JP4607383B2 - 燃料噴射インジェクタの製造方法及び燃料噴射ポンプの製造方法 - Google Patents

燃料噴射インジェクタの製造方法及び燃料噴射ポンプの製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料噴射インジェクタの製造方法及び燃料噴射ポンプの製造方法に係り、特に、摺動クリアランスが微小な燃料噴射インジェクタの製造方法及び燃料噴射ポンプの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料噴射インジェクタのニードルピストンとピストンボア、又は燃料噴射ポンプのプランジャとプランジャバレル等のような燃料系の摺動部材において、粘度の高い燃料、例えば軽油やガソリンを用いた場合、燃料自身が潤滑剤の役割も果たすため、摺動部の耐摩耗性について特に考慮する必要はなかった。
【0003】
これに対して、粘度の低い燃料、例えばジメチルエーテル(以下、DMEと示す)やアルコール燃料を用いた場合、燃料自身による潤滑作用を期待することができないことから、摺動部における摩耗などを防ぐべく、耐摩耗性に優れた硬質被膜を摺動部に形成している。
【0004】
摺動部に形成していた従来の硬質被膜として、TiN被膜やDLC(Diamond Like Carbon)被膜などが挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、TiN被膜は、硬度が約2000HV以上と高いものの、摩擦係数が大きいことから、相手材に対する攻撃性が高いという問題があった。
【0006】
一方、DLC被膜は、硬度が3000HV以上とTiN被膜より更に高く、かつ、TiN被膜より摩擦係数が小さいため、摺動部に形成する硬質被膜として非常に有用である。
【0007】
しかし、粘度の低い燃料を用いる摺動部においては、粘度の高い燃料を用いる摺動部と同じ摺動クリアランスのままだと、燃料の漏れ量が多くなる(リークが大きくなる)ことから、粘度の高い燃料を用いる摺動部と比較して、摺動クリアランスを小さく(例えば、10μm未満に形成)しなければならない。また、粘度の低い燃料を用いる摺動部においては、“かじり(焼付き)”の発生を防ぐことも問題となっており、硬質被膜としてDLC被膜を用いたとしても、かじりの発生を防ぐことは困難であった。
【0008】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、摺動部において、摩耗や、かじりが生じるおそれがない燃料噴射インジェクタの製造方法及び燃料噴射ポンプの製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく本発明に係る燃料噴射インジェクタの製造方法は、ピストンボアと、そのピストンボア内を摺動し、ピストンボアの噴出口を開閉するニードルピストンで構成される燃料噴射インジェクタの製造方法において、ニードルピストンに、該ニードルピストンを拡径したヘッド部を形成すると共に、ピストンボアとニードルピストンの摺動クリアランスを構成するピストンボアのボア面の内径、ニードルピストンのヘッド部の外径を均一に形成し、摺動面を構成する前記ニードルピストンのヘッド部の側面及び該ニードルピストンのヘッド部の側面と対向する前記ピストンボアのボア面の両方に、CrN及びCr 2 Nを含む結晶からなるクロム窒化物被膜を、反応性スパッタリング法により、かつ、処理温度が200〜250℃で成膜速度が0.5〜5μm/hrで形成すると共に、そのクロム窒化物被膜を摺動方向全面に亘って均一な膜厚で形成し、表面硬度を1500〜2500HV、かつ、摩擦係数を対スチールで0.12〜0.18とするものである。
【0010】
また、本発明に係る燃料噴射ポンプの製造方法は、プランジャバレルと、そのプランジャバレル内を摺動し、燃料を圧送するプランジャで構成される燃料噴射ポンプの製造方法において、プランジャバレルとプランジャの摺動クリアランスを構成するプランジャバレルの内径、プランジャの外径を均一に形成し、摺動面を構成する前記プランジャの側面及び該プランジャの側面と対向するプランジャバレルの内周面の両方にCrN及びCr 2 Nを含む結晶からなるクロム窒化物被膜を、反応性スパッタリング法により、かつ、処理温度が200〜250℃で成膜速度が0.5〜5μm/hrで形成すると共に、そのクロム窒化物被膜を摺動方向全面に亘って均一な膜厚で形成し、表面硬度を1500〜2500HV、かつ、摩擦係数を対スチールで0.12〜0.18とするものである。
