JPH10286910A - 製缶用積層体及びシームレス缶 - Google Patents

製缶用積層体及びシームレス缶

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JPH10286910A
JPH10286910A JP9944997A JP9944997A JPH10286910A JP H10286910 A JPH10286910 A JP H10286910A JP 9944997 A JP9944997 A JP 9944997A JP 9944997 A JP9944997 A JP 9944997A JP H10286910 A JPH10286910 A JP H10286910A
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芳樹 武居
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幸子 町井
Katsuhiro Imazu
勝宏 今津
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 成形性に優れていると共に、高温処理及び長
期保存において、ポリエステル中に必然的に存在する低
分子量成分の内容物中への移行を極力抑え、濁りを抑制
するシームレス缶及びこのシームレス缶を製造するため
の製缶用積層体を提供するにある。 【解決手段】 金属基体と該基体表面に設けられた
塑性ポリエステル層とからなる製缶用積層体において、
前記熱可塑性ポリエステル層が、チレンテレフタレー
ト単位を、全塩基性カルボン酸成分当たりのテレフタル
酸成分の量が5乃至99モル%となるように含有し且つ
エチレンナフタレート単位を、全塩基性カルボン酸成分
当たりのナフタレンジカルボン酸成分の量が1乃至95
モル%となるように含有する共重合ポリエステル乃至ブ
レンドポリエステルの押出コートで形成されていること
を特徴とする製缶用積層体。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は製缶用積層体及びこ
の積層体を用いて製造されたシームレス缶に関するもの
で、より詳細には、高温殺菌されているコーヒー飲料、
お茶類充填に使用でき、高温での貯蔵安定性が顕著に改
善され、内容物の保存性に優れた積層体及びこの積層体
から成形されたシームレス容器に関する。
【0002】
【従来の技術】金属素材を熱可塑性ポリエステルフィル
ムで被覆した積層体は、製缶用素材として古くから知ら
れており、この積層体を絞り加工或いは絞り・しごき加
工に付して、飲料等を充填するためのシームレス缶とす
ることもよく知られている。
【0003】金属素材に積層する熱可塑性ポリエステル
としては、加工性、耐腐食性、香味保持性等の見地か
ら、エチレンテレフタレート単位を主体とし、所望によ
り、他のエステル単位を含むポリエステル或いは共重合
ポリエステルが使用されてきた。
【0004】特開平7−82391号公報には、平均粒
径2.5μm以下の滑剤を含有する共重合ポリエステル
からなる二軸配向フイルムであって、該共童合ポリエス
テルが2,6−ナフタレンジカルボン酸80〜95モル
%及ぴメチレン基数2〜10の脂肪族直鎖ジカルボン酸
5〜20モル%からなる酸成分と、主としてエチレング
リコールからなるグリコール成分とから構成され、かつ
固有粘度([η〕)0.5〜0.7の分子量を有するこ
とを特徴とする全属板貼合せ成形加工用ポリエステルフ
イルムが記載されている。
【0005】特開平5−255492号公報には、ジカ
ルポン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として
エチレングリコールを主成分とし、また、少量のナフタ
レンジカルボン酸単位(0.2〜6モル%)、ジエチレ
ングリコール単位を合み、環状三量体合量が0.40重
量%以下、更に、極限粘度、密度が特定範囲にある共重
合ポリエチレン及ぴその成形体が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】熱可塑性ポリエステル
を被覆した積層体から形成されたシームレス缶は、耐腐
食性については、一応満足できる評価は得られているも
のの、近年、レトルト殺菌の合理化や効率化のために、
高温レトルトが望まれている。高温でのレトルトでは、
内面側のポリエステルフィルムからの低分子量成分の溶
出量が大きくなることが分かった。缶ウオーマーやホツ
トベンダーで販売されているコーヒー飲料やお茶類の充
填の用途に用いた場合には、未だある種の問題を発生す
ることが分かった。
【0007】即ち、高温湿熱条件下では、フィルム中に
必然的に含まれている低分子量成分の内容物への移行量
が大きくなり、また、低分子量成分の中でも、比較的高
分子成分であり、本来水溶液に対する溶解度の極めて小
さいものである成分の抽出が顕著になる。内容物に移行
する量は、厚生省告示規則、及び米国FDA規則による
制限量よりもはるかに少なくとも、高温処理、或いは更
に長期間保存される場合、内容物中に移行した比較的高
分子量の成分は凝集して、粒子サイズが大きくなって、
濁りを生じる場合があり、心理的に好ましいものではな
い。
【0008】更に、ポリエステル被覆金属積層体のシー
ムレス缶への成形に際しても、成形性の一層の向上が望
まれている。即ち、材料コストの節約のためには、絞り
比を向上させると共に、缶胴の薄肉化を高度に行うこと
が必要であるが、このためには、用いるポリエステル被
覆層もこの苛酷な加工に耐えるものでなければならな
い。
【0009】従って、本発明の目的は、成形性に優れて
いると共に、高温処理及び長期保存において、ポリエス
テル中に必然的に存在する低分子量成分の内容物中への
移行を極力抑え、濁りを抑制するシームレス缶及びこの
シームレス缶を製造するための製缶用積層体を提供する
にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、金属基
体と該基体表面に設けられた熟可塑性ポリエステル層と
からなる製缶用積層体において、前記熱可塑性ポリエス
テル層が、工チレンテレフタレート単位を、全塩基性カ
ルボン酸成分当たりのテレフタル酸成分の量が5乃至9
9モル%となるように含有し且つエチレンナフタレート
単位を、全塩基性カルボン酸成分当たりのナフタレンジ
カルボン酸成分の量が1乃至95モル%となるように含
有する共重合ポリエステル乃至ブレンドポリエステルの
押出コートで形成されていることを特徴とする製缶用積
層体が提供される。本発明においては、 1.前記共重合ポリエステル乃至ブレンドポリエステル
のガラス転移点(Tg)が80℃以上であること、 2.前記共重合ポリエステル乃至ブレンドポリエステル
が0.5以上の固有粘度分子量を有すること、 3.前記共重合ポリエステルが30J/g以下の融解エ
ンタルピーを有するものであること、が好ましい。本発
明によればまた、前記積層体を絞り成形或いは絞り・し
ごき成形で形成され、熱処理を施したたシームレス缶に
おいて、缶上部の共重合体ポリエステル或いはブレンド
ポリエステルが50J/g以下の融解エンタルピーを有
するものであることを特徴とするシームレス缶が提供さ
れる。
【0011】
【発明の実施形態】
[作用] 1.本発明の製缶用積層体は、金属基体と該基体表面に
設けられた熟可塑性ポリエステル層とからなるが、本発
明においては、この熱可塑性ポリエステル層として、エ
チレンテレフタレート単位を、全塩基性カルボン酸成分
当たりのテレフタル酸成分の量が5乃至99モル%とな
り、且つエチレンナフタレート単位を、全塩基性カルボ
ン酸成分当たりのナフタレンジカルボン酸成分の量が1
乃至95モル%となるように含有する共重合ポリエステ
ル乃至ブレンドポリエステルを用いること、このポリエ
ステル層を押出コートで形成したことが特徴であり、こ
れにより、シームレス缶への優れた成形性を確保し、且
つ優れた耐デント性を維持しながら、高温湿熱条件下で
の樹脂層の経時劣化を防止し且つ内容物の保存性を向上
させることができる。 2.ポリエチレンテレフタレートは、結晶性であると共
に高い融点を有し、引っ張り強さ、耐衝撃性、耐屈曲疲
労をはじめとして優れた諸性能を有するが、高温湿熱条
件下では、物性が急激に低下するという欠点を有してい
る。例えば、130℃のオートクレーブ処理における経
時時間と伸びの保持率との関係を調べると、ポリエチレ
ンテレフタレートでは、伸びの保持率が、20時間で約
