JPH0727228A - 摺動部材およびCrN皮膜の被覆方法 - Google Patents
摺動部材およびCrN皮膜の被覆方法Info
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- JPH0727228A JPH0727228A JP19279593A JP19279593A JPH0727228A JP H0727228 A JPH0727228 A JP H0727228A JP 19279593 A JP19279593 A JP 19279593A JP 19279593 A JP19279593 A JP 19279593A JP H0727228 A JPH0727228 A JP H0727228A
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Abstract
(57)【要約】
【目的】 摺動特性に優れるとともに、耐剥離性に優れ
た摺動部材およびCrN皮膜の被覆方法を提供する。 【構成】 ピストンリング1の外周面にCrN皮膜2を
被覆する。CrN皮膜2はビッカース硬度で800〜1
400の硬さを有し、且つ、大きさ1μm以上のポアが
5〜15%分散した組織を有している。このCrN皮膜
2は、金属Crを蒸発源とし、窒素圧力が10〜30m
Torr、バイアス電圧が0〜30Vでアークイオンプ
レーティングすることによって被覆できる。 【効果】 皮膜中に存在するポアが皮膜に作用する応力
を局所に限定し、緩和することにより、クラックが成長
・伝播せず、皮膜内での耐剥離性が向上する。
た摺動部材およびCrN皮膜の被覆方法を提供する。 【構成】 ピストンリング1の外周面にCrN皮膜2を
被覆する。CrN皮膜2はビッカース硬度で800〜1
400の硬さを有し、且つ、大きさ1μm以上のポアが
5〜15%分散した組織を有している。このCrN皮膜
2は、金属Crを蒸発源とし、窒素圧力が10〜30m
Torr、バイアス電圧が0〜30Vでアークイオンプ
レーティングすることによって被覆できる。 【効果】 皮膜中に存在するポアが皮膜に作用する応力
を局所に限定し、緩和することにより、クラックが成長
・伝播せず、皮膜内での耐剥離性が向上する。
Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は内燃機関に使用されるピ
ストンリング等の摺動部材に関する。
ストンリング等の摺動部材に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ピストンリングの摺動面の表面処
理としては、硬質クロムめっきや表面の窒化処理が行わ
れてきた。しかしながら、近年のエンジンの高出力化、
高性能化に伴い、ピストンリングの使用される条件はま
すます苛酷になってきており、いっそう高い耐摩耗性と
耐焼き付き性が要求されてきている。このような要求に
は硬質クロムめっきや表面窒化といった従来の表面処理
では対処しきれなくなりつつある。
理としては、硬質クロムめっきや表面の窒化処理が行わ
れてきた。しかしながら、近年のエンジンの高出力化、
高性能化に伴い、ピストンリングの使用される条件はま
すます苛酷になってきており、いっそう高い耐摩耗性と
耐焼き付き性が要求されてきている。このような要求に
は硬質クロムめっきや表面窒化といった従来の表面処理
では対処しきれなくなりつつある。
【0003】このような状況に対処するため、物理的蒸
着(PVD)法を利用してピストンリングの外周面にT
iNやクロム窒化物などの硬質皮膜を形成する技術が提
案されている(例えば特公平1−52471号)。特に
クロム窒化物の皮膜はTiNに比べて厚い皮膜を実現で
きることから、近年実用化の検討が盛んである。
着(PVD)法を利用してピストンリングの外周面にT
iNやクロム窒化物などの硬質皮膜を形成する技術が提
案されている(例えば特公平1−52471号)。特に
クロム窒化物の皮膜はTiNに比べて厚い皮膜を実現で
きることから、近年実用化の検討が盛んである。
【0004】ここで「クロム窒化物」とは、クロムと窒
素の化合物(CrN、Cr2 N)、ならびにCrN、C
r2 N、および金属Crにおける共存物質(Cr+Cr
2 N、Cr2 N+CrN)を指しており、今後Cr−N
と表記することもある。クロム窒化物(Cr−N)をP
VD法で形成する場合は、通常はCrを蒸発させて基板
上に皮膜として堆積させながら、周囲を窒素ガスの雰囲
気にすることで実現される。上記の各種皮膜組成は皮膜
形成条件(主として窒素ガスの圧力)の制御により調整
可能である。Cr−N皮膜の硬さも処理条件により、ビ
ッカース硬さ1000〜2200の範囲で各種の値が報
告されているが、通常健全な皮膜の硬さとしてはビッカ
ース硬度で1500〜2000の範囲が一般的である。
素の化合物(CrN、Cr2 N)、ならびにCrN、C
r2 N、および金属Crにおける共存物質(Cr+Cr
2 N、Cr2 N+CrN)を指しており、今後Cr−N
と表記することもある。クロム窒化物(Cr−N)をP
VD法で形成する場合は、通常はCrを蒸発させて基板
上に皮膜として堆積させながら、周囲を窒素ガスの雰囲
気にすることで実現される。上記の各種皮膜組成は皮膜
形成条件(主として窒素ガスの圧力)の制御により調整
可能である。Cr−N皮膜の硬さも処理条件により、ビ
ッカース硬さ1000〜2200の範囲で各種の値が報
