JP5089440B2 - 樹脂被覆金属基材の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は樹脂被覆金属基材の製造方法に関するものであり、より詳細には、少なくとも2層ポリエステル樹脂フィルムが被覆された樹脂被覆金属基材を、押出ラミネート法及びフィルムラミネート法を組み合わせて、生産性よく製造可能な樹脂被覆金属基材の製造方法に関する。
従来より、金属材料に耐腐食性を付与する手段として、金属基材表面をポリエステル樹脂で被覆することが広く行われており、かかるポリエステル樹脂の金属板への被覆方法としては、熱可塑性ポリエステル等の予め形成されたフィルムを金属基材に熱接着或いは接着剤等により貼り合わせるフィルムラミネート法や、Tダイから押し出された熱可塑性ポリエステル樹脂等の溶融薄膜を金属板等の基材に貼り合わせる押出ラミネート法が知られている(特許文献1)。
フィルムラミネート法では、予め形成されたフィルムを金属基材に張り合わせるものであるため、被覆樹脂や金属基材を種々変更することが比較的容易であり、多種多様な樹脂被覆金属基材を製造することができる一方、予め別工程でフィルムを形成する必要があり、大量生産を目的とする場合には、経済性、生産性の点で満足するものではない。
一方、押出ラミネート法では、金属板等の基材に樹脂の薄膜を高速で被覆することができるため、大量の樹脂被覆金属基材を経済性よく生産することができるが、押出しコート性の点から使用し得る樹脂に制約があると共に、被覆樹脂や金属板の交換時に多量のロスが発生するため、多種多様な樹脂被覆金属基材を少量製造する場合には、効率的でない。
特許第3470526号
一般に製缶用途に用いられる樹脂被覆金属基材においては、内容物の種類によって用いる被覆樹脂や金属板の種類が異なり、種々の樹脂被覆金属基材が製造されている。またそれぞれの樹脂被覆金属基材によって、生産量も大きく異なっていることから、上述したフィルムラミネート法と押出ラミネート法による製造をそれぞれ用途に合わせて別途に行っているのが現状である。
しかしながら、これらの製造方法を並立して行う場合には、それぞれの製造設備が必要であると共に、設備の維持等の点でコストがかかるため、フィルムラミネート法及び押出ラミネート法の両方の製造設備を統合できれば、経済的であると共に効率的であり、また両方のシステムを利用した樹脂被覆金属基板を製造することも可能となる。
従って本発明の目的は、フィルムラミネート法及び押出ラミネート法を組み合わせて、効率よく樹脂被覆金属基板の製造方法を提供することである。
本発明の他の目的は、押出ラミネート法或いはフィルムラミネートに換わるものとして、フィルムと押出し樹脂からなるサンドイッチラミネートを選択使用可能な製造設備を用いた樹脂被覆金属基材の製造方法を提供することである。
本発明によれば、金属基材の少なくとも一方の面に、少なくとも2層の樹脂被覆を形成させる樹脂被覆金属基材の製法であって、融点が220℃未満のポリエステル樹脂をTダイから膜状に押出し、融点が220℃以上のポリエステル樹脂フィルムによって、押出した溶融樹脂を加熱された金属基材と挟み込み、ラミネートロールにて金属基材と溶融樹脂と樹脂フィルムとを圧着することにより金属基材上に樹脂被覆を形成することを特徴とする樹脂被覆金属基材の製造方法が提供される。
本発明の樹脂被覆金属基体の製造方法によれば、
1.融点が220℃未満のポリエステル樹脂が、イソフタル酸を15乃至20モル%含有するエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂であること、
2.融点が220℃未満のポリエステル樹脂が、イソフタル酸を8乃至20モル%及びダイマー酸を1乃至10モル%含有するエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂であること、
3.前記融点が220℃以上のポリエステル樹脂フィルムが、イソフタル酸を2乃至12モル%含有するエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂フィルムであること、
