素材を打抜き加工してブラン
クを形成し、該ブランクを初絞り加工してカップ素材を
形成し、該カップ素材を再絞り加工して縮径且つ延伸さ
れた有底筒体を多段で連続的に絞り加工する方法であっ
て、打抜きダイ、初絞りダイ，再絞りダイを順次下方に
同心に積層して多段に配置し、このダイ群に対向して打
抜きパンチ，初絞りパンチ，再絞りパンチを順次に前記
ダイと同心且つ相対移動可能に嵌挿して、前記各パンチ
の下端位置を打抜きパンチ，初絞りパンチ，再絞りパン
チの順で連続的に下降させて、第１段目において、前記
素材を打ち抜き加工してブランクを形成し、第２段目に
おいて該ブランクを初絞り加工してカップ素材を形成
し、第３段目以降において該カップ素材を縮径且つ延伸
させる再絞り加工して有底筒体の絞り成形品を形成する
ようになしたものである。打抜きダイ，初絞りダイ，再
絞りダイと順次下位へ積層したダイの最上段に移送され
た金属帯板状素材に対し順次下降される打抜きパンチ，
初絞りパンチ，再絞りパンチにより先ずブランクが打抜
かれ、次に初絞りでカップ素材を作り、更に再絞りによ
りカップとなった絞り成形品が下方に押し出され、駆動
軸の１回転によって素材のブランク加工から絞り加工ま
でを一軸線上に集約した多工程の絞り加工が終了して絞
り成形品が作り出される。このためプレス機械のフロア
スペースが小さくて済み、成形品を各工程間に移送させ
る必要がなく、また各加工工程位置において成形素材の
芯出しが不要である。

【０００５】また、適宜の加工工程おいて、パンチの下
端面と次段のダイ上面とでブランク又は絞り素材の一部
を挟持してしわ押さえしたあと絞り加工に入るようにな
したものである。初絞り、又は及び再絞り加工時、前段
のパンチでブランクの縁部又は初絞りカップ素材の底部
を、加工に関与する次のダイの上面とで挟持したあと、
絞り加工に入るので、絞り率の高い加工を行うことがで
き加工工数を減らすことができる。

【０００６】また、再絞り加工の最終段は、最終段の再
絞りパンチが下端位置においてその対向する下方位置に
設けた底部加工パンチによって絞り成形品の底部に穴明
け、バーリング、エンボッシング、面押し又は潰し加工
するようになしたものである。ブランク抜き、カップ初
絞り、カップの再絞りを行って成形品とされ再絞りパン
チにより再絞りダイから下方に押し出された成形品は、
対向して下位置で待機している底部加工パンチに底部が
衝突させられ、カップ底面に穴明け、バーリング、エン
ボッシング、面押し又は潰し加工される。パンチの下降
の終わりで加工されるので、底部加工の特別の工程を省
略することができる。このため作業能率が向上する。又
設備品の削減に寄与する。

【０００７】また、多段絞りプレス機械は、金属帯板状
の素材を打抜き加工してブランクを形成し、該ブランク
を初絞り加工してカップ素材を形成し、該カップ素材を
再絞り加工して縮径且つ延伸された有底筒体を多段で連
続的に絞り加工するプレス機械であって、素材の打抜き
ダイと、該打抜きダイと同心且つ下位に位置する初絞り
ダイと、該初絞りダイと同心且つ下位に位置する少なく
とも１個の再絞りダイとを積層して多段に設けたダイ群
と、前記ダイ群と同心且つ上下動可能で前記打抜きダイ
とで協動して素材からブランクを打抜く打ち抜きパンチ
と、該打抜きパンチと同心に内挿され単独且つ相対上下
動可能で前記初絞りダイとで協動してブランクからカッ
プ素材を初絞り加工する初絞りパンチと、該初絞りパン
チと同心に内挿され単独且つ相対上下動可能で前記再絞
りダイとで協動してカップ素材を再絞り加工する少なく
とも１個の再絞りパンチとを同軸線上に設けたパンチ群
とを含んで構成したものである。打抜きダイ，初絞りダ
イ，再絞りダイと順次下位へ積層したダイの最上段に移
送された金属帯板状素材に対し、順次下降される打抜き
パンチ，初絞りパンチ，再絞りパンチにより、先ずブラ
ンクが打抜かれ、次に初絞りでカップ素材を作り、更に
再絞りによりカップとなった絞り成形品が下方に押し出
され、駆動軸の１回転によって素材のブランク加工から
絞り加工までを一軸線上に集約した多工程の絞り加工が
終了して絞り成形品が作り出される。このためプレス機
械のフロアスペースが小さくて済み、成形品を各工程間
に移送させる必要がなく、また各加工工程位置において
成形素材の芯出しが不要である。

