JPH1045397A - フォークリフトトラックのマスト装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 フルフリーリフト動作時に、フルフリーシリ
ンダ、マストシリンダの順に伸長動作するために、フォ
ークが高揚高位置となるまでに時間がかかる。 【解決手段】 コントロールバルブ８とフルフリーシリ
ンダ６とを接続している分岐経路１３Ｂに絞り弁１５を
設ける。マストシリンダ３およびフルフリーシリンダ６
に同時に油圧を導入する際、絞り弁１５によって圧力損
失を生じさせる。フルフリーシリンダ６の伸長動作と同
時もしくはこれに先行してマストシリンダ３を伸長動作
させ、実質的に両シリンダ３，６が並行して伸長動作す
ることでフルフリーリフト動作完了までの時間を短縮化
する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、フォーク等の荷役
装置が装着されるリフトブラケットを昇降動作させるた
めのフルフリーシリンダ（フリーリフトシリンダ）と、
マストを昇降動作させるためのマストシリンダ（メイン
リフトシリンダ）とを備えたフォークリフトトラックの
マスト装置に関し、特にコントロールバルブからの油圧
をフルフリーシリンダおよびマストシリンダのそれぞれ
に同時に導入しつつもそれらフルフリーシリンダとマス
トシリンダとを常に所定の順序で作動させるようにした
マスト装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】フルフリーシリンダとマストシリンダと
を備えたフォークリフトトラックのマスト装置として、
特開昭６１−２５７８９３号公報、特開昭６２−１５３
０９５号公報および特開平４−３９２９８号公報等に記
載されたものが知られている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】フルフリーシリンダと
マストシリンダとを備えた従来のフォークリフトトラッ
クのマスト装置においては、コントロールバルブの出力
側の油圧経路を分岐させてフルフリーシリンダとマスト
シリンダのそれぞれに接続して、コントロールバルブか
らの油圧を各シリンダに同時に導入するものの、フルフ
リーシリンダのピストンの受圧面積をマストシリンダの
ピストンの総受圧面積よりも予め大きく設定しておくこ
とで、各シリンダの伸長時に常にフルフリーシリンダを
先行して作動させ、これに続いてマストシリンダを作動
させるようになっている。

【０００４】この従来の構造では、油圧制御系の構造を
簡素化できる反面、フルフリーシリンダとマストシリン
ダとのピストンの受圧面積の差はそのままフルフリーシ
リンダの伸長速度がマストシリンダの伸長速度よりも小
さいことを意味し、結果的にその速度差が荷役作業の効
率を低下させる一因となっている。

【０００５】本発明は以上のような課題に着目してなさ
れたもので、既存の構造にわずかな改良を加えるだけ
で、マストシリンダをフルフリーシリンダに先行させ
て、もしくはフルフリーシリンダと同時に伸長動作させ
ることができるようにしたマスト装置を提供しようとす
るものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】請求項１に記載の発明
は、リフトブラケットを昇降駆動させるフルフリーシリ
ンダとマストを昇降駆動させるマストシリンダとを備
え、コントロールバルブの出力側の油圧経路を分岐させ
てフルフリーシリンダとマストシリンダのそれぞれに接
続して、コントロールバルブからの油圧を各シリンダに
同時に導入するようにしたフォークリフトトラックのマ
スト装置において、前記分岐位置とフルフリーシリンダ
とを結ぶ油圧経路に絞り弁を介装したことを特徴として
いる。

【０００７】請求項２に記載の発明は、請求項１に記載
の発明におけるフルフリーシリンダのピストンの受圧面
積がマストシリンダのピストンの総受圧面積よりも大き
く設定されていることを特徴としている。

【０００８】請求項３に記載の発明は、請求項２に記載
の発明における絞り弁が、絞り機能を発揮する位置と絞
り機能を発揮しない位置との間でその位置が選択的に切
換可能になっていることを特徴としている。

【０００９】また、請求項４に記載の発明は、請求項３
に記載の発明における絞り弁は２位置タイプの電磁切換
弁として構成されていて、その２位置のうちのいずれか
一方が絞り弁機能を発揮する位置であることを特徴とし
ている。

【００１０】さらに、請求項５に記載の発明は、請求項
２に記載の発明における絞り弁と並列にチェック弁が設
けられていて、フルフリーシリンダの伸長動作時には絞
り弁による絞り機能が発揮される一方で、フルフリーシ
リンダの収縮動作時にはチェック弁を開いて自由流を許
容するものであることを特徴としている。

