JP2010005608A - 光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液 - Google Patents

光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液 Download PDF

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Abstract

【課題】中間層に対する浸食を防止しながら、耐候性および有害ガス分解性、耐光性ならびにその他の所望の特性(透明性、塗膜強度等)を発揮する光触媒塗装体および光触媒コーティング液が提供される。
【解決手段】この光触媒塗装体は、基材と、基材上に設けられる紫外線吸収剤を含む中間層と、該中間層上に設けられる光触媒層とを備えてなる。光触媒層は、5質量部以上15質量部以下の光触媒粒子と、75質量部を超え95質量部以下の無機酸化物粒子と、シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物とを、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、建築物等の外装材の用途に特に適した、透明度が高く、耐候性、有害ガス分解性、耐光性および各種被膜特性に優れた光触媒層を備えた光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液に関する。
酸化チタンなどの光触媒が、建築物の外装材など多くの用途において近年利用されている。光触媒の利用により、光エネルギーを利用して種々の有害物質を分解したり、あるいは、光触媒が塗布された基材表面を親水化して表面に付着した汚れを容易に水で洗い流すことが可能となる。このような光触媒を塗布した光触媒塗装体を得る技術としては、以下のものが知られている。
光触媒性金属酸化物粒子と、コロイダルシリカと、界面活性剤とを含有する水性分散液を用いて、合成樹脂等の表面に親水性を付与する技術が知られている(例えば、特許文献1(特開平11−140432号公報)参照)。この技術にあっては、界面活性剤を10〜25重量%と多量に含有させることにより親水性を強化している。また、膜厚を0.4μm以下とすることで光の乱反射による白濁を防止している。
バインダー成分としてのシリカゾルと光触媒性二酸化チタンとを含有する塗膜を基体に形成して光触媒体を得る技術も知られている(例えば、特許文献2(特開平11−169727号公報)参照)。この技術にあっては、シリカゾルの添加量がSiO基準で二酸化チタンに対して20〜200重量部であるとされており、二酸化チタンの含有比率が高い。また、シリカゾルの粒径も0.1〜10nmと小さい。
光触媒塗料を用いて波長500nmの光を50%以上透過させ、かつ、320nmの光を80%以上遮断すること光触媒塗膜を形成する技術も知られている(例えば、特許文献3(特開2004−359902号公報)参照)。この技術にあっては、光触媒塗料のバインダーとしてオルガノシロキサン部分加水分解物が用いられており、その配合量は塗料組成物全体の5〜40質量%が好ましいとされている。
ところで、光触媒層の基材を有機材料で構成すると、光触媒の光触媒活性により有機材料が分解あるいは劣化されるという問題が従来から知られている。この問題に対処するため、光触媒層と担体との間にシリコン変性樹脂等の接着層を設けることで、下地の担体を光触媒作用による劣化から保護する技術が知られている(例えば、特許文献4(国際公開第97/00134号パンフレット)参照)。
特開平11−140432号公報 特開平11−169727号公報 特開2004−359902号公報 国際公開第97/00134号パンフレット
光触媒層にバインダー成分として加水分解性シリコーンを添加した場合、加水分解性シリコーンが緻密な膜を形成するため、光触媒層を構成する粒子間の空隙を塞ぐ。その結果、光触媒層を透過するガスの拡散速度が小さくなり、光触媒による有害ガス分解機能が低下するなど、光触媒が本来有する機能をも喪失する懸念がある。
また、充分な光触媒活性を得るために、光触媒層に含まれる光触媒を増量することが従来より行われているが、そのような塗膜構成にした場合、中間層が光触媒によって劣化する恐れがあるなどの不具合を発生する懸念があった。また、光触媒を減量させると光触媒層での紫外線遮蔽効果が弱まり、塗膜および下地の紫外線劣化が懸念される。
したがって、本発明は、中間層に対する浸食を防止しながら、耐候性および有害ガス分解性、耐光性ならびにその他の所望の特性(透明性、塗膜強度等)を発揮する光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液を提供することを目的とする。
すなわち、本発明による光触媒塗装体は、基材と、該基材上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた光触媒層とを備えた光触媒塗装体であって、
前記中間層はシリコーン変性樹脂および紫外線吸収剤を含んでなり、
前記光触媒層が、
5質量部以上15質量部以下の光触媒粒子と、
75質量部を超え95質量部以下の無機酸化物粒子と、
シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物と
を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなるものである。
また、本発明による光触媒コーティング液は、上記光触媒塗装体の製造に用いられる光触媒コーティング液であって、
溶媒と、
5質量部以上15質量部以下の光触媒粒子と、
75質量部を超え95質量部以下の無機酸化物粒子と、
シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンと
を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなるものである。
光触媒塗装体
