JPH10207556A - 能動型振動制御装置 - Google Patents

能動型振動制御装置

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JPH10207556A
JPH10207556A JP1379997A JP1379997A JPH10207556A JP H10207556 A JPH10207556 A JP H10207556A JP 1379997 A JP1379997 A JP 1379997A JP 1379997 A JP1379997 A JP 1379997A JP H10207556 A JPH10207556 A JP H10207556A
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vibration
frequency
signal
amplitude
control
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Hiroshi Kawazoe
寛 川添
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Abstract

(57)【要約】 【課題】伝達関数を同定する際の消費エネルギを低減し
たい。 【解決手段】周波数f0 をアイドル振動周波数fidに設
定し(201)、周波数f0 に対応する振幅A0 を読み
込み(202)、周波数f0 ,振幅A0 の正弦波状の同
定信号を出力し(203)、残留振動信号eを読み込み
(204)、十分な個数を読み込んだか否かを判定する
(205)。この判定が「YES」となったら新たな周
波数f0 を演算し(206)、周波数f0 が最大値f
max を越えているか否かを判定する(207)。この判
定が「YES」となったら残留振動信号eの時系列デー
タのそれぞれについてFFT演算を行って各周波数成分
を抽出し(208)、各周波数成分の大きさを補正し
(209)、それを合成したものを逆FFT演算し時間
軸上のインパルス応答に変換し(210)、そのインパ
ルス応答を新たな伝達関数フィルタC^とする(21
1)。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両エンジン等
の振動体で発生する振動に、振動体及び支持体間に介在
する制御振動源が発生する制御振動を干渉させることに
より、支持体側に伝達される振動の低減を図る能動型振
動制御装置に関し、特に、制御振動源を駆動させるため
の制御アルゴリズムが、制御振動源と、残留振動を検出
する手段との間の伝達関数を含むものにおいて、その伝
達関数を同定する際の消費エネルギの低減が図られるよ
うにしたものである。
【0002】
【従来の技術】本発明のような能動型振動制御装置の場
合、制御振動源と残留振動を検出する手段との間の伝達
関数は、その能動型振動制御装置の適用対象装置,適用
対象設備毎の特性バラツキによって微妙に異なるし、ま
た、適用対象装置等の使用に伴う特性変化等によって当
初の状態からは変化してしまう可能性があるため、高精
度の振動低減制御を実行するためには、能動型振動制御
装置を適用対象装置に組み込んだ後に伝達関数を同定し
たり、適用対象装置の定期検査毎に伝達関数を同定する
ことが望ましい。
【0003】そこで、本出願人は、先に特開平6−33
2471号公報に開示されるような技術を提案してい
る。即ち、この公報に開示された従来技術は、制御音源
や制御振動源からインパルス信号に応じた同定音や同定
振動を発生させ、その応答を残留騒音や残留振動を検出
する手段で計測することにより、能動型騒音制御装置や
能動型振動制御装置の制御アルゴリズムに必要な伝達関
数を同定するようになっている。そして、そのインパル
ス信号に応じた同定音や同定信号を発生するタイミング
を、騒音源や振動源から騒音や振動が発生していない状
態から発生する状態に移行する直前に限ることにより、
演算負荷の大幅な増大を招くことなく、また、人間等に
不快感を与えることなく、伝達関数の同定が行えるよう
になっていた。
【0004】なお、その他の先行技術としては、振動の
低減ではなく騒音の低減技術に関するものではあるが、
特開平3−259722号公報に開示されたものがあ
る。この公報に開示された装置は、冷蔵庫のコンプレッ
サで発生し機械室ダクトを通じて外部に放射される騒音
を、その機械室ダクトから放射される前に打ち消す装置
であって、機械室ダクト内の騒音制御を行うラウドスピ
ーカ及びマイクロフォンを備えていて、コンプレッサの
駆動状態に応じてラウドスピーカから制御音を発生して
騒音低減を図る一方、騒音制御特性が劣化しないよう
に、コンプレッサが停止する度に、ホワイトノイズ信号
に応じた同定音を発生して、ラウドスピーカ及びマイク
ロフォン間の伝達関数を測定し、フィルタの同定を行っ
ている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】確かに、上述したよう
な先行技術によれば、能動型振動制御装置や能動型騒音
制御装置の適用対象装置毎に、制御に必要な伝達関数を
同定することは可能であるから、高精度の振動低減制御
等が期待できる。
【0006】一方、上述したような先行技術において伝
達関数を同定するためには、インパルス信号又はホワイ
トノイズ信号に応じた同定音を発生する必要があるが、
それらインパルス信号及びホワイトノイズ信号は、全周
波数帯域の成分を含む信号であるため、同定音を発生し
ても広い周波数帯域に出力が分散されてしまう。する
と、同定音の全出力を十分に高くしなければ、各周波数
成分毎の出力が僅かになってしまい、伝達関数の同定が
不十分になってしまう。従って、各周波数成分毎の出力
が十分に得られるように、高い出力で同定音を発生しな
ければならないという要求がある。
【0007】かかる要求に対しては、例えばラウドスピ
ーカを制御音源とした能動型騒音制御装置であれば、大
出力可能なラウドスピーカはスペース的な余裕さえ確保
できれば適用することは容易であるから、比較的容易に
達成することができる。
【0008】しかしながら、例えば車両のエンジンから
車体に伝達される振動を、そのエンジン及び車体間に配
設されたエンジンマウントで能動的な支持力を発生する
ことによって低減するようになっている能動型振動制御
装置の場合、エンジンマウントが発生可能な能動的な支
持力に限界がある。このため、大きなインパルス信号や
ホワイトノイズ信号を制御振動源としてのエンジンマウ
ントに供給しても、実際に発生する同定音のレベルはそ
れほど高くならず、このままでは伝達関数の同定に長時
間を要してしまう。
【0009】また、車両エンジン等が振動源となる場合
のように実際の振動低減制御の際には、ホワイトノイズ
のような全周波数帯域に渡った振動が発生するのではな
く、特定の周波数に集中した振動が発生するのが一般的
であるから、ホワイトノイズ信号等による同定音では実
際の使用条件に適した伝達関数の同定が行えない場合も
ある。
【0010】さらに、実際に伝達関数の同定を行う状況
を考えると、例えば車両用の能動型振動制御装置であれ
ば、工場のライン上において、能動型振動制御装置を搭
載した車両毎に伝達関数の同定を行うため、車両に搭載
されたバッテリによって制御振動源を駆動させて伝達関
数の同定を行わなければならない。従って、伝達関数を
同定する際の消費電力は可能な限り低減したい、という
要求がある。
【0011】本発明は、このような従来の技術が有する
未解決の課題に着目してなされたものであって、振動低
減制御に必要な伝達関数の同定精度に悪影響を与えるこ
となく、その伝達関数を同定する際の消費エネルギを低
減することができる能動型振動制御装置を提供すること
を目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る発明は、振動体及び支持体間に介在
し制御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動体の振
動発生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生
成手段と、前記支持体側の残留振動を検出し残留振動信