4.前記融点が220℃以上のポリエステル樹脂フィルムが、ナフタレンジカルボン酸を5乃至20モル%含有するエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂フィルムであること、
が好適である。
本発明の樹脂被覆金属基材の製造方法によれば、フィルムラミネート法及び押出ラミネート法を組み合わせて、効率よく樹脂被覆金属基材を製造することが可能となる。
また本発明の樹脂被覆金属基材の製造方法によれば、表面層のみを内容物の性質に合わせたフィルムに適宜変えることが可能となり、多種多様な内容物に対応した樹脂被覆金属基材を製造することが可能となる。
更に本発明の製造方法に使用される製造設備は、押出ラミネート法或いはフィルムラミネートに換わるものとして、フィルムと押出し樹脂からなるサンドイッチラミネートを選択使用することが可能であり、一つの製造設備で多種多様な樹脂被覆金属基材を、生産量を調整しながら製造することが可能となる。
本発明の樹脂被覆金属基材の製造方法は、金属基材の少なくとも一方の面に、少なくとも2層の樹脂被覆を形成させる樹脂被覆金属基材の製法であって、融点が220℃未満のポリエステル樹脂をTダイから膜状に押出し、融点が220℃以上のポリエステル樹脂フィルムによって、押出した溶融樹脂を加熱された金属基材と挟み込み、ラミネートロールにて金属基材と溶融樹脂と樹脂フィルムとを圧着することにより金属基材上に樹脂被覆を形成することが重要な特徴である。
図1は、本発明の樹脂被覆金属素材の製造方法に用いる装置の配置を概略的に説明するための図であり、この装置においては、金属素材1の通路に沿って、図示していないが金属素材1の加熱域が形成され、また金属素材1の通路に対してポリエステル樹脂を溶融膜状に供給するTダイ2が位置し、金属素材1に樹脂被覆を圧着するラミネートロール3が配置されている。更にラミネートロール3にポリエステルフィルム4を供給するポリエステルフィルム供給装置(図示せず)が配置されており、ラミネートロール3により、金属素材1とポリエステルフィルム4でTダイから押出された溶融膜5を挟み込んで圧着する。ラミネートロール3から排出された、溶融膜5から成る下層及びポリエステルフィルム4から成る上層の2層被覆が金属素材1の表面に形成された樹脂被覆金属素材6は、急冷手段(図示せず)に導かれて急冷されることにより、加工密着性、耐腐食性、バリアー性等に優れた樹脂被覆金属素材を提供することが可能となる。
本発明においては、Tダイから押出されるポリエステル樹脂として融点が220℃未満のポリエステル樹脂を用いること、及び予め形成されたポリエステルフィルムが融点220℃以上のポリエステル樹脂を用いることが重要であり、これにより、押出ラミネート法及びフィルムラミネート法を組み合わせてなる本願発明の方法を好適に行うことが可能となる。
すなわち、融点が220℃未満のポリエステル樹脂は、金属基材への接着性に優れていることから、予め形成された融点が220℃以上のポリエステル樹脂から成るフィルムを好適にラミネートすることが可能となる。しかも、融点が220℃未満のポリエステル樹脂は樹脂複金属素材の下層として絞り加工のような厳しい加工に対しても、充分な密着性を保持することができると共に、溶融や熱処理における結晶化が防止され、耐デント性を顕著に向上させることが可能となる。
一方、融点が220℃以上のポリエステル樹脂フィルムは、内容物中の香味成分の吸着に対して充分なバリアー効果を付与することができると共に、耐腐食性にも優れていることから、樹脂被覆金属素材に耐内容物性及耐腐食性を付与することが可能となる。
また本発明の製造方法においては、下層として用いる融点220℃未満のポリエステル樹脂を変更することなく、上層として用いる融点220℃以上のポリエステル樹脂から成るフィルムのみを容易に変更することが可能であり、内容物の特性に合わせて種々の樹脂被覆金属素材を容易に形成することが可能となる。
(融点220℃未満のポリエステル樹脂)
本発明に用いる融点220℃未満のポリエステル樹脂としては、従来より樹脂被覆金属素材の下層或いは接着層として用いられていたポリエステル樹脂を好適に用いることができる。
