JPH10249082A - ミシン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 送り歯の布送り駆動の為の前後駆動系や上下
駆動系の小型化且つ簡単化、送り歯の前後送りと上下駆
動と糸捕捉手段との位相調整の省略化、組み立て作業の
簡単化を図ること。 【解決手段】 合成樹脂製のカムプーリ体４０は、外周
にカム面を形成した前後駆動カム４２を上段部に、回転
釜４７を回転駆動するタイミングプーリ４３を中断部
に、下端面にカム面を形成した上下駆動カム４４を下段
部に夫々一体的に形成され、脚柱部３内に配設された縦
軸３０の下端部に同心状に且つ相対回転不能に固定さ
れ、縦軸３０と同期して回転駆動され、これら駆動カム
４２，４４やタイミングプーリ４３を個別に駆動する駆
動系を省略して布送りの駆動系を簡単化、部品点数の削
減で組立て作業の簡単化、本縫いミシン１の小型化が図
れ、布送り駆動と回転釜４７とのタイミング調整を不要
にできる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ミシンに関し、特
に主軸に連動連結された駆動軸に、送り歯の上下動と前
後動に関する駆動カムと糸捕捉手段の回転駆動用タイミ
ングプーリとを一体形成したカムプーリ体を同心状に連
結し、布送りの為の送り歯の駆動系を簡単化するように
したものに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の工業用ミシンや家庭用ミシンの布
送り機構においては、針棒を上下駆動する主軸（上軸）
で回転駆動される駆動軸（縦軸）を介して下軸を回転駆
動し、その下軸に取付けた前後駆動カムによりリンク機
構を介して送り歯を前後動させるとともに、その下軸に
取付けた上下動駆動カムによりリンク機構を介して送り
歯を上下動させるようにしたり、主軸の回転で駆動軸を
上下揺動駆動し、その駆動軸の上下揺動で送り歯を上下
動させるとともに、下軸に設けた前後駆動カムで送り歯
を前後動させるようにしている。

【０００３】このように、従来のミシンの布送り機構で
は、複雑なリンク機構を設け、これらリンク機構を駆動
カムで駆動することから、振動や騒音が大きく、また部
品点数が多くなることから、最近では、下軸を設けない
で、これら前後駆動カムや上下駆動カムを駆動軸に連結
したベルトで回転駆動することで送り歯を前後動及び上
下動させるようにした布送り機構が種々提案されてい
る。

【０００４】例えば、実開昭５９─３４７７７号公報に
は、脚柱部に設けた縦軸の下端部に大径プーリと小径プ
ーリとを設け、送り歯の近傍部に、鉛直向きの水平釜と
一体化した釜駆動プーリと、前後送りカムを取付けた前
後送りプーリと、上下送りカムを取付けた上下送りプー
リとを設け、駆動モータの回転でベルトを介して大径プ
ーリを回転し、小径プーリの回転でベルトを介して上下
送りカムを回転する一方、上下送りカムの回転でベルト
を介して釜駆動プーリと前後送りカムとを回転し、上下
送りカムで発生した上下動により揺動体を介して送り歯
を上下移動させ且つ前後送りカムと送り調節器との協働
で発生した前後動によりリンク及び揺動体を介して送り
歯を前後移動させるようにしたミシンの送り機構が提案
されている。

【０００５】更に、特公平７─２８９６３号公報には、
上軸に係合する二股状の送りフォークが送り調節器を介
して上下動され、この送りフォークに連結した揺動軸を
介して送り歯が前後動される一方、傘歯車を介して上軸
により回転される縦軸に上下駆動カムと釜駆動用プーリ
とが固着され、上下駆動カムに従動する従動部材と上下
駆動レバーとを介して送り歯が上下動されるとともに、
釜駆動用プーリの回転でベルトを介して回転釜が回転さ
れるようにしたミシンが提案されている。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】前記実開昭５９─３４
７７７号公報に記載のミシンの送り機構においては、前
後送りカムと上下送りカムと釜駆動用プーリとを別体の
ものとし、これらカムやプーリを上下に重ならないよう
にベッド部内に点在させて配置し、２つのベルトで駆動
するようにしているので、布送りの為の前後駆動系の駆
動用カムと上下駆動系の駆動用カムとの統一化を図るよ
うにはなっていないことから、これら前後駆動機構や上
下駆動機構の駆動系が大型化且つ複雑化すること、布送
り機構の大型化に伴ってミシン全体が大型化すること、
これらカムやリンク機構の為の部品点数が増加し、また
組付けに際しては、水平釜の所定のタイミングにおける
前後送りカムや上下送りカムの取付け位相を含む布送り
タイミングの調節を要し、これらの組付け作業が複雑化
すること、などの問題がある。

