JP4879839B2 - 光触媒層形成用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、浄水、脱臭、防汚、殺菌、排水処理、藻の成育抑制、及び各種化学反応等に用いられる光触媒層形成用組成物、特に、室温で硬化可能な光触媒層形成用組成物に関する。
従来から、光触媒の作用により抗菌、防黴性や有害物質の分解を意図して、光触媒を担体上に担持させてなる光触媒担持構造体が知られている。
光触媒層は、光触媒層形成用塗布液を担体あるいは接着層表面に印刷法、シート成形法、スプレー吹き付け法、ディップコーティング法、スピンコーティング法等でコートし、乾燥・硬化させることにより形成することができる。乾燥・硬化時の好ましい温度は、担体材質及び接着層中の樹脂材質によっても異なるが、通常50℃〜300℃程度であった。
しかしながら、これまでは、乾燥硬化のために高温での加熱を要するため、工場での製造はできるものの、現場で塗工後手軽に乾燥、硬化させることができなかった。
そこで、常温で硬化することのできる光触媒担持構造体が開発され、例えば、バインダーを使用することにより常温硬化を可能としている。例えば、特許文献1及び2では、バインダーとして、メチル基を含むオルガノモノシラン及びメチル基を含むオルガノシランオリゴマーからなる群から選択された少なくとも1種、並びに、硬化触媒として、酸、アルカリ、亜鉛化合物、チタン化合物及びジルコニウム化合物からなる群から選択された少なくとも1種を含む組成物と光触媒用酸化チタンを含有する塗料を作製して基材上に塗布し、常温で乾燥硬化させることが記載されている。
また、特許文献3には、バインダーとして、コロイダルシリカ、ポリシロキサン、シリカ、チタン、アルミニウムなどの各種金属アルコキシド、アクリル樹脂、アクリル変性樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニール樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素系樹脂、水ガラス、燐酸アルミニウム等を使用することにより、常温硬化させることが記載されている。
しかしながら、これらのバインダーを使用するだけでは、光触媒層として十分とは言えず、さらなる開発が望まれていた。
特開平11−209691号公報 特開2000−63704号公報 特開2002−136869号公報
高温での加熱の必要のない、現場塗工が可能な光触媒層形成用薬剤を提供することである。
本発明者らは、ジルコニウム化合物として酢酸ジルコニウムを使用することにより、室温での塗工が可能となるために現場塗工が可能となることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、
(1)光触媒粒子及び/またはゾル、コロイダルシリカ粒子が分散したシリカゾル、アルミニウム化合物及び酢酸ジルコニウムを含有することを特徴とする光触媒層形成用組成物、
(2)室温で成膜可能な(1)に記載の光触媒層形成用組成物、
(3)前記アルミニウム化合物が、アルミニウムの酸化物、酸化水酸化物、水酸化物、オキシ硝酸塩、オキシ炭酸塩、炭素数1〜4のアルコキシド、及び該アルコキシドの加水分解物からなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする(1)又は(2)に記載の光触媒層形成用組成物、
(4)光触媒層形成用組成物全体に対して、固形分として酸化物換算で、光触媒粒子及び/またはゾルを0.1〜6重量%、コロイダルシリカ粒子が分散したシリカゾルシリカゾルを0.1〜5重量%、酢酸ジルコニウムを0.1〜5重量%及びアルミニウム化合物を0.1〜9重量%含有してなることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載の光触媒層形成用組成物、
に関する。
酢酸ジルコニウムを使用することにより、常温における成膜でも十分な膜強度を有し、光触媒活性が高く透明性に優れているため、現場での塗工が可能となった。
