JPH10335178A - 薄膜コンデンサおよびコンデンサ内蔵基板 - Google Patents

薄膜コンデンサおよびコンデンサ内蔵基板

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JPH10335178A
JPH10335178A JP9138927A JP13892797A JPH10335178A JP H10335178 A JPH10335178 A JP H10335178A JP 9138927 A JP9138927 A JP 9138927A JP 13892797 A JP13892797 A JP 13892797A JP H10335178 A JPH10335178 A JP H10335178A
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dielectric constant
capacitor
dielectric
thin
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Shinji Nanbu
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Abstract

(57)【要約】 【課題】高速デジタル回路に対応可能な、大容量で、か
つ低インダクタンスの薄膜コンデンサおよび積層型薄膜
コンデンサを提供する。 【解決手段】誘電体薄膜10の両面に電極膜2、5を形
成してなる薄膜コンデンサであって、誘電体薄膜10が
複数の分割高誘電率体3を離間して配置し、かつ複数の
分割高誘電率体3の間にアモルファスSiO2 からなる
低誘電率体4を配置してなるもので、誘電体薄膜10の
両面に形成された電極膜2、5には、同一側にそれぞれ
容量取出部6、7が形成されており、電極膜2、5を流
れる電流がそれぞれ逆方向とされていることが望まし
い。また、上記の薄膜コンデンサが基板内に内蔵される
場合もある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は薄膜コンデンサおよ
びコンデンサ内蔵基板に関し、特に、高速動作する電気
回路に配設され、高周波ノイズのバイパス用、もしくは
電源電圧の変動防止用に供される、大容量低インダクタ
ンスの薄膜コンデンサ、およびこの薄膜コンデンサを内
蔵した基板に関する。
【0002】
【従来技術】電子機器の小型化、高機能化に伴い、電子
機器内に設置される電子部品にも小型化、薄型化、高周
波対応などの要求が強くなってきている。特に大量の情
報を高速に処理する必要のあるコンピュータの高速デジ
タル回路では、メインフレームをはじめパーソナルコン
ピュータレベルにおいても、CPUチップ内のクロック
周波数は100MHzから数百MHz、チップ間バスの
クロック周波数も30MHzから75MHzと高速化が
顕著である。
【0003】また、LSIの集積度が高まりチップ内の
素子数の増大につれ、消費電力を抑えるために電源電圧
は低下の傾向にある。これらIC回路の高速化、高密度
化、低電圧化に伴い、コンデンサ等の受動部品も小型大
容量化と併せて、高周波もしくは高速パルスに対して優
れた特性を示すことが必須になってきている。
【0004】コンデンサを小型高容量にするためには一
対の電極に挟持された誘電体を薄くし、薄膜化すること
が最も有効である。薄膜化は上述した電圧の低下の傾向
にも適合している。一方、IC回路の高速動作に伴う諸
問題は各素子の小型化よりも一層深刻な問題である。こ
のうち、コンデンサの役割である高周波ノイズの除去機
能において、特に重要となるのは、論理回路の同時切り
替えが同時に発生したときに生ずる電源電圧の瞬間的な
低下を、コンデンサに蓄積されたエネルギーを瞬時に供
給することにより低減する機能である。いわゆるデカッ
プリングコンデンサである。
【0005】デカップリングコンデンサに要求される性
能は、クロック周波数よりも速い負荷部の電流変動に対
して、いかにすばやく電流を供給できるかにある。従っ
て、100MHzから1GHzにおける周波数領域に対
してコンデンサとして確実に機能しなければならない。
しかし、実際のコンデンサ素子は静電容量成分の他に、
抵抗成分、インダクタンス成分を持つ。容量成分のイン
ピーダンスは周波数増加とともに減少し、インダクタン
ス成分は周波数の増加とともに増大する。
【0006】すなわち、コンデンサの静電容量をC、イ
ンダクタンスをLとすると、この素子の共振周波数はf
0 =1/(2π(CL)1/2 )と書け、共振周波数での
インピーダンスが抵抗成分Rを与える。f<f0 ではこ
の素子は電荷供給源のコンデンサとしてふるまい、逆に
f>f0 ではインダクタンスとしてふるまい、この素子
自体が高周波ノイズの発生源となってしまう。このた
め、ICの動作周波数が高くなるにつれ、コンデンサ素
子自体の持つインダクタンスが、供給すべき過渡電流を
制限してしまい、ロジック回路側の電源電圧の瞬時低
下、または新たな電圧ノイズを発生させてしまう。結果
として、ロジック回路上のエラーを引き起こしてしま
う。
【0007】特に最近のLSIは総素子数の増大による
消費電力増大を抑えるために電源電圧は低下しており、
電源電圧の許容変動幅も小さくなっている。従って、高
速動作時の電圧変動幅を最小に抑えるため、デカップリ
ングコンデンサ素子自身の持つインダクタンスを減少さ
せ、f0 をICの動作周波数よりも高周波側にもってゆ
くことが望まれている。
【0008】コンデンサのインダクタンスは電極構造や
その大きさに依存することが知られており、電極形状と
そこを流れる高周波電流分布の最適化が必要であるが、
それにも限界がある。電荷の供給源としてのデカップリ
ングコンデンサを考えれば、低インダクタンスのみなら
ず、電圧変動をできるだけ小さくするためには大容量が
必要である。
【0009】しかしながら、上記式から理解できるよう
に、単に容量を大きくすれば、f0が小さくなり高周波
でのコンデンサとしての機能が劣化してしまう。高周波
特性の観点からは、Cを小さくしなければならないが、
電源電圧の瞬時低下に対応する電荷供給源としては大容
量が必要であり、この二律背反を解決しなければ1GH
zまでのクロック周波数に対応できるデカップリングコ
ンデンサの実現は困難である。
【0010】ところで、インダクタンスを減少させる方
法は3種類考えられる。第1は電流経路の長さを最小に
する方法、第2は電流経路をループ構造としループ断面
積を最小にする方法、第3は電流経路をn個に分配して
実効的なインダクタンスを1/nにする方法である。
【0011】第1の方法は、単位面積あたりの容量を増
加させて小型化を図ればよく、コンデンサ素子を薄膜化
・小型化することにより達成できる。大容量で高周波特
性の良好なコンデンサを得る目的で、誘電体厚さを1μ
m以下に薄膜化した例として特開昭60−94716号
公報がある。
【0012】第2の方法は、一本の電流経路が形成する
磁場を、近接する別の電流経路が形成する磁場により相
殺低減する効果であるから、コンデンサを形成する一対
の電極板、または電極層に流れる電流の向きをできるだ
け同一方向にしないようにすればよい。
【0013】第3の方法では、多数に分割したコンデン
サを並列接続することによって低インダクタンス化が図
れると同時に低インピーダンス化が実現できる。分割さ
れた一つ一つのコンデンサの容量は小さく、高周波特性
を示す共振周波数f0 を大きくすることができ、このこ
とは文献(T. H. Hubung他、IEEE Transcations on Ele
ctromagnetic Compatibility, Vol.37, NO.2 (1995), 1
55) においても、チップ間バスのプリント基板に多数の
チップコンデンサを配置した例において、理論的・実験
的に実証されている。
【0014】上記第3の方法を活用したものとして、U.