【０００７】また、特公平７─２８９６３号公報に記載
のミシンにおいては、回転釜の駆動と上下駆動カムとを
縦軸に固着され、縦軸の回転により送り歯を上下動し且
つ回転釜を回転駆動するようになってはいるものの、送
り歯の前後動に関しては別系統で行なうようになってお
り、結局前記公報と同様に、布送りの為の前後駆動系の
駆動用カムと上下駆動系の駆動用カムとの統一化を図る
ようにはなっていないことから、布送り機構の為の部品
点数が増加し、またこれらの部品の組付け作業が複雑化
すること、これら前後駆動機構や上下駆動機構の駆動系
が大型化且つ複雑化すること、などの問題がある。

【０００８】本発明の目的は、送り歯の布送り駆動の為
の前後駆動系や上下駆動系の小型化且つ簡単化、送り歯
の前後送りと上下駆動と糸捕捉手段との位相調整の省略
化、組み立て作業の簡単化を図れるようなミシンを提供
することである。

【０００９】

【課題を解決するための手段】請求項１のミシンは、ミ
シンモータと、ミシンモータの駆動力で回転駆動され縫
針を駆動する主軸と、主軸に連動連結されミシンモータ
の駆動力で回転駆動されるほぼ鉛直向きの駆動軸と、こ
の駆動軸で回転駆動され縫針と調時作動して上糸の糸輪
を形成する糸捕捉手段と、針板上の加工布を送る送り歯
とを備えたミシンにおいて、駆動軸に同心状に且つ相対
回転不能に連結されるカムプーリ体であって、外周にカ
ム面を有し送り歯を前後送り駆動する為の前後駆動カム
と、糸捕捉手段の回転入力部を回転駆動する為のタイミ
ングプーリと、前記駆動軸の軸心と直交する端面にカム
面を有し送り歯を上下駆動する為の上下駆動カムとを一
体形成したカムプーリ体を備えたものである。

【００１０】送り歯を前後送り駆動する為の前後駆動カ
ムと、糸捕捉手段の回転入力部を回転駆動する為のタイ
ミングプーリと、駆動軸の軸心と直交する端面にカム面
を有し送り歯を上下駆動する為の上下駆動カムとを一体
形成してカムプーリ体を形成し、そのカムプーリ体を、
主軸に連結されて回転駆動される駆動軸に同心状に且つ
相対回転不能に連結したので、駆動軸の回転によりこれ
ら前後駆動カムとタイミングプーリと上下駆動カムとを
個別に駆動する駆動系を省略でき、布送り機構を簡単化
することができ、その為に部品点数を削減して組立て作
業の簡単化、低コスト化、更にはミシンの小型化が図
れ、更に送り歯の前後動タイミングと上下動タイミング
と糸捕捉手段とのタイミング調整を不要にできる。

【００１１】請求項２のミシンは、請求項１の発明にお
いて、前記前後駆動カムに作動的に連結されて送り歯を
前後送り駆動する前後送り機構と、タイミングプーリと
糸捕捉手段の回転入力部としてのプーリとに掛装される
タイミングベルトと、上下駆動カムに作動的に連結され
て送り歯を上下駆動する上下駆動機構とを設けたもので
ある。この場合、前後駆動カムに作動的に連結された前
後送り機構により送り歯が前後送り駆動され、タイミン
グプーリと糸捕捉手段のプーリとに掛装されるタイミン
グベルトにより糸捕捉手段の回転入力部が回転駆動さ
れ、また上下駆動カムに作動的に連結された上下駆動機
構により送り歯が上下駆動される。その他、請求項１と
同様の作用を奏する。

【００１２】請求項３のミシンは、請求項１または２の
発明において、前記駆動軸は、ミシンの脚柱部内に配設
されるとともに１対の傘歯車を介して主軸に連結された
ものである。ここで、その駆動軸は主軸に連結される縦
軸であってもよい。この場合には、駆動軸を脚柱部内の
スペースを有効活用して配設できる上、１対の傘歯車を
介して主軸により簡単に回転駆動することができる。ま
た、駆動軸に連結されたカムプーリ体の主軸に対する回
転位相を、例えば主軸に傘歯車を固定するセットビスを
緩めて簡単に微調整することができる。その他、請求項
１または２と同様の作用を奏する。

【００１３】請求項４のミシンは、請求項１の発明にお
いて、前記前後駆動カムとタイミングプーリと上下駆動
カムは、カムプーリ体の上段部と中段部と下段部に夫々
形成されたものである。この場合には、外周にカム面を
有する異径の前後駆動カムの下側に等径のタイミングプ
ーリを形成し、そのタイミングプーリの下側にカム面を
端面に有する上下駆動カムを形成したので、カムプーリ
体をこれら駆動カムやタイミングプーリを相互に密着さ
せた３層構造に一体化でき、カムプーリ体の剛性を高め
ることができるとともに、カムプーリ体をコンパクト化
することができる。その他、請求項１と同様の作用を奏
する。

