JPH1057817A - 光触媒活性を有する親水性構造体 - Google Patents

光触媒活性を有する親水性構造体

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JPH1057817A
JPH1057817A JP8222878A JP22287896A JPH1057817A JP H1057817 A JPH1057817 A JP H1057817A JP 8222878 A JP8222878 A JP 8222878A JP 22287896 A JP22287896 A JP 22287896A JP H1057817 A JPH1057817 A JP H1057817A
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川 信 早
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島 栄 一 小
Shigemichi Miyama
山 重 道 深
Kazunori Saito
藤 一 徳 斎
Nobuo Kimura
村 信 夫 木
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 消臭、抗菌、防汚などの光触媒活性を有する
と同時に、光触媒薄膜を設けた構造体表面に光触媒作用
に基づく優れた親水性を付与した光触媒構造体を提供す
る。 【解決手段】 光触媒活性を有する構造体表面の少なく
とも一部に、0.2〜100nmの膜厚の金属化合物の
薄膜を設けた光触媒構造体である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光触媒薄膜を設け
た構造体表面に光触媒作用による親水性を発現させ、そ
の結果として防汚性、防曇性、易洗浄性等の効果を微弱
な紫外光で長期間維持できる親水性光触媒構造体に関す
る。
【0002】
【従来の技術】紫外線のエネルギーによって、脱臭、殺
菌、有機物の分解、水の浄化、排水処理等の各種の化学
反応を進行させる光触媒として、n型半導体の酸化チタ
ンが知られている。一方、防汚性や易洗浄性の材料とし
ては、フッ素樹脂系の常温硬化型の塗料や各種の撥水性
コーティング剤が使用されてきた。しかしながら、これ
らの撥水性材料では、親油性が高いため大気中に浮遊す
るオイルミストの付着が著しく、結果的にそれらのオイ
ルミストをバインダーとして煤塵や埃が付着しやすくな
るため、施工後3〜5年を経過したフッ素樹脂塗料など
の撥水性コーティングを施した施設の外壁の汚れは非常
に激しいものとなっている。また、防曇性を発揮させる
ためには界面活性剤の塗布が広く行われていたが、効果
の維持性に乏しく短期間で失効するものが殆どであっ
た。
【0003】一方、光触媒作用によって親水性を発現さ
せた報告としては、Langmuir vol12 No. 4
p.966〜971(1996)がある。しかし、上記
文献に報告されているような方法では、強い紫外線を長
時間照射しないと光触媒活性は発現せず親水性も現れな
い。また、一旦親水性を示すようになった試料であって
も、5μW/cm2 程度の微弱な紫外線の連続照射で
は、7日間程度で水の接触角が容易に10度以上にまで
上昇してしまうものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】光触媒作用により親水
性を発現させ、構造体表面を水に濡れ易くすることで、
付着したオイルミスト等を雨や洗浄水などで効率良く洗
い流して、結果として構造体表面を防汚性、防曇性、易
洗浄性に優れ、かつその効果を室内空間に存在する程度
の微弱な紫外線によって維持させることができる親水性
光触媒構造体を提供することが重要である。
【0005】こうした光触媒作用を有する親水性構造体
が解決しなくてはならない課題として、1.比較的低い
紫外線光量で構造体表面の水の接触角で表現した親水性
が10度以下、望ましくは5度以下になること 2.一
旦5度以下の水の接触角を示した構造体表面の初期親水
性が、室内空間に存在する程度の微弱な紫外線のもとで
も長期間、最低1週間以上維持されること 3.洗剤に
よる洗浄や水拭きなどの操作が加えられても再度室内空
間に存在する微弱な紫外線の照射により構造体の親水性
が低下せず維持されること 4.親水性の付与によって
も光触媒作用が消失せず、防汚、抗菌などの機能をも同
時に有するものであること、等が挙げられる。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成を有する
構造体が優れた光触媒活性を併せ持つとともに、光触媒
作用に基づく高い親水性をも発現できることを見い出し
本発明を完成させた。
【0007】即ち、本発明に関わる光触媒活性を有する
親水性構造体は、 (構成1)光触媒活性を有する構造体表面の少なくとも
一部に、金属化合物の薄膜を0.2〜100nmの膜厚
で積層したことを特徴とするものである。
【0008】そして、そのような構成にすることによ
り、構造体表面の親水性を水の接触角で表現した場合
に、380nm以下の波長の光を含む紫外線を照射して
水の接触角を5度以下にすることができるものである。
【0009】また、構造体表面の親水性を水の接触角で
表現した場合に、380nm以下の波長の光を含む紫外
線を照射して水の接触角を5度以下にでき、かつ、該構
造体に対して、380nm以下の波長のUV−A領域の
紫外線を1〜5μW/cm2含む光を連続照射して該構
造体表面の水の接触角を7日以上10度以下に維持でき
るものである。
【0010】上記構成1の態様として、 (構成2)光触媒活性を有する構造体表面の少なくとも
一部に積層する金属化合物の薄膜が、ケイ素、ジルコニ
ウム、アルミニウム、ニオビウム、タンタラム及びゲル
マニウムからなる群の中から選ばれた一種の金属の酸化
物、水酸化物又はそれらの混合物からなる薄膜であるこ
とを特徴とするものとし、
【0011】同じく構成1の態様として、 (構成3)光触媒活性を有する構造体表面の少なくとも
一部に積層する金属化合物の薄膜が、式(1)
【0012】 M(R)x(OR’)n-x ・・・(I)
【0013】(式中、Mはケイ素、ジルコニウム、アル
ミニウム、ニオビウム、タンタラム及びゲルマニウムか
らなる群から選ばれる一種の金属を表し、R及びR’は
同一または相異なって、メチル基、エチル基、プロピル
基、ブチル基又は2−エチルヘキシル基を表し、nは、
MがSi、Zr及びGeでは4、Alでは3、Nbおよ
びTaでは5を表し、XはMがSiのときは0または1
であり、MがSi以外のときは0を表す。)で表される
金属化合物、式(1)でで表される金属化合物、式
(1)で表される金属化合物の部分加水分解生成物、式
(1)で表される金属化合物の重縮合反応生成物、式
(1)で表される金属化合物と炭素数1〜10のアルコ
ール、カルボン酸、カルボン酸エステル若しくはキレー
ト形成化合物との反応生成物、又はそれらの一種若しく
は二種以上の混合物からなる溶液を、塗布乾燥または塗
布乾燥後熱分解して得られるものであることを特徴とす
るものとし、
【0014】構成1から構成3の態様として、 (構成4)光触媒活性を有する構造体表面の少なくとも
一部に積層する薄膜の成分である金属化合物が、ケイ
素、ジルコニウム、アルミニウム、ニオビウム、タンタ
