JPH09317816A - 能動型振動制御装置 - Google Patents

能動型振動制御装置

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Publication number
JPH09317816A
JPH09317816A JP13355596A JP13355596A JPH09317816A JP H09317816 A JPH09317816 A JP H09317816A JP 13355596 A JP13355596 A JP 13355596A JP 13355596 A JP13355596 A JP 13355596A JP H09317816 A JPH09317816 A JP H09317816A
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JP
Japan
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vibration
abnormality
control
active
control device
Prior art date
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Pending
Application number
JP13355596A
Other languages
English (en)
Inventor
Tsutomu Hamabe
勉 浜辺
Shigeki Sato
佐藤  茂樹
Kazue Aoki
和重 青木
Yosuke Akatsu
洋介 赤津
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nissan Motor Co Ltd
Original Assignee
Nissan Motor Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】制御振動源の異常、特に制御振動源内で部材同
士が衝突するような異常を容易に且つ確実に検出できる
ようにする。 【解決手段】ステップ121において残留振動信号eに
対してハイパス・フィルタ処理を行って、その高周波成
分eh を抽出する。次いで、ステップ122で、高周波
成分eh がしきい値emax を越えているか否かを判定
し、「NO」の場合にはこのまま今回の図4の処理を終
了するが、「YES」の場合には、能動型エンジンマウ
ント1に異常が発生していると判断してステップ123
に移行する。ステップ123では、適応ディジタルフィ
ルタWの各フィルタ係数Wi に調整係数s(s<1)を
乗じて、各フィルタ係数Wi を一定比率で縮小し、能動
型エンジンマウントに供給される駆動信号yを縮小す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、能動型振動制御
装置に関し、特に、振動体から伝達される振動と干渉す
る制御振動を発生可能な制御振動源を、干渉後の残留振
動が低減するように駆動させるようになっている能動型
振動制御装置において、前記制御振動源の異常を検出で
きるようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】この種の能動型振動制御装置に適用し得
る制御振動源としては、例えば特開平3−24338号
公報に開示された防振支持装置がある。
【0003】即ち、上記公報に記載された防振支持装置
は、振動体及び支持体間に介在する支持弾性体と、この
支持弾性体によって画成された流体室とを有し、その流
体室には流体を封入する一方、流体室の容積を変動可能
に可動板を弾性体に支持させて配設し、そして、その可
動板を、永久磁石及び電磁石からなる電磁アクチュエー
タによって適宜変位させて流体室の容積を変動させ、支
持弾性体を拡張方向に弾性変形させて、防振支持装置に
伝達される振動を相殺し得る制御振動を発生させてい
た。つまり、可動板は、自身を弾性支持する弾性体の支
持力と、永久磁石による磁力とが釣り合う所定の中立位
置まで電磁アクチュエータ側に引き寄せられるが、電磁
石が発生する磁力を適宜調整すれば可動板に付与される
磁力が増減するから、その可動板と電磁アクチュエータ
との間の隙間は可能な範囲で任意の値に変化することが
でき、流体室の容積を変動させることができるのであ
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たような従来の防振支持装置を制御振動源として適用し
た場合、可動板の変位に伴う流体室の容積拡縮によって
制御振動を発生させる構造であるため、振動体側の振動
レベルの増大に対応するためには、可動板の変位範囲を
大きくして制御振動のレベルを増大させなければなら
ず、可動板の変位範囲が限界を越えると、可動板が電磁
アクチュエータのヨーク等に衝突して異音や振動を発生
してしまうという問題点がある。
【0005】このような問題点に対しては、制御振動源
に供給する駆動信号の上限値を決めておき、その上限値
を越えないように駆動信号を生成することによっても対
処することは可能であるが、制御振動源を構成する各部
材の経時劣化等によっては、駆動信号の大きさと可動板
の変位範囲との関係は徐々に変化することがある。この
ため、上限値未満の駆動信号で制御振動源を駆動させた
としても、上記のような衝突に起因する異音や振動が発
生してしまう可能性がある。
【0006】そして、上記のような衝突に起因して異音
や振動が発生するという問題点は、上記公報に開示され
た防振支持装置のような形式に限られたものではなく、
他の形式の制御振動源にも当てはまるものである。つま
り、制御振動を発生させるためには、何らかの部材を加
振する必要があり、その加振範囲が適切な範囲を越える
と他の部材に衝突して異音や振動が発生してしまうので