S. Patent4,853,827 に開示されるものが知られてい
る。これには多数の誘電体ペレットを一対の電極ではさ
み、ペレット間の間隙を低誘電率の樹脂で埋めた、大容
量かつ低インダクタンスのコンデンサが開示され、誘電
体層の厚みが0.3mmで直径が0.51mmの円板状
のバルクセラミックス(比誘電率=15000)を10
0個電極間に挿入し、その間隙を低誘電率樹脂で埋める
ことにより、実効容量312 nF/sq.-in. ( =0.4836nF/mm
2 ) の低インダクタンスコンデンサが得られている。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、厚みが
数百μm以上のバルクセラミックスを用いているため
に、比誘電率の大きな誘電体材料を用いたとしても、実
効容量の上限はたかだか1nF/mm2 であり、さらに1対
の電極間距離が数百μmであるために、前述の第2の方
法を用いて相互インダクタンスの効果によって、低イン
ダクタンス化を図ることができない。
【0016】また、低誘電率材料として、樹脂を用いて
いるために誘電損失が大きく、コンデンサ素子の低抵抗
化の観点からは好ましくない。デカップリングコンデン
サの電極間距離を小さくし、薄膜化(1μm以下)する
ことによって、ノイズ除去能力が向上することは、シミ
ュレーションにより理論的に実証されている(Z. Wu,Y.
Chen, and J.Fang, Proc. Electron. Compo. Conf. 44
th (1994), p.945.)が、電極間の誘電体の比誘電率は
たかだか25までのシミュレーションであり、高集積回
路に対応すべき数10から数100nFの容量に関する
記述はない。
【0017】また、薄膜誘電体層を利用した例としては
特開平4−211191号、特開平8−88318号が
あるが、コンデンサの単位面積当たりの容量は最大で、
4nF/mm2 と大きいが、低インダクタンスを与える
構造とはなっておらず、共振周波数を十分高くとること
ができない。
【0018】現行の積層チップコンデンサにおいては実
現可能なインダクタンスの値はたかだか100pHであ
り、容量が100nFのデカップリングコンデンサで
は、共振周波数f0 は50MHz程度となる。それゆ
え、今後の数百MHzから1GHzの高速デジタル回路
に対応するためには、少なくともインダクタンスが数十
pH以下のレベルのデカップリングコンデンサが必要と
なる。
【0019】さらに、パッケージや多層基板内に装着さ
れるタイプにおいても、同様の課題が存在する。コンデ
ンサの低インダクタンス化を図る方法は前述したよう
に、3種類の方法があるが、上記大幅な低インダクタン
ス化を図るには数百MHzにおいても高い比誘電率を示
す誘電体薄膜を用いて、1)電極面積を小さくし、2)
対面する電極に流れる電流を逆方向にし、その電流経路
をできるだけ短くする構造を実現し、3)並列分割構造
により共振周波数を100MHz以上にする必要があ
る。
【0020】一方、チタン酸バリウムに代表される、自
発磁化をもち、高い比誘電率を示す強誘電体において
は、薄膜化にしたがってその比誘電率が減少してゆく事
実が最近明らかにされつつあり、チタン酸バリウムやジ
ルコン酸チタン酸鉛では1μm以下の膜厚では比誘電率
はたかだか1000程度以下であり、高容量の観点から
も限界がある。
【0021】さらに、1000以上の高い比誘電率をも
つ強誘電体では、その巨視的な自発分極が高周波に応答
できなくなり、数十MHz以上での周波数分散(周波数
とともに、比誘電率が大幅に減少すること)を示すこと
が知られている。高速デジタルIC回路でのノイズは、
広いバンド幅にわたる高周波成分を含むため、高周波に
おける誘電分散を示す材料では正常な電荷供給源として
の機能を果たせない可能性がある。
【0022】本発明は、数百MHzから1GHzの高速
デジタル回路に対応しうる大容量で、かつ低インダクタ
ンスの薄膜コンデンサおよびコンデンサ内蔵基板を提供
することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明の薄膜コンデンサ
は、誘電体薄膜の両面にそれぞれ電極膜を形成してなる
薄膜コンデンサであって、前記誘電体薄膜が複数の分割
高誘電率体を離間して配置し、かつ前記複数の分割高誘
電率体の間にアモルファスSiO2 からなる低誘電率体
を配置して構成されるものである。ここで、誘電体薄膜
の両面に形成された電極膜には、同一側にそれぞれ容量
取出部が形成されており、電極膜を流れる電流が逆方向
とされていることが望ましい。
【0024】また、本発明のコンデンサ内蔵基板は、上
記薄膜コンデンサが基板内に内蔵されているものであ
る。
【0025】上記分割高誘電率体は、金属元素としてP
b、MgおよびNbを含むペロブスカイト型複合酸化物
結晶からなる膜厚2μm以下の薄膜であって、測定周波
数1kHz(室温)での比誘電率が2500以上、10
0MHz(室温)での比誘電率が2000以上であり、
かつ比誘電率の温度特性が±15%以内(−40℃〜8
5℃)であり、直流電界5V/μm印加時の比誘電率の
減少率が40%以内であることが望ましい。
【0026】また、分割高誘電率体は、金属元素として
Ba、Ti、ZrおよびSnを含有するペロブスカイト
型複合酸化物からなる薄膜であって、これらの成分をB
aTi1-x-y Zrx Sny 3 と表した時のxおよびy
が、図1における線分A−B−C−D−E−F−Aで囲
まれる範囲内にあり、かつ、ペロブスカイト結晶の平均
結晶粒径dが0.10〜0.25μmであることが望ま
しい。
【0027】 さらに、本発明の薄膜コンデンサは、複数の誘電体薄膜
と複数の電極膜を交互に積層してなる薄膜コンデンサで
あって、前記誘電体薄膜が複数の分割高誘電率体を離間
して配置し、かつ前記複数の分割高誘電率体の間にアモ
ルファスSiO2 からなる低誘電率体を配置して構成さ
れるものである。
【0028】
【作用】本発明の薄膜コンデンサは、例えば、パッケー
ジあるいは多層配線基板における電源層とグランド層を
1対の電極とするデカップリングコンデンサであり、誘
電体層を分割することにより、大容量、低インダクタン