最も好適には、イソフタル酸を8乃至20モル%含有および/又はダイマー酸を1乃至10モル%含有するエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂を用いることができる。イソフタル酸および/又はダイマー酸の含有量が上記範囲よりも少ない場合には、金属素材との接着性に劣るようになると共に、加工性も低下し、更に溶融後の熱結晶化傾向が大きくなって、機械的強度や耐衝撃性が低下することになる。一方上記範囲内にあることにより、耐内容物性を優れたレベルに維持しながら、金属素材への密着性や加工性を高め、到達最高結晶化度を低めて樹脂被覆の強靭性を高めることが可能となる。
尚、テレフタル酸は、樹脂被覆の機械的性質や熱的性質から、ジカルボン酸成分の50%以上、特に70%以上含有していることが好ましい。
イソフタル酸、ダイマー酸、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分としては、ポリエステル樹脂の調製に用いられる従来公知のジカルボン酸、例えばナフタレンジカルボン酸、p−β−オキシエトキシ安息香酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ヘミメリット酸、1,1,2,2−エタンテトラカルボン酸、1,1,2−エタントリカルボン酸、1,3,5−ペンタントリカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸、ビフェニル−3,4,3’,4’−テトラカルボン酸等を挙げることができる。
またジオール成分としては、ジオール成分の95モル%以上、特に98モル%以上がエチレングリコールからなることが、分子配向性、腐食成分や香気成分に対するバリアー性等から好ましい。またエチレングリコール以外のジオール成分としては、ポリエステル樹脂の調製に用いられる従来公知のジオール、例えばプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘンタエリスリトール、ソルビロール、1,1,4,4−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノン等を挙げることができる。
また下層となる融点220℃未満のポリエステル樹脂には、耐衝撃性を向上させるべくゴム状弾性を有するオレフィン系重合体をブレンドしたものを使用することができる。本発明に用いるオレフィン系重合体としては、低−、中−、高−密度のポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン−ブテン−1共重合体、エチレン−1−オクテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、アイソタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体、などのオレフィンのホモポリマー又はコポリマーの他に、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、イオン架橋オレフィン共重合体(アイオノマー)或いはこれらのブレンド物などのオレフィン系重合体を挙げることができる。
押出ラミネートにより溶融膜として押出されるポリエステル樹脂は、フィルム形成可能な範囲の分子量を有するべきであり、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度が0.6乃至1.0の範囲にあることが望ましい。
またそれ自体公知の樹脂用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアンチブロッキング剤、二酸化チタン(チタン白)等の顔料、ビタミンE等の抗酸化剤、安定剤、各種帯電防止剤、滑剤等を公知の処方に従って配合することができる。
(融点220℃以上のポリエステル樹脂フィルム)
本発明に用いる融点220℃以上のポリエステル樹脂フィルムとしては、従来より樹脂被覆金属素材の表層或いは中間層として用いられていたポリエステル樹脂を好適に用いることができる。
最も好適には、イソフタル酸を2乃至12モル%含有するエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂フィルムや、ナフタレンジカルボン酸を5乃至20モル%含有するエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂フィルムを用いることができる。
イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸以外のジカルボン酸成分及びジオール成分としては、融点220℃未満のポリエステル樹脂で上掲したジカルボン酸及びジオール成分を使用することができる。尚、テレフタル酸及びエチレングリコールは、樹脂被覆の機械的性質や熱的性質から、ジカルボン酸成分の50%以上、特に70%以上、ジオール成分の50%以上、特に90%以上含有していることが好ましい。
上記融点220℃以上のポリエステル樹脂から成るフィルムは、T−ダイ法や、インフレーション製膜法等の押出し成形により成形することができる。またフィルムは、無延伸のキャストフィルムのまま用いることもできるし、一軸或いは二軸方向に延伸させたものであっても勿論よい。
フィルムは、単層のみならず、2層以上の複層であってもよく、別個に形成されたフィルムを接着させたものであってもよいし、押出成形により直接2層フィルムとしたものであってもよい。
フィルムの厚みはこれに限定されるものではないが、5乃至30μmの範囲にあるのが好ましく、フィルムを二層以上の複層フィルムとする場合には、全体の厚みが10乃至30μmの範囲にあるのが好ましい。
フィルム形成されるポリエステル樹脂は、フィルム形成可能な範囲の分子量を有するべきであり、フェノール/テトラクロロエタン混合溶媒を用いて測定した固有粘度が0.6乃至1.0の範囲にあることが望ましい。
また押出ラミネートによる下層と同様に、それ自体公知の樹脂用配合剤、例えば非晶質シリカ等のアンチブロッキング剤、二酸化チタン(チタン白)等の顔料、ビタミンE等の抗酸化剤、安定剤、各種帯電防止剤、滑剤等を公知の処方に従って配合することができる。
(金属素材)
金属素材としては、各種表面処理鋼板やアルミニウム等の軽金属板を使用することができる。表面処理鋼板としては、冷圧延鋼板を焼鈍後二次冷間圧延し、亜鉛メッキ、錫メッキ、ニッケルメッキ、ニッケル錫メッキ、電解クロム酸処理、クロム酸処理等の表面処理の一種または二種以上行ったものを用いることができる。
軽金属板としては、アルミニウム板やアルミニウム合金板を使用することができる。耐食性と加工性との点で優れるアルミニウム合金板は、Mn:0.2乃至1.5重量%、Mg:0.8乃至5重量%、Zn:0.25乃至0.3重量%、及びCu:0.15乃至0.25重量%、残部がAlの組成を有するものが好ましい。これらの軽金属板の上層にも、金属クロム換算でクロム量が20乃至300mg/mとなるようなクロム酸処理或いはクロム酸/リン酸処理が施されていることが望ましい。軽金属板に対する表面処理は、水溶性フェノール樹脂を併用して行うこともできる。
金属基材の素板厚みは、金属の種類、樹脂被覆金属素材の用途或いは缶成形する場合には成形法或いは缶のサイズ等によっても相違するが、一般に0.10乃至0.50mmの厚みであることが好ましく、表面処理鋼板の場合は、0.10乃至0.30mmの厚みのものが好ましく、軽金属板の場合は、0.15乃至0.40mmの厚みを有するものが好ましい。
金属素材には、所望により接着プライマーを設けておくこともでき、このようなプライマーは、金属素材とポリエステル樹脂との両方に優れた接着性を示すものである。
(製造方法)
本発明の樹脂被覆金属基材の製造方法において、その概略を図1に沿って前述したが、本発明においては、この基本構成に種々の変更を加えることができる。
例えば、図1に示した装置では、金属素材の一方の面に樹脂被覆を形成させるものであったが、図1において金属素材の通路に対して右側に配置されていた、Tダイ及びフィルム供給装置を金属素材の通路に対して左側にも同様に形成することにより、金属素材の両面に樹脂被覆を形成することができる。
またラミネートロールとして温間ラミネートロールを用いることにより、金属基材及び溶融膜の余分な加熱による性能の低下を防止することができる。尚、温間とは、一般に使用される冷間と熱間との中間に属する概念であり、室温より高く、熱可塑性樹脂の融点よりも低い温度での処理を意味する。本発明では、温間ラミネートを行うことにより、ロールに接触する樹脂への急速な熱の移動が抑制され、加熱された金属基材が有する熱及び溶融押出された樹脂が有する熱を有効に熱接着に利用することができる。