ある。
【0007】この発明は、このような従来の技術が有す
る未解決の課題に着目してなされたものであって、上述
したような衝突に起因して異音や振動が発生するという
制御振動源の異常を、容易且つ確実に検出できるように
した能動型振動制御装置を提供することを目的としてい
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る発明は、振動体から伝達される振動
と干渉する制御振動を発生可能な制御振動源と、前記振
動及び制御振動が干渉した後の残留振動を検出する残留
振動検出手段と、前記残留振動が低減するように前記制
御振動源を駆動させる制御手段と、を備えた能動型振動
制御装置において、前記残留振動に含まれる所定周波数
成分に基づいて前記制御振動源の異常を検出する異常検
出手段を設けた。
【0009】また、請求項2に係る発明は、上記請求項
1に係る発明である能動型振動制御装置において、前記
制御振動源は、前記振動体及び支持体間に介在する支持
弾性体と、この支持弾性体によって画成された流体室
と、この流体室内に封入された流体と、前記流体室の隔
壁の一部を形成する可動部材と、この可動部材を前記流
体室の容積を変化させる方向に変位させる駆動手段と、
を備えることとした。
【0010】そして、請求項3に係る発明は、上記請求
項2に係る発明である能動型振動制御装置において、前
記可動部材の少なくとも一部を磁化可能な材料で形成す
るとともに、前記駆動手段は、前記可動部材を前記流体
室の容積を変化させる方向に変位可能に弾性支持する弾
性部材と、前記可動部材を前記方向に変位させる磁力を
発生する電磁アクチュエータと、を備えることとした。
【0011】一方、請求項4に係る発明は、上記請求項
1〜3に係る発明である能動型振動制御装置において、
前記異常検出手段は、前記残留振動検出手段が出力する
残留振動信号をフィルタ処理して前記所定周波数成分を
抽出するフィルタ処理手段と、このフィルタ処理手段の
出力が所定のしきい値を越えた場合に異常が発生したと
判定する異常判定手段と、を備えることとした。
【0012】また、請求項5に係る発明は、上記請求項
4に係る発明である能動型振動制御装置において、前記
所定のしきい値を、前記制御振動源に異常が発生してい
ない場合に前記残留振動に含まれる前記所定周波数成分
の最大値とした。
【0013】さらに、請求項6に係る発明は、上記請求
項2又は3に係る発明である能動型振動制御装置におい
て、前記異常検出手段は、前記残留振動検出手段が出力
する残留振動信号をフィルタ処理して前記所定周波数成
分を抽出するフィルタ処理手段と、このフィルタ処理手
段の出力が所定のしきい値を越えた場合に異常が発生し
たと判定する異常判定手段と、を備え、前記所定周波数
を、前記可動部材を含む共振系の共振周波数とした。
【0014】そして、請求項7に係る発明は、上記請求
項6に係る発明である能動型振動制御装置において、前
記所定のしきい値を、前記可動部材が他の部材に衝突し
ない範囲で変位している場合に前記残留振動に含まれる
前記所定周波数成分の最大値とした。
【0015】また、請求項8に係る発明は、上記請求項
4〜7に係る発明である能動型振動制御装置において、
前記フィルタ処理手段は、前記所定周波数よりも高周波
の成分を抽出するハイパス・フィルタ処理を行うように
した。
【0016】さらに、請求項9に係る発明は、上記請求
項1〜9に係る発明である能動型振動制御装置におい
て、前記異常検出手段が異常を検出した場合に、前記制
御手段が前記制御振動源に出力する駆動信号を縮小させ
る調整処理を実行する調整処理手段を設けた。
【0017】ここで、請求項1に係る発明にあっては、
制御振動源から発せられる制御振動と振動源から伝達さ
れる振動とが干渉するため、例えば制御手段がフィード
バック制御或いは適応制御等を実行することにより制御
振動源から適切な制御振動が発生すれば、振動源から伝
達される振動が制御振動によって打ち消され振動レベル
が低減するようになる。つまり、制御振動では打ち消し
きれなかった振動を、残留振動検出手段が残留振動とし
て検出するのであるから、制御手段が、その残留振動が
低減するように制御振動源を駆動させれば、良好な振動
低減制御が実行されるようになる。
【0018】そして、制御振動源内で例えば部材同士の
衝突等の異常が発生すると、その衝突の衝撃で発生した
振動が残留振動検出手段の検出結果に含まれるようにな
る。つまり、振動を伴うような異常が制御振動源で生じ
た状況では、残留振動検出手段の検出結果には、上記の
ように打ち消しきれなかった振動と、制御振動源の異常
によって発せられた振動とが含まれるようになるが、そ
れら二種類の振動の周波数は異なるはずである。なぜな
らば、制御振動源の異常によって発せられた振動は部材
同士の衝突等による共振現象によって生じるものである
から、その共振周波数が、振動源から伝達される振動が
採りうる周波数帯域内又はその近傍にあると、制御振動
源内の部材を含む共振系が常に共振状態となってこれが
振動悪化の原因となってしまうので、その共振系の共振
周波数は、振動源から伝達される振動が採りうる周波数
帯域から大きく(通常は高い方に)ずらす必要があるか
らである。
【0019】このため、残留振動に振動源から伝達され
る振動と制御振動源の異常によって発せられた振動とが
含まれていたとしても、制御振動源の異常によって発せ
られた振動の成分のみを抽出することは可能であり、そ
の振動成分に基づけば制御振動源の異常を検出すること
が可能となる。
【0020】請求項2に係る発明にあっては、振動体で
発生した振動は、振動体及び支持体間に介在する支持弾
性体を伝達するし、その支持弾性体内に形成された流体
室の容積が変動すれば支持弾性体の拡張方向バネが拡縮
することにより制御力が発生するから、かかる制御力に