告されているが、通常健全な皮膜の硬さとしてはビッカ
ース硬度で1500〜2000の範囲が一般的である。
【0005】ピストンリングの被覆用には、Cr−N皮
膜としてはCrN、Cr2 Nに加え、Cr+Cr2 N、
Cr2 N+CrN等の皮膜が用いられており、適用事例
にそれぞれ効果が報告されている。例えば、特開平1−
156461号にはCr2 N皮膜を10〜50μmの厚
みでピストンリングに形成する方法が開示され、ビッカ
ース硬度で1500〜2000の硬さを有する皮膜によ
り優れた耐久性が実現される旨が示されている。また、
特開平1−159449号にはCr2 NとCrNを積層
した皮膜を形成したピストンリングが開示され、ビッカ
ース硬度で1600〜2000の硬さを有する皮膜によ
り優れた耐久性の実現が報告された。実開平4−886
1号には摺動内周面に硬質粒子が分散して埋設されたシ
リンダとの組み合わせにおいて、CrNをその範囲に含
むCr(Cx,Ny)なる皮膜を形成したピストンリン
グが開示され、ビッカース硬度で1500〜2600の
範囲の皮膜により、前記シリンダとの組み合わせにおい
て優れた総合性能を発揮するとされる。また、ビッカー
ス硬度で1600〜1890の硬さの金属クロムと窒化
クロムの複合皮膜を形成したピストンリングが特開昭6
2−120471号に開示されている。
膜としてはCrN、Cr2 Nに加え、Cr+Cr2 N、
Cr2 N+CrN等の皮膜が用いられており、適用事例
にそれぞれ効果が報告されている。例えば、特開平1−
156461号にはCr2 N皮膜を10〜50μmの厚
みでピストンリングに形成する方法が開示され、ビッカ
ース硬度で1500〜2000の硬さを有する皮膜によ
り優れた耐久性が実現される旨が示されている。また、
特開平1−159449号にはCr2 NとCrNを積層
した皮膜を形成したピストンリングが開示され、ビッカ
ース硬度で1600〜2000の硬さを有する皮膜によ
り優れた耐久性の実現が報告された。実開平4−886
1号には摺動内周面に硬質粒子が分散して埋設されたシ
リンダとの組み合わせにおいて、CrNをその範囲に含
むCr(Cx,Ny)なる皮膜を形成したピストンリン
グが開示され、ビッカース硬度で1500〜2600の
範囲の皮膜により、前記シリンダとの組み合わせにおい
て優れた総合性能を発揮するとされる。また、ビッカー
ス硬度で1600〜1890の硬さの金属クロムと窒化
クロムの複合皮膜を形成したピストンリングが特開昭6
2−120471号に開示されている。
【0006】以上の事例を検討すると、高硬度(ビッカ
ース硬度で1500〜2000程度)のCr−N皮膜の
被覆により、ピストンリングは高い耐摩耗性と耐焼き付
き性を実現でき、苛酷な運転状態にある内燃機関用に適
用されていることがわかる。
ース硬度で1500〜2000程度)のCr−N皮膜の
被覆により、ピストンリングは高い耐摩耗性と耐焼き付
き性を実現でき、苛酷な運転状態にある内燃機関用に適
用されていることがわかる。
【0007】しかしながら、このように優れた特性を有
するCr−N皮膜においても、適用する内燃機関によっ
てはさらに苛酷な状況にさらされ、内燃機関の運転中に
ピストンリングの外周面を被覆するCr−N皮膜が皮膜
内で剥離を引き起こして脱落し、外周面に穴状の欠陥が
多数点在する状況になるという問題を生じることがあっ
た。かかる内燃機関においては、耐摩耗性に関する要求
もきびしくCr−Nのような耐摩耗性の優れた皮膜の被
覆は必須であり、耐摩耗性を犠牲にすることなくかかる
問題の発生しない皮膜によって被覆されたピストンリン
グの実現が要求されている。
するCr−N皮膜においても、適用する内燃機関によっ
てはさらに苛酷な状況にさらされ、内燃機関の運転中に
ピストンリングの外周面を被覆するCr−N皮膜が皮膜
内で剥離を引き起こして脱落し、外周面に穴状の欠陥が
多数点在する状況になるという問題を生じることがあっ
た。かかる内燃機関においては、耐摩耗性に関する要求
もきびしくCr−Nのような耐摩耗性の優れた皮膜の被
覆は必須であり、耐摩耗性を犠牲にすることなくかかる
問題の発生しない皮膜によって被覆されたピストンリン
グの実現が要求されている。
【0008】本発明の目的は、摺動特性に優れるととも
に、耐剥離性に優れた摺動部材およびCrN皮膜の被覆
方法を提供することにある。
に、耐剥離性に優れた摺動部材およびCrN皮膜の被覆
方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の摺動部材の構成
は、CrN皮膜が少なくとも摺動面に被覆されている摺
動部材において、前記CrN皮膜がビッカース硬度で8
00〜1400の硬さを有しており、且つ、大きさ1μ
m以上のポアが5〜15%分散した組織を有しているこ
とを特徴とする。
は、CrN皮膜が少なくとも摺動面に被覆されている摺
動部材において、前記CrN皮膜がビッカース硬度で8
00〜1400の硬さを有しており、且つ、大きさ1μ
m以上のポアが5〜15%分散した組織を有しているこ
とを特徴とする。
【0010】また、本発明の上記摺動部材におけるCr
N皮膜の被覆方法は、金属Crを蒸発源とし、窒素圧力
が10〜30mTorr、バイアス電圧が0〜30Vで
イオンプレーティングすることを特徴とする。
N皮膜の被覆方法は、金属Crを蒸発源とし、窒素圧力
が10〜30mTorr、バイアス電圧が0〜30Vで
イオンプレーティングすることを特徴とする。
【0011】