【0011】
以上の構成によれば、摺動部の摺動クリアランスが微小なピストンボアとニードルピストン(又はプランジャバレルとプランジャ)であっても、摺動部において、摩耗や、かじりが生じるおそれがなくなる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適一実施の形態を添付図面に基いて説明する。
【0013】
機械加工によって製造した直後の燃料噴射インジェクタのピストンボア及びニードルピストンの要部断面図を図1に、第1の実施の形態に係る燃料噴射インジェクタのピストンボア及びニードルピストンの要部断面図を図2に示す。
【0014】
図1に示すように、機械加工によって製造した直後のピストンボア1は内径D1のボア面1aを有しており、また、ニードルピストン2は、外径がd1のヘッド部3と、ロッド部4を有している。つまり、ピストンボア1とニードルピストン2のクリアランスは、C1(=(D1−d1)/2)と表される。
【0015】
図2に示すように、第1の実施の形態に係る燃料噴射インジェクタ21は、図1に示した機械加工によって製造した直後のピストンボア1及びニードルピストン2の摺動部、即ちボア面1a及びヘッド部3の内、少なくとも一方の摺動部(図2中ではヘッド部3の外面3aのみ)に、表面硬度が高く、かつ、低摩擦係数であり、膜厚tのクロム窒化物(CrN及びCr 2 Nを含む結晶)の被膜(以下、微結晶クロム窒化物被膜という)5を形成したものである。
【0016】
ヘッド部3の外面3aに膜厚tの微結晶クロム窒化物被膜5を形成することで、ニードルピストン12の外径はd2(=d1+2t)となる。つまり、微結晶クロム窒化物被膜5を形成した後のピストンボア1とニードルピストン12の摺動クリアランスは、C2(=(D1−d2)/2)と表される。
【0017】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
【0018】
微結晶クロム窒化物被膜のX線回折チャートを図3に示す。ここで、図3は、ターゲットをCu、管電圧を30kV、管電流を30mA、固定角度を2°とした時の、微結晶クロム窒化物(CrxNy)被膜のX線回折パターンを示している。
【0019】
本実施の形態においては、機械加工によって製造した直後のピストンボア1及びニードルピストン2の少なくとも一方の摺動部に、表面硬度が高く(例えば約1500〜2500HV)、かつ、低摩擦係数(例えば、対スチールで0.12〜0.18)の微結晶クロム窒化物被膜5を形成している。この微結晶クロム窒化物被膜5は、前述したDLC(従来の硬質被膜)と比較して、摩擦係数は略同等又は同等以下であるものの、硬度が低く、適度な“馴染み性”を有しているため、摺動クリアランスC2が微小(例えば、10μm未満)であっても、ピストンボア1とニードルピストン12の摺動部において、摩耗や、かじりが生じるおそれがない。
【0020】
また、微結晶クロム窒化物被膜5の形成方法として反応性スパッタリング法を用いることで、微結晶クロム窒化物被膜5の成膜速度を約0.5〜5μm/hrの範囲で精度良く制御可能であり、この微結晶クロム窒化物被膜5の膜厚tを被膜形成部の全面に亘って均一とすることができる。このため、微結晶クロム窒化物被膜5の膜厚tを、約1〜10μmの範囲で自由に、かつ、精度よく(例えば、0.1μmオーダー)制御しながら被膜形成をすることができる。これによって、膜厚tを精度よく制御しながらヘッド部3の外面3aに微結晶クロム窒化物被膜5を形成できるため、許容される摺動クリアランスの同軸度が厳しい場合(例えば5μm未満)においても、摺動クリアランスC2を適正範囲内に収めることができる。
【0021】
さらに、微結晶クロム窒化物被膜5の結晶構造は、図3に示すX線回折チャートからわかるように、回折ピ−クがブロードで、緻密な微細結晶構造であるため、結晶粒界がほとんどなく、被膜5の表面が非常に滑らかとなる。例えば、PVD法により得られた従来のTiN被膜の表面粗さと比較して、反応性スパッタリング法により得られた本実施の形態の微結晶クロム窒化物被膜の表面粗さは半分以下となる。これによって、従来のTiN被膜と比較して、本実施の形態の燃料噴射インジェクタ21における微結晶クロム窒化物被膜5の摩擦係数が小さくなる。