【００１４】請求項５のミシンは、請求項４の発明にお
いて、前記前後駆動カムとタイミングプーリと上下駆動
カムはこの順に大径化するように形成されたものであ
る。この場合には、上段部の前後駆動カムよりも中段部
のタイミングプーリの方がより大径で、中段部のタイミ
ングプーリよりも下段部の上下駆動カムの方がより大径
なので、カムプーリ体を成形により作製するときの型抜
きを簡単化することができる。その他、請求項４と同様
の作用を奏する。

【００１５】請求項６のミシンは、請求項５の発明にお
いて、前記タイミングベルトの途中部においてタイミン
グベルトに張力を付加する鍔付きのテンションプーリを
設けたものである。ここでテンションプーリは、両鍔付
きであってもよい。この場合、テンションプーリでタイ
ミングベルトに適度な張力を付加でき、テンションプー
リの鍔によりタイミングベルトの上下移動を防止できる
とともに、下段部の上下駆動カムの上端外周部でタイミ
ングベルトの下方への脱落を防止することができる。そ
の他、請求項５と同様の作用を奏する。

【００１６】請求項７のミシンは、請求項２の発明にお
いて、前記前後送り機構は、送り歯の前後送り量を調節
する為の前後送り調節器を有するものである。この場合
には、前後送り機構は前後送り調節器を介して前後送り
量を調節できる。その他、請求項２と同様の作用を奏す
る。請求項８のミシンは、請求項２の発明において、前
記上下駆動機構は、送り歯の上下位置を調節する為の上
下位置調節機構を有するものである。この場合には、上
下位置調節機構により、上下駆動機構による送り歯の上
下動の上下動範囲の上下位置を容易に調節することがで
きる。その他、請求項２と同様の作用を奏する。

【００１７】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面に基いて説明する。本実施形態は、針棒上下動機
構や送り駆動機構などを備えた本縫いミシンに本発明を
適用した場合のものである。この本縫ミシン１において
は、ベッド部２の右端部には脚柱部３が立設され、この
脚柱部３の上端から左方に延びるアーム部４はベッド部
２の上方に対向するように水平に配設され、このアーム
部４の左端部の頭部には針棒２２及び押え棒１２が装着
されている。

【００１８】前記アーム部４内には、玉軸受け５を介し
てダイキャスト製のフレーム６に回転可能に支持された
水平な主軸７が配設され、ミシンモータ８で駆動される
タイミングプーリ９と主軸７に固着されたタイミングプ
ーリ１０とにタイミングベルト１１が掛装され、主軸７
はミシンモータ８の駆動により、両タイミングプーリ
９，１０とタイミングベルト１１とを介して所定回転方
向に回転駆動される。次に、針棒上下動機構２０は、通
常の機構と同様なので簡単に説明する。

【００１９】上端部がフレーム６に回動自在に枢支され
た針棒支持体２１に針棒２２が上下動自在に装着され、
針棒２２の下端には縫針２３が取付けられている。一
方、主軸７の左端部には天秤クランク２４が固着され、
その天秤クランク２４にクランクピンを介して針棒クラ
ンク２５が回動自在に連結され、針棒クランク２５の下
端部が針棒２２の中段部に連結されている。これによ
り、ミシンモータ８の回転により主軸７と天秤クランク
２４が回転駆動され、針棒クランク２５の上下動により
針棒２２が上下に駆動される。

【００２０】前記脚柱部３には、鉛直向きの縦軸３０
（これが、駆動軸に相当する）が配設され、玉軸受け５
を介してフレーム６に回転可能に支持されている。その
縦軸３０の上短部には傘歯車３１が固着されるととも
に、この傘歯車３１に噛合する傘歯車３２が主軸７にセ
ットビス３３により固定されている。次に、縦軸３０の
下端部に、縦軸３０に同心状に且つ相対回転不能に取付
けられたカムプーリ体４０について、図２に基づいて説
明する。

【００２１】このカムプーリ体４０は合成樹脂製であ
り、送り歯５１を前後送り駆動する為の前後駆動カム４
２を上段部に、水平な回転釜４７を回転駆動する為のタ
イミングプーリ４３を中断部に、そして縦軸３０の軸心
と直交する下端面にカム面を有し、送り歯５１を上下動
する為の上下駆動カム４４を下段部に夫々一体的に形成
したものであり、その中央部に上下に貫通させて形成し
た挿通穴に縦軸３０の下端部を嵌め込み、ピン４１によ
りカムプーリ体４０を縦軸３０に対して相対回転不能に
固定されている。