【００１１】したがって、請求項１，２に記載の発明で
は、フルフリーシリンダおよびマストシリンダの伸長動
作時に絞り弁の絞り機能によって圧力損失が発生し、そ
のためにフルフリーシリンダが作動圧に達するのと同時
もしくはフルフリーシリンダが作動圧に達するのに先行
してメインシリンダが作動圧に達することになる。これ
により、フルフリーシリンダの伸長動作と同時もしくは
フルフリーシリンダの伸長動作に先行してメインシリン
ダが伸長動作し、荷役作業がスピードアップ化される。

【００１２】そして、請求項３，４に記載の発明では、
絞り機能の要否をオペレータが必要に応じて選択的に切
り換える。例えば絞り機能が発揮されないように切り換
えることにより、従来と同様にフルフリーシリンダの伸
長動作がマストシリンダの伸長動作に先行して行われ
る。

【００１３】逆に、フルフリーシリンダの伸長動作を先
行させることが必ずしも必要でない場合には絞り弁の機
能が発揮されるように切り換えることにより、マストシ
リンダの伸長動作がフルフリーシリンダの伸長動作と同
時もしくはそれに先行して行われる。

【００１４】そして、請求項５に記載の発明では、フル
フリーシリンダの伸長動作時には絞り弁の絞り機能が発
揮されるものの、収縮動作時には絞り機能が発揮されな
いので、その収縮動作時には従来と同様にマストシリン
ダの動作がフルフリーシリンダに先行して行われるよう
になって、リフトブラケットの下降時のスピードアップ
化が図れる。

【００１５】

【発明の効果】請求項１，２に記載の発明によれば、フ
ルフリーシリンダの油圧供給経路に絞り弁を設けたこと
から、フルフリーシリンダの伸長動作時に絞り機能によ
って圧力損失が発生して、マストシリンダの伸長動作を
フルフリーシリンダの伸長動作と同時もしくはそのフル
フリーシリンダの伸長動作に先行して行わせることがで
き、特に高揚高時の荷役作業がスピードアップされて、
作業効率を大幅に向上させることができる効果がある。

【００１６】特に、マストシリンダの伸長動作の完了後
にフルフリーシリンダの伸長動作が完了するように絞り
弁の絞り量を予め調整しておくことにより、フルフリー
リフト動作の末期では伸長速度の小さいフルフリーシリ
ンダのみが作動することから、高揚高時の荷役作業をよ
り安全に行える効果がある。

【００１７】また、請求項３に記載の発明によれば、上
記の絞り弁を、絞り機能を発揮する位置と絞り機能を発
揮しない位置との間でその位置の選択切り換えが可能な
ものとしたことから、絞り機能の要否をオペレータが任
意に選択することができる。したがって、上記の切換に
よって従来と同様にフルフリーシリンダの伸長動作を先
行させることができる一方で、フルフリーリフト動作時
の高速度化を優先させたい場合には先に述べたようにマ
ストシリンダの伸長動作を先行させて荷役作業のスピー
ドアップ化を図ることができ、請求項２に記載の発明と
同様の効果のほかに、各種荷役作業時の融通性が高くな
る利点がある。特にマストシリンダの伸長動作を先行さ
せた場合には、先に述べたように高揚高時のストローク
末期まで伸長速度の小さいフルフリーシリンダが伸長動
作することになるので、高揚高時の荷役作業をより安全
に行える効果がある。

【００１８】そして、請求項４に記載の発明によれば、
上記の絞り弁の絞り機能の要否の切り換えを２位置タイ
プの電磁切換弁にて行うようにしたことから、請求項３
に記載の発明と同様の効果に加えて、上記の切り換え動
作を簡単かつ確実に行える効果がある。

【００１９】また、請求項５に記載の発明によれば、上
記の絞り弁のほかにチェック弁を併用して、フルフリー
シリンダの伸長動作時にのみ絞り機能が発揮されるよう
にしたため、フルフリーシリンダおよびマストシリンダ
の収縮動作時には従来と同様にマストシリンダを先行さ
せて作動させることができ、請求項２に記載の発明と同
様の効果のほかに、リフトブラケットの下降動作のスピ
ードアップ化も併せて達成できる効果がある。

【００２０】

【発明の実施の形態】図１および図２は本発明の代表的
な実施の形態を示す図であって、フォークリフトトラッ
クにおける２段式のマスト装置の例を示している。

【００２１】図２に示すように、図示しない車体前部に
配置されたアウタマスト１にはインナマスト２が昇降可
能に設けられており、それらアウタマスト１とインナマ
スト２との間には左右一対のマストシリンダ３が配置さ
れている。そして、マストシリンダ３の下端はアウタマ
スト１の下部に固定支持されているとともに、そのピス
トンロッド３ｄの上端はインナマスト２の上部に連結さ
れていて、マストシリンダ３の伸縮作動に応じてインナ
マスト２がアウタマスト１に対して昇降動作するように
なっている。