【０００８】また、適宜の加工工程において、パンチの
下端面と次段のダイの上面とでブランク又は絞り素材の
一部を挟持してしわ押さえ可能な位置に前記パンチの下
降端を位置決めする機構となし前記パンチの下降端到達
後に次段のパンチが絞りを開始するように構成したもの
である。初絞り、又は及び再絞り加工時に前段のパンチ
で、ブランクの縁部又は初絞りカップ素材の底部を、加
工に関与する次のダイの上面とで挟持したあと、絞り加
工に入るので、絞り率の高い加工を行うことができ加工
工数を減らすことができる。

【０００９】また、再度絞り加工の最終段は、最終段の
再絞りパンチ下端部を絞り成形品の底部を加工可能に形
成し、前記最終段の再絞りパンチが下端位置においてそ
の対向する下方で絞り成形品の底部に毛可能な底部加工
パンチを設け、前記最終段の再絞りパンチが下端位置に
達したとき絞り成形品の底部に穴明け、バーリング、エ
ンボッシング、面押又は潰し加工するように構成したも
のである。ブランク抜き、カップ初絞り、カップの再絞
りを行って成形品とされ再絞りパンチにより再絞りダイ
から下方に押し出された成形品は、対向して下位置で待
機している底部加工パンチに底部が衝突させられ、カッ
プ底面に穴明け、バーリング、エンボッシング、面押又
は潰し加工される。パンチの下降の終わりで加工される
ので、底部加工の特別の工程を省略することができる。
このため作業能率が向上する。又設備品の削減に寄与す
る。

【００１０】また、最終段の再絞りダイの下位置に、再
絞りパンチから絞り成形品を離脱させるストリッパ部材
を設けてなるものである。。再絞りパンチにより最終段
の再絞りダイから下方へ押し出されパンチ先端に被装さ
れている成形品は再絞りパンチの戻りの上昇でストリッ
パ部材により確実に離脱されて下方に排出される。した
がって支障のない連続加工が可能である。

【００１１】

【発明の実施の形態】多層とした多段プレス機械の要部
を断面とした正面図である図１、図１の右側面図である
図２にもとづき先ずプレス機械の概要を説明する。

【００１２】プレス機械の枠体１は図１で紙面の表面が
開口する門型をなし下部のボルスタ１ａ上面には積層・
多段となしたダイのダイホルダとなるダイ取付台２が設
置されている。枠体１の上部には駆動軸３が水平左右方
向（図１）に貫通し軸受で回転可能に支承されている。
駆動軸３は枠体１より突出したテーパ部に駆動大歯車４
が止着されている。一方枠体１の背面に取り付けられた
モータ６の出力軸プーリ７とベルト８で連結されている
フライホィールを兼ねるプーリ９が枠体１に設けられて
いる。

【００１３】そしてこのプーリ９の軸に設けられた小歯
車１１が駆動大歯車４と噛合されていて、駆動軸３に回
転が伝達される。駆動軸３には枠体１の天井部１ｂとボ
ルスタ１ａとに鉛直に支持された複数本の案内棒１２，
１２によって案内される後述する複数個のスライド２
５，２７，３０がそれぞれの円板カム２１，２２，２
２，２３，２３によって独自に上下動されるようになっ
ている。それらのスライドには複数個のダイ１６，１
７，１８に対応するパンチ３３，３４，３５がそれぞれ
同心且つ相対移動可能に嵌着されている。さらに枠体１
の後側（図２で右側）には金属帯板状の素材Ｗを加工位
置に送り出す送り出し装置１３が設けられており、この
送り出し装置１３は駆動軸３と同期するように制御され
ていて、後述のブランク形成ダイ上に間欠的に送材す
る。

