JP2007132423A - ピストンリング - Google Patents

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Abstract

【課題】CrNを主成分とした硬質のイオンプレーティング皮膜を外周摺動面に有するピストンリングは初期馴染み性に劣り実機エンジンに於いて初期のB/Bが多い。初期馴染み性に優れた異種の皮膜を外周面に設けると製造コストの増大を招く。
【解決手段】ピストンリング外周摺動面にCrNを主成分とした緻密質でなるイオンプレーティング法で形成した内層部とCrNを主成分としポーラスであなるイオンプレーティング法で形成した表層部からなる2層のイオンプレーティング皮膜を形成することによって、初期馴染み性に優れ且つ耐摩耗性に優れたピストンリングを安価に製造することが出来る。
【選択図】図3

Description

本発明は、シリンダとの初期なじみ性が良く、かつ皮膜の耐摩耗性、耐剥離性に優れた内燃機関用ピストンリングに関する。
自動車エンジン等の内燃機関では排気ガス規制の強化やエンジンの高出力や低燃費化により、ピストンリング、バルブリフタ等の摺動部品の摺動面は、燃焼温度の上昇による熱負荷や面圧負荷或いは摺動速度が増大しており、又、低粘度潤滑油の採用等により、その使用環境は益々過酷化している。したがって、これら部品の摺動面には、耐摩耗性及び耐スカッフ性等のニーズが高まっている。
例えばピストンリングでは、従来に於いては硬質クロムめっき皮膜や窒化処理皮膜などが使用されていたが、上記のニーズに対応する新しい皮膜が提案されてきた。特開昭61−87950号公報において提案された皮膜はイオンプレーティング法による金属クロムと窒化クロムとからなる混合物皮膜であり、特開平6−265023号公報において提案された皮膜は酸素を固溶したイオンプレーティング法による窒化クロム皮膜であった。しかしながら、これら皮膜は摺動条件の更に過酷なエンジンにおいては、耐摩耗性や耐スカッフ性が充分ではないばかりか、摺動に伴って皮膜内部にクラックが発生し皮膜の欠けや剥離が発生するという問題が観られた。
このため、更なる対応として、特開2002−266697号にあっては、金属の窒化物または金属の炭化物または金属の炭窒化物よりなる結晶相と非晶質混合組織よりなる皮膜を摺動面に被覆することが提案されている。この皮膜は皮膜の破壊に於いて重要となる転位の移動は結晶相内で起こるとし、同じ皮膜中に非晶質相を混在させることで、転位の移動が阻止され、皮膜の硬度或いは強度が上がるので皮膜の欠け剥離が阻止できるとしている。確かに結晶粒を微細化することでHall-Petch則に従い皮膜硬度は高くなり、結晶相と非晶質を混合することで剪断帯の発生と伝播を制御することは可能である。しかしながら、金属の窒化物に非晶質を介在した膜は靱性こそは改善されるが、皮膜硬度は従来の皮膜に比べ大幅な向上は望めず、耐摩耗性の向上は期待できない。また、金属炭化物又は金属炭窒化物の皮膜に非晶質相を介在させた膜は皮膜硬度が向上することは予想できるが、皮膜自体が脆くなるので、更に過酷な摺動環境では皮膜層内で剥離を起すことが考えられる。さらに、高硬度皮膜が最外周面を覆ることになるため、ピストンリングなどのようにイオンプレーティング処理後に皮膜表面の外周仕上げ加工を行うものでは加工時の外部衝撃により欠け易いという問題もある。
ところで、一般に組み立て直後のエンジンにおいては、部品製作の精度上の制約からピストンリングとシリンダの接触状態が不確実になることは避けられず、両者間に隙間が生じることが起こりうる。この隙間が存在したままの状態でエンジンを運転すると、燃焼室の気密性が不十分な状態となり、クランク室へのガスの吹き抜け(圧縮洩れ)が起こる。そしてこのガス吹き抜けは、シリンダ内面を一様に覆っている潤滑油膜を破るために、ピストンリングとシリンダ間に異常摩耗を引き起こしたり、スカッフィングを発生させたりする。また同時に、この隙間を通って潤滑オイルが燃焼室に入り込むので、潤滑オイルの消耗がも多くなると云うことも起こる。従って、馴染み運転と呼ばれるエンジン組み立て直後の初期運転が行われ、ピストンリングとシリンダを摺動させることで、両者の隙間を無くするようにしている。