【0022】
また、真空アーク放電イオンプレーティングやHCD(中空陰極放電)イオンプレーティング等のPVD法を用いてクロム窒化物被膜5の形成を行なうと、処理温度が高い(300〜700℃)ため、ニードルピストン12のヘッド部3に高温による熱歪みが生じるおそれがあるが、本実施の形態の燃料噴射インジェクタ21の微結晶クロム窒化物被膜5は反応性スパッタリング法により形成したものであるため、処理温度が200〜250℃と低く、ニードルピストン12のヘッド部3に熱歪みが生じるおそれは殆どない。
【0023】
さらに、許容される摺動クリアランスの同軸度が厳しい場合であっても、上述した理由により、適正な摺動クリアランスC2を得ることができることから、ロット生産されたピストンボア1及びニードルピストン2の加工精度が、ある一定範囲内(例えば、±6μm以下)であれば本実施の形態の燃料噴射インジェクタ21に適用可能であり、高精度に機械加工したピストンボア1及びニードルピストン2を用いる必要がない。
【0024】
また、微結晶クロム窒化物被膜5の被膜形成は、バッチ式処理であり、複数個のニードルピストン2に対して同時に処理することができるため、生産性が良好である。
【0025】
本実施の形態の燃料噴射インジェクタ21のピストンボア1及びニードルピストン12は、供給圧が高く、かつ、粘度の低い燃料(DMEやアルコール燃料など)を使用するコモンレール式噴射インジェクタのピストンボア及びニードルピストンに特に有効である。
【0026】
また、本実施の形態においては、ニードルピストン2のヘッド部3の外面3aのみに微結晶クロム窒化物被膜5を形成した場合について説明を行なったが、ピストンボア1のボア面1aのみ、又はヘッド部外面3a及びボア面1aの両方に微結晶クロム窒化物被膜5を形成してもよく、それらの場合においても本実施の形態と同様の作用効果が得られることは言うまでもない。ここで、ヘッド部外面3a及びボア面1aの両方に微結晶クロム窒化物被膜5を形成した場合、ヘッド部外面3a又はボア面1aの片方のみに微結晶クロム窒化物被膜5を形成する場合と比較して、被膜形成時間を略半分に短縮することができ、更に生産性が良好となるという新たな作用効果が得られる。
【0027】
さらに、本実施の形態においては、燃料系の摺動部材として、燃料噴射インジェクタ21のピストンボア1及びニードルピストン12について説明を行なったが、燃料系の摺動部材としては、ピストンボア1及びニードルピストン12に限定するものではなく、その他の摺動部材、例えば、燃料噴射ポンプのプランジャバレル及びプランジャであってもよい。それらの場合においても本実施の形態と同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【0028】
【実施例】
<試験1>
Cr−Mo鋼であるSCM415(JIS規格)を用いて、燃料噴射インジェクタのピストンボア及びニードルピストンを形成し、3組の試験材を得る。
【0029】
(実施例1)
ニードルピストンをチャンバー内に配置し、そのヘッド部の表面に、膜厚4μmの微結晶クロム窒化物被膜を反応性スパッタリング法により形成し、ピストンボアと合わせて実施例1の試験材とする。
【0030】
反応性スパッタリング法の各種条件は、チャンバー容積が約100L、Cr材からなるターゲット陰極のサイズが150mm×450mm、ターゲット陰極の出力が10kW、基材加熱温度が250℃、基材バイアス電圧が−100V、ターゲットシャッターは開、アルゴンガス流量が35sccm、窒素ガス流量が40sccm、成膜時におけるチャンバー内の全圧が0.4Pa、成膜時間が60分である。
【0031】
(比較例1)
ニードルピストンをチャンバー内に配置し、そのヘッド部の表面に、実施例1と同程度の膜厚のTiN被膜をPVD法により形成し、研磨後、ピストンボアと合わせて比較例1の試験材とする。
【0032】
(比較例2)
ニードルピストンをチャンバー内に配置し、そのヘッド部の表面に、実施例1と同程度の膜厚のDLC被膜をPVD法により形成し、研磨後、ピストンボアと合わせて比較例2の試験材とする。