また本発明の製造方法においては、Tダイとラミネートロールとの間に溶融膜を金属基材との接着面との反対側から且つ溶融膜の全幅に亘って受けるプレロールを配置することもでき、これにより、エアギャップを短縮することが可能になると共に、プレロールと接触した溶融膜が冷却により安定し、ラミネートの際の膜揺れや過大なネックインを防止させることが可能となる。その一方溶融膜の金属基材との接触面はプレロールと接触していないので、溶融膜の温度低下が防止され、金属素材との接着性を確保することが可能となる。
本発明においては、金属基材を融点220℃未満のポリエステル樹脂の融点(Tm)−80℃乃至Tm+50℃、特にTm−50℃乃至Tm+30℃の温度(ラミネートロールに入る直前の温度)に加熱するのがよく、金属基材の加熱には、通電発熱、高周波誘導加熱、赤外線加熱、熱風炉加熱、ローラ加熱等のそれ自体公知の加熱手段を用いることができる。
この加熱温度が、上記範囲よりも低い場合には、密着力が十分でなく、一方上記範囲よりも高い場合には、金属の熱軟化を生じやすい。
融点220℃未満のポリエステル樹脂を押出すためのダイとしては、樹脂の押出コートに一般に使用されているダイ、例えばコートハンガー型ダイ、フィッシュテール型ダイ、ストレートマニホ−ルド型ダイ等が使用される。融点220℃未満のポリエステル樹脂を押出機中で、溶融温度以上の温度で加熱混練し、前記ダイを通して押し出す。
融点220℃未満のポリエステル樹脂を多層として押出すことも可能であり、この場合には、多層を構成する樹脂の数に対応する数の押出機を使用し、多重多層ダイを通して樹脂の押出を行うのがよい。押出に際して、ダイリップの幅は0.3乃至2mmの範囲にあるのが適当である。
本発明においては、ラミネートロールの周速をダイからの融点220℃未満のポリエステル樹脂の押出速度の10乃至150倍、特に20乃至130倍に維持して、ポリエステル樹脂の溶融薄膜を薄肉化することが好ましい。この範囲にあることでダイリップ幅等の機械的な調整ムラが強制されてより均一な薄膜となり、金属基材及び融点200℃以上のフィルムとの安定したラミネートが可能となる。この比が上記範囲を越えると、樹脂の破断を生じやすくなるので好ましくない。また、上記範囲を下回ると、安定したラミネートが行われないだけでなく、十分に薄肉化された被覆を形成できないという不利益がある。
プレロールを用いる場合、その周速は、ラミネートロールの周速に対して、前述した周速比に維持される。製缶用途の樹脂被覆金属素材においては、金属基材の厚み(tM)と片面当たりの被覆樹脂膜厚み(tR)との比(tM/tR)が2乃至150であることが、缶への加工性や、缶の特性の点で好ましい。
ラミネートロールのニップ位置における接触幅(ニップ幅)が1乃至50mmの範囲にあることが、金属基材と融点220℃未満のポリエステル樹脂の溶融膜及び融点220℃以上のポリエステルフィルムとの密着を強固に行う上で好ましい。この幅が上記範囲よりも少ないと、十分な接触時間が得られず被覆の表面状態の不良や接着不良を生じ、また上記範囲よりも広いと、ニップ圧力を高くすることが困難となったり、ニップの間にラミネート材が冷却されすぎて密着力が低下する傾向にある。ニップの圧力は1乃至100kgf/cmの範囲にあることが好ましい。
上記のニップ幅を確保するために、ラミネートロールの少なくとも一方が弾性体ロールであることが好ましい。
ラミネートロールの温度は130℃以下の表面温度を有するものであることが好ましく、この調温は、温度が一定の液体媒体をロール内に通すことや、温調されたバックアップロールをラミネートロールに接触させる等のそれ自体公知の方法により行いうる。
熱接着終了後の樹脂被覆金属基材は、熱結晶化や熱劣化を防止するために、ラミネート後直ちに急冷するか、或いはある程度温度保持後、熱結晶化を防止するため、結晶化温度域に到達する前に、その時点で急冷するのがよい。つまり、可及的速やかに冷却するのがよく、この冷却は、冷風吹き付け、冷却水噴霧、冷却水浸漬、冷却ローラとの接触等により行われる。