前記記載のイオンプレーティング法による窒化クロム皮膜等は高硬度を有し耐摩耗性に優れるため、前記馴染み運転の時間が長くなる傾向がある。このようなことから、イオンプレーティング法によるこれら高硬度皮膜を有するピストンリングの初期馴染み性を改善する試みが古くから行われている。
特開平1−117971号公報は短期間にピストンリングとシリンダをなじませる工夫としてピストンリングの外周摺動面上にイオンプレーティングによる窒化チタンの第1層と、更にその表面に金属チタンの第2層を設けることを開示している。しかしながら、この方法ではイオンプレーティング皮膜が窒化チタン皮膜だけに限定される上に、イオンプレーティングによる純Ti皮膜は硬度が低く、延性があり耐スカッフ性が劣ることから、馴染み運転中にスカッフを起こす危険性があり初期馴染み膜としては使えないことが明らかとなった。
特開平2−89876号公報及び特開平6−229475号公報は共に、耐スカッフ性に優れ且つ適度な耐摩耗性を有し、当時では初期馴染み性に優れるといわれていた窒化珪素を分散したNi−Co−P合金めっき皮膜をイオンプレーティング皮膜である窒化チタン層や窒化クロム層上に設けることを開示している。しかしながら、前記分散めっき皮膜は電気メッキ皮膜であり窒化チタンや窒化クロム等の所謂セラミック皮膜上に密着性良く成膜することは困難なこと、又、イオンプレーティング後に新たなめっき工程を組む必要がありピストンリングが高コストになるなどの問題がある。
特開平3−277870号公報はピストンリングのシリンダ側の初期スカッフを防止するために、硬質Crめっき層上にPVD処理によりTiN、TiC,CrN等の硬質皮膜を被覆している。また併せて硬質Crめっき皮膜特有のピットポーラスをピストンリング摺動面にも達するようにすることを開示している。しかしながら、本発明では下地に硬質Crめっき皮膜が必要であることから、下地に硬質Crめっき皮膜を設けないPVD硬質皮膜を有するピストンリングに適用することはできない。
特開平6−322515号公報はイオンプレーティングによるCrと窒素からなる皮膜を有するピストンリングで下層部には窒化クロムでなる皮膜を有し、下層部から皮膜表面部に向かってCr濃度が増大している(窒素濃度が減少している)所謂傾斜皮膜を有するピストンリングとすることを開示する。しかしながら、イオンプレーティングによる金属Cr層は低硬度で延性が有り耐スカッフ性が下がること、又、イオンプレーティング後に表面加工がなされる場合には、傾斜組織であるが故に、個々のピストンリングにおいて露出する表面組織、表面硬度が異なることになり、初期馴染み性能が安定しないと云う問題もある。
特開平6−81952号公報はクロム、窒素、酸素からなり硬さがHv1000〜2000で有るCr−N−O皮膜を有するピストンリングが初期馴染み性に優れたピストンリングであることを開示する。しかしながら、本発明明細書ではCr−N−O皮膜の硬度はHv約1700〜1900と高く初期馴染み性に優れる可能性が低い。又、格別な初期馴染み性向上の方策についての記載は一切ない。
特開2000−263688号公報はイオンプレーティング皮膜の初期馴染み性改善のために、前記特開平1−117971号公報同様に導電性を有する窒化物又は炭化物系のセラミクスからなる耐摩耗性皮膜の上にZn、Sn、Pb、In,Cu,Ni等の軟質金属層を設けることで硬質イオンプレーティング皮膜の初期馴染み性を向上させることを開示する。しかしながら、これら軟質金属のイオンプレーティング皮膜は硬度が低くすぎ耐摩耗性が極端にないので、ピストンリングの外周摺動面の初期馴染み膜としては使うことができない。又、本発明をアークイオンプレーティング装置で実施するためには、これら軟質皮膜を前記窒化物や炭化物上に形成するためには、窒化物や炭化物膜の形成に用いる金属ターゲット以外に新たなこれら金属のターゲットを準備しておく必要があり、装置の効率から考えて、高コストになることが考えられる。