【0033】
実施例1及び比較例1,2の各試験材における被膜の表面硬度、摩擦係数、及び表面粗さについて評価を行った。ここで、摩擦係数は、スチールに対する値である。
【0034】
実施例1の試験材における微結晶クロム窒化物被膜の表面硬度は2000HV、摩擦係数は0.15、表面粗さ(Ra)は6nmであった。
【0035】
これに対して、比較例1の試験材におけるTiN被膜の表面硬度は2300HVであり、実施例1と殆ど変わらなかった。しかし、摩擦係数は0.40、表面粗さ(Ra)は14nmであり、それぞれ実施例1の2倍以上であった。
【0036】
比較例2の試験材におけるDLC被膜の表面硬度は3000〜5000HVであり、実施例1よりも高硬度であった。また、摩擦係数は0.10であり、実施例1よりも低摩擦であった。
【0037】
<試験2>
Cr−Mo鋼であるSCM415(JIS規格)を用いて、回転部材であるピン部材と、ピン部材の周面を締付けると共に回転するピン部材の周面と摺動する締付け部材を形成する。その後、表面硬度が60.0(HRC)のピン部材及び締付け部材に、順次、浸炭深さ1mmの浸炭焼入れ処理、焼戻し処理、切削仕上げ加工を施し、3組の試験材を得る。
【0038】
(実施例2)
切削加工後のピン部材をチャンバー内に配置し、その表面に、微結晶クロム窒化物被膜を反応性スパッタリング法により形成し、締付け部材と合わせて実施例2の試験材とする。
【0039】
反応性スパッタリング法の各種条件は、実施例1の時と同様とする。
【0040】
(比較例3)
切削加工後のピン部材をチャンバー内に配置し、その表面に、DLC被膜をプラズマCVD法により形成し、締付け部材と合わせて比較例3の試験材とする。
【0041】
プラズマCVD法の各種条件は、チャンバー容積が約100L、Ti材からなるターゲット陰極のサイズが150mm×450mm、ターゲット陰極の出力が10kW、基材加熱温度が250℃、基材バイアス電圧が−140V、プラズマ電流が8A、ターゲットシャッターは閉、アルゴンガス流量が85sccm、アセチレンガス流量が120sccm、成膜時におけるチャンバー内の全圧が2Pa、成膜時間が60分である。
【0042】
(比較例4)
切削加工後のピン部材及びブロック材をそのまま使用(表面無処理)し、締付け部材と合わせて比較例4の試験材とする。
【0043】
各例の試験材を摩擦摩耗試験機(FAVILLE FL-2)にセットし、それぞれ摩擦摩耗試験を行った。摩擦摩耗試験の各種条件は、試験環境が潤滑状態(潤滑剤;パラフィン系100N)、ピン部材の回転数が330rpm、スライド速度が110mm/sec、負荷条件が増加荷重モード(200〜2500kgfの範囲でピン部材を締付ける締付け荷重を100kgfずつ増加させる)である。
【0044】
実施例2及び比較例3,4の各試験材の摩擦摩耗試験結果を表1に、また、摩擦摩耗試験における各例の試験材の、焼付き時の耐久荷重(kgf)と試験時間全体の平均摩擦係数を図4に示す。
【0045】
【表1】
Figure 0004607383
【0046】
表1及び図4に示すように、実施例2の試験材における摩擦係数は、試験開始初期においてこそ、比較例3,4の試験材における摩擦係数よりも大きい(0.174)ものの、試験時間全体を通じて摩擦係数は徐々に小さくなっていき、最小摩擦係数(0.048)は試験最終時(試験開始から115秒後)に得られ、試験時間全体における平均摩擦係数は0.068であった。また、実施例2の試験材の耐久荷重(2500kgf)及び耐久時間(115sec)は、摩擦摩耗試験機の締付け荷重が上限に達した時の値であって、焼付きは生じていなかった。
【0047】
これに対して、比較例3,4の試験材における摩擦係数は、試験開始から一定時間に亘って、徐々に小さくなっていくが、試験開始から42,12秒後の荷重が1000,500kgfの時、焼付きが生じた。焼付き発生時の最終摩擦係数は0.137,0.435であり、また、試験時間全体における平均摩擦係数は0.070,0.212であり、比較例3,4の順に、最終摩擦係数及び平均摩擦係数が大きくなっている。
【0048】