【００１４】〔実施例その１〕本発明の要部である多層
形式の多段のダイ・パンチ部材を説明する。ダイ取付台
２は図４に示すように、順次下位になるに従い小径とな
る複数個の穴２ａ，２ｂ，２ｃ，２ｄが同心多段に穿設
されている。そして穴の各段は正確に水平に形成されて
いる。またボルスタ１ａにはダイ中心と同心位置に成形
品を落下させる穴１ｃが穿設されている。

【００１５】穴２ａには所定寸法のブランクを打抜く打
抜きダイ１６、穴２ｂにはカッピング加工する初絞りダ
イ１７、穴２ｃには再絞り加工する再絞りダイ１８が嵌
挿されており、穴２ｄは成形品排出穴である。またダイ
取付台２の上面が素材搬送ラインであって、送り出し装
置１３より送られた帯板状の素材Ｗを案内し、後述の打
抜きパンチ３３が遊に通過する穴を有し素材Ｗを案内す
る素材ガイド１９が締着されており、ダイ取付台２は厚
みが正確に製作された三層のダイ１６，１７，１８を上
下方向に固定する役目をも有している。

【００１６】駆動軸３には中央部に円板カム２１が止着
され、その両外側に円板カム２２，２２が上死点を同位
相に止着され、更にその両外側に円板カム２３，２３が
上死点を同位相に止着されている。そして各円板カムの
リフトは２１＞２２＞２３の関係にある。円板カム２
２，２２及び２３，２３は円板カム２１を挟んでそれぞ
れ対称に配置されスライド２５，２７，３０の上下動が
円滑に行われる。

【００１７】この５個の円板カム２１，２２，２２，２
３，２３を内包する両側と上下とで角形枠をなすスライ
ド２５が天井と底を貫通する案内棒１２，１２で上下動
可能に案内されており、また駆動軸３が両側面を貫通し
ている。そして駆動軸３の貫通穴２５ａ，２５ａはスラ
イド２５の上下動時に干渉しない長さの長窓に形成され
ている。このスライド２５は円板カム２１に対応する中
央位置の天井下面と底上面のそれぞれにボス２５ｂ，２
５ｃが突設されていて、これに円板カム２１の上下面に
隙間なく当接するカムフオロア２６，２６が回転可能に
軸承されている。従って円板カム２１の直径値はどの回
転位相角度でも同長であることが必要である。

【００１８】さらにスライド２５を内包する両側と上下
とで角形枠をなす同様のスライド２７が天井と底を貫通
する案内棒１２，１２によって上下動可能に案内されて
おり、また駆動軸３が両側面を貫通している。そして駆
動軸３の貫通穴２７ａ，２７ａはスライド２７の上下動
時に干渉しない長さの長窓に形成されている。このスラ
イド２７は円板カム２２，２２に対応する位置の天井下
面と底上面のそれぞれにボス２７ｂ，２７ｂ；２７ｃ，
２７ｃが突設されていて、内包したスライド２５の角形
枠の天井と底を貫通しており、それぞれのボス先端に円
板カム２２，２２の上下面を隙間なく当接するカムフオ
ロア２８，２８；２８，２８が回転可能に軸承されてい
る。従って円板カム２２，２２の直径値はどの回転位相
角度でも同長であることが必要である。