ラム及びゲルマニウムからなる群の中から選ばれた一種
の金属の酸化物、水酸化物又はそれらの混合物に対し
て、20mol%以下の酸化リン又はリン化合物を含む
ものであることを特徴とするものとし、
【0015】構成1から構成4の態様として、 (構成5)Ti(OR”)4 (式中、R”は炭素数1〜
10のアルキル基もしくは炭素数1〜10のアルコキシ
置換アルキル基を表す。)で表されるチタニウムアルコ
キシド、該チタニウムアルコキシドの部分加水分解生成
物、該チタニウムアルコキシドのアルコキシ基置換反応
生成物、該チタニウムアルコキシドのキレート形成反応
生成物、又はそれらの混合物からなるチタニウム化合物
の溶液と、該チタニウム化合物溶液中のTi原子に対し
て、0〜120原子%のケイ素、ジルコニウム、アルミ
ニウム、ニオビウム、タンタラム及びゲルマニウムから
なる群から選ばれる一種若しくは二種以上の金属の酸化
物、水酸化物又はそれらの混合物の一種又は二種以上の
混合物からなる液との混合液を使用して、塗布、熱分解
によって光触媒活性を有する薄膜を形成することを特徴
とするものとし、
【0016】上記構成5の態様として、 (構成6)構成5に示すチタニウム化合物を含む混合液
の塗布熱分解によって得られる光触媒活性を有する薄膜
の厚さが、0.01〜10μmであることを特徴とする
ものとし、
【0017】前記構成1から構成4のいずれかの態様と
して、 (構成7)光触媒粒子と金属の酸化物または水酸化物の
ゲルを含む光触媒粒子複合体からなる光触媒層を有する
構造体の表面の少なくとも一部に、上記構成2から構成
4に示す金属化合物の薄膜を、0.2〜100nm、好
ましくは0.2〜10nmの膜厚で積層した構造体であ
ることを特徴とするものとし、
【0018】構成7の態様として、 (構成8)光触媒粒子複合体に含まれる金属の酸化物ま
たは水酸化物のゲルが、ケイ素、アルミニウム、ジルコ
ニウム、ニオビウム、タンタラム、タングステン及びス
ズからなる群から選ばれた一種又は二種以上の金属から
なる酸化物もしくは水酸化物のゲルを、光触媒粒子複合
体中に25〜95重量%含むものであることを特徴とす
るものとし、
【0019】構成7または構成8のいずれかの態様とし
て、 (構成9)光触媒粒子複合体の厚さが、0.05〜10
μmであることを特徴とするものとし、
【0020】構成7から構成9のいずれかの態様とし
て、 (構成10)光触媒粒子複合体に含まれれる光触媒が酸
化チタンを主成分とするものであることを特徴とするも
のとした。
【0021】本発明者らは、光触媒活性を有する構造体
の表面の少なくとも一部を、極めて薄く他の金属化合物
で覆うことにより、光触媒作用によってもたらされる親
水性は非常に大きいものとなることを見いだした。金属
化合物の膜厚は、0.2〜100nmが好ましく、更に
好ましくは0.2〜10nmである。0.2nm以下で
は親水性向上の効果に乏しく、100nm以上では光触
媒作用を著しく低下させるため結果として現れてくる親
水性も低くなる。特に金属化合物が珪素化合物の場合、
その膜厚は0.2〜10nmが好ましい。なお、本明細
書においては、光触媒活性を有する構造体の表面に形成
させる金属化合物の薄膜の膜厚は、該金属化合物の薄膜
を形成させるための塗布溶液の固形分濃度と塗布条件に
よって定まる塗布液膜の厚みと構造体表面の比表面積値
から計算で算出した数値を使用している。真空蒸着やイ
オンプレーティングなどの物理的成膜方法やCVDなど
の塗布液を使用しない化学的成膜方法の場合は、同一成
膜条件での同一組成の平滑な構造体表面に成膜した時の
実測値を検量線として採用することにより最表面に形成
させる薄膜の膜厚を測定することができる。
【0022】本発明によれば、光触媒活性を有する構造
体の表面を全て完全に覆っても光照射によって親水性は
発現されるが、その場合は、光触媒活性の低下が著しい
ため、例えば、WO96/14932号公報に記載され
ているように電子捕捉性の金属を光触媒近傍に担持する
ことによって光触媒活性を高めることもできる。
【0023】本発明の光触媒構造体は極めて親水化が容
易である。すなわち、初期親水性として水の接触角を1
0度以下にするには、例えば、0.3〜5J/cm2
光量の380nm以下の波長の紫外線を含む光を数分か
ら数時間の間に照射すれば良い。水の接触角を5度以下
にする場合でも、例えば、0.4〜8J/cm2 の光量
の380nm以下の波長の紫外線を含む光を数分から数
時間の間に照射すれば良い。0.4J/cm2 の紫外線
光量は、0.11μW/cm2 (窓際の室内)で約1時
間程度、1mW/cm2 (曇天下の屋外)で約7分間程
度の光照射にほぼ相当し実用上十分である。
【0024】更に、本発明では、前記の紫外線照射によ
って一旦水の接触角が5度以下となった構造体に対し
て、380nm以下の波長のUV−A領域の紫外線を1
〜5μW/cm2 の強度含む光の連続照射によって、水
の接触角を10度以下に7日間以上維持することが可能
である。この5μW/cm2 の紫外線強度は、室内での
蛍光灯下1mの距離での紫外線強度に相当し、この程度
以下の光の連続照射で初期親水性が維持できることは室
内用途を考慮しても十分な実用性を有する。
【0025】光触媒活性を有する構造体表面の少なくと
も一部に積層される金属化合物の金属種としては、ケイ
素、ジルコニウム、アルミニウム、ニオビウム、タンタ
ラム及びゲルマニウムの中から選ばれた一種または二種
以上からなるものを挙げることができる。特に、ケイ
素、ジルコニウム、アルミニウム及びニオビウムは、積
層する膜厚にもよるものの、親水性の発現と光触媒活性
の維持に優れた効果があり好ましい。更に、ジルコニウ
ム、アルミニウム、ニオビウム、タンタラムは屋外環境
下での耐久性の向上と耐薬品性の改善に効果があり、単
独もしくは珪素化合物と組み合わせて使用することによ
り親水性、光触媒活性、耐久性に優れた構造体とするこ
とができる。具体的には、SiとZr、SiとAl、S
iとNb、SiとAlとZr、SiとAlとNbなどを
組み合わせることによって、実施例にも示すように親水
性と耐久性に特に優れたものとすることができる。
【0026】これらの金属化合物は、酸化物の形でも、
水酸化物の形でも、またそれらの混合物の形でも良く、
形態もゾル状のもの、粉末状のものを液中に分散したも
のなど種々の形態のものが使用可能である。また、これ
らの金属化合物を、水もしくは適当な有機溶剤に分散剤
若しくは界面活性剤とともに分散させた液状のものや、
酸若しくはアルカリを微量添加して解膠したものも好ま
しく使用できる。これらの金属種の中には、酸化チタン
もしくはチタニウムの酸化物の粒子が含まれていても良
い。酸化チタンの粉末もしくはゾル粒子の表面が前記の
金属の酸化物、水酸化物またはそれらの混合物で覆われ
ている粒子との混合物も、良好な親水性を示すものとし
て好ましい。
【0027】また、光触媒活性を有する構造体表面の少
なくとも一部に積層する金属化合物として、メトキシ、
エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ基等
のアルコキシ基を有する有機金属化合物を使用すること
もできる。この場合の有機金属化合物はアルコキシ基を
3個以上有しているものが好ましい。塗布する膜厚にも
よるものの100nm以下の積層膜厚では、塗布乾燥ま