以上のように、これまで硬質イオンプレーティング皮膜を有するピストンリングにおいて、その初期馴染み性を向上させることができ、且つ、低コストなピストンリングの開発が望まれてきていたが実現されるには至っていない。特に、今日のように、内燃機関では環境問題から燃費効率の向上が強く求められており、ピストンリングに於いては、耐摩耗性向上のため、従来以上の高硬度でかつ薄膜のイオンプレーティング皮膜を外周摺動面に成膜する試みが行われてきている。それ故、一層、イオンプレーティング皮膜の初期馴染み耗性の改善が求められている。従って、本発明の目的は、初期なじみ性に優れ、かつ欠け状剥離が発生し難く同時に耐摩耗性、密着性および加工性に優れた皮膜を被覆したピストンリングを提供することである。
本願第一の発明は、少なくとも外周摺動面に、イオンプレーティング法で形成した窒化クロム或いは酸素又は/及び炭素を固溶した窒化クロムを主成分としたイオンプレーティング皮膜を有し、前記イオンプレーティング皮膜が1.5〜20面積%の空孔を有する軟質の表層部と1.5面積%以下の空孔を有し硬質でなる内層部からなることを特徴とする内燃機関用ピストンリング。
であり、第二の発明は、前記内層部の硬さがマイクロビッカース硬さでHv1600〜3000であり膜厚さが10〜50μmであることを特徴とする請求項1記載の内燃機関用ピストンリングであり、その第三の発明は、前記表層部の硬さがマイクロビッカース硬さでHv700〜1200であり膜厚さが1〜10μmであることを特徴とする請求項1及び2記載のピストンリングである。
特開昭61−87950公報 特開平6−265023号公報 特開2002−266697号公報 特開平1−117971号公報 特開平2−89876号公報 特開平6−229475号公報 特開平3−277870号公報 特開平6−322515号公報 特開平6−81952号公報 特開2000−263688号公報
ピストンリング
本発明において、ピストンリング本体は従来公知のいかなる形状でもよく、その材料は、13Crおよび17Crマルテンサイトステンレス鋼、バネ鋼、工具鋼、鋳鉄、アルミ合金などの金属系材料、及びそれらの材料に窒化処理やクロムめっき或いはNiめっきを施したもの等を使用する事ができる。
(1)硬質イオンプレーティング皮膜
少なくともピストンリング本体外周面には、耐摩耗性に優れる硬質のイオンプレーティング皮膜を有する。該硬質イオンプレーティング皮膜としては窒化クロム或いは酸素又は/及び炭素を固溶した窒化クロムを主成分とした組成が望ましい。
Cr元素は窒素、炭素、酸素又は硼素と反応して硬質のイオンプレーティング皮膜を形成する。このうちCrN等の窒化クロムイオンプレーティング皮膜は成膜時の圧縮応力が低いので、その他の元素、例えばTi、V、Mo等が窒素と反応して出来る窒化物の硬質イオンプレーティング皮膜と比べ厚く成膜することが可能であり、比較的厚膜を必要とするピストンリングに多用されている。
窒化クロムイオンプレーティング皮膜は膜中に酸素、炭素及び硼素等を固溶することが出来る。酸素、炭素又は硼素はCr元素と反応して、それぞれの化合物を形成するが、これらの化合物は窒化クロムよりも脆いので皮膜中には存在しないことが望ましい。すなわち、窒化クロム結晶中に固溶している程度がよく、X線回折の定性分析で酸化物、炭化物或いは硼化物が確認できないことが望ましい。酸素、炭素又は/及び硼素を固溶した窒化クロム皮膜は圧縮応力が増大し耐摩耗性がこれら元素を固溶しない窒化クロム皮膜に比べ向上する。従って、皮膜のX線回折では窒化クロム相からなる皮膜である。(但し、Crドロップレット等の不可避的不純物は除く)。膜中の各元素の量はEPMA分析で確認することが出来る。
皮膜硬さはHv1600〜2200が良い。Hv1600以下では耐摩耗性が充分でない。Hv2200以上では、成膜時の圧縮残留応力が高すぎるために、成膜中或いは成膜後、特にピストンリングエッジ部から剥離してしまうため使用することが出来ない。
窒化クロム中に固溶させる酸素、炭素、硼素の量は15wt%以下が良い。15wt%以上ではクロム酸化物、クロム炭化物、クロム硼化物やそれらの複合化合物の析出が始まり、前述のように皮膜が脆くなり皮膜が剥離しやすく得策ではない。
本ピストンリングの硬質窒化クロムイオンプレーティング皮膜の膜厚さは10〜50μmである。厚さが10μm以下では、いくら耐摩耗性が向上したとしてもピストンリングの耐久性に乏しく、50μm以上は耐摩耗性から必要はなく、本発明を適用するメリットがないので上限を50μmとする。
