JPH1025288A - ラクチドの精製法および重合法 - Google Patents

ラクチドの精製法および重合法

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JPH1025288A JP18370996A JP18370996A JPH1025288A JP H1025288 A JPH1025288 A JP H1025288A JP 18370996 A JP18370996 A JP 18370996A JP 18370996 A JP18370996 A JP 18370996A JP H1025288 A JPH1025288 A JP H1025288A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ラクチドの製造において、メソラクチドを含
まず、さらに高純度で水分含有率の低いラクチドを得る
ことを目的とする。 【解決手段】 本発明では、先ずL−ラクチドおよび/
またはD−ラクチド、並びにメソ−ラクチドを含む混合
物と水とを接触させることにより、L−ラクチドおよび
/またはD−ラクチドとメソ−ラクチドを分離する。そ
の後、アルコール等の水溶性の溶媒で洗浄した後、ラク
チドと反応せず、かつ、前記溶媒と相溶性のある、疎水
性の溶媒、例えばトルエンで再晶析する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はラクチドの精製法お
よびその重合法に関するものである。ラクチドは特にポ
リ乳酸の製造原料として有用である。
【0002】
【従来の技術】乳酸の二分子環状エステルであるラクチ
ドには、L−乳酸二分子からなるL−ラクチド分子、D
−乳酸二分子からなるD−ラクチド分子、L−乳酸とD
−乳酸からなるメソ−ラクチド分子が存在する。ラクチ
ドは、近年、生分解性プラスチックとして注目されてい
るポリ乳酸の中間体として重要な化合物である。しかし
ながら、重合度の高いポリ乳酸を得るには純度の高いラ
クチドが必要であり、特に、重合の阻害物質となる水、
遊離酸等の含有量はきわめて低いものでなくてはならな
い。
【0003】ラクチドの精製法としては溶剤を用いた再
結晶法が知られている。たとえば、特開63−101378号に
は炭素数1〜6個のアルコール、好ましくはイソプロピ
ルアルコールからの再結晶、あるいは溶液から非溶媒を
用いて沈殿させることが記載されている。また、特開平
5−50666 号、特開平 7−165753号には、水、アセトン
を用いてラクチドを析出させる方法が記載れている。し
かしながら、このような方法で精製されたラクチドを用
いて重合すると、水分含有率が多い等の問題があり、得
られるポリ乳酸の分子量は1000〜5000程度であり、分子
量10万以上の高分子量のポリ乳酸を得ることは困難であ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】粗ラクチドの原料とし
て、L−体の光学活性乳酸を用いた場合には、通常、反
応を進めるのに充分な高い反応温度と、滞留時間をとら
なければならないために乳酸のラセミ化が起こり、L−
ラクチド以外にもメソ−ラクチドと、少量のD−ラクチ
ドが生成する。粗ラクチドの原料として、DL−乳酸を
用いた場合には、D−ラクチドとL−ラクチドの等量混
合物であるDL−ラクチドのほかにメソ−ラクチドが生
成することはいうまでもない。
【0005】一方、光学純度の高い高分子量のポリ乳酸
を合成するためには、その原料であるラクチドを構成す
る乳酸の光学純度、すなわちラクチドの光学純度が高い
ことが要求される。また、DL−ポリ乳酸を合成する場
合には、原料として好ましいのはL−ラクチドとD−ラ
クチドの等量混合物であるDL−ラクチドであるとされ
ている。組成的にはメソ−ラクチドでも何ら問題はない
が、メソ−ラクチドは吸湿性が高いため、原料中の水分
含有率が高くなってしまい、重合を行う際の原料として
は不向きである。
【0006】以上の点から、ラクチドの製造において
は、メソ−ラクチドを含まず、さらに高純度で水分含有
率の低いラクチドを得ることが望まれている。しかしな
がら、粗ラクチドから水と接触させてメソ−ラクチドを
分離しただけでは、L−ラクチドおよび/または、D−
ラクチド結晶中に水分が残留し、水分含有率の低いラク
チドを得ることは非常に困難である。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するため、以下の方法を提供するものである。
【0008】(1)L−ラクチドおよび/またはD−ラ
