JPH11294118A - 内燃機関の動弁機構 - Google Patents

内燃機関の動弁機構

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JPH11294118A
JPH11294118A JP9191198A JP9191198A JPH11294118A JP H11294118 A JPH11294118 A JP H11294118A JP 9191198 A JP9191198 A JP 9191198A JP 9191198 A JP9191198 A JP 9191198A JP H11294118 A JPH11294118 A JP H11294118A
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渕 豊 馬
Yoshiteru Yasuda
田 芳 輝 保
Motokata Ishihara
原 基 固 石
Kunio Maki
木 邦 雄 眞
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 カムシャフトの回転をリフターシムおよびバ
ルブリフターを介してバルブの往復動に変換する内燃機
関の直動式動弁機構において、カムロブ表面とリフター
シム表面との間での摩擦により生ずる摩擦損失をできる
だけ低減させる。 【解決手段】カムシャフトのカム1の回転をリフターシ
ム4およびバルブリフター3を介してバルブ2の往復動
に変換する内燃機関の動弁機構において、硬質薄膜を施
したリフターシム4と、カムロブの軸方向の表面粗さが
Raで0.08μm以下であるカムシャフトのカム1と
の組み合わせとし、カムロブ表面の加工目のクロスハッ
チ角が20°以上であり、カムロブの表面硬さがH
45以上であり、リフターシムの表面粗さがRaで0.
08μm以下であるものとした内燃機関の直動式動弁機
構。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車等の内燃機
関において比較的摩擦条件の厳しい環境下で用いられる
部品に関する技術であり、より詳しくは、動弁機構の型
式がカムシャフトの回転をリフターシムおよびバルブリ
フターを介してバルブの往復動に変換する直動式のもの
である場合においてカムシャフトのカムロブ表面とリフ
ターシム表面との間での滑り接触における摩擦状態を良
好なものとするために創作された摩擦損失の低減に関す
る技術である。
【0002】
【従来の技術】機械部品の摩擦部位における摩擦損失を
下げることを目的として、摩擦面に対して硬質薄膜等の
表面処理を施す手法に関してはこれまで数多くの発明が
なされている。このような表面処理には、例えば、PV
D(Physical Vapor Depositi
on)やCVD(Chemical Vapor De
position),メッキ等の方法があり、なかで
も、プラズマCVDやPVDイオンプレーティング、イ
オンビーム蒸着等により、硬質薄膜のTiNやCrN,
ダイヤモンド,ダイヤモンドライクカーボン(DLC)
等の表面処理が数多く試みられている。そして、これら
の表面処理が摩擦面の処理として用いられる理由は、摩
擦面における摩擦係数を下げる効果や、耐摩耗性を向上
させる効果が期待できるからである。
【0003】内燃機関の全機械的損失において動弁系で
の摩擦損失は比較的大きな割合を占める。この内燃機関
の動弁機構としては、例えば、図1のように構成される
ものがある。この動弁機構は直動式動弁構造を有するも
のであって、カムシャフトのカム1と、バルブ2と、バ
ルブリフター3と、リフターシム4と、バルブスプリン
グ5と、コッター6と、シリンダーヘッド7に設けられ
るバルブガイド8およびバルブシート9などから構成さ
れるものである。
【0004】このような動弁機構においては、燃焼室1
0に通じるポート11の開口端に設けたバルブ2を開閉