本発明による光触媒塗装体は、基材上に設けらた、中間層上に設けられる光触媒層とを備えてなる。光触媒層は、5質量部以上15質量部以下の光触媒粒子と、75質量部を超え95質量部以下の無機酸化物粒子と、任意成分として、シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンとを含んでなる。
すなわち、本発明による光触媒層は、光触媒粒子の配合割合が無機酸化物粒子よりも少ないことで、光触媒粒子の中間層との直接的な接触を最小限に抑えることができ、それにより中間層を浸食しにくくなるものと考えられる。
同時に、この構成により、中間層に対する浸食を防止しながら、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、塗膜強度等)に優れた光触媒塗装体を得ることが可能となる。これらの幾つもの優れた効果が同時に実現される理由は定かではないが、以下のようなものではないかと考えられる。ただし、以下の説明はあくまで仮説にすぎず、本発明は何ら以下の仮説によって限定されるものではない。まず、光触媒層は、光触媒粒子および無機酸化物粒子の二種類の粒子から基本的に構成されるため、粒子間の隙間が豊富に存在する。光触媒層のバインダーとして広く用いられる加水分解性シリコーンを多量に使用した場合にはそのような粒子間の隙間を緻密に埋めてしまうため、ガスの拡散を妨げるものと考えられる。しかし、本発明の光触媒層は加水分解性シリコーンを含まないか、含むとしても光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して10質量部未満としているため、粒子間の隙間を十分に確保することができると考えられる。そして、そのような隙間によってNOxやSOx等の有害ガスが光触媒層中に拡散しやすい構造が実現され、その結果、有害ガスが光触媒粒子と効率良く接触して光触媒活性により分解されるのでないかと考えられる。
また中間層中に紫外線吸収剤を添加することにより紫外線による塗膜および基材の劣化が抑制される。
さらに本発明の好ましい態様によれば、波長550nmにおいての光触媒層の直線透過率を95%以上、より好ましくは97%以上確保することで、下地の色味、意匠を損なうことなく表現することが可能となる。また透明度の高いガラスやプラスチックなどにコーティングしても透明性を損なわずに済む。
基材
本発明に用いる基材は、その上に光触媒層を形成可能な材料であれば無機材料、有機材料を問わず種々の材料であってよく、その形状も限定されない。材料の観点からみた基材の好ましい例としては、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリ−ト、繊維、布帛、木、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの表面に少なくとも一層の被膜を有するものが挙げられる。用途の観点からみた基材の好ましい例としては、建材、建物外装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガードレ−ルの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、屋外用照明器具、台及び上記物品表面に貼着させるためのフィルム、シート、シール等といった外装材全般が挙げられる。
中間層およびそのための中間層コーティング液
中間層に用いられる樹脂は、紫外線吸収剤の相溶性が良好で、基材との接着性、光触媒との接着性を有し、光触媒による中間層および基材の劣化を抑制できるものであれば特に限定されず、樹脂中にポリシロキサンを含むシリコーン変性アクリル樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、シリコーン変性ウレタン樹脂、シリコーン変性ポリエステル等のシリコーン変性樹脂が好適である。外装用建材に適用する場合には、シリコーン変性アクリル樹脂が耐候性の点からより好適である。シリコーン変性アクリル樹脂において、カルボキシル基を有するシリコーン変性アクリル樹脂とエポキシ基を有するシリコーン樹脂の二液を混合して使用することが、塗膜の強度を向上させる点からさらに好適である。
シリコーン変性樹脂は、ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して0.2質量%以上16.5質量%未満が好ましく、より好ましくは6.5質量%以上16.5質量%未満である。シリコーン変性樹脂に含有されるケイ素原子含有量が0.2質量%未満の場合、すなわち有機樹脂成分が多い場合、中間層の耐候性が低下し、光触媒に浸食される可能性がある。またシリコーン変性樹脂に含有されるケイ素原子含有量が16.5質量%以上の場合、すなわちシリコーン成分が多い場合、中間層の性質が無機物により近づくため、耐候性は向上するが、逆に可撓性に乏しくなり、中間層にクラックが発生する場合がある。
前記シリコーン変性樹脂中のケイ素原子含有量は、X線光電子分光分析装置(XPS)による化学分析によって測定することができる。測定機器および条件は当業者によって適宜選択できる。
中間層には、紫外線吸収剤が添加される。本発明においては、中間層と相溶性が良好であればどのような紫外線吸収剤でも使用することができる。例として、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾフェノン系化合物などが挙げられ、単独もしくは混合物として用いられる。
中間層には、有機溶剤、着色顔料、体質顔料、顔料分散剤、消泡剤、酸化防止剤等の塗料用添加剤、塗料に通常含まれるその他成分を含有することができる。また、艶消し剤としてシリカ微粒子を含んでもよい。上記着色顔料としては特に限定されず、例えば、二酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック等の無機系顔料、フタロシアニン系、ベンズイミダゾロン系、イソインドリノン系、アゾ系、アンスラキノン系、キノフタロン系、アンスラピリジニン系、キナクリドン系、トルイジン系、ピラスロン系、ペリレン系等の有機系顔料を用いることができる。