よる制御振動と、振動体で発生した振動とが支持弾性体
上で干渉するようになる。つまり、駆動手段が可動部材
を変位させれば、流体が封入された流体室の容積が拡縮
し、その容積拡縮によって支持弾性体の拡張方向バネが
伸縮するから、ここに制御力が発生する。よって、駆動
手段が可動部材を正負両方向に連続的に変位させれば、
支持弾性体に制御振動が発生し、かかる制御振動が支持
弾性体を伝わる振動と干渉するようなるのである。
【0021】また、請求項3に係る発明にあっては、電
磁アクチュエータが発生する磁力によって可動部材がそ
の電磁アクチュエータ側に近づこうとするが、可動部材
は弾性部材によって弾性支持されているため、その弾性
部材の弾性支持力と、電磁アクチュエータが発生する磁
力とが釣り合う位置に、可動部材は位置するようになる
から、その電磁アクチュエータが発生する磁力の強弱に
応じて可動部材は連続的に変位するようになる。その結
果、流体室の容積が変動し支持弾性体の拡張方向バネが
拡縮することにより制御力が発生して、支持弾性体に制
御振動が発生して、振動源から伝達される振動と干渉す
るようなる。
【0022】これら請求項2又は請求項3に係る発明で
は、可動部材を変位させて制御振動を発生させる構造で
あるため、かかる可動部材の変位範囲が大きくなると、
その可動部材が他の部材(例えば、請求項3に係る発明
であれば、電磁アクチュエータのヨーク部等)に衝突す
るという異常が発生する可能性があるが、その衝突の衝
撃によって発生した振動が残留振動検出手段の検出結果
に含まれるから、異常判断手段によってそのような異常
は検出可能である。
【0023】そして、請求項4に係る発明にあっては、
フィルタ処理手段によって残留振動信号の所定周波数成
分が抽出され、その抽出された成分が所定のしきい値を
越えているか否かが異常判定手段によって判定され、越
えている場合には、異常判定手段によって異常が発生し
たと判定される。つまり、所定周波数を、制御振動源に
異常が発生した場合に発生する振動の周波数としておけ
ば、フィルタ処理手段の出力レベルに基づいて異常の有
無を判断できるのである。
【0024】さらに、異常判定手段で用いる所定のしき
い値は、請求項5に係る発明のように設定することが好
ましい。即ち、異常判断の基礎となる所定周波数は、制
御振動源に構成部材同士の衝突等の異常が発生した場合
に生じる振動の周波数に相当するから、制御振動源に異
常が発生していないことが明らかな場合、つまり制御振
動源の正常時に検出された残留振動に含まれる所定周波
数の成分は、例えば振動源で発生した振動の高次成分等
であるから低レベルである。よって、かかるレベルを越
えるような所定周波数の成分が残留振動から抽出されれ
ば、制御振動源に構成部材同士の衝突等の異常が発生し
たと判定できるのである。
【0025】一方、請求項6に係る発明にあっては、フ
ィルタ処理手段及び異常判定手段を備えているから、上
記請求項4に係る発明と同様の作用が得られる。しか
も、フィルタ処理手段が抽出する所定周波数を、可動部
材を含む共振系の共振周波数としているから、可動部材
が他の部材(例えば、請求項3に係る発明であれば、電
磁アクチュエータのヨーク部等)に衝突するという異常
を、確実に検出することができる。
【0026】さらに、この請求項6に係る発明の異常判
定手段で用いる所定のしきい値は、請求項7に係る発明
のように設定することが好ましい。即ち、可動部材が他
の部材に衝突しない範囲で変位している場合には、その
可動部材を含む共振系には共振現象は生じていないはず
であるから、残留振動に含まれる前記共振周波数と同じ
周波数の成分は、例えば振動源で発生した振動の高次成
分等であるから低レベルである。よって、そのレベルを
越えるような所定周波数の成分が残留振動から抽出され
れば、可動部材を含む共振系に共振現象が生じていると
判断でき、そのような共振現象が生じているのは可動部
材が他の部材に衝突するような大きな範囲で変位してい
るのに他ならないから、制御振動源に可動部材が衝突す
る異常が発生していることを検出できるのである。
【0027】そして、請求項8に係る発明にあっては、
フィルタ処理手段によって、残留振動に含まれる所定周
波数よりも高周波の成分が抽出されるが、制御振動源の
構成部材同士が衝突して発生する振動は、この制御振動
源で発せられる制御振動の周波数(つまり、振動源で発
生する振動の周波数)よりも高いのが一般的であるか
ら、フィルタ処理手段はハイパス・フィルタ処理を実行
できれば実用上は問題はなく、むしろ、高周波成分を抽
出すれば、部材同士の衝突のような異常を判断する上で
必要な情報を確実に判定に取り込むことができる。
【0028】さらに、請求項9に係る発明にあっては、
異常検出時には駆動信号が縮小するようになるから、制
御振動源で発生する制御振動のレベルが下がるようにな
り、制御振動源の構成部材同士の衝突が解消されるよう
になる。つまり、制御振動源の構成部材同士の衝突は、
制御振動を発生させるための部材の変位範囲が過大とな
ったために生じるものであり、その部材の変位範囲は駆
動信号のレベルに対応するものであるから、駆動信号の
レベルが低下すれば、制御振動を発生させるための部材
の変位範囲が小さくなる傾向となって、制御振動源の構
成部材同士の衝突が解消されるようになるのである。
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
残留振動に含まれる所定周波数成分に基づいて制御振動
源の異常を検出する異常検出手段を設けたため、制御振
動源の構成部材同士が衝突するような異常を検出できる
という効果がある。
【0030】特に、請求項4に係る発明であれば、所定
周波数や所定のしきい値を適宜選定することにより、制
御振動源の構成部材同士が衝突するような異常を容易に
且つ確実に検出できるし、請求項5に係る発明であれ
ば、異常検出をさらに確実に行えるという効果がある。