たは塗布乾燥後熱分解することにより、容易にアルコキ
シ基の大部分は加水分解または熱分解揮散してしまうた
め、残存する有機炭素含有成分の量は極めて微量とな
る。
【0028】使用することのできる金属化合物として
は、ケイ素化合物として、テトラメトキシシラン、テト
ラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライ
ソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン、メチ
ルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メ
チルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシ
シラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキ
シシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイ
ソプロポキシシラン等のモノアルキルトリアルコキシシ
ラン、などが好ましく使用できる。また、これらの珪素
化合物またはこれらの珪素化合物の重縮合反応生成物と
シリカゾルやコロイダルシリカを組み合わせたものも好
ましく使用できる。ジルコニウム化合物として、テトラ
メトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、
テトラプロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシ
ジルコニウム等のテトラアルコキシジルコニウム、アル
ミニウム化合物として、トリメトキシアルミニウム、ト
リエトキシアルミニウム、トリプロポキシアルミニウ
ム、トリイソプロポキシアルミニウム等のトリアルコキ
シアルミニウム、ニオビウム及びタンタラムの化合物と
して、ペンタメトキシニオビウム、ペンタエトキシニオ
ビウム、ペンタブトキシニオビウム等のペンタアルコキ
シニオビウム、ペンタメトキシタンタラム、ペンタエト
キシタンタラム等のペンタアルコキシタンタラム等を好
ましく例示することができる。また、これらの有機金属
化合物2種以上を組み合わせて得られる溶液を使用して
もよい。
【0029】また、前記式(1)で表される金属化合物
を希鉱酸または希アルカリ成分の存在下に部分加水分解
させて得られる生成物や、式(1)で表される金属化合
物の重縮合反応生成物、式(1)で表される金属化合物
と炭素数1〜10のメタノール、エタノール、プロパノ
ール、ブタノール、2−エチルヘキサノールなどのアル
コール、同じく炭素数1〜10の酢酸、プロピオン酸、
酪酸などのカルボン酸、同じく炭素数1〜10の酢酸メ
チル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、プロピ
オン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのカルボン酸エ
ステル、または炭素数1〜10のアセチルアセトン、ト
リエタノールアミン、エチレングリコール、オクチレン
グリコール、乳酸などのキレート形成化合物との反応生
成物、又はそれらの1種または2種以上を組み合わせて
得られる混合物からなる溶液を使用することもできる。
【0030】これらの有機金属化合物の溶液の中には、
酸化チタンもしくはチタニウムの酸化物の粉末もしくは
ゾル粒子が含まれていても良く、酸化チタン粉末もしく
はゾル粒子の表面が前記の金属化合物や有機金属化合物
またはそれらの混合物で覆われているものを使用しても
良好な親水性を示すものが得られる。
【0031】これらの金属化合物を構造体表面に塗布す
る方法としては、広く知られているディップ法、スピン
コート法、ロールコート法、フローコート法、スプレー
法、スクリーン印刷法、バーコート法など本発明の目的
とする薄膜を形成できるものであればいずれも好ましく
使用できる。
【0032】光触媒活性を有する構造体表面の少なくと
も一部に、前述の金属化合物の薄膜を積層することによ
り優れた親水性を有する構造体が得られるのは以下の理
由によると推定される。即ち、光触媒作用によって生成
した正孔と電子は通常は大部分が再結合して消失してし
まうが、その中の一部は表面に拡散して近傍の酸素や水
分などと反応し活性酸素種を生成する。更に、こうして
できた活性酸素は、最も近傍に存在する反応対象である
金属化合物に結合している有機残基や吸着されている水
やガス成分などと反応して金属化合物表面に多くのOH
基を生成させる。こうして表面に生成したOH基が大気
中の水分を捕捉し、多数の水分子を構造体表面に物理吸
着させて吸着水の層を生成させる。このようにして構造
体表面の少なくとも一部に物理吸着した水分が、親水性
発現の有力な原因の一つと推定される。
【0033】光触媒活性を有する構造体表面に形成する
金属化合物の薄膜は、構造体表面を完全に覆う必要はな
く、光触媒活性が大きく損なわれない程度に薄い方が好
ましく、膜厚や成分によっては部分的に覆われている方
が好ましい。
【0034】また、光触媒活性を有する構造体表面の少
なくとも一部に積層する金属化合物に、該金属化合物に
対して20mol%以下の酸化リンまたはリン化合物を
添加することにより、優れた光触媒活性と高い親水性を
あわせもつ構造体とすることができる。このリン化合物
は、金属化合物や有機金属化合物の塗布乾燥時、或いは
それらの塗布熱分解時に酸化リンとなるものであればど
のようなものでも使用可能である。例えば、リン化合物
として、P2 5 、H3 PO4 、P(OEt)3 、PO
(OEt)3 、PO(OMe)3 などを挙げることがで
きる。
【0035】本発明の光触媒構造体の光触媒としては、
チタニウムアルコキシド、該チタニウムアルコキシドの
部分加水分解生成物、該チタニウムアルコキシドのアル
コキシ基置換反応生成物、該チタニウムアルコキシドの
キレート形成反応生成物、またはそれらの混合物からな
るチタニウム化合物の溶液を塗布、熱分解したものを使
用することができる。また、このチタニウム化合物を主
成分として含む溶液に、該チタニウム化合物溶液中のT
i原子に対して0〜120原子%のケイ素、ジルコニウ
ム、アルミニウム、ニオビウム、タンタラム及びゲルマ
ニウムからなる群から選ばれる一種または二種以上の金
属の酸化物、水酸化物の1種または2種以上の混合物か
らなる液を加えた混合液を使用し、塗布、熱分解して
も、本発明の実施に適した光触媒活性を有する優れた親
水性の機能を有する薄膜を基材の上に形成することがで
きる。
【0036】このチタニウム化合物に添加する金属化合
物としては、特にケイ素、ジルコニウム、アルミニウム
の化合物が好ましく、中でもシリカゾルやコロイダルシ
リカ、有機シリコン化合物などのケイ素化合物が親水性
に優れた構造体の形成に特に適している。更に、このチ
タニウム化合物を主成分として含む溶液に、該チタニウ
ム化合物溶液中のTi原子に対して20原子%以下の酸
化リンまたはリン化合物を添加しても、優れた光触媒活
性と親水性を兼ね備えた緻密で高硬度の薄膜構造体が得
られる。リン化合物としては、前述のP2 5 、H3
4 、P(OEt)3 、PO(OEt)3 、PO(OM
e)3 などを例示することができるが、チタニウム化合
物の溶液の塗布熱分解時に酸化リンとなるものであれ