また、本発明の光触媒担持構造体は、次のような特徴を有する。
1)可視光を透過する透明なものが得られるので、汎用樹脂や天然繊維などの幅広い担体の装飾性を損なうことがない。
2)光触媒が担体に強固に接着されており、光触媒活性が高く、しかも光触媒作用により担体が劣化したり、光触媒が脱離することがない。
3)光照射下でも長時間使用でき、耐アルカリ性試験の評価も良好で、サンシャインカーボンアークウェザーメーターによる促進耐候性試験後においても高い付着性を保っていることから、高温多湿の環境下や屋外の環境下で使用することができる。
I 光触媒層形成用組成物
本発明の光触媒層形成用組成物は光触媒層を形成するための塗工用の液であり、光触媒粒子及び/またはゾル、コロイダルシリカ粒子が分散したシリカゾル、及び酢酸ジルコニウムを含有する。好ましくは、さらにアルミニウム化合物を含有する。
ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物及び光触媒はゾルの形で用いるのが好ましい。ゾルを使用する場合には、安定化のために光触媒塗布液中へ酸やアルカリの解膠剤を添加することもできる。またゾル懸濁液中に、接着性や操作性を良くする目的で、光触媒に対して5重量%以下の界面活性剤等を添加することもできる。
光触媒層形成用組成物に含まれる各成分の量は、組成物全体に対して、固形分として酸化物換算で、コロイダルシリカ粒子が分散したシリカゾルが0.1〜5重量%、光触媒粒子及び/またはゾルが0.1〜6重量%、ジルコニウ化合物が0.1〜5重量%、アルミニウム化合物が0.1〜9重量%であるのが好ましい。
(光触媒)
光触媒としては、具体的にはTiO、ZnO、SrTiO、CdS、GaP、InP、GaAs、BaTiO、KNbO、Fe、Ta、WO、SnO、Bi、NiO、CuO、SiC、SiO、MoS、InPb、RuO、CeO等を例示することができ、さらにこれらの光触媒にPt、Rh、RuO、Nb、Cu、Sn、Ni、Fe等の金属もしくは金属酸化物を添加したものを使用することができる。これらの内、耐久性、コスト、光触媒活性を考慮すると酸化チタン(TiO)を主成分とするものが好ましく、アナターゼ型酸化チタンが特に好ましい。また、太陽光のような紫外線を多く含む光で触媒活性を示す酸化チタンのみならず、貴金属をドープ等して紫外線の少ない室内光においても触媒活性示す酸化チタンを用いることができる。
(コロイダルシリカ)
本発明に用いられるコロイダルシリカ粒子は、特に限定されないが、球状コロイダルシリカ粒子が細長い形状に結合したコロイダルシリカ粒子であることが好ましい。その形状の具体例として、球状コロイダルシリカ粒子をパールネックレスのパールにみたてるとパールネックレスの一部のような形状を例示することができる。すなわち、球状シリカ粒子を3個以上、好ましくは5個以上、更に好ましくは7個以上連結したものを例示することができる。また、球状コロイダル粒子一つ一つの形状が明確である必要はなく、部分的には筒状に連続して細長い形状をしているものでもよく、さらに、球状コロイダル粒子が結合している必要はなく、粒子全体として細長い形状であるのが好ましい。
細長い形状において、その長さは、50〜400nmの範囲が好ましく、その太さを10〜50nmの範囲のものが好ましく、全体にわたって太さが均一なものが好ましい。さらに、細長い形状は、ある球状コロイダルシリカ粒子を起点に2次元方向に伸長しているのが好ましい。また、全体として細長い形状であれば、多少分岐構造を有するものでも構わない。
球状コロイダルシリカ粒子が先に述べたようにネックレス状に結合している場合に、その球状コロイダルシリカ粒子の平均粒径は、10〜50nmの範囲であるのが好ましい。