して燃焼室10の吸気・排気を制御するために、カムシ
ャフトのカム1によりリフターシム4およびバルブリフ
ター3を介してバルブ2を上下に往復駆動させるものと
なっている。
【0005】このとき、カムシャフトのカムロブ表面は
リフターシム4と滑りながら接触するが、このカムシャ
フトのカムロブ表面とリフターシム表面との間での摩擦
による機械的損失は動弁系全体での損失の中で大半を占
める。特に、アイドリング等の低回転運転時では、カム
ロブ表面とリフターシム表面との間の油膜厚さが薄いた
め潤滑状態が厳しく、ここでの摩擦損失の低減は内燃機
関全体の機械的損失の抑制に有効である。
【0006】これまで、カムロブ表面とリフターシム表
面との間での摩擦損失を下げる目的で、リフターシム表
面に硬質薄膜の表面処理を施す幾つかの技術が考案され
てきた。例えば、リフターシム表面にダイヤモンド薄膜
を施してここでの摩擦損失を下げる方法(特開平6−2
94307号公報)がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
の硬質薄膜を摩擦面に施す方法は、その使用される環境
によっては薄膜自体が基材から剥離するという薄膜の形
成による潜在的な問題があり、薄膜が剥離すれば摩擦損
失の低減に繋がらないこととなる。
【0008】上述の発明(特開平6−294307号公
報)は、リフターシム表面に硬質薄膜を施すことで摩擦
損失を減少させることを意図としたものであるが、単に
リフターシム表面に硬質薄膜を施しても、必ずしも摩擦
損失の低減に繋がるわけでないことを、これまでの解析
の中で新たに見い出した。
【0009】カムシャフトのカムロブ表面とリフターシ
ム表面との間での接触面圧は最大700MPaに達し、
また、滑り速度も最大で20m/sになるため、ここで
の摩擦面に必要とされる機能としては単に摩擦損失の低
減だけでなく、耐摩耗性や耐焼き付き性も要求される。
このような要件を満たすためには、リフターシム表面の
硬質薄膜に求められる機能として、剥離しないことが必
要条件となる。
【0010】薄膜の剥離を抑制する技術として、膜質の
改善や、膜質と基材との密着度を向上させる中間層の設
定およびその改善等、幾つかの工夫がなされているが、
使用環境を考えた場合、表面処理方法の改善だけでは解
決できない課題がある。特に、カムロブ表面とリフター
シム表面との間での摩擦においては、前述の通り、摩擦
環境が厳しいため相手材の選択をも十分に考慮した設定
が摩擦損失の低減に必要不可欠であるとの結論に達し
た。
【0011】硬質薄膜の特徴はその表面硬さが高い点に
あり、前述のTiNやCrN,ダイヤモンド,ダイヤモ
ンドライクカーボン(DLC)では、ビッカース硬さで
Hv800以上、ダイヤモンド膜では、ビッカース硬さ
でHv1000に達するものもある。このような膜の硬
さは、接触部における摩耗を抑制することに役立ち、ま
た、弾性変形量が少なく真実接触面積が減る点から摩擦
損失の低減に有効となる。
【0012】一方で、これらの膜の硬さが高いことは、
逆に膜自体の靭性が低いことや、表面処理膜と基材との
間での熱膨張係数差に起因する残留応力の高さに繋がる
場合がある。そして、これらの問題は、硬質薄膜の剥離
を促進させる潜在的な要因となる。
【0013】カムロブ表面とリフターシム表面との間で
の摩擦を鋭意観察した結果、以下のような現象を確認し
た。すなわち、表面粗さの大きいカムと硬質薄膜の表面
処理を施したリフターシムとを供試体として摩擦試験に
より評価した結果、リフターシム表面の薄膜に剥離が生
じた。そこで、リフターシムの硬質薄膜に対し幾つかの
改善策を施して再び摩擦試験を行なった結果、やはり剥
離を生じる結果となった。
【0014】一方で、カムロブ表面を粗加工した後、表
面粗さが十分小さくなるまでラップ加工を行ない、この
ようにして得たカムと、何も改善策を施さない硬質薄膜