【００１９】さらにまた、スライド２７を内包する両側
と上下とで角形枠をなすスライド３０が天井と底を貫通
する案内棒１２，１２によって上下動可能に案内されて
おり、また駆動軸３が両側面を貫通している。そして駆
動軸３の貫通穴３０ａ，３０ａはスライド３０の上下動
時に干渉しない長さの長窓に形成されている。このスラ
イド３０は円板カム２３，２３に対応する位置の天井下
面と底上面のそれぞれにボス３０ｂ，３０ｂ；３０ｃ，
３０ｃが突設されていて、内包したスライド２７，２５
のそれぞれの角形枠の天井，底を貫通しており、それぞ
れのボス先端に円板カム２３，２３の上下面と隙間なく
当接するカムフオロア３１，３１，３１，３１が回転可
能に軸承されている。従って円板カム２３，２３の直径
値はどの回転位相角度でも同長であることが必要であ
る。なおスライド２５，２７，３０は三重の状態で示し
たが、この形状に限定されるものでなく、スライド２５
はスライド２７の内側で、スライド２７はスライド３０
の内側でスライド３０はプレス機械枠体の内側でアリミ
ゾなどの案内により相互に案内するように形成すれば案
内棒１２，１２で案内されることを要しない。

【００２０】スライド３０の下面にはダイ取付台２のダ
イ中心線と同一線を中心とする中空の打抜きパンチ３３
がボルトにより締着されている。またスライド２７の下
面にはダイ中心線と同一線を中心とする同心で中空の打
抜きパンチ３３の中心穴を貫通する初絞りパンチ３４が
ボルトにより締着されている。さらにスライド２５には
ダイ中心線と同一線を中心とする同心の再絞りパンチ３
５が初絞りパンチ３４の中心穴を貫通してボルトにより
締着されている。

【００２１】そしてこれらのパンチ３３，３４，３５の
関係について説明する。スライド２５，２７，３０の上
死点時はパンチ３３，３４，３５の下端面は略同一面と
される寸法であり、細くて長い再絞りパンチ３５は初絞
りパンチ３４により、初絞りパンチ３４は打抜きパンチ
３３によりそれぞれ互いに摺動可能で座窟を起こさない
ように案内されている。打抜きパンチ３３は打抜きダイ
１６との協動によりブランクＷを打ち抜いたあと、図５
に示すよう初絞りダイ１７の上面でブランクＷ１の縁部
を押さえて必要なしわ押さえ力が生じる位置がスライド
３０の下死点となるようパンチの長さ及び円板カム２
３，２３のリフトが決められている。

【００２２】初絞りパンチ３４は初絞りダイ１７との協
動によりカップ素材Ｗ２を初絞りのあと、図６に示す再
絞りダイ１８の上面でカップ素材Ｗ２の底を押さえて必
要なしわ押さえ力が生じる位置がスライド２７の下死点
となるように初絞りパンチ３４の長さ及び円板カム２
２，２２のリフトが決められている。

【００２３】再絞りパンチ３５は再絞りダイ１８との協
動によりカップ素材Ｗ２をカップＷ３に再絞りしたあ
と、図７に示すカップＷ３の成形品を再絞りダイ１８よ
り完全に抜き出した位置がスライド２５の下死点となる
ように再絞りパンチ３５の長さ及び円板カム２１のリフ
トが決められている。そして再絞りダイ１８の下面に再
絞りパンチ３５に被装されたカップＷ３の成形品をかき
おとす板ばね状のストリッパ３６が設けられている。な
お本実施例では再絞りを１回となしたが、この再絞り回
数は成形品の関係において決められるものであり、しわ
押さえ有無はその時々の成形品の形状，素材等によって
適宜決められるものである。

【００２４】次いで本発明の作用を円板カム２１，２
２，２３の上死点を０°としたときのパンチのストロー
クとの関係を示す図３にもとづき説明する。なお、図３
の一点鎖線は円板カム２３，２３、二点鎖線は円板カム
２２，２２、実線は円板カム２１のカム曲線を示す。
今、図４に示すように打抜きダイ１６の上面に素材送り
出し装置１３により素材Ｗが送られ、全ての円板カムが
上死点にあり、各パンチ３３，３４，３５の下端が一線
にある状態とする。