【００２２】上段部の前後駆動カム４２は、平面視略三
角形状であり、その外周に送り歯５１を前後送り駆動す
る為のカム面が形成されている。前後駆動カム４２の下
側に形成されたタイミングプーリ４３は、前後駆動カム
４２の大径部よりも大きい径を有するプーリである。更
に、タイミングプーリ４３の下側に形成された上下駆動
カム４４は、タイミングプーリ４３の直径よりも大きい
径を有するカムであって、その下端面に送り歯５１を上
下動する為のカム面が形成されている。ここで、これら
前後駆動カム４２と上下駆動カム４４とは、送り歯５１
を通常の４送り動作を所定のタイミングで実行できるよ
うに、カム面が形成されている。

【００２３】ところで、ベッド部２の左端部には、図４
〜図５に示すように、フレーム６に下端部が固着された
鉛直向きの釜軸４６に回転釜４７が水平面で回転自在に
枢支されるとともに、回転釜４７の下側には、釜軸４６
に回転自在で回転釜４７を回転駆動するタイミングプー
リ４８が回転釜４７に一体的に取付けられている。一
方、その回転釜４７の近傍部には、水平な第１支持板５
０ａと第２支持板５０ｂとを上下２層状に連結形成した
送り台５０が配設され、その送り台５０の一段高く且つ
水平状に形成された第１支持板５０ａには、回転釜４７
の上側に張り出すように配設された送り歯５１の基端部
が取付けられている。

【００２４】図３に示すように、上側の第１支持板５０
ａに上端が上下動可能に支持された鉛直向きの枢支ピン
５２の下端部は、第１支持板５０ａと平行に形成された
下側の第２支持板５０ｂに上下動可能に支持されてい
る。更に、第２支持板５０ｂには、前方に延びる延出部
５０ｃが形成され、この延出部５０ｃの前端部に形成さ
れた長穴５０ｄに、フレーム６に取付けられた水平状の
支持板５３に上向きに固着された係合ピン５４が係合す
ることで、後述する送り歯５１を前後に駆動するときの
送り台５０の回転を禁止させるようになっている。次
に、前後駆動カム４２に作動的に連結されて送り歯５１
を前後送り駆動する前後送り機構６０について、図３〜
図４に基づいて説明する。

【００２５】ベッド部２の前後方向の略中央部に左右方
向に延びる平面視略へ字状の前後送りレバー６１が、前
後駆動カム４２の高さ位置で且つ略水平状に配設され、
その前後送りレバー６１の途中部の後端部を下側に折り
曲げされた駆動部６１ａが前後駆動カム４２に前方から
当接し、一端がフレーム６に固定された引っ張りコイル
バネ６２により、駆動部６１ａが前後駆動カム４２に押
圧付勢されている。その前後送りレバー６１の右端部
は、送り歯５１の前後送り量を調節する為の送り調節器
１５の溝に移動可能に係合する角駒１６にピン１７を介
して連結されている。

【００２６】また、送り調節器１５の作動レバー１５ａ
は、図示外の送り調節ダイヤル又は送り調節用アクチュ
エータの出力部に連結され、送り調節器１５の傾き角
度、つまり送り歯５１による送り量が調節されるように
なっている。一方、前後送りレバー６１の左端部に対応
するように、水平な揺動板６３ａと駆動アーム６３ｂと
を上下２層状に連結形成した側面視略コ字状の揺動部材
６３が配設され、これら揺動板６３ａと駆動アーム６３
ｂの基端部が、フレーム６に下端部が固着された鉛直向
きの枢支軸６４に水平面で揺動自在に枢支され、揺動板
６３ａの左端部は、前記送り台５０の枢支ピン５２に固
定されている。

【００２７】即ち、送り調節器１５が図６に示す正送り
側に回動している場合に、縦軸３０が主軸７により平面
視反時計回りに回転駆動されるときに、図６に示すよう
に、前後駆動カム４２の小径部で前後送りレバー６１の
駆動部６１ａが後方に移動するときに、角駒１６の後方
斜め左方向への移動により、前後送りレバー６１には左
方向移動成分が作用し、揺動部材６３はその駆動アーム
６３ｂを介して平面視時計回りに所定角度だけ回動する
ので、その揺動部材６３に連結された枢支ピン５２と送
り台５０とを介して送り歯５１が後方（布送り方向）に
所定量だけ移動する。このとき、送り台５０の回転は延
出部５０ｃにより禁止され、また送り歯５１は後述する
上下駆動機構７０により針板（図示略）の上側に位置す
る布送り状態である。