のリフターシムとを供試体として摩擦試験を行なった結
果、剥離を発生することなく試験を終了することができ
た。
【0015】以上の現象は次のように解釈される。つま
り摩擦時におけるカムロブ表面とリフターシム表面との
間での摩擦において、カムロブ表面の加工により生じた
表面粗さに起因する微小な突起部がリフターシム表面と
の接触において通常の面圧計算で得られる最大面圧に対
し大幅に高い面圧となり、前述の硬質薄膜の潜在的な問
題、すなわち、膜自体の靭性が低いことや残留応力が高
いこと等がこれに加わり、薄膜の剥離に至ったことが考
えられる。そこで、この際の摩擦状態を調べるため、試
験後剥離の発生したリフターシムを観察した結果、剥離
の起点がいずれも表面であることが判明した。
【0016】また一方で、これらの剥離の原因となる起
点の導入時期がいつであるのか試験時間を変えて実施し
た結果、いずれも試験初期であることが明らかとなっ
た。つまり、試験初期に最もカムロブ表面の粗さが大き
く、表面粗さに起因する微小な突起が多いときに、これ
らの突起によるリフターシム表面の硬質薄膜に剥離の起
点となる欠陥が導入されることが考えられる。
【0017】これらの剥離部位は、表面の剥離していな
い部位と不連続となることから、これが新たな突起とし
てカムロブ表面を攻撃するケースも幾つか見られた。
【0018】つまり、カムロブ表面の粗さの微小突起に
より、リフターシム表面の硬質薄膜の剥離が発生しやす
くなり、さらに剥離が発生した場合に、逆に、カムロブ
の表面を粗すことにもなる。この現象は、カムロブ表面
とリフターシム表面の双方にとって表面粗さを悪化する
原因となり得るため、結果的にここでの摩擦損失を増大
させる要因となる点で問題である。この様な表面粗さの
悪化が摩擦損失の増大だけに留まらず、焼き付き等の致
命的な問題に発展するケースも有りうる。
【0019】これらの現象は、リフターシム表面に硬質
薄膜を形成せずに、摩擦によるなじみ性を向上する作用
がありかつまた現在広く用いられているリン酸マンガン
塩処理等を施していれば、硬質薄膜で見られた剥離が生
じないため問題とならない。
【0020】
【発明の目的】本発明は、カムシャフトの回転をリフタ
ーシムおよびバルブリフターを介してバルブの往復動に
変換する内燃機関の動弁機構において、カムロブ表面と
リフターシム表面との間での摩擦により生ずる摩擦損失
を低減させることを主眼とし、リフターシム表面に施し
た硬質薄膜を剥離させることなく円滑に動弁機構を作動
させることができるようにすることを目的としている。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる内燃機関
の動弁機構は、請求項1に記載しているように、カムシ
ャフトの回転をリフターシムおよびバルブリフターを介
してバルブの往復動に変換する内燃機関の動弁機構にお
いて、硬質薄膜を施したリフターシムと、カムロブの軸
方向の表面粗さがRaで0.08μm以下であるカムシ
ャフトとの組み合わせとしたことを特徴としている。
【0022】そして、本発明に係わる内燃機関の動弁機
構の実施態様においては、請求項2に記載しているよう
に、カムロブ表面の加工目のクロスハッチ角が20°以
上であるものとすることが場合によっては望ましい。
【0023】同じく、本発明に係わる内燃機関の動弁機
構の実施態様においては、請求項3に記載しているよう
に、カムロブの表面硬さがHC45以上であるものと
することが場合によっては望ましい。
【0024】同じく、本発明に係わる内燃機関の動弁機
構の実施態様においては、請求項4に記載しているよう
に、リフターシムの表面粗さがRaで0.08μm以下
であるものとすることが場合によっては望ましい。
【0025】同じく、本発明に係わる内燃機関の動弁機
構の実施態様においては、請求項5に記載しているよう
に、リフターシムの硬質薄膜処理前の下地表面粗さがR