以上のような特性を有するコロイダルシリカ粒子として、具体的には、動的光散乱法による測定粒子径(D1nm)と窒素ガス吸着法による測定粒子径(D2nm)の比D1/D2が5以上であって、このD1は40〜300nmであり、そして電子顕微鏡観察による5〜20nmの範囲内の一様な太さで一平面内のみの伸長を有する細長い形状の非晶質コロイダルシリカ粒子を例示することができる。このようなコロイダルシリカ粒子が分散したゾルの製造方法として、特開平1−317115号公報、特開平7−118008号公報に記載されている方法を例示することができる。
(酢酸ジルコニウム及びアルミニウム化合物)
酢酸ジルコニウムは、ZrO(Cなどで表される化合物であり、例えば、ジルコゾールZA(第一稀元素化学工業社製、登録商標)などとして市販されている。
アルミニウム化合物としては、アルミニウムの酸化物、酸化水酸化物、水酸化物、硝酸塩、オキシ硝酸塩、炭酸塩、オキシ炭酸塩、蓚酸塩、オキシ蓚酸塩、酢酸塩、オキシ酢酸塩、炭素数1〜6のアルコキシド、及び該アルコキシドの加水分解生成物からなる群から選ばれた1種又は2種以上の混合物が好ましい。
アルミニウムの化合物の好ましい具体例として、酸化アルミニウム、酸化水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水和酸化アルミニウム、ベーマイト、硝酸アルミニウム、オキシ硝酸アルミニウム、炭酸アルミニウム、オキシ炭酸アルミニウム、蓚酸アルミニウム、オキシ蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、オキシ酢酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリブトキシド、アルミニウムブトキシドアセチルアセトナート、アルミニウムブトキシドラクテート、アルミニウムブトキシドの加水分解生成物、アルミニウムイソプロポキシドの加水分解生成物等を挙げることができる。
酢酸ジルコニウムまたはアルミニウム化合物は、平均粒子径が2nm〜50nm、好ましくは2nm〜20nmのゾルを使用するのが好ましい。このような粒子径のものを使用する場合には、光触媒層の透明性が向上し、平行光線透過率が高くなるため、特に透明性を要求されるガラス基板やプラスチック成形体に塗布する場合に好ましい。また、下地の担体に色や模様が印刷されたものの場合に、こうした透明な光触媒層を塗布すると下地の色や柄を損なうことがない。
(その他成分)
光触媒複合体にシリコン化合物を含有させる場合には、光触媒層形成用組成物全体に対して、固形分として酸化物換算で、シリコン化合物を0.001〜5重量%含有させるのが好ましい。シリコン化合物としては例えば炭素数1〜5のアルコキシ基を有するシリコンアルコキシドの加水分解物あるいは該加水分解物生成物が好ましい。シリコンアルコキシドのアルコキシ基の炭素数が6を超えると、加水分解速度が非常に遅くなる。また、部分的に塩素を含んだシリコンアルコキシドを加水分解したポリシロキサンを使用することもできるが、塩素を多量に含有したポリシロキサンを使用する場合には、不純物の塩素イオンにより、担体が腐食されたり、接着性が低下するおそれがある。
II 光触媒層形成用組成物の調製方法
光触媒層形成用組成物の調製方法としては、通常、酢酸ジルコニウム、アルミニウム化合物、光触媒、コロイダルシリカゾル等を混合すればよい。用いられる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジエチルエーテル、メチルセルソルブ、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素、サクサンエチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素等を挙げることができる。また、これらの2種以上を混合して用いることもできる。これらの内、水−アルコール系溶媒が特に好ましい。
III 塗工及び光触媒層
光触媒層は、前記光触媒層形成用組成物を接着層表面に印刷法、シート成形法、スプレー吹き付け法、ディップコーティング法、スピンコーティング法等でコートし、乾燥・硬化させることにより形成することができる。乾燥・硬化は、これまでの温度は約50℃〜約300℃であったが、本発明の光触媒層形成用組成物は、担体材質及び接着層中の樹脂材質によっても異なるが、低温下で乾燥、硬化が可能であり、40℃以下はもちろん、室温以下でも乾燥、硬化ができる。