ば、どのようなものでも使用可能である。
【0037】このチタニウム化合物の溶液の塗布方法と
しては、公知の技術、すなわち、ディップ法、スピンコ
ート法、ロールコート法、フローコート法、スプレー
法、スクリーン印刷法、バーコート法など本発明の目的
とする光触媒活性を有する薄膜を形成できるものであれ
ばいずれも使用できる。また、このチタニウム化合物を
含む液の塗布に先だって、特開平8−108075号公
報に記載されているように、基材表面に、シリコンアル
コキシド等の有機シリコン化合物を主成分とする溶液を
塗布熱分解したり、スパッタ法などの物理的方法やCV
Dなどの化学的方法により、シリカ等を主成分とする薄
膜を中間層として形成させることもできる。これらの場
合は、基材からの光触媒作用に有害な成分の拡散を防止
できるため、より光触媒活性の高い薄膜を得ることがで
きる。この中間層にも、前述のチタニウム化合物の場合
と同様、該中間層に含まれる金属成分に対して20mo
l%以下の酸化リンまたはリン化合物を添加することに
より、より緻密で硬度の高い優れた光触媒活性と親水性
を兼ね備えた構造体が得られるので好ましい。好ましい
リン化合物としては、P2 5 、H3 PO4 、P(OE
t)3 、PO(OEt)3 、PO(OMe)3 などがあ
るが、中間層の成膜時または塗布熱分解時に酸化リンと
なるものであればどのようなものでも使用可能である。
【0038】本発明において、チタニウム化合物の塗布
熱分解によって得られる光触媒薄膜の厚さは、0.01
μm〜10μmが望ましい。0.01μm以下では光触
媒活性が殆どないため親水性が発現しにくく、10μm
以上では特性や機能的には問題ないものの成膜コストが
高くなり過ぎたり、薄膜の透明性が失われる場合もあっ
て透明性を必要とされる用途では好ましくない場合が多
いので、実用上10μm以下が望ましい。
【0039】本発明において、光触媒活性を有する薄膜
として、光触媒粒子と金属の酸化物または水酸化物のゲ
ルを含む光触媒粒子複合体からなる薄膜を使用すること
もできる。また、この場合、光触媒活性を有する構造体
表面の少なくとも一部に、Si、Zr、Al、Nb、T
a及びGeの中から選ばれた1種または2種以上の金属
化合物の薄膜を好ましくは0.2〜100nm、更に好
ましくは0.2〜10nmの膜厚で積層することによ
り、高い光触媒活性と親水性を併せ持つ構造体とするこ
とができる。特に、金属化合物が珪素化合物の場合、そ
の膜厚は0.2〜10nmが好ましい。この光触媒粒子
複合体に使用される金属の酸化物または水酸化物のゲル
としては、Si、Al、Zr、Nb、Ta、W、Snか
らなる群から選ばれた1種または2種以上の金属からな
る酸化物もしくは水酸化物のゲルを好ましく例示するこ
とができる。特に、光触媒活性と親水性および耐久性を
考慮すれば、金属元素の種類として、Si、Si−A
l、Si−Zr、Si−Nb、Si−Sn、Si−Al
−Zr、Si−Al−Nb、Si−Al−Sn、Si−
Zr−Nb、Si−Zr−Snなどの組み合わせが好ま
しく例示することができる。
【0040】この金属の酸化物もしくは水酸化物のゲル
の光触媒粒子複合体中の含有量は、光触媒粒子複合体全
体に対して25〜95重量%が好ましい。25重量%以
下では、下地基材との接着が不十分となり、95重量%
以上では、光触媒活性が不十分となる。また、金属の酸
化物もしくは水酸化物のゲルの比表面積は、100m2
/g以上であることが好ましく、100m2 /g以上で
あると、接着性はより強固になり、触媒活性も向上す
る。
【0041】金属の酸化物もしくは水酸化物のゲルの実
際の使用にあたっては、これらを混合したゲルでも、共
沈法などの方法で作られる複合酸化物ゲルを使用しても
良い。光触媒と混合するためには、ゲルとなる前のゾル
の状態で混合するか、もしくは、ゾルを調製する前の原
料の段階で混合するのが望ましい。ゾルを調製する方法
には、金属塩を加水分解する方法、中和分解する方法、
イオン交換する方法、金属アルコキシドを加水分解する
方法等があるが、ゲルの中に光触媒粉末が均一に分散さ
れた状態で得られるものであればいずれの方法も使用可
能である。但し、ゲル中に多量の不純物が存在する場合
は、光触媒の接着性や触媒活性に悪影響を与える。特
に、ゲルの中に有機物が5重量%以上存在すると、初期
の光触媒活性が低下し親水性を発現させるためには多量
の光を照射する必要が出てくる。
【0042】この場合、ゲルの中に残存する有機物が5
重量%以下になるように、テトラアルコキシシランやモ
ノアルキルトリアルコキシシランなどの有機シリコン化
合物を添加することによって、ゲルとなる前のゾル液の
安定性を高めたり、ゲルの耐久性を高めたりすることが
できる。また、光触媒粒子複合体の塗布乾燥温度で乾燥
した場合に、残存する光触媒分解性の有機物が5重量%
以下になるように、テトラアルコキシシランやモノアル
キルトリアルコキシシランおよびそれらの部分加水分解
重縮合生成物であるポリシロキサン類を単独もしくは前
記金属の酸化物または水酸化物のゾル液と混合して、乾
燥後の光触媒粒子複合体中に添加することもできる。こ
の場合の光触媒活性は、前記の金属の酸化物もしくは水
酸化物ゲルのみを添加した場合より劣るものの、基材に
よっては基材への接着性、耐久性、硬度、親水性などは
優れる場合がある。なお、アルコキシシラン類やポリシ
ロキサン類の添加量が多いと、光触媒粒子はほぼ完全に
表面を覆われるため光触媒活性は一見殆ど消失してしま
うように見えるが、例えばPCT/WO96/1493
2号公報で開示されているように、電子捕捉性の金属を
光触媒近傍に担持すれば、光触媒活性を高めることがで
きるため、結果として光触媒活性を兼ね備えた親水性構
造体とすることができる。
【0043】光触媒粒子複合体中の光触媒としては、T
iO2 、ZnO、SrTiO3 、CdS、GaP、In
P、GaAs、BaTiO3 、KNbO3 、Fe
2 3 、Ta2 5 、WO3 、SnO2 、Bi2 3
NiO、CuO、SiC、SiO2、MoS2 、InP
b、RuO2 、CeO2 など、および、これらの光触媒
にPt、Rh、Ru、Nb、Cu、Sn、Niなどの金
属及びその酸化物を添加したものが使用できる。特に酸
化チタンを主成分とするものを光触媒として使用したも
のは、光触媒活性および親水性の発現とその維持性、耐
久性などの点で優れており好ましい。光触媒粒子複合体
中の光触媒の含有量は、多量なほど触媒活性が高くなる
が、下地との接着性の点から5〜75重量%が好まし
い。
【0044】光触媒粒子複合体を基材の上に形成する方
法としては、金属酸化物ゾルもしくは金属水酸化物ゾル
溶液中に光触媒を分散した懸濁液をディツプ法、スピン
コート法、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、ロール
コート法、フローコート法などで塗布する方法等があ
る。また、金属酸化物ゾルもしくは金属水酸化物ゾルの
前駆体溶液の状態で光触媒を分散し、塗布時に加水分解
や中和分解してゾル化もしくはゲル化させることもでき
る。ゾルを使用する場合には、安定化のために、酸やア
ルカリの解膠剤等が添加することもできる。また、ゾル
懸濁液中に光触媒に対し、5重量%以下の界面活性剤や
シランカップリング剤などを添加して、接着性や操作性