号として出力する残留振動検出手段と、前記基準信号及
び前記残留振動信号に基づき前記制御振動源及び前記残
留振動検出手段間の伝達関数を含む制御アルゴリズムを
用いて前記振動が低減するように前記制御振動源を駆動
する能動制御手段と、を備え、前記制御振動源は、前記
制御振動を発生させるための流体共振系を有している能
動型振動制御装置において、正弦波状の同定信号を順次
その周波数を変えて前記制御振動源に供給する同定信号
供給手段と、前記同定信号に応じた振動が前記制御振動
源から発せられた場合の前記残留振動信号を読み込む応
答信号読み込み手段と、この応答信号読み込み手段が読
み込んだ前記残留振動信号に基づいて前記伝達関数を同
定する伝達関数同定手段と、前記同定信号の振幅をその
周波数が前記流体共振系の共振周波数から離れた同定信
号については小さくなるように設定する振幅設定手段
と、を備えた。
【0013】請求項2に係る発明は、上記請求項1に係
る発明である能動型振動制御装置において、前記振幅設
定手段は、周波数が前記流体共振系の共振周波数に等し
い前記同定信号の振幅は大きく設定し、周波数が前記流
体共振系の共振周波数から離れた前記同定信号の振幅は
小さく設定するようになっているものである。
【0014】また、請求項3に係る発明は、上記請求項
1に係る発明である能動型振動制御装置において、前記
振幅設定手段は、周波数が前記流体共振系の共振周波数
に等しい前記同定信号の振幅を、前記振動体で発生する
振動の周波数が前記共振周波数に等しいときに前記能動
制御手段が前記制御振動源に供給する駆動信号の振幅に
一致した所定振幅に設定するとともに、周波数が前記流
体共振系の共振周波数から離れるに従って前記同定信号
の振幅を徐々に小さくするようになっているものであ
る。
【0015】そして、請求項4に係る発明は、上記請求
項1に係る発明である能動型振動制御装置において、前
記振幅設定手段は、前記同定信号の振幅を、その周波数
と前記流体共振系の共振周波数との差が所定のしきい値
未満である同定信号については、前記振動体で発生する
振動の周波数が前記共振周波数に等しいときに前記能動
制御手段が前記制御振動源に供給する駆動信号の振幅に
一致した所定振幅に設定するとともに、その周波数と前
記流体共振系の共振周波数との差が前記しきい値以上で
ある同定信号については、前記所定振幅よりも小さい振
幅に設定するようになっているものである。
【0016】さらに、請求項5に係る発明は、上記請求
項1〜4に係る発明である能動型振動制御装置におい
て、前記伝達関数同定手段は、前記応答信号読み込み手
段が読み込んだ前記残留振動信号を前記同定信号毎にフ
ーリエ変換してその同定信号の周波数に相当する成分を
抽出するフーリエ変換手段と、このフーリエ変換手段が
抽出した各周波数成分を各同定信号の振幅で補正する補
正手段と、この補正手段の各結果を合成したものを逆フ
ーリエ変換して前記伝達関数としてのインパルス応答を
求める逆フーリエ変換手段と、を備えた。
【0017】また、請求項6に係る発明は、上記請求項
1〜5に係る発明である能動型振動制御装置において、
前記制御振動源は、前記振動体及び支持体間に介在する
支持弾性体と、この支持弾性体によって画成された主流
体室と、オリフィスを介して前記主流体室に連通する容
積可変の副流体室と、前記主流体室,副流体室及びオリ
フィス内に封入された流体と、前記主流体室の隔壁の一
部を形成する可動部材と、この可動部材を前記主流体室
の容積を変化させる方向に変位させるアクチュエータ
と、を備え、前記流体共振系は、前記主流体室及び副流
体室をそれぞれ画成する隔壁の拡張方向ばねと前記オリ
フィス内の流体とで構成されているものである。
【0018】そして、請求項7に係る発明は、上記請求
項1〜6に係る発明である能動型振動制御装置におい
て、前記能動制御手段は、フィルタ係数可変の適応ディ
ジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応ディジタル
フィルタでフィルタ処理することにより前記制御振動源
を駆動する駆動信号を生成し出力する駆動信号生成手段
と、前記伝達関数に前記基準信号を入力した場合の応答
結果である更新用基準信号を演算する更新用基準信号演
算手段と、前記残留振動信号及び前記更新用基準信号に
基づき前記制御アルゴリズムとしての逐次更新型の適応
アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフィルタのフ
ィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段と、を備え
た。
【0019】さらに、請求項8に係る発明は、上記請求
項1〜7に係る発明である能動型振動制御装置を車両に
適用するとともに、前記振動体をエンジンとしたもので
あって、前記流体共振系の共振周波数を、アイドル振動
周波数近傍に調節した。
【0020】またさらに、請求項9に係る発明は、上記
請求項1〜7に係る発明である能動型振動制御装置を車
両に適用するとともに、前記振動体をエンジンとしたも
のであって、前記流体共振系の共振周波数を、アイドル
振動周波数よりも若干低い周波数に調節した。
【0021】ここで、請求項1に係る発明にあっては、
同定信号供給手段から制御振動源には、正弦波状の同定
信号が供給されるため、その同定信号に応じて制御振動
源から発せられる振動(同定振動)は、正弦波状に変化
する振動となる。すると、同定振動の周波数成分は、元
の正弦波の周波数に相当する特定周波数に集中するよう
になるから、制御振動源が発生可能な能動的な支持力に
限界があっても、応答信号読み込み手段において比較的
高レベルの残留振動信号を読み込むことができるし、同
定信号の周波数は順次変更されるから、広い周波数帯域
に渡って有効な伝達関数を、伝達関数同定手段において
高精度に同定することができる。
【0022】また、同定振動の周波数成分が特定周波数
に集中すれば、応答信号読み込み手段で読み込む必要が
ある残留振動信号は、伝達関数(インパルス応答)とし
て時間軸上で必要な長さに相当した分だけ取り込めばよ
いから、同定振動を発している時間は、ホワイトノイズ
信号により同定する場合よりも短くて済む。つまり、ホ
ワイトノイズ信号を用いて同定演算を行うためには、同
定振動を残留振動信号として取り込む一方で例えば適応
演算を行って伝達関数を同定する必要があるから、伝達
関数を高精度に同定するためには、できるだけ長時間に
渡って同定振動を発生し続ける必要があるが、この請求
項1に係る発明のように、正弦波状の同定振動を発生す
る構成であれば、残留振動信号に含まれる周波数成分の
うち、同定信号の元となっている正弦波の周波数に相当
する成分のレベル及び位相を例えばフーリエ変換処理等
によって把握できればよいのであるから、伝達関数同定
手段における演算処理に必要な時間は、結局は必要なデ
ータ数を取り込むのに費やされる時間となり、ホワイト
ノイズ信号により伝達関数を同定する場合よりも短くな
るのである。
【0023】そして、同定振動の周波数成分が特定周波
数に集中すれば、伝達関数同定手段における演算処理も
例えばフーリエ変換や逆フーリエ変換等の比較的演算負
荷の小さい演算で済むようになるから、ホワイトノイズ
信号により同定する場合よりも処理が簡易となり、必要
なコントローラも比較的低能力のものとなる。
【0024】さらに、この請求項1に係る発明にあって
は、制御振動を発生させる制御振動源は、その制御振動
を発生させる際に流体の往復運動が生じる流体共振系を
有しているため、制御振動源で発生する振動には、流体
の振幅依存性が大きく影響することになる。
【0025】従って、振幅依存性の大きい周波数では、
同定信号の振幅が小さい(同定振動の振幅が小さい)と
ばね定数が大きくなり、同定信号の振幅が大きい(同定
振動の振幅が大きい)とばね定数が小さくなる、という
ように同定信号の振幅によって制御振動源の特性が大き
く異なってしまう。このため、同定信号の周波数が周波
数依存性の大きい周波数である場合には、振動低減制御
を実行する際に発生させる制御振動と同じ大きさの同定
振動を発生させなければ、振動低減制御に有効な伝達関
数を同定することはできない。
【0026】これに対し、振幅依存性の小さい周波数で