【作用】上記摺動部材は苛酷な使用状況にある内燃機関
に適用されても、皮膜内での剥離現象が発生せず、しか
も優れた耐摩耗性を示す。
に適用されても、皮膜内での剥離現象が発生せず、しか
も優れた耐摩耗性を示す。
【0012】このことは、発明者が行った実験で判明し
た以下の事実に基づいている。すなち、皮膜内での剥離
現象について説明すると、第1に、Cr−N皮膜の中で
はCr2 N組成を多く含むものは剥離現象が発生しやす
く、CrN組成ができるだけ多い皮膜が望ましい。
た以下の事実に基づいている。すなち、皮膜内での剥離
現象について説明すると、第1に、Cr−N皮膜の中で
はCr2 N組成を多く含むものは剥離現象が発生しやす
く、CrN組成ができるだけ多い皮膜が望ましい。
【0013】さらに、同じCrN皮膜においてもその皮
膜硬さに関係して皮膜内の剥離現象は相違し、その硬さ
がビッカース硬度で1400以下において優れた耐剥離
性が得られた。この硬さが低い皮膜はポア(空孔)を含
んだ組織を有しており、このポアはイオンプレーティン
グ時において比較的窒素ガス圧力が高く、バイアス電圧
が低い時に生じる。この条件によると、CrN結晶が特
定方位に成長しやすく、このため内部にポアを残したま
ま皮膜が成長する傾向がある。皮膜中に存在するポア
は、皮膜に作用する応力を局所に限定し、緻密な皮膜の
場合に比べて緩和する作用があると考えられる。このた
め、クラックが成長・伝播せず、皮膜内での耐剥離性が
向上すると考えられる。
膜硬さに関係して皮膜内の剥離現象は相違し、その硬さ
がビッカース硬度で1400以下において優れた耐剥離
性が得られた。この硬さが低い皮膜はポア(空孔)を含
んだ組織を有しており、このポアはイオンプレーティン
グ時において比較的窒素ガス圧力が高く、バイアス電圧
が低い時に生じる。この条件によると、CrN結晶が特
定方位に成長しやすく、このため内部にポアを残したま
ま皮膜が成長する傾向がある。皮膜中に存在するポア
は、皮膜に作用する応力を局所に限定し、緻密な皮膜の
場合に比べて緩和する作用があると考えられる。このた
め、クラックが成長・伝播せず、皮膜内での耐剥離性が
向上すると考えられる。
【0014】一方で、皮膜の耐久性に関していうと、皮
膜をCrNとした場合、意外なことであるがその硬さが
ビッカース硬度で800〜1700の範囲においてほと
んど耐摩耗性に差がなかった。
膜をCrNとした場合、意外なことであるがその硬さが
ビッカース硬度で800〜1700の範囲においてほと
んど耐摩耗性に差がなかった。
【0015】以上の結果から、皮膜硬さはビッカース硬
度で800〜1400が好ましいことがわかる。そし
て、上記硬さの皮膜は大きさ1μm以上のポアが5〜1
5%分散した組織を有している。CrN皮膜中のポアは
皮膜表面をラッピングした後、観察可能である。
度で800〜1400が好ましいことがわかる。そし
て、上記硬さの皮膜は大きさ1μm以上のポアが5〜1
5%分散した組織を有している。CrN皮膜中のポアは
皮膜表面をラッピングした後、観察可能である。
【0016】図8は、鋼製ピストンリングの表面を窒化
し、最表面の窒素濃度の高い化合物層を除去した後、C
rN皮膜をイオンプレーティングによって被覆した試料
の破面の600倍のSEM写真である。図8の(a)の
試料の作製条件はバイアス電圧3V、窒素ガス圧力20
mTorrで、CrN皮膜中にポアが存在し硬度が低い
本発明のものであり、図8の(b)の試料の作製条件は
バイアス電圧30V、窒素ガス圧力15mTorrで、
CrN皮膜は緻密、健全であり、従来のものである。試
料(a)および(b)のCrN皮膜の厚さはそれぞれ4
2μmであった。
し、最表面の窒素濃度の高い化合物層を除去した後、C
rN皮膜をイオンプレーティングによって被覆した試料
の破面の600倍のSEM写真である。図8の(a)の
試料の作製条件はバイアス電圧3V、窒素ガス圧力20
mTorrで、CrN皮膜中にポアが存在し硬度が低い
本発明のものであり、図8の(b)の試料の作製条件は
バイアス電圧30V、窒素ガス圧力15mTorrで、
CrN皮膜は緻密、健全であり、従来のものである。試
料(a)および(b)のCrN皮膜の厚さはそれぞれ4
2μmであった。
【0017】
【実施例】図1は本発明の一実施例であるピストンリン
グの一部分を示す縦断面図である。本実施例におけるピ
ストンリング1は鋼、鋳鉄、チタンあるいはチタン合金
等で形成されている矩形断面リングである。ピストンリ
ング1の外周面にはアークイオンプレーティングによっ
てCrN皮膜2が被覆されている。CrN皮膜2はビッ
カース硬度で800〜1400の硬さを有しており、且
つ、大きさ1μm以上のポアが5〜15%分散した組織
を有している。CrN皮膜2の膜厚は5〜100μmの
範囲が適当であり、10〜50μmの範囲が特に好まし
い。
グの一部分を示す縦断面図である。本実施例におけるピ
ストンリング1は鋼、鋳鉄、チタンあるいはチタン合金
等で形成されている矩形断面リングである。ピストンリ
ング1の外周面にはアークイオンプレーティングによっ
てCrN皮膜2が被覆されている。CrN皮膜2はビッ
カース硬度で800〜1400の硬さを有しており、且
つ、大きさ1μm以上のポアが5〜15%分散した組織
を有している。CrN皮膜2の膜厚は5〜100μmの
範囲が適当であり、10〜50μmの範囲が特に好まし
い。
【0018】アークイオンプレーティング法(真空アー
ク蒸着法)は真空アーク放電を利用して、蒸発源(陰