基材上に塗布後の光触媒層は、光触媒成分、コロイダルシリカ粒子、酢酸ジルコニア及び必要に応じてアルミニウム化合物を含有する。
乾燥後の光触媒層中の各成分の含有量は、光触媒層全体に対して、酸化物に換算して光触媒成分5重量%〜60重量%、コロイダルシリカ10〜80重量%、ジルコニウム成分5〜40重量%、アルミニウム成分10〜80となるようにするのが好ましい。
IV 光触媒を担持した構造体
本発明に係る光触媒を担持した構造体は、光触媒層と担体の間に接着層を設けた構造を有する。光触媒層と担体との間に設けた接着層は、下地の担体を光触媒作用による劣化から保護する作用と光触媒層を担体に強固に接着させる作用を有しており、また接着層自身が光触媒作用による劣化を受けにくいという特徴をもつ。
前記担体は、接着剤層を介して光触媒を担持可能なものであれば特に限定されない。例えば、セラミックス、無機質材料、担体材質が熱をかけられない有機高分子体や熱や水等により酸化腐食し易い金属であっても、この接着層と光触媒層を設けた構造体を得ることができる。また、担体形状としては、フィルム状、シート状、板状、管状、繊維状、網状等どのような複雑な形状のものも使用可能である。担体の厚さとしては10μm以上のものであれば強固に担持することができるので好ましい。さらに、担体と接着層との密着性を良くするために、表面を放電処理やプライマー処理等の易接着処理を施した担体を用いることができる。
接着層の材質としては、担体を光触媒作用による劣化から保護し、さらに光触媒層を強固に固定できるものであれば特に制限されないが、具体的には(1)シリコン含有量が酸化物に換算して2〜10重量%の(アクリルシリコン樹脂、エポキシシリコン樹脂、ポリエステルシリコン樹脂)等のシリコン変性樹脂、(2)ポリシロキサンを酸化物に換算して3〜90重量%含有する樹脂、又は(3)コロイダルシリカを酸化物に換算して5〜90重量%含有した樹脂を使用することができる。これらの樹脂は光触媒を強固に接着し、担体を光触媒から保護するのに適当である。
シリコン含有量が酸化物に換算して2重量%未満のアクリルシリコン樹脂等のシリコン変性樹脂やポリシロキサン含有量が酸化物に換算して3重量%未満の樹脂、コロイダルシリカ含有量が酸化物に換算して5重量%未満の樹脂では、光触媒層との接着が悪くなる。また、接着層が光触媒により劣化し、光触媒層が剥離し易くなる。シリコン含有量が酸化物に換算して10重量%を超えるアクリル−シリコン樹脂等のシリコン変性樹脂やポリシロキサン含有量が酸化物に換算して90重量%を超える樹脂、コロイダルシリカ含有量が酸化物に換算して90重量%を超える樹脂では、担体との密着性が低下する。
またシリコンを導入する樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を例示することができる。これらの内、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が、成膜性、強靭性、担体との密着性の点で特に好ましい。これらの樹脂は、溶液状であってもエマルジョンタイプであってもどちらでも使用できる。また、架橋剤等の添加物が含まれていてもよい。
前記接着層の樹脂に含まれるポリシロキサンが炭素数1〜5のアルコキシ基を有するシリコンアルコキシドの加水分解物あるいは該加水分解物生成物である場合には、接着性及び耐久性がより向上した担持構造体を得ることができる。シリコンアルコキシドのアルコキシ基の炭素数が6を超えると、加水分解速度が非常に遅いので、樹脂中で硬化させるのが困難になり、接着性や耐久性が悪くなる。また、部分的に塩素を含んだシリコンアルコキシドを加水分解したポリシロキサンを使用することもできるが、塩素を多量に含有したポリシロキサンを使用する場合には、不純物の塩素イオンにより、担体が腐食されたり、接着性が低下するおそれがある。
