JP4897781B2 - 光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液 - Google Patents

光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液 Download PDF

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Description

本発明は、建築物等の外装材の用途で、高度の耐候性、親水性、有害ガス分解性、および各種被膜特性に優れた光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液に関する。
酸化チタンなどの光触媒が、建築物の外装材など多くの用途において近年利用されている。光触媒の利用により、光エネルギーを利用して種々の有害物質を分解したり、あるいは、光触媒が塗布された基材表面を親水化して表面に付着した汚れを容易に水で洗い流すことが可能となる。このような光触媒を塗布した光触媒塗装体を得る技術としては、以下のものが知られている。
光触媒性金属酸化物粒子と、コロイダルシリカと、界面活性剤とを含有する水性分散液を用いて、合成樹脂等の表面に親水性を付与する技術が知られている(例えば、特許文献1(特開平11−140432号公報)参照)。この技術にあっては、界面活性剤を10〜25重量%と多量に含有させることにより親水性を強化している。また、膜厚を0.4μm以下とすることで光の乱反射による白濁を防止している。
バインダー成分としてのシリカゾルと光触媒性二酸化チタンとを含有する塗膜を基体に形成して光触媒体を得る技術も知られている(例えば、特許文献2(特開平11−169727号公報)参照)。この技術にあっては、シリカゾルの添加量がSiO基準で二酸化チタンに対して20〜200重量部であるとされており、二酸化チタンの含有比率が高い。また、シリカゾルの粒径も0.1〜10nmと小さい。
光触媒塗料を用いて波長500nmの光を50%以上透過させ、かつ、320nmの光を80%以上遮断する光触媒塗膜を形成する技術も知られている(例えば、特許文献3(特開2004−359902号公報)参照)。この技術にあっては、光触媒塗料のバインダーとしてオルガノシロキサン部分加水分解物が用いられており、その配合量は塗料組成物全体の5〜40質量%が好ましいとされている。
ところで、光触媒層の基材を有機材料で構成すると、光触媒の光触媒活性により有機材料が分解あるいは劣化されるという問題が従来から知られている。この問題に対処するため、光触媒層と担体との間にシリコン変性樹脂等の接着層を設けることで、下地の担体を光触媒作用による劣化から保護する技術が知られている(例えば、特許文献4(国際公開第97/00134号パンフレット)参照)。
特開平11−140432号公報 特開平11−169727号公報 特開2004−359902号公報 国際公開第97/00134号パンフレット
本発明者らは、今般、光触媒粒子と無機酸化物粒子とを特定の質量比率で含み、なおかつ加水分解性シリコーンを含まないか又は極力少量に抑えた特定の組成で光触媒層を構成することにより、基材(特に有機基材)への浸食を抑制しながら、高度の耐候性、親水性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体が得られるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、基材(特に有機基材)に対する浸食を防止しながら、高度の耐候性、親水性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体およびそのための光触媒コーティング液を提供することにある。
すなわち、本発明による光触媒塗装体は、基材と、該基材上に設けられた光触媒層とを備えた光触媒塗装体であって、前記光触媒層が、
1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、
85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、
シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物と
を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンの乾燥物の合計量が100質量部となるように含んでなり、さらに界面活性剤を0質量部以上10質量部以下含んでなるものである。
また、本発明による光触媒コーティング液は、上記光触媒塗装体の製造に用いられる光触媒コーティング液であって、
溶媒と、
1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、
85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、
シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンと
を、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなり、さらに界面活性剤を0質量部以上10質量部以下含んでなるものである。