を良くすることもできる。光触媒粒子複合体形成時の乾
燥温度としては、基体の材質によっても異なるが、一般
的には、50℃以上300℃以下である。
【0045】光触媒粒子複合体の厚みは、一般に厚い方
が光触媒活性は高いが、好ましい厚さは、0.05μm
〜10μmである。厚さが10μm以上になると、光触
媒活性はほとんど変わらなくなる。一方、厚さが0.0
5μm以下になると透光性は良くなるものの、光触媒が
利用している紫外線をも透過してしまうため高い触媒活
性は望めなくなる。光触媒粒子複合体の厚さを0.05
μm以上5μm以下にし、しかも、結晶粒子径が40n
m以下の光触媒粒子および比表面積100m2/g以上
の金属酸化物ゲルもしくは金属水酸化物ゲルを用いる場
合には、光触媒粒子複合体の波長550nmの全光線透
過率は70%以上とすることができる。波長550nm
の全光線透過率が、70%以上になるようにした透明基
材は、透過した可視光線を照明などとして利用でき、ま
た、基材が不透明な場合でも基体に印刷された模様や柄
などを損なう事がないので装飾性の上でも特に有用であ
る。
【0046】また、この光触媒粒子複合体と下地の基材
との間に、PCT/WO95/11751号公報に開示
されているアルコキシシランやモノアルキルトリアルコ
キシシラン、またはそれらのポリシロキサン類、PCT
/WO96/14932号公報に開示されているメチル
トリメトキシシラン、シリカゾル+メチルトリメトキシ
シラン、シロキサン樹脂、アクリルシリコン樹脂、また
はそれらの混合物などを、中間層として設けることによ
り光触媒層と基材との接着性を向上させることもでき
る。この場合、基材への塗布回数は、中間層、光触媒粒
子複合体層、最表面の親水化促進薄膜層の計3回必要で
あるが、光触媒粒子複合体が基材に馴染みにくい場合で
あっても、光触媒活性、親水性、接着性、耐久性が共に
優れた積層構造体を設けることができるためその利点は
非常に大きい。
【0047】本発明に関わる光触媒活性を有する親水性
構造体は、その親水性と光触媒活性を利用して種々の防
汚、防曇、抗菌材料として応用可能である。室内用途で
は、窓硝子、ショーケースガラス、浴室・洗面所などの
床壁、鏡、ユニットバス、システムキッチンの流し台、
病院・各種保健施設のトイレ、などの比較的湿度の高
い、水分と接触する機会が多い箇所の素材への適用が適
している。また、それ以外の箇所でも、拭き掃除が容易
になったり汚れがつきにくい利点があることや、下地の
基材の種類がどのようなものであってもこの親水性構造
体は得られるため、汎用樹脂が表面に存在する内装パネ
ルや建材などにも幅広く応用することができる。さら
に、耐久性も高く長期間親水性を維持できるため、屋外
用途でも一般建築物の窓硝子、自動車・電車・船舶・航
空機などの輸送機器の窓硝子、屋外に設置された鏡、一
般建材として使用されている外装パネル、道路照明灯や
照明器具、道路標識、高速道路・新幹線などの遮音壁、
ガードレール、各種看板、ネオンサインなどにも幅広く
応用することができる。
【0048】
【実施例】以下実施例により本発明をさらに具体的に説
明する。
【0049】<光触媒活性の評価> 1)光線透過率 透明な基材に対して、光触媒を塗布する前の基材をリフ
ァレンスとして、光触媒を塗布した基材の波長550n
mの全光線透過率を自記分光光度計(日立製作所製U−
4000型)で測定した。
【0050】2)油脂分解活性(防汚特性) 5cm×5cm角に切りだした試料、もしくは光触媒塗
布面積がほぼ25cm2 になるよう切り出した試料の表
面に試薬一級のオレイン酸トリグリセリド(東京化成
(株)製)をティッシュペーパーを使用して塗布量が
0. 1mg/cm2になるよう塗布し調製した試料に、
6Wブラックライトブルー蛍光灯5本を並べてUV−A
領域の紫外線強度が1mW/cm2 になるよう試料との
距離を調節した恒温恒湿槽(30℃−50%RH)中で
光照射し、照射中の重量変化を0.1mgまで測定可能
な精密天秤で秤量して記録した。同じように油をつけた
同一試料に光を遮光して同一環境下に置いたものの重量
変化をブランク値として差し引いて計算し、24時間後
における塗布サラダ油の重量残存量を求め、以下の評価
基準により評価した。 24時間光照射後のサラダ油残存率 評価 20%以下 A 40〜20% B 60〜40% C 80〜60% D 80%以上 E
【0051】3)抗菌性評価5cm角に切りだした試料
もしくは直径50〜70mmΦの光触媒を担持した試料
を80%エタノールで消毒し150℃で乾燥して滅菌
後、予め前培養と希釈を行って菌濃度を105個/ml
に調節しておいた大腸菌の菌液を0.2ml試料面に滴
下しインキュベーター内にセットする。白色蛍光灯(1
5W×2本、光源との距離10cm)の光を照射したも
の、および光照射を全く行わなかったもの、の2種の光
照射条件で各々4個の試料をセットする。所定時間後
(1、2、3、4時間後)に試料を取り出し、滅菌生理
食塩水に浸した滅菌ガーゼで試料上の菌液を拭き取る。
拭き取った滅菌ガーゼを10mlの滅菌生理食塩水に入
れ十分撹拌する。この上澄み菌液をオートクレーブ滅菌
した95mmφのシャーレ寒天培地に植え付け、36℃
24時間培養後大腸菌のコロニー数を計数する。インキ
ュベーターに入れるまでの操作を全く同一にした基準菌
数測定用試料を同一の方法により調製し、滅菌生理食塩
水の上澄み液をシャーレ寒天培地に植え付けて24時間
36℃で培養後の大腸菌のコロニー数を計数する。その
数値を基準にして各試料の所定時間後における大腸菌の
生存率を算出し評価した。
【0052】4)付着性評価 JIS K 5400に規定する碁盤目テープ法試験に
より、付着性の評価を行った。切り傷の間隔を2mmと
し、ます目の数を25コとした。評価点数は、JIS
K 5400に記載の基準で行った。
【0053】5)耐久性評価 担持した試料にブラックライトにより紫外線強度3mW
/cm2 の光を温度40℃相対湿度90%の恒温恒湿槽
内で1000時間照射後、JIS K 5400に規定
の碁盤目テープ法による付着性を測定し、耐久性の評価
とした。切り傷の間隔は2mmとし、ます目の数は25
ケとした。評価点数は、付着性評価と同じJIS K5
400によった。
【0054】6)親水性の評価 基材表面の親水性の指標としては水の接触角を用いた。
25℃−60%RHの下で2時間放置した基材表面に
0.5μlの蒸留水をマイクロシリンジにより同一温度
湿度の環境下で滴下し、滴下20秒後の接触角を測定し
た。基材の親水化の測定は、15Wブラックライトブル
ー蛍光灯を使用し、UV−A領域の紫外線強度が約0.
1mW/cm2 となるように試料表面との距離を調節し
て光照射し、照射後の接触角の経時変化を6時間、12
時間、24時間時点で測定した。また、紫外線照射によ
り接触角が5度以下に到達したサンプルについては、1
5W白色蛍光灯を使用し、UV−A領域の紫外線強度が
5μW/cm2 となるように試料表面との距離を調節し
て光を連続照射し接触角の経時変化を3日後、7日後に
前記の方法により測定し親水性の維持性の指標とした。
【0055】(実施例1)成膜基板として厚さ1.1m
m、縦100mm、横50mmのソーダライムガラス製
の板を使用し、シリコンアルコキシドを反応させて得ら
れるディップ用有機シリコン溶液(日本曹達(株)製:
商品名アトロンNSi−500)800mlを入れた幅