は、同定振動の振幅の大小は、制御振動源の特性に大き
な影響は与えない。しかも、同定振動を発生させる際の
消費エネルギは、その同定振動の振幅が小さいほど少な
くなるし、同定振動の振幅は同定信号の振幅に比例す
る。
【0027】そして、振幅依存性は、流体共振系の共振
周波数及びその近傍で大きく、共振周波数から遠くなる
ほど小さくなる。以上から、振幅設定手段によって、同
定信号の振幅が、その周波数が流体共振系の共振周波数
から離れた同定信号については小さくなるように設定さ
れれば、伝達関数の同定精度を劣化させることなく、同
定振動を発生させる際の消費エネルギを低減することが
できるのである。
【0028】また、振動低減制御を実行する際に発生さ
せる制御振動のレベルは、制御振動源で発生することが
できる最大レベル近傍であることが多い。これは、配設
スペースやコスト等の関係から、振動体で発生する振動
と全く同じレベルの制御振動を発生することできる大型
で大能力の制御振動源は、実際には採用することが困難
であるので、小型で小能力の制御振動源を採用し、それ
を最大出力で使用せざるを得ないからである。そこで、
請求項2に係る発明のように、振幅設定手段が同定信号
の振幅を設定すれば、上記請求項1に係る発明の作用が
より確実に発揮されるようになる。
【0029】そして、請求項3に係る発明にあっては、
振幅設定手段によって、同定信号の振幅は徐々に変化す
るようになる。つまり、同定信号の振幅は、その周波数
が流体共振系の共振周波数に等しいところで最大の所定
振幅に設定され、その周波数が流体共振系の共振周波数
から離れるに従って徐々に小さくなる。よって、同定信
号の振幅は、流体の振幅依存性の大小に的確に沿って変
化するから、上記請求項1に係る発明の作用がより確実
に発揮されるようになる。
【0030】これに対し、請求項4に係る発明にあって
は、振幅設定手段によって、同定信号の振幅は大小二段
階に変化するようになる。つまり、同定信号の振幅は、
その周波数が流体共振系の共振周波数から大きく離れな
い範囲では最大の所定振幅に設定され、その周波数が流
体共振系の共振周波数から大きく離れると所定振幅より
も小さい振幅に設定される。これによっても、同定信号
の振幅は、流体の振幅依存性の大小を略反映するように
変化するから、上記請求項1に係る発明の作用を発揮す
ることができる。しかも、同定信号の振幅は二段階に変
化するだけであれば、振幅設定手段における同定信号の
振幅の設定を、より簡易な処理で行うことができる。
【0031】請求項5に係る発明は、上記請求項1〜4
に係る発明における伝達関数同定手段をさらに具体的に
したものであり、フーリエ変換手段が、各正弦波に対応
する残留振動信号をフーリエ変換して、各残留振動信号
における各正弦波の周波数に相当する成分が抽出される
から、その周波数成分は、各正弦波毎の伝達関数を表す
ことになる。
【0032】ただし、応答信号読み込み手段が読み込ん
だ残留振動信号のレベルは、同定信号の振幅がその周波
数毎に個別に設定されていることの影響を受けるため、
そのまま伝達関数を求めてしまうと、各正弦波の振幅の
相違が、振動伝達系の特性として伝達関数に取り込まれ
てしまうが、この請求項5に係る発明では、補正手段
が、フーリエ変換手段の結果を各正弦波の振幅で補正す
る(例えば、フーリエ変換手段の各結果を、元の正弦波
の振幅で割る)から、各正弦波の振幅の相違が伝達関数
に影響を与えることを回避できる。
【0033】そして、補正手段によって補正されたもの
が逆フーリエ変換手段によって逆フーリエ変換されるか
ら、伝達関数としてのインパルス応答が求められる。請
求項6に係る発明は、上記請求項1〜5に係る発明にお
ける制御振動源をさらに具体的にしたものであり、支持
弾性体によって主流体室が画成され、主流体室はオリフ
ィスを介して副流体室に連通し、それら主流体室,オリ
フィス及び副流体室内には流体が封入されているため、
アクチュエータで可動部材を変位させることにより支持
弾性体の拡張方向ばねを積極的に変形させて能動的な支
持力を発生させる際には、主流体室及び副流体室間でオ
リフィスを通じて往来する流体の共振作用を利用して、
振動体及び支持体間に作用する支持力の増大を図ること
ができる。
【0034】請求項7に係る発明は、上記請求項1〜6
に係る発明における能動制御手段をさらに具体的にした
ものであり、制御アルゴリズムとして逐次更新型の適応
アルゴリズム(例えば、LMSアルゴリズム)を適用し
ている。このため、駆動信号生成手段が基準信号を適応
ディジタルフィルタでフィルタ処理することにより駆動
信号を生成し、その駆動信号が制御振動源に供給されて
制御振動が発生する一方で、フィルタ係数更新手段が、
残留振動信号及び更新用基準信号に基づき適応アルゴリ
ズムに従って適応ディジタルフィルタのフィルタ係数を
逐次更新するから、その適応ディジタルフィルタのフィ
ルタ係数は、制御振動源から発せられる制御振動によっ
て振動を低減できる最適値に向かって収束する。そし
て、適応ディジタルフィルタのフィルタ係数が最適値に
収束した後には、制御振動源から発せられる制御振動に
よって振動が低減される。しかも、更新用基準信号を生
成するための伝達関数が、上記請求項1〜6に係る発明
の作用によって高精度に同定されるため、良好な振動低
減制御が実行される。
【0035】請求項8に係る発明は、車両に適用される
能動型振動制御装置において、流体共振系の共振周波数
を、アイドル振動周波数近傍に調節しているため、アイ
ドル振動周波数近傍において比較的大きな能動的な支持
力を発生することができるようになるから、アイドル振
動を有効に低減することができる。
【0036】これに対し、請求項9に係る発明は、車両
に適用される能動型振動制御装置において、流体共振系
の共振周波数を、アイドル振動周波数よりも若干(数H
z)低い周波数に調節しているため、アイドル振動周波
数近傍において比較的大きな能動的な支持力を発生する
ことができるし、エンジンシェイクの低減にも比較的有
効になる。アイドル振動周波数は通常の車両で20〜3
0Hz程度であり、エンジンシェイクの周波数はそれより
も低い5〜15Hz程度であるから、流体共振系の共振周
波数を、アイドル振動周波数よりも1〜5Hz程度低い1
5〜25Hz程度に調節すれば、上記請求項8に係る発明
と略同等の作用に加え、エンジンシェイク発生時にこれ
を低減するような減衰力が発生するようになる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
同定信号を正弦波状の信号にするとともに、その同定信
号の振幅を適宜設定する振幅設定手段を設けたため、伝
達関数を高精度に同定することができるし、しかも、伝
達関数の同定精度を劣化させることなく、省力化が図ら
れるという効果が得られる。特に、請求項2〜4に係る
発明であれば、上記効果をより確実に得ることができ
る。
【0038】さらに、請求8,9に係る発明であれば、
アイドル振動を有効に低減することができるから、車両
乗り心地を向上することができるし、請求項9に係る発
明であれば、エンジンシェイクをも有効に低減すること
ができるから、車両乗り心地をより向上することができ
る。
【0039】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図1乃至図7は本発明の第1の
実施の形態を示す図であって、図1は本発明に係る能動
型振動制御装置を適用した車両の概略側面図である。
【0040】先ず、構成を説明すると、エンジン30が
駆動信号に応じた能動的な支持力を発生可能な能動型エ
ンジンマウント1を介して、サスペンションメンバ等か
ら構成される車体35に支持されている。なお、実際に
は、エンジン30及び車体35間には、能動型エンジン
マウント1の他に、エンジン30及び車体35間の相対
変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエンジン
マウントも介在している。受動的なエンジンマウントと
しては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する通常の
エンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰力発生