光触媒塗装体
本発明による光触媒塗装体は、基材と、この基材上に設けられる光触媒層とを備えてなる。光触媒層は、1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、さらに任意成分として、シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物と、0質量部以上10質量部未満の界面活性剤とを含んでなる。
すなわち、本発明による光触媒層は、光触媒粒子の配合割合が無機酸化物粒子よりもかなり少ないことで、光触媒粒子の基材との直接的な接触を最小限に抑えることができ、それにより基材(特に有機基材)を浸食しにくくなるものと考えられる。また、光触媒自体による紫外線吸収によって基材に到達する紫外線量を低減して紫外線による基材の損傷も低減できると考えられる。
同時に、この構成により、基材(特に有機基材)に対する浸食を防止しながら、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体を得ることが可能となる。これらの幾つもの優れた効果が同時に実現される理由は定かではないが、以下のようなものではないかと考えられる。ただし、以下の説明はあくまで仮説にすぎず、本発明は何ら以下の仮説によって限定されるものではない。まず、光触媒層は、光触媒粒子および無機酸化物粒子の二種類の粒子から基本的に構成されるため、粒子間の隙間が豊富に存在する。光触媒層のバインダーとして広く用いられる加水分解性シリコーンを多量に使用した場合にはそのような粒子間の隙間を緻密に埋めてしまうため、ガスの拡散を妨げるものと考えられる。しかし、本発明の光触媒層は加水分解性シリコーンを含まないか、含むとしても光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンの合計量100質量部に対して10質量部未満としているため、粒子間の隙間を十分に確保することができ、そのような隙間によってNOxやSOx等の有害ガスが光触媒層中に拡散しやすい構造が実現され、その結果、有害ガスが光触媒粒子と効率良く接触して光触媒活性により分解されるのではないかと考えられる。さらに光触媒粒子を非常に少なくしても、無機酸化物粒子と共存させることで、実用上十分な光触媒活性と膜強度、耐候性とが両立できることを見出した。
上記したような種々の現象が同時に起こることで、基材(特に有機基材)に対する浸食を防止しながら、耐候性、親水性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)に優れた光触媒塗装体が実現されるものと考えられる。したがって、本発明による光触媒層は、特に低緯度の熱帯、亜熱帯地方などの紫外線量が多く、かつ高温・多湿の気象条件下においても適用可能である。
基材
本発明に用いる基材は、その上に光触媒層を形成可能な材料であれば無機材料、有機材料を問わず種々の材料であってよく、その形状も限定されない。材料の観点からみた基材の好ましい例としては、金属、セラミック、ガラス、プラスチック、ゴム、石、セメント、コンクリ−ト、繊維、布帛、木、紙、それらの組合せ、それらの積層体、それらの表面に少なくとも一層の被膜を有するものが挙げられる。用途の観点からみた基材の好ましい例としては、建材、建物外装、窓枠、窓ガラス、構造部材、乗物の外装及び塗装、機械装置や物品の外装、防塵カバー及び塗装、交通標識、各種表示装置、広告塔、道路用遮音壁、鉄道用遮音壁、橋梁、ガードレ−ルの外装及び塗装、トンネル内装及び塗装、碍子、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、ビニールハウス、車両用照明灯のカバー、屋外用照明器具、台及び上記物品表面に貼着させるためのフィルム、シート、シール等といった外装材全般が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、基材として、少なくともその表面が有機材料で形成された基材を用いることができ、基材全体が有機材料で構成されているもの、無機材料で構成された基材の表面が有機材料で被覆されたもの(例えば化粧板)のいずれをも包含する。本発明の光触媒層によれば、光触媒活性により損傷を受けやすい有機材料に対しても浸食しにくいことから、中間層を介在させることなく、光触媒層という一つの層で優れた機能を有する光触媒塗装体を製造することができる。その結果、中間層の形成が不要となる分、光触媒塗装体の製造に要する時間やコストを削減できる。
光触媒層およびそのための光触媒コーティング液
本発明の光触媒層は、1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物とを、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなる。そして、この光触媒層は光触媒粒子、無機酸化物粒子、任意成分としての加水分解性シリコーンおよび任意成分としての界面活性剤を上記質量比率で溶媒中に分散または溶解されてなる光触媒コーティング液を基材上に塗布することによって形成されることができる。