本発明の中間層コーティング液は、前記したシリコーン変性樹脂、紫外線吸収剤を溶媒中に溶解または分散させることにより得ることができる。溶媒としては、上記構成成分を適切に溶解または分散可能なあらゆる溶媒が使用可能であり、水および/または有機溶媒であってよい。また、本発明の中間層塗装用液剤の固形分濃度は特に限定されないが、10〜20質量%とするのが塗布し易い点で好ましい。なお、中間層コーティング液中の構成成分の分析は、樹脂成分に関しては、赤外分光分析で評価することができる。
中間層製造方法
本発明の中間層塗装体は、本発明の中間層コーティング液を、前記基材上に塗布することにより簡単に製造することができる。中間層の塗装方法は、前記液剤を刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷等、一般に広く行われている方法を利用できる。コーティング液の基材への塗布後は、常温乾燥させればよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥してもよい。
中間層の乾燥膜厚は特に限定されるものでは無いが、好ましくは1μm〜50μm、より好ましくは1μm〜10μmである。この範囲内であれば、中間層および基材を光触媒により劣化させることが無く、また、中間層自体のクラック発生などの不具合を防止することができる。
光触媒層およびそのための光触媒コーティング液
本発明に用いる光触媒粒子は、光触媒活性を有する粒子であれば特に限定されず、あらゆる種類の光触媒の粒子が使用可能である。光触媒粒子の例としては、酸化チタン(チタニア)、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Feのような金属酸化物の粒子が挙げられ、好ましくは酸化チタン粒子、より好ましくはアナターゼ型酸化チタン粒子である。酸化チタンは、無害で、化学的にも安定で、かつ、安価に入手可能である。また、酸化チタンはバンドギャップエネルギーが高く、従って、光励起には紫外線を必要とし、光励起の過程で可視光を吸収しないので、補色成分による発色が起こらない。酸化チタンは、粉末状、ゾル状、溶液状など様々な形態で入手可能であるが、光触媒活性を示すものであれば、いずれの形態でも使用可能である。
本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子が10nm以上100nm以下の平均粒径を有するのが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、耐候性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、塗膜強度等)が効率良く発揮される。
本発明の光触媒層およびコーティング液における光触媒粒子の含有量は、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下とし、好ましくは5質量部以上10質量部以下である。このように光触媒粒子の配合割合を少なくすることで、光触媒粒子の中間層との直接的な接触を最小限に抑えることができ、それにより中間層に対する浸食を防止することができ、耐候性も向上すると考えられる。それにもかかわらず、有害ガス分解性などの光触媒活性に起因する機能も十分に発揮させることができる。
本発明の好ましい態様によれば、さらに高い光触媒能を発現するために、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、鉛、銅、銀、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属および/またはその金属からなる金属化合物を、光触媒層や光触媒コーティング液に添加することができる。この添加は、前記金属または金属化合物をコーティング液に混合し、溶解または分散させる方法、前記金属または金属化合物を光触媒層や光触媒粒子に担持する方法、などのいずれの方法によっても行うことができる。
本発明に用いる無機酸化物粒子は、光触媒粒子と共に層を形成可能な無機酸化物の粒子であれば特に限定されず、あらゆる種類の無機酸化物の粒子が使用可能である。そのような無機酸化物粒子の例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、ボロニア、マグネシア、カルシア、フェライト、無定型チタニア、ハフニア等の単一酸化物の粒子;およびチタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム等の複合酸化物の粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子である。これら無機酸化物粒子は、水を分散媒とした水性コロイド;またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、もしくはエチレングリコールなどの親水性溶媒にコロイド状に分散させたオルガノゾルの形態であるのが好ましく、特に好ましくはコロイダルシリカである。
本発明の好ましい態様によれば、前記無機酸化物粒子が5nmを超え40nm未満、より好ましくは5nmを超え30nm以下の平均粒径を有し、さらに好ましくは10nm以上30nm以下である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、耐候性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、塗膜強度等)が効率良く発揮される。また、透明で密着性が良好な光触媒層を得ることができる。
本発明の光触媒層およびコーティング液における無機酸化物粒子の含有量は、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、75質量部を超え95質量部以下であり、好ましくは80質量部を超え95質量部以下であり、より好ましくは85質量部以上95質量部以下、さらに好ましくは90質量部以上95質量部以下である。