【００２５】モータ６の回転により駆動軸３が回転され
ると５個の円板カムが回転し、カム角度２０°の位置で
それぞれの円板カムによりスライド２５，２７，３０を
介してそれぞれのパンチ３３，３４，３５は下降を始め
る。カム角度に対する各円板カムのリフト量に差がつけ
られており、このとき打抜きパンチ３３が先行し、初絞
りパンチ３４がこれに続き、再絞りパンチ３５がさらに
遅れて追従する形をとる。円板カム２３，２３の角度が
約４０°の位置で打抜きパンチ３３により金属帯板状の
素材ＷからブランクＷ１の打抜きが開始される。カム角
度６０°の位置で打抜きパンチ３３は下降端となり、図
５に示すようにブランクＷ１が打抜かれて初絞りダイ１
７の上面の位置迄押し下げられ打抜きパンチ３３の下面
によってブランクＷ１の縁部がしわ押さえに必要な力で
初絞りダイ１７の上面に圧着される。そして初絞りパン
チ３４、再絞りパンチ３５の下面位置は打抜きパンチ３
３の下面より上の下降途中の位置にある。

【００２６】打抜きパンチ３３は、円板カム２３の下死
点で下降端位置を維持し、ブランクＷ１を初絞りダイ１
７の上面に押圧した状態で停止しており、初絞りパンチ
３４はカム角度約６５°の下降位置でブランクＷ１の初
絞りが開始される。カム角度８５°の位置で初絞りパン
チ３４は下降端に達し、図６に示すようにカップ素材Ｗ
２が成形されてその底面が再絞りダイ１８の上面に初絞
りパンチ３４で圧着される。この位置で再絞りパンチ３
５は遅れて下降している。初絞りパンチ３４は、円板カ
ム２２，２２が下死点にあるためしばらくカップ素材Ｗ
２の底を再絞りダイ１８の上面は押圧し続ける。円板カ
ム２１により引き続き下降される再絞りパンチ３５はカ
ム角度９０°の位置でカップ素材Ｗ２の再絞りが開始さ
れ、カップ素材Ｗ２は再絞りダイ１８との絞りによる縮
径と延伸が行われて図７に示すように再絞りダイ１８を
貫通したカップＷ３は再絞りパンチ３５の先端に被装さ
れている。

【００２７】カム角度２００°の位置ですべての円板カ
ム２１；２２，２２；２３，２３は一斉に戻り行程に入
り、打抜きパンチ３３、初絞りパンチ３４、再絞りパン
チ３５が上昇を開始する。この時再絞りパンチ３５の先
端に被装されたカップＷ３はストリッパ３６により、払
われパンチより抜き出されてダイ取付台２の穴２ｄ，ボ
ルスタ１ａの穴１ｃより下方に排出される。そして打抜
きパンチ３３はカム角度２４０°の位置で、初絞りパン
チ３４はカム角度２６５°の位置で、再絞りパンチ３５
はカム角度３４０°の位置で上昇端に戻り、以後各円板
カムはカム角度２０°迄上死点位置に停留しているもの
である。なお本実施例で説明した有底筒体は円筒に限定
されるものでなはい。

【００２８】〔実施例その２〕実施例その１に加えて、
再絞り加工終了時に合わせてカップＷの底に加工を行う
実施例その２について図８にもとづき説明する。実施例
その１と同部品については同符号を付して説明を省略す
る。

【００２９】枠体１のボルスタ１ａのダイ中心線と同心
に直立して配設され、ボルスタ１ａの下面から、再絞り
パンチ３５の下降端においてカップＷ３の底下面と当接
して底部の加工を行う底部加工パンチ４０が設けられて
いる。そして加工の種類に対応して底部加工パンチ４０
の上端部と再絞りパンチ３５の下端部の形状が決められ
ている。図８においてはエンボッシングの場合を例示し
たものであって、カップＷ３底面中央部に凹みを形成す
るため、底部加工パンチ４０の上端に突起４０ａが中心
に設けられており、再絞りパンチ３５の下端面にはそれ
に対応した凹部が形成されている。従って再絞りパンチ
３５の下降端直前において突起４０ａが再絞りカップＷ
３の底に当接し、図８に示すように再絞りパンチ３５の
凹部との協動によりエンボス加工が行われ、カップＷ４
が形成されるものである。エンボス加工に替える穴明け
やバーリング加工では突起４０ａは再絞りパンチ３５の
下降端でカップＷ３の底を貫通する長さであり、一方再
絞りパンチ３５は突起４０ａに対応する寸法の貫通穴を
設けることによって穴明けやバーリング加工が可能であ
る。