本発明の好ましい態様によれば、光触媒層は0.5μm以上3μm以下の膜厚を有するのが好ましい。より好ましい膜厚の範囲は0.5μm以上3.0μm以下であり、さらに好ましくは1.0μm以上2.0μm以下である。このような範囲内であると、光触媒層と基材の界面に到達する紫外線が充分に減衰されるので耐候性が向上する。また、無機酸化物粒子よりも含有比率が低い光触媒粒子を膜厚方向に増加させることができるので、有害ガス分解性も向上する。さらには、透明性、膜強度においても優れた特性が得られる。
本発明に用いる光触媒粒子は、光触媒活性を有する粒子であれば特に限定されず、あらゆる種類の光触媒の粒子が使用可能である。光触媒粒子の例としては、酸化チタン(TiO)、ZnO、SnO、SrTiO、WO、Bi、Feのような金属酸化物の粒子が挙げられ、好ましくは酸化チタン粒子、より好ましくはアナターゼ型酸化チタン粒子である。酸化チタンは、無害で、化学的にも安定で、かつ、安価に入手可能である。また、酸化チタンはバンドギャップエネルギーが高く、従って、光励起には紫外線を必要とし、光励起の過程で可視光を吸収しないので、補色成分による発色が起こらない。酸化チタンは、粉末状、ゾル状、溶液状など様々な形態で入手可能であるが、光触媒活性を示すものであれば、いずれの形態でも使用可能である。
本発明の好ましい態様によれば、光触媒粒子が10nm以上100nm以下の平均粒径を有するのが好ましく、より好ましくは10nm以上60nm以下である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、耐候性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)が効率良く発揮される。
本発明の光触媒層およびコーティング液における光触媒粒子の含有量は、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、1質量部を超え5質量部未満、好ましくは2質量部以上5質量部未満であり、より好ましくは2質量部以上4.5質量部以下である。このように光触媒粒子の配合割合を少なくすることで、光触媒粒子の基材との直接的な接触をできるだけ少なくして、基材(特に有機材料)に対する浸食を防止することができ、耐候性も向上すると考えられる。それにもかかわらず、有害ガス分解性といった光触媒活性に起因する機能も十分に発揮させることができる。また、2質量部以上とすることで高い親水性も十分付与できる。
本発明の好ましい態様によれば、さらに高い光触媒能を発現するために、バナジウム、鉄、コバルト、ニッケル、パラジウム、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、銅、銀、白金および金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属および/またはその金属からなる金属化合物を、光触媒層や光触媒コーティング液に添加することができる。この添加は、前記金属または金属化合物をコーティング液に混合し、溶解または分散させる方法、前記金属または金属化合物を光触媒層や光触媒粒子に担持する方法、などのいずれの方法によっても行うことができる。
本発明に用いる無機酸化物粒子は、光触媒粒子と共に層を形成可能な無機酸化物の粒子であれば特に限定されず、あらゆる種類の無機酸化物の粒子が使用可能である。そのような無機酸化物粒子の例としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、セリア、イットリア、ボロニア、マグネシア、カルシア、フェライト、無定型チタニア、ハフニア等の単一酸化物の粒子;およびチタン酸バリウム、ケイ酸カルシウム等の複合酸化物の粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子である。これら無機酸化物粒子は、水を分散媒とした水性コロイド;またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、もしくはエチレングリコールなどの親水性溶媒にコロイド状に分散させたオルガノゾルの形態であるのが好ましく、特に好ましくはコロイダルシリカである。
本発明の無機酸化物粒子は、平均粒径が5nmを超え20nm以下であることが好ましく、より好ましくは10nm以上20nm以下である。なお、この平均粒径は、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定した個数平均値として算出される。粒子の形状としては真球が最も良いが、略円形や楕円形でも良く、その場合の粒子の長さは((長径+短径)/2)として略算出される。この範囲内であると、耐候性、有害ガス分解性、および所望の各種被膜特性(透明性、膜強度等)が効率良く発揮され、とりわけ透明で密着性が良好な光触媒層を得ることができるだけではなく、摺動磨耗に対して強固な膜を得ることができる。
本発明の光触媒層およびコーティング液における無機酸化物粒子の含有量は、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、85質量部を超え99質量部未満、好ましくは85質量部を超え98質量部以下、より好ましくは85.5質量部を超え98質量部以下である。