本発明の光触媒層は加水分解性シリコーンの乾燥物を実質的に含まないのが好ましく、より好ましくは全く含まない。加水分解性シリコーンとは、アルコキシ基を有するオルガノシロキサンおよび/またはその部分加水分解縮合物の総称である。しかしながら、本発明の有害ガス分解性を確保できる程度であれば加水分解性シリコーンを任意成分として含有することは許容される。したがって、加水分解性シリコーンの含有量は、シリカ換算で、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満であり、好ましくは5質量部以下、最も好ましくは0質量部である。加水分解性シリコーンとしては、4官能シリコーン化合物がよく使用され、例えば、エチルシリケート40(オリゴマー、Rがエチル基)、エチルシリケート48(オリゴマー、Rがエチル基)メチルシリケート51(オリゴマー、Rがメチル基)(いずれもコルコート社製)の形で市販されている。これらの加水分解性シリコーンは、光触媒コーティング液を塗布後、乾燥に伴い縮合が進み、乾燥物となる。
光触媒コーティング液には任意成分として界面活性剤を含んでよい。本発明に用いる界面活性剤は、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満含有されていてもよく、好ましくは0質量部以上8質量部以下であり、より好ましくは0以上6質量部以下である。界面活性剤の効果の1つとして基材へのレベリング性があり、コーティング液と基材との組合せによって界面活性剤の量を先述の範囲内で適宜決めれば良く、その際の下限値は0.1質量部とされてよい。この界面活性剤は光触媒コーティング液の塗れ性を改善するために有効な成分であるが、塗布後に形成される光触媒層にあってはもはや本発明の光触媒塗装体の効果には寄与しない不可避不純物に相当する。したがって、光触媒コーティング液に要求される塗れ性に応じて、上記含有範囲内において使用されてよく、塗れ性を問題にしないのであれば界面活性剤は実質的にあるいは一切含まなくてよい。使用すべき界面活性剤は、光触媒や無機酸化物粒子の分散安定性、中間層上に塗布した際の濡れ性を勘案し適宜選択されることができるが、非イオン性界面活性剤が好ましく、より好ましくは、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、ポリアルキレングリコール非イオン性界面活性剤、フッ素系非イオン性界面活性剤、シリコン系非イオン性界面活性剤が挙げられる。
本発明の光触媒コーティング液は、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および所望により加水分解性シリコーンおよび界面活性剤を上記特定の配合比率で溶媒中に分散または溶解させることにより得ることができる。溶媒としては、上記構成成分を適切に分散または溶解可能なあらゆる溶媒が使用可能であり、水および/または有機溶媒であってよい。また、本発明の光触媒コーティング液の固形分濃度は特に限定されないが、1〜10質量%とするのが塗布し易い点で好ましい。なお、光触媒コーティング組成物中の構成成分の分析は、コーティング液を限外ろ過によって粒子成分と濾液に分離し、それぞれを赤外分光分析、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、蛍光X線分光分析などで分析し、スペクトルを解析することによって評価することができる。
本発明の光触媒層は、0.5μm以上3μm以下の膜厚を有し、好ましくは0.5μm以上3.0μm以下、さらに好ましくは1.0μm以上2.0μm以下である。このような範囲内であると、光触媒層と中間層の界面に到達する紫外線が減衰されるので耐光性が向上する。また、無機酸化物粒子よりも含有比率が低い光触媒粒子を膜厚方向に増加させることができるので、有害ガス分解性も向上する。さらには、紫外線吸収性、透明性においても優れた特性が得られる。
光触媒層製造方法
本発明の光触媒塗装体は、本発明の光触媒コーティング液を、中間層を有する基材上に塗布することにより簡単に製造することができる。光触媒層の塗装方法は、前記液剤を刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷等、一般に広く行われている方法を利用できる。コーティング液の基材への塗布後は、常温乾燥させればよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥してもよいが、焼結が進むまで加熱すると粒子間の空隙が減少し十分な光触媒活性を得ることができなくなる。本発明において、乾燥温度は10℃以上500℃以下であり、基材の種類に応じて上限値は適宜設定されて良い。基材の少なくとも一部に樹脂が含まれる場合、樹脂の耐熱温度等を考慮して好ましい乾燥温度は10℃以上200℃以下である。
本発明を以下の例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、以下の例において中間層コーティング液は、以下に示したいずれかのシリコーン変性アクリル樹脂材と水と造膜助剤を適宜混合して作製した。詳細を表1に示した。
・ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して10質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
・ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して0.2質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
・ケイ素原子含有量が、シリコーン変性樹脂の固形分に対して16.5質量%のシリコーン変性アクリル樹脂ディスパージョン
紫外線吸収剤は、市販のヒドロキシフェニルトリアジン系化合物からなるものを用い、その濃度は中間層コーティング液に対し1質量%とした。
Figure 2010005608


以下の例において光触媒層コーティング液は、以下に示した光触媒粒子と、いずれかの無機酸化物と水と界面活性剤を適宜混合して作製した。詳細を表1に示した。
光触媒粒子
・チタニア水分散体(平均粒径:42nm、塩基性)
無機酸化物粒子