可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマウント
インシュレータ等が適用できる。
【0041】一方、能動型エンジンマウント1は、例え
ば、図2に示すように構成されている。即ち、この実施
の形態における能動型エンジンマウント1は、エンジン
30への取付け用のボルト2aを上部に一体に備え且つ
内部が空洞で下部が開口したキャップ2を有し、このキ
ャップ2の下部外面には、軸が上下方向を向く内筒3の
上端部がかしめ止めされている。
【0042】内筒3は、下端側の方が縮径した形状とな
っていて、その下端部が内側に水平に折り曲げられて、
ここに円形の開口部3aが形成されている。そして、内
筒3の内側には、キャップ2及び内筒3内部の空間を上
下に二分するように、キャップ2及び内筒3のかしめ止
め部分に一緒に挟み込まれてダイアフラム4が配設され
ている。ダイアフラム4の上側の空間は、キャップ2の
側面に孔を開けることにより大気圧に通じている。
【0043】さらに、内筒3の内側にはオリフィス構成
体5が配設されている。なお、本実施の形態では、内筒
3内面及びオリフィス構成5間には、薄膜状の弾性体
(ダイアフラム4の外周部を延長させたものでもよい)
が介在していて、これにより、オリフィス構成体5は内
筒3内側に強固に嵌め込まれている。
【0044】このオリフィス構成体5は、内筒3の内部
空間に整合して略円柱形に形成されていて、その上面に
は円形の凹部5aが形成されている。そして、その凹部
5aと、底面の開口部3aに対向する部分との間が、オ
リフィス5bを介して連通するようになっている。オリ
フィス5bは、例えば、オリフィス構成体5の外周面に
沿って螺旋状に延びる溝と、その溝の一端部を凹部5a
に連通させる流路と、その溝の他端部を開口部3aに連
通させる流路とで構成される。
【0045】一方、内筒3の外周面には、内周面側が若
干上方に盛り上がった肉厚円筒状の支持弾性体6の内周
面が加硫接着されていて、その支持弾性体6の外周面
は、上端側が拡径した外筒7の内周面上部に加硫接着さ
れている。
【0046】そして、外筒7の下端部は上面が開口した
円筒形のアクチュエータケース8の上端部にかしめ止め
されていて、そのアクチュエータケース8の下端面から
は、車体35側への取付け用の取付けボルト9が突出し
ている。取付けボルト9は、その頭部9aが、アクチュ
エータケース8の内底面に張り付いた状態で配設された
平板部材8aの中央の空洞部8bに収容されている。
【0047】さらに、アクチュエータケース8の内側に
は、円筒形の鉄製のヨーク10Aと、このヨーク10A
の中央部に軸を上下に向けて巻き付けられた励磁コイル
10Bと、ヨーク10Aの励磁コイル10Bに包囲され
た部分の上面に極を上下に向けて固定された永久磁石1
0Cと、から構成される電磁アクチュエータ10が配設
されている。
【0048】また、アクチュエータケース8の上端部は
フランジ状に形成されたフランジ部8Aとなっていて、
そのフランジ部8Aに外筒7の下端部がかしめられて両
者が一体となっているのであるが、そのかしめ止め部分
には、円形の金属製の板ばね11の周縁部(端部)が挟
み込まれていて、その板ばね11の中央部の電磁アクチ
ュエータ10側には、リベット11aによって磁化可能
な磁路部材12が固定されている。なお、磁路部材12
はヨーク10Aよりも若干小径の鉄製の円板であって、
その底面が電磁アクチュエータ10に近接するような厚
みに形成されている。板ばね11及び磁路部材12によ
って可動部材が構成される。
【0049】さらに、上記かしめ止め部分には、フラン
ジ部8Aと板ばね11とに挟まれるように、リング状の
薄膜弾性体13と、力伝達部材14のフランジ部14a
とが支持されている。具体的には、アクチュエータケー
ス8のフランジ部8A上に、薄膜弾性体13と、力伝達
部材14のフランジ部14aと、板ばね11とをこの順
序で重ね合わせるとともに、その重なり合った全体を外
筒7の下端部をかしめて一体としている。
【0050】力伝達部材14は、磁路部材12を包囲す
る短い円筒形の部材であって、その上端部がフランジ部
14aとなっており、その下端部は電磁アクチュエータ
10のヨーク10Aの上面に結合している。具体的に
は、ヨーク10Aの上端面周縁部に形成された円形の溝
に、力伝達部材14の下端部が嵌合して両者が結合され
ている。また、力伝達部材14の弾性変形時のばね定数
は、薄膜弾性体13のばね定数よりも大きい値に設定さ
れている。
【0051】ここで、本実施の形態では、支持弾性体6
の下面及び板ばね11の上面によって画成された部分に
主流体室15が形成され、ダイアフラム4及び凹部5a
によって画成された部分に副流体室16が形成されてい
て、これら主流体室15及び副流体室16間が、オリフ
ィス構成体5に形成されたオリフィス5bを介して連通
している。なお、これら主流体室15,副流体室16及
びオリフィス5b内には、油等の流体が封入されてい
る。
【0052】従って、この能動型エンジンマウント1内
には、主流体室15を画成する支持弾性体6の拡張方向
ばね及び副流体室16を形成するダイアフラム4をばね
要素とし、オリフィス5b内の流体を質量とした流体共
振系が構成されており、かかる流体共振系の共振周波数
は、アイドル振動周波数(この実施の形態では20Hzと
する。)に調節されている。つまり、流体共振系の共振
周波数がアイドル振動周波数に一致するように、支持弾
性体6及びダイアフラム4のばね定数や、オリフィス5
bの容積等が適宜選定されている。
【0053】そして、電磁アクチュエータ10の励磁コ
イル10Bは、コントローラ25からハーネス23aを
通じて供給される電流である駆動信号yに応じて所定の
電磁力を発生するようになっている。コントローラ25
は、マイクロコンピュータ,必要なインタフェース回
路,A/D変換器,D/A変換器,アンプ、ROM,R
AM等の記憶媒体等を含んで構成され、アイドル振動や
こもり音振動・加速時振動が車体35に入力されている
場合には、その振動を低減できる能動的な支持力が能動
型エンジンマウント1に発生するように、能動型エンジ
ンマウント1に対する駆動信号yを生成し出力するよう
になっている。
【0054】ここで、アイドル振動やこもり音振動は、
例えばレシプロ4気筒エンジンの場合、エンジン回転2
次成分のエンジン振動が車体35に伝達されることが主
な原因であるから、そのエンジン回転2次成分に同期し
て駆動信号yを生成し出力すれば、車体側振動の低減が
可能となる。そこで、本実施の形態では、エンジン30
のクランク軸の回転に同期した(例えば、レシプロ4気
筒エンジンの場合には、クランク軸が180度回転する
度に一つの)インパルス信号を生成し基準信号xとして
出力するパルス信号生成器26を設けていて、その基準
信号xが、エンジン30における振動の発生状態を表す
信号としてコントローラ25に供給されるようになって
いる。
【0055】一方、電磁アクチュエータ10のヨーク1
0Aの下端面と、アクチュエータケース8の底面を形成
する平板部材8aの上面との間に挟み込まれるように、
エンジン30から支持弾性体6を通じて伝達する加振力
を検出する荷重センサ22が配設されていて、荷重セン
サ22の検出結果がハーネス23bを通じて残留振動信
号eとしてコントローラ25に供給されるようになって
いる。荷重センサ22としては、具体的には、圧電素
子,磁歪素子,歪ゲージ等が適用可能である。
【0056】そして、コントローラ25は、供給される
残留振動信号e及び基準信号xに基づき、逐次更新型の
適応アルゴリズムの一つである同期式Filtered
−XLMSアルゴリズムを実行することにより、能動型
エンジンマウント1に対する駆動信号yを演算し、その
駆動信号yを能動型エンジンマウント1に出力するよう
になっている。
【0057】具体的には、コントローラ25は、フィル
タ係数Wi (i=0,1,2,…,I−1:Iはタップ
数)可変の適応ディジタルフィルタWを有していて、最
新の基準信号xが入力された時点から所定のサンプリン
グ・クロックの間隔で、その適応ディジタルフィルタW
のフィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力する