スが同時に実現でき、超高速IC回路のデルタIノイズ
低減に顕著な効果が期待できる。
【0029】さらに、上記USP4,853,827で
は、低誘電率樹脂を誘電体間に充填していたため、誘電
損失が大きく、ICへの電荷供給に多大なエネルギーロ
スを伴うという問題があったが、本発明では、分割誘電
体間の充填に低損失低誘電率アモルファスSiO2 を用
いることにより、分割高誘電率体の電束密度の漏れを小
さくし、分割コンデンサの並列接続効果を増大させるこ
とができ、低インダクタンス化を向上できるとともに、
低誘電損失すなわち、低抵抗を実現することができるた
め、デカップリングコンデンサとしての機能を大幅に向
上できる。
【0030】そして、薄膜コンデンサの分割高誘電率体
として、上記した所定の組成のものを用いることによ
り、容量を増大することができ、しかも上記した誘電体
薄膜は比誘電率の周波数依存性が小さいため、高周波領
域においても高い比誘電率を有することができ、高周波
領域における容量を増大することができる。
【0031】従って、本発明の薄膜コンデンサは、高容
量、低インダクタンス、低抵抗を達成することができ
る。
【0032】
【発明の実施の形態】本発明の薄膜コンデンサは、基板
上の電源層とグランド層の間に1000以上の高い比誘
電率をもつ分割高誘電率体と、それを取り囲む形状の比
誘電率が4の低誘電率体の部分よりなるものである。
【0033】図2に本発明の薄膜コンデンサの基本構成
例を示す。この図2において、基板1の上面にはグラン
ド層としての電極膜2が設けられ、この電極膜2の上面
には、図3に示すように、平面形状が長方形状の複数の
分割高誘電率体3が相互に離間された状態で配置され、
これらの分割高誘電率体3相互間の隙間に、アモルファ
スSiO2 からなる低誘電率体4が形成されている。分
割高誘電率体3相互間の間隔は、50〜200μmとさ
れ、電束密度の分離という点から100〜200μmが
望ましい。
【0034】複数の分割高誘電率体3と、これらの間を
充填する低誘電率体4により誘電体薄膜10が構成され
ている。誘電体薄膜10の上面には、図1に示したよう
に、電源層としての電極膜5が形成されている。電極膜
5と電極膜2には、同一側にそれぞれ容量取出部6、7
が一体に形成されており、電極膜(グランド層)2と電
極膜(電源層)5を流れる電流iは逆方向とされてい
る。電源回路との接続を果たす容量取出部6、7は、例
えば、外付けコンデンサであれば、ハンダによりバンプ
が形成され外部回路に接続される。また、基板内蔵型で
あればビアホールによる接続でもよい。
【0035】大容量でかつ低インダクタンスのデカップ
リングコンデンサを得るためには、図2で示されたよう
に、分割された分割高誘電率体部分によるコンデンサの
容量をC、インダクタンスをL、抵抗をRとし、それら
をn個並列に接続したコンデンサ素子を考えると、簡単
な回路解析により、このコンデンサ素子のインピーダン
スはZ=1/〔n/R−j/ω(L/n)+jω(n
C)〕と書け、このコンデンサ素子の実効容量はnC、
実効インダクタンスはL/n、実効抵抗はR/nとな
る。また、共振周波数は1/2π(LC)1/2 である。
すなわち、図2で与えられるような並列接続素子を実現
すれば、大容量でかつきわめて高い共振周波数を有し、
100MHzから1GHzまでのクロック周波数に対応
できるデカップリングコンデンサを作ることができる。
【0036】本発明で用いられる基板材料としては、ア
ルミナ、サファイア、MgO単結晶、SrTiO3 単結
晶、低誘電率ガラスセラミックス、AlN、あるいはプ
ラスチック樹脂、薄膜チタン被覆シリコン、または銅
(Cu)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、スズ
(Sn)、ステンレススティール(Fe)薄膜もしくは
薄板が望ましいが、薄膜との反応性が小さく、安価で強
度が大きく、かつ基板上に形成される金属薄膜の結晶性
という点からアルミナ、サファイアが望ましく、一方、
下部電極自体を基板として選択するならば、高周波領域
における低抵抗化の点で銅(Cu)薄板または銅(C
u)薄膜が望ましい。
【0037】また、本発明の誘電体薄膜をはさむ電極
は、例えば、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム
(Pd)、銅(Cu)薄膜等があり、これらのうちでも
白金(Pt)と金(Au)薄膜が最適である。Pt、A
uは誘電体との反応性が小さく、また酸化されにくい
為、誘電体との界面に低誘電率相が形成されにくい為で
ある。電極形成は、ゾルゲル、スパッタ、CVD、蒸
着、メタライズ等があるが、低温合成が可能で誘電体薄
膜との反応が抑止できるマグネトロンスパッタ法などの
気相合成法が望ましい。
【0038】低誘電率体はアモルファスSiO2 からな
るものであるが、分割高誘電率体層の間に充填するに
は、ゾルゲル、スパッタ、CVD、蒸着等の方法がある
が、高誘電率体層との反応を抑止できるマグネトロンス
パッタ法などの気相合成法が採用することが望ましい。
【0039】分割高誘電率体としては、高周波領域にお
いて高誘電率を有するものであれば良いが、その膜厚は
1μm以下が望ましい。また、誘電体薄膜は、金属元素
としてPb、MgおよびNbを含むペロブスカイト型複
合酸化物結晶からなる膜厚2μm以下の薄膜であって、
測定周波数1kHz(室温)での比誘電率が2500以
上、100MHz(室温)での比誘電率が2000以上
であり、かつ比誘電率の温度特性が±15%以内(−4
0℃〜85℃)であり、直流電界5V/μm印加時の比
誘電率の減少率が40%以内であるものが望ましい。
【0040】また、誘電体薄膜の他の例として、金属元
素としてBa、Ti、ZrおよびSnを含有するペロブ
スカイト型複合酸化物からなる誘電体薄膜であって、こ
れらの成分をBaTi1-x-y Zrx Sny 3 と表した
時のxおよびyが、図1における線分A−B−C−D−
E−F−Aで囲まれる範囲内にあり、かつ、ペロブスカ
イト結晶の平均結晶粒径dが0.10〜0.25μmの
ものも用いられる。
