JPH0559757B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 この発明は複数の針と二重環縫ルーパーとの協
働により二重環縫縫目を形成するミシンの二重環
縫ルーパー機構に関するものである。

従来技術 従来のこの種のミシンの二重環縫ルーパー機構
では、一般に針の上下往復動と同期して回転され
る駆動軸の回転に従い、第一のリンク式運動伝達
機構を介して二重環縫ルーパーに布送り方向への
第一の往復運動が付与されるとともに、第二のリ
ンク式運動伝達機構を介して同ルーパーに布送り
方向と直交する方向への第二の往復運動が付与さ
れ、第１図に実線Ａ，Ｂで示すように二重環縫ル
ーパー１の剣先１ａが布送り方向Ｗと直交す方向
に沿つて配列された複数（例えば３本）の針２
ａ，２ｂ，２ｃの布送り出し側及び布送り込み側
を通る平面形ほぼ楕円状の軌跡を画いて作動さ
れ、ルーパー１が針２ａ，２ｂ，２ｃの布送り出
し側を通る時に、そのルーパー１により上昇する
針２ａ，２ｂ，２ｃに支持された針糸ループが捕
捉されるとともに、ルーパー１が針２ａ，２ｂ，
２ｃの布送り出し側を通る時に、下降する針２
ａ，２ｂ，２ｃによりルーパー１に支持されたル
ーパー糸が捕捉されて、二重環縫縫目が形成され
るようになつている ところが、この従来のミシンの二重環縫ルーパ
ー機構においては、特に前記第一のリンク式運動
伝達機構が、駆動軸上にその回転中心から偏心し
て設けられたクランク軸等の回転駆動体と、その
回転駆動体とルーパーとを直接連結する。１個又
は複数個のリンクとにより構成され、駆動軸の回
転角が半回転（180°）分離された２時点（例え
ば、90°と270°）にある時、ルーパー１が針２ａ，
２ｂ，２ｃから離れた位置で布送り込み側及び布
送り出し側へ最大量変位されるようになつている
ため、ルーパー１の剣先１ａと針２ａ，２ｂ，２
ｃとの隙間を調節する際に、右端の針２ａを基準
にすると第１図に示すように中間及び左端の針２
ｂ，２ｃでは隙間が徐々に大きくなつて目飛びの
原因となり、又、ルーパー１の軌跡のタイミング
のみで調節すると、ルーパー１が下降する針２
ａ，２ｂ，２ｃの布送り込み側を移動する時、そ
のルーパー１と針２ａ，２ｂ，２ｃとの間隔が大
きくなりすぎ、その針によりルーパー糸がうまく
捕捉されないで目飛びの原因となり、このルーパ
ー１の剣先１ａと複数の針２ａ，２ｂ，２ｃとの
出合いの調節は極めて困難であつた。

発明の目的 この発明は前記のような従来構成における欠陥
を解消し、二重環縫ルーパーの布送り出し側及び
布送り込み側への最大変位点を複数の針の位置及
び作動タイミングと関連させて任意に設定するこ
とができ、そのルーパーの剣先と複数の針との隙
間の調節を含むルーパーと針との出合いの調節を
容易に行うことができて、目飛びのない美しい二
重環縫縫目を形成することができるほど新規なミ
シンの二重環縫ルーパー機構を提供することを目
的とする。

発明の構成 この発明は前記の目的を達成するために、布送
り方向と直交する方向に沿つて配列された複数の
針の上下往復動と同期して回転される駆動軸の回
転に従い、第一のリンク式運動伝達機構を介して
二重環縫ルーパーに布送り方向への第一の往復運
動が付与されるとともに、第二のリンク式運動伝
達機構を介して同ルーパーに布送り方向と直交す
る方向への第二の往復運動が付与され、前記複数
の針とこのルーパーとの協働により二重環縫縫目
を形成するようにしたミシンの二重環縫ルーパー
機構において、前記第一のリンク式運動伝達機構
が、前記駆動軸上にその駆動軸の回転中心に対し
て偏心して設けられた回転駆動体と、前記ベツド
に揺動可能に支承され、かつ一端に前記回転駆動
体を抱擁する二叉部が形成されるとともに、他端
がリンクを介して前記二重環縫ルーパーに連係さ
れた揺動体とを含み、かつ前記二重環縫ルーパー
の往動時における布送り出し側への最大変位点を
前記複数の針間のほぼ中央部とするとともに、同
ルーパーの復動時における布送り込み側への最大
変位点を前記複数の針が二重環縫ルーパーによつ
て支持されたルーパー糸を捕捉する時期とするよ
うに、前記駆動軸の回転中心と揺動体の揺動中心
との間の距離と、前記回転駆動体の偏心量との関
係を設定したものである。