【００２８】一方、図７に示すように、前後駆動カム４
２の大径部で駆動部６１ａが前方に移動するときに、角
駒１６の前方斜め右方向への移動により、前後送りレバ
ー６１には右方向移動成分が作用し、揺動部材６３はそ
の駆動アーム６３ｂを介して平面視反時計回りに所定角
度だけ回動するので、その揺動部材６３に連結された送
り台５０を介して送り歯５１が前方に所定量だけ移動す
る。このときには、送り歯５１は上下駆動機構７０によ
り針板の下側に位置している。

【００２９】次に、上下駆動カム４４に作動的に連結さ
れて送り歯５１を上下駆動する上下駆動機構７０につい
て、図３〜図４に基づいて説明する。前記前後送りレバ
ー６１の後側には、左右方向に延びる正面視略へ字状の
上下駆動レバー７１が配設され、その上下駆動レバー７
１の途中部が上下位置調節機構８０を介してフレーム６
に鉛直面で回動可能に枢支され、その上下駆動レバー７
１の右端部には、上下駆動カム４４のカム面に下側から
当接する従動ピン７２が固着されている。

【００３０】一方、上下駆動レバー７１の左端部には、
送り台５０の第２支持板５０ｂに下側から当接するコロ
７３が回転可能に枢着されている。ここで、前記揺動部
材６３の揺動板６３ａと送り台５０の第２支持板５０ｂ
との間の枢支ピン５２に圧縮コイルバネ７４が介装さ
れ、その圧縮コイルバネ７４のバネ力により、送り台５
０が常にコロ７３に上側から押圧され、送り歯５１はコ
ロ７３の上下動に追従して上下移動するようになってい
る。

【００３１】即ち、図３に示すように、送り歯５１によ
る布送りタイミングに際しては、上下駆動レバー７１の
従動ピン７２が上下駆動カム４４の凸状カム面により下
方に移動するので、上下駆動レバー７１のコロ７３は上
下位置調節機構８０を介して上方に移動することで送り
台５０を上昇させ、送り歯５１が針板よりも上側の所定
の送り高さ位置まで上動される。

【００３２】一方、送り歯５１の前方への移動の際に
は、図８に示すように、上下駆動レバー７１の従動ピン
７２が上下駆動カム４４の凹状カム面により上方に移動
するので、上下駆動レバー７１のコロ７３は上下位置調
節機構８０を介して下方に移動することで送り台５０を
下降させ、送り歯５１が針板よりも下側の所定の非送り
高さま位置で下動される。このように、前後送り機構６
０と上下駆動機構７０との協働により、送り歯５１は針
棒２２の上下動と調時して通常の４送り動作が行なわ
れ、送り調節器１５で調節された送り量に対応させて加
工布を布送り可能になっている。

【００３３】ここで、前記傘歯車３２のセットビス３３
を緩めて、主軸７を回転させることなく縦軸３０を平面
視にて時計回り又は反時計回りに回動させて、縦軸３０
の回転位相を主軸７の回転位相に対して微調節すること
で、回転釜４７の回転位相と送り歯５１の上下動及び前
後動の駆動タイミングとを所定の位置関係に保持しつ
つ、縫針２３と剣先（図示略）との出合いタイミングを
微調整することができる。

【００３４】次に、送り歯５１の布送り時の高さ位置を
調節する上下位置調節機構８０について、図４に基づい
て説明する。上下駆動レバー７１の途中部には、折り曲
げ形成により枢支部７１ａが一体形成され、これら上下
駆動レバー７１とその枢支部７１ａとに、前後方向向き
の円筒状の段付きカラー８１が回転可能に嵌入され、そ
の段付きカラー８１の軸心よりも偏心した位置に形成さ
れたビス穴８１ａにセットビス８２を挿入させて、その
セットビス８２により段付きカラー８１をフレーム６の
ボス部６ａに固定されている。

【００３５】即ち、セットビス８２を緩めて段付きカラ
ー８１を時計回り又は反時計回りに回動させることで、
上下駆動レバー７１の途中部がセットビス８２に対して
偏心運動するとともに、コロ７３が圧縮コイルバネ７４
のバネ力で下方に押圧されていることから、そのコロ７
３も同時に偏心運動することになる。ここで、コロ７３
の水平移動成分は第２支持板５０ｂに当接しながら左右
に移動することで解消されるが、コロ７３の上下移動成
分により送り台５０を介して送り歯５１が上下に微動さ
れる。このように、上下位置調節機構８０により送り歯
５１の上下動範囲の高さ位置を調節することで、上下駆
動機構７０を構成する部品の製作誤差に起因して、縫針
２３が加工布に刺さるときのタイミングや、加工布から
離れるときのタイミングに対する送り歯５１の高さ位置
のズレを簡単に調節することができる。