一方、基準信号x及び残留振動信号eに基づいて適応デ
ィジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を適宜更新する
処理を実行するようになっている。
【0058】適応ディジタルフィルタWの更新式は、F
iltered−X LMSアルゴリズムに従った下記
の(1)式のようになる。 Wi (n+1)=Wi (n)−μRT e(n) ……(1) ここで、(n),(n+1)が付く項はサンプリング時
刻n,n+1における値であることを表し、μは収束係
数である。また、更新用基準信号RT は、理論的には、
基準信号xを、能動型エンジンマウント1の電磁アクチ
ュエータ10及び荷重センサ22間の伝達関数Cを有限
インパルス応答型フィルタでモデル化した伝達関数フィ
ルタC^でフィルタ処理した値であるが、基準信号xの
大きさは“1”であるから、伝達関数フィルタC^のイ
ンパルス応答を基準信号xに同期して次々と生成した場
合のそれらインパルス応答波形のサンプリング時刻nに
おける和に一致する。
【0059】また、理論的には、基準信号xを適応ディ
ジタルフィルタWでフィルタ処理して駆動信号yを生成
するのであるが、基準信号xの大きさが“1”であるた
め、フィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力し
ても、フィルタ処理の結果を駆動信号yとしたのと同じ
結果になる。
【0060】さらに、コントローラ25は、上記のよう
な適応ディジタルフィルタWを用いた振動低減処理を実
行する一方で、その振動低減制御に必要な伝達関数Cを
同定する処理をも実行するようになっている。
【0061】即ち、コントローラ25には、伝達関数C
の同定処理を開始するタイミングで操作される同定処理
開始スイッチ28が設けられていて、例えば製造ライン
における最終工程において、或いはディーラーにおける
定期点検時において、作業者がその同定処理開始スイッ
チ28を操作すると、コントローラ25内で伝達関数C
の同定処理が実行される。なお、伝達関数Cの同定処理
実行中には、通常の振動低減処理は実行されない。
【0062】つまり、コントローラ25は、車両のイグ
ニッションがオンになっている通常の走行状態等には、
同期式Filtered−X LMSアルゴリズムに従
った振動低減処理を実行するが、同定処理開始スイッチ
28が操作されると、振動低減処理を停止して、伝達関
数Cの同定処理を実行するようになっている。
【0063】そして、本実施の形態では、伝達関数Cの
同定処理は、正弦波状の同定信号を用いて行うようにな
っている。具体的には、正弦波状の同定信号を駆動信号
yの代わりに能動型エンジンマウント1に所定時間出力
し続けるとともに残留振動信号eを読み込む、というデ
ータ読み込み処理を、同定信号の周波数を順次変えつつ
繰り返し実行し、各データ読み込み処理によって得られ
た残留振動信号eの各数列をFFT処理して同定信号の
周波数に相当する成分を抽出し、抽出された各周波数成
分を合成した結果を、逆FFT処理して、伝達関数Cと
してのインパルス応答を求めるようになってる。求めら
れたインパルス応答は、有限インパルス応答型の伝達関
数フィルタC^としてそれまでの伝達関数フィルタC^
と置き換えられるようになっている。
【0064】ただし、同定信号の振幅A0 は、各同定信
号の周波数f0 に応じて個別に設定されるようになって
おり、周波数f0 と振幅A0 との関係は、能動型エンジ
ンマウント1内に封入されている流体の振幅依存性に沿
うように設定されている。具体的には、周波数f0 が能
動型エンジンマウント1内の流体共振系の共振周波数に
等しい同定信号の振幅A0 は、駆動信号yの最大値に一
致する所定振幅に設定されるのに対し、周波数f0 が流
体共振系の共振周波数から離れるに従って振幅A0 は徐
々に小さくなるようになっている。
【0065】このように振幅A0 を周波数f0 に応じて
可変にしたことに対応し、コントローラ25では、上記
FFT処理によって求められた各周波数成分を、対応す
る同定信号の振幅A0 で除する補正処理を実行し、その
補正処理した結果が合成されて上記逆FFT処理を実行
されるようになっている。
【0066】次に、本実施の形態の動作を説明する。即
ち、能動型エンジンマウント1内の流体共振系の共振周
波数を20Hzに調節している結果、5〜15Hzの振動で
あるエンジンシェイク発生時にもある程度の減衰力がこ
の能動型エンジンマウント1で発生するため、エンジン
30側で発生したエンジンシェイクが能動型エンジンマ
ウント1によってある程度減衰されるとともに、図示し
ない他の流体封入式エンジンマウント等によってもエン
ジンシェイクは減衰されるから、車体35側の振動レベ
ルが低減される。なお、エンジンシェイクに対しては、
特に可動板12を積極的に変位させる必要はない。
【0067】一方、アイドル振動周波数以上の周波数の
振動が入力された場合には、コントローラ25は、所定
の演算処理を実行し、電磁アクチュエータ10に駆動信
号yを出力し、能動型エンジンマウント1に振動を低減
し得る能動的な支持力を発生させる。
【0068】これを、アイドル振動,こもり音振動入力
時にコントローラ25内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである図3に従って具体的に説明する。
先ず、そのステップ101において所定の初期設定が行
われた後に、ステップ102に移行し、伝達関数フィル
タC^に基づいて更新用基準信号RT が演算される。な
お、このステップ102では、一周期分の更新用基準信
号RT がまとめて演算される。
【0069】そして、ステップ103に移行しカウンタ
iが零クリアされた後に、ステップ104に移行して、
適応ディジタルフィルタWのi番目のフィルタ係数Wi
が駆動信号yとして出力される。
【0070】ステップ104で駆動信号yを出力した
ら、ステップ105に移行し、残留振動信号eが読み込
まれる。そして、ステップ106に移行して、カウンタ
jが零クリアされ、次いでステップ107に移行し、適
応ディジタルフィルタWのj番目のフィルタ係数Wj
上記(1)式に従って更新される。
【0071】ステップ107における更新処理が完了し
たら、ステップ108に移行し、次の基準信号xが入力
されているか否かを判定し、ここで基準信号xが入力さ
れていないと判定された場合は、適応ディジタルフィル
タWの次のフィルタ係数の更新又は駆動信号yの出力処
理を実行すべく、ステップ109に移行する。
【0072】ステップ109では、カウンタjが、出力
回数Ty (正確には、カウンタjは0からスタートする
ため、出力回数Ty から1を減じた値)に達しているか
否かを判定する。この判定は、ステップ104で適応デ
ィジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を駆動信号yと
して出力した後に、適応ディジタルフィルタWのフィル
タ係数Wi を、駆動信号yとして必要な数だけ更新した
か否かを判断するためのものである。そこで、このステ
ップ109の判定が「NO」の場合には、ステップ11
0でカウンタjをインクリメントした後に、ステップ1
07に戻って上述した処理を繰り返し実行する。
【0073】しかし、ステップ109の判定が「YE
S」の場合には、適応ディジタルフィルタWのフィルタ
係数のうち、駆動信号yとして必要な数のフィルタ係数
の更新処理が完了したと判断できるから、ステップ11
1に移行し、カウンタiをインクリメントした後に、上
記ステップ104の処理を実行してから所定のサンプリ
ング・クロックの間隔に対応する時間が経過するまで待
機し、サンプリング・クロックに対応する時間が経過し
たら、上記ステップ104に戻って上述した処理を繰り
返し実行する。
【0074】一方、ステップ108で基準信号xが入力
されたと判断された場合には、ステップ112に移行
し、カウンタi(正確には、カウンタiが0からスター
トするため、カウンタiに1を加えた値)を最新の出力
回数Ty として保存した後に、ステップ102に戻っ
て、上述した処理を繰り返し実行する。
【0075】このような図3の処理を繰り返し実行する