85%、40時間で約70数%、60時間で50%以下
と、経時により伸びの保持率が大きく低下することが認
められる。この理由は、ポリエチレンテレフタレート
が、高温湿熱条件下で加水分解を受けるためと考えられ
る。 3.これに対して、ポリエチレンナフタレート(PE
N)は、上述したオートクレーブ処理に際しても、20
時間で90%以上、40時間で80%以上、60時間で
60%以上と、経時による伸びの保持率が高く、エチレ
ンナフタレート系ポリエステルをエチレンテレフタレー
ト系ポリエステルにブレンドするか或いはこれらを共重
合させることにより、高温湿熱条件下での経時劣化を有
効に防止することが可能となるが理解されよう。 4.本発明においては、エチレンテレフタレート系ポリ
エステル(A)と、エチレンナフタレート系ポリエステ
ル(B)とを、前述した量比となるようにブレンドする
か、或いは共重合させると、驚くべきことに、高温湿熱
条件下での内容物の保存性が顕著に改善されることが分
かった。エチレンナフタレート単位の含有量が上記範囲
よりも少ない共重合ポリエステル層を備えたシームレス
缶におけるレトルト殺菌時における濁りの発生は、濁度
で4.0のオーダーである(後述する比較例3参照)の
に対して、エチレンナフタレート単位を上記の割合で含
有する共重合ポリエステル或いはブレンドポリエステル
層を備えたシームレス缶では、濁りの発生を、濁度で1
桁低いオーダーに抑制することができる。 5.ポリエステル層を備えたシームレス缶において、濁
りの発生は、既に指摘したとおり、ポリエステル中のオ
リゴマーの溶出によるものであるが、本発明における特
定の共重合ポリエステル或いはブレンドポリエステルで
は、このオリゴマーの溶出が著しく抑制されているので
ある。この事実は、本発明者らの多数の実験により、現
象として見いだされたものであり、本発明は以下の理由
により何らかの拘束を受けるものではないが、その理由
は次のようなものと考えられる。 6.一般に、自由体積とは、物質により占められている
体積の内、構成粒子(この場合重合体鎖)によって占め
られていない体積をいう。文献によると、ポリエチレン
テレフタレートの自由体積率は、300゜Kで0.3
9、400゜Kで0.41、500゜Kで0.44であ
るのに対して、ポリエチレンナフタレートでは、300
゜Kで0.32、400゜Kで 0.33、500゜K
で0.34であって、ポリエチレンテレフタレートに比
して小さな自由体積率を示す。即ち、本発明に用いるブ
レンドポリエステルでは、エチレンナフタレート系ポリ
エステルとの共重合或いはブレンドによりポリエチレン
テレフタレートに比して自由体積が減少しており、この
自由体積の減少が、濁り発生の原因となるオリゴマーの
混入を抑制していると考えられる。 7.本発明において、高温湿熱条件下での経時劣化が有
効に防止されるのは、エチレンナフタレート単位の導入
により、ポリエステル層のガラス転移点が向上している
ためと思われる。ポリエチレンテレフタレートのガラス
転移点は78℃であるが、本発明の積層体におけるガラ
ス転移点は80℃以上であり、ガラス転移点が向上して
いる。ガラス転移点が80℃を下回るポリエステル層
は、濁り発生傾向が大きい(比較例2及び3)。 8.本発明では、エチレンテレフタレート系ポリエステ
ル(A)とエチレンナフタレート系ポリエステル(B)
とを特定の量比で共重合させ或いはブレンドしたものを
使用することにより、シームレス缶への成形性を向上さ
せ、また缶の耐デント性を向上させることができる。エ
チレンナフタレート系ポリエステル(B)の共重合比或
いはブレンド量比が少ない場合、缶の上部の加工度が大
きい部分が白化する等加工性が悪く、耐デント性も劣る
(比較例1及び4)。一方エチレンナフタレート系ポリ
エステル(B)の共重合比或いはブレンド量比が多い場
合、缶の上部の加工度が大きい部分では亀裂を発生し、
成形が困難となる(比較例4)。これに対して、エチレ
ンナフタレート系ポリエステル(B)の配合量が20モ
ル%のような少量の配合でも加工性及び耐デント性が向
上している事実(実施例4)は、驚くべきことである。 9.本発明では、上記共重合ポリエステル或いはブレン
ドポリエステルを、押出コートにより、金属基体に設け
る。金属基体にポリエステルフィルムを熱接着により張
り合わせる場合、熱結晶化によるラメラの生成(白化)
を防止するためには、フィルムに分子配向を付与してお
くことが一般に必要であり、このために別工程での製
膜、延伸操作が必要となり、被覆のコストが高くなるの
を避け得ない。これに対して、金属基体にポリエステル
を直接押出コートすると、上記工程が不要となり、被覆
コストを低減することができる。加えて、押出コートに
よる製缶用積層体では、共重合ポリエステル或いはブレ
ンドポリエステル層を過冷却された非晶質状態に保持で
きるので、絞り或いは更にしごき工程での成形性に優れ
ており、また、この工程で缶側壁部に一次配向を付与す
ることができる。 10.また、本発明に用いる共重合ポリエステル或いは
ブレンドポリエステルは、30J/g以下の融解エンタ
ルピー(示差走査熱量計による)を有することが、シー
ムレス缶への成形性や耐腐食性の点で重要であり、30
J/gを越える融解エンタルピーを有するものでは、加
工性も耐腐食性も劣る(比較例4参照)。更に、シーム
レス缶において、加工の程度が高くなり、また耐腐食性
が問題となるのは、缶の上部の部分であるが、缶上部の
共重合ポリエステル或いはブレンドポリエステルは50
J/g以下の融解エンタルピー(示差走査熱量計によ
る)を有することが、巻き締め成形による密封性確保の
点で重要である。 11.本発明に用いる共重合ポリエステルは、固有粘度
0.5以上の分子量を有するのがよく、これにより、腐
食成分に対する優れたバリアー性と優れた機械的性質と
が得られる。
【0012】[シームレス缶及び積層体の概略]本発明
のシームレス缶の一例を示す図1において、この深絞り
缶1は前述した共重合乃至ブレンドポリエステル−金属
ラミネートの曲げ伸ばし−しごき加工により形成され、
底部2と側壁部3とから成っている。側壁部3の上端に
は所望によりネック部4を介してフランジ部5が形成さ
れている。この缶1では、底部2に比して側壁部3は曲
げ伸ばし及びしごき加工により積層体元厚の30乃至1
00%、特に30乃至85%の厚みとなるように薄肉化
されている薄肉化されている。
【0013】側壁部3の断面構造の一例を示す図2にお
いて、この側壁部3は金属基体6と共重合乃至ブレンド
ポリエステル層7とから成っている。金属基体6には外
面被膜8が形成されているが、この外面被膜8はポリエ
ステル内面被膜7と同様のものであるのが好ましいが、
通常の缶用塗料や樹脂フィルム被覆であってもよい。
【0014】側壁部の断面構造の他の例を示す図3にお
いて、ポリエステル層7と金属基体6との間に接着用プ
ライマーの層9を設けている以外は、図3の場合と同様
である。これらの何れの場合も、底部2の断面構造は、
薄肉化加工を受けていないだけで、側壁部3の断面構造
と同様である。
【0015】[金属板]本発明では、金属板としては各
種表面処理鋼板やアルミニウム等の軽金属板が使用され
る。
【0016】表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍
後二次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメ
ッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の
一種または二種以上行ったものを用いることができる。
好適な表面処理鋼板の一例は、電解クロム酸処理鋼板で
あり、特に10乃至300mg/m2 の金属クロム層と
1乃至50mg/m2 (金属クロム換算)のクロム酸化
物層とを備えたものであり、このものは塗膜密着性と耐
腐食性との組合せに優れている。表面処理鋼板の他の例
は、0.5乃至11.2g/m2 の錫メッキ量を有する
硬質ブリキ板である。このブリキ板は、金属クロム換算
で、クロム量が1乃至30mg/m2 となるようなクロ
ム酸処理或いはクロム酸−リン酸処理が行われているこ
とが望ましい。
【0017】更に他の例としては、アルミニウムメッ
キ、アルミニウム圧接等を施したアルミニウム被覆鋼板
が用いられる。
【0018】軽金属板としては、所謂アルミニウム板の
他に、アルミニウム合金板が使用される。耐腐食性と加
工性との点で優れたアルミニウム合金板は、Mn:0.