試験1及び試験2の結果より、TiN被膜を形成した場合、高硬度であるが摩擦係数が大きいため、相手材に対する攻撃性が高く、摩擦摩耗試験は行っていないものの、おそらく焼付き(かじり)が生じ易いと推測される。また、硬質被膜形成なしの場合、硬度が低いため摩擦係数が小さいものの、小さな荷重を短い時間負荷しただけで容易に焼付き(かじり)が生じてしまうことが確認できた。さらに、DLC被膜を形成した場合、高硬度・低摩擦であり、TiN被膜と比較すると耐久荷重も大きく、かつ、耐久時間も長いが、焼付きが生じるのを防ぐことはできないことが確認できた。
【0049】
これに対して、微結晶クロム窒化物被膜を形成した場合、DLC被膜を形成した場合よりも硬度が低く、かつ、摩擦(初期摩擦)は大きくなるものの、耐久荷重及び耐久時間はDLC被膜の2倍以上となり、かつ、焼付きは生じないことが確認できた。
【0050】
以上、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、他にも種々のものが想定されることは言うまでもない。
【0051】
【発明の効果】
以上要するに本発明によれば、摺動部の摺動クリアランスが微小なピストンボアとニードルピストン(又はプランジャバレルとプランジャ)であっても、摺動部において、摩耗や、かじりが生じるおそれがないという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】機械加工によって製造した直後の燃料噴射インジェクタのピストンボア及びニードルピストンの要部断面図である。
【図2】第1の実施の形態に係る燃料噴射インジェクタのピストンボア及びニードルピストンの要部断面図である。
【図3】微結晶クロム窒化物被膜のX線回折チャートである。
【図4】摩擦摩耗試験における各例の試験材の、焼付き時の耐久荷重(kgf)と試験時間全体の平均摩擦係数を示す図である。
【符号の説明】
1 ピストンボア
1a ボア面(摺動部)
2 ニードルピストン(被膜形成前のニードルピストン)
3 ヘッド部
3a ヘッド部の外面(摺動部)
5 微結晶クロム窒化物被膜
12 ニードルピストン(被膜形成後のニードルピストン)
21 燃料噴射インジェクタ
C2 摺動クリアランス

Claims (4)

  1. ピストンボアと、そのピストンボア内を摺動し、ピストンボアの噴出口を開閉するニードルピストンで構成される燃料噴射インジェクタの製造方法において、ニードルピストンに、該ニードルピストンを拡径したヘッド部を形成すると共に、ピストンボアとニードルピストンの摺動クリアランスを構成するピストンボアのボア面の内径、ニードルピストンのヘッド部の外径を均一に形成し、摺動面を構成する前記ニードルピストンのヘッド部の側面及び該ニードルピストンのヘッド部の側面と対向する前記ピストンボアのボア面の両方に、CrN及びCr 2 Nを含む結晶からなるクロム窒化物被膜を、反応性スパッタリング法により、かつ、処理温度が200〜250℃で成膜速度が0.5〜5μm/hrで形成すると共に、そのクロム窒化物被膜を摺動方向全面に亘って均一な膜厚で形成し、表面硬度を1500〜2500HV、かつ、摩擦係数を対スチールで0.12〜0.18とすることを特徴とする燃料噴射インジェクタの製造方法
  2. ピストンボアとニードルピストンの摺動クリアランスが5μm未満である請求項1記載の燃料噴射インジェクタの製造方法
  3. プランジャバレルと、そのプランジャバレル内を摺動し、燃料を圧送するプランジャで構成される燃料噴射ポンプの製造方法において、プランジャバレルとプランジャの摺動クリアランスを構成するプランジャバレルの内径、プランジャの外径を均一に形成し、摺動面を構成する前記プランジャの側面及び該プランジャの側面と対向するプランジャバレルの内周面の両方にCrN及びCr 2 Nを含む結晶からなるクロム窒化物被膜を、反応性スパッタリング法により、かつ、処理温度が200〜250℃で成膜速度が0.5〜5μm/hrで形成すると共に、そのクロム窒化物被膜を摺動方向全面に亘って均一な膜厚で形成し、表面硬度を1500〜2500HV、かつ、摩擦係数を対スチールで0.12〜0.18とすることを特徴とする燃料噴射ポンプの製造方法
  4. プランジャバレルとプランジャの摺動クリアランスが5μm未満である請求項3記載の燃料噴射ポンプの製造方法
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