【0031】さらに、請求項6に係る発明であれば、請
求項2又は請求項3に係る発明のような形式の制御振動
源を採用した場合における可動部材が他の部材に衝突す
る異常を、容易に且つ確実に検出できるし、請求項7に
係る発明であれば、請求項2又は請求項3に係る発明の
ような形式の制御振動源を採用した場合における異常検
出をさらに確実に行えるという効果がある。
【0032】そして、請求項8に係る発明であれば、異
常を判断する上で必要な情報を確実に判定に取り込むこ
とができるから、判断精度が向上するという効果があ
る。またさらに、請求項9に係る発明であれば、異常が
検出された後に適切な対処を行うようにしたため、異常
状態を早期に解消できるという効果がある。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図1乃至図6は本発明の第1の
実施の形態を示す図であって、図1は本発明に係る能動
型振動制御装置を適用した車両の概略側面図である。
【0034】先ず、構成を説明すると、エンジン30が
駆動信号に応じた能動的な支持力を発生可能な能動型エ
ンジンマウント1を介して、サスペンションメンバ等か
ら構成される車体35に支持されている。なお、実際に
は、エンジン30及び車体35間には、能動型エンジン
マウント1の他に、エンジン30及び車体35間の相対
変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエンジン
マウントも介在している。受動的なエンジンマウントと
しては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する通常の
エンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰力発生
可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマウント
インシュレータ等が適用できる。
【0035】一方、能動型エンジンマウント1は、例え
ば、図2に示すように構成されている。即ち、この実施
の形態における能動型エンジンマウント1は、エンジン
30への取付け用のボルト2aを上部に一体に備え且つ
内部が空洞で下部が開口したキャップ2を有し、このキ
ャップ2の下部外面には、軸が上下方向を向く内筒3の
上端部がかしめ止めされている。
【0036】内筒3は、下端側の方が縮径した形状とな
っていて、その下端部が内側に水平に折り曲げられて、
ここに円形の開口部3aが形成されている。そして、内
筒3の内側には、キャップ2及び内筒3内部の空間を上
下に二分するように、キャップ2及び内筒3のかしめ止
め部分に一緒に挟み込まれてダイアフラム4が配設され
ている。ダイアフラム4の上側の空間は、キャップ2の
側面に孔を開けることにより大気圧に通じている。
【0037】さらに、内筒3の内側にはオリフィス構成
体5が配設されている。このオリフィス構成体5は、内
筒3の内部空間に整合して略円柱形に形成されていて、
その上面には円形の凹部5aが形成されている。そし
て、その凹部5aと、底面の開口部3aに対向する部分
との間が、オリフィス5bを介して連通するようになっ
ている。オリフィス5bは、例えば、オリフィス構成体
5の外周面に沿って螺旋状に延びる溝と、その溝の一端
部を凹部5aに連通させる流路と、その溝の他端部を開
口部3aに連通させる流路とで構成される。
【0038】一方、内筒3の外周面には、内周面側が若
干上方に盛り上がった肉厚円筒状の支持弾性体6の内周
面が加硫接着されていて、その支持弾性体6の外周面
は、上端側が拡径した外筒7の内周面上部に加硫接着さ
れている。
【0039】そして、外筒7の下端部は上面が開口した
円筒形のアクチュエータケース8の上端部にかしめ止め
されていて、そのアクチュエータケース8の下端面から
は、車体35側への取付け用の取付けボルト9が突出し
ている。取付けボルト9は、その頭部9aが、アクチュ
エータケース8の内底面に張り付いた状態で配設された
平板部材8aの中央の空洞部8bに収容されている。
【0040】さらに、アクチュエータケース8の内側に
は、円筒形の鉄製のヨーク10Aと、このヨーク10A
の中央部に軸を上下に向けて巻き付けられた励磁コイル
10Bと、ヨーク10Aの励磁コイル10Bに包囲され
た部分の上面に極を上下に向けて固定された永久磁石1
0Cと、から構成される電磁アクチュエータ10が配設
されている。
【0041】また、アクチュエータケース8の上端部は
フランジ状に形成されたフランジ部8Aとなっていて、
そのフランジ部8Aに外筒7の下端部がかしめられて両
者が一体となっているのであるが、そのかしめ止め部分
には、円形の金属製の板ばね11の周縁部(端部)が挟
み込まれていて、その板ばね11の中央部の電磁アクチ
ュエータ10側には、リベット11aによって磁化可能
な磁路部材12が固定されている。なお、磁路部材12
はヨーク10Aよりも若干小径の鉄製の円板であって、
その底面が電磁アクチュエータ10に近接するような厚
みに形成されている。
【0042】さらに、上記かしめ止め部分には、フラン
ジ部8Aと板ばね11とに挟まれるように、リング状の
薄膜弾性体13と、力伝達部材14のフランジ部14a
とが支持されている。具体的には、アクチュエータケー
ス8のフランジ部8A上に、薄膜弾性体13と、力伝達
部材14のフランジ部14aと、板ばね11とをこの順
序で重ね合わせるとともに、その重なり合った全体を外
筒7の下端部をかしめて一体としている。
【0043】力伝達部材14は、磁路部材12を包囲す
る短い円筒形の部材であって、その上端部がフランジ部
14aとなっており、その下端部は電磁アクチュエータ
10のヨーク10Aの上面に結合している。具体的に
は、ヨーク10Aの上端面周縁部に形成された円形の溝