クチド、並びにメソ−ラクチドを含む混合物と水とを接
触させることにより、L−ラクチドおよび/またはD−
ラクチドとメソ−ラクチドを分離し、さらに、水溶性の
溶媒で洗浄した後、ラクチドと反応せず、かつ、前記溶
媒と相溶性のある、疎水性の溶媒で再晶析することを特
徴とするラクチドの精製法を提供するものである。ま
た、本発明は前記の精製法により得られたラクチドを重
合することを特徴とするラクチドの重合法を提供するも
のである。
【0009】(2)L−ラクチドおよび/またはD−ラ
クチド、並びにメソ−ラクチドを含み少なくとも1部が
溶融状態にある混合物と水とを接触させることにより、
L−ラクチドおよび/またはD−ラクチドとメソ−ラク
チドを分離すると同時に、L−ラクチドおよび/または
D−ラクチドを結晶として析出させ、さらに、水溶性の
溶媒で洗浄した後、ラクチドと反応せず、かつ、前記溶
媒と相溶性のある、疎水性の溶媒で再晶析することを特
徴とするラクチドの精製法を提供するものである。ま
た、本発明は前記の精製法により得られたラクチドを重
合することを特徴とするラクチドの重合法を提供するも
のである。
【0010】(3)L−ラクチドおよび/またはD−ラ
クチド、並びにメソ−ラクチドを含む混合物が、乳酸、
水、その他の不純物を含むことを特徴とする(1)〜
(2)のいずれか1項に記載のラクチドの精製法を提供
するものである。また、本発明は前記の精製法により得
られたラクチドを重合することを特徴とするラクチドの
重合法を提供するものである。
【0011】以下に本発明の方法を詳細に説明する。本
発明の方法は従来公知の方法によって得られたラクチド
に適用できる。得られた粗ラクチドを約90℃に保持し、
溶融状態にしておく。この溶融状態にある粗ラクチドに
それとほぼ等重量の水を加え、よく混合する。ラクチド
が加水分解するのを防ぐために直ちに30℃以下に冷却す
ると、目的物質であるラクチドは析出し、スラリー状に
なる。その後、1時間前後攪拌した後、濾過、あるいは
遠心分離等で固相と液相を分離して、ラクチドを得る。
この後水溶性の溶媒(有機溶媒)で洗浄する。このよう
な溶媒としては、アセトン、メチルイソブチルケトン等
のケトン類、エチルアルコール、イソプロピルアルコー
ル等のアルコール類、酢酸エチルなどがあげられるが、
収率、価格等の面から、イソプロピルアルコールが好ま
しい。この時点でのラクチドの水分含有率は最低でも10
0ppm程度で、このまま重合を行っても、充分な分子量は
得られない。
【0012】このため、この後さらに、前記有機溶媒と
相溶性があり、かつ疎水性の有機溶媒で再結晶する。こ
のような有機溶媒としてはベンゼン、トルエン、キシレ
ン、等があげられるが、特にトルエンが好ましい。この
場合の再結晶は以下の要領で行う。まず、ラクチドに対
して1〜4倍(重量比)以上の溶媒を用いて、60〜70℃
程度まで昇温して結晶をすべて溶解させた後、30℃以下
まで冷却して結晶を得る。ついで、得られたラクチドの
結晶を前出の溶媒(トルエン等)で洗浄する。洗浄は等
量以上の溶媒を用い、20〜40℃にて行う。その後、減圧
下にてラクチドを乾燥し、純度の高いラクチドを得る。
この時点でのラクチドの水分含有率は約10ppm で、か
つ、メソ−ラクチドの組成比率(重量)は検出限界以下
で、充分重合可能である。なお、ラクチドの水分含有率
はカールフィッシャー法(電量法)で測定した。
【0013】水で精製した後すぐにトルエンで再晶析し
ない理由は以下のとおりである。つまり、水とトルエン
は相溶性がないので、すぐにトルエンで再晶析すると十
分に水が除去できない。そこで、その前にアルコール等
で洗浄すれば水分含有率も減り、トルエンとも相溶性が
あるため、再晶析できるようになる。アルコール等で洗
浄しただけではまだ不十分で、さらに、トルエンで再晶
析する必要がある。すなわち、トルエンで再晶析しない
と、ラクチド中に残留したアルコール等が重合を阻害し
たり、また他の溶媒でも水溶性であるため、溶媒中の水
分がラクチド中にも残るため、結局はラクチド中の水分
含有率を高めることになる。このため、トルエン等の溶
媒で再晶析する必要がある。
【0014】本発明の精製法にて得られたラクチドは従
来と同様にして重合することができる。例えば混練機な
ど攪拌および送り機能を有する装置を用い、攪拌、混
合、移動、脱気を行いつつ反応させた後、連続的にポリ
マーを取り出す。重合触媒としては錫末、ハロゲン化
錫、または炭素数20以下のカルボン酸から誘導された有
機錫化合物、あるいは亜鉛末、ハロゲン化亜鉛または炭
素数20以下のカルボン酸から誘導された有機亜鉛化合物