2乃至1.5重量%、Mg:0.8乃至5重量%、Z
n:0.25乃至0.3重量%、及びCu:0.15乃
至0.25重量%、残部がAlの組成を有するものであ
る。これらの軽金属板も、金属クロム換算で、クロム量
が20乃至300mg/m2 となるようなクロム酸処理
或いはクロム酸/リン酸処理が行われていることが望ま
しい。
【0019】金属板の素板厚、即ち缶底部の厚み(tB
)は、金属の種類、容器の用途或いはサイズによって
も相違するが、一般に0.10乃至0.50mmの厚み
を有するのがよく、この内でも表面処理鋼板の場合に
は、0.10乃至0.30mmの厚み、また軽金属板の
場合には0.15乃至0.40mmの厚みを有するのが
よい。
【0020】[共重合乃至ブレンドポリエステル]本発
明に用いるポリエステルは、工チレンテレフタレート単
位を、全塩基性カルボン酸成分当たりのテレフタル酸成
分の量が5乃至99モル%となるように含有し且つエチ
レンナフタレート単位を、全塩基性カルボン酸成分当た
りのナフタレンジカルボン酸成分の量が1乃至95モル
%となるように含有する共重合ポリエステル乃至ブレン
ドポリエステルである。
【0021】(1)共重合ポリエステル 本発明に用いる共重合ポリエステルにおいて、ナフタレ
ンジカルボン酸は、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸
から成ることが好ましいが、本発明の本質を損なわない
範囲で、それ以外のナフタレンジカルボン酸の少量を含
んでいてもよい。
【0022】テレフタル酸及びナフタレン−2,6−ジ
カルボン酸の組み合わせを主体とする酸成分とエチレン
グリコールを主体とするアルコール成分とから誘導され
た共重合ポリエステルであることが好ましい。テレフタ
ル酸は酸成分の50モル%以上を占めていることが好ま
しい。
【0023】テレフタル酸以外の酸成分としては、イソ
フタール酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ジフェ
ノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウ
ムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ア
ジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリメリット酸、
ピロメリット酸等を挙げることができる。
【0024】またエチレングリコール以外のアルコール
成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタン
ジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレ
ングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレング
リコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノー
ルAのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロ
パン、ペンタエリスリトールなどのグリコール成分を挙
げることができる。
【0025】テレフタル酸並びにナフタレンジカルボン
酸以外の酸成分は、酸成分を基準にして、30モル%以
下の量で含有することが許容される。
【0026】イソフタル酸を含有する共重合ポリエステ
ルは、共重合体の融解エンタルピーを下げて、成形性や
耐デント性の改善が大であり、また種々の成分、香味成
分や腐食成分に対してバリアー効果が大きく、吸着性に
おいても少ないという特徴を有する。
【0027】共重合ポリエステルのジオール成分として
は、エチレングリコールを主体とするものが好ましい。
ジオール成分の95モル%以上、特に98モル%以上が
エチレングリコールからなることが、分子配向性、腐食
成分や香気成分に対するバリアー性等から好ましい。
【0028】共重合ポリエステルは、フィルム形成範囲
の分子量を有するべきであり、溶媒として、フェノール
/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘
度〔η〕は0.5乃至1.5、特に0.6乃至1.5の
範囲にあるのが腐食成分に対するバリアー性や機械的性
質の点でよい。
【0029】(2)ブレンドポリエステル (A)エチレンテレフタレート系ポリエステル エチレンテレフタレート系ポリエステル(A)として
は、ポリエチレンテレフタレートの他にエチレンテレフ
タレート単位を主体とする共重合ポリエステルが使用さ
れる。テレフタル酸は酸成分の50モル%以上を占めて
いることが好ましい。エチレングリコールはアルコール
成分の95モル%以上、特に98モル%以上を占めてい
ることが望ましい。上記量のテレフタル酸及びエチレン
グリコールからなるポリエステルは、分子配向性、腐食
成分や香気成分に対するバリアー性等から好ましい。
【0030】テレフタル酸以外の酸成分としては、イソ
フタール酸、P−β−オキシエトキシ安息香酸、ジフェ
ノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウ
ムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ナ
フタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイ
マー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げるこ
とができる。イソフタル酸を含有する共重合ポリエステ
ルは、共重合体の融解エンタルピーを下げて、成形性や
耐デント性の改善が大であり、また種々の成分、香味成
分や腐食成分に対してバリアー効果が大きく、吸着性に
おいても少ないという特徴を有する。
【0031】またエチレングリコール以外のアルコール
成分としては、プロピレングリコール、1,4−ブタン
ジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレ
ングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレング
リコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノー
ルAのエチレンオキサイド付加物、トリメチロールプロ
パン、ペンタエリスリトールなどのアルコール成分を挙
げることができる。
【0032】(B)エチレンナフタレート系ポリエステ
ル エチレンナフタレート系ポリエステル(B)としては、
ポリエチレンナフタレートの他にエチレンナフタレート
単位を主体とする共重合ポリエステルが使用される。ナ
フタレンジカルボン酸は酸成分の50モル%以上を占め
ていることが好ましい。エチレングリコールはアルコー
ル成分の95モル%以上、特に98モル%以上を占めて
いることが望ましい。ナフタレンジカルボン酸は、ナフ
タレン−2,6−ジカルボン酸から成ることが好ましい
が、本発明の本質を損なわない範囲で、それ以外のナフ
タレンジカルボン酸の少量を含んでいてもよい。
【0033】ナフタレンジカルボン酸以外の酸成分とし
ては、テレフタル酸、イソフタール酸、P−β−オキシ
エトキシ安息香酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジ
カルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキ
サヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイ
マー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げるこ
とができ。
【0034】またエチレングリコール以外のアルコール
成分としては、前に例示したものが使用される。
【0035】ポリエステル(A)及び(B)は、フィル
ム形成範囲の分子量を有するべきであり、溶媒として、
フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定
した固有粘度〔η〕は0.5乃至1.5、特に0.6乃