【００３０】なお、上述の説明では、金属帯板状の素材
巾に対して１列に材料取りしてブランク加工するように
構成されているが、一軸線上に配設される各金型を複数
対設けることによって、素材巾に対して複数列に材料取
りした多数個取り加工し、さらに生産性の向上を図るこ
とができる。

【００３１】また、上述の説明では、各パンチを上下動
させる手段が円板カムとこれを挟む一対のカムフオロア
とで構成されているが、例えば溝カムと１個のカムフオ
ロアとで構成するようにしても実施できる。

【００３２】

【発明の効果】本発明は上述のように構成したので以下
の効果を奏する。請求項１，４の発明は、打抜き，初絞
り，再絞りと順次加工する積層多段となしたダイに対し
て、それぞれ対応するパンチを同心に配置し、そのパン
チのストロークを中心側が順次長くなるように設けたの
で、多段で加工を順次行うことができ、順次横方向に移
動させて行うトランスファプレスよりもフロア面積が少
なくてすみ、工場面積が節約され、設備費を下げること
ができる。さらに加工工程を鉛直方向に配し駆動軸の１
回転で、ブランク打抜きから絞り加工までを一軸線上に
集約した多工程の絞り加工が完了するので、各工程間の
ワーク移送手段が不要となり、設備費を下げることがで
きるとともに生産能率が格段に向上する。

【００３３】請求項２，５の発明は各加工工程はそれぞ
れに対応するパンチとダイで加工され、適宜の加工工程
においてしわ押さえできるようにしたので、絞り率の高
い加工を行うことができ、加工工程数を減らすことがで
きる。

【００３４】請求項３，６の発明は、再絞り加工完了の
最下端において、絞り成形品の底部に穴明け、バーリン
グ、エンボッシング、面押し又は潰し加工が特別の加工
工程を設けることなく行うことができ、作業能率が向上
するとともに安価に底部加工ができる。

【００３５】請求項７の発明はパンチの戻り行程におい
て成形品をパンチから効率良く離脱させることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の多段絞りプレス機械の概要を示す断面
説明図である。

【図２】本発明の多段絞りプレス機械の概要を示す側面
説明図である。

【図３】駆動軸に止着された各円板カムの位相角度と各
パンチのストロークとの関係を示すカム線図である。

【図４】円板カムの上死点位置における素材と各パンチ
の位置関係を示す拡大断面図である。

【図５】打抜きパンチにより素材からブランクが打抜か
れ、ブランクがしわ押さえされている状態を示す拡大断
面図である。

【図６】ブランクから初絞り加工されたカップ素材が、
しわ押さえされている状態を示す拡大断面図である。

【図７】カップ素材から再絞り加工された成形品が、再
絞りパンチから離脱される直前の状態を示す拡大断面図
である。

【図８】カップ成形品の底部にエンボス加工する手段を
付加した実施例その２の状態を示す拡大断面図である。

【図９】従来技術の多段プレスを示す説明図である。

【符号の説明】

２ ダイ取付台 ３ 駆動軸 １２ 案内棒 １６ 打抜きダイ １７ 初絞りダイ １８ 再絞りダイ ２１，２２，２２；２３，２３ 円板カム ２６，２６，２８，２８，３１，３１ カムフオロア ３３ 打抜きパンチ ３４ 初絞りパンチ ３５ 再絞りパンチ ３６ ストリッパ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 ＦＩ Ｂ２１Ｄ 24/12 Ｂ２１Ｄ 24/12 37/12 37/12