(2)初期馴染み膜
本発明のピストンリングでは上記硬質イオンプレーティング皮膜の上に同質の硬度の低いイオンプレーティング皮膜の初期馴染み膜を有する。このイオンプレーティング初期馴染み膜は上記硬質イオンプレーティング皮膜と皮膜を構成する元素割合は実質的(意図的には変えない)に同じであり、皮膜中に空孔を有することが特徴である。皮膜中に空孔を有することで、皮膜見掛け硬さは下がり、又、空孔を持つことで残留応力も低くなるので皮膜の剥離や欠けを起こしにくい。空孔以外の皮膜を構成する部分は下地である硬質イオンプレーティング皮膜と同じとして、皮膜に空孔を持たせることで皮膜硬さを下げ、また、空孔があるためエンジンオイルとの濡れ性やエンジンオイルの保油性が良くなるので、相手を摩耗させることはなく、初期馴染み性の効果が出てくるものである。尚、空孔率を変えることで皮膜の硬度を変えられるので、使用エンジンに合わせた初期馴染み性とすることができる。
皮膜硬さは皮膜中に固溶させる元素濃度と空孔率で調整する。初期馴染み膜としてはHv700〜1200が望ましい。Hv700以下では耐摩耗性が不十分で、摺動ごく初期に摩耗し初期馴染み膜としての役割を果たせない。Hv1200以上では、耐摩耗性が良すぎて、摺り合わせに時間を要し初期馴染み膜として本皮膜を設けるメリットが見いだせないのでHv1200以下とする。このときの空孔率は1.5%〜20%で有る。皮膜の空孔率は皮膜表面を拡大し画像解析によって、空孔の面積割合で求めた。尚、皮膜の組成により空孔率がほぼ同じでも皮膜硬度が異なるので、空孔率の値から皮膜硬度値を定めることは出来ない。
初期馴染み膜の膜厚さは、皮膜硬さや相手シリンダライナーの仕上げ精度等により決まる要素であるが、ピストンリングの性能上から又は製造上の面から1〜10μmが良い。1μm以下では初期馴染み膜として機能しないことが多く、10μm以上では初期馴染み膜が摩耗し、初期馴染み後のピストンリング合い口隙間が大きくなりすぎ、オイル消費やブローバイガスが多くなりすぎることから1〜10μmが良い。また摩耗しやすい膜を多く被覆することは経済的でない。そのため2〜5μmで使えることが望ましい。
耐摩耗性の硬質イオンプレーティング皮膜層とピストンリング母材の間に密着性および柔軟性に富む下地層を形成してもよい。この下地層は皮膜の剥離防止および外部衝撃の緩和性に一層効果がある。金属下地薄膜としては、硬質イオンプレーティング皮膜と同組成のCrイオンプレーティング皮膜がよい。下地層の形成後、続いて、窒素ガス、炭化水素ガスや酸素ガスの反応性ガスを導入することにより、硬質イオンプレーティング皮膜を形成できるという製造上のメリットと境界部は連続的に硬質イオンプレーティング組成に変化するので硬質イオンプレーティング皮膜の密着性が非常に良くなるというメリットがある。又、イオンプレーティング皮膜形成後にガス窒化等の窒化処理を行ってもイオンプレーティング下地母材が窒化されるのを防止できるのでイオンプレーティング皮膜の密着性悪化を防げるという効果もある。
皮膜の形成方法
本願発明のイオンプレーティング皮膜のコーティング方法について説明する。
(1)イオンプレーティング装置
本願で用いるイオンプレーティング装置としてはアークイオンプレーティング装置を用いる。その他HCD法等の電子ビームの加熱により金属元素を蒸発させるタイプのイオンプレーティング装置も使用することは可能である。
(2)イオンプレーティング方法
有機洗浄脱脂等によって清浄化した必要数のピストンリングを、外周摺動面及び合い口部を基準に多数スタックし、中央に設けた主軸を利用して両端から締め蓋で押さえつけ固定する。その後、ピストンリング外周表面のみをブラスト処理等により酸化物や汚れを除去してから真空槽内の回転テーブルに設置し、真空排気を行う。以下、スタックしたピストンリングをワークと呼ぶ。このとき、ワークは主軸を中心に自転出来るようにしておく。尚、多数のワークを同時に処理する時は自公転治具を用いると良い。