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:26nm、塩基性)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:14nm、塩基性)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:5nm、塩基性)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:51nm、塩基性)
加水分解性シリコーン
・テトラメトキシシランの重縮合物(SiO換算濃度:51質量%。溶媒:メタノール、水)
界面活性剤
・ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
Figure 2010005608


例1〜6:ガス分解性の評価
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表1のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。このM−1液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例1〜6のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表2のT−2〜T−7に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の、光触媒、無機酸化物および加水分解性シリコーンの合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例1〜6のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通りガス分解性試験を行った。光触媒塗装体に前処理として1mW/cmのBLB光で12hr以上照射した。JIS R1701に記載の反応容器内に塗装体サンプルを1枚セットした。25℃、50%RHに調整した空気に約1000ppbになるようにNOガスを混合し、遮光した反応容器内に20分導入した。その後ガスを導入したままで3mW/cmに調整したBLB光を20分間照射した。その後ガスを導入した状態で再度反応容器を遮光した。NOx除去量は、BLB光照射前後でのNO、NO濃度から下記の式に従って計算した。
NOx除去量=[NO(照射後)−NO(照射時)]−[NO(照射時)−NO(照射後)]射後)]
得られた結果は表3に示される通りであった。表3に示されるように、光触媒層を光触媒粒子と無機酸化物から構成し、加水分解性シリコーンを含まない構造にすると、良好なNOx分解性を示した。一方、加水分解性シリコーンが10質量部入ったものは、NOx分解性が喪失していることが分かった。また光触媒層中の光触媒比率を2.5倍に増やしてもその傾向は変わらなかった。
Figure 2010005608


例7〜23:紫外線遮蔽率および直線透過率の測定
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として550nmの波長の透過率が94%のフロート板ガラスを用意した。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表4のT−1〜T−3、T−5、T−8に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。したがって、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記フロート板ガラス上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、表4に示される値であった。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り直線(550nm)透過率および紫外線(300nm)遮蔽率の測定を紫外・可視・近赤外分光光度計(島津製作所製 UV−3150)を用いて行った。
得られた結果は表4に示される通りであった。ここで、紫外線遮蔽率および直線透過率の評価基準は以下の通りとした。
<紫外線遮蔽率>
A:紫外線(300nm)遮蔽率が80%以上
B:紫外線(300nm)遮蔽率が30%以上80%未満
C:紫外線(300nm)遮蔽率が30%未満
<直線透過率>
a:直線(550nm)透過率が97%以上
b:直線(550nm)透過率が95%以上97%未満
c:直線(550nm)透過率が95%未満
表4に示されるように、光触媒層中の光触媒の含有量が5質量部〜15質量部では膜厚を0.5μm以上3μm以下にすることで有機物の劣化に起因する紫外線を十分に遮蔽し、かつ透明性も確保できることが分かった。
Figure 2010005608


例24〜26:塗膜の透明性評価
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表2のT−3、T−10、T−11に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液を50×50mmの板ガラス上に1g滴下した後、1000rpm10秒の条件でスピンコートして塗膜の透明性試験体を得た。
こうして得られた50×50mmの大きさの光触媒塗装体について、BYK−Gardner社製haze−gard plusにてヘイズ値を測定した。
得られた結果は表5に示される通りであった。表5より、例24、25の光触媒塗装体は、ヘイズ値を1%未満に抑えることができ、透明性が確保できることが分かった。
Figure 2010005608


例27〜29:塗膜の密着性評価