本発明の光触媒層は加水分解性シリコーンの乾燥物を実質的に含まないのが好ましく、より好ましくは全く含まない。加水分解性シリコーンとは、アルコキシ基を有するオルガノシロキサンおよび/またはその部分加水分解縮合物の総称である。しかしながら、本発明の有害ガス分解性を確保できる程度であれば加水分解性シリコーンを任意成分として含有することは許容される。したがって、加水分解性シリコーンの含有量は、シリカ換算で、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満であり、好ましくは5質量部以下、最も好ましくは0質量部である。加水分解性シリコーンとしては、4官能シリコーン化合物がよく使用され、例えば、エチルシリケート40(オリゴマー、Rがエチル基)、エチルシリケート48(オリゴマー、Rがエチル基)メチルシリケート51(オリゴマー、Rがメチル基)(いずれもコルコート社製)の形で市販されている。これらの加水分解性シリコーンは、光触媒コーティング液を塗布後、乾燥に伴い縮合が進み、乾燥物となる。
光触媒コーティング液には任意成分として界面活性剤を含んでよい。本発明に用いる界面活性剤は、任意成分として、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量100質量部に対して、0質量部以上10質量部未満含有されていてもよく、好ましくは0質量部以上8質量部以下であり、より好ましくは0以上6質量部以下である。界面活性剤の効果の1つとして基材へのレベリング性があり、コーティング液と基材との組合せによって界面活性剤の量を先述の範囲内で適宜決めれば良く、その際の下限値は0.1質量部とされてよい。この界面活性剤は光触媒コーティング液の濡れ性を改善するために有効な成分であるが、塗布後に形成される光触媒層にあってはもはや本発明の光触媒塗装体の効果には寄与しない不可避不純物に相当する。したがって、光触媒コーティング液に要求される濡れ性に応じて、上記含有量範囲内において使用されてよく、濡れ性を問題にしないのであれば界面活性剤は実質的にあるいは一切含まなくてよい。使用すべき界面活性剤は、光触媒や無機酸化物粒子の分散安定性、中間層上に塗布した際の濡れ性を勘案し適宜選択されることができるが、非イオン性界面活性剤が好ましく、より好ましくは、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、ポリアルキレングリコール非イオン性界面活性剤、フッ素系非イオン性界面活性剤、シリコン系非イオン性界面活性剤が挙げられる。
本発明の光触媒コーティング液は、光触媒粒子、無機酸化物粒子、および所望により加水分解性シリコーンおよび界面活性剤を上記特定の配合比率で溶媒中に分散または溶解させることにより得ることができる。溶媒としては、上記構成成分を適切に分散または溶解可能なあらゆる溶媒が使用可能であり、水および/または有機溶媒であってよい。また、本発明の光触媒コーティング液の固形分濃度は特に限定されないが、1〜10質量%とするのが塗布し易い点で好ましい。なお、光触媒コーティング組成物中の構成成分の分析は、コーティング液を限外ろ過によって粒子成分と濾液に分離し、それぞれを赤外分光分析、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー、蛍光X線分光分析などで分析し、スペクトルを解析することによって評価することができる。
光触媒層製造方法
本発明の光触媒塗装体は、本発明の光触媒コーティング液を基材上に塗布することにより簡単に製造することができる。光触媒層の塗装方法は、前記液剤を刷毛塗り、ローラー、スプレー、ロールコーター、フローコーター、ディップコート、流し塗り、スクリーン印刷等、一般に広く行われている方法を利用できる。コーティング液の基材への塗布後は、常温乾燥させればよく、あるいは必要に応じて加熱乾燥してもよいが、焼結が進むまで加熱すると粒子間の空隙が減少し十分な光触媒活性を得ることができなくなる。本発明において、乾燥温度は10℃以上500℃以下であり、基材の種類に応じて上限値は適宜設定されて良い。基材の少なくとも一部に樹脂が含まれる場合、樹脂の耐熱温度等を考慮して好ましい乾燥温度は10℃以上200℃以下である。
このように本発明の光触媒塗装体は、本発明の光触媒層によれば、光触媒活性により損傷を受けやすい有機材料に対しても浸食しにくいことから、中間層を介在させることなく、光触媒層という一つの層で優れた機能を有する光触媒塗装体を製造することができる。その結果、中間層の形成が不要となる分、光触媒塗装体の製造に要する時間やコストを削減できる。
本発明を以下の例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
なお、以下の例において光触媒コーティング液の作製に使用した原料は以下の通りである。
光触媒粒子
・チタニア水分散体(平均粒径:42nm、塩基性)
無機酸化物粒子