aで0.08μm以下であるものとすることが場合によ
っては望ましい。
【0026】同じく、本発明に係わる内燃機関の動弁機
構の実施態様においては、請求項6に記載しているよう
に、リフターシムの基材は有効硬化層深さが1mm以上
で表面硬さがHC50以上である浸炭鋼からなるもの
とすることが場合によっては望ましい。
【0027】同じく、本発明に係わる内燃機関の動弁機
構の実施態様においては、請求項7に記載しているよう
に、リフターシムに施す硬質薄膜がダイヤモンドライク
カーボン(DLC)であるものとすることが場合によっ
ては望ましい。
【0028】同じく、本発明に係わる内燃機関の動弁機
構の実施態様においては、請求項8に記載しているよう
に、リフターシムに施す硬質薄膜がチタンナイトライド
(TiN)であるものとすることが場合によっては望ま
しい。
【0029】同じく、本発明に係わる内燃機関の動弁機
構の実施態様においては、請求項9に記載しているよう
に、リフターシムに施す硬質薄膜がクロムナイトライド
(CrN)またはクロム2ナイトライド(CrN)で
あるものとすることが場合によっては望ましい。
【0030】
【発明の作用】本発明による内燃機関の動弁機構は、上
述した課題を解決するための手段を講じたものであっ
て、動弁機構におけるカムロブ表面とリフターシム表面
との間での摩擦損失を低減するため、リフターシム表面
に硬質薄膜を施したものとするが、この硬質薄膜による
作用・効果を持続させるため、相手材として表面粗さの
小さいカムロブ表面を持つカムシャフトと組み合わせた
機構としている。この場合、リフターシム表面の硬質薄
膜は、相手材表面の粗さに起因する微小突起により剥離
しやすい傾向があるので、このような剥離の発生を抑制
することを目的としてカムロブの軸方向の表面粗さを小
さくすることとしている。この一方で、カムロブの表面
粗さを小さくすることは、同時に、カムロブ表面とリフ
ターシム表面との間での接触において、発生する油膜を
突き抜けて表面粗さの突起同士が直接固体接触する割合
を減らすことにより潤滑状態を良好にする作用・効果が
あり、この部位における摩擦損失の低減に寄与する。
【0031】
【発明の実施の形態およびその効果】本発明による内燃
機関の動弁機構では、カムロブの軸方向の表面粗さを小
さくすることで、リフターシム表面の硬質薄膜の剥離を
抑えることによりその効果を持続し、さらに、表面粗さ
が小さいことから潤滑状態が良好となり、摩擦損失を低
減することに繋がる。その一方で、表面粗さの小さいカ
ムロブ表面との組合せにおいては、剥離強度の小さい固
体潤滑性を持った硬質薄膜の適用も可能となり、この点
もこの部位における摩擦損失の低減に大きく効果をもた
らすこととなる。
【0032】本発明では、請求項1に記載しているよう
に、カムロブの軸方向の表面粗さをRaで0.08μm
以下としたのは、この値よりも大きくなるカムロブ表面
との組み合せでの試験で、リフターシム表面の硬質薄膜
が剥離しやすくなって摩擦トルクが高い値を示した実験
結果に基づくものである。
【0033】そして、請求項2に記載しているように、
カムシャフトのカムロブ表面での加工目の方向について
規定することも場合によっては望ましく、カムロブの表
面粗さを小さくすることに加え、ラップ加工等による加
工目を滑り方向に対して垂直方向に近付けることも場合
によっては望ましい。そして、加工目が摩擦方向に垂直
となると、くさび圧効果で摩擦面間の油膜厚さは増大
し、この現象は摩擦部位における固体接触の割合を低減
することに有効であるため、摩擦部位における摩擦損失
の低減に繋がる。このラップ加工等による加工目の方向
は、滑り方向に対して垂直であれば最も効果的である
が、必ずしも垂直にしなければならないことはなく、滑
り方向と平行でなければ、摩擦方向との角度に応じて、
くさび圧効果による摩擦損失の低減効果が現われるもの
となるので、この角度は、より望ましくは20°以上と