真空槽内の圧力を0.03Pa程度に減圧した後、テーブルを公転させることでワークを自転させ、同時に真空槽内設置のヒーターの温度を673Kに設定し、一定温度度にて加熱を行う。この際、真空槽内あるいはワークからアウトガスが発生し、一時真空度が低くなる場合があるが、その時は加熱時間を長くし、真空度がある程度真空度が高くなるまで待つ。次に、Arガスを導入し、真空槽内を1.0Pa程度の圧力にした後、Crターゲットをカソードとしてアーク放電を発生させる。この時、ワークに−600V〜−800Vの高電圧を印加することでワーク表面をCrイオンによるボンバードクリーニングができ、生成する硬質イオンプレーティング皮膜又はCr下地皮膜と母材との密着性を高めることが出来る。但し、印可電圧が高すぎる場合あるいはボンバード時間が長すぎる場合、電子が母材に流入するためワーク自体が昇温し、母材が軟化し、ピストンリング形状が変化してしまうので注意が必要である。
予備実験により求めた最適所定時間約5分の金属ボンバードを実施後、ワークの印可電圧を下げることによりCr皮膜の下地層を形成することができる。前述のように、このCr金属下地層は形成しなくても良いが、形成することによりこの上に形成される硬質イオンプレーティング皮膜との密着性がより一層良好となる。1〜5μm程度の金属下地層を形成した後、Arガスを止めるかまたは減らしながら、窒素ガス、炭化水素ガスあるいは酸素ガス、又はこれらの混合ガス等の反応ガスを真空槽中に約1.2Pa程度になるまで導入し、硬質イオンプレーティング皮膜を形成する。このとき、ピストンリングに負の電圧を印可すると、より緻密で硬度が高く耐摩耗性に優れた硬質イオンプレーティング皮膜を析出することが出来る。しかし、金属イオンボンバードの時と同様で、ピストンリングの昇温による軟化・変形が起こるので適当な条件を選ばなければならない。本願では−30Vとした。狙い厚さの硬質イオンプレーティング皮膜が得られる所定時間のコーティング後、アルゴンガスの導入量を増やし、真空槽内圧力を約4.5Paまであげ、初期馴染み層のコーティングを実施する。
イオンプレーティングに於いては、コーティング時の真空度、下地温度、バイアス電圧により皮膜の緻密さが変化する。特に真空度が低い条件でコーティングした場合には空孔率の高いポーラスな皮膜となる。本願発明ではこのことを利用し、緻密な皮膜上に、イオンプレーティング時の真空度を変化させることによって、硬質イオンプレーティングと同じ組成のポーラス皮膜を連続に形成することによって、初期馴染み膜を有するイオンプレーティングリングの製造を可能としたのである。真空度を下げるのに窒素ガス、酸素ガス又は炭化水素ガスの量を増やせばよいが、この方法では皮膜の組成が下の硬質イオンプレーティング皮膜と変化するため、層間の密着性が変化する。そこで我々は不活性ガスであるアルゴンガスを流入させ真空度を低下させることで皮膜の組成変化を防いだ。尚、皮膜の密着性等問題にならない範囲では組成のバラツキは許されることは云うまでもなく、その場合は、アルゴンガスを用いなくても良い。同様に、下地母材温度を低くすればイオンプレーティング皮膜の空孔率を高めることが出来るが、イオンプレーティング中に下地母材温度を急激に低下させることは出来ないので本願では採用しなかった。以下具体的な実施例を記載する。
実施例1
3.2×2.3mm のピストンリング用線材(17Crステンレス鋼)をφ95mm のリング状に曲げ成形した後、歪取りの焼鈍処理を行った。次に、粗合口隙取り、側面平行出しの粗研磨、ピストンリング外周面のバレルフェース研磨を行った。その後、ピストンリング外周面に窒化処理を施し、仕上げ合口隙取りを行った。これを超音波洗浄により脱脂した。ピストンリング母材と下地層との密着性を向上させるため、母材表面をサンドブラスト処理し表面粗さを十点平均粗さ1.0〜4.5μm Rzに仕上げ、エアーブローで表面のゴミを除去した。上述のように処理したピストンリングを図1に示すイオンプレーティング用治具にセットし、かつ合口ピースにより合口間隔を保持した。さらに全体を締付けナットにより固定した。