極)の皮膜材料を蒸気化、イオン化して、被コーティン
グ物の表面に皮膜を形成するものである。このアークイ
オンプレーティング法は蒸気のイオン化率が高く、緻密
で密着性に優れた皮膜が得られる特長がある。
ク蒸着法)は真空アーク放電を利用して、蒸発源(陰
極)の皮膜材料を蒸気化、イオン化して、被コーティン
グ物の表面に皮膜を形成するものである。このアークイ
オンプレーティング法は蒸気のイオン化率が高く、緻密
で密着性に優れた皮膜が得られる特長がある。
【0019】図2に基づいて、アークイオンプレーティ
ング装置の基本的構成を説明する。真空チャンバ10内
に、皮膜を形成する材料からなる陰極(蒸発源)11
と、皮膜が形成される被コーティング物12が設置され
ている。陰極11は真空チャンバ10の外側に設置され
ているアーク供給源13に接続されており、アーク供給
源13には図示外の陽極が接続されている。被コーティ
ング物12にはバイアス電圧供給源14によって負のバ
イアス電圧が印加されるように構成されている。真空チ
ャンバ10にはプロセスガスの供給源に接続されている
ガス入口15と、ポンプに接続されている排気口16と
が設けられている。
ング装置の基本的構成を説明する。真空チャンバ10内
に、皮膜を形成する材料からなる陰極(蒸発源)11
と、皮膜が形成される被コーティング物12が設置され
ている。陰極11は真空チャンバ10の外側に設置され
ているアーク供給源13に接続されており、アーク供給
源13には図示外の陽極が接続されている。被コーティ
ング物12にはバイアス電圧供給源14によって負のバ
イアス電圧が印加されるように構成されている。真空チ
ャンバ10にはプロセスガスの供給源に接続されている
ガス入口15と、ポンプに接続されている排気口16と
が設けられている。
【0020】したがって、真空チャンバ10内におい
て、陰極11と陽極との間でアーク放電が起こされる
と、アークは陰極11の表面上にアークスポットを形成
し、陰極11の表面上をランダムにかつ高速に移動す
る。アークスポットに集中するアーク電流(数十〜数百
A)のエネルギーにより、陰極11の材料は瞬時に蒸発
すると同時に金属イオン17となり、真空中に飛び出
す。一方、バイアス電圧が被コーティング物12に印加
されることにより、金属イオン17が加速され、反応ガ
ス粒子18とともに被コーティング物12の表面に密着
し、緻密な皮膜が生成される。
て、陰極11と陽極との間でアーク放電が起こされる
と、アークは陰極11の表面上にアークスポットを形成
し、陰極11の表面上をランダムにかつ高速に移動す
る。アークスポットに集中するアーク電流(数十〜数百
A)のエネルギーにより、陰極11の材料は瞬時に蒸発
すると同時に金属イオン17となり、真空中に飛び出
す。一方、バイアス電圧が被コーティング物12に印加
されることにより、金属イオン17が加速され、反応ガ
ス粒子18とともに被コーティング物12の表面に密着
し、緻密な皮膜が生成される。
【0021】上記アークイオンプレーティング装置を使
用して、被コーティング12としてのピストンリングに
CrN皮膜を被覆することができる。
用して、被コーティング12としてのピストンリングに
CrN皮膜を被覆することができる。
【0022】皮膜の形成にあたっては、皮膜を被覆する
ピストンリングに加える負のバイアス電圧と皮膜形成中
の窒素ガスの圧力を調整することによって、各種の硬さ
を持ったCrN皮膜を被覆することができる。
ピストンリングに加える負のバイアス電圧と皮膜形成中
の窒素ガスの圧力を調整することによって、各種の硬さ
を持ったCrN皮膜を被覆することができる。
【0023】前述した皮膜内での剥離現象は詳細に観察
を行うと次のような特徴を有している。 直径0.05〜0.3mmの穴状の欠陥が発生して
いるが、剥離が母材と皮膜の境界面ではなく、皮膜内部
で発生している。 穴状の欠陥の周囲には摺動方向に対して直角にクラ
ックが発生している。
を行うと次のような特徴を有している。 直径0.05〜0.3mmの穴状の欠陥が発生して
いるが、剥離が母材と皮膜の境界面ではなく、皮膜内部
で発生している。 穴状の欠陥の周囲には摺動方向に対して直角にクラ
ックが発生している。
【0024】この剥離現象に類似の現象はファンデアホ
ルスト(VDH)摩耗試験で発生する。まず、このVD
H摩耗試験を利用して、本発明の皮膜の特性を調査した
結果を説明する。
ルスト(VDH)摩耗試験で発生する。まず、このVD
H摩耗試験を利用して、本発明の皮膜の特性を調査した
結果を説明する。
【0025】ピストンリングに硬質皮膜をアークイオン
プレーティング法を用いて被覆して試料とした。皮膜の
形成にあたっては、皮膜を被覆するピストンリングに加
える負のバイアス電圧と皮膜形成中の窒素ガスの圧力を
調整することによって、各種の硬さを持ったCrN皮
膜、Cr2 N皮膜、およびCrNとCr2 Nとが共存し
ている皮膜を、それぞれピストンリングの外周面に50
μm程度の厚みで形成した。
プレーティング法を用いて被覆して試料とした。皮膜の
形成にあたっては、皮膜を被覆するピストンリングに加
える負のバイアス電圧と皮膜形成中の窒素ガスの圧力を
調整することによって、各種の硬さを持ったCrN皮
膜、Cr2 N皮膜、およびCrNとCr2 Nとが共存し
ている皮膜を、それぞれピストンリングの外周面に50
μm程度の厚みで形成した。
【0026】表1には作成した試料の皮膜の種類とビッ