100mm、奥行き50mm、高さ200mmの容器に
ゆっくりと浸漬し、200mm/minの速度でゆっく
りと引き上げた。これを150℃で乾燥後、500℃で
1時間焼成して透明基板上に膜厚0.11μmの酸化ケ
イ素薄膜を形成した。次に、チタニウムテトライソプロ
ポキシドを反応させて得られるディップ用有機チタン溶
液(日本曹達(株)製:商品名アトロンNTi−50
0)の希釈液800ml中に前記酸化ケイ素薄膜を成膜
したガラス基板をゆっくりと浸漬して、200mm/m
inの速度で引き上げた。これを120℃で乾燥後、5
00℃で1時間焼成して酸化チタン薄膜を形成した。さ
らに、この酸化チタン薄膜上に再度上述の有機シリコン
溶液(NSi−500)を専用希釈溶媒(日本曹達
(株)製:商品名アトロンS)を用いて50倍に希釈し
酸化ケイ素固形分換算で0.1重量%の成膜薬剤とし
た。この溶液800ml中に前記光触媒薄膜を成膜した
ガラス基板をゆっくりと浸漬して、200m m/mi
nの速度で引き上げた。これを150℃で乾燥後、50
0℃で1時間焼成して酸化ケイ素薄膜を形成し親水性構
造体を得た。アトロンNSi−500の溶液をソーダラ
イムガラス基板に同様の方法で塗布焼成し反射干渉法に
より膜厚を測定した所、110nmであったので同程度
の粘度を示す本実施例の塗布液による膜厚を固形分濃度
と表面積から5nmと算出した。
【0056】(実施例2〜3)実施例1において、最表
面に形成する酸化ケイ素成膜用の有機シリコン溶液(N
Siー500)の濃度を表1の膜厚となるように専用希
釈剤(日本曹達(株)製:アトロンS)で調製した他は
実施例1と同様な条件で得られた親水性構造体である。
【0057】(実施例4〜5)実施例1で使用した有機
チタン溶液を3倍(実施例4)または10倍(実施例
5)に希釈して酸化チタン薄膜を形成させ、更に最表面
に形成する酸化珪素薄膜を固形分換算で0.02重量%
(実施例4)または0.004重量%(実施例5)の有
機シリコン溶液に5重量%の五酸化リンのエタノール溶
液を酸化珪素換算で15mol%になるよう添加して得
られる溶液を使用して、酸化チタンと最表面に形成する
酸化珪素の膜厚の異なる構造体とした他は、実施例1と
同様の方法により作成した親水性構造体である。
【0058】(実施例6〜7)実施例1において、最表
面に形成する薄膜を有機ジルコニウム溶液(日本曹達
(株):商品名アトロン NZr)を酢酸ブチルで希釈
したものを使用して、表1の膜厚となるように調製した
他は実施例1と同様な条件を用いて得られた親水性構造
体である。
【0059】(実施例8)実施例1において、最表面に
形成する薄膜をアルミニウムイソプロポキシドをイソプ
ロピルアルコールに溶解したものを使用して、表1の膜
厚となるように調製した他は実施例1と同様な条件で得
られた親水性構造体である。
【0060】(実施例9)実施例1において、光触媒層
の塗布液として有機チタン溶液(NTi−500)をそ
のまを使用し、表1の膜厚になるようディップ乾燥焼成
を12回繰り返して行ったものである。最表面に形成す
る薄膜にはニオビウムペンタブトキシドをn−ブタノー
ルに溶解したものを使用して、表1の膜厚となるように
調製した他は実施例1と同様な条件で得られた親水性構
造体である。
【0061】(実施例10)実施例1において、最表面
に形成する薄膜を有機タンタラム溶液(日本曹達
(株):商品名アトロン NTa−700)を専用希釈
溶媒(日本曹達(株)商品名 アトロンS)で希釈した
ものを使用して、表1の膜厚となるように調製した他は
実施例1と同様な条件で得られた親水性構造体である。
【0062】(実施例11〜14)実施例1において、
最表面に形成する金属化合物薄膜を表1に示した複合金
属酸化物の組成とするため、上記実施例6〜10で使用
した有機金属溶液を所定の濃度に希釈した後に混合し成
膜用の溶液としたこと以外は実施例1と同様な条件を用
いて得られた親水性構造体である。
【0063】(比較例1)実施例1において最上層の酸
化ケイ素膜を成膜していない以外は実施例1と同一の方
法により得られた親水性構造体である。
【0064】(比較例2)実施例1において最上層を形
成する酸化ケイ素の膜厚が表1の膜厚となるように調製
した以外は実施例1と同様な条件で成膜した親水性構造
体である。
【0065】(実施例15〜17)実施例1において、
光触媒層の形成に、ディップ用有機チタン溶液(日本曹
達(株)製:商品名アトロンNTi−500)と有機シ
リコン溶液(日本曹達(株)製:商品名アトロンNSi
−500)とを所定濃度に希釈した溶液を用い、混合比
を表1に示す割合で混合し膜厚が表1に示す値になるよ
う塗布液の濃度を調整して成膜した親水性構造体であ
る。
【0066】(実施例18)実施例15において、光触
媒薄膜を形成する金属化合物を、ディップ用有機チタン
溶液(日本曹達(株)製:商品名アトロンNTi−50
0)と有機ジルコニウム溶液(日本曹達(株):商品名
アトロンNZr)とを所定濃度に希釈した溶液を表1の
割合で混合して使用した他は実施例15と同様の方法を
用いて成膜した親水性構造体である。
【0067】(実施例19)実施例15において、光触
媒薄膜を形成する金属化合物を、ディップ用有機チタン
溶液(日本曹達(株)製:商品名アトロンNTi−50
0)とアルミニウムイソプロポキシドをイソプロピルア
ルコールに溶解した溶液とを所定濃度に希釈した溶液を
表1の割合で混合して使用した他は実施例15と同様の
方法を用いて成膜した親水性構造体である。
【0068】(実施例20)実施例15において、光触
媒薄膜を形成する金属化合物を、ディップ用有機チタン
溶液(日本曹達(株)製:商品名アトロンNTi−50
0)とニオビウムペンタブトキシドをn−ブタノールに
溶解した溶液とを所定濃度に希釈した溶液を表1の割合
で混合して使用した他は実施例15と同様の方法を用い
て成膜した親水性構造体である。
【0069】(実施例21)実施例15において、光触
媒薄膜を形成する金属化合物物を、ディップ用有機チタ
ン溶液(日本曹達(株)製:商品名アトロンNTi−5
00)と有機タンタラム溶液(日本曹達(株):商品名
アトロンNTa−700)を専用希釈溶媒(日本曹達
(株)商品名アトロンS)で溶解した混合溶液を表1の
割合で混合した他は実施例15と同様の方法を用いて成
膜した親水性構造体である。
【0070】(実施例22)実施例15で得られた光触
媒薄膜上に、シリコンテトラエトキシドを酸化珪素分と
して10wt%含むエタノール溶液と五酸化リンの0.
5wt%エタノール溶液とを等量混合し、酸化珪素換算
で5mol%含有する酸化リンを含む溶液を調製した。
この溶液を希釈し、表1に示す酸化珪素からなる膜厚と
なるように濃度を調整して実施例1と同様の方法で成膜
した親水性構造体である。
【0071】(比較例3)実施例15において、光触媒
層の形成の為の溶液の混合比を酸化チタンと酸化ケイ素
のmol比で表1の割合に調製した他は実施例15と同
様の方法を用いて成膜された親水性構造体である。以上
の実施例1から22と比較例1から3について、各試料
の光触媒層の組成、膜厚と親水化促進層の組成、膜厚を
表1に、各々の初期接触角、紫外線照射後の到達接触
角、親水性維持紫外線量、蛍光灯下での接触角の値を表
3に、光触媒活性(油分解)、全光線透過率、付着性、
耐久性を表5にまとめて示した。実施例1から22は、