至1.5の範囲にあるのが腐食成分に対するバリアー性
や機械的性質の点でよい。
【0036】(C)ブレンド物 エチレンテレフタレート系ポリエステル(A)と、エチ
レンナフタレート系ポリエステル(B)とのブレンド物
は、メルトブレンドでもドライブレンドでもよい。メル
トブレンドの場合、一軸或いは二軸の押出機やニーダー
等を用いて、あらかじめ樹脂チップをメルトブレンドす
ることができる。また、後者の場合、コニカルブレンダ
ーや、ヘンシェルミキサー等を使用して、予備混合し、
直接原料チップを押し出し機中に入れることができる。
ポリエステル樹脂の混練時の温度としては260℃〜2
80℃が一般的である。
【0037】本発明に用いる金属板−ポリエステル積層
体のポリエステル層は、前述した共重合乃至ブレンドポ
リエステルの単独から成っていても、或いは2種以上の
ポリエステルの積層体であってもよい。後者の積層体の
場合、上層が共重合乃至ブレンドポリエステルであり、
下層は金属への接着性に優れ、耐デント性に優れたそれ
自体公知の共重合ポリエステルであってよい。
【0038】勿論、この共重合乃至ブレンドポリエステ
ルには、それ自体公知の樹脂用配合剤、例えば二酸化チ
タン(チタン白)等の顔料、各種帯電防止剤、滑剤、酸
化防止剤等を公知の処方に従って配合することができ
る。
【0039】[ラミネートの製造方法]本発明に用いる
製缶用積層体は、加熱された金属基体に共重合乃至ブレ
ンドポリエステル押出コートし、両者を熱接着させるこ
とにより製造することができる。熱接着は、一対のラミ
ネートロールに金属基体とポリエステルの溶融膜を通す
ことにより行われる。
【0040】金属基材の通路に沿って、金属基材の加熱
域と、加熱された金属基材の通路に対してポリエステル
を膜状に供給する少なくとも1個のダイと、金属基材の
少なくとも一方の面にポリエステルを接着させる一対の
温間ラミネートロールと、形成されるラミネート材を急
冷させる急冷手段とを配置し、一対の温間ラミネートロ
ール間に且つ温間ラミネートロールの中心を結ぶ線に対
してほぼ直角方向に加熱された金属基材を通過させ、ダ
イからのポリエステルの溶融膜を対応する温間ラミネー
トロールで支持搬送して温間ラミネートロール間のニッ
プ位置に供給し、金属基材の少なくとも一方の面にポリ
エステルの薄膜を融着させることが好ましい。
【0041】この方法では、ポリエステルの溶融膜が、
温間ローラ表面で支持され、この支持状態でニップ位置
に供給されるので、ニップ位置での供給状態が安定なも
のとなり、波打ちによる偏肉或いはしわの発生がなく、
また空気巻き込みを発生することもなく、形成される被
覆は欠点のないカバレージに優れたものとなる。このた
め、本発明によれば、ラミネート速度を、従来のものに
比して、著しく高速とすることができ、生産性を向上さ
せることが可能となる。更にまた、ポリエステルの溶融
膜が、最初に圧力の著しく低い状態で加温ラミネートロ
ールと接触し、次いでニップ位置で加圧されるので、ロ
ール表面に樹脂が付着移行する傾向がなく、金属基材表
面のポリエステル樹脂層は欠陥のないものとなる。
【0042】共重合乃至ブレンドポリエステル−金属ラ
ミネートの製造方法を説明するための図4において、金
属基材11の通路12に沿って、金属基材の加熱域13
と、金属基材の通路12に対して相対峙させたポリエス
テル14a、14bを膜状に供給する一対のダイ15
a、15bと、金属基材11の両面にポリエステル14
a、14bを接着させる一対の温間ラミネートロール1
6a、16bと、形成されるラミネート材17を急冷さ
せる急冷手段18とが配置される。
【0043】この装置では、ラミネートロールとして温
間ラミネートロール16a、16bが使用されると共
に、一対の温間ラミネートロール16a、16b間に且
つ温間ラミネートロール16a、16bの中心を結ぶ線
に対してほぼ直角方向に、金属基材11を通過させ、ダ
イ15a、15bからポリエステルの溶融膜14a、1
4bを対応する温間ラミネートロール16a、16bで
支持搬送して、温間ラミネートロール間のニップ位置1
0に供給して、金属基材1の両面にポリエステルの薄膜
を同時に融着させる。
【0044】ラミネートに際して、金属基材をポリエス
テルの融点(Tm)−80℃乃至Tm+50℃、特にT
m−50℃乃至Tm+30℃の温度(温間ラミネートロ
ールに入る直前の温度)に加熱するのがよく、金属基材
の加熱には、通電発熱、高周波誘導加熱、赤外線加熱、
熱風炉加熱、ローラ加熱等のそれ自体公知の加熱手段を
用いることができる。
【0045】この加熱温度が、上記範囲よりも低い場合
には、密着力が十分でなく、一方上記範囲よりも高い場
合には、金属の熱軟化を生じやすい。
【0046】ポリエステルを押し出すためのダイとして
は、樹脂の押出コートに一般に使用されているダイ、例
えばコートハンガー型ダイ、フィッシュテール型ダイ、
ストレートマニホ−ルド型ダイ等が使用される。共重合
ポリエステル或いはブレンドポリエステルを押出機中
で、溶融温度以上の温度で加熱混練し、前記ダイを通し
て押し出す。
【0047】ポリエステルを積層体として、押し出すこ
とも可能であり、この場合には、積層体を構成する樹脂
の数に対応する数の押出機を使用し、多重多層ダイを通
して樹脂の押出を行うのがよい。
【0048】押出に際して、ダイリップの幅は0.3乃
至2mmの範囲にあるのが適当であり、一方押し出し速
度はラミネートロールとの周速との比が後述する範囲と
なるように定める。
【0049】温間ラミネートロールの周速をダイからの
熱可塑性樹脂の押出速度の10乃至150倍、特に20
乃至130倍に維持して、熱可塑性樹脂の溶融薄膜を薄
肉化することが好ましい。この範囲にあることでダイリ
ップ幅等の機械的な調整ムラが矯正されてより均一な薄
膜となり、かつ安定したラミネートが可能となる。この
比が上記範囲を越えると、樹脂の破断を生じやすくなる
ので好ましくない。また、上記範囲を下回ると、安定し
たラミネートが行われないだけでなく十分に薄肉化され
た被覆を形成させることが困難である。
【0050】温間ラミネートロールのニップ位置におけ
る接触幅(ニップ幅)が1乃至50mmの範囲にあるこ
とが、金属基材とポリエステルとの密着を強固に行う上
で重要であり、この幅が上記範囲よりも少ないと、十分
な接触時間が得られず被覆の表面状態の不良や接着不良
を生じ、また上記範囲よりも広いと、ニップ圧力を高く
することが困難となったり、ニップの間にラミネート材
が冷却されすぎて密着力が低下する傾向にある。ニップ
の圧力は1乃至100kgf/cm2 の範囲にあること
が好ましい。
【0051】上記のニップ幅を確保するために、温間ラ
ミネートロールの少なくとも一方が弾性体ロールである
ことが好ましい。
【0052】また、温間ラミネートロールが50℃乃至
ポリエステルの融点(Tm)−30℃の表面温度を有す
るものであることが好ましく、この調温は、温度が一定
の液体媒体をロール内に通すことや、温調されたバック
アップロールを温間ラミネートロールに接触させる等の
それ自体公知の方法により行いうる。
【0053】熱接着終了後のラミネート材は、熱結晶化
や熱劣化を防止するために、ラミネート後直ちに急冷す
るか、或いはある程度温度保持後、熱結晶化を防止する
ため、結晶化温度域に到達する前に、その時点で急冷す
るのがよい。この冷却は、冷風吹き付け、冷却水噴霧、
冷却水浸漬、冷却ローラとの接触等により行われる。
【0054】本発明において、共重合乃至ブレンドポリ
エステル層の厚みは、全体として、2乃至100μm、
特に5乃至50μmの範囲にあるのが金属の保護効果及
び加工性の点でよい。
【0055】金属素材に所望により設ける接着プライマ
ーは、金属素材とフィルムとの両方に優れた接着性を示
すものである。密着性と耐腐食性とに優れたプライマー
塗料の代表的なものは、種々のフェノール類とホルムア
ルデヒドから誘導されるレゾール型フェノールアルデヒ
ド樹脂と、ビスフェノール型エポキシ樹脂とから成るフ
ェノールエポキシ系塗料であり、特にフェノール樹脂と
エポキシ樹脂とを50:50乃至5:95重量比、特に
40:60乃至10:90の重量比で含有する塗料であ
る。
【0056】接着プライマー層は、一般に0.01乃至
10μmの厚みに設けるのがよい。接着プライマー層は