カース硬さを、処理条件のマトリックス上に示してあ
る。表1において、バイアス電圧の単位はV、N2 ガス
の圧力の単位はmTorrである。
カース硬さを、処理条件のマトリックス上に示してあ
る。表1において、バイアス電圧の単位はV、N2 ガス
の圧力の単位はmTorrである。
【0027】
【0028】これらの各種の皮膜を被覆したピストンリ
ングに関して、VDH摩耗試験を実施した。VDH摩耗
試験は図3に示されているように、潤滑条件下で回転す
るロータ20の外周面に試料21のピストンリングを荷
重Pで押し付けることで実施した。ロータ材はシリンダ
ボア材に相当する鋳鉄とし、潤滑剤としてはディーゼル
エンジン用オイル(商品名日石ハイディーゼル10W)
を供給しながら、摺動速度4.0〜5.5m/秒の4水
準、荷重3〜5ポンドの3水準のマトリックス(表2参
照)に対して、60秒間の試験を実施した。
ングに関して、VDH摩耗試験を実施した。VDH摩耗
試験は図3に示されているように、潤滑条件下で回転す
るロータ20の外周面に試料21のピストンリングを荷
重Pで押し付けることで実施した。ロータ材はシリンダ
ボア材に相当する鋳鉄とし、潤滑剤としてはディーゼル
エンジン用オイル(商品名日石ハイディーゼル10W)
を供給しながら、摺動速度4.0〜5.5m/秒の4水
準、荷重3〜5ポンドの3水準のマトリックス(表2参
照)に対して、60秒間の試験を実施した。
【0029】
【0030】試験実施後の試料の表面状態を光学顕微鏡
で観察し評価を行った。試験結果を表1と対応する形で
図4に示す。図4において、〇は良好、△はクラック発
生、×はクラックと皮膜内での剥離が発生していること
を示している。バイアス電圧の単位はV、N2 ガスの圧
力の単位はmTorrである。なお、図4のマトリック
ス上の一つの箇所における12個の〇、△、あるいは×
は表2の試験条件のマトリックスに対応している。ま
た、表2における12個の〇、△、×は、一例として、
図4のバイアス電圧0V、N2 ガス圧力1mTorrに
おける試験結果を示しているものである。
で観察し評価を行った。試験結果を表1と対応する形で
図4に示す。図4において、〇は良好、△はクラック発
生、×はクラックと皮膜内での剥離が発生していること
を示している。バイアス電圧の単位はV、N2 ガスの圧
力の単位はmTorrである。なお、図4のマトリック
ス上の一つの箇所における12個の〇、△、あるいは×
は表2の試験条件のマトリックスに対応している。ま
た、表2における12個の〇、△、×は、一例として、
図4のバイアス電圧0V、N2 ガス圧力1mTorrに
おける試験結果を示しているものである。
【0031】図4から、Cr2 Nを皮膜組成として含む
比較材は皮膜内での剥離の発生(表中記号×)が多く、
目的とする特性が得られていない。また、皮膜組成がC
rNであっても、処理条件によって1400を越えたビ
ッカース硬さを持つ比較材では、皮膜内での剥離現象が
発生しやすく、同じく問題があることがわかる。一方
で、本発明の1400以下のビッカース硬さを有するピ
ストンリングでは、苛酷なVDH試験条件(高摺動速
度、高荷重)にあっても、皮膜表面にクラックは観察さ
れるが、皮膜内での剥離による穴状の欠陥の発生はな
く、目的とする特性が得られたことがわかる。
比較材は皮膜内での剥離の発生(表中記号×)が多く、
目的とする特性が得られていない。また、皮膜組成がC
rNであっても、処理条件によって1400を越えたビ
ッカース硬さを持つ比較材では、皮膜内での剥離現象が
発生しやすく、同じく問題があることがわかる。一方
で、本発明の1400以下のビッカース硬さを有するピ
ストンリングでは、苛酷なVDH試験条件(高摺動速
度、高荷重)にあっても、皮膜表面にクラックは観察さ
れるが、皮膜内での剥離による穴状の欠陥の発生はな
く、目的とする特性が得られたことがわかる。
【0032】次に、本発明の摺動部材にとって耐摩耗性
も重要な要素であるので、往復動摩擦摩耗試験により、
皮膜の耐摩耗性を評価した。評価にあたっては、ピン状
の試験片(8mmφ)の球面(R18mm)をなす端面
に前記と同様にアークイオンプレーティング法によって
各種の皮膜を形成して試料とし評価を行った。
も重要な要素であるので、往復動摩擦摩耗試験により、
皮膜の耐摩耗性を評価した。評価にあたっては、ピン状
の試験片(8mmφ)の球面(R18mm)をなす端面
に前記と同様にアークイオンプレーティング法によって
各種の皮膜を形成して試料とし評価を行った。
【0033】往復動摩耗試験での試験条件を以下に示
す。 試験機:往復動摩擦試験機 摩擦速度:1m/s 試験時間:60分 荷重:30kg 下試片の材料:鋳鉄材(FC250) 潤滑油:昭和シェル石油 テトラオイル2
す。 試験機:往復動摩擦試験機 摩擦速度:1m/s 試験時間:60分 荷重:30kg 下試片の材料:鋳鉄材(FC250) 潤滑油:昭和シェル石油 テトラオイル2
【0034】往復動摩擦試験機は図5に示されているよ
うに、ピン状試験片30の皮膜が形成されている端面が
下試片31に荷重Pで押し付けられた状態で、下試片3
1がストローク50mmで往復動される。
うに、ピン状試験片30の皮膜が形成されている端面が
下試片31に荷重Pで押し付けられた状態で、下試片3
1がストローク50mmで往復動される。
【0035】図6に往復動摩耗試験での試料および下試
片の摩耗量の試験結果を示す。この図からわかるよう
に、CrN皮膜はビッカース硬さで800〜1700の