【００３６】ところで、前記カムプーリ体４０の中断部
のタイミングプーリ４３と回転釜４７のタイミングプー
リ４８とにタイミングベルト８５が掛装され、そのタイ
ミングベルト８５には、所定の押圧力で当接するテンシ
ョンプーリ８６により張力が付加されている。そして、
縦軸３０の回転駆動により、カムプーリ体４０とともに
回転するタイミングプーリ４３とタイミングベルト８５
とタイミングプーリ４８とを介して回転釜４７が縦軸３
０の回転速度の２倍の速度で回転駆動され、縫針２３と
協働して加工布に縫目を形成するようになっている。

【００３７】ここで、タイミングベルト８５を装着する
ときには、縫針２３を略最下位置の出合いタイミングに
移動させておき、回転釜４７もその出合い位置に回動さ
せた状態で、タイミングベルト８５を両プーリ４３，８
６に掛け渡すだけでよい。これにより、回転釜４７の回
転と送り歯５１の送り動作とのタイミングを調節しなく
ても、自ずとこれらのタイミングを合致させることがで
き、これらのタイミング調節を不要にできる。

【００３８】また、前記テンションプーリ８６には１対
の鍔８６ａが形成され、回転するタイミングベルト８５
の上下動がこれら鍔部８６ａにより規制されるととも
に、図２に示すように、タイミングプーリ４３において
は、その下側のより大径に形成された上下駆動カム４４
の外周上面部でタイミングベルト８５の下方への移動が
防止されている。

【００３９】このように、送り歯５１を前後送り駆動す
る為の前後駆動カム４２と、回転釜４７の回転入力部を
回転駆動する為のタイミングプーリ４３と、下端面にカ
ム面を形成し送り歯５１を上下駆動する為の上下駆動カ
ム４４とを一体形成してカムプーリ体４０を形成し、そ
のカムプーリ体４０を、主軸７に１対の傘歯車３１，３
２により連結されて回転駆動される縦軸３０に同心状に
且つ相対回転不能に連結したので、縦軸３０の回転によ
りこれら前後駆動カム４２とタイミングプーリ４３と上
下駆動カム４４とを個別に駆動する駆動系を省略でき、
布送り機構を簡単化することができ、その為に部品点数
を削減して組立て作業の簡単化、低コスト化、更には本
縫いミシン１の小型化が図れ、更に送り歯５１の前後動
タイミングと上下動タイミングと回転釜４７とのタイミ
ング調整を不要にできる。

【００４０】また、前後駆動カム４２に作動的に連結さ
れて送り歯５１を前後送り駆動する前後送り機構６０
と、タイミングプーリ４３と回転釜４７の回転入力部と
してのタイミングプーリ４８とに掛装されるタイミング
ベルト８５と、上下駆動カム４４に作動的に連結されて
送り歯５１を上下駆動する上下駆動機構７０とを設けた
ので、前後送り機構６０により送り歯５１を前後送り駆
動でき、タイミングベルト８５により回転釜４７を回転
駆動でき、また上下駆動機構７０により送り歯５１を上
下駆動できる。

【００４１】また、縦軸３０は、本縫いミシン１の脚柱
部３内に配設されるとともに、１対の傘歯車３１，３２
を介して主軸７に連結されたので、縦軸３０を脚柱部３
内のスペースを有効活用して配設できる上、１対の傘歯
車３１，３２を介して主軸７により簡単に回転駆動する
ことができる。また、縦軸３０に連結されたカムプーリ
体４０の主軸７に対する回転位相を、主軸７に傘歯車３
２を固定するセットビス３３を緩めて簡単に微調整する
ことができる。

【００４２】また、前後駆動カム４２とタイミングプー
リ４３と上下駆動カム４４は、カムプーリ体４０の上段
部と中段部と下段部に夫々形成されたので、カムプーリ
体４０をこれら駆動カム４２，４４やタイミングプーリ
４３を相互に密着させた３層構造に一体化でき、カムプ
ーリ体４０の剛性を高めることができるとともに、カム
プーリ体４０をコンパクト化することができる。

【００４３】また、前後駆動カム４２とタイミングプー
リ４３と上下駆動カム４４はこの順に大径化するように
形成されたので、合成樹脂製のカムプーリ体４０を成形
により作製するときの型抜きを簡単化することができ
る。また、タイミングベルト８５の途中部において、タ
イミングベルト８５に張力を付加する両鍔部８６ａ付き
のテンションプーリ８６を設けたので、テンションプー
リ８６でタイミングベルト８５に適度な張力を付加で
き、テンションプーリ８６の鍔部８６ａによりタイミン
グベルト８５の上下移動を防止できるとともに、下段部
の上下駆動カム４４の上端外周部でタイミングベルト８
５の下方への脱落を防止することができる。