に、力伝達部材14の下端部が嵌合して両者が結合され
ている。また、力伝達部材14の弾性変形時のばね定数
は、薄膜弾性体13のばね定数よりも大きい値に設定さ
れている。
【0044】ここで、本実施の形態では、支持弾性体6
の下面及び板ばね11の上面によって画成された部分に
流体室15が形成され、ダイアフラム4及び凹部5aに
よって画成された部分に副流体室16が形成されてい
て、これら流体室15及び副流体室16間が、オリフィ
ス構成体5に形成されたオリフィス5bを介して連通し
ている。なお、これら流体室15,副流体室16及びオ
リフィス5b内には、油等の流体が封入されている。
【0045】かかるオリフィス5bの流路形状等で決ま
る流体マウントとしての特性は、走行中のエンジンシェ
イク発生時、つまり5〜15Hzで能動型エンジンマウン
ト1が加振された場合に高動ばね定数、高減衰力を示す
ように調整されている。
【0046】そして、電磁アクチュエータ10の励磁コ
イル10Bは、コントローラ25からハーネス23aを
通じて供給される電流である駆動信号yに応じて所定の
電磁力を発生するようになっている。コントローラ25
は、マイクロコンピュータ,必要なインタフェース回
路,A/D変換器,D/A変換器,アンプ等を含んで構
成され、エンジンシェイクよりも高周波の振動であるア
イドル振動やこもり音振動・加速時振動が車体35に入
力されている場合には、その振動を低減できる能動的な
支持力が能動型エンジンマウント1に発生するように、
能動型エンジンマウント1に対する駆動信号yを生成し
出力するようになっている。
【0047】ここで、アイドル振動やこもり音振動は、
例えばレシプロ4気筒エンジンの場合、エンジン回転2
次成分のエンジン振動が車体35に伝達されることが主
な原因であるから、そのエンジン回転2次成分に同期し
て駆動信号yを生成し出力すれば、車体側低減が可能と
なる。そこで、本実施の形態では、エンジン30のクラ
ンク軸の回転に同期した(例えば、レシプロ4気筒エン
ジンの場合には、クランク軸が180度回転する度に一
つの)インパルス信号を生成し基準信号xとして出力す
るパルス信号生成器26を設けていて、その基準信号x
が、エンジン30における振動の発生状態を表す信号と
してコントローラ25に供給されるようになっている。
【0048】一方、電磁アクチュエータ10のヨーク1
0Aの下端面と、アクチュエータケース8の底面を形成
する平板部材8aの上面との間に挟み込まれるように、
エンジン30から支持弾性体6を通じて伝達する加振力
を検出する荷重センサ22が配設されていて、荷重セン
サ22の検出結果がハーネス23bを通じて残留振動信
号eとしてコントローラ25に供給されるようになって
いる。荷重センサ22としては、具体的には、圧電素
子,磁歪素子,歪ゲージ等が適用可能である。
【0049】そして、コントローラ25は、供給される
残留振動信号e及び基準信号xに基づき、適応アルゴリ
ズムの一つである同期式Filtered−X LMS
アルゴリズムを実行することにより、能動型エンジンマ
ウント1に対する駆動信号yを演算し、その駆動信号y
を能動型エンジンマウント1に出力するようになってい
る。
【0050】具体的には、コントローラ25は、フィル
タ係数Wi (i=0,1,2,…,I−1:Iはタップ
数)可変の適応ディジタルフィルタWを有していて、最
新の基準信号xが入力された時点から所定のサンプリン
グ・クロックの間隔で、その適応ディジタルフィルタW
のフィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力する
一方、基準信号x及び残留振動信号eに基づいて適応デ
ィジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を適宜更新する
処理を実行するようになっている。
【0051】適応ディジタルフィルタWの更新式は、F
iltered−X LMSアルゴリズムに従った下記
の(1)式のようになる。 Wi (n+1)=Wi (n)+αRT e(n) ……(1) ここで、(n),(n+1)が付く項はサンプリング時
刻n,n+1における値であることを表し、αは収束係
数である。また、更新用基準信号RT は、理論的には、
基準信号xを、能動型エンジンマウント1の電磁アクチ
ュエータ10及び荷重センサ22間の伝達関数Cをモデ
ル化した伝達関数フィルタC^でフィルタ処理した値で
あるが、基準信号xの大きさは“1”であるから、伝達
関数フィルタC^のインパルス応答を基準信号xに同期
して次々と生成した場合のそれらインパルス応答波形の
サンプリング時刻nにおける和に一致する。
【0052】また、理論的には、基準信号xを適応ディ
ジタルフィルタWでフィルタ処理して駆動信号yを生成
するのであるが、基準信号xの大きさが“1”であるた
め、フィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力し
ても、フィルタ処理の結果を駆動信号yとしたのと同じ
結果になる。
【0053】そして、コントローラ25は、上記のよう
な駆動信号yの出力処理及び適応ディジタルフィルタW
の各フィルタ係数Wi の更新処理からなる振動低減処理
を実行する一方で、能動型エンジンマウント1の異常を
検出するための異常検出処理を実行し、さらに能動型エ
ンジンマウント1の異常が検出された場合にはその異常
を解消するための調整処理をも実行するようになってい
る。
【0054】異常検出処理は、残留振動信号eに基づい
て行われるようになっており、具体的には、残留振動信
号eをハイパス・フィルタ処理して所定周波数θ1 より
も高周波帯域にある所定周波数成分としての高周波成分
h を抽出し、その高周波成分eh のレベルがしきい値
max を越えた場合には、能動型エンジンマウント1に
異常が発生したと判断するようになっている。ただし、