結果、コントローラ25から能動型エンジンマウント1
の電磁アクチュエータ10に対しては、基準信号xが入
力された時点から、サンプリング・クロックの間隔で、
適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi が順番に
駆動信号yとして供給される。
【0076】この結果、励磁コイル10Bに駆動信号y
に応じた磁力が発生するが、磁路部材12には、既に永
久磁石10Cによる一定の磁力が付与されているから、
その励磁コイル10Bによる磁力は永久磁石10Cの磁
力を強める又は弱めるように作用すると考えることがで
きる。つまり、励磁コイル10Bに駆動信号yが供給さ
れていない状態では、磁路部材12は、板ばね11によ
る支持力と、永久磁石10Cの磁力との釣り合った中立
の位置に変位することになる。そして、この中立の状態
で励磁コイル10Bに駆動信号yが供給されると、その
駆動信号yによって励磁コイル10Bに発生する磁力が
永久磁石10Cの磁力と逆方向であれば、磁路部材12
は電磁アクチュエータ10とのクリアランスが増大する
方向に変位する。逆に、励磁コイル10Bに発生する磁
力が永久磁石10Cの磁力と同じ方向であれば、磁路部
材12は電磁アクチュエータ10とのクリアランスが減
少する方向に変位する。
【0077】このように磁路部材12は正逆両方向に変
位可能であり、磁路部材12が変位すれば主主流体室1
5の容積が変化し、その容積変化によって支持弾性体6
の拡張ばねが変形するから、この能動型エンジンマウン
ト1に正逆両方向の能動的な支持力が発生するのであ
る。
【0078】そして、駆動信号yとなる適応ディジタル
フィルタWの各フィルタ係数Wi は、同期式Filte
red−X LMSアルゴリズムに従った上記(1)式
によって逐次更新されるため、ある程度の時間が経過し
て適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wi が最
適値に収束した後は、駆動信号yが能動型エンジンマウ
ント1に供給されることによって、エンジン30から能
動型エンジンマウント1を介して車体35側に伝達され
るアイドル振動やこもり音振動が低減されるようになる
のである。
【0079】以上は車両走行時等に実行される振動低減
処理の動作である。その一方、例えば車両が出荷される
前の製造ラインの最終工程において、作業者が同定処理
開始スイッチ28を操作すると、図4に示すような伝達
関数Cの同定処理が実行される。
【0080】即ち、伝達関数Cの同定処理が開始される
と、先ずそのステップ201において、同定信号の周波
数f0 を、同定処理を開始する周波数としてのアイドル
振動周波数fid(この場合には、20Hz)に設定する。
アイドル振動周波数fidを同定処理を開始する周波数と
したのは、上述のようにアイドル振動周波数以上の振動
が入力されている状況において振動低減制御を実行し、
それ未満の振動については特に振動低減制御を実行しな
いからである。
【0081】次いで、ステップ202に移行し、不揮発
性メモリ内に記憶されている図5に示すようなマップを
参照して、周波数f0 に対応する振幅A0 を読み込み、
ステップ203に移行し、同定信号として、周波数
0 ,振幅A0 の正弦波を能動型エンジンマウント1に
供給する。すると、能動型エンジンマウント1内の電磁
アクチュエータ10が同定信号によって駆動して同定振
動が発生し、かかる同定振動は各部材を伝搬して荷重セ
ンサ22に達する。
【0082】そこで、ステップ204に移行し、残留振
動信号eを読み込み、次いで、ステップ205に移行
し、十分な個数の残留振動信号eを読み込んだか否かを
判定する。なお、残留振動信号eの十分な個数として設
定される値は、伝達関数Cがインパルス応答として求め
られることから、そのインパルス応答が充分に減衰する
のに必要な時間を、サンプリング・クロックで割った値
以上であればよい。ただし、時系列として取り込んだ残
留振動信号eに対して後にFFT演算を行うことから、
その残留振動信号eの取り込み個数は、2の巾乗とする
ことが望ましいこと、及び、残留振動信号eを極めて大
量に読み込んでしまうと、その読み込み時間が長くなる
し、FFT演算に要する時間も長くなるという不具合も
あるため、残留振動信号eの十分な個数として設定され
る値は、インパルス応答が充分に減衰するのに必要な時
間をサンプリング・クロックで割った場合の数を越える
2の巾乗の数値のうちの、最小値とすることが望まし
い。例えば、サンプリング・クロックが2msecであっ
て、インパルス応答が充分に減衰する時間が0.2sec
であれば、0.2sec /2msec=100となるから、ス
テップ205に設定する値は128となる。
【0083】ステップ205の判定が「NO」の場合に
は、上記ステップ203に戻って、同定信号の出力処理
(ステップ203)及び残留振動信号eの読み込み処理
(ステップ204)を繰り返し実行する。
【0084】そして、ステップ205の判定が「YE
S」となったら、ステップ206に移行する。なお、ス
テップ204で次々と読み込まれた残留振動信号eは、
周波数f0 に対応した時系列データとして記憶される。
【0085】次いで、ステップ206に移行し、現在の
周波数f0 に増加分Δfを加えることにより、新たな周
波数f0 を演算する。なお、増加分Δfは、伝達関数フ
ィルタC^に必要な精度に応じて適宜決定すればよく、
望ましくは2〜4Hz程度に設定する。
【0086】次いで、ステップ207に移行し、新たな
周波数f0 が、同定処理を行う周波数の最大値fmax
越えているか否かを判定する。最大値fmax は、振動低
減処理の対象となる振動の最大周波数に設定すればよ
い。例えば、レシプロ4気筒エンジンの場合、通常の使
用範囲でのエンジン回転数の最大値は6000〜750
0回転であり、振動の最大周波数は200〜250Hz程
度になることから、最大値fmax は200〜250Hz程
度に設定することになる。
【0087】このステップ207の判定が「NO」の場
合には、上記ステップ202に戻って上述した処理を再
び実行する。このため、ステップ202〜206の一連
の処理は、ステップ207の判定が「YES」となるま
で実行される。つまり、ステップ202〜204の処理
は、アイドル振動周波数fid〜最大値fmax の範囲で増
加分Δfずつ変化する周波数f0 毎に実行されるように
なっているから、ステップ207の処理が「YES」と
なった時点では、ステップ204の処理によって時系列
データとして記憶される残留振動信号eは、周波数f0
の種類と同じ数だけ記憶されていることになる。
【0088】そこで、ステップ207の判定が「YE
S」となったら、ステップ208に移行し、周波数f0
毎に記憶されている残留振動信号eの時系列データのそ
れぞれについてFFT演算を行って、各時系列データの
周波数成分を抽出する。ただし、ここで必要なのは、各
時系列データ毎の全周波数の成分ではなく、対応する周
波数f0 によって決まる元の正弦波の周波数に相当する
成分だけであるから、ステップ208では、各時系列に
対して厳密なFFT演算を行うのではなく、各時系列に
対応する周波数f0 の成分を求めるのに足りる演算だけ
を行えばよい。
【0089】次いで、ステップ209に移行し、ステッ
プ208で求められた各周波数成分の大きさを補正する
補正演算を行う。ここで行われる補正演算は、具体的に
は、対応する正弦波の振幅でその周波数成分を割るとい
う演算になる。例えば、周波数f0 がアイドル振動周波
数fidに等しいときの同定信号の振幅を1とし、他の周
波数f0 のときの同定信号の振幅が0.5の場合にはそ
の周波数成分を0.5で割る(2倍にする)ということ
になる。これは、同定信号の振幅A0 をその周波数f0
に応じて異ならせているため、FFT演算の結果にはそ
の振幅A0 の相違分が含まれているから、このまま伝達
関数Cを求めてしまうと、振幅A0 の相違分も振動伝達
系の特性として伝達関数Cに取り込まれてしまうからで
ある。
【0090】そして、ステップ210に移行し、それら
各周波数成分を合成したものを逆FFT演算し、時間軸
上のインパルス応答に変換し、次いでステップ211に
移行し、ステップ210で求めたインパルス応答を新た