予め金属素材上に設けておくことができる
【0057】[シームレス缶の製造]本発明のシームレ
ス缶は、上記の共重合乃至ブレンドポリエステル−金属
ラミネートをポンチとダイスとの間で、有底カップに絞
り−深絞り成形し、最終段の深絞り段階で曲げ伸し或い
は更にしごきによりカップ側壁部の薄肉化を行なうこと
により製造される。即ち、配向を有するポリエステル層
を、シームレス缶の側壁部に形成させるには、薄肉化の
ための変形を、缶軸方向(高さ方向)の荷重による変形
(曲げ伸ばし)缶厚み方向の荷重による変形(しごき)
との組み合わせでしかもこの順序に行うことが一般に重
要である。曲げ伸ばしはエチレンテレフタレート単位或
いはエチレンナフタレート単位のc軸方向への分子配向
を与え、一方しごきはエチレンテレフタレート単位或い
はエチレンナフタレート単位のベンゼン面のフィルム面
に平行な分子配向を与えるからである。
【0058】ラミネートの絞り−しごき成形は次の手段
で行われる。即ち、図5に示す通り、被覆金属板から成
形された前絞りカップ21は、このカップ内に挿入され
た環状の保持部材22とその下に位置する再絞り−しご
きダイス23とで保持される。これらの保持部材22及
び再絞り−しごきダイス23と同軸に、且つ保持部材2
2内を出入し得るように再絞り−しごきポンチ24が設
けられる。再絞り−しごきポンチ24と再絞り−しごき
ダイス23とを互いに噛みあうように相対的に移動させ
る。
【0059】再絞り−しごきダイス23は、上部に平面
部25を有し、平面部の周縁に曲率半径の小さい作用コ
ーナー部26を備え、作用コーナー部に連なる周囲に下
方に向けて径の増大するテーパー状のアプローチ部27
を有し、このアプローチ部に続いて小曲率部28を介し
て円筒状のしごき用のランド部(しごき部)29を備え
ている。ランド部29の下方には、逆テーパ状の逃げ3
0が設けられている。
【0060】前絞りカップ21の側壁部は、環状保持部
材22の外周面31から、その曲率コーナ部32を経
て、径内方に垂直に曲げられて環状保持部材22の環状
底面33と再絞りダイス23の平面部25とで規定され
る部分を通り、再絞りダイス23の作用コーナ部26に
より軸方向にほぼ垂直に曲げられ、前絞りカップ21よ
りも小径の深絞りカップに成形される。この際、作用コ
ーナー部26において、コーナー部26と接する側の反
対側の部分は、曲げ変形により伸ばされ、一方、作用コ
ーナー部と接する側の部分は、作用コーナー部を離れた
後、戻し変形で伸ばされ、これにより側壁部の曲げ伸ば
しによる薄肉化が行われる。
【0061】曲げ伸ばしにより薄肉化された側壁部は、
その外面が径の次第に増大する小テーパー角のアプロー
チ部27と接触し、その内面がフリーの状態で、しごき
部29に案内される。側壁部がアプローチ部を通過する
行程は続いて行うしごき行程の前段階であり、曲げ伸ば
し後のラミネートを安定化させ、且つ側壁部の径を若干
縮小させて、しごき加工に備える。即ち、曲げ伸ばし直
後のラミネートは、曲げ伸ばしによる振動の影響があ
り、フィルム内部には歪みも残留していて、未だ不安定
な状態にあリ、これを直ちにしごき加工に付した場合に
は、円滑なしごき加工を行い得ないが、側壁部の外面側
をアプローチ部27と接触させてその径を縮小させると
共に、内面側をフリーの状態にすることにより、振動の
影響を防止し、フィルム内部の不均質な歪みも緩和させ
て、円滑なしごき加工を可能にするものである。
【0062】アプローチ部27を通過した側壁部は、し
ごき用のランド部(しごき部)29と再絞り−しごきポ
ンチ24との間隙に導入され、この間隙(C1)で規制
される厚みに圧延される。最終側壁部の厚みC1は積層
体元厚(t)の30乃至85%の厚みとなるように定め
る。尚、しごき部導入側の小曲率部28は、しごき開始
点を有効に固定しながら、しごき部29への積層体の導
入を円滑に行うものであり、ランド部29の下方の逆テ
ーパ状の逃げ30は、加工力の過度の増大を防ぐもので
ある。
【0063】再絞り−しごきダイス23の曲率コーナー
部26の曲率半径Rdは、曲げ伸ばしを有効に行う上で
は、ラミネートの肉厚(t)の2.9倍以下であるべき
であるが、この曲率半径があまり小さくなるとラミネー
トの破断が生じることから、ラミネートの肉厚(t)の
1倍以上であるべきである。
【0064】テーパー状のアプローチ部27のアプロー
チ角度(テーパー角度の1/2)αは1乃至5゜を有す
るべきである。このアプローチ部角度が上記範囲よりも
小さいと、ポリエステルフィルム層の配向緩和やしごき
前の安定化が不十分なものとなり、アプローチ部角度が
上記範囲よりも大きいと、曲げ伸ばしが不均一な(戻し
変形が不十分な)ものとなり、何れの場合もフィルムの
割れや剥離を生じることなしに、円滑なしごき加工が困
難となる。
【0065】小曲率部28の曲率半径Riは、しごき開
始点の固定有効に行う上では、ラミネートの肉厚(t)
の0.3倍以上、20倍以下であるべきであるが、この
曲率半径があまり小さくなるとラミネートの破断が生じ
ることから、ラミネートの肉厚(t)の20倍以下にす
ることが好ましい。
【0066】しごき用のランド部28と再絞り−しごき
ポンチ24ポンチとクリアランスは前述した範囲にある
が、ランド長Lは、一般に0.5乃至30mmの長さを
有しているのがよい。この長さが上記範囲よりも大きい
と加工力が過度に大きくなる傾向があり、一方上記範囲
よりも小さいとしごき加工後の戻りが大きく、好ましく
ない場合がある。
【0067】本発明において、フランジ部のポリエステ
ル層は、過酷な巻締加工を受けることから、缶側壁部の
ポリエステル層に比してマイルドな加工を受けているこ
とが好ましい。これにより、巻締部の密封性及び耐腐食
性を向上させることができる。
【0068】この目的のため、しごき後の缶側壁部の上
端に、缶側壁部の厚みよりも厚いフランジ形成部が形成
されるようにする。即ち、缶側壁部の厚みをt1 及びフ
ランジ部の厚みをt2 とすると、t2 /t1 の比は、
1.01乃至2.0、特に1.05乃至1.7の範囲に
定めるのがよい。
【0069】本発明のシームレス缶を製造するに際し
て、表面の共重合乃至ブレンドポリエステル層は十分な
潤滑性能を付与するものであるが、より潤滑性を高める
ために、各種油脂類或いはワックス類等の潤滑剤を少量
塗布しておくことができる。勿論、潤滑剤を含有する水
性クーラント(当然冷却も兼ねる)を使用することもで
きるが、操作の簡単さの点では避けた方がよい。
【0070】また、再絞り−しごき加工時の温度(しご
き終了直後の温度)は、ポリエステルのガラス転移点
(Tg)よりも100℃高い温度以下で且つ10℃以上
の温度であることが好ましい。このため、工具の加温を
行ったり、或いは逆に冷却を行うことが好ましい。
【0071】本発明によれば、次いで絞り成形後の容器
を、少なくとも一段の熱処理に付することができる。こ
の熱処理には、種々の目的があり、加工により生じるフ
ィルムの残留歪を除去すること、加工の際用いた滑剤を
表面から揮散させること、表面に印刷した印刷インキを
乾燥硬化させること等が主たる目的である。この熱処理
には、赤外線加熱器、熱風循環炉、誘導加熱装置等それ
自体公知の加熱装置を用いることができる。また、この
熱処理は一段で行ってもよく、2段或いはそれ以上の多
段で行うこともできる。熱処理の温度は、180乃至2
40℃の範囲が適当である。熱処理の時間は、一般的に
いって、1乃至10分のオーダーである。
【0072】熱処理後の容器は急冷してもよく、また放
冷してもよい。即ち、フィルムや積層板の場合には急冷
操作が容易であるが、容器の場合には、三次元状でしか
も金属による熱容量も大きいため、工業的な意味での急
冷操作はたいへんであるが、本発明では急冷操作なしで
も、結晶成長が抑制され、優れた組合せ特性が得られる
のである。勿論、所望によっては、冷風吹付、冷却水散
布等の急冷手段を採用することは任意である。
【0073】得られた缶は、所望により、一段或いは多
段のネックイン加工に付し、フランジ加工を行って、巻
締用の缶とする。
【0074】
【実施例】本発明を次の例で説明する。
【0075】積層体の作成 図 に示した構成の装置を用い、表 に示した樹脂を、
ブレンドするものについてはドラムブレンドし、65m