【0041】尚、本発明においては上記した誘電体薄膜
が特に望ましいが、上記した以外のPZT、PLZT、
BaTiO3 、SrTiO3 、Ta2 5 等の誘電体薄
膜であっても良く、特に限定されるものではない。この
ような誘電体層は、PVD法、CVD法、ゾルゲル法等
の公知の方法により作製される。
【0042】上記したPb−Mg−Nb系およびBaT
1-x-y Zrx Sny 3 で表される組成の誘電体薄膜
が望ましい理由は、巨視的な自発分極を持たないため高
周波での誘電分散が小さく、かつナノメータースケール
におけるイオン配列のゆらぎによって高い比誘電率を示
すことが理論的に予測されたためである。これらバルク
形態におけるナノメータースケールの構造ゆらぎを変化
させることなく薄膜形態として作製するためには、組成
比およびナノスケールにおけるイオン配列を材料合成の
初期の段階からコントロールできるゾル・ゲル法、また
はマグネトロンスパッタやMOCVD等の気相合成法が
最適である。よって、薄膜候補材料として、バルクセラ
ミックスにおいて、巨視的な自発分極はもたないが、局
所的なナノメータースケールにおいて分極構造をとるい
わゆるPb系リラクサー誘電体と、やはり自発分極をも
たないが、相の共存によって高い誘電率を示すBa(Z
r,Sn,Ti)O3 系材料に着目したのである。
【0043】Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 (PMN)
薄膜を作製する際には、他の求核性を有する有機金属化
合物の存在下においても安定なMg−O−Nb結合を有
するMgNb複合アルコキシド分子、或いはMgNb複
合アルコキシド分子を部分的に加水分解したゾルをMg
Nb前駆体として用いて合成したPMN前駆体溶液を用
いることにより、測定周波数1kHz(室温)での誘電
率が2500以上の高い比誘電率を有するPMN薄膜を
作製することができる。
【0044】さらに、この薄膜は、誘電率の周波数依存
性が小さく、測定周波数100MHzにおいても、比誘
電率が2000以上を示し、高周波においても薄膜コン
デンサ材料として有用である。
【0045】一方、単結晶あるいはバルクセラミックス
のBaTiO3 は120℃、10℃、−70℃に相転移
点が存在し、その近傍で比誘電率が高くなることはよく
知られているところである。本発明の誘電体薄膜では、
BaTiO3 のTi原子をZr原子及びSn原子にて置
換することにより、3点の相転移点は室温付近にシフト
し、室温で3種類の相転移ピークが重なることにより、
高い比誘電率を実現している。即ち、ナノメータースケ
ールでの相の共存効果が薄膜形態においても実現されて
いるのである。
【0046】また薄膜中の平均結晶粒径を小さくしてい
った場合、強誘電的性質から常誘電的性質に変化するた
めに、比誘電率は多少低下するが直流電圧がかかった状
態の比誘電率の低下が抑制され、DCバイアス特性は良
好となる。なおかつ、強誘電性の起源である自発分極が
消失するため自発分極に起因する比誘電率の周波数分散
が小さくなり、100MHz以上の高周波においても、
大きな比誘電率を示すのである。
【0047】Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 (PMN)
薄膜の作製について説明する。
【0048】まず鉛(Pb)の有機酸塩、無機塩、アル
コキシドから選択される少なくとも1種の鉛化合物をR
1 OH、R2 OC2 4 OH、R3 COOH(R1 、R
2 、R3 :炭素数1以上のアルキル基)で示される溶媒
に混合する。この時、鉛化合物が結晶水を含む場合に
は、作製したPb前駆体溶液中に水が存在しないように
脱水処理する。
【0049】次にMg、及びNbの有機酸塩、無機塩、
アルコキシドから選択される少なくとも1種のMg化合
物、Nb化合物をMg:Nb=1:2のモル比でR1
H、R2 OC2 4 OH、R3 COOH(R1 、R2
3 :炭素数1以上のアルキル基)で示される溶媒に混
合する。混合後、所定の操作を行い、IRスペクトルに
おいて656cm-1付近に吸収を有し、他の求核性の有
機金属化合物の存在下においても安定なMg−O−Nb
結合を有するMgNb複合アルコキシド分子を合成す
る。
【0050】IRスペクトルにおいて656cm-1付近
に吸収を有するMgNb複合アルコキシド分子を得るに
は、以下のような方法がある。(1)MgおよびNbの
アルコキシド原料を溶媒に混合し、溶媒の沸点まで溶液
の温度を上昇させ、例えば酸等の触媒の共存下で還流操
作を行うことにより、分子内での脱エーテル反応を促進
する方法。(2)上記のようにMgおよびNbのアルコ
キシド原料を溶媒に混合し、溶媒の沸点まで溶液の温度
を上昇させ、還流操作による複合化を行った後、無水酢
酸,エタノールアミン等に代表される安定化剤を添加す
る方法。(3)Mgのカルボン酸塩とNbのアルコキシ
ドとの還流操作により、分子内での脱エステル反応を促
進する方法。(4)Mgの水酸化物とNbのアルコキシ
ド、あるいはMgのアルコキシドとNbの水酸化物の還
流操作により、分子内での脱アルコール反応を促進す
る。(5)鉛前駆体の求核性を小さくする為、前述の無
水酢酸,エタノールアミン等の安定化剤を添加する方
法。以上のいずれかの手法を用いる事により、他の求核
性有機金属化合物の存在下においても安定なMg−O−
Nb結合を有するMgNb複合アルコキシド分子を合成
できる。これらのうちでも、安定なMg−O−Nb結合
を有するという点から、(2)および(3)の方法が望
ましい。
【0051】また、合成した上記MgNb複合アルコキ
シド溶液に水と溶媒の混合溶液を適下し、部分加水分解
を行い、前述のMgNb複合アルコキシドが重縮合した
MgNbゾルを形成させる。部分加水分解とは、分子内
のアルコキシル基の一部を水酸基と置換し、置換された
分子内での脱水、あるいは脱アルコール反応により、重
縮合させる方法である。
【0052】作製したPb前駆体溶液とMgNb複合ア
ルコキシド溶液、あるいはMgNbゾルをPb:(Mg
+Nb)=1:1のモル比で混合し、PMN前駆体溶液
とする。
【0053】作製したPMN前駆体溶液を基板上にスピ