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:14nm、塩基性)(例1〜7、例9、例11〜23で使用)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:26nm、塩基性)(例8で使用)
・水分散型コロイダルシリカ(平均粒径:5nm、塩基性)(例10で使用)
加水分解性シリコーン
・テトラメトキシシランの重縮合物(SiO換算濃度:51質量%。溶媒:メタノール、水)
界面活性剤
・ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤
例1〜3:耐候性の評価(屋外暴露)
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、シーラー処理した窯業系サイディング基材上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表1に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例1〜3のいずれの例においても約0.5μmであった。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、宮古島にてJIS K 5600−7−6に規定される暴露架台を用い南面に向けて水平より20°の角度で屋外暴露を行った。三ヶ月毎に外観を目視で確認した。
得られた結果は表1に示される通りであった。ここで、表中のGはほとんど変化しなかったことを、NGはわずかに白華が生じたことを示す。表1に示されるように、光触媒層中の光触媒粒子の含有量を5質量部未満とすることで、宮古島において有機基材上に光触媒層を塗装しても充分な耐候性を有することが分かった。
Figure 0004897781
例4〜6:紫外線暴露親水性評価
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、表2に示される各種平均粒径の無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表2に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例4〜6のいずれの例においても約0.5μmであった。
こうして得られた光触媒塗装体について、以下の通り親水性の評価を行った。光触媒塗装体を暗所にて1日間養生した後に、1mW/cmに調整したBLB光下に光触媒塗装面を上にして7日間放置後、光触媒塗装面の接触角を接触角計(協和界面科学製 CA−X150型)にて測定した。なお、接触角の測定は親水性の代用とした。
得られた結果は表2に示される通りであった。ここで、紫外線曝露親水性の評価基準は以下の通りとした。
<親水性>
A:接触角が10°未満
B:接触角が10°以上、20°未満
C:接触角が20°以上
表2に示されるように、光触媒層中の光触媒粒子の含有量を2質量部以上とすることによって、高い親水性を確保することが分かった。
Figure 0004897781

例7、8:耐摺動磨耗性評価
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、エポキシ樹脂で目止め処理したスレート板に、カーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、表3に示される各種平均粒径の無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表3に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例7および例8のいずれの例においても約0.5μmであった。
こうして得られた光触媒塗装体について、以下の通り耐洗浄性試験を行った。試験方法はJIS A6909に準じて行った。光触媒塗装体を洗浄試験機(東洋精機製作所製 No.458 ウオッシャビリティテスタ)の試験台に光触媒塗装面を上向きにして水平に固定した。乾燥したブラシの質量が450gの豚毛ブラシの毛先を0.5%溶液の石鹸水に浸した後に光触媒塗装面に載せ、500往復させ、その後取り外して水で洗浄し乾燥させた。
十分乾燥させた光触媒塗装体に3mW/cmに調整したBLB光を24時間照射した後、光触媒塗装面の接触角を接触角計(協和界面科学製 CA−X150型)にて測定した。なお、接触角の測定は親水性の代用とした。
得られた結果は表3に示される通りであった。ここで、耐摺動磨耗性の評価基準は以下の通りとした。
<耐摺動磨耗性>
A:接触角が10°未満
B:接触角が10°以上
表3に示されるように、例7の光触媒塗装体は摺動に対して強固な膜を形成することが分かった。
Figure 0004897781
例9、10:ヘイズの測定
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として550nmの波長の透過率が94%のフロート板ガラスを用いた。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、表4に示される各種平均粒径の無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表4に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液を先述の基材上に1000rpmで10秒間スピンコートし、120℃で乾燥し光触媒層を得た。こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体のヘイズをヘイズ計(Gardner製 haze−gard plus)を用いて測定した。
