JPH10227360A - 摺動材料及びピストンリングならびに摺動材料の製造方法 - Google Patents

摺動材料及びピストンリングならびに摺動材料の製造方法

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JPH10227360A
JPH10227360A JP28954892A JP28954892A JPH10227360A JP H10227360 A JPH10227360 A JP H10227360A JP 28954892 A JP28954892 A JP 28954892A JP 28954892 A JP28954892 A JP 28954892A JP H10227360 A JPH10227360 A JP H10227360A
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oxygen
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nitrogen
hardness
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Seiji Hasei
政治 長谷井
Fumio Kiyota
文夫 清田
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐摩耗性及び耐焼付性が優れたチタン、窒素
および酸素からなる皮膜の摺動材料及びピストンリング
基体との密着性を向上させる。 【構成】 チタン、窒素および酸素の組成からなる皮膜
が基体に被覆された摺動材料において、前記皮膜が厚み
方向の実質的に全体で基体表面から皮膜表面に向かって
酸素原子%比が不連続的あるいは連続的に増加している
ことを特徴とする摺動材料。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、機械部品等の摺動部に
硬質皮膜を有する摺動材料およびその摺動材料の製造方
法に関するものであり、更に詳しく述べるならば内燃機
関、動弁部品などの各種機械部品の摺動部に使用される
摺動材料とその製造方法に関するものである。さらにま
た本発明は、摺動面の耐摩耗性、耐焼付性並びに初期な
じみを向上させた内燃機関用ピストンリングに関する。
【0002】これら各種機器の高回転化や高出力化によ
り機械部品などの摺動部は益々過酷な条件下での耐摩耗
性、耐焼付性等の摺動特性の改善が期待されており、本
発明はかかる要請に応えるものである。
【0003】
【従来の技術】従来より主に鉄系摺動材料の摺動特性改
善策として行われている表面処理として、硬質クロムめ
っきによる耐摩耗性の改善、窒化またはモリブデン溶射
による耐焼付性の向上などが挙げられる。しかしながら
これらの方法では摺動材料に必要な十分な摺動特性が得
られないので、最近物理的蒸着(PVD)法あるいは化
学的気相析出(CVD)法によりTi−N系硬質皮膜を
作製する方法が検討されている。
【0004】ピストンリングは、主に内燃機関の燃焼室
の気密化、シリンダーライナー表面に形成される潤滑用
油膜の膜厚制御、および燃料が燃焼することによって加
熱されたピストンの熱をシリンダーライナーへ伝えて冷
却する等の働きをする。このような働きをするにはピス
トンリングは、それ自体が自己の持つ張力でシリンダー
ライナーに張り出して密着しなければならないので、摺
動面には必然的に大きな面圧が発生し、したがって摩耗
や焼付の発生しやすい状況に曝されて摺動している。ま
た、燃焼工程中に生成する硬い燃焼生成物がピストンリ
ングとシリンダーライナー間の摺動面に達し、アブレッ
シブな摩耗を発生させ、さらにガソリン中に含まれる硫
黄や窒素分が酸化し、硝酸や硫酸になりエンジンオイル
中に混入し腐食摩耗を促進するようになるので、ピスト
ンリングはこのような点でも摩耗や焼付きが発生しやす
い状況に曝されて摺動している。
【0005】上記のような摺動条件から起こる摩耗や焼
付きの問題を解消するため、ピストンリングはその摺動
面に何らかの表面処理が施されている。従来より行われ
てきた表面処理方法の代表的なものとしては、硬質クロ
ムめっきによる耐摩耗性の改善、窒化またはモリブデン
溶射による耐焼付性の向上が挙げられる。しかしなが
ら、これらの方法で処理されたピストンリングの摺動特