本発明は、金属基材の少なくとも一方の表面への樹脂被覆層の形成に適用できるが、勿論、金属基材の両面に対して樹脂被覆を形成することもできる。
また本発明の製造方法に用いられる製造装置においては、フィルムラミネート法及び押出ラミネート法の何れか一方、或いは両方を選択使用することが可能であり、一つの製造設備で多種多様な樹脂被覆金属基材を、生産量を調整しながら製造することが可能となる。
本発明を次の例で説明する。
各実施例、比較例の樹脂特性および缶評価結果を表1にまとめて示した。
[樹脂フィルムおよび樹脂の融点測定]
樹脂フィルムの場合は、樹脂フィルム5mgを示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて窒素雰囲気下で0℃から300℃まで10℃/分で昇温し、最も高温側にある融解ピークを融点とした。
また、樹脂の場合は、樹脂5mgを示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて窒素雰囲気下で0℃から300℃まで10℃/分で昇温し、300℃で1分間保持した後0℃まで急冷し、再度300℃まで10℃/分で昇温し、2回目の昇温測定より読みとった融解ピークを融点とした。
これらの結果は、表1に示した。
[缶デント試験]
缶に95℃で蒸留水を充填後、125℃30分のレトルト処理を行い、37℃の保温庫内にて1ヶ月間経時した缶に対して、5℃雰囲気下において、15°の斜面にむけて、高さ50cmから垂直に落下させて、缶底に衝撃を与えた。衝撃付与後、蒸留水を抜き取り、衝撃加工部に6.30Vの電圧をかけたときの電流値で、缶底の加工部における樹脂被覆の割れ程度を評価した。
評価結果は、
○:平均電流値≦3mA
×:平均電流値>3mA
で示した。
[レトルト耐食性試験]
缶に95℃で蒸留水を充填後、125℃30分のレトルト処理を行い、室温に戻し蒸留水を抜き取り、評価が金属缶である場合は缶内面、蓋である場合は蓋内面の腐食状態を観察した。
評価結果は、
○:腐食が全く認められない。
×:腐食等の異常が認められる。
で示した。
(実施例1)
サンドイッチラミネート法にて、内面側、外面側ともに、下層にイソフタル酸15mol%変性PET樹脂を5μm、表層にイソフタル酸11mol%変性PET樹脂フィルム14μmの構成で、TFS鋼板(板厚0.18mm、金属クロム量120mg/m、クロム水和酸化物量15mg/m)に樹脂被覆を行い、ラミネート材を作製した。この時のラミネートロール温度は150℃、通板速度は40m/minで行った。
さらに、この樹脂被覆金属板にワックス系潤滑剤を塗布し、直径166mmの円盤を打ち抜き、絞り加工を行い、浅絞りカップを得た。次いで、この浅絞りカップに再絞り・しごき加工を行い、シームレスカップを得た。
このシームレスカップの諸特性は以下の通りであった。
カップ経:66mm
カップ高さ:128mm
元板厚に対する側壁部の厚み:50%
このシームレスカップを常法に従って底成形を行い、ポリエステル樹脂のTm−10℃、3分の熱処理を行い、カップを放冷後、開口端縁部のトリミング、外面印刷、焼き付け乾燥、ネックイン加工を行い、350ml用のシームレス缶を得た。
(実施例2)
下層にイソフタル酸18mol%変性PET樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂被覆金属板、シームレス缶を得た。
(実施例3)
下層にイソフタル酸10mol%、ダイマー酸4mol%変性PET樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂被覆金属板、シームレス缶を得た。
(実施例4)
下層にイソフタル酸8mol%、ダイマー酸8mol%変性PET樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂被覆金属板、シームレス缶を得た。
(実施例5)
表層にイソフタル酸2mol%変性PET樹脂フィルム、下層にイソフタル酸15mol%変性PET樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂被覆金属板、シームレス缶を得た。