得られた結果は表4に示される通りであった。例9の光触媒塗装体はヘイズ値を1%未満に抑えることができ透明性が確保できることが分かった。
Figure 0004897781

例11〜14:有害ガス分解性の評価
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、表5に示される各種平均粒径の無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表5に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。したがって、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、表5に示される値であった。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通りガス分解性試験を行った。光触媒塗装体に前処理として1mW/cmのBLB光で12hr以上照射した。JIS R1701に記載の反応容器内に塗装体サンプルを1枚セットした。25℃、50%RHに調整した空気に約1000ppbになるようにNOガスを混合し、遮光した反応容器内に20分導入した。その後ガスを導入したままで3mW/cmに調整したBLB光を20分間照射した。その後ガスを導入した状態で再度反応容器を遮光した。NOx除去量は、BLB光照射前後でのNO、NO濃度から下記の式に従って計算した。
NOx除去量=[NO(照射後)−NO(照射時)]−[NO(照射時)−NO(照射後)]
得られた結果は表5に示される通りであった。表5に示されるように、光触媒層中の光触媒粒子の含有量を5質量部未満としても充分にNOx分解活性を得られることが分かった。
Figure 0004897781
例15〜17:加水分解性シリコーンの影響
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、加水分解性シリコーンとしてのテトラメトキシシランの重縮合物と、界面活性剤とを表6に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、例15の光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。走査型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例15〜17のいずれの例においても約0.5μmであった。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通りガス分解性試験を行った。光触媒塗装体に前処理として1mW/cmのBLB光で12hr以上照射した。JIS R1701に記載の反応容器内に塗装体サンプルを1枚セットした。25℃、50%RHに調整した空気に約1000ppbになるようにNOガスを混合し、遮光した反応容器内に20分導入した。その後ガスを導入したままで3mW/cmに調整したBLB光を20分間照射した。その後ガスを導入した状態で再度反応容器を遮光した。NOx除去量は、BLB光照射前後でのNO、NO濃度から下記の式に従って計算した。
NOx除去量=[NO(照射後)−NO(照射時)]−[NO(照射時)−NO(照射後)]
得られた結果は表6に示される通りであった。ここで、加水分解性シリコーンを全く含まない例15を100として、それに対して50以上をG、50未満をNGを表す。表6に示されるように、光触媒層を光触媒粒子と無機酸化物から構成し、実質的に加水分解性シリコーンを含まないことにより、良好なNOx分解性を示した。一方、加水分解性シリコーンが10質量部入ったものはNOx分解性が喪失していることが分かった。
Figure 0004897781
例18、19:耐候性試験(下地劣化の評価)
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として着色有機塗装体を用意した。この着色有機塗装体は、フロート板ガラス上にカーボンブラック粉末を添加した汎用アクリルシリコーンを塗布して、十分に乾燥および硬化させたものである。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表7に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記着色有機塗装体上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。操作型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚を測定したところ、例18および例19のいずれの例においても約0.5μmであった。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り耐候性試験を行った。光触媒塗装体を過酸化水素水噴霧を併用したキセノンアーク式耐候性試験機(東洋精機製、Ci4000)に投入した。キセノンランプの強度は80W/m(波長300〜400nm)、過酸化水素水の濃度は1%、キセノンランプの照射は22時間/サイクルで過酸化水素水の噴霧は始めの2時間で3分噴霧→2分停止を繰り返して行う。200hr経過後に試験片を取り出し、塗膜表面にセロハンテープを貼り付けて一気に剥がし、塗膜劣化(チョーキング現象)によるテープの糊面に付着する着色有機塗装の粉の有無で評価した。