性は現在の要求水準に対しては不十分であるので、最近
イオンプレーティング法によりCr−N系、Ti−N系
の化学的に比較的安定な化合物をピストンリングに硬質
皮膜として施すことが検討されている。
【0006】しかしながらCr−N系皮膜は硬さが比較
的低いため摩耗が起こりやすく、いまだ十分な摺動特性
は得られていない。さらに皮膜硬さが高く、摺動特性に
優れた皮膜のとしてTi−N系イオンプレーティング皮
膜をピストンリングに施すことが提案されている(特公
平4−19412号参照)。
【0007】上述のようにTi−N系皮膜をPVDによ
り摺動部材に施すことあるいはイオンプレーティングに
よりピストンリングに施すことが提案されているが、T
i−N系皮膜は切削工具として使用実績はあるものの、
機械部品等の摺動部材あるいはピストンリングに利用す
る場合には皮膜硬さが高すぎて相手材を摩耗させてしま
う欠点がある。
【0008】また、Ti−N系皮膜での摩耗により粗く
なった相手材表面が今度はTi−N系皮膜をアブレーシ
ブ摩耗させ、両者の間の摺動条件を悪化させて遂には焼
き付きが発生しやすくなる。また皮膜硬さが高すぎるた
めに、Ti−N系皮膜と接する相手材との「初期なじ
み」が悪い欠点がある。ここで「初期なじみ」とは、摺
動部材の表面において摺動開始後の短時間内に摺動接触
する表面が微小かつ平滑に摩耗することにより接触面圧
を低減させて、潤滑油膜切れを起こし難くし、その結果
摩耗や焼付の発生を防ぐことである。
【0009】Ti−N系皮膜は初期なじみが悪いことに
より、摺動初期において摩耗や焼き付き現象を起こし易
いという摺動特性の問題点に加えてTi−N系皮膜には
製造上の問題がある。一般に硬質の薄い皮膜を被覆した
後には、初期なじみを良好にしかつ相手材の過度の摩耗
を招かないようにポリシング等で皮膜の摺動面を平滑化
する必要があるが、皮膜硬さが高いために平滑化が困難
である。したがってこのポリシング加工には長時間を要
し、しかも一様な仕上取り代にならず、膜厚が不均一に
なり部分的には皮膜を無くしてしまい、不良品となる率
が高い。
【0010】上記した摺動上及び製造上の問題点の対策
として本出願人は特願平4−215754号にて酸素を
導入したTi−N−O系皮膜を提案した。このTi−N
−O系皮膜は、Ti−N系皮膜よりも皮膜硬さが低いの
で相手材を摩耗させることが少なく、初期なじみが良好
であり、しかも基体に被覆した時に耐摩耗性および耐焼
付性が良好な摺動材料が得られる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これら耐摩
耗性及び耐焼付性がさらに優れたチタン、窒素および酸
素からなる皮膜であって、皮膜と基体との密着性を向上
させた皮膜で被覆した摺動材料およびその製造方法を提
供することを目的とする。また本発明は、耐摩耗性及び
耐焼付性がさらに優れたチタン、窒素および酸素からな
るイオンプレーティング皮膜であって、皮膜と基体との
密着性を向上させた皮膜で被覆したピストンリングを提
供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、機械部品等の
摺動部に、耐摩耗性および耐焼付性等の摺動特性に優れ
且つ初期なじみが良好であるTi−N−O系皮膜を被覆
するが、基体表面から皮膜表面に向かって皮膜組成を変
化させることにより、上記課題を解決するものである。
すなわち、本発明に係わる摺動材料は、基体表面に被覆
されたチタン、窒素および酸素からなるTi−N−O系
皮膜の厚み方向の実質的に全体において酸素原子%比が
基体表面から皮膜表面に向かって不連続的にあるいは連
続的に増していることを特徴とする。
【0013】さらに、本発明は、チタン、窒素および酸
素の組成からなるイオンプレーティング皮膜が基体に被
覆されたピストンリングにおいて、前記イオンプレーテ
ィング皮膜が厚み方向の実質的に全体で基体表面から皮
膜表面に向かって酸素原子%比が不連続的あるいは連続
的に増加していることを特徴とするピストンリングを提
供する。
【0014】摺動材料あるいはピストンリングの基体と
しては、鉄系、アルミニウム系、チタン系等の材料を使
用することができる。皮膜組成を上述のように変化させ
た皮膜(以下「傾斜皮膜」と言う)は厚みが1〜50μ
mの範囲内であることが好ましい。傾斜皮膜においては