することで特に大きな効果が得られることを実験により
確認できた。
【0034】また、請求項3に記載しているように、カ
ムロブの表面硬さについて規定することも場合によって
は望ましく、カムロブの表面粗さを小さくした上でこの
カムロブの表面硬さを上げることは、弾性変形量が減少
することから固体接触部位における真実接触面積を小さ
くすることができ、摩擦損失の低減に繋がるものとな
る。また、間接的に、ある程度相手攻撃性を抑えつつ表
面の硬さを高くすることで、初期の表面粗さを小さいま
まに維持することが可能となり、摩擦損失を下げた状態
を長く維持することに有効となる。この場合、カムシャ
フトの材質は鋼またはチル鋳鉄を前提としており、実験
結果によれば、HC45以上で表面粗さの悪化が抑制
されたことから、表面硬さの値の規定をHC45以上
とするのが場合によっては望ましいこととした。
【0035】さらに、請求項4に記載しているように、
リフターシムの表面粗さについて規定することも場合に
よっては望ましく、リフターシムの表面粗さが小さい程
摩擦部位における固体接触の割合が減少し、摩擦損失の
低減に有効となる。そして、リフターシムの表面粗さを
Raで0.08μm以下とするのが望ましいこととした
のは実験結果に基づく数値である。
【0036】さらまた、請求項5に記載しているよう
に、リフターシムの硬質薄膜処理前の下地表面粗さにつ
いて規定することも場合によっては望ましく、PVDや
CVDによる硬質薄膜形成のための表面処理によれば、
薄膜表面処理後の表面粗さは下地粗さの影響が大きく現
われるため、請求項5で規定したように硬質薄膜処理前
の下地表面粗さをRaで0.08μm以下ものとするこ
とも場合によっては望ましい。
【0037】さらにまた、請求項6に記載しているよう
に、リフターシムの基材の材料特性について規定するこ
とも場合によっては望ましく、カムロブ表面とリフター
シム表面との接触部位における最大面圧は700MPa
にも達することから、圧力がかかった場合のリフターシ
ムの接触部での変形は、硬質薄膜の硬さよりも、硬さの
低い基材の特性による影響の方が大きいため、基材の表
面硬さおよび硬化層深さがある値以上でないと、リフタ
ーシムがその全体で変形し、これに伴い硬質薄膜も変形
して膜内に大きな変形ひずみを生じることもありうる。
【0038】したがって、そのひずみの程度にもよる
が、膜の剥離に至ることもありうるので、上記した70
0MPa程度の面圧が負荷される部位においては、リフ
ターシムの基材の特性として有効硬化層深さが1mm以
上で表面硬さがHC50以上である浸炭鋼からなるも
のとすることも場合によっては望ましい。
【0039】さらにまた、請求項7ないし請求項9に記
載しているように、リフターシムに施す硬質薄膜の種類
について規定することも場合によっては望ましい。この
うち、請求項7に記載しているダイヤモンドライクカー
ボン(DLC)膜は、ビッカース硬さがHv800以上
あり、また、成膜時の特徴としてダイヤモンド膜に比べ
平滑な表面を得やすい利点を持ち、摩擦部位における潤
滑状態をより一層良好なものにする効果がある。さら
に、このDLC膜自体は固体潤滑膜として知られるよう
に無潤滑下でも摩擦係数が低いことから、摩擦部位にお
ける固体接触部での摩擦損失の低減に有効である。他
方、請求項8に記載しているように、硬質薄膜をチタン
ナイトライド(TiN)であるものとすることも場合に
よっては望ましく、あるいは、請求項9に記載している
ように、硬質薄膜をクロムナイトライド(CrN)また
はクロム2ナイトライド(CrN)であるものとする
ことも場合によっては望ましく、いずれの場合も表面硬
さはビッカース硬さでHv1500程度あり、また、表
面も平滑なことから、潤滑状態をより一層良好なものに
することができる。
【0040】さらに、製造条件によっては、微小なデポ
ジットを表面に残存させることも可能であることから、