範囲で摩耗量に大きな差はなく、いずれも高い耐摩耗性
を示している。しかしながら、皮膜硬さがビッカース硬
さで754になると摩耗量が増加しており、耐摩耗性に
関する特性が低下していることがわかる。
片の摩耗量の試験結果を示す。この図からわかるよう
に、CrN皮膜はビッカース硬さで800〜1700の
範囲で摩耗量に大きな差はなく、いずれも高い耐摩耗性
を示している。しかしながら、皮膜硬さがビッカース硬
さで754になると摩耗量が増加しており、耐摩耗性に
関する特性が低下していることがわかる。
【0036】以上の2つの試験結果から、所定のCrN
皮膜を被覆した本発明におけるピストンリングは、耐摩
耗性の面および苛酷な摺動条件下で使用した場合の皮膜
内部での剥離特性の両面において優れた特性を持ってい
ることがわかる。
皮膜を被覆した本発明におけるピストンリングは、耐摩
耗性の面および苛酷な摺動条件下で使用した場合の皮膜
内部での剥離特性の両面において優れた特性を持ってい
ることがわかる。
【0037】図7は本発明の別の実施例であるピストン
リングを示している。このピストンリング1はステンレ
ス鋼から形成されており、外周面の母材表面に形成され
た窒化層3上に、上記実施例と同様にアークイオンプレ
ーティング法によって、CrN皮膜を約55μmの厚さ
で被覆したものである。このときのバイアス電圧は3
V、窒素ガス圧力は10mTorrであった。なお、窒
化層3は、窒化処理後に最表面の窒素濃度の高い化合物
層を除去した。CrN皮膜の形成後、外周面の最終仕上
加工を行い、仕上がりのCrN皮膜2の膜厚は50μm
とした。CrN皮膜2の硬さはビッカース硬度で125
8であった。窒化層3の厚さは70μm、硬さはビッカ
ース硬度で1100であった。
リングを示している。このピストンリング1はステンレ
ス鋼から形成されており、外周面の母材表面に形成され
た窒化層3上に、上記実施例と同様にアークイオンプレ
ーティング法によって、CrN皮膜を約55μmの厚さ
で被覆したものである。このときのバイアス電圧は3
V、窒素ガス圧力は10mTorrであった。なお、窒
化層3は、窒化処理後に最表面の窒素濃度の高い化合物
層を除去した。CrN皮膜の形成後、外周面の最終仕上
加工を行い、仕上がりのCrN皮膜2の膜厚は50μm
とした。CrN皮膜2の硬さはビッカース硬度で125
8であった。窒化層3の厚さは70μm、硬さはビッカ
ース硬度で1100であった。
【0038】また、バイアス電圧を30Vとした以外は
上記と同様の条件でアークイオンプレーティングを行
い、CrN皮膜が上記と同じ窒化層上に被覆されている
比較例のピストンリングを製作した。このピストンリン
グのCrN皮膜の厚さは50μm、硬さはビッカース硬
度で1628であった。
上記と同様の条件でアークイオンプレーティングを行
い、CrN皮膜が上記と同じ窒化層上に被覆されている
比較例のピストンリングを製作した。このピストンリン
グのCrN皮膜の厚さは50μm、硬さはビッカース硬
度で1628であった。
【0039】以上の2種類のピストンリングを同じディ
ーゼルエンジンに組み込み、4000rpmの回転数で
300時間の耐久試験を行い、試験後のピストンリング
の状態を調査した。比較例のピストンリングはシリンダ
ボアと摺動する外周面に、目視でも確認できる点状の欠
陥が確認され、拡大しての観察によると皮膜の途中から
皮膜が約0.1〜0.2mmの大きさで脱落していた。
一方、実施例のピストンリングでは、目視による観察に
よると、比較例のピストンリングで観察されたような欠
陥は外周面に存在せず、健全であった。一方、皮膜の摩
耗量は、いずれのピストンリングも約6.0μm程度で
あり、耐摩耗性の面での相違はなかった。
ーゼルエンジンに組み込み、4000rpmの回転数で
300時間の耐久試験を行い、試験後のピストンリング
の状態を調査した。比較例のピストンリングはシリンダ
ボアと摺動する外周面に、目視でも確認できる点状の欠
陥が確認され、拡大しての観察によると皮膜の途中から
皮膜が約0.1〜0.2mmの大きさで脱落していた。
一方、実施例のピストンリングでは、目視による観察に
よると、比較例のピストンリングで観察されたような欠
陥は外周面に存在せず、健全であった。一方、皮膜の摩
耗量は、いずれのピストンリングも約6.0μm程度で
あり、耐摩耗性の面での相違はなかった。
【0040】上記では、窒化層上にCrN皮膜を形成し
た具体例を一つ示したが、本発明は、窒化層上にCrN
皮膜を被覆する場合においても、CrN皮膜はビッカー
ス硬度で800〜1400の硬さを有し、且つ、大きさ
1μm以上のポアが5〜15%分散した組織を有してい
る。なお、窒化層は最表面の窒素濃度の高い化合物層が
除去された状態が好ましく、窒化層の硬さはビッカース
硬度で800以上、厚さは10〜90μmが好ましい。
CrN皮膜の厚さは5〜100μmの範囲が適当であ
り、10〜50μmの範囲が特に好ましい。
た具体例を一つ示したが、本発明は、窒化層上にCrN
皮膜を被覆する場合においても、CrN皮膜はビッカー
ス硬度で800〜1400の硬さを有し、且つ、大きさ
1μm以上のポアが5〜15%分散した組織を有してい
る。なお、窒化層は最表面の窒素濃度の高い化合物層が
除去された状態が好ましく、窒化層の硬さはビッカース
硬度で800以上、厚さは10〜90μmが好ましい。
CrN皮膜の厚さは5〜100μmの範囲が適当であ
り、10〜50μmの範囲が特に好ましい。