が用いられ、特にオクチル酸錫が好ましい。触媒の使用
量は10ppm 〜10000ppm程度であり、温度130 〜230 ℃、
好ましは160 〜200℃にて混練機に連続的に供給しなが
ら重合を行う。
【0015】このようにして得られたポリ乳酸は分子量
が10万以上ときわめて分子量が高い。すなわち、従来の
精製法で得られたラクチド中には微量の水分が存在し、
これが重合を阻害していると考えられるが、本発明にて
得られたラクチドは水分含有率が10ppm と非常に低く、
重合が容易に進むと考えられる。
【0016】
【実施例】
<実施例>光学純度99.5%のL−乳酸を原料として得ら
れた粗ラクチド5kgを溶融状態しておき、約25℃の水5
kgと攪拌しつつ混合し、直ちに氷浴につけて冷却し、氷
浴中で約1時間攪拌を続けた。その後、濾過することに
より析出したL−ラクチドを分離した後、5kgのイソプ
ロピルアルコールで洗浄した。
【0017】このようにして得られたラクチドをさらに
精製した。すなわち、トルエン約5kgを加え、70℃まで
加熱してラクチドを完全に溶解した。ついで、このトル
エン溶液を30℃まで冷却し、結晶を析出させ、濾過し
た。さらに、約5kgのトルエンで洗浄した。得られたラ
クチドの結晶を減圧下にて乾燥したところ、収量は約3
kgであった。精製ラクチド中のメソ−ラクチドは検出限
界以下で、水分含有率は8.7ppmであった。
【0018】得られたラクチドに、オクチル酸錫を0.24
%加え、190 ℃で二軸混練押出機で連続的に重合したと
ころ、重量平均分子量約15万のポリ乳酸が得られた。
【0019】<比較例>光学純度99.5%のL−乳酸を原
料として得られた粗ラクチド5kgを溶融状態しておき、
約25℃の水5kgと攪拌しつつ混合し、直ちに氷浴につけ
て冷却し、氷浴中で約1時間攪拌を続けた。その後、濾
過することにより析出したL−ラクチドを分離した。得
られたラクチドの結晶を減圧下にて乾燥したところ、収
量は約4kgであった。
【0020】このようにして得られたラクチドをさらに
精製した。すなわち、アセトン約4kgを加え、50℃まで
加熱してラクチドを完全に溶解した。ついで、このトル
エン溶液を20℃まで冷却し、結晶を析出させ、濾過し
た。得られたラクチドの結晶を減圧下にて乾燥したとこ
ろ、収量は約2kgであった。精製ラクチド中のメソ−ラ
クチドは検出限界以下だったが、水分含有率は300ppmで
あった。
【0021】得られたラクチドに、オクチル酸錫を0.24
%加え、190 ℃で二軸混練押出機で連続的に重合したと
ころ、重合はほとんど進まなかった。
【0022】
【発明の効果】本発明の方法で得られたラクチドは純度
が高い上、水分含有率も低いため、重合が進みやすい。
このため、分子量の非常に大きなポリ乳酸が容易に得ら
れる。

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 L−ラクチドおよび/またはD−ラクチ
    ド、並びにメソ−ラクチドを含む混合物と水とを接触さ
    せることにより、L−ラクチドおよび/またはD−ラク
    チドとメソ−ラクチドを分離し、さらに、水溶性の溶媒
    で洗浄した後、ラクチドと反応せず、かつ、前記溶媒と
    相溶性のある、疎水性の溶媒で再晶析し、減圧下で乾燥
    することを特徴とするラクチドの精製法。
  2. 【請求項2】 L−ラクチドおよび/またはD−ラクチ
    ド、並びにメソ−ラクチドを含み少なくとも1部が溶融
    状態にある混合物と水とを接触させることにより、L−
    ラクチドおよび/またはD−ラクチドとメソ−ラクチド
    を分離すると同時に、L−ラクチドおよび/またはD−
    ラクチドを結晶として析出させ、さらに、水溶性の溶媒
    で洗浄した後、ラクチドと反応せず、かつ、前記溶媒と
    相溶性のある、疎水性の溶媒で再晶析し、減圧下で乾燥
    することを特徴とするラクチドの精製法。
  3. 【請求項3】 L−ラクチドおよび/またはD−ラクチ
    ド、並びにメソ−ラクチドを含む混合物が、乳酸、水、
    その他の不純物を含むことを特徴とする請求項1、2の
    いずれか1項に記載のラクチドの精製法。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3に記載された方法で得られ
    たラクチドを重合することを特徴するラクチドの重合
    法。
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