ンコート法、ディップコート法、スプレー法等の手法に
より成膜する。
【0054】成膜後、300〜400℃の温度で1分間
熱処理を行い、膜中に残留した有機物を燃焼させ、ゲル
膜とする。1回の膜厚は0.1μm以下が望ましい。
【0055】成膜−熱処理を所定の膜厚になるまで繰り
返した後、750〜850℃で焼成を行い、本発明の結
晶質の誘電体薄膜が作製される。得られた誘電体薄膜の
膜厚は2μm以下であるが、これより厚くなると工程数
が増加し、また、コンデンサを構成した場合、容量が小
さくなるからである。誘電体薄膜の膜厚は、製造の容易
性、膜質劣化の点で1μm以下が望ましく、さらに膜の
絶縁性を考慮すると特に0.3〜1μmが望ましい。
【0056】このようなPMN薄膜は、MgNb複合ア
ルコキシド分子を合成する際、Mg及びNbの金属化合
物間の反応促進、及び複合アルコキシド分子を安定化す
る手法を用い、他の求核性有機金属化合物の存在下にお
いても、安定なMg−O−Nb結合を有するMgNb複
合アルコキシドを合成させ、このMgNb複合アルコキ
シド分子を含む溶液とPb前駆体溶液とを混合してPb
(Mg1/3 Nb2/3 )O3 前駆体溶液を合成する点に特
徴がある。
【0057】この様な手法で得られたMgNb前駆体溶
液は、赤外吸収スペクトル(以下、IRスペクトル)に
おいて、656cm-1付近に吸収を有し、溶液の段階で
既にコランバイト(MgNb2 6 )に近い構造を持
つ、強固なMg−O−Nb結合を有するMgNb複合ア
ルコキシド分子が形成されている。このため、他の求核
性有機金属化合物(例えば酢酸鉛)に対して安定であ
り、Mg−O−Nb結合が破壊されることなく、Pb
(Mg1/3 Nb2/3 )O3 前駆体が形成される。
【0058】このPMN前駆体溶液を塗布し、焼成する
ことにより、本発明の誘電体薄膜が得られる。これによ
り、PMN薄膜の場合には、測定周波数1kHz(室
温)での比誘電率が2500以上、100MHz(室
温)での比誘電率が2000以上、比誘電率の温度特性
が±15%以内(−40℃〜85℃)、直流電界5V/
μm印加時の比誘電率の減少率が40%以内となる。
【0059】また、上記のMgNb複合アルコキシド分
子を部分的に加水分解処理することにより数nmオーダ
ーのMgNbゾルが形成され、この数nmオーダーのM
gNbゾルを含むPb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 前駆体
が形成される。このPMN前駆体溶液を塗布し、焼成す
ることにより、本発明の誘電体薄膜が得られる。これに
より、上記と同様の特性が得られる。
【0060】そして、膜厚が2μm以下で、測定周波数
1kHzでの比誘電率が3000以上、100MHzで
の比誘電率が2500以上と高く、かつ温度特性の良好
なペロブスカイト型複合酸化物からなる誘電体薄膜を一
対の電極により挟持することにより、高誘電率の薄膜コ
ンデンサを得ることができる。
【0061】BaTi1-x-y Zrx Sny 3 系薄膜に
ついて説明する。
【0062】本発明の誘電体薄膜はは、BaTi1-x-y
Zrx Sny 3 と表した時、xとyが図1に示した関
係にあり、しかも平均結晶粒径dが0.10〜0.25
μmを満足するものである。
【0063】ここでxとyが図1に示した線分A−B−
C−D−E−F−Aで囲まれる範囲内としたのは、図1
において線分B−C−D−Eよりも上方にある場合に
は、−25〜85℃において静電容量の温度変化率が±
8%よりも大きくなるからである。また、線分E−Fよ
りも右側にある場合、即ち、xが0.10よりも大きい
場合には比誘電率が1200よりも小さくなるからであ
る。
【0064】さらに、線分A−Bよりも左側にある場
合、即ちxが0.01よりも小さい場合には、DCバイ
アスに対する比誘電率の変化率が30%よりも大きくな
る傾向にあるからである。さらにまた、線分F−Aより
も下方にある場合、即ちyが0.01よりも小さい場合
には、BaTiO3 のサイズ効果により比誘電率が小さ
くなる傾向にあるからである。
【0065】本発明においては、xとyとの関係が、図
1における線分A−B−D−G−Aで囲まれる範囲内に
あることが、比誘電率が大きく、静電容量の温度特性お
よびDCバイアス特性を向上するという点から望まし
い。ここで、点G(x,y)は(0.05,0.01)
である。
【0066】また、平均結晶粒径dを0.10〜0.2
5μmとしたのは、平均結晶粒径dが0.10よりも小
さい場合には比誘電率が小さく、その温度特性も悪くな
るからである。また、平均結晶粒径dが0.25μmよ
りも大きくなると、DCバイアスに対する比誘電率の変
化率が大きくなるからである。平均結晶粒径dは、比誘
電率の向上という点から0.14〜0.25μmである
ことが望ましい。
【0067】本発明の誘電体薄膜の膜厚は、耐絶縁性お
よび膜の均質性という観点から、5μm以下、特には、
0.3〜2μmが望ましい。
【0068】本発明の誘電体薄膜は、先ず、金属元素と
してBa,Ti,Zr,Snを含有するペロブスカイト
型複合酸化物であって、これらの成分をBaTi1-x-y
Zrx Sny 3 と表した時のx及びyの値が図1の線
分で囲まれる範囲内の原料溶液を作製し、この溶液を基
板上に塗布した後、熱処理乾燥し、塗布と熱処理を繰り
返して所望厚さの膜を形成し、焼成することにより得ら
れる。
【0069】即ち、本発明の誘電体薄膜は、各成分の組
成の制御、膜厚、微粒領域(0.05〜1μm)での結
晶粒径の制御が比較的容易な、以下のような方法で形成
することが望ましい。
【0070】先ず、Ba,Ti,Zr,Snの各金属イ
オンを含有する有機酸塩,無機塩,あるいは金属アルコ
キシドのような有機金属化合物を出発原料とし、BaT
1- x-y Zrx Sny 3 におけるx及びyの範囲が図
1の線分の範囲内を満足する組成となるように混合し、
原料溶液を調製する。次に、この原料溶液を基板上に塗
布する。溶液の塗布はスピンコーティング,ディップコ
ーティングなどの種々の方法により行うことができる。
また、Ba(Ti,Zr)O3 およびBa(Ti,S