所定周波数θ1 は、板ばね11及び磁路部材12からな
る共振系の共振周波数に一致又は略一致する周波数であ
る。また、しきい値emax は、能動型エンジンマウント
1内において磁路部材12が電磁アクチュエータ10の
ヨーク10A等に衝突しない範囲で変位している場合、
つまり能動型1に部材同士が衝突するような異常が発生
していない場合に、残留振動信号eに含まれる高周波成
分eh が採りうる最大値となっている。
【0055】また、調整処理は、上記異常検出処理にお
いて異常が検出された場合に実行されるようになってお
り、具体的には、適応ディジタルフィルタWの各フィル
タ係数Wi のそれぞれに調整係数s(s<1)を乗じる
ことにより、全てのフィルタ係数Wi を一定比率で比例
縮小するようになっている。
【0056】次に、本実施の形態の動作を説明する。即
ち、エンジンシェイク発生時には、オリフィス5aの流
路形状等を適宜選定している結果、この能動型エンジン
マウント1は高動ばね定数,高減衰力の支持装置として
機能するため、エンジン30側で発生したエンジンシェ
イクが能動型エンジンマウント1によって減衰され、車
体35側の振動レベルが低減される。なお、エンジンシ
ェイクに対しては、特に磁路部材12を積極的に変位さ
せる必要はない。
【0057】一方、オリフィス5a内の流体がスティッ
ク状態となり流体室15及び副流体室16間での流体の
移動が不可能になるアイドル振動周波数以上の周波数の
振動が入力された場合には、コントローラ25は、所定
の演算処理を実行し、電磁アクチュエータ10に駆動信
号yを出力し、能動型エンジンマウント1に振動を低減
し得る能動的な支持力を発生させる。
【0058】これを、アイドル振動,こもり音振動入力
時にコントローラ25内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである図3に従って具体的に説明する。
先ず、そのステップ101において所定の初期設定が行
われた後に、ステップ102に移行し、伝達関数フィル
タC^に基づいて更新用基準信号RT が演算される。な
お、このステップ102では、一周期分の更新用基準信
号RT がまとめて演算される。
【0059】そして、ステップ103に移行しカウンタ
iが零クリアされた後に、ステップ104に移行して、
適応ディジタルフィルタWのi番目のフィルタ係数Wi
が駆動信号yとして出力される。
【0060】ステップ104で駆動信号yを出力した
ら、ステップ105に移行し、残留振動信号eが読み込
まれる。この残留振動信号eは、現在のカウンタiの値
とともに記憶される。
【0061】そして、ステップ106に移行して、カウ
ンタjが零クリアされ、次いでステップ107に移行
し、適応ディジタルフィルタWのj番目のフィルタ係数
j が上記(1)式に従って更新される。
【0062】ステップ107における更新処理が完了し
たら、ステップ108に移行し、次の基準信号xが入力
されているか否かを判定し、ここで基準信号xが入力さ
れていないと判定された場合は、適応ディジタルフィル
タWの次のフィルタ係数の更新又は駆動信号yの出力処
理を実行すべく、ステップ109に移行する。
【0063】ステップ109では、カウンタjが、出力
回数Ty (正確には、カウンタjは0からスタートする
ため、出力回数Ty から1を減じた値)に達しているか
否かを判定する。この判定は、ステップ104で適応デ
ィジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を駆動信号yと
して出力した後に、適応ディジタルフィルタWのフィル
タ係数Wi を、駆動信号yとして必要な数だけ更新した
か否かを判断するためのものである。そこで、このステ
ップ109の判定が「NO」の場合には、ステップ11
0でカウンタjをインクリメントした後に、ステップ1
07に戻って上述した処理を繰り返し実行する。
【0064】しかし、ステップ109の判定が「YE
S」の場合には、適応ディジタルフィルタWのフィルタ
係数のうち、駆動信号yとして必要な数のフィルタ係数
の更新処理が完了したと判断できるから、ステップ11
1に移行してカウンタiをインクリメントした後に、上
記ステップ104の処理を実行してから所定のサンプリ
ング・クロックの間隔に対応する時間が経過するまで待
機し、サンプリング・クロックに対応する時間が経過し
たら、上記ステップ104に戻って上述した処理を繰り
返し実行する。
【0065】一方、ステップ111で基準信号xが入力
されたと判断された場合には、ステップ112に移行
し、カウンタi(正確には、カウンタiが0からスター
トするため、カウンタiに1を加えた値)を最新の出力
回数Ty として保存した後に、ステップ102に戻っ
て、上述した処理を繰り返し実行する。
【0066】このような図3の処理を繰り返し実行する
結果、コントローラ25から能動型エンジンマウント1
の電磁アクチュエータ10に対しては、基準信号xが入
力された時点から、サンプリング・クロックの間隔で、
適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi が順番に
駆動信号yとして供給される。
【0067】この結果、励磁コイル10Bに駆動信号y
に応じた磁力が発生するが、磁路部材12には、既に永
久磁石10Cによる一定の磁力が付与されているから、
その励磁コイル10Bによる磁力は永久磁石10Cの磁
力を強める又は弱めるように作用すると考えることがで
きる。つまり、励磁コイル10Bに駆動信号yが供給さ
れていない状態では、磁路部材12は、板ばね11によ
る支持力と、永久磁石10Cの磁力との釣り合った中立
の位置に変位することになる。そして、この中立の状態
で励磁コイル10Bに駆動信号yが供給されると、その
駆動信号yによって励磁コイル10Bに発生する磁力が