【００４４】また、前後送り機構６０は、送り歯５１の
前後送り量を調節する為の前後送り調節器１５を有する
ので、前後送り機構６０はその前後送り調節器１５を介
して前後送り量を調節できる。更に、上下駆動機構７０
は、送り歯５１の上下位置を調節する為の上下位置調節
機構８０を有するので、上下位置調節機構８０により、
上下駆動機構７０による送り歯５１の上下動範囲の上下
位置を容易に調節することができる。

【００４５】ここで、前記実施形態の変更態様として、
次のように構成してもよい。 １） 前記縦軸３０に平行な駆動軸を設け、この駆動軸
にカムプーリ体を取付け、ベルトやギヤを介して縦軸３
０の回転を駆動軸に伝達するように構成してもよい。 ２） 前記カムプーリ体４０は金属製であってもよい。 ３） 前記送り歯５１の上下位置を調節する為の上下位
置調節機構を上下駆動レバー７１の従動ピン７２に組み
込んでもよい。

【００４６】４） 上述した実施の形態においては、両
鍔付きのテンションプーリを用いたが、上下駆動カム４
４によって下方へのベルトの抜けはある程度防止される
ので、上方へのベルト抜けを防止する片方鍔のテンショ
ンプーリであっても良い。 更に、主軸７や縦軸３０を有する工業用ミシンや各種の
ミシンに本発明を適用し得ることは勿論である。更に、
本発明は前記実施形態に限定して解釈されるべきではな
く、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲において、前
記実施形態の各部の機構に、既存の技術や当業者に自明
の技術に基いて種々の変更を加えることもあり得る。

【００４７】

【発明の効果】請求項１のミシンによれば、ミシンモー
タと、主軸と、駆動軸と、糸捕捉手段と、針板上の加工
布を送る送り歯とを備えたミシンにおいて、駆動軸に同
心状に且つ相対回転不能に連結されるカムプーリ体であ
って、外周にカム面を有し送り歯を前後送り駆動する為
の前後駆動カムと、糸捕捉手段の回転入力部を回転駆動
する為のタイミングプーリと、前記駆動軸の軸心と直交
する端面にカム面を有し送り歯を上下駆動する為の上下
駆動カムとを一体形成したカムプーリ体を備えたので、
駆動軸の回転によりこれら前後駆動カムとタイミングプ
ーリと上下駆動カムとを個別に駆動する駆動系を省略で
き、布送り機構を簡単化することができ、その為に部品
点数を削減して組立て作業の簡単化や低コスト化、更に
はミシンの小型化が図れ、更に送り歯の前後動タイミン
グと上下動タイミングと糸捕捉手段とのタイミング調整
を不要にできる。

【００４８】請求項２のミシンによれば、請求項１と同
様の効果を奏するが、前記前後駆動カムに作動的に連結
されて送り歯を前後送り駆動する前後送り機構と、タイ
ミングプーリと糸捕捉手段の回転入力部としてのプーリ
とに掛装されるタイミングベルトと、上下駆動カムに作
動的に連結されて送り歯を上下駆動する上下駆動機構と
を設けたので、前後駆動カムに作動的に連結された前後
送り機構により送り歯を前後送り駆動でき、タイミング
プーリと糸捕捉手段のプーリとに掛装されるタイミング
ベルトにより糸捕捉手段の回転入力部を回転駆動でき、
また上下駆動カムに作動的に連結された上下駆動機構に
より送り歯を上下駆動できる。

【００４９】請求項３のミシンによれば、請求項１また
は２と同様の効果を奏するが、前記駆動軸は、ミシンの
脚柱部内に配設されるとともに１対の傘歯車を介して主
軸に連結されたので、駆動軸を脚柱部内のスペースを有
効活用して配設できる上、１対の傘歯車を介して主軸に
より簡単に回転駆動することができる。また、駆動軸に
連結されたカムプーリ体の主軸に対する回転位相を、例
えば主軸に傘歯車を固定するセットビスを緩めて簡単に
微調整することができる。

【００５０】請求項４のミシンによれば、請求項１と同
様の効果を奏するが、前記前後駆動カムとタイミングプ
ーリと上下駆動カムは、カムプーリ体の上段部と中段部
と下段部に夫々形成されたので、カムプーリ体をこれら
駆動カムやタイミングプーリを相互に密着させた３層構
造に一体化でき、カムプーリ体の剛性を高めることがで
きるとともに、カムプーリ体をコンパクト化することが
できる。請求項５のミシンによれば、請求項４と同様の
効果を奏するが、前記前後駆動カムとタイミングプーリ
と上下駆動カムはこの順に大径化するように形成された
ので、カムプーリ体を成形により作製するときの型抜き
を簡単化することができる。