な伝達関数フィルタC^として記憶する。伝達関数フィ
ルタC^の記憶が完了したら、今回の伝達関数Cの同定
処理を終了する。
【0091】このように、本実施の形態であれば、車両
に搭載された後の任意のタイミングで伝達関数Cを同定
し、その同定された伝達関数Cで伝達関数フィルタC^
を置換するようになっているから、実験室で求めた伝達
関数Cを全車両に適用する場合に比べて、高精度の伝達
関数フィルタC^が振動低減制御に用いられることにな
るし、定期点検毎に伝達関数Cを同定すれば各部品の経
時変化等による振動伝達系の変化にも対応できるから、
良好な振動低減制御が実行できるのである。
【0092】そして、伝達関数Cは、例えばホワイトノ
イズ信号による同定信号を発生させた場合でも得ること
はできるが、ホワイトノイズ信号を電磁アクチュエータ
10に供給して同定振動を発生させた場合には、同定振
動の出力は図6に破線で示すように広い周波数帯域に分
散して、各周波数成分は極小さくなってしまう。このた
め、伝達関数Cを高精度に得るためには、ホワイトノイ
ズ信号と、そのホワイトノイズ信号により発生した同定
振動とに基づいた適応演算を、比較的長時間に渡って行
わなければならない。これに対し、正弦波に基づいて生
成した同定信号を用いる本実施の形態にあっては、同定
振動の出力は、図6に実線で示すように特定の周波数に
集中するようになるから、個々の周波数毎の演算時間が
短くなるばかりか、全体の演算時間もホワイトノイズ信
号により同定を行う場合に比べて短縮されるのである。
【0093】この結果、車両に搭載される比較的能力の
低いコントローラ25であっても、比較的短い時間で伝
達関数Cの同定を行うことができるのである。このた
め、例えば製造ラインの最終工程において同定処理開始
スイッチ28を操作して伝達関数Cの同定処理を行うよ
うにしても、ライン速度に大きな影響を与えないで済む
し、或いは、ディーラーでの定期点検時に同定処理開始
スイッチ28を操作して伝達関数Cの同定処理を行うよ
うにしても、作業時間が大幅に増大してしまうようなこ
とを回避できるのである。
【0094】ここで、図2に示したような流体共振系を
有する能動型エンジンマウント1のばね定数は、流体の
振幅依存性の影響により、図7に示すように振幅の大小
によって大きく異なってくる。具体的には、ばね定数K
は、振幅が大きいときには広い周波数帯域に渡って小さ
な値になるが、振幅が小さいときには共振周波数及びそ
の近傍において大きな値になる。そして、実際に振動低
減制御を実行する際に能動型エンジンマウント1で発生
させる制御振動の振幅は、エンジン30で発生した振動
を十分に低減させるために、大きくせざるを得ない。
【0095】しかし、図7からも判るように、振幅の大
小によってばね定数Kが大きく異なってくるのは、流体
共振系の共振周波数及びその近傍であって、共振周波数
から離れるに従って振幅の大小がばね定数Kの大きさに
与える影響は、小さくなってくる。
【0096】このことは、共振周波数から遠い周波数に
ついては、同定信号の振幅を大きくしても、小さくして
も、得られる伝達関数Cの精度には大きな影響はない、
ということを意味する。
【0097】そこで、本実施の形態のように、同定信号
の振幅A0 をその周波数f0 に基づいて図5に示すよう
な特性で個別に設定するとともに、ステップ209にお
ける補正演算を行えば、同定される伝達関数Cの精度に
悪影響を与えることなく、同定処理を実行する際の消費
電力を削減できるのである。
【0098】しかも、同定信号の振幅A0 は、流体の振
幅依存性に沿うように滑らかに変化させているから、同
定処理を行う際のばね定数Kと、実際に振動低減制御を
実行する際のばね定数Kとの差は、全周波数帯域に渡っ
て極小さくすることができ、同定される伝達関数Cの精
度には全くといっていいほど悪影響はない。
【0099】そして、消費電力が少なくて済めば、車両
に搭載されているバッテリの負荷を小さくできるから、
エンジン30が停止している状況で同定処理を行う本実
施の形態の構成にとって特に有益であり、バッテリ上が
りやバッテリ電圧低下により同定処理が実行不可能にな
る可能性を、より低減することができるのである。
【0100】ここで、本実施の形態では、エンジン30
が振動体に対応し、車体35が支持体に対応し、能動型
エンジンマウント1が制御振動源に対応し、パルス信号
生成器26が基準信号生成手段に対応し、荷重センサ2
2が残留振動検出手段に対応し、図3の処理が能動制御
手段に対応し、図4のステップ201,203,205
〜207の処理が同定信号供給手段に対応し、図4のス
テップ204の処理が応答信号読み込み手段に対応し、
図4のステップ208〜210の処理が伝達関数同定手
段に対応し、図4のステップ202の処理及び図5に示
すようなマップが振幅設定手段に対応し、図4のステッ
プ208の処理がフーリエ変換手段に対応し、図4のス
テップ209の処理が補正手段に対応し、図4のステッ
プ210の処理が逆フーリエ変換手段に対応し、図3の
ステップ104の処理が駆動信号生成手段に対応し、図
3のステップ102の処理が更新用基準信号生成手段に
対応し、図3のステップ107の処理がフィルタ係数更
新手段に対応する。
【0101】図8は本発明の第2の実施の形態を示す図
であって、上記第1の実施の形態における図5と同様
に、同定信号の周波数f0 と振幅A0 との関係を示して
いる。なお、全体的な構成や振動低減処理、同定処理の
内容は上記第1の実施の形態と同様であるため、その重
複する説明は省略する。
【0102】即ち、本実施の形態では、同定信号の振幅
0 を、その周波数f0 に応じて大小二段階に変化させ
るようにしている。つまり、周波数f0 とアイドル振動
周波数fidとの差(|f0 −fid|)が、所定のしきい
値fth未満の同定信号の振幅A0 は大きく、その差が所
定のしきい値fth以上の同定信号の振幅A0 は小さく設
定するようになっている。なお、大きいときの振幅A0
は駆動信号yの振幅の最大値に一致した所定振幅とし、
小さいときの振幅A0 は例えば駆動信号yの振幅の最大
値の半分とする。
【0103】このような構成であっても、同定信号の振
幅A0 は流体の振幅依存性の大小を略反映するように設
定されるから、上記第1の実施の形態と略同様の作用効
果を得ることができる。
【0104】しかも、図8に示すような周波数f0 と振
幅A0 との関係は特にマップにして記憶する必要はな
く、しきい値fthと、振幅A0 の大小二つの値とを記憶
するだけで済むから、メモリ容量の低減にも寄与でき
る。
【0105】また、振幅A0 の値も、それが大きいとき
の振幅A0 と小さいときの振幅A0との比を2:1に設
定しておけば、後に実行されるステップ209における
補正演算も、振幅A0 の小さい同定信号に対応する周波
数成分を2倍にするだけで済むようになり、2倍にする
演算は実際にはビットを一つシフトするだけであるか
ら、演算負荷も軽減されるという利点もある。
【0106】その他の作用効果は、上記第1の実施の形
態と同様である。なお、上記各実施の形態では、能動型
エンジンマウント1内の流体共振系の共振周波数を、ア
イドル振動周波数fidに一致させるようにしており、こ
れは流体共振系の共振を利用してアイドル振動を有効に
低減するためであるが、流体共振系の共振周波数とアイ
ドル振動周波数fidとが完全に一致していなくても、流
体共振を振動低減に利用することはできる。
【0107】そこで、流体共振系の共振周波数を、アイ
ドル振動周波数fidよりも数Hz低い周波数(望ましく
は、アイドル振動周波数fidとエンジンシェイクの周波
数との中間の周波数)に調節すると、エンジンシェイク
に対してもこの能動型エンジンマウント1をより有効に
活用することができるようになる。例えば、アイドル振
動周波数fidが20Hz、エンジンシェイクの周波数が1
0Hzであるとすれば、流体共振系の共振周波数を、両者
の中間の周波数である15Hz近傍に設定することによ
り、アイドル振動に対しては(上記各実施の形態の場合
よりも多少は低下するが)能動的な支持力を発生する能
動型エンジンマウント1として有効に働き、エンジンシ
ェイクに対しては受動的に減衰力を発生する流体封入式
エンジンマウントとしてより有効に働くことができるの