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロートガラスを用意した。あらかじめ加熱したフロートガラス上に、表1のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。M−1液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例27〜29のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表2のT−3、T−11、T−12に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例27〜29のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×50mmの大きさの光触媒塗装体について、常温の飽和水酸化カルシウム水溶液中に18時間浸漬した。水洗い後、50℃で1時間乾燥させた後、塗膜表面にJIS Z1522に規定されるセロハンテープを貼り、垂直に瞬間的に剥がしたあと、剥離面を観察して、前後での膜の残存を確認した。
得られた結果は表6に示される通りであった。ここで表中の○は光触媒層の剥離が全く認められなかったもの、△は光触媒層の剥離が一部認められたもの、×は光触媒層が全面剥離がしたものを表す。例27、28の光触媒塗装体は、光触媒層が中間層に対し充分な密着性を有することが分かった。
Figure 2010005608


例30〜32:塗膜の耐候性評価−1
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表1のM−2に記載の中間層コーティング液に着色顔料を混合したものをスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。M−2液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例30〜32のいずれの例においても約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表2のT−2、T−5、T−9に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例30〜32のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体をJIS B7753に規定されるサンシャインウエザオメーター(スガ試験機製 S−300C)に投入した。300hr経過後に試験片を取り出し、日本電色製の測色差計ZE2000にて、促進試験前後で色差を測定し、そのΔb値を比較することで変色の度合いを評価した。
得られた結果は表7に示される通りであった。ここで、表中のGはほとんど変色しなかったことを、NGはΔb値がプラス側(黄変側)に推移したことを表す。表7に示されるように、光触媒層中の光触媒の含有量を15質量部以下にすることによって、ケイ素原子含有量が小さい中間層に光触媒層を塗装しても充分な耐候性を有することが分かった。
Figure 2010005608
例33、34:塗膜の耐候性評価−2
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として亜鉛メッキ鋼板に汎用のエポキシ樹脂系の下塗り剤を塗装し、乾燥したものを用意した。表1のM−1およびM−3に記載の中間層コーティング液をそれぞれスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。M−1およびM−3液中の樹脂の固形分濃度は約20%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、M−1を用いた例33、M−3を用いた例34のいずれの中間層も約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水とを表2のT−3に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例33、例34のいずれの例においても約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体をメタリングウエザオメーター(スガ試験機製 M6T)に投入した。150hr経過後に試験片を外観を確認した。
ケイ素原子含有量が10質量%のアクリル変性シリコーン樹脂を用いた場合においては、クラックが入らず耐候性が良好であった。一方ケイ素原子含有量が16.5%のアクリル変性シリコーン樹脂を用いた場合、わずかではあるが部分的にクラックの発生がみられた。
例35:塗膜の耐候性評価−3
基材のサイズを150×65mmとした以外は例33と同じ条件で、光触媒塗装体を作成した。この光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体をJIS B7753に規定されるサンシャインウエザオメーター(スガ試験機製 S−300C)に投入した。4500hr経過後に試験片を取り出し、日本電色製の測色差計ZE2000にて色差を測定し、ΔE値を算出した。また接触角計(協和界面科学製 CA−X150)にて水接触角を測定した。なおΔE値は、JIS Z8730に記載の方法に基づいて算出した。
本発明において得られた光触媒塗装体は、サンシャインウエザオメーター4500hr経過後のΔE値が0.5、水接触角は5°以下と驚異的な耐候性と、超親水性を有することが分かった。またNOxガス分解および塗膜の密着性も、初期とほとんど同等のレベルであった。
例36:塗膜の耐候性評価−4
例35と同一条件にて作成した光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体を神奈川県茅ケ崎市にて、水平から上方に向け45°の傾斜をつけた状態で南の方角に向け、屋外曝露を実施した。約500日経過後に試験片を取り出し、日本電色製の測色差計ZE2000にて色差を測定した。
本発明において得られた光触媒塗装体は、屋外曝露を実施した約500日経過後のΔE値が0.5以下と、驚異的な防汚性を有することが分かった。
例37、38:耐光性評価
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ50℃に加熱したガラス基材上に、表1のM−1およびM−4に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。このM−1およびM−4液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、例37、38のいずれの例においても約10μmであった。