【００５１】請求項６のミシンによれば、請求項５と同
様の効果を奏するが、前記タイミングベルトの途中部に
おいてタイミングベルトに張力を付加する鍔付きのテン
ションプーリを設けたので、テンションプーリでタイミ
ングベルトに適度な張力を付加でき、テンションプーリ
の鍔によりタイミングベルトの上下移動を防止できると
ともに、下段部の上下駆動カムの上端外周部でタイミン
グベルトの下方への脱落を防止することができる。

【００５２】請求項７のミシンによれば、請求項２と同
様の効果を奏するが、前記前後送り機構は、送り歯の前
後送り量を調節する為の前後送り調節器を有するので、
前後送り機構はその前後送り調節器を介して前後送り量
を調節できる。請求項８のミシンによれば、請求項２と
同様の効果を奏するが、前記上下駆動機構は、送り歯の
上下位置を調節する為の上下位置調節機構を有するの
で、上下位置調節機構により、上下駆動機構による送り
歯の上下動の上下動範囲の上下位置を容易に調節するこ
とができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施形態に係る本縫いミシンの内部機
構を示す正面図である。

【図２】カムプーリ体の斜視図である。

【図３】ベッド部の内部機構を示す正面図である。

【図４】ベッド部の内部機構を示す平面図である。

【図５】回転釜を含む図３相当図である。

【図６】送り歯を送り駆動する前後送り機構を示すベッ
ド部の平面図である。

【図７】送り歯の非送り駆動時の図６相当図である。

【図８】送り歯を下動するときの図３相当図である。

【符号の説明】

７ 主軸 ８ ミシンモータ １５ 送り調節器 ２３ 縫針 ３０ 縦軸 ３１，３２ 傘歯車 ４０ カムプーリ体 ４２ 前後駆動カム ４３ タイミングプーリ ４４ 上下駆動カム ４７ 回転釜 ５１ 送り歯 ６０ 前後送り機構 ６１ 前後送りレバー ６３ 揺動部材 ６４ 枢支軸 ７０ 上下駆動機構 ７１ 上下駆動レバー ７２ 従動ピン ７３ コロ ８０ 上下位置調節機構 ８５ タイミングベルト ８６ テンションプーリ

Claims (8)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ミシンモータと、ミシンモータの駆動力
   で回転駆動され縫針を駆動する主軸と、主軸に連動連結
   されミシンモータの駆動力で回転駆動されるほぼ鉛直向
   きの駆動軸と、この駆動軸で回転駆動され縫針と調時作
   動して上糸の糸輪を形成する糸捕捉手段と、針板上の加
   工布を送る送り歯とを備えたミシンにおいて、 前記駆動軸に同心状に且つ相対回転不能に連結されるカ
   ムプーリ体であって、外周にカム面を有し送り歯を前後
   送り駆動する為の前後駆動カムと、糸捕捉手段の回転入
   力部を回転駆動する為のタイミングプーリと、前記駆動
   軸の軸心と直交する端面にカム面を有し送り歯を上下駆
   動する為の上下駆動カムとを一体形成したカムプーリ体
   を備えたことを特徴とするミシン。
2. 【請求項２】 前記前後駆動カムに作動的に連結されて
   送り歯を前後送り駆動する前後送り機構と、タイミング
   プーリと糸捕捉手段の回転入力部としてのプーリとに掛
   装されるタイミングベルトと、上下駆動カムに作動的に
   連結されて送り歯を上下駆動する上下駆動機構とを設け
   たことを特徴とする請求項１に記載のミシン。
3. 【請求項３】 前記駆動軸は、ミシンの脚柱部内に配設
   されるとともに１対の傘歯車を介して主軸に連結された
   ことを特徴とする請求項１または２に記載のミシン。
4. 【請求項４】 前記前後駆動カムとタイミングプーリと
   上下駆動カムは、カムプーリ体の上段部と中段部と下段
   部に夫々形成されたことを特徴とする請求項１に記載の
   ミシン。
5. 【請求項５】 前記前後駆動カムとタイミングプーリと
   上下駆動カムはこの順に大径化するように形成されたこ
   とを特徴とする請求項４に記載のミシン。
6. 【請求項６】 前記タイミングベルトの途中部において
   タイミングベルトに張力を付加する鍔付きのテンション
   プーリを設けたことを特徴とする請求項５に記載のミシ
   ン。
7. 【請求項７】 前記前後送り機構は、送り歯の前後送り
   量を調節する為の前後送り調節器を有することを特徴と
   する請求項２に記載のミシン。
8. 【請求項８】 前記上下駆動機構は、送り歯の上下位置
   を調節する為の上下位置調節機構を有することを特徴と
   する請求項２に記載のミシン。