mφの押し出し機に供給し、樹脂膜の厚みが、表 のよ
うになるよう各樹脂の溶融流動開始温度+20℃に加熱
したTFS鋼板(板厚0.195mm、調質度T−4、
金属クロム量110mg/m2 、クロム水和酸化物量1
5mg/m2 )の両面に押し出し、樹脂の溶融流動開始
温度−100℃になるように温調している一対の温間ラ
ミネートロールを用いて20m/minの速度でラミネ
ートした。その後、水シャワーによる急冷工程とコイル
両サイドの僅かなトリム工程を経て積層体を得た。 IV(固有粘度)測定 缶胴部を切り出し、6N塩酸にて金属板を溶解して、フ
ィルムを単離した。その後、少なくとも24時間の真空
乾燥に供して、IV測定用サンプルとした。このサンプ
ル200mg分をフェノール/1,1,2,2−テトラ
クロロエタン混合溶液(重量比1:1)に110℃で溶
解し、ウベローデ型粘度計を用いて30℃で比粘度を測
定した。固有粘度は下記式により求めた。 [η]=[(−1+(1+4K’ηso1/2 )/2K’
C](dl/g) K’:ハギンスの恒数(=0.33) C :濃度(g/100ml) ηso:比粘度[=溶液の落下時間−溶媒の落下時間]/
溶媒の落下時間]
【0076】デント試験 コーラを充填した缶を横向きに静置した後、5℃におい
て、金属板の圧延方向に対し直角となる缶軸線上で、缶
のネック加工部の缶底側終点に、径65.5mmの球面
を有する1kgのおもりを60mmの高さから球面が缶
に当たるように落下させて衝撃を与えた。その後、37
℃の温度で貯蔵試験を行い1年後の缶内面の状態を観察
した。
【0077】レトルト処理試験 95℃で蒸留水を充填後、135℃30分のレトルト処
理を行い、室温に戻し蒸留水を抜き取り濁度測定に供し
た。また、缶内面の腐食状態を観察した。濁度測定は、
安井機器製簡易型高感度濁度・色度計を用い、検体10
0mlを濁度用比色管に採り検体用セルに入れ、一方比
較用の標準として希釈濁度標準液100mlを採った濁
度用比色管を対照セルに入れ、上部から底部を透視し両
者の底部の明るさを比較して濁度を測定した。
【0078】積層体および缶胴上部フィルムのDSC
による融解エンタルピー及びTgの測定 積層体あるいは缶の材料である金属板の圧延方向に90
℃の軸線を缶胴上部を切り出し、6N塩酸にて金属板を
溶解して、フィルムを単離した。その後、少なくとも2
4時間の真空乾燥に供して、圧延方向に90℃の軸線を
含みフランジ先端より8mmで、軸線を中心に幅25m
mにフィルムを切り出し、DSC測定サンプルとした。
測定は、パーキンエルマー社製DSC7型を用いた。融
解エンタルピーは、−20℃から280℃まで20℃/
minで昇温を行い得られたチャートより、JIS K
−7122に準じ求めた。この時の積層体のフィルムの
示差熱計によるチャートを図6に、胴上部フィルムの示
差熱計によるチャートを図6の下段に示した。また、T
gは、胴上部フィルムを−20℃から280℃まで昇温
したサンプルを−20℃まで急冷し、5分間放置後、2
0℃/minで280℃まで昇温を行い得られた図6の
上段に示したチャートよりJIS K−7121に準じ
て求めた。
【0079】実施例1 表にまとめた組成の樹脂を用いた積層体にワックス系潤
滑剤を塗布し、直径166mmの円盤を打ち抜き、浅絞
りカップを得た。次いでこの浅絞りカップを再絞り・し
ごき加工を行い、深絞り−しごきカップを得た。この深
絞りカップの諸特性は以下の通りであった。 カップ径: 66mm カップ高さ:128mm 素板厚に対する缶壁部の厚み65% 素板厚に対するフランジ部の厚み77% この深絞りしごきカップを、常法に従いドーミング成形
を行い、220℃にて熱処理を行った後、カップを放冷
後、開口端縁部のトリミング加工、曲面印刷および焼き
付け乾燥、ネック加工、フランジ加工を行って350g
用のシームレス缶を得た。成形上、問題はなかった。次
いで、コーラ充填によるデント試験及び蒸留水充填によ
るレトルト処理試験に供した。この缶に用いたフィルム
の分析値、評価結果は表1にまとめたが、デント試験に
おけるデント部腐食、レトルト試験による腐食の発生は
認められず、良好であった。また、レトルト後の濁度も
低い値であり、良好であった。これらの結果より、ここ
で得られたシームレス缶は、飲料保存用に優れたもので
あると評価された。
【0080】実施例2 表にまとめたように、樹脂組成が異なる他は、実施例1
と同様に成形を行った。成形上、問題はなかった。ま
た、実施例1と同様に評価及びフィルムの分析を行っ
た。どの評価においても、良好な結果を得ており、ここ
で得られたシームレス缶は、飲料保存用に優れたもので
あると評価された。
【0081】実施例3 表にまとめたように、樹脂組成が異なる他は、実施例1
と同様に成形を行った。成形上、問題はなかった。ま
た、実施例1と同様に評価及びフィルムの分析を行っ
た。どの評価においても、良好な結果を得ており、ここ
で得られたシームレス缶は、飲料保存用に優れたもので
あると評価された。
【0082】実施例4 表にまとめたように、樹脂組成が異なる他は、実施例1
と同様に成形を行った。成形上、問題はなかった。ま
た、実施例1と同様に評価及びフィルムの分析を行っ
た。どの評価においても、良好な結果を得ており、ここ
で得られたシームレス缶は、飲料保存用に優れたもので
あると評価された。
【0083】実施例5 表にまとめたように、樹脂組成が異なる他は、実施例1
と同様に成形を行った。成形上、問題はなかった。ま
た、実施例1と同様に評価及びフィルムの分析を行っ
た。どの評価においても、良好な結果を得ており、ここ
で得られたシームレス缶は、飲料保存用に優れたもので
あると評価された。
【0084】比較例1 表に示した樹脂組成の積層体を作成し、実施例1と同様
に成形を行ったところ、缶上部において、白化が認めら
れた。この缶を実施例1と同様にデント試験に供したと
ころデント部において、フィルム下腐食が認められた。
さらに、レトルト試験に供したところ、ネック部、巻き
締め部において、腐食の発生が激しかった。この腐食に
よる内容物の茶色い濁りが認められたため、濁度の測定
は行わなかった。これらは、フィルムの溶解エンタルピ
ーから示唆されるフィルムの過度の結晶化のためである
と考えられた。これらの結果より、ここで得られた缶
は、飲料保存用には、不適なものであると評価された。
【0085】比較例2 表にまとめたように、樹脂組成が異なる他は、実施例1
と同様に成形を行った。成形上、問題はなかった。ま
た、実施例1と同様に評価及びフィルムの分析を行った
ところ、腐食は認められなかったが、濁度の測定値が、
実施例1〜5に比較し大きなものとなった。これは、実
施例1〜5に比較しTgが低いためと考えられた。これ
らの結果より、ここで得られた缶は、飲料保存上、大き
な問題のあるものではなかったが、実施例1〜5に比較
し、濁度の点で劣るものであった。
【0086】比較例3 表にまとめたように、樹脂組成が異なる他は、実施例1
と同様に成形を行った。成形上、問題はなかった。ま
た、実施例1と同様に評価及びフィルムの分析を行った
ところ、腐食は認められなかったが、濁度の測定値が、
実施例1〜5に比較し大きなものとなった。これは、実
施例1〜5に比較しTgが低いためと考えられた。これ
らの結果より、ここで得られた缶は、飲料保存上、大き
な問題のあるものではなかったが、実施例1〜5に比較
し、濁度の点で劣るものであった。
【0087】比較例4 表に示した樹脂組成の積層体を作成し、実施例1と同様
に成形を行ったところ、缶上部において、白化が認めら
れた。この缶を実施例1と同様にデント試験に供したと
ころデント部において、フィルム下腐食が認められた。
さらに、レトルト試験に供したところ、ネック部、巻き
締め部において、腐食の発生が激しかった。この腐食に
よる内容物の茶色い濁りが認められたため、濁度の測定
は行わなかった。これらは、フィルムの溶解エンタルピ
ーから示唆されるフィルムの過度の結晶化のためである
と考えられた。これらの結果より、ここで得られた缶
は、飲料保存用には、不適なものであると評価された。
【0088】比較例5 表に示した樹脂組成の積層体を作成し、実施例1と同様
に成形を行ったところ、缶上部において、フィルムの亀
裂が認められ、後の評価に供するだけ缶が得られなかっ
た。
【0089】
【表1】