その研磨作用により、相手材であるカムロブの表面粗さ
を摩擦中に小さくすることも可能であり、これらは摩擦
部位における固体接触割合の減少に繋がることから、摩
擦損失のより一層の低減に効果がある。
【0041】
【実施例】次に、本発明の実施例を比較例と共に説明す
るが、本発明はこのような実施例のみに限定されないこ
とはいうまでもない。
【0042】本発明による効果を確認するにあたり、内
燃機関の動弁機構を模擬したカム単体試験装置による摩
擦試験によって評価を行なった。
【0043】本発明による効果は、カムロブ表面とリフ
ターシム表面との間での摩擦損失の低減にあり、この摩
擦損失の代用値として、カムロブ表面とリフターシム表
面との間での摩擦により発生するカムシャフトの軸トル
クを用い、この軸トルクの値を上記試験で計測すること
とした。したがって、以下、この値を摩擦トルクと称す
る。そして、ここでの摩擦トルクは、1回転の軸トルク
を平均化した値である。また、ここで用いたカムロブ試
験片は、自動車用内燃機関のカムシャフトから切り出し
たものをそのまま用いた。そしてまた、このカムロブ試
験片に更に仕上げ加工を加えたり、熱処理を施したりす
ることで、幾つかの試験片を準備した。また、リフター
シムの素材としては、自動車用内燃機関で使用している
リフターシム(合金鋼の浸炭材)を母材として用い、こ
の表面に各種の表面処理や仕上げ加工を施して準備し
た。
【0044】このカム単体試験装置での摩擦試験条件に
ついて説明する。ここで使用したカム単体試験装置は、
直動式の動弁機構を模擬した仕様を有するものであっ
て、この試験には、単体のカムロブ試験片とリフターシ
ム試験片の1組を用いた。
【0045】試験条件を表1に示すと共に、試験結果を
表2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】表2において、実施例1から実施例4は表
面粗さの小さいカムロブと硬質薄膜種としてDLCの薄
膜を施したリフターシムとの組合せとしたものであり、
実施例5から実施例7は表面粗さの小さいカムロブと硬
質薄膜種としてTiNの薄膜を施したリフターシムとの
組合せとしたものであり、実施例8と実施例9は表面粗
さの小さいカムロブと硬質薄膜種としてCrNの薄膜
を施したリフターシムとの組合せとしたものである。
【0049】表2に示すように、いずれの実施例におい
ても比較例と比べて摩擦トルクは低い値を得ている。そ
して、わずかにひっかき傷等は見られたが、カムロブの
表面粗さおよびリフターシムの表面粗さや、摩擦トルク
に影響を及ぼすような顕著な剥離の発生は殆ど見られな
かった。
【0050】他方、比較例1,比較例2および比較例5
は表面粗さの大きいカムロブと硬質薄膜を施したリフタ
ーシムとの組合せとしたものであるが、いずれも薄膜の
剥離が生じており、摩擦トルクはいずれの実施例に比べ
ても高い値であった。そして、比較例2は同じDLC薄
膜のリフターシムとの組合せである比較例1に比べて摩
擦トルクが若干高いものであった。そこで、試験終了後
にリフターシムを観察した結果、薄膜の剥離した面積割
合は比較例2の方が多く、表面粗さも大であった。これ
は、比較例2のリフターシムの初期粗さが大きく、潤滑
状態が悪かったことが原因と考えられた。
【0051】次に、比較例3はリフターシムの基材の表
面硬さがHC45と低いものであったため、基材が大
きく変形し、薄膜の剥離が加速されたために好ましくな
い結果になったものと考えられた。
【0052】また、比較例4はリフターシムの表面粗さ
が大となっているものであるが、摩擦トルクが大きく、
カムロブ表面の摩擦量も多いものとなっていた。そし
て、薄膜の剥離は見られなかったが、薄膜の粗さが大き
かったため潤滑状態が悪く、さらに、TiNの膜自体の
硬さが高いことも加わり、相手攻撃性が強く、カムロブ
表面の摩耗を加速したものと考えられた。
【0053】さらに、比較例6は表面粗さの大きいカム