光触媒薄膜に焼成した酸化チタン膜を使用したものであ
るが、光触媒層表面の少なくとも一部にシリカを中心と
する金属酸化物の薄膜を設けることにより、0.4〜4
J/cm2 程度の紫外線光量で水の接触角が5度以下と
なり、かつ7日間蛍光灯照射下でも接触角が10度以下
に維持されているのに対して、光触媒表面に金属酸化物
の薄膜を設けない比較例1では7日後には接触角が25
度まで上昇して構造体表面の親水性が失われているのが
分かる。また、比較例2に示すように光触媒の表面に金
属酸化物の薄膜を設けても、計算上の膜厚が150nm
と厚い場合は光触媒層によって励起された電荷が薄膜の
最表面にOH基を形成させることが困難となり、0.1
mW/cm2 程度の紫外線を6時間照射する程度では接
触角の低下は殆ど認められず構造体表面の水の接触角を
低下させるためには、より強い紫外線を長時間照射する
必要があった。また、比較例3に示したように光触媒層
の薄膜形成用の薬剤として、Ti/Siの比率を50/
50にした場合は殆ど水の接触角の低下は認められなか
った。また実施例1から22に示した本発明によるもの
は、表5にも示されている通り優れた親水性と光触媒分
解機能を併せ持つともに、透光性にも優れかつ耐久性の
高いものであることが分かる。
【0072】(実施例23)基材材料としては厚さ50
μm、縦100mm、横50mmのプライマー処理した
ポリエステルフィルム(東洋紡(株)製コスモシャイン
A4100)を用い、アクリルシリコン樹脂を酢酸エチ
ルとイソプロピルアルコールの混合溶媒で固形分含有量
10重量%に調製したものに1重量%の界面活性剤を加
えた溶液を接着層形成溶液とした。この溶液800ml
を入れた幅100mm、奥行き50mm、高さ200m
mの容器に前記基材をゆっくりと浸漬し200mm/m
inの速度で引き上げ100℃で20分乾燥した。さら
に光触媒層にはpH調製したシリカゾル溶液と硝酸酸性
チタニアゾルとを混合分散させ、水・エタノール系の混
合溶媒で固形分含有量10重量%に希釈し固形分に対し
て0.5重量%の界面活性剤を添加して光触媒層形成溶
液とした。乾燥光触媒層中のシリカゲルは50重量%に
なるようにした。この溶液800mlを入れた幅100
mm、奥行き50 mm、高さ200mmの容器に前記
接着層を塗布した基材をゆっくりと浸漬し、200mm
/minの速度で引き上げ100℃で20分乾燥して光
触媒薄膜を得た。更に、この光触媒薄膜を、有機シリコ
ン溶液(日本曹達(株)製アトロン NSi−500)
を専用希釈溶剤アトロンSで希釈した溶液800mlを
入れた幅100mm、奥行き50mm、高さ200mm
の容器に、ゆっくりと浸漬し200mm/minの速度
で引き上げた。これを120℃で30分乾燥して実施例
21に示す親水性構造体を得た。
【0073】(実施例24〜26)実施例23におい
て、最表面に形成する酸化ケイ素薄膜の膜厚を表1に示
した膜厚になるよう専用希釈液(日本曹達(株)製アト
ロンS)で希釈した他は実施例23と同様な方法で成膜
した親水性構造体である。
【0074】(実施例27〜28)実施例23において
最表面に形成する親水化促進のための薄膜を、有機チタ
ン溶液(日本曹達(株):商品名 アトロンNTiー5
00)とテトラエトキシシランのエタノール溶液を混合
して使用し、表2に示す混合比でチタンとケイ素の化合
物の複合薄膜にした他は実施例23と同様な方法で処理
した親水性構造体である。
【0075】(実施例29〜30)実施例23において
最表面に形成する親水化促進のための薄膜を、有機ジル
コニウム溶液(日本曹達(株):商品名アトロン NZ
r)を有機溶剤で希釈した溶液とテトラエトキシシラン
のエタノール溶液を混合し、表2に示す混合比でジルコ
ニウムとケイ素の化合物の複合薄膜にした他は実施例2
3と同様の方法により得られた親水性構造体である。
【0076】(実施例31〜32)実施例23において
最表面に形成する親水化促進のための薄膜を、アルミニ
ウムイソプロポキシドをイソプロピルアルコールに溶解
した溶液とテトラエトキシシランのエタノール溶液を混
合し、表2に示す混合比でアルミニウムとケイ素の化合
物の複合薄膜にした他は実施例23と同様の方法により
得られた親水性構造体である。
【0077】(実施例33)実施例23において、基材
として厚さ1.1mmのソーダライムガラス基板を使用
し、光触媒層の塗布液の固形分含有量を2重量%に希釈
して使用した他は実施例23と同様の方法と薬剤により
作成した親水性構造体である。
【0078】(実施例34)実施例33の光触媒層中の
シリカゾルに変えて、ジルコニウムテトラブトキシド
(日本曹達(株)製TBZR)をエタノール溶液中で加
水分解し150℃で乾燥後300℃で加熱処理した後、
稀硝酸水溶液で解膠したジルコニアゾルとpH2に調節
したシリカゾルを使用し表2に示した割合になるよう混
合して固形分濃度10重量%に調整して使用し、最表面
に形成する親水化促進のための薄膜としてアルミニウム
イソプロポキシドをイソプロピルアルコールに溶解した
溶液とテトラエトキシシランのエタノール溶液を混合
し、表2に示す混合比でアルミニウムとケイ素の化合物
の複合薄膜にした他は実施例33と同一の方法により得
られた親水性構造体である。
【0079】(実施例35)実施例33の光触媒層中の
シリカゾルに変えて、アルミナゾルと実施例32に使用
したシリカゾルを使用し表2に示した割合になるよう混
合して使用し、最表面に形成する親水化促進のための薄
膜を、アルミニウムイソプロポキシドをイソプロピルア
ルコールに溶解した溶液とテトラエトキシシランのエタ
ノール溶液を混合し、表2に示す混合比でアルミニウム
とケイ素の化合物の複合薄膜にした他は実施例33と同
一の方法により得られた親水性構造体である。
【0080】(実施例36)実施例33の光触媒層中の
シリカゾルに変えて、CBMM社製蓚酸ニオブ水溶液を
10%アンモニア水で中和し、150℃で乾燥後稀硝酸
水溶液で解膠したニオビアゾルを使用した他は実施例3
3と同一の原料と方法により得られた親水性構造体であ
る。
【0081】(実施例37)実施例33で使用したチタ
ニアゾルを0.5%(固形分換算の対酸化チタン重量百
分率)のテトラエトキシシランで表面処理したチタニア
ゾルを固形分濃度16重量%に調整した塗布液を使用し
た以外は実施例33と同一の方法により得られた親水性
構造体である。
【0082】(実施例38)実施例33で使用したシリ
カゾルを20%(固形分換算の対酸化珪素重量百分率)
のメチルトリメトキシシランで表面処理したシリカゾル
を使用した以外は実施例33と同一の方法により得られ
た親水性構造体である。
【0083】(実施例39〜40)実施例33において
光触媒を形成するチタニアゾルとシリカゾルの混合比を
表2に示す割合に変え、固形分濃度10重量%の塗布液
を使用して実施例39では8回繰り返して、また実施例
40では1回のディップ乾燥を行った他は実施例33と
同一の方法により得られた親水性構造体である。
【0084】(実施例41)実施例33において光触媒
を形成するチタニアゾルとシリカゾルの混合比を表2に
示す割合に変え、固形分濃度10重量%の塗布液を使用
して12回繰り返してディップ乾燥を行った他は実施例
33と同一の方法により得られた親水性構造体である。
Tiに対するSiの比率が高いため、初期親水化は0.