【0090】
【発明の効果】本発明の製缶用積層体は、金属基体と該
基体表面に設けられた熟可塑性ポリエステル層とからな
るが、本発明においては、この熱可塑性ポリエステル層
として、エチレンテレフタレート単位を、全塩基性カル
ボン酸成分当たりのテレフタル酸成分の量が5乃至99
モル%となり、且つエチレンナフタレート単位を、全塩
基性カルボン酸成分当たりのナフタレンジカルボン酸成
分の量が1乃至95モル%となるように含有する共重合
ポリエステル乃至ブレンドポリエステルを用いること、
このポリエステル層を押出コートで形成したことが特徴
であり、これにより、シームレス缶への優れた成形性を
確保し、且つ優れた耐デント性を維持しながら、高温湿
熱条件下での樹脂層の経時劣化を防止し且つ内容物の保
存性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるシームレス缶を示す側面断面図で
ある。
【図2】本発明に用いる積層体の断面構造の一例を示す
拡大断面図である。
【図3】本発明に用いる積層体の断面構造の他の例を示
す拡大断面図である。
【図4】積層工程を示す説明図である。
【図5】曲げ伸ばし・しごき工程を示す説明図である。
【図6】実施例1におけるポリエステルブレンド物の示
差走査熱量計(示差熱計)によるチャートである。
【符号の説明】
1 深絞り缶 2 底部 3 側壁部 4 ネック部 5 フランジ部 6 金属基体 7 ブレンドポリエステル層 8 外面被膜 9 接着用プライマーの層 10 ニップ位置 11 金属基材 12 通路 13 金属基材の加熱域 14a、14b ポリエステル 15a、15b ダイ 16a、16b 温間ラミネートロール 17 ラミネート材 18 急冷手段 21 前絞りカップ 22 保持部材 23 再絞り−しごきダイス 24 再絞り−しごきポンチ 25 平面部 26 作用コーナー部 27 アプローチ部 28 小曲率部 29 しごき用のランド部(しごき部) 30 逆テーパ状の逃げ 31 外周面 32 曲率コーナ部 33 環状底面
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成9年12月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正内容】
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正内容】
【0005】特開平5−255492号公報には、ジカ
ルポン酸成分としてテレフタル酸、ジオール成分として
エチレングリコールを主成分とし、また、少量のナフタ
レンジカルボン酸単位(0.2〜6モル%)、ジエチレ
ングリコール単位を合み、環状三量体含有量が0.40
重量%以下、更に、極限粘度、密度が特定範囲にある共
重合ポリエチレン及ぴその成形体が記載されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正内容】
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、金属基
体と該基体表面に設けられた可塑性ポリエステル層と
からなる製缶用積層体において、前記熱可塑性ポリエス
テル層が、チレンテレフタレート単位を、全塩基性カ
ルボン酸成分当たりのテレフタル酸成分の量が5乃至9
9モル%となるように含有し且つエチレンナフタレート
単位を、全塩基性カルボン酸成分当たりのナフタレンジ
カルボン酸成分の量が1乃至95モル%となるように含
有する共重合ポリエステル乃至ブレンドポリエステルの
押出コートで形成されていることを特徴とする製缶用積
層体が提供される。本発明においては、 1.前記共重合ポリエステル乃至ブレンドポリエステル
のガラス転移点(Tg)が80℃以上であること、 2.前記共重合ポリエステル乃至ブレンドポリエステル
が0.5以上の固有粘度分子量を有すること、 3.前記共重合ポリエステルが30J/g以下の融解エ
ンタルピーを有するものであること、が好ましい。本発
明によればまた、前記積層体を絞り成形或いは絞り・し
ごき成形で形成され、熱処理を施したたシームレス缶に
おいて、缶上部の共重合体ポリエステル或いはブレンド
ポリエステルが50J/g以下の融解エンタルピーを有
するものであることを特徴とするシームレス缶が提供さ
れる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正内容】
【0011】
【発明の実施形態】 [作用] 1.本発明の製缶用積層体は、金属基体と該基体表面に
設けられた可塑性ポリエステル層とからなるが、本発
明においては、この熱可塑性ポリエステル層として、エ
チレンテレフタレート単位を、全塩基性カルボン酸成分
当たりのテレフタル酸成分の量が5乃至99モル%とな
り、且つエチレンナフタレート単位を、全塩基性カルボ
ン酸成分当たりのナフタレンジカルボン酸成分の量が1
乃至95モル%となるように含有する共重合ポリエステ
ル乃至ブレンドポリエステルを用いること、このポリエ
ステル層を押出コートで形成したことが特徴であり、こ
れにより、シームレス缶への優れた成形性を確保し、且
つ優れた耐デント性を維持しながら、高温湿熱条件下で
の樹脂層の経時劣化を防止し且つ内容物の保存性を向上
させることができる。 2.ポリエチレンテレフタレートは、結晶性であると共
に高い融点を有し、引っ張り強さ、耐衝撃性、耐屈曲疲
労をはじめとして優れた諸性能を有するが、高温湿熱条
件下では、物性が急激に低下するという欠点を有してい
る。例えば、130℃のオートクレーブ処理における経
時時間と伸びの保持率との関係を調べると、ポリエチレ
ンテレフタレートでは、伸びの保持率が、20時間で約
85%、40時間で約70数%、60時間で50%以下
と、経時により伸びの保持率が大きく低下することが認
められる。この理由は、ポリエチレンテレフタレート
が、高温湿熱条件下で加水分解を受けるためと考えられ
る。 3.これに対して、ポリエチレンナフタレート(PE
N)は、上述したオートクレーブ処理に際しても、20
時間で90%以上、40時間で80%以上、60時間で
60%以上と、経時による伸びの保持率が高く、エチレ
ンナフタレート系ポリエステルをエチレンテレフタレー
ト系ポリエステルにブレンドするか或いはこれらを共重
合させることにより、高温湿熱条件下での経時劣化を有
効に防止することが可能となるが理解されよう。 4.本発明においては、エチレンテレフタレート系ポリ
エステル(A)と、エチレンナフタレート系ポリエステ
ル(B)とを、前述した量比となるようにブレンドする
か、或いは共重合させると、驚くべきことに、高温湿熱
条件下での内容物の保存性が顕著に改善されることが分
かった。エチレンナフタレート単位の含有量が上記範囲
よりも少ない共重合ポリエステル層を備えたシームレス
缶におけるレトルト殺菌時における濁りの発生は、濁度
で4.0のオーダーである(後述する比較例3参照)の
に対して、エチレンナフタレート単位を上記の割合で含
有する共重合ポリエステル或いはブレンドポリエステル
層を備えたシームレス缶では、濁りの発生を、濁度で1
桁低いオーダーに抑制することができる。 5.ポリエステル層を備えたシームレス缶において、濁
りの発生は、既に指摘したとおり、ポリエステル中のオ
リゴマーの溶出によるものであるが、本発明における特
定の共重合ポリエステル或いはブレンドポリエステルで
は、このオリゴマーの溶出が著しく抑制されているので
ある。この事実は、本発明者らの多数の実験により、現
象として見いだされたものであり、本発明は以下の理由
により何らかの拘束を受けるものではないが、その理由
は次のようなものと考えられる。 6.一般に、自由体積とは、物質により占められている
体積の内、構成粒子(この場合重合体鎖)によって占め
られていない体積をいう。文献によると、ポリエチレン
テレフタレートの自由体積率は、300゜Kで0.3
9、400゜Kで0.41、500゜Kで0.44であ
るのに対して、ポリエチレンナフタレートでは、300
゜Kで0.32、400゜Kで 0.33、500゜K
で0.34であって、ポリエチレンテレフタレートに比
して小さな自由体積率を示す。即ち、本発明に用いるブ
レンドポリエステルでは、エチレンナフタレート系ポリ
エステルとの共重合或いはブレンドによりポリエチレン