である。
【0108】また、上記各実施の形態では、残留振動を
能動型エンジンマウント1に内蔵した荷重センサ22に
よって検出しているが、これに限定されるものではな
く、例えば車室内の乗員足元位置にフロア振動を検出す
る加速度センサを配設し、その加速度センサの出力信号
を残留振動信号eとしてもよい。
【0109】そして、本発明の適用対象は車両に限定さ
れるものではなく、エンジン30以外で発生する振動を
低減するための能動型振動制御装置であっても本発明は
適用可能であり、適用対象に関係なく上記各実施の形態
と同様の作用効果を奏することができる。例えば、工作
機械からフロアや室内に伝達される振動を低減する装置
等であっても、本発明は適用可能である。
【0110】さらに、上記各実施の形態では、駆動信号
yを生成するアルゴリズムとして同期式Filtere
d−X LMSアルゴリズムを適用しているが、適用可
能なアルゴリズムはこれに限定されるものではなく、例
えば、通常のFiltered−X LMSアルゴリズ
ム等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態を示す車両の概略側面図であ
る。
【図2】能動型エンジンマウントの一例を示す断面図で
ある。
【図3】振動低減処理の概要を示すフローチャートであ
る。
【図4】伝達関数の同定処理の概要を示すフローチャー
トである。
【図5】同定信号の周波数と振幅との関係を示す図であ
る。
【図6】同定信号として正弦波を用いる場合とホワイト
ノイズ信号を用いる場合との差を説明する周波数特性図
である。
【図7】振幅の大小とばね定数との関係を示す図であ
る。
【図8】第2の実施の形態での同定信号の周波数と振幅
との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 能動型エンジンマウント(制御振動源) 5b オリフィス 10 電磁アクチュエータ 11 板ばね 12 磁路部材 15 主流体室 16 副流体室 22 荷重センサ(残留振動検出手段) 25 コントローラ 26 パルス信号生成器(基準信号生成手段) 28 同定処理開始スイッチ 30 エンジン(振動体) 35 車体(支持体)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI G10K 11/16 G10K 11/16 J

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 振動体及び支持体間に介在し制御振動を
    発生可能な制御振動源と、前記振動体の振動発生状態を
    検出し基準信号として出力する基準信号生成手段と、前
    記支持体側の残留振動を検出し残留振動信号として出力
    する残留振動検出手段と、前記基準信号及び前記残留振
    動信号に基づき前記制御振動源及び前記残留振動検出手
    段間の伝達関数を含む制御アルゴリズムを用いて前記振
    動が低減するように前記制御振動源を駆動する能動制御
    手段と、を備え、前記制御振動源は、前記制御振動を発
    生させるための流体共振系を有している能動型振動制御
    装置において、 正弦波状の同定信号を順次その周波数を変えて前記制御
    振動源に供給する同定信号供給手段と、前記同定信号に
    応じた振動が前記制御振動源から発せられた場合の前記
    残留振動信号を読み込む応答信号読み込み手段と、この
    応答信号読み込み手段が読み込んだ前記残留振動信号に
    基づいて前記伝達関数を同定する伝達関数同定手段と、
    前記同定信号の振幅をその周波数が前記流体共振系の共
    振周波数から離れた同定信号については小さくなるよう
    に設定する振幅設定手段と、を備えたことを特徴とする
    能動型振動制御装置。
  2. 【請求項2】 前記振幅設定手段は、周波数が前記流体
    共振系の共振周波数に等しい前記同定信号の振幅は大き
    く設定し、周波数が前記流体共振系の共振周波数から離
    れた前記同定信号の振幅は小さく設定するようになって
    いる請求項1記載の能動型振動制御装置。
  3. 【請求項3】 前記振幅設定手段は、周波数が前記流体
    共振系の共振周波数に等しい前記同定信号の振幅を、前
    記振動体で発生する振動の周波数が前記共振周波数に等
    しいときに前記能動制御手段が前記制御振動源に供給す
    る駆動信号の振幅に一致した所定振幅に設定するととも
    に、周波数が前記流体共振系の共振周波数から離れるに
    従って前記同定信号の振幅を徐々に小さくするようにな
    っている請求項1記載の能動型振動制御装置。
  4. 【請求項4】 前記振幅設定手段は、前記同定信号の振
    幅を、その周波数と前記流体共振系の共振周波数との差
    が所定のしきい値未満である同定信号については、前記
    振動体で発生する振動の周波数が前記共振周波数に等し
    いときに前記能動制御手段が前記制御振動源に供給する
    駆動信号の振幅に一致した所定振幅に設定するととも
    に、その周波数と前記流体共振系の共振周波数との差が
    前記しきい値以上である同定信号については、前記所定
    振幅よりも小さい振幅に設定するようになっている請求
    項1記載の能動型振動制御装置。
  5. 【請求項5】 前記伝達関数同定手段は、前記応答信号
    読み込み手段が読み込んだ前記残留振動信号を前記同定
    信号毎にフーリエ変換してその同定信号の周波数に相当
    する成分を抽出するフーリエ変換手段と、このフーリエ
    変換手段が抽出した各周波数成分を各同定信号の振幅で
    補正する補正手段と、この補正手段の各結果を合成した
    ものを逆フーリエ変換して前記伝達関数としてのインパ
    ルス応答を求める逆フーリエ変換手段と、を備えた請求
    項1乃至請求項4のいずれかに記載の能動型振動制御装
    置。
  6. 【請求項6】 前記制御振動源は、前記振動体及び支持
    体間に介在する支持弾性体と、この支持弾性体によって
    画成された主流体室と、オリフィスを介して前記主流体
    室に連通する容積可変の副流体室と、前記主流体室,副
    流体室及びオリフィス内に封入された流体と、前記主流
    体室の隔壁の一部を形成する可動部材と、この可動部材
    を前記主流体室の容積を変化させる方向に変位させるア
    クチュエータと、を備え、前記流体共振系は、前記主流
    体室及び副流体室をそれぞれ画成する隔壁の拡張方向ば
    ねと前記オリフィス内の流体とで構成されている請求項
    1乃至請求項5のいずれかに記載の能動型振動制御装
    置。
  7. 【請求項7】 前記能動制御手段は、フィルタ係数可変
    の適応ディジタルフィルタと、前記基準信号を前記適応
    ディジタルフィルタでフィルタ処理することにより前記
    制御振動源を駆動する駆動信号を生成し出力する駆動信
    号生成手段と、前記伝達関数に前記基準信号を入力した
    場合の応答結果である更新用基準信号を演算する更新用
    基準信号演算手段と、前記残留振動信号及び前記更新用
    基準信号に基づき前記制御アルゴリズムとしての逐次更
    新型の適応アルゴリズムに従って前記適応ディジタルフ
    ィルタのフィルタ係数を更新するフィルタ係数更新手段
    と、を備えた請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の
    能動型振動制御装置。
  8. 【請求項8】 車両に適用され、前記振動体はエンジン
    であり、前記流体共振系の共振周波数を、アイドル振動
    周波数近傍に調節した請求項1乃至請求項7のいずれか
    に記載の能動型振動制御装置。
  9. 【請求項9】 車両に適用され、前記振動体はエンジン
    であり、前記流体共振系の共振周波数を、アイドル振動
    周波数よりも若干低い周波数に調節した請求項1乃至請
    求項7のいずれかに記載の能動型振動制御装置。
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