基体側の酸素が少なく、好ましくは0%であり、皮膜表
面側の酸素が多いことが重要であり、酸素濃度は不連続
的あるいは連続的に増大(例えば階段状、鋸刃状変化)
していても支障はない。また傾斜皮膜は厚みの全体で上
記の酸素濃度変化を示していることが好ましいが、かか
る変化が厚み方向で実質的に全部で起こっていると低酸
素濃度のTi−N−Oと高酸素濃度のTi−N−Oのそ
れぞれの物性による摺動性能や密着性が得られるもので
ある。
【0015】摺動部材の傾斜皮膜は、蒸着、スパッタ、
イオンプレーティングなどにより、チタンの蒸気と窒素
および酸素を混合した気相と基体を接触させることによ
り皮膜を摺動部材の基体に被覆するPVD法において、
成膜初期から成膜終了に至る期間で導入する酸素量を不
連続的あるいは連続的に増加させる方法により形成する
ことができる。イオンプレーティングは陰極イオンプレ
ーティングが好ましいが、これに限定されず改訂5版金
属便覧第903頁に例示されているような各種方式を使
用することができる。
【0016】
【作用】チタンは窒素及び酸素と安定した硬質物質を作
る。特に窒素はチタンの硬度を著しく高める。その量が
少な過ぎても多過ぎても皮膜の硬さが低下し、皮膜の耐
摩耗性が低下するので、ビッカース硬さが1000未満
とならないように、窒素含有量を定めることが好まし
い。酸素は窒素と共存すると、皮膜の硬度を下げ、ポリ
シングを容易にしかつ相手材の摩耗や初期なじみなどの
摺動特性を改良しさらに皮膜色調を暗色(非金属色)に
する。酸素の量は微量でも摺動特性向上に有効ではある
が少な過ぎると色調変化の作用が十分に発揮されないか
ら、色調の変化が検出できるように酸素を添加する必要
がある。一方酸素の量が多過ぎると皮膜の硬さが低くな
りすぎるので、ビッカース硬さで1000以下とならな
いように酸素量を定めることが好ましい。また皮膜の硬
さがビッカース硬さで2000を超えると相手材の摩耗
が多くなるので、酸素添加量はこの硬さ以下となるよう
にすることが好ましい。上記したチタン、窒素および酸
素の比率は原子%比でTi:N:O=l:0.9〜0.
3:0.3〜1.0の範囲であることが好ましい。
【0017】以下傾斜皮膜における酸素量変化の作用を
より具体的に説明する。図1に、窒素ガス流量に対する
酸素ガス流量の比を0から0.3まで0.03ずつ十段
階に変化させて成膜したTi−N−O系傾斜皮膜のEP
MAによるライン分析結果を示す。図の右部にsubと
示された位置が基体表面を示すが、基体表面から皮膜表
面に向かって酸素量が増加していることが確認された。
また、酸素量の増加にともなってチタンおよび窒素の相
対量は減少していることも示されている。この図からT
i−N−O系傾斜皮膜における基体表面から皮膜表面に
向かう酸素原子%比の増加とこれに伴う皮膜組成の変化
の状況が明らかである。
【0018】表1に図1で示した皮膜の表面粗さおよび
皮膜硬さを示す。比較のため、窒素ガス流量に対する酸
素ガス流量の比を、Ti−N−O系傾斜皮膜の最表面と
同等にし、成膜中の流量比を変化させず作製したTi−
N−O系皮膜についても示した。
【0019】 表1 ガス流量比 表面粗さ μm 皮膜硬さ Lc N2:O2 Ra Rmax Rz HmV0.050 N Ti-N-O系皮膜 1 : 0.3 0.26 3.71 2.66 1414 32 Ti-N-O系傾斜皮膜 1 : 0 → 0.3 0.35 5.80 3.82 1701 60
【0020】Ti−N−O系傾斜皮膜は、Ti−N−O
系皮膜より表面粗さが粗くなっている。また、Ti−N
−O系傾斜皮膜は、Ti−N−O系皮膜よりも皮膜硬さ
は高くなっている。この皮膜硬さの向上については、T
i−N−O化合物は酸素原子%比が大きくなるにしたが
って硬さが低下することに起因すると考える。すなわ
ち、Ti−N−O系傾斜皮膜は、最表面層ではTi−N
−O系皮膜と同程度の皮膜硬さであっても、皮膜内部に
向かうにしたがって酸素原子%比が小さくなることから
硬さが高くなり、皮膜全体が荷重に対して変形する量と
して測定された皮膜硬さはTi−N−O系皮膜よりも高
くなって現れていると思われる。また表中のLcは、皮
膜と基体との密着性を評価する手法の一つであるスクラ
ッチ試験より求めた臨界応力荷重(ニュートン単位)を
示す。Ti−N−O系傾斜皮膜のLc値は、Ti−N−
O系皮膜のそれの約2倍という極めて大きい値を示して