テレフタレートに比して自由体積が減少しており、この
自由体積の減少が、濁り発生の原因となるオリゴマーの
混入を抑制していると考えられる。 7.本発明において、高温湿熱条件下での経時劣化が有
効に防止されるのは、エチレンナフタレート単位の導入
により、ポリエステル層のガラス転移点が向上している
ためと思われる。ポリエチレンテレフタレートのガラス
転移点は78℃であるが、本発明の積層体におけるガラ
ス転移点は80℃以上であり、ガラス転移点が向上して
いる。ガラス転移点が80℃を下回るポリエステル層
は、濁り発生傾向が大きい(比較例2及び3)。 8.本発明では、エチレンテレフタレート系ポリエステ
ル(A)とエチレンナフタレート系ポリエステル(B)
とを特定の量比で共重合させ或いはブレンドしたものを
使用することにより、シームレス缶への成形性を向上さ
せ、また缶の耐デント性を向上させることができる。エ
チレンナフタレート系ポリエステル(B)の共重合比或
いはブレンド量比が少ない場合、缶の上部の加工度が大
きい部分が白化する等加工性が悪く、耐デント性も劣る
(比較例1及び4)。一方エチレンナフタレート系ポリ
エステル(B)の共重合比或いはブレンド量比が多い場
合、缶の上部の加工度が大きい部分では亀裂を発生し、
成形が困難となる(比較例4)。これに対して、エチレ
ンナフタレート系ポリエステル(B)の配合量が20モ
ル%のような少量の配合でも加工性及び耐デント性が向
上している事実(実施例4)は、驚くべきことである。 9.本発明では、上記共重合ポリエステル或いはブレン
ドポリエステルを、押出コートにより、金属基体に設け
る。金属基体にポリエステルフィルムを熱接着により張
り合わせる場合、熱結晶化によるラメラの生成(白化)
を防止するためには、フィルムに分子配向を付与してお
くことが一般に必要であり、このために別工程での製
膜、延伸操作が必要となり、被覆のコストが高くなるの
を避け得ない。これに対して、金属基体にポリエステル
を直接押出コートすると、上記工程が不要となり、被覆
コストを低減することができる。加えて、押出コートに
よる製缶用積層体では、共重合ポリエステル或いはブレ
ンドポリエステル層を過冷却された非晶質状態に保持で
きるので、絞り或いは更にしごき工程での成形性に優れ
ており、また、この工程で缶側壁部に一次配向を付与す
ることができる。 10.また、本発明に用いる共重合ポリエステル或いは
ブレンドポリエステルは、30J/g以下の融解エンタ
ルピー(示差走査熱量計による)を有することが、シー
ムレス缶への成形性や耐腐食性の点で重要であり、30
J/gを越える融解エンタルピーを有するものでは、加
工性も耐腐食性も劣る(比較例4参照)。更に、シーム
レス缶において、加工の程度が高くなり、また耐腐食性
が問題となるのは、缶の上部の部分であるが、缶上部の
共重合ポリエステル或いはブレンドポリエステルは50
J/g以下の融解エンタルピー(示差走査熱量計によ
る)を有することが、巻き締め成形による密封性確保の
点で重要である。 11.本発明に用いる共重合ポリエステルは、固有粘度
0.5以上の分子量を有するのがよく、これにより、腐
食成分に対する優れたバリアー性と優れた機械的性質と
が得られる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正内容】
【0020】[共重合乃至ブレンドポリエステル]本発
明に用いるポリエステルは、チレンテレフタレート単
位を、全塩基性カルボン酸成分当たりのテレフタル酸成
分の量が5乃至99モル%となるように含有し且つエチ
レンナフタレート単位を、全塩基性カルボン酸成分当た
りのナフタレンジカルボン酸成分の量が1乃至95モル
%となるように含有する共重合ポリエステル乃至ブレン
ドポリエステルである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0033
【補正方法】変更
【補正内容】
【0033】ナフタレンジカルボン酸以外の酸成分とし
ては、テレフタル酸、イソフタール酸、P−β−オキシ
エトキシ安息香酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジ
カルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキ
サヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイ
マー酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等を挙げるこ
とができ
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正内容】
【0075】積層体の作成 図4に示した構成の装置を用い、表1に示した樹脂を、
ブレンドするものについてはドライブレンドし、65m
mφの押し出し機に供給し、樹脂膜の厚みが、表1のよ
うになるよう各樹脂の溶融流動開始温度+20℃に加熱
したTFS鋼板(板厚0.195mm、調質度T−4、
金属クロム量110mg/m2 、クロム水和酸化物量1
5mg/m2 )の両面に押し出し、樹脂の溶融流動開始
温度−100℃になるように温調している一対の温間ラ
ミネートロールを用いて20m/minの速度でラミネ
ートした。その後、水シャワーによる急冷工程とコイル
両サイドの僅かなトリム工程を経て積層体を得た。 IV(固有粘度)測定 缶胴部を切り出し、6N塩酸にて金属板を溶解して、フ
ィルムを単離した。その後、少なくとも24時間の真空
乾燥に供して、IV測定用サンプルとした。このサンプ
ル200mg分をフェノール/1,1,2,2−テトラ
クロロエタン混合溶液(重量比1:1)に110℃で溶
解し、ウベローデ型粘度計を用いて30℃で比粘度を測
定した。固有粘度は下記式により求めた。 [η]=[(−1+(1+4K’ηso1/2 )/2K’
C](dl/g) K’:ハギンスの恒数(=0.33) C :濃度(g/100ml) ηso:比粘度[=溶液の落下時間−溶媒の落下時間]/
溶媒の落下時間]
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 町井 幸子 神奈川県横浜市泉区緑園4−3−1 サン ステージ緑園都市東の街7−707 (72)発明者 今津 勝宏 神奈川県横浜市泉区和泉町6205−1 グリ ーンハイムいずみ野27−101

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属基体と該基体表面に設けられた熟可
    塑性ポリエステル層とからなる製缶用積層体において、
    前記熱可塑性ポリエステル層が、工チレンテレフタレー
    ト単位を、全塩基性カルボン酸成分当たりのテレフタル
    酸成分の量が5乃至99モル%となるように含有し且つ
    エチレンナフタレート単位を、全塩基性カルボン酸成分
    当たりのナフタレンジカルボン酸成分の量が1乃至95
    モル%となるように含有する共重合ポリエステル乃至ブ
    レンドポリエステルの押出コートで形成されていること
    を特徴とする製缶用積層体。
  2. 【請求項2】 前記共重合ポリエステル乃至ブレンドポ
    リエステルのガラス転移点(Tg)が80℃以上である
    請求項l記載の積層体。
  3. 【請求項3】 前記共重合ポリエステル乃至ブレンドポ
    リエステルが0.5以上の固有粘度分子量を有する請求
    項1または2に記載の積層体。
  4. 【請求項4】 前記共重合ポリエステルが30J/g以
    下の融解エンタルピーを有するものである請求項1乃至
    3の何れかに記載の積層体。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至4の何れかに記載の積層体
    を絞り成形或いは絞り・しごき成形で形成され、熱処理
    を施したたシームレス缶において、缶上部の共重合体ポ
    リエステル或いはブレンドポリエステルが50J/g以
    下の融解エンタルピーを有するものであることを特徴と
    するシームレス缶。
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