こうして得られた50×50mmの大きさの中間層塗装体について、300〜400nmの紫外線の透過率の測定を紫外・可視・近赤外分光光度計(島津製作所製 UV−3150)を用いて行った。
得られた結果は図1に示される通りであった。紫外線吸収剤を添加した例37において、300〜400nmの紫外線透過率は10%以下となり、紫外線を十分に遮蔽することが確認できた。
例39:ガス分解性の評価−2
中間層および光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材としてフロート板ガラスを用意した。あらかじめ加熱したガラス基材上に、表1のM−1に記載の中間層コーティング液をスプレーコートし、120℃で乾燥し中間層を得た。このM−1液中の樹脂の固形分濃度は約20質量%であった。走査型電子顕微鏡観察により中間層の膜厚を測定したところ、約10μmであった。
一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカとを、表2のT−3に示される配合比で水および1−プロパノールと混合して、加水分解性シリコーンを含有しない光触媒コーティング液を得た。光触媒コーティング液中の、光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。なお、この光触媒コーティング液は界面活性剤を添加する代わりに1−プロパノールを光触媒コーティング液に対して20質量%となるように配合した。得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記中間層塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、約0.5μmであった。こうして、中間層と光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、例2と同様の方法でガス分解性試験を行ったところ、例2と同等の結果となった。
例37、38において測定された、300〜400nmの紫外線の透過率を示す図である。

Claims (13)

  1. 基材と、該基材上に設けられた中間層と、該中間層上に設けられた光触媒層とを備えた光触媒塗装体であって、
    前記中間層はシリコーン変性樹脂および紫外線吸収剤を含んでなり、
    前記光触媒層が、
    5質量部以上15質量部以下の光触媒粒子と、
    75質量部を超え95質量部以下の無機酸化物粒子と、
    シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物と
    を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなる光触媒塗装体。
  2. 前記光触媒層は、0.5μm以上3.0μm以下の膜厚を有する、請求項1に記載の光触媒塗装体。
  3. 前記無機酸化物の平均粒子径が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、5nmを超え40nm未満の個数平均粒径を有する、請求項1または2に記載の光触媒塗装体。
  4. 前記無機酸化物粒子がシリカである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  5. 前記光触媒粒子が酸化チタンである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  6. 前記光触媒粒子の平均粒子径が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、10nm以上100nm以下の個数平均粒径を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光触媒塗装体の製造に用いられる光触媒コーティング液であって、
    溶媒と、
    5質量部以上15質量部以下の光触媒粒子と、
    75質量部を超え95質量部以下の無機酸化物粒子と、
    シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンと
    を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなる、光触媒コーティング液。
  8. 前記無機酸化物の平均粒子径が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、5nmを超え40nm未満の個数平均粒径を有する、請求項7に記載の光触媒コーティング液。
  9. 前記無機酸化物粒子がシリカである、請求項7または8に記載の光触媒コーティング液。
  10. 前記光触媒粒子が酸化チタンである、請求項7〜9のいずれか一項に記載の光触媒コーティング液。
  11. 前記光触媒粒子の平均粒子径が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、10nm以上100nm以下の個数平均粒径を有する、請求項7〜10のいずれか一項に記載の光触媒コーティング液。
  12. 請求項1〜6のいずれか一項に記載された光触媒塗装体の製造に用いられる中間層を形成するためのコーティング液であって、溶媒と、シリコーン変性樹脂および紫外線吸収剤とを含んでなる、コーティング液。
  13. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の光触媒塗装体の製造に用いられるコーティング液の組み合わせであって、請求項7〜11のいずれか一項に記載の光触媒コーティング液と、請求項12に記載の中間層を形成するためのコーティング液との組み合わせ。
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