n)O3 溶液を別々に作製し、交互に塗布することに
り、所望の組成に調製しても良い。
【0071】次に、こうして基板上に塗布された塗膜か
ら有機物を取り除くために大気中で200〜600℃で
5秒〜2分間熱処理を行い、この後、結晶化するために
大気中で700〜900℃で30秒〜10分間結晶化用
熱処理を行う。これらの塗布〜結晶化用熱処理の一連の
プロセスを繰り返すことにより所望の膜厚の誘電体薄膜
を得、最後に0.10〜0.25μmの平均結晶粒径を
得るために酸素含有雰囲気中で1050〜1140℃で
10分間〜3時間焼成を行い、5μm以下、例えば、膜
厚0.3〜2μmの本発明の誘電体薄膜を得る。平均結
晶粒径は焼成温度や焼成時間により制御できる。
【0072】本発明においては、不可避不純物として、
Sr,Ca,Na等が1重量%以下で混入する場合があ
るが、特性には影響はない。
【0073】また、得られた誘電体薄膜は、BaTi
1-x-y Zrx Sny 3 で表される結晶相の他に、Ba
(Ti,Zr)O3 、Ba(Ti,Sn)O3 が析出し
ていても良い。
【0074】このようなBaTi1-x-y Zrx Sny
3 系薄膜では、BaTiO3 のTi原子をZr原子及び
Sn原子にて所定量置換することにより、3点の相転移
点は室温付近にシフトし、室温で3種類の相転移ピーク
が重なることにより、高い比誘電率を実現している。
【0075】また、BaTi1-A ZrA 3 とBaTi
1-B SnB 3 では、同じBサイト置換量に対して3点
の相転移点が異なる為、BaTi1-x-y Zrx Sny
3 においてxとyを調整することにより、高誘電率を保
ちながら温度特性は良好になる。
【0076】さらに薄膜中の平均結晶粒径を細かくして
いった場合、強誘電体的性質に常誘電体的性質が現れる
ために、比誘電率は多少低下するが直流電圧がかかった
状態の比誘電率の低下が抑制され、DCバイアス特性は
良好となる。
【0077】さらにまた、測定周波数100MHz(室
温)のような高周波領域においても、強誘電性の起源で
ある自発分極が消失するため自発分極に起因する誘電率
の周波数分散が小さくなり、高周波領域においても大き
な比誘電率を有する。
【0078】即ち、本発明のセラミックコンデンサで
は、誘電体薄膜の比誘電率が、測定周波数1KHzおよ
び100MHzでそれぞれ1200および1100以上
であり、静電容量の温度特性もコンデンサのJIS規格
におけるB特性を満足し、且つ直流電圧印加による静電
容量の減少率(DCバイアス特性)も5V/μmの電界
印加時に30%未満と小さいため、低周波においてだけ
でなく、バイパスコンデンサやデカップリングコンデン
サのようなIC等の高周波回路用のコンデンサとして優
れたセラミックコンデンサを得ることができる。
【0079】尚、図2では、単板型の薄膜コンデンサに
ついて記載したが、本願発明では、これに限定されるも
のではなく、複数の誘電体薄膜と複数の電極膜を交互に
形成した積層タイプの薄膜コンデンサであっても良いこ
とは勿論である。
【0080】
【実施例】先ず、Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 からな
る誘電体薄膜と、BaTi1-x-yZrx Sny 3 とし
て表される誘電体薄膜を作製し、その特性を測定した。
【0081】Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 からなる
誘電体薄膜の作製 酢酸MgとNbエトキシドを1:2のモル比で秤量し、
2−メトキシエタノ−ル中で還流操作(124℃で24
時間)を行い、MgNb複合アルコキシド溶液(Mg=
4.95mmol、Nb10.05mmol、2−メト
キシエタノ−ル150mmol)を合成した。次に酢酸
鉛(無水物)15mmolと150mmolの2−メト
キシエタノ−ルを混合し、120℃での蒸留操作によ
り、Pb前駆体溶液を合成した。
【0082】MgNb前駆体溶液とPb前駆体溶液をモ
ル比Pb:(Mg+Nb)=1:1になるよう混合し、
室温で十分撹拌し、Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 (P
MN)前駆体溶液を合成した。この溶液の濃度を2−メ
トキシエタノ−ルで約3倍に希釈し、塗布溶液とした。
【0083】次に第1の電極層が形成されたサファイア
基板上に、前記塗布溶液をスピンコ−タ−で塗布し、乾
燥させた後、300℃で熱処理を1分間行い、ゲル膜を
作製した。塗布溶液の塗布−熱処理の操作を繰り返した
後、830℃で1分間(大気中)の焼成を行い、Pb
(Mg1/3 Nb2/3 )O3 薄膜を得た。
【0084】この溶液の濃度を2−メトキシエタノール
で約3倍に希釈し、塗布溶液とした。電極となるPt
(111)が650℃でスパッタ蒸着されたサファイア
単結晶基板上の上記Pt電極の表面に、前記塗布溶液を
スピンコーターで塗布し、乾燥させた後、300℃で熱
処理を1分間行い、ゲル膜を作製した。塗布溶液の塗布
−熱処理の操作を繰り返した後、830℃で1分間(大
気中)の焼成を行い、膜厚0.5μm、1.0μm、
2.0μmの3種類のPb(Mg1/3 Nb2/3 )O3
膜を得た。得られた薄膜のX線回折結果より、ペロブス
カイト生成率を計算するとそれぞれ約95%であった。
【0085】作製した全ての薄膜表面に直径0.2mm
の金電極をスパッタ蒸着により形成し、薄膜コンデンサ
を作製し、LCRメータ(ヒュウレットパッカード社製
4284A)を用いて、25℃、1kHz(Ac100
mV)の条件で比誘電率、誘電損失を求めた結果、それ
ぞれ比誘電率が2620、誘電損失が0.036であっ
た。また、図4に−40℃から+85℃の温度範囲での
比誘電率の温度特性評価結果を示す。比誘電率kの温度
変化率(Δk/k(25℃))は−9.6%から+6.
0%と±15%以内であった。尚、Δkは−40℃から
+85℃の比誘電率の変化量、k(25℃)は25℃に
おける比誘電率である。
【0086】図5に比誘電率の直流電界依存性を示す。
直流電界5V/μmでの比誘電率の減少率は40%以内
であった。
【0087】上記の薄膜コンデンサの1MHzから1.