ロブと薄膜なしのリフターシムとの組合せとしたもので
あるが、潤滑状態の悪さが摩擦トルクの増大の原因とな
っていた。
【0054】さらにまた、比較例7はカムロブ表面とリ
フターシム表面が共に表面粗さが小さい組合せとしたも
のであり、摩擦トルクは初期に低い値を示していたが、
試験中徐々に増大し、試験末期では比較的高い値を示し
た。そこで、試験後にリフターシムの表面粗さを計測し
た結果、試験前に比べて悪化しており、このことが実施
例に比べて摩擦トルクが高くなった原因と考えられた。
【0055】硬質薄膜を施したリフターシムの場合、剥
離さえしなければ摩耗による表面粗さの悪化は非常に少
ない。このことから、摩擦トルクの低減には単に表面粗
さを小さくするだけではなく、摩耗による表面粗さの変
化を考慮し、摩擦面を硬くすることも重要な要素と考え
られ、この点で、硬質薄膜を施したリフターシムと、薄
膜の剥離を抑制する表面粗さの小さいカムロブとの組合
せが有効であると言える。
【0056】以上の試験結果より、本発明に従えば、摩
擦部位で発生する摩擦損失を低減することを確認でき
た。
【0057】そのほか、例示はしないが、本発明は当業
者の知識に基づき種々の変更、改良を加えた態様で実施
することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】内燃機関の直動式の動弁機構を示す断面説明図
である。
【符号の説明】
1 カムシャフトのカム 2 バルブ 3 バルブリフター 4 リフターシム 5 バルブスプリング
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 眞 木 邦 雄 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カムシャフトの回転をリフターシムおよ
    びバルブリフターを介してバルブの往復動に変換する内
    燃機関の動弁機構において、硬質薄膜を施したリフター
    シムと、カムロブの軸方向の表面粗さがRaで0.08
    μm以下であるカムシャフトとの組み合わせとしたこと
    を特徴とする内燃機関の動弁機構。
  2. 【請求項2】 カムロブ表面の加工目のクロスハッチ角
    が20°以上であるものとした請求項1に記載の内燃機
    関の動弁機構。
  3. 【請求項3】 カムロブの表面硬さがHC45以上で
    あるものとした請求項1または2に記載の内燃機関の動
    弁機構。
  4. 【請求項4】 リフターシムの表面粗さがRaで0.0
    8μm以下であるものとした請求項1ないし3のいずれ
    かに記載の内燃機関の動弁機構。
  5. 【請求項5】 リフターシムの硬質薄膜処理前の下地表
    面粗さがRaで0.08μm以下であるものとした請求
    項1ないし4のいずれかに記載の内燃機関の動弁機構。
  6. 【請求項6】 リフターシムの基材は有効硬化層深さが
    1mm以上で表面硬さがHC50以上である浸炭鋼か
    らなるものとした請求項1ないし5のいずれかに記載の
    内燃機関の動弁機構。
  7. 【請求項7】 リフターシムに施す硬質薄膜がダイヤモ
    ンドライクカーボン(DLC)であるものとした請求項
    1ないし6のいずれかに記載の内燃機関の動弁機構。
  8. 【請求項8】 リフターシムに施す硬質薄膜がチタンナ
    イトライド(TiN)であるものとした請求項1ないし
    6のいずれかに記載の内燃機関の動弁機構。
  9. 【請求項9】 リフターシムに施す硬質薄膜がクロムナ
    イトライド(CrN)またはクロム2ナイトライド(C
    N)であるものとした請求項1ないし6のいずれか
    に記載の内燃機関の動弁機構。
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