【００２２】前記インナマスト２にはフォーク５ａを支
持するためのリフトブラケット５が昇降可能に設けられ
ており、フルフリーシリンダ６の伸縮作動に応じてリフ
トブラケット５がフルフリーチェーン７を介してインナ
マスト２に沿って昇降動作するようになっている。

【００２３】図１は図２に示したマスト装置の油圧制御
回路を示しており、コントロールバルブ８の入力ポート
９側には油圧経路１０を介して図示しない油圧源からの
油圧が供給されるようになっているとともに、コントロ
ールバルブ８の出力側の油圧経路１１は分岐位置１２に
て三つの分岐経路１３Ａ〜１３Ｃに分岐されていて、各
分岐経路１３Ａ〜１３Ｃは一対のリフトシリンダ３，３
とフルフリーシリンダ６にそれぞれ接続されている。す
なわち、分岐経路１３Ａ，１３Ｃはクッションバルブ１
４を介してマストシリンダ３，３のヘッド側の油圧室３
ａに接続されているとともに、残る一つの分岐経路１３
Ｂは同じくクッションバルブ１４を介してフルフリーシ
リンダ６のヘッド側の油圧室６ａに接続されている。そ
して、分岐位置１２とフルフリーシリンダ６とを接続し
ている分岐経路１３Ｂのうちクッションバルブ１４より
も上流側には固定絞りとして機能する絞り弁１５が介装
されている。

【００２４】また、マストシリンダ３およびフルフリー
シリンダ６のうちピストン３ｃまたは６ｃによって仕切
られたヘッド側の油圧室３ａまたは６ａとロッド側の油
圧室３ｂまたは６ｂとは、チェックバルブ１６と通路１
７とによって相互に接続されている。

【００２５】ここで、フルフリーシリンダ６のピストン
６ｃの直径をＤ₁とし、各マストシリンダ３，３のピス
トン３ｃの直径をＤ₂とすると、Ｄ₁とＤ₂との関係は従
来と同様に、 （πＤ₁ ²／４）＞２×（πＤ₂ ²／４） となっていて、フルフリーシリンダ６のピストン６ｃの
受圧面積は双方のマストシリンダ３，３のピストン３ｃ
の総受圧面積よりも大きく設定されている。

【００２６】以上の構成に係るマスト装置によれば、フ
ルフリーリフト動作（フリーリフト動作）が必要になっ
た場合にオペレータがレバー操作を行うと、コントロー
ルバルブ８から吐出された油圧がフルフリーシリンダ６
および双方のマストシリンダ３，３のヘッド側の油圧室
３ａ，６ａに同時に導入される。

【００２７】そして、従来のマスト装置と同様に、双方
のマストシリンダ３，３はフルフリーシリンダ６の作動
油圧よりも高圧にならないと伸長作動しないようにロッ
ド荷重やシリンダチューブ内径等が設定されているもの
の、フルフリーシリンダ６の分岐経路１３Ｂに絞り弁１
５が介装されているためにその分岐経路１３Ｂでは絞り
弁１５による絞り効果のために圧力損失が発生する。こ
れにより、相対的にマストシリンダ３，３が作動圧に達
する時期が早められ、フルフリーシリンダ６が作動圧に
達するのとほぼ同時もしくはそれに先立ってマストシリ
ンダ３，３が作動圧に達し、マストシリンダ３，３はフ
ルフリーシリンダ６が伸長動作するのとほぼ同時もしく
はそのフルフリーシリンダ６の伸長動作に先行して伸長
動作することになる。

【００２８】すなわち、図２の（Ａ）に示すように最低
高さ位置にあるフォーク５ａを同図（Ｃ）の最高位置に
なるまでフルフリーリフト動作させる場合には、同図
（Ｂ）に示すようにインナマスト２に対してフォーク５
ａが上昇動作するのとほぼ同時もしくはそれに先行して
アウタマスト１に対してインナマスト２が上昇動作を開
始し、実質的にアウタマスト１に対するインナマスト２
の上昇動作と、インナマスト２に対するフォーク５ａの
上昇動作が並行して行われることになる。その結果とし
て、フォーク５ａを最低位置から最高位置までフルフリ
ーリフト動作させるのに必要な時間が大幅に短縮化さ
れ、荷役作業の作業効率を改善できるようになる。

【００２９】特に、インナマスト２がアウタマスト１に
対してその上昇限位置に到達したのちに、インナマスト
２に対してフォーク５ａかその上昇限位置に到達するよ
うに上記の絞り弁１５の絞り量を予め調整しておき、フ
ルフリーリフト動作のストローク末期に上昇速度の小さ
いフルフリーシリンダ６のみを作動させるようにすれ
ば、特に高揚高位置での荷役作業をより安全に行うこと
ができるようになる。