(実施例6)
表層にナフタレンジカルボン酸5mol%変性PET樹脂フィルムを用いた以外は、実施例1と同様に樹脂被覆金属板、シームレス缶を得た。
(実施例7)
表層にナフタレンジカルボン酸15mol%変性PET樹脂フィルムを用いた以外は、実施例1と同様に樹脂被覆金属板、シームレス缶を得た。
(比較例1)
表層にホモPET樹脂フィルム、下層にイソフタル酸5mol%変性PET樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂被覆金属板を得た。次いで、製缶を行ったが、再しぼり・しごき工程で缶上部に被覆樹脂の剥離が生じ、シームレス缶を得ることが出来なかった。
(比較例2)
表層にイソフタル酸15mol%変性PET樹脂フィルム、下層にイソフタル酸15mol%変性PET樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂被覆金属板の作製を行ったが、ラミネートロールに被覆樹脂が融着し、樹脂被覆金属板を得ることが出来なかった。
(比較例3)
下層にダイマー酸5mol%変性PET樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂被覆金属板を得た。次いで、製缶を行ったが、再しぼり・しごき工程で缶上部に被覆樹脂の剥離が生じ、シームレス缶を得ることが出来なかった。
(比較例4)
表層にイソフタル酸15mol%変性PET樹脂フィルム、下層にイソフタル酸8mol%変性PET樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂被覆金属板、シームレス缶を得た。この缶の特性を評価したところ、缶デント試験およびレトルト耐食性試験にて、被覆樹脂の割れおよび腐食が発生し、飲料等の食品に適用できるシームレス缶は得られなかった。
(比較例5)
表層にイソフタル酸15mol%変性PET樹脂フィルム、下層にイソフタル酸5mol%変性PET樹脂を用いた以外は、実施例1と同様に樹脂被覆金属板の作製を行ったが、ラミネートロールに被覆樹脂が融着し、樹脂被覆金属板を得ることが出来なかった。
Figure 0005089440
本発明の製造方法に用いる設備を簡略して示す図である。
符号の説明
1 金属素材、2 Tダイ、3 ラミネートロール、4 ポリエステルフィルム、
5 溶融膜、6 樹脂被覆金属素材

Claims (5)

  1. 金属基材の少なくとも一方の面に、少なくとも2層の樹脂被覆を形成させる樹脂被覆金属基材の製法であって、融点が220℃未満のポリエステル樹脂をTダイから膜状に押出し、融点が220℃以上のポリエステル樹脂フィルムによって、押出した溶融樹脂を加熱された金属基板と挟み込み、ラミネートロールにて金属基材と溶融樹脂と樹脂フィルムとを圧着することにより金属基材上に樹脂被覆を形成することを特徴とする樹脂被覆金属基材の製造方法。
  2. 前記融点が220℃未満のポリエステル樹脂が、イソフタル酸を15乃至20モル%含有するエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂である請求項1記載の樹脂被覆基材の製造方法。
  3. 前記融点が220℃未満のポリエステル樹脂が、イソフタル酸を8乃至20モル%及びダイマー酸を1乃至10モル%含有するエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂である請求項1記載の樹脂被覆基材の製造方法。
  4. 前記融点が220℃以上のポリエステル樹脂フィルムが、イソフタル酸を2乃至12モル%含有するエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂フィルムである請求項1乃至3の何れかに記載の樹脂被覆基材の製造方法。
  5. 前記融点が220℃以上のポリエステル樹脂フィルムが、ナフタレンジカルボン酸を5乃至20モル%含有するエチレンテレフタレートを主体とするポリエステル樹脂フィルムである請求項1乃至3の何れかに記載の樹脂被覆基材の製造方法。
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