かかるシリコンアルコキシドとしては、例えば、次式で表される化合物が好ましく使用できる。
SiCln(OH)n(OR)n
ここで、Rはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル、オクチル、アミノメチル、アミノエチル、カルボキシメチル、カルボキシエチル、クロロメチル、クロロエチル、クロロプロピル基等の(アミノ基、カルボキシル基又は塩素原子で置換されていてもよい)炭素数1〜8のアルキル基を表す。
は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、s−ブチル、t−ブチル、ヘキシル基等の炭素数1〜8のアルキル基、又はメトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、ブトキシメチル、メトキシエチル、エトキシメチル、プロポキシエチル、メトキシプロピル、メトキシブチル基等のアルコキシ基で置換された炭素数1〜8のアルキル基を表す。またn、n及びnは0、1又は2を表し、nは2から4の整数を表し、かつn+n+n+n=4である。
前記式で表されるシリコンアルコキシドの好ましい具体例としては、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OC、Si(OC11、Si(OC13、SiCH(OCH、SiCH(OC、SiCH(OC、SiCH(OC、SiCH(OC、SiCl(OCH、SiCl(OC、SiCl(OC、SiCl(OC、SiCl(OC13、SiCl(OH)(OCH、SiCl(OH)(OC、SiCl(OH)(OC、SiCl(OH)(OC、SiCl(OCH、SiCl(OC等を挙げることができる。
これらシリコン変性樹脂のシリコンを導入する方法としは、エステル交換反応、シリコンマクロマーや反応性シリコンモノマーを用いたグラフト反応、ヒドロシリル化反応、ブロック共重合法等種々あるが、どのような方法で得られたものも使用できる。
例えば、ポリシロキサンの樹脂への導入方法としては、(1)シリコンアルコキシドをモノマーの状態で樹脂溶液と混合し、接着層形成時に空気中の水分で加水分解させる方法、(2)予めシリコンアルコキシドの部分加水分解物を樹脂と混合し、更に、接着剤層形成時に空気中の水分で加水分解する方法等種々あるが、樹脂と均一に混合できる方法ならどのような方法でも良い。
また、シリコンアルコキシドの加水分解速度を調整するために、酸や塩基触媒を少量添加してもよい。ポリシロキサンの樹脂への添加量は、担体に光触媒層を強固に接着させるためには酸化物に換算して3〜90重量%が好ましい。
ポリシロキサンを導入させる樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂等どのような樹脂も使用できる。これらのうち、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂又はこれらの混合樹脂は、シリコン変性樹脂とした場合、耐久性や耐アルカリ性の点で好ましい。
接着層がコロイダルシリカを含有する場合、コロイダルシリカの粒子径は10nm以下であるのが好ましい。粒子径が10nm以上になると、接着層中の樹脂は光触媒により劣化し易くなるばかりか、光触媒層と接着層との接着も悪くなる。
コロイダルシリカを樹脂に導入する方法としては、樹脂溶液とコロイダルシリカ溶液を混合後、塗布−乾燥して保護膜を形成する方法が最も簡便である。その他、コロイダルシリカを分散した状態で樹脂を重合させたものを使用することもできる。
また、コロイダルシリカと樹脂との接着性および分散性を良くするために、シランカップリング剤で処理されたコロイダルシリカを用いることもできる。
コロイダルシリカの樹脂への添加量は、担体に光触媒層を強固に接着させるためには酸化物に換算して5〜90重量%が好ましい。