得られた結果は表7に示される通りであった。ここで、表中のGはほとんどテープの糊面に粉が付着していなかったことを表す。表7に示されるように、光触媒層中の光触媒粒子の含有量を5質量部未満の光触媒塗装体は充分な耐候性を有することが分かった。
Figure 0004897781

例20〜例23:直線透過率の測定
光触媒層を備えた光触媒塗装体を以下の通り製造した。まず、基材として550nmの波長の透過率が94%のフロート板ガラスを用意した。一方、光触媒としてのチタニア水分散体と、無機酸化物としての水分散型コロイダルシリカと、溶媒として水と、界面活性剤とを表8に示される配合比で混合して、光触媒コーティング液を得た。なお、この光触媒コーティング液は加水分解性シリコーンを含まない。光触媒コーティング液中の光触媒および無機酸化物の合計の固形分濃度は5.5質量%とした。
得られた光触媒コーティング液をあらかじめ加熱した上記フロート板ガラス上にスプレー塗布し、120℃で乾燥した。こうして、光触媒層を形成させて、光触媒塗装体を得た。操作型電子顕微鏡観察により光触媒層の膜厚(μm)を測定したところ、表8に示される値であった。
こうして得られた50×100mmの大きさの光触媒塗装体について、以下の通り直線(550nm)透過率の測定を紫外・可視・近赤外分光光度計(島津製作所製 UV−3150)を用いて行った。
得られた結果は表8に示される通りであった。ここで、直線透過率の評価基準は以下の通りとした。
<直線透過率>
A:直線(550nm)透過率が95%以上
B:直線(550nm)透過率が90%以上95%未満
表8の光触媒塗装体は高い透明性を示した。
Figure 0004897781

Claims (9)

  1. 基材と、該基材上に設けられた透明光触媒層とを備えた光触媒塗装体であって、
    前記光触媒層が、
    1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、
    85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、
    シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンの乾燥物と
    からなり、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなり、
    さらに界面活性剤を0質量部以上10質量部以下含んでなる、光触媒塗装体。
  2. 前記光触媒粒子が酸化チタン粒子である、請求項1に記載の光触媒塗装体。
  3. 前記無機酸化物粒子が、シリカ粒子である、請求項1または2に記載の光触媒塗装体。
  4. 前記無機酸化物粒子の平均粒子径が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、5nmを超え20nm以下の個数平均粒径を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  5. 外装材として用いられる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光触媒塗装体。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光触媒塗装体の製造に用いられる光触媒コーティ
    ング液であって、
    溶媒と、
    1質量部を超え5質量部未満の光触媒粒子と、
    85質量部を超え99質量部未満の無機酸化物粒子と、
    シリカ換算で0質量部以上10質量部未満の加水分解性シリコーンと
    からなり、前記光触媒粒子、前記無機酸化物粒子、および前記加水分解性シリコーンのシリカ換算量の合計量が100質量部となるように含んでなり、
    さらに界面活性剤を0質量部以上10質量部以下含んでなる、光触媒コーティング液。
  7. 前記光触媒粒子が酸化チタン粒子である、請求項6に記載の光触媒コーティング液。
  8. 前記無機酸化物粒子が、シリカ粒子である、請求項6または7に記載の光触媒コーティ
    ング液。
  9. 前記無機酸化物粒子の平均粒子径が、走査型電子顕微鏡により20万倍の視野に入る任意の100個の粒子の長さを測定することにより算出される、5nmを超え20nm以下の個数平均粒径を有する、請求項6〜8のいずれか一項に記載の光触媒コーティング液。
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