【0041】上記のように窒化層上にCrN皮膜を被覆
すれば、CrN皮膜が摩耗した場合でも、下地は耐摩耗
性の優れた窒化層であるため、さらに長寿命となる。
すれば、CrN皮膜が摩耗した場合でも、下地は耐摩耗
性の優れた窒化層であるため、さらに長寿命となる。
【0042】以上の2つの実施例では、CrN皮膜をピ
ストンリングの外周面に被覆した例を示したが、これに
限ることはなく、CrN皮膜をピストンリングの外周面
と上下面あるいは外周面と上下面と内周面とに被覆する
ようにしてもよい。
ストンリングの外周面に被覆した例を示したが、これに
限ることはなく、CrN皮膜をピストンリングの外周面
と上下面あるいは外周面と上下面と内周面とに被覆する
ようにしてもよい。
【0043】また、上記2つの実施例ではピストンリン
グにCrN皮膜を被覆した例を示したが、CrN皮膜は
ピストンリングに被覆するに限らず、他の摺動部材、例
えば内燃機関の動弁系部品であるタペットやカム等の少
なくとも摺動面に被覆すれば有効である。
グにCrN皮膜を被覆した例を示したが、CrN皮膜は
ピストンリングに被覆するに限らず、他の摺動部材、例
えば内燃機関の動弁系部品であるタペットやカム等の少
なくとも摺動面に被覆すれば有効である。
【0044】以上の実施例では、CrN皮膜の被覆は、
PVD法の一種であるアークイオンプレーティング法に
よって実現されたが、この方法に限定されるものではな
く、PVD法に属するHCD(ホロー・カソード・ディ
スチャージ)法等のイオンプレーティング法や反応性ス
パッタリング法などでも形成できる。
PVD法の一種であるアークイオンプレーティング法に
よって実現されたが、この方法に限定されるものではな
く、PVD法に属するHCD(ホロー・カソード・ディ
スチャージ)法等のイオンプレーティング法や反応性ス
パッタリング法などでも形成できる。
【0045】
【発明の効果】以上説明したように本発明の摺動部材に
よれば、少なくとも摺動面に被覆されたCrN皮膜が、
ビッカース硬度で800〜1400の硬さを有してお
り、且つ、大きさ1μm以上のポアが5〜15%分散し
た組織を有していることにより、摺動特性が優れるとと
もに、耐剥離性が優れている。
よれば、少なくとも摺動面に被覆されたCrN皮膜が、
ビッカース硬度で800〜1400の硬さを有してお
り、且つ、大きさ1μm以上のポアが5〜15%分散し
た組織を有していることにより、摺動特性が優れるとと
もに、耐剥離性が優れている。
【図1】本発明の一実施例であるピストンリングの一部
分を示す縦断面図である。
分を示す縦断面図である。
【図2】アークイオンプレーティング装置の構成を説明
するための図である。
するための図である。
【図3】(a)はVDH摩耗試験の概要を示す一部断面
正面図、(b)は同側面図である。
正面図、(b)は同側面図である。
【図4】VDH摩耗試験の結果を示す図である。
【図5】往復動摩耗試験の概要を示す一部断面正面図で
ある。
ある。
【図6】往復動摩耗試験の結果を示すグラフである。
【図7】本発明の別の実施例であるピストンリングの一
部分を示す縦断面図である。
部分を示す縦断面図である。
【図8】鋼製ピストンリングの表面を窒化し、最表面の
窒素濃度の高い化合物層を除去した後、CrN皮膜をイ
オンプレーティングによって被覆した試料の破面のSE
M写真であり、(a)の試料は皮膜中にポアが存在し硬
度が低い本発明のものであり、(b)の試料は皮膜が緻
密、健全である従来のものである。
窒素濃度の高い化合物層を除去した後、CrN皮膜をイ
オンプレーティングによって被覆した試料の破面のSE
M写真であり、(a)の試料は皮膜中にポアが存在し硬
度が低い本発明のものであり、(b)の試料は皮膜が緻
密、健全である従来のものである。
1 ピストンリング 2 CrN皮膜 3 窒化層 10 真空チャンバ 11 陰極(蒸発源) 12 被コーティング物 13 アーク供給源 14 バイアス電圧供給源 15 ガス入口 16 排気口 17 金属イオン 18 反応ガス粒子 20 ロータ 21 試料 30 ピン状試験片 31 下試片
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成6年1月12日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図8
【補正方法】変更
【補正内容】
【図8】鋼製ピストンリングの表面に形成された窒化層
とCrN皮膜の写真であり、(a)は皮膜中にポアが存
在し硬度が低い本発明のもの、(b)は皮膜が緻密、健
全である従来のものである。
とCrN皮膜の写真であり、(a)は皮膜中にポアが存
在し硬度が低い本発明のもの、(b)は皮膜が緻密、健
全である従来のものである。
フロントページの続き (72)発明者 田中 昭二 東京都中央区八重洲一丁目9番9号 帝国 ピストンリング株式会社内 (72)発明者 福留 弘人 東京都中央区八重洲一丁目9番9号 帝国 ピストンリング株式会社内 (72)発明者 玉垣 浩 兵庫県高砂市荒井町新浜2−3−1 株式 会社神戸製鋼所高砂製作所内
Claims (6)
- 【請求項1】 CrN皮膜が少なくとも摺動面に被覆さ
れている摺動部材において、前記CrN皮膜がビッカー
ス硬度で800〜1400の硬さを有しており、且つ、
大きさ1μm以上のポアが5〜15%分散した組織を有
していることを特徴とする摺動部材。 - 【請求項2】 前記CrN皮膜が被覆されている部材が