8GHzでのインピーダンス特性を、インピーダンスア
ナライザー(ヒュウレットパッカード社製HP4291
A)を用いて測定した。薄膜コンデンサの共振周波数が
300MHz以上になるよう、電極面積および電極厚み
を変更し、薄膜コンデンサの容量CとインダクタンスL
を調整した。測定周波数100MHzでのインピーダン
スから容量を算出し、比誘電率を求めると、2040で
あった。図6に比誘電率の周波数特性を示す。
【0088】また、温度特性および直流電界依存性は1
kHzでの結果と同様であった。
【0089】BaTi1-x-y Zrx Sny 3 として
表される誘電体薄膜の作製 出発原料であるテトラ−イソ−プロポキシチタン、テト
ラ−n−プロポキシジルコニウム及びテトラ−イソ−プ
ロポキシスズを、溶媒である2−メトキシエタノールに
溶かし、それぞれ0.4M(mol/l)濃度のチタン
溶液、ジルコニウム溶液及びスズ溶液を作製した。また
金属バリウムを、溶媒である2−メトキシエタノールに
溶解させ、0.4M濃度のバリウム溶液を作製した。こ
れらの4種の溶液を、BaTi1-x-y Zrx Sny 3
と表した時のx及びyが表1の値となるように混合し、
原料溶液を調製した。
【0090】ついで、これら各原料溶液を白金(Pt)
基板上にそれぞれスピンコートし、得られた塗膜に対し
て大気中300℃で1分間熱処理乾燥を行い、この後、
大気中750℃で5分間結晶化用熱処理を行った。この
ようなスピンコートによる溶液の塗布から結晶化用熱処
理までの一連のプロセスを30回繰り返し行い、膜厚が
0.8μmの薄膜を形成し、酸素雰囲気中1050〜1
140℃で1時間焼成を行い、膜厚0.6μmで表1の
平均結晶粒径dを有する誘電体薄膜を得た。
【0091】得られた誘電体薄膜をX線回折測定(XR
D)により分析を行ったところ、いずれもペロブスカイ
ト型酸化物のピークが確認された。また誘電体薄膜を走
査電子顕微鏡(SEM)により観察し、平均結晶粒径を
測定した。さらに、誘電特性の評価は、誘電体薄膜上に
Auを蒸着して上部電極とし、下部電極であるPt層と
平板コンデンサを形成することにより行った。測定はL
CRメーターによって行い、測定周波数f=1kHz、
印加電圧Vrms =100mVとした。室温での比誘電率
(K)、誘電損失(DF)および−25℃と85℃の静
電容量の変化率を測定し、これらの結果を表1に示す。
【0092】尚、−25℃の静電容量の変化率(%)
は、−25℃の静電容量をC-25 とし、25℃の静電容
量をC25とした時、(C-25 −C25)×100/C25
求め、85℃の静電容量の変化率(%)は、85℃の静
電容量をC85とし、25℃の静電容量をC25とした時、
(C85−C25)×100/C25で求めた。またDCバイ
アス特性を、電圧を印加しない場合の静電容量C0 、5
V/μmの電圧を印加したときの静電容量C1 とした時
に、(C0 −C1 )/C0 ×100で求め、表1に記載
した。
【0093】また、インピーダンスアナライザ(ヒュウ
レットパッカード社製HP4291A,フィクスチャー
HP16092A)を用いて1MHz〜1.8GHzに
おける特性評価をおこなった。インピーダンスー周波数
特性の測定により、100MHz(室温)における等価
直列容量を評価し、比誘電率を求めた。これらの結果を
表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】表1から判るように、図1の点A、B、
C、D、E、F、Aの線分で囲まれる本発明の誘電体薄
膜は、1KHzおよび100MHz(室温)における比
誘電率はそれぞれ1200および1100以上の高誘電
率を有し、静電容量の温度変化率も±8%以下と小さ
く、また誘電損失も2.76%以下と小さいことが判
る。
【0096】また0.10μm未満の粒径の試料(N
o.27,29)では、1KHzにおける比誘電率は1
200未満であるか、100MHzの比誘電率が110
0未満となってしまう。
【0097】また、本発明では、DCバイアスに対する
静電容量の変化は、5V/μm印加時においても30%
未満の低下であり、1KHzおよび100MHz(室
温)における比誘電率はそれぞれ1200および110
0以上であり、静電容量の温度変化率は±8%未満であ
るのに対し、範囲外の例ではいずれも1KHzにおける
比誘電率は1200未満であるか、100MHzの比誘
電率が1100未満となってしまう。また、静電容量の
温度変化率も±10%を越えるか、DCバイアスを印加
することによる静電容量の減少が大きいことが判る。
【0098】さらに、本発明者等は、粉体を原料として
作製した平均結晶粒径が10μmで、膜厚が20μmの
従来のBaTi1-x-y Zrx Sny 3 (xが0.0
5、yが0.05)の焼結体を作製し、上記と同様にし
て比誘電率、DCバイアスに対する静電容量の変化率を
測定したところ、1KHzにおける比誘電率が1500
0と高いが、DCバイアス5V/μm印加による静電容
量が70%の低下であり、しかも、静電容量の温度特性
はJIS規格のF特性を満足する程度、即ち、−25〜
85℃において−30〜+85%程度であった。また、
100MHzの比誘電率は10500であった。
【0099】実施例1 作製は以下のとおりの手順で行った。厚さ0.25mm
のアルミナ焼結体基板上に第1のマスクパターンで白金
ターゲットのスパッタにより第1の白金電極層を形成し
た。電極層の形成は高周波マグネトロンスパッタ法を用
いた。スパッタ用ガスとしてプロセスチャンバー内にA
rガスを導入し、真空排気により圧力は6.7Paに維
持した。
【0100】プロセスチャンバー内には基板ホルダーと
3個のターゲットホルダーが設置され、3種類のターゲ
ット材料からのスパッタが可能である。スパッタ時には
成膜する材料種のターゲット位置に基板ホルダーを移動
させ、基板−ターゲット間距離は60mmに固定した。
【0101】基板ホルダーとターゲット間には外部の高
周波電源により13.56MHzの高周波電圧を印可
し、ターゲット背面に設置された永久磁石により形成さ
れたマグネトロン磁界により、ターゲット近傍に高密度
のプラズマを生成させてターゲット表面のスパッタを行
った。高周波電圧の印可は3個のターゲットに独立に可
能であり、本実施例では基板に最近接のターゲットにの
み印可してプラズマを生成した。基板ホルダーはヒータ
による加熱機構を有しており、スパッタ成膜中の基板温
度は一定となるよう制御した。
【0102】また、基板ホルダーに設置された基板のタ
ーゲット側には厚さ0.1mmの金属マスクが3種類設
置されており、成膜パターンに応じて必要なマスクが基
板成膜面にセットできる構造とした。
【0103】上記したようにして得られたPb(Mg
1/3 Nb2/3 )O3 からなる塗布溶液を、第1の電極層
が形成されたサファイア基板上にスピンコ−タ−で塗布
し、乾燥させた後、300℃で熱処理を1分間行い、ゲ
ル膜を作製した。塗布溶液の塗布−熱処理の操作を繰り
返した後、830℃で1分間(大気中)の焼成を行い、
Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O3 薄膜を得た。
【0104】得られた上記誘電体薄膜の上にレジストを
塗布しフォトリソグラフィー工程によって露光、現像
し、これをマスクとするウェットエッチングにより、パ
ターン形状に誘電体薄膜のパターニングを行い、分割高
誘電率体を作製した。次に第3のマスクパターンをセッ
トし、分割高誘電率体相互間にSiO2 ターゲットのス
パッタにより低誘電率体を形成した。この低誘電率体
(比誘電率4.0)は分割高誘電率体に隣接し、電場が