コロイダルシリカを導入する樹脂としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等どのような物でも使用可能である。これらの樹脂の中で、アクリル樹脂、エポキシ樹脂及びポリエステル樹脂が、シリコン変性樹脂とした場合に耐久性や耐アルカリ性に優れたものを得ることができるため特に好ましい。
またコロイダルシリカは、珪酸ナトリウム水溶液を陽イオン交換することにより得られるシリカゾルであっても、シリコンアルコキシドを加水分解して得られるシリカゾルであっても、どのようなものでも使用することができる。
さらに本発明においては、ポリシロキサン及びコロイダルシリカの両方を含有する樹脂を接着層として使用することができる。その場合、接着層中のポリシロキサンおよびコロイダルシリカの含有量の合計が酸化物に換算して前記耐アルカリ性向上を示す含有量の範囲内であれば、同様に優れた耐アルカリ性を示すものとすることができる
接着層に使用する樹脂がコロイダルシリカを含有する樹脂若しくはポリシロキサンを含有する樹脂の場合、そのコロイダルシリカやポリシロキサンの粒子径は10nm以下が望ましい。コロイダルシリカやポリシロキサンの粒子径が10nmを越えるものであると、分散性が悪くなり、接着層の透光性が低下するため接着層と光触媒層の合計の波長550nmの全光線透過率は70%以下となる場合がある。
なお接着層樹脂には光触媒作用による劣化を抑える目的で、光安定化剤及び/又は紫外線吸収剤をさらに添加することができる。使用することができる光安定化剤としてはヒンダードアミン系が好ましいが、その他の物でも使用可能である。紫外線吸収剤としてはトリアゾール系等が使用できる。これらの添加量は、樹脂に対して、0.005重量%〜10重量%、好ましくは0.01重量%〜5重量%である。また、接着層上をシラン系もしくはチタン系カップリング剤で処理することにより、光触媒層との接着性を高めることも好ましい。
接着層の厚さは、光触媒層との良好な接着を得るためには0.1μm〜20μm程度が望ましい。接着層の厚みが0.1μm以下であると、光触媒層を強固に接着させる働きが弱くなる。一方、厚みが20μm以上の場合は特に問題はないものの、実際の塗布加工を考慮すると20μm以上にするメリットは少ない。
本発明の光触媒を担持した構造体は、建築用塗料、壁紙、窓ガラス、ブラインド、カーテン、カーペット、照明器具、照明灯、道路灯、トンネル照明灯、高速道や新幹線の遮音壁、ブラックライト、船底・漁網防汚塗料、水処理用充填剤、農ビフィルム、防草シート、包装資材等に使用できる。特に高温多湿の環境下や屋外の環境下で使用される場合に、その優れた耐久性や透明性などの特性を発揮する。
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものでない。
1)光触媒担持構造体の製造
下記のようにして、第1表に示すような構成を有する実施例1〜6、及び比較例1〜4の光触媒担持体構造体を製造した。
(1)担体
(TA−1)ソーダライムガラス板
(TA−2)アクリル塗装板
(2)接着層
シリコン変性樹脂等(PS−1)と樹脂溶液(J−1)を混合、濃度を調整した接着層形成用溶液を得た。この液をディッピング法でソーダライムガラス担体(TA−1)又はアクリル塗装板(TA−2)上に塗工形成した。常温で60分乾燥して厚み1μmで接着層を形成した。
(PS−1)ポリエトキシシロキサン(コルコート製エチルシリケート40)
(J−1)シリコン含有量3重量%のアクリルシリコン樹脂キシレン溶液
(3)光触媒層
光触媒は次のものを使用した。
(T−1)硝酸酸性酸化チタンゾル(結晶粒子径8nm)
シリカゾルは次のものを使用した。
(S−1)スノーテックスST−UP(日産化学(株)製、登録商標)
アルミニウム化合物は次のものを使用した。
アルミナゾル−520(日産化学(株)製)(A−1)
ジルコニウム化合物は次のものを使用した。
(Z−1)ジルコゾールZA30(第一稀元素化学(株)製酢酸ジルコニウム、登録商標)
(Z−2)ジルコゾールZN(第一稀元素化学(株)製硝酸ジルコニウム、登録商標)
(Z−3)ナノユース ZR−30AL(日産化学(株)製酸性ジルコニアゾル、登録商標)