おり、皮膜中の酸素原子%比を基体表面から皮膜表面に
向かって段階的に増加させることにより、基体と皮膜と
の密着性が著しく向上している。
【0021】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳しく説明す
る。 実施例1 本実施例で使用した皮膜形成の基体は高クロム鋼(JI
S規格SUJ−2)である。基体は予めフロン液中で超
音波洗浄を行い、以下に説明する手順で鏡面仕上げされ
た基体表面に陰極アークプラズマ式イオンプレーティン
グにより、基体表面から皮膜表面に向かって酸素原子%
比を段階的に増加させて、皮膜組成を変化させたTi−
N−O系傾斜皮膜を形成した。
【0022】基体を超音波洗浄した後、イオンプレーテ
ィング装置の真空容器(チャンバ)内に取り付け、続い
てチャンバ内圧力が1.3×10-3Pa(パスカル)と
なるまで真空引きを行った。この真空度が達成された時
点から、チャンバ内に内蔵されているヒーターにより基
体を300〜600℃まで加熱して、基体表面に付着あ
るいは吸着しているガス成分を放出させ、その後200
℃まで冷却した。チャンバ内圧力が4×10-3Pa以下
となった時点で、陰極としたTiタ−ゲットの表面でア
ーク放電を発生させ、Tiの大部分がイオン化された状
態でターゲット表面から飛出させた。この時基体を取り
付けた治具には−700〜−1000Vのバイアス電圧
を印加しておき、タ−ゲットから飛出しイオン化したT
iを基体と治具の表面に吸引し、さらにこれらのイオン
を高速で被処理面に衝突させた。
【0023】このようなイオン化した金属の衝突により
被処理面の酸化物などを削るいわゆるスパッタクリーニ
ングにより表面の活性化処理を行った。また、アーク放
電発生と同時に少量の窒素ガスをチャンバ内に導入する
ことにより一部のイオン化したTiは、窒素ガスと結合
し基体表面にTi−N系皮膜となって析出される。その
後、さらに窒素ガス流量を増やし1.3Pa程度の圧力
とし、−10〜−100Vのバイアス電圧を印加して基
体表面にTi−N系皮膜を形成させた後、5分毎に酸素
導入量を一定量ずつ増加させ、皮膜中の酸素原子%比を
基体表面から皮膜表面に向かって増加させたTi−N−
O系傾斜皮膜を作製した。所定の酸素原子%比の膜とな
るまで成膜後、チャンバ内温度が150℃以下になるま
で冷却してから、膜被覆された基体をチャンバ外に取り
出した。比較のため従来より行われてきた酸素導入量を
変化させないTi−N−O系皮膜についても同様に作製
した。
【0024】これらの供試材を用いてねずみ鋳鉄(FC
25)を相手材としてピンオンディスク型摩擦試験機に
よりスカッフ試験を行い、各皮膜の初期なじみ性及び耐
焼付性を評価した。スカッフ試験条件は以下の通りであ
った。 潤滑方法:モーターオイル#30、油温80℃、油量4
cc/sec 摩擦速度:8m/sec 接触荷重:初期2MPaから1MPaごとに焼付(スカ
ッフ)に至るまで増加させた。 摩擦時間:各荷重で180sec保持
【0025】上記方法により得られた結果を図2に示
す。酸素導入しないTi−N系皮膜では27MPa程度
のスカッフ値を示したが、Ti−N−O系傾斜皮膜では
32MPaのスカッフ値を示し、傾斜皮膜では耐焼付性
は向上することがわかった。本実施例では酸素原子比%
を変化させたことによりTi−N−O系傾斜皮膜は基体
との密着性が向上し、その剥離に起因する焼き付きが起
こらなくなったものと考えられる。
【0026】またピン−ドラム式摩耗試験機を用い、ド
ラムをねずみ鋳鉄(FC25)としまたピンをイオンプ
レーティング皮膜を被覆した上記供試材として3回摩耗
試験を行った。摩耗試験条件は以下の通りであった。 潤滑方法:モーターオイル#30、油温80℃、油量8
cc/sec ドラム回転速度:5m/sec 接触荷重:1.5MPa 試験時間:30ksec
【0027】皮膜を被覆したピンの摩耗量とドラムの摩
耗量をそれぞれ摩耗したピン接触面のドラム回転方向の
幅、ドラムの摩耗深さより求め図3に示す。図3に示さ
れたピンの摩耗量は、Ti−N−O系皮膜に対してTi
−N−O系傾斜皮膜は摩耗量が少なく、耐摩耗性が優れ
ていることがわかる。一方、ドラムの摩耗量はTi−N
−O系傾斜皮膜の場合には少ない。
【0028】実施例2 呼び径×幅×厚さ=Φ86mm×2mm×3mmのクロ
ム系ステンレス鋼をピストンリング基体として使用し、