永久磁石10Cの磁力と逆方向であれば、磁路部材12
は電磁アクチュエータ10とのクリアランスが増大する
方向に変位する。逆に、励磁コイル10Bに発生する磁
力が永久磁石10Cの磁力と同じ方向であれば、磁路部
材12は電磁アクチュエータ10とのクリアランスが減
少する方向に変位する。
【0068】このように磁路部材12は正逆両方向に変
位可能であり、磁路部材12が変位すれば主流体室15
の容積が変化し、その容積変化によって支持弾性体6の
拡張ばねが変形するから、この能動型エンジンマウント
1に正逆両方向の能動的な支持力が発生するのである。
【0069】そして、駆動信号yとなる適応ディジタル
フィルタWの各フィルタ係数Wi は、同期式Filte
red−X LMSアルゴリズムに従った上記(1)式
によって逐次更新されるため、ある程度の時間が経過し
て適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wi が最
適値に収束した後は、駆動信号yが能動型エンジンマウ
ント1に供給されることによって、エンジン30から能
動型エンジンマウント1を介して車体35側に伝達され
るアイドル振動やこもり音振動が低減されるようになる
のである。
【0070】一方、コントローラ25内では、図3に示
した振動低減処理の実行中に、所定の割り込みタイミン
グで、図4に示す処理(異常検出処理及び調整処理)が
実行される。なお、本実施の形態では、図4に示す処理
の割り込みタイミングは、図3に示す振動低減処理のサ
ンプリング・クロックに同期している。従って、図4に
示す処理は、例えば図3の処理のステップ109からス
テップ111に移行するタイミングで実行すればよい。
【0071】即ち、図4に示す処理が実行されると、先
ずそのステップ121において、図3の処理で既に読み
込まれている残留振動信号eに対してハイパス・フィル
タ処理が行われて、その高周波成分eh が抽出される。
次いで、ステップ122に移行し、その高周波成分eh
がしきい値emax を越えているか否かが判定され、この
判定が「NO」の場合には、能動型エンジンマウント1
には特に異常が発生していないと判断して、このまま今
回の図4の処理を終了する。
【0072】しかし、ステップ122の判定が「YE
S」の場合には、残留振動信号eに服される高周波成分
h が過大であり、能動型エンジンマウント1に異常が
発生していると判断して、ステップ123に移行する。
【0073】即ち、高周波成分eh を抽出するハイパス
・フィルタ処理におけるカットオフ周波数である所定周
波数θ1 と、抽出された高周波成分eh が過大であるか
否かを判断するためのしきい値emax とを上述のように
設定しているため、ステップ122の判定が「YES」
の場合は、磁路部材12が通常よりも大きな範囲で変位
した結果、その磁路部材12が電磁アクチュエータ10
のヨーク10A等に衝突する異常が発生していると判断
できるのである。つまり、磁路部材12がヨーク10A
に衝突すると、その際の衝撃によって磁路部材12を含
む共振系に共振振動が発生し、その共振振動が荷重セン
サ22に検出されて残留振動信号eに取り込まれるから
である。
【0074】そして、ステップ123に移行すると、適
応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wi に調整係
数sが乗じられる。すると、各フィルタ係数Wi は、一
定比率で縮小されるため、図3のステップ104で出力
される駆動信号yが縮小されることとなる。ステップ1
23の処理を終えたら、今回のこの図4の処理を終了す
るが、図4の処理は割り込み処理として繰り返し実行さ
れ、ステップ123の処理はステップ122の判定が
「YES」である限り繰り返し実行されるから、残留振
動信号eに含まれる高周波成分eh が充分に小さくなる
まで駆動信号yは縮小し続け、遂には磁路部材12がヨ
ーク10A等に衝突しない範囲で変位するようになる。
【0075】本実施の形態のよる動作を波形図を伴って
具体的に説明する。例えばエンジン30で発生する振動
の振幅が過大となると、打ち消しきれずに残留振動信号
eとして検出される振動のレベルが大きくなるから、そ
れを打ち消すことができるように、適応ディジタルフィ
ルタWのフィルタ係数Wi が大きく成長する。その結
果、駆動信号yも大きくなり、磁路部材12が大きく変
位して大きな制御力が発生するようになるが、その磁路
部材12の変位範囲が過大となって、磁路部材12がヨ
ーク10Aに衝突するようになると、その衝撃が加振力
となって板ばね11及び磁路部材12からなる共振系が
加振されて共振振動が発生し、その共振振動が通常の制
御力に重畳されてしまい、荷重センサ22に検出され残
留振動信号eに取り込まれてしまう。
【0076】すると、板ばね11及び磁路部材12から
なる共振系の共振周波数は、エンジン30で発生する振
動の周波数に比べて高周波であり、そのエンジン30で
発生する振動は正弦波状であるから、その正弦波状の振
動に高周波振動が重畳された残留振動信号eは、図5
(a)に示すような波形となる。
【0077】そして、その残留振動信号eに対してステ
ップ121のハイパス・フィルタ処理が実行されれば、
板ばね11及び磁路部材12からなる共振系の共振周波
数よりも高周波の成分が抽出されるから、高周波成分e
h は、図5(b)に示すような波形となり、その高周波
成分eh のレベルがしきい値emax を越えればステップ
123の処理が実行され、図6に示すように駆動信号y
が縮小される。
【0078】駆動信号yが縮小されれば、磁路部材12
の変位範囲が縮小されるが、磁路部材12がヨーク10
Aに衝突する状況が解消されない限り駆動信号yは縮小
し続ける。そして、磁路部材12がヨーク10Aに衝突
しなくなった時点で、駆動信号yの一定比率での縮小処
理は実行されなくなる。