【００３０】図３は本発明の第２の実施の形態を示す図
であって、第１の実施の形態における絞り弁１５に代え
て固定絞り１８を有する２位置タイプの電磁切換弁１９
をフルフリーシリンダ６の分岐経路１３Ｂに介装し、固
定絞り１８の機能が必要な場合とそうでない場合とに対
応できるように固定絞り１８を選択的に切り換えできる
ようにしたものである。なお、電磁切換弁１９の切換操
作はオペレータによる図示外のスイッチ操作によってな
される。

【００３１】本実施形態によれば、フルフリーリフト動
作をさせる際に、フルフリーシリンダ６を伸長動作させ
たのちにマストシリンダ３，３を伸長動作させるか、あ
るいは上記のように荷役作業スピードの向上のためにフ
ルフリーシリンダ６の伸長動作と同時もしくはそれに先
行してマストシリンダ３，３を伸長動作させるかを選択
的に切り換えることができ、荷役装置としての融通性が
高いものとなる。

【００３２】図４は本発明の第３の実施の形態を示す図
であって、第１の実施の形態における絞り弁１５と並列
にフルフリーシリンダ６側からコントロールバルブ８側
への自由流を許容するチェック弁２０を介装したもので
ある。

【００３３】本実施形態によれば、フォーク５ａを下降
させるべくフルフリーシリンダ６おいびマストシリンダ
３，３を収縮動作させる場合には、フルフリーシリンダ
６からコントロールバルブ８側に戻される作動油がチェ
ックバルブ２０を経由することで絞り弁１５は機能しな
い。

【００３４】したがって、フォーク５ａの下降時には、
従来のものと同様に前述した各ピストンロッド３ｃ，６
ｃの直径の差に基づいて先ずマストシリンダ３，３が収
縮動作を開始し、その完了を待ってフルフリーシリンダ
６が収縮動作することから、絞り弁１５があることによ
ってフォーク５ａの下降スピードが低下するのを未然に
防止できることになる。

【００３５】なお、上記各実施の形態では２段式のマス
ト装置について例示しているが、３段式のマスト装置に
ついても同様に実施できることはもちろんである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の代表的な実施の形態を示すマスト装置
の油圧制御系の構成説明図。

【図２】２段式のマスト装置の作動説明図。

【図３】本発明第２の実施の形態を示すマスト装置の油
圧制御系の構成説明図。

【図４】本発明第３の実施の形態を示すマスト装置の油
圧制御系の構成説明図。

【符号の説明】

１…アウタマスト ２…インナマスト ３…マストシリンダ ３ｃ…ピストン ５…リフトブラケット ５ａ…フォーク ６…フルフリーシリンダ ６ｃ…ピストン ８…コントロールバルブ １２…分岐位置 １３Ａ〜１３Ｃ…分岐経路 １５…絞り弁 １８…固定絞り １９…電磁切換弁 ２０…チェック弁

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 リフトブラケットを昇降駆動させるフル
   フリーシリンダとマストを昇降駆動させるマストシリン
   ダとを備え、コントロールバルブの出力側の油圧経路を
   分岐させてフルフリーシリンダとマストシリンダのそれ
   ぞれに接続して、コントロールバルブからの油圧を各シ
   リンダに同時に導入するようにしたフォークリフトトラ
   ックのマスト装置において、 前記分岐位置とフルフリーシリンダとを結ぶ油圧経路に
   絞り弁を介装したことを特徴とするフォークリフトトラ
   ックのマスト装置。
2. 【請求項２】 前記フルフリーシリンダのピストンの受
   圧面積がマストシリンダのピストンの総受圧面積よりも
   大きく設定されていることを特徴とする請求項１記載の
   フォークリフトトラックのマスト装置。
3. 【請求項３】 前記絞り弁は、絞り機能を発揮する位置
   と絞り機能を発揮しない位置との間でその位置が選択的
   に切換可能となっていることを特徴とする請求項２記載
   のフォークリフトトラックのマスト装置。
4. 【請求項４】 前記絞り弁は２位置タイプの電磁切換弁
   として構成されていて、その２位置のうちのいずれか一
   方が絞り弁機能を発揮する位置であることを特徴とする
   請求項３記載のフォークリフトトラックのマスト装置。
5. 【請求項５】 前記絞り弁と並列にチェック弁が設けら
   れていて、フルフリーシリンダの伸長動作時には絞り弁
   による絞り機能が発揮される一方で、フルフリーシリン
   ダの収縮動作時にはチェック弁を開いて自由流を許容す
   るものであることを特徴とする請求項２記載のフォーク
   リフトトラックのマスト装置。