実施例 以下、この発明の一実施例を図面に従つて説明
すると、この実施例のミシンにおいても、３本の
針２ａ，２ｂ，２ｃがミシンフレームのベツド
（図示しない）の上方において布送り方向Ｗと直
交する方向に沿つて配列され、前記ベツド内に設
けられた駆動軸としてのミシン主軸３の回転に伴
い上下方向へ往復動されるようになつている。前
記針２ａ，２ｂ，２ｃと協働して二重環縫縫目を
形成するようにベツド内に設けられた二重環縫ル
ーパー１は、ルーパーホルダー１Ａとその上端に
固定された剣先１ａを有するルーパー体１Ｂとか
ら構成されている。そして、前記ミシン主軸３と
ルーパーホルダー１Ａとの間には、主軸３の回転
に従つて二重環縫ルーパー１に布送り方向への第
一の往復運動を付与するための第一のリンク式運
動伝達機構４と、主軸３の回転に従つて同ルーパ
ー１に布送り方向と直交する方向への第二の往復
運動を付与するための第二のリンク式運動伝達機
構５とが設けられている。

そこで、まず前記第一のリンク式運動伝達機構
４について詳述すると、前記ベツド内にはミシン
主軸３と平行に延びるように回動軸６が支承さ
れ、その一部には軸受体７が固定されている。そ
の軸受体７には支軸８が回動可能に支持され、そ
の端部には前記二重環縫ルーパー１のルーパーホ
ルダー１Ａが下端にて固定されている。従つて、
二重環縫ルーパー１は、回動軸６の軸心を中心と
して布送り方向Ｗへ往復運動し得るとともに、支
軸８の軸心を中心として布送り方向Ｗと直交する
方向へ往復運動し得るように、ミシンフレームの
ベツド内に支承される。

一方、前記ミシン主軸３には一対のクランク盤
９が固定され、両クランク盤９間には主軸３に対
して所定の偏心量Ｄ１だけ偏心して位置するよう
に回転駆動体としてのクランク軸１０が架設され
ている。主軸３の回転中心から所定距離D2をお
いた位置に揺動中心を有するように、前記ベツド
には支軸１１を介して揺動体１２が揺動可能に支
承されている。この揺動体１２の一端には摺動片
１３を介してクランク軸１０を抱擁する二叉部１
２ａが設けられている。又、揺動体１２の他端は
リンク１４を介して段付きねじ１５，１６により
前記回動軸６上のレバー１７に連係されている。

次に、前記第二のリンク式運動伝達機構５につ
いて詳述すると、前記ミシン主軸３には一対のク
ランク盤１８が固定され、両クランク盤１８間に
は主軸３に対し所定量偏心して位置するようにク
ランク軸１９が架設されている。主軸３と直交す
る方向へ延びるようにベツド内には回動軸２０が
支承され、クランクロツド２１及び球軸受２２を
介して前記クランク軸１９に連係されている。回
動軸２０の端部にはレバー２３が固定され、その
先端部が連結ロツド２４により球軸受２５，２６
を介して前記二重環縫ルーパー１のルーパーホル
ダー１Ａに連結されている。