分割高誘電率体に集中するため、コンデンサ素子とし
て、分割高誘電率体による並列接続構造を形成するため
に設けられているものである。
【0105】その後、スパッタ法により第2の白金電極
層を形成した。白金ターゲットのスパッタにより、上部
電極すなわちパワー面を形成した。容量取出部として、
下部電極を上部電極に比して大きく設定している。個々
の分割高誘電率体の面積は0.2×0.2mm2 であ
り、低誘電率体の幅は0.1mmである。素子全体の誘
電体薄膜の面積は3×3mm2 であり、分割高誘電率体
より形成される単位コンデンサが100個並列接続され
た薄膜コンデンサとなっている。
【0106】作製した薄膜コンデンサの1MHzから
1.8GHzでのインピーダンス特性を、インピーダン
スアナライザー(ヒュウレットパッカード社製HP42
91A)を用いて測定した。実効容量が196nF(単
位コンデンサ一当たり、1.96nF)、実効インダク
タンスが8pH(単位コンデンサ当たり800pH)、
実効抵抗が15mΩ(単位コンデンサ当たり1.5
Ω)、共振周波数は127MHzであった。単位コンデ
ンサ当たりの抵抗値が大きいのは、サブμm厚のPt薄
膜電極を用いているためであり、電極厚みをより厚くす
ることでさらに、低抵抗とすることは可能である。
【0107】共振周波数をより高周波側に移動させるに
は、分割される個々の分割高誘電率体の面積を小さくす
ればよく、例えば0.1×0.1mm2 、低誘電率層の
幅を0.05mmとすると、実効容量は前記例と同程度
となるが、単位コンデンサの数が4倍となるため、共振
周波数は約254MHzと2倍とすることが可能であ
る。
【0108】比較例として、上記構造で、アモルファス
SiO2 の代わりにポリイミド樹脂からなる低誘電率樹
脂を充填したところ、実効容量が210nF、実効イン
ダクタンスは120pH、実効抵抗が48mΩであっ
た。
【0109】実施例2 BaTi1-x-y Zrx Sny 3 (x=0.05、y=
0.02、表1の試料No.14)からなる塗布溶液を上
記のように作製し、実施例1の試料と同様の電極形状の
薄膜コンデンサを上記実施例1と同様にして作製した。
この薄膜コンデンサの特性について上記実施例と同様に
して求めた。
【0110】実効容量が102nF、実効インダクタン
スは10pH、実効抵抗が14mΩであった。
【0111】
【発明の効果】以上詳述した様に、本発明によれば、誘
電体薄膜を、分割高誘電率体とアモルファスSiO2
らなる低誘電率体により構成したので、大容量、低イン
ダクタンスが同時に実現でき、超高速IC回路のノイズ
低減を図ることができる。
【0112】即ち、分割高誘電率体の相互間に低損失低
誘電率アモルファスSiO2 を充填したので、分割高誘
電率体の電束密度の漏れを小さくし、低インダクタンス
化を促進できるとともに、低誘電損失すなわち、低抵抗
を実現できるため、ICへの効率的な電荷供給をするこ
とができる。
【0113】よって、実効容量が100nF以上の大容
量で、かつ低インダクタンス(10pH以下)、100
MHz以上の共振周波数をもつ薄膜デカップリングコン
デンサを提供することができ、数100MHzから1G
Hzのクロック周波数で動作する高速デジタルIC回路
における同時切り替えノイズの効果的な除去、および電
源電圧の定常的な安定化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】組成式BaTi1-x-y Zrx Sny 3 におい
て、横軸にx、縦軸にyを記載した図である。
【図2】本発明の薄膜コンデンサの基本構成を示す斜視
図である。
【図3】図2の上部の電極膜を省略した状態の平面図で
ある。
【図4】実施例で作製したPb(Mg1/3 Nb2/3 )O
3 薄膜の測定周波数1kHzにおける比誘電率の温度特
性を示す図である。
【図5】実施例で作製したPb(Mg1/3 Nb2/3 )O
3 薄膜の測定周波数1kHzにおける比誘電率の直流電
界依存性を示す図である。
【図6】実施例で作製したPb(Mg1/3 Nb2/3 )O
3 薄膜の比誘電率の周波数特性を示す図である。
【符号の説明】
1・・・基板 2、5・・・電極膜 3・・・分割高誘電率体 4・・・低誘電率体 6、7・・・容量取出部 10・・・誘電体薄膜

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】誘電体薄膜の両面にそれぞれ電極膜を形成
    してなる薄膜コンデンサであって、前記誘電体薄膜が複
    数の分割高誘電率体を離間して配置し、かつ前記複数の
    分割高誘電率体の間にアモルファスSiO2 からなる低
    誘電率体を配置して構成されることを特徴とする薄膜コ
    ンデンサ。
  2. 【請求項2】誘電体薄膜の両面に形成された電極膜に
    は、同一側にそれぞれ容量取出部が形成されており、電
    極膜を流れる電流が逆方向とされていることを特徴とす
    る請求項1記載の薄膜コンデンサ。
  3. 【請求項3】請求項1または2記載の薄膜コンデンサが
    基板内に内蔵されていることを特徴とするコンデンサ内
    蔵基板。
  4. 【請求項4】分割高誘電率体は、金属元素としてPb、
    MgおよびNbを含むペロブスカイト型複合酸化物結晶
    からなる膜厚2μm以下の薄膜であって、測定周波数1
    kHz(室温)での比誘電率が2500以上、100M
    Hz(室温)での比誘電率が2000以上であり、かつ
    比誘電率の温度特性が±15%以内(−40℃〜85
    ℃)であり、直流電界5V/μm印加時の比誘電率の減
    少率が40%以内であることを特徴とする請求項1また
    は2記載の薄膜コンデンサ。
  5. 【請求項5】分割高誘電率体は、金属元素としてBa、
    Ti、ZrおよびSnを含有するペロブスカイト型複合
    酸化物からなる薄膜であって、これらの成分をBaTi
    1-x-y Zrx Sny 3 と表した時のxおよびyが、図
    1における線分A−B−C−D−E−F−Aで囲まれる
    範囲内にあり、かつ、ペロブスカイト結晶の平均結晶粒
    径dが0.10〜0.25μmであることを特徴とする
    請求項1または2記載の薄膜コンデンサ。
  6. 【請求項6】複数の誘電体薄膜と複数の電極膜を交互に
    積層してなる薄膜コンデンサであって、前記誘電体薄膜
    が複数の分割高誘電率体を離間して配置し、かつ前記複
    数の分割高誘電率体の間にアモルファスSiO2 からな
    る低誘電率体を配置して構成されることを特徴とする薄
    膜コンデンサ。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002008942A (ja) * 2000-06-16 2002-01-11 Fujitsu Ltd コンデンサ装置、コンデンサ装置の製造方法及びコンデンサ装置が実装されたモジュール
JP2006237314A (ja) * 2005-02-25 2006-09-07 Matsushita Electric Ind Co Ltd コンデンサ内蔵配線基板及びその製造方法
JP2007049096A (ja) * 2005-08-12 2007-02-22 Nec Corp プリント回路基板、半導体パッケージ、半導体装置及び電子機器
KR101109701B1 (ko) * 2004-03-31 2012-02-06 신꼬오덴기 고교 가부시키가이샤 커패시터 실장 배선 기판 및 그 제조 방법

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