ピストンリングであり、CrN皮膜が形成されている面
が外周面であることを特徴とする請求項1記載の摺動部
材。 - 【請求項3】 前記CrN皮膜が被覆されている部材が
ピストンリングであり、CrN皮膜が形成されている面
が外周面と上下面であることを特徴とする請求項1記載
の摺動部材。 - 【請求項4】 前記CrN皮膜が被覆されている部材が
ピストンリングであり、CrN皮膜が形成されている面
が外周面と上下面と内周面であることを特徴とする請求
項1記載の摺動部材。 - 【請求項5】 前記CrN皮膜の内側に窒化層が形成さ
れていることを特徴とする請求項1、2、3、あるいは
4記載の摺動部材。 - 【請求項6】 金属Crを蒸発源とし、窒素圧力が10
〜30mTorr、バイアス電圧が0〜30Vでイオン
プレーティングすることを特徴とする請求項1〜5のい
ずれかに記載の摺動部材におけるCrN皮膜の被覆方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19279593A JPH0727228A (ja) | 1993-07-07 | 1993-07-07 | 摺動部材およびCrN皮膜の被覆方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP19279593A JPH0727228A (ja) | 1993-07-07 | 1993-07-07 | 摺動部材およびCrN皮膜の被覆方法 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0727228A true JPH0727228A (ja) | 1995-01-27 |
Family
ID=16297123
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP19279593A Pending JPH0727228A (ja) | 1993-07-07 | 1993-07-07 | 摺動部材およびCrN皮膜の被覆方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPH0727228A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0987830A (ja) * | 1995-09-28 | 1997-03-31 | Nippon Piston Ring Co Ltd | 圧縮機用摺動部材 |
WO2002052179A1 (fr) * | 2000-12-26 | 2002-07-04 | Kabushiki Kaisha Riken | Segment de piston et procede de production correspondant |
JP2010168603A (ja) * | 2009-01-20 | 2010-08-05 | Ntn Corp | 耐摩耗性CrN膜 |
JP2013155420A (ja) * | 2012-01-31 | 2013-08-15 | Nippon Piston Ring Co Ltd | 摺動部材 |
JP2022109981A (ja) * | 2018-11-06 | 2022-07-28 | 日本ピストンリング株式会社 | ピストンリング |
-
1993
- 1993-07-07 JP JP19279593A patent/JPH0727228A/ja active Pending
Cited By (8)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPH0987830A (ja) * | 1995-09-28 | 1997-03-31 | Nippon Piston Ring Co Ltd | 圧縮機用摺動部材 |
WO2002052179A1 (fr) * | 2000-12-26 | 2002-07-04 | Kabushiki Kaisha Riken | Segment de piston et procede de production correspondant |
US7052019B2 (en) | 2000-12-26 | 2006-05-30 | Kabushiki Kaisha Riken | Piston ring and method of manufacturing the same |
JP4680380B2 (ja) * | 2000-12-26 | 2011-05-11 | 株式会社リケン | ピストンリング及びその製造方法 |
JP2010168603A (ja) * | 2009-01-20 | 2010-08-05 | Ntn Corp | 耐摩耗性CrN膜 |
JP2013155420A (ja) * | 2012-01-31 | 2013-08-15 | Nippon Piston Ring Co Ltd | 摺動部材 |
JP2022109981A (ja) * | 2018-11-06 | 2022-07-28 | 日本ピストンリング株式会社 | ピストンリング |
US11739840B2 (en) | 2018-11-06 | 2023-08-29 | Nippon Piston Ring Co., Ltd. | Piston ring |
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