実施例1と同じ方法により傾斜皮膜及びTi−N−O系
皮膜(比較例)を基体上に成膜し、実施例1と同様のピ
ンオンディスク式焼き付き試験及びピン−ドラム式摩耗
試験を行った。それぞれの試験結果を図4及び図5に示
す。
【0029】図4より、酸素導入しないTi−N−O系
皮膜では25MPa程度のスカッフ値を示したが、Ti
−N−O系傾斜皮膜では32MPaのスカッフ値を示
し、傾斜皮膜では耐焼付性は向上することがわかった。
また、図5に示されたピンの摩耗量は、Ti−N−O系
皮膜に対してTi−N−O系傾斜皮膜は摩耗量が少な
く、耐摩耗性が優れていることがわかる。一方、ドラム
の摩耗量はTi−N−O系傾斜皮膜の場合には少なくな
っており、Ti−N−O系傾斜皮膜は自己の摩耗を抑え
ると同時にシリンダーライナーを摩耗させにくい皮膜で
あることがわかった。以上のスカッフ試験及び摩耗試験
からTi−N−O系傾斜皮膜はTi−N−O系皮膜より
も耐摩耗性及び耐焼付性に優れ、シリンダーライナーの
摩耗を抑えると同時になじみ性が良好であることが分か
った。
【0030】
【発明の効果】以上のように、摺動材料又はピストンリ
ングの摺動面に被覆されるTi−N−O系皮膜におい
て、基体表面から皮膜表面に向かって酸素原子%比を不
連続的あるいは連続的に増加させることにより、酸素原
子%比を変化させないTi−N−O系皮膜よりも基体と
の密着性に優れ、耐摩耗性、かつ相手材を摩耗させない
性質および耐焼付性等の摺動特性に優れた摺動材料又は
ピストンリングが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 Ti−N−O系傾斜皮膜のEPMA分析結果
を示す図である。
【図2】 摺動部材の焼付試験の結果を示す図である。
【図3】 摺動部材の摩耗試験結果を示す図である。
【図4】 ピストンリングの焼付試験の結果を示す図で
ある。
【図5】 ピストンリングの摩耗試験結果を示す図であ
る。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 チタン、窒素および酸素の組成からなる
    皮膜が基体に被覆された摺動材料において、前記皮膜が
    厚み方向の実質的に全体で基体表面から皮膜表面に向か
    って酸素原子%比が不連続的あるいは連続的に増加して
    いることを特徴とする摺動材料。
  2. 【請求項2】 基体に被覆された前記チタン、窒素およ
    び酸素の組成からなる皮膜のビッカース硬さが1000
    以上2000以下であることを特徴とする請求項1記載
    の摺動材料。
  3. 【請求項3】 チタン、窒素および酸素の組成からなる
    イオンプレーティング皮膜が基体に被覆されたピストン
    リングにおいて、前記イオンプレーティング皮膜が厚み
    方向の実質的に全体で基体表面から皮膜表面に向かって
    酸素原子%比が不連続的あるいは連続的に増加している
    ことを特徴とするピストンリング。
  4. 【請求項4】 基体に被覆された前記チタン、窒素およ
    び酸素の組成からなるイオンプレーティング皮膜のビッ
    カース硬さが1000以上2000以下であることを特
    徴とする請求項3記載のピストンリング。
  5. 【請求項5】 チタンの蒸気と窒素および酸素を混合し
    た気相と基体を接触させることにより皮膜を基体に被覆
    するPVD法において、成膜初期から成膜終了に至る期
    間で導入する酸素量を不連続的あるいは連続的に増加さ
    せることを特徴とする請求項1または2記載の摺動材料
    の製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004306216A (ja) * 2003-04-09 2004-11-04 Hitachi Tool Engineering Ltd 被覆超硬エンドミル
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JP2013167209A (ja) * 2012-02-16 2013-08-29 Hitachi Automotive Systems Ltd 内燃機関のピストン及びその製造方法

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