従つて、前記ミシン主軸３が回転されると、第
一のリンク式運動伝達機構４側においては第２〜
４図から明らかなように、クランク軸１０がその
偏心量Ｄ１を半径とする円周上で回転されて揺動
体１２が揺動され、リンク１４及びレバー１７を
介して回動軸６が往復回動されて、その回動軸６
上に支承された二重環縫ルーパー１に布送り方向
Ｗへの第一の往復運動を付与される。又、前記ミ
シン主軸３の回転に伴い、第二のリンク式運動伝
達機構５側においては、第２図から明らかなよう
に、クランク軸１９がその偏心量を半径とする円
周上で回転されてクランクロツド２１を介して回
転軸２０が往復回動され、レバー２３及び連結ロ
ツド２４を介して二重環縫ルーパー１に布送り方
向Ｗと直交する方向への第二の往復運動が付与さ
れる。それにより、二重環縫ルーパー１はその剣
先１ａが第１図に鎖線Ｃ及び実線Ｂで示す平面形
ほぼ楕円状の軌跡を画くように作動され、前記主
軸３の回転に伴つて上下に往復動される３本の針
２ａ，２ｂ，２ｃとの協働により二種環縫縫目が
形成される。

ところで、この実施例においては第１，４図か
ら明らかなように、前記二重環縫ルーパー１の往
動時における布送り出し側への最大変位点Ｐ１を
前記３本の針２ａ，２ｂ，２ｃ間のほぼ中央部と
するとともに、同ルーパー１の復動時における布
送り込み側への最大変位点Ｐ２を前記３本の針２
ａ，２ｂ，２ｃが二重環縫ルーパー１によつて支
持されたルーパー糸を捕捉する時期とするよう
に、前記第一のリンク式運動伝達機構４において
ミシン主軸３の回転中心と揺動体１２の揺動中心
との間の距離Ｄ２と、クランク軸１０の偏心量Ｄ
１との相対関係が調節設定されている。

すなわち、この実施例では第３，４図から明ら
かなように、クランク軸１０が摺動片１３を介し
て揺動体１２の二叉部１２ａに抱擁されており、
クランク軸１０の回転に伴つて揺動体１２が揺動
される際に、揺動体１２の揺動中心とクランク軸
１０の中心とを結ぶ線（揺動体１２の中心線）上
において、揺動体１２に対するクランク軸１０の
相対移動が許容されるようになつている。そのた
め、クランク軸１０と二重環縫ルーパー１とを複
数のリンク等により遊び運動なしに連結した構成
とは異なり、クランク軸１０の回転に伴う揺動体
１２の揺動時において、第４図に示すようにその
揺動体１２の中心線がクランク軸１０の回転軌跡
円に対する接線上に位置した時点（クランク軸１
０が半回転の180°よりも小さい所定の角度αをお
いた２個の接点Ｔ１，Ｔ２に位置した時点）で、
二重環縫ルーパー１が布送り出し側及び布送り込
み側へ最大に振られて最大変位点Ｐ１，Ｐ２に達
するものとなる。

従つて、前記のようにミシン主軸３の回動中心
と揺動体１２の揺動中心との間の距離Ｄ２と、ミ
シン主軸３に対するクランク軸１０の偏心量Ｄ１
との関係を任意に調節することにより、二重環縫
ルーパー１の布送り出し側及び布送り込み側への
最大変位点Ｐ１，Ｐ２を容易に設定変更すること
ができる。そして、この最大変位点Ｐ１，Ｐ２を
前記のように３本の針２ａ，２ｂ，２ｃの位置及
び作動タイミングに関連して設定することによ
り、第１図から明らかなようにその最大変位点Ｐ
１，Ｐ２の近傍においては二重環縫ルーパー１の
剣先１ａが布送り方向Ｗと直交する方向に移動さ
れるようになる。そのため、二重環縫ルーパー１
の往動時においては、その剣先１ａが各針２ａ，
２ｂ，２ｃの布送り出し側に所定のほぼ等しい隙
間をおいて通過して、そのルーパー１により上昇
する針２ａ，２ｂ，２ｃに支持された針糸ループ
が正確に捕捉され、又同ルーパー１の復動時にお
いては、針２ａ，２ｂ，２ｃがルーパー１と比較
的近接した状態で下降してその針２ａ，２ｂ，２
ｃによりルーパー１に支持されたルーパー糸が正
確に捕捉され、目飛びのない美しい二重環縫縫目
が形成される。

ちなみに、この実施例では、前記接点Ｔ１，Ｔ
２のなす角度αが150°となり、接点Ｔ１，Ｔ２が
ミシン主軸３の回転軸で230°及び80°の時点とな
るように、前記距離Ｄ２と偏心量Ｄ１との相対関
係が設定されている。