図1で説明したように組み立てたピストンリングを図2に示すように、ワークとして回転テーブルにセットした後、図2 に示す成膜装置の真空チャンバー内部を排気口から真空度0.03Pa程度まで真空引きを行い、ワークを回転させ、ヒーター設定温度を873Kにて加熱を行った。次に、一旦トリガ電極で電界を発生させた後にCrターゲットを使用して、表1の設定条件でイオンボンバードクリーニング処理を施した。この後、アーク電源で設定されるアーク電流150A、バイアス電源で設定されるバイアス電圧−10V、真空度1.0Pa、ガス入口から導入されるArガス流量100sccm 、回転テーブル回転数10rpm、ヒーター温度873Kで、Cr金属の下地層を1.5μm程度成膜した。その後、Arガスを止め同時に真空度が1.2Paになるように窒素ガスとメタンガスを100:20で導入し、炭素を固溶した硬質窒化クロムイオンプレーティング皮膜を40〜50μm 成膜した。図3の磨き断面写真は40〜50μm被覆したものであるが、皮膜の耐摩耗性やその使用目的(ガソリンエンジン用ピストンリングかディーゼルエンジン用ピストンリング等)によっては10〜20μmでも充分である。その後、Arガスを導入して真空度を4.5Paとしポーラス室のイオンプレーティング皮膜を5〜8μm形成した。成膜後は、真空中で2時間程度徐冷し、大気開放後炉から取り出した。
取り出したワークを解体し、ピストンリングに所定の後加工を施した後、実機エンジンテストに供した。
実施例2〜4
窒化クロムイオンプレーティング皮膜形成時に、導入ガスを窒素ガス100%(実施例2)、窒素100:酸素20(実施例3)、窒素100:ジボラン20(実施例4)とし、更に、Arガス量を真空度が4.5Pa〜6Paになるように調整して以外は実施例1と同じにした。
比較例1
実施例2で硬質窒化クロムイオンプレーティング皮膜のみを形成したものを所定の加工を施し比較例1とした。
皮膜のコーティング条件を表2に示す。
*実施例4:CH4→B2H6
皮膜調査
硬さ試験はJISZ2244に準じて磨き外周表面に試験荷重100gで行った。但し、本リングの外周表層部のポーラス皮膜は10μm以下と薄いため試験加重100gでは硬さを測定することができない。そこで、ポーラス皮膜の硬さについては、予め膜厚20〜30μm程度成膜したものを試験加重100gで測定を行ったものである。更に、皮膜のポーラスでない部分の硬度を試験荷重5gで測定した。
皮膜空孔率はピストンリング外周摺動面(ポーラス皮膜表面)を磨いた後、空孔が分かる程度の倍率で撮影、電子ファイル化した後、画像解析ソフトを用いて測定した。この時、空孔率はしきい値の設定で大きく異なることになるから、しきい値の設定は実際の電子ファイル 画像と金属顕微鏡の写真画像が同一となるように設定した。
皮膜成分濃度はEPMAにより分析した。
その結果を表3に示す。
評価試験
次に、本実施例1〜4と比較例1の皮膜を施したピストンリングを実機エンジンテストによりその初期馴染み性を評価した。
3,000cc(φ95)水冷V型6気筒ディーゼルエンジンに組み込んで全負荷6000rpm×100Hr耐久試験をおこなった(機種A)。また、2,400cc(φ87.5)水冷直列4気筒エンジン6000rpm×100Hrでも耐久試験をおこなった(機種B)。その試験結果を図4、図5に示す。いずれの結果からも、本願発明のピストンリングでは初期馴染み膜の効果でB/Bガス量が比較例に比べ当初から少ないことが認められた。
必要数のピストンリングを外周摺動面及び合い口部を基準に多数スタックし模式図 実験に用いたアークイオンプレーティング装置 成膜された皮膜の断面写真 エンジンテスト結果1 エンジンテスト結果2

Claims (3)

  1. 少なくとも外周摺動面に、イオンプレーティング法で形成した窒化クロム或いは酸素、炭素又は/及び硼素を固溶した窒化クロムを主成分としたイオンプレーティング皮膜を有し、前記イオンプレーティング皮膜が1.5〜20面積%の空孔を有するポーラス表層部と1.5面積%以下の空孔でなる緻密内層部からなることを特徴とする内燃機関用ピストンリング。
  2. 前記内層部の硬さがマイクロビッカース硬さでHv1600〜2200であり膜厚さが10〜50μmであることを特徴とする請求項1記載の内燃機関用ピストンリング。
  3. 前記ポーラス表層部の硬さがマイクロビッカース硬さでHv700〜1200であり膜厚さが1〜10μmであることを特徴とする請求項1及び2記載のピストンリング。
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