1mW/cm2 −24Hrの紫外線照射では不十分だっ
たので、更に3mW/cm2 −10Hr紫外線を照射し
た。
【0085】(実施例42)実施例33において光触媒
を形成する酸化チタンと酸化ケイ素の混合比を10/9
0に変え、かつ最表面に形成する有機金属化合物の薄膜
を実施例20に示した方法と薬剤により酸化リンを含む
シリコンテトラエトキシドのエタノール溶液を使用して
形成し得られた親水性構造体である。Tiに対するSi
の比率が高いため、初期親水化は0.1mW/cm2
24Hrの紫外線照射では不十分だったので、更に3m
W/cm2 −10時間の紫外線照射により初期接触角を
5度以下とした。
【0086】(実施例43)実施例33で使用したシリ
カゾルの1部を、ジルコニウムテトラブトキシド(日本
曹達(株)製TBZR)をエタノール溶液中で加水分解
し、150℃で乾燥後300℃で加熱処理した後、稀硝
酸水溶液で解膠したジルコニアゾルを使用し、光触媒層
中の固形分の比率を表2に示す割合に変えた他は実施例
33と同一の方法により得られた親水性構造体である。
【0087】(実施例44)実施例33で使用したシリ
カゾルの1部を、アルミナゾルとし、光触媒層中の固形
分の比率を表2に示す割合に変えた他は実施例33と同
一の方法により得られた親水性構造体である。
【0088】(実施例45)実施例33で使用したシリ
カゾルの1部を、CBMM社製蓚酸ニオブ水溶液を10
%アンモニア水で中和し、150℃で乾燥後、稀硝酸水
溶液で解膠したものとし、光触媒中の固形分の比率を表
2に示す割合に変えた他は実施例33と同一の方法によ
り得られた親水性構造体である。
【0089】(比較例4)実施例23において、光触媒
層の塗布液を5回繰り返してディツプ乾燥し、最表面層
に形成される酸化ケイ素薄膜を成膜しないで試料とした
他は実施例23と同一の方法により得られた親水性構造
体である。
【0090】(比較例5)実施例23において最表面層
に形成される酸化ケイ素薄膜の膜厚を表2に様になるよ
うに成膜溶液を調製した他は実施例23と同一の方法に
より得られた親水性構造体である。
【0091】(比較例6)実施例33において形成され
る光触媒層の酸化チタンと酸化ケイ素の比を表2に示し
た比率にした他は実施例33と同一の方法により得られ
た親水性構造体である。
【0092】以上の実施例23から45と、比較例4か
ら6までの各試料の光触媒層の組成、膜厚と親水化促進
層の組成、膜厚を表2に、各々の初期接触角、紫外線照
射後の到達接触角、親水性維持紫外線量、蛍光灯下での
接触角の値を表4に、光触媒活性(油分解)、全光線透
過率、付着性、耐久性を表6にまとめて示した。実施例
23から45は、光触媒薄膜に酸化チタン光触媒ゾルと
金属の酸化物ゾルを使用したもので乾燥後には光触媒粒
子と金属酸化物ゲルを形成するものであるが、該光触媒
層表面の少なくとも一部にシリカを中心とする金属酸化
物の薄膜を設けることにより、0.4〜9J/cm2
度の紫外線光量で水の接触角が5度以下となり、かつ7
日間蛍光灯照射下でも接触角が10度以下に維持されて
いるのに対して、光触媒表面に金属酸化物の薄膜を設け
ない比較例5では7日後には接触角が17度まで上昇し
て構造体表面の親水性が低下しているのが分かる。
【0093】また、比較例5に示すように光触媒の表面
に金属酸化物の薄膜を設けても、膜厚が160nmと厚
い場合は、光触媒層によって励起された電荷が薄膜の最
表面にOH基を形成させることが困難となり、0.1m
W/cm2 程度の紫外線を6時間照射しても接触角の低
下は殆ど認められず、3mW/cm2 −10時間の紫外
線照射でも構造体表面の水の接触角は10度以下に低下
しなかった。また、比較例6に示したように光触媒層の
薄膜形成用の薬剤としてTi/Siの比率を4/96に
した場合は、殆ど水の接触角の低下は認められなかっ
た。この実施例23から45に示したものでは、先の実
施例1から22と同様優れた親水性と光触媒分解機能を
合わせ持つとともに、透光性と耐久性に優れたものとな
っていることが分かる。
【0094】(実施例46)実施例33で得られた試料
を使用して、抗菌性の評価を前記の方法に基づき行っ
た。その結果、蛍光灯照射下での試料での大腸菌生存率
は、1時間後で95%、2時間後で82%、3時間後で
68%、4時間後で45%であった。一方、光を照射し
ていないブランク試料では、大腸菌の生存率はそれぞ
れ、95%、97%、93%、94%であり、殆ど変化
は認められなかった。
【0095】
【表1】
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
【表4】
【0099】
【表5】
【0100】
【表6】
【0101】
【発明の効果】以上の実施例及び比較例から明らかなよ
うに、本発明による光触媒活性を有する親水性構造体
は、優れた光触媒活性を有し、かつ、高い親水性を示す
ものである。更に室内光程度の微弱な紫外線照射下でも
その親水性を長期間維持できるという、実用上極めて優
れた特性を有している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 早 川 信 福岡県北九州市小倉北区中島二丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 (72)発明者 小 島 栄 一 福岡県北九州市小倉北区中島二丁目1番1 号 東陶機器株式会社内 (72)発明者 深 山 重 道 神奈川県小田原市高田345 日本曹達株式 会社小田原研究所内 (72)発明者 斎 藤 一 徳 神奈川県小田原市高田345 日本曹達株式 会社小田原研究所内 (72)発明者 木 村 信 夫 神奈川県小田原市高田345 日本曹達株式 会社小田原研究所内

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基材表面に光触媒層を有する光触媒構造体
    において、光触媒層表面の少なくとも一部に、0.2〜
    100nmの膜厚の金属化合物の薄膜を有することを特
    徴とする光触媒構造体。
  2. 【請求項2】380nm以下の波長の紫外線を含む光を
    照射した場合に、構造体表面の水の接触角が5度以下で
    ある請求項1に記載の光触媒構造体。
  3. 【請求項3】380nm以下の波長のUV−A領域の紫
    外線を1〜5μW/cm2 含む光を連続照射して、構造
    体表面の水の接触角を10度以下に7日間以上維持する
    ことができる請求項2に記載の光触媒構造体。
  4. 【請求項4】金属化合物の薄膜が、ケイ素、ジルコニウ
    ム、アルミニウム、ニオビウム、タンタラム及びゲルマ
    ニウムからなる群から選ばれる一種若しくは二種以上の
    金属の酸化物、水酸化物又はそれらの混合物からなる薄
    膜である請求項1に記載の光触媒構造体。
  5. 【請求項5】金属化合物の薄膜が、式(I) M(R)x (OR’)n-x ・・・(I) (式中、Mはケイ素、ジルコニウム、アルミニウム、ニ
    オビウム、タンタラム及びゲルマニウムからなる群から
    選ばれる一種の金属を表し、R及びR’は同一または相
    異なって、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基
    又は2−エチルヘキシル基を表し、nは、MがSi、Z
    r及びGeでは4、Alでは3、NbおよびTaでは5
    を示し、xはMがSiのときは0又は1であり、MがS
    i以外のときは0を示す。)で表される金属化合物、式
    (1)で表される金属化合物の部分加水分解生成物、式
    (1)で表される金属化合物の重縮合反応生成物、式
    (1)で表される金属化合物と炭素数1〜10のアルコ
    ール、カルボン酸、カルボン酸エステル若しくはキレー
    ト形成化合物との反応生成物、又はそれらの一種または
    二種以上の混合物からなる溶液を、塗布乾燥又は塗布乾
    燥後熱分解して得られる薄膜である請求項1に記載の光
    触媒構造体。
  6. 【請求項6】金属化合物の薄膜が、珪素、ジルコニウ
    ム、アルミニウム、ニオビウム、タンタラム及びゲルマ
    ニウムからなる群から選ばれる一種または二種以上の金
    属の酸化物、水酸化物若しくはそれらの混合物、及び該
    金属の酸化物、水酸化物若しくはそれらの混合物に対し
    て、20mol%以下の酸化リン又はリン化合物を含む
    ものであることを特徴とする請求項1に記載の光触媒構
    造体。
  7. 【請求項7】金属化合物の薄膜の厚さが、0.2〜10
    nmであることを特徴とする請求項4に記載の光触媒構
    造体。
  8. 【請求項8】光触媒層が、Ti(OR”)4 (式中、
    R”は炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数1〜
    10のアルコキシ置換アルキル基を表す。)で表される
    チタニウムアルコキシド、該チタニウムアルコキシドの
    部分加水分解生成物、該チタニウムアルコキシドのアル
    コキシ基置換反応生成物、該チタニウムアルコキシドの
    キレート形成反応生成物、又はそれらの混合物からなる
    チタニウム化合物の溶液と、該チタニウム化合物溶液中
    のTi原子に対して、0〜120原子%の請求項4から
    6に記載の金属化合物の一種又は二種以上の混合物から
    なる液との混合液を使用して、塗布、熱分解によって形
    成したものである請求項1に記載の光触媒構造体。
  9. 【請求項9】光触媒層の厚さが、0.01〜10μmで
    あることを特徴とする請求項8に記載の光触媒構造体。
  10. 【請求項10】光触媒層が、光触媒を5〜75重量%、
    及びケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、ニオビウ
    ム、タンタラム、タングステン及びスズからなる群から
    選ばれた一種若しくは二種以上の金属の酸化物若しくは
    水酸化物のゲルの一種又は二種以上を25〜95重量%
    含む光触媒粒子複合体である請求項1に記載の光触媒構
    造体。
  11. 【請求項11】光触媒粒子複合体の厚さが、0.05〜
    10μmである請求項10に記載の光触媒構造体。
  12. 【請求項12】光触媒粒子複合体中の光触媒が、酸化チ
    タンを主成分とするものである請求項10に記載の光触
    媒構造体。
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