なお、この発明は前記実施例に限定されるもの
ではなく、例えば第一のリンク式運動機構４にお
いて回転駆動体としてのクランク軸１０に代えて
偏心カムを設ける等、この発明の趣旨から逸脱し
ない範囲で各部の構成を任意に変更して具体化す
ることも可能である。

発明の効果 以上詳述したようにこの発明によれば、二重環
縫ルーパーの布送り出し側及び布送り込み側への
最大変位点を複数の針の位置及び作動タイミング
と関連させて任意に設定することができ、そのル
ーバーの剣先と複数の針との隙間の調節を含むル
ーバーと針との出合いの調節を容易に行うことが
できて、目飛びのない美しい二重環縫縫目を形成
することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は二重環縫ルーパーの剣先の作動軌跡を
示す略体平面図、第２図はこの発明を具体化した
ミシンの二重環縫ルーパー機構全体を示す斜視
図、第３図は特に第一のリンク式運動伝達機構を
示す側面図、第４図は第３図の作動状態を示す線
図である。 二重環縫ルーパー……１、針……２ａ，２ｂ，
２ｃ、駆動軸としてのミシン主軸……３、第一の
リンク式運動伝達機構……４、第二のリンク式運
動伝達機構……５、回転駆動体としてのクランク
軸……１０、揺動体……１２、二叉部……１２
ａ、リンク……１４。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 上下に往復動し得かつ布送り方向Ｗと直交す
   る方向に沿つて配列された複数の針２ａ，２ｂ，
   ２ｃと、 それら複数の針２ａ，２ｂ，２ｃと協働して二
   重環縫縫目を形成するため、前記布送り方向Ｗの
   第一の往復運動とそれと直交する方向の第二の往
   復運動とをなし得るように、ミシンフレームのベ
   ツドに支承された二重環縫ルーパー１と、 前記ベツドに回転可能に支承され、かつ前記複
   数の針２ａ，２ｂ，２ｃの往復動と同期して回転
   される駆動軸３と、 その駆動軸３と前記二重環縫ルーパー１との間
   に設けられ、駆動軸３の回転に従つて二重環縫ル
   ーパー１に前記第一の往復運動を付与するための
   第一のリンク式運動伝達機構４と、 前記駆動軸３と二重環縫ルーパー１との間に設
   けられ、駆動軸３の回転に従つて二重環縫ルーパ
   ー１に前記第二の往復運動を付与するための第二
   のリンク式運動伝達機構５と を備えたミシンの二重環縫ルーパー機構におい
   て、 前記第一のリンク式運動伝達機構４が、 前記駆動軸３上にその駆動軸３の回転中心に対
   して偏心して設けられた回転駆動体１０と、 前記ベツドに揺動可能に支承され、かつ一端に
   前記回転駆動体１０を抱擁する二叉部１２ａが形
   成されるとともに、他端がリンク１４を介して前
   記二重環縫ルーパー１に連係された揺動体１２と を含み、 かつ前記二重環縫ルーパー１の往復時における
   布送り出し側への最大変位点Ｐ１を前記複数の針
   ２ａ，２ｂ，２ｃ間のほぼ中央部とするととも
   に、同ルーパー１の復動時における布送り込み側
   への最大変位点Ｐ２を前記複数の針２ａ，２ｂ，
   ２ｃが二重環縫ルーパー１によつて支持されたル
   ーパー糸を捕捉する時期とするように、前記駆動
   軸３の回転中心と揺動体１２の揺動中心との間の
   距離Ｄ２と、前記回転駆動体１０の偏心量Ｄ１と
   の関係を設定したことを特徴とするミシンの二重
   環縫ルーパー機構。 ２ 前記回転駆動体が駆動軸３上に形成されたク
   ランク軸１０からなる特許請求の範囲第１項に記
   載のミシンの二重環縫ルーパー機構。 ３ 前記回転駆動体が駆動軸３上に取付けられた
   偏心カムからなる特許請求の範囲第１項に記載の
   ミシンの二重環縫ルーパー機構。