上記光触媒、シリカゾル、アルミニウム化合物及びジルコニウム化合物を、pH1.5〜9の適当な範囲に調製して混合し、所定量の界面活性剤を加えて光触媒複合体溶液(光触媒層形成用組成物)を得た。
得られた光触媒複合体溶液をディッピング法で、上記接着層上に塗工形成した。光触媒層は接着層を乾燥するのと同じ温度で乾燥して、厚み0.5μmで形成した。
Figure 0004879839
2)光触媒担持構造体の性能試験
上記で得られた光触媒担持構造体を用いて以下の性能試験を行った。
(1)触媒活性の評価試験
上記で得た光触媒担持構造体を、大きさ70mm×70mmに切り出し、容量4リットルのパイレックス(登録商標)製ガラス容器中に設置した。この容器中に空気とアルデヒドの混合ガスをアルデヒド濃度が200ppmとなるように加えた。次いで、該試料に紫外線強度2mW/cmのブラックライト(FL15BLB、東芝ライテック(株)製)の光を3時間照射後、容器内部のアルデヒドガス濃度をガスクロマトグラフィーにより測定し、その減少量により光触媒活性評価をした。
その結果、実施例1〜6及び比較例1〜4の光触媒担持構造体は、アルデヒドガスの減少量は100ppm以上であり、優れた光触媒活性を示した。
(2)ヘイズ率の測定
接着層及び光触媒層を担持する前の担体をリファレンスとして、各試料の波長550nmの全光線透過率、及びヘイズ率を自記分光光度計(日立製作所(株)製U−4000型)で測定した。なお、ヘイズ率(%)とは「(全光線透過率−直線透過率)×100/全光線透過率」の数式より算出される。
測定結果を下記第2表に示す。TA−1に形成した実施例1〜4、比較例1、3の光触媒担持体構造体は全てヘイズ率が3%以下で優れた透明性を示した。
(3)テープ剥離試験
各試料表面に、切り傷によって2mmの間隔で25個のマス目を形成し、JIS K5400に規定する碁盤目テープ法試験により付着性の評価を行った。剥離しなかったものを○、剥離したものを×として評価した。評価結果を第2表に示す。
(4)指摩擦試験
試料表面を指で摩擦し、剥離しなかったものを○、傷が付いたものを△、剥離したものを×として評価した。評価結果を下記第2表に示す。
(5)煮沸試験
沸騰させたイオン交換水に光触媒担持構造体を1時間浸漬させた後にテープ剥離試験及び指摩擦試験を行い耐久性の評価とした。結果を下記第2表に示す。
Figure 0004879839
第2表より、ジルコニア化合物(Z−1)が含まれている実施例1〜6の光触媒担持構造体は、煮沸試験後においてもテープ剥離及び指摩擦試験で剥離や傷がなく優れた耐久性を有していた。それに比して、ジルコニア化合物(Z−2)及び(Z−3)が含まれている比較例1〜4の構造体は、テープ剥離試験では良好だったが指摩擦試験において剥離や傷が発生し耐久性において劣る結果であった。

Claims (4)

  1. 光触媒粒子及び/またはゾル、コロイダルシリカ粒子が分散したシリカゾル、アルミニウム化合物及び酢酸ジルコニウムを含有することを特徴とする光触媒層形成用組成物。
  2. 室温で成膜可能な請求項1に記載の光触媒層形成用組成物。
  3. 前記アルミニウム化合物が、アルミニウムの酸化物、酸化水酸化物、水酸化物、オキシ硝酸塩、オキシ炭酸塩、炭素数1〜4のアルコキシド、及び該アルコキシドの加水分解物からなる群から選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光触媒層形成用組成物。
  4. 光触媒層形成用組成物全体に対して、固形分として酸化物換算で、光触媒粒子及び/またはゾルを0.1〜6重量%、コロイダルシリカ粒子が分散したシリカゾルシリカゾルを0.1〜5重量%、酢酸ジルコニウムを0.1〜5重量%及びアルミニウム化合物を0.1〜9重量%含有してなることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光触媒層形成用組成物。
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