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 金属帯板状の素材を打抜き加工してブラ
   ンクを形成し、該ブランクを初絞り加工してカップ素材
   を形成し、該カップ素材を再絞り加工して縮径且つ延伸
   された有底筒体を多段で連続的に絞り加工する方法であ
   って、打抜きダイ、初絞りダイ，再絞りダイを順次下方
   に同心に積層して多段に配置し、このダイ群に対向して
   打抜きパンチ，初絞りパンチ，再絞りパンチを順に前記
   ダイと同心且つ相対移動可能に嵌挿して、前記各パンチ
   の下端位置を打抜きパンチ，初絞りパンチ，再絞りパン
   チの順で連続的に下降させて、第１段目において、前記
   素材を打抜き加工してブランクを形成し、第２段目にお
   いて該ブランクを初絞り加工してカップ素材を形成し、
   第３段目以降において該カップ素材を縮径且つ延伸させ
   る再絞り加工して有底筒体の絞り成形品を形成するよう
   になしたことを特徴とする多段絞り加工方法。
2. 【請求項２】 パンチの下端面と次段のダイ上面とでブ
   ランク又は絞り素材の一部を挟持してしわ押さえしたあ
   と絞り加工に入るようになした請求項１に記載の多段絞
   り加工方法。
3. 【請求項３】 最終段の再絞りパンチが下端位置におい
   てその対向する下方位置に設けた底部加工パンチによっ
   て絞り成形品の底部に穴明け、バーリング、エンボッシ
   ング、面押し又は潰し加工するようになしたことを特徴
   とする請求項１又は２に記載の多段絞り加工方法。
4. 【請求項４】 金属帯板状の素材を打抜き加工してブラ
   ンクを形成し、該ブランクを初絞り加工してカップ素材
   を形成し、該カップ素材を再絞り加工して縮径且つ延伸
   された有底筒体を多段で連続的に絞り加工するプレス機
   械であって、素材の打抜きダイと、該打抜きダイと同心
   且つ下位に位置する初絞りダイと、該初絞りダイと同心
   且つ下位に位置する少なくとも１個の再絞りダイとを積
   層して多段に設けたダイ群と、前記ダイ群と同心且つ上
   下動可能で前記打抜きダイとで協動して素材からブラン
   クを打抜く打ち抜きパンチと、該打抜きパンチと同心に
   内挿され単独且つ相対上下動可能で前記初絞りダイとで
   協動してブランクからカップ素材を初絞り加工する初絞
   りパンチと、該初絞りパンチと同心に内挿され単独且つ
   相対上下動可能で前記再絞りダイとで協動してカップ素
   材を再絞り加工する少なくとも１個の再絞りパンチとを
   同軸線上に設けたパンチ群とを含んで構成したことを特
   徴とする多段絞りプレス機械。
5. 【請求項５】 パンチの下端面と次段のダイの上面とで
   ブランク又は絞り素材の一部を挟持してしわ押さえ可能
   な位置に前記パンチの下降端を位置決めする機構となし
   前記パンチの下降端到達後に次段のパンチが絞りを開始
   するように構成したことを特徴とする請求項４に記載の
   多段絞りプレス機械。
6. 【請求項６】 最終段の再絞りパンチ下端部を絞り成形
   品の底部を加工可能に形成し、前記最終段の再絞りパン
   チが下端位置においてその対向する下方で絞り成形品の
   底部に係合可能な底部加工パンチを設け、前記最終段の
   再絞りパンチが下端位置に達したとき絞り成形品の底部
   に穴明け、バーリング、エンボッシング、面押又は潰し
   加工するように構成したことを特徴とする請求項４又は
   ５に記載の多段絞りプレス機械。
7. 【請求項７】 最終段の再絞りダイの下位置に、再絞り
   パンチから絞り成形品を離脱させるストリッパ部材を設
   けてなる請求項４乃至６の何れか１項に記載の多段絞り
   プレス機械。