【0079】つまり、適応ディジタルフィルタWのフィ
ルタ係数Wi は、磁路部材12がヨーク10A等に衝突
しない状況であれば、上記(1)式のみに従って適宜更
新されるから、エンジン30から伝達される振動を低減
できる最適値に向かって収束していくが、磁路部材12
の変位範囲が過大となってヨーク10A等に衝突するよ
うになるが、それが検出され、磁路部材12の変位範囲
が小さくなるように駆動信号yが一定比率で強制的に縮
小されるのである。
【0080】よって、良好な振動低減制御を実行しつ
つ、能動型エンジンマウント1の異常を検出して、その
異常状態を確実に解消することができ、能動型エンジン
マウント1の異常に起因した異音・振動の発生を抑制し
て乗員に不快感を与えないようにすることができるので
ある。
【0081】しかも、駆動信号yとなる各フィルタ係数
i を一定比率で縮小するようになっているため、駆動
信号yを頭打ちにするような調整とは異なり、フィルタ
係数Wi を縮小させた結果、駆動信号yに高調波が重畳
されてしまうようなことがないという利点もある。
【0082】そして、異常を検出する処理も残留振動信
号eに基づいて行われるため、異常検出のために他のセ
ンサ等を別途設ける必要もないからコスト的にも有利で
あるし、その異常を検出するために必要となる処理も、
ステップ121のハイパス・フィルタ処理とステップ1
22の比較処理だけであるから、大幅な演算負荷の増大
等を招くこともなく、異常検出も比較的容易に且つ確実
に行えるのである。
【0083】なお、本実施の形態では、能動型エンジン
マウント1を通じて車体35側に伝達される振動を検出
する手段として、荷重センサ22を用いているため、加
振振幅の大小を正確に表した残留振動信号eをコントロ
ーラ25に供給できるという利点もある。従って、コン
トローラ25においては、加振振幅の大きさを正確に反
映した駆動信号yを生成し出力するようになり、電磁ア
クチュエータ10は、加振振幅に比例した振幅で可動板
12を変位させることができる。このため、アイドル振
動(20〜30Hz)からこもり音振動(80〜800H
z)に至る全制御周波数帯域に渡って良好な振動低減制
御を実行することができるのである。
【0084】また、能動型エンジンマウント1内に荷重
センサ22を内蔵し、その荷重センサ22にボルト9の
締め付け力が加わらないようにしているから、荷重セン
サの耐荷重条件が低くなり、小型の荷重センサ22を採
用でき、スペース的に余裕の小さい能動型エンジンマウ
ント1には非常に好適であり、コスト的にも有利にな
る。しかも、荷重センサ22が能動型エンジンマウント
1と一体となっていれば、実際に車両に搭載する際の手
間数が少なくなるから、製造ラインにおける効率化を図
ることもできるという利点もある。
【0085】ここで、本実施の形態では、エンジン30
が振動体に対応し、車体35が支持体に対応し、能動型
エンジンマウント1が制御振動源に対応し、荷重センサ
22が残留振動検出手段に対応し、コントローラ25,
パルス信号生成器26及び図3に示す処理が制御手段に
対応し、板ばね11の磁路部材12が固定された中央部
分及び磁路部材12によって可動部材が構成され、板ば
ね11の磁路部材12を弾性支持する周縁部分及び電磁
アクチュエータ10によって駆動手段が構成され、板ば
ね11の磁路部材12を弾性支持する周縁部分が弾性部
材に対応し、図4の処理におけるステップ121,12
2の処理が異常検出手段に対応し、ステップ121の処
理がフィルタ処理手段に対応し、ステップ122の処理
が異常判定手段に対応し、ステップ123の処理が調整
処理手段に対応する。
【0086】図7は本発明の第2の実施の形態を示す図
であって、異常検出処理及び調整処理を示すフローチャ
ートである。なお、その全体的な構成や他の処理の内容
は、上記第1の実施の形態と同様であるためその図示及
び説明は省略するとともに、同一内容のステップには同
じ符号を付しその重複する説明は省略する。
【0087】即ち、この実施の形態では、同期式Fil
tered−X LMSアルゴリズムにおける評価関数
として、下記の(2)式を用いている。 Jm={e(n)}2 +β{y(n)}2 ……(2) つまり、LMSアルゴリズムにあっては評価関数Jmが
小さくなる方向にフィルタ係数Wi が更新されるのであ
るから、上記(2)式の右辺の内容からも明らかなよう
に、フィルタ係数Wi は、残留振動信号eの自乗値が小
さくなるとともに、駆動信号yの自乗値をβ倍した値が
小さくなるように、逐次更新されることになる。そし
て、βは発散抑制係数と称される係数であって、この発
散抑制係数βが大きくなる程、駆動信号yは小さくなる
傾向となる。つまり、発散抑制係数βには、駆動信号y
を縮小させる作用がある。
【0088】そして、上記(2)式で表される評価関数
Jmに基づいてフィルタ係数Wi の更新式を求めると、
下記の(3)式のようになる。 Wi (n+1)=Wi (n)+2αRT e(n)−2βαy(n) ……(3) そこで、この(3)式中の「2α」を新たな収束係数α
とし、「2βα」を新たな発散抑制係数βk とすれば、
適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wiの更新式
は下記の(4)式のようになる。
【0089】 Wi (n+1)=Wi (n)+αRT e(n)−βk y(n) ……(4) さらに、本実施の形態では、発散抑制係数βk はその添
え字k(k=1,2,…,K)に対応して複数K個設け
られていて、その添え字kが大きくなるに従って発散抑
制係数βk は1段階ずつ大きくなる。
【0090】本実施の形態における振動低減処理は、適
応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi の更新式が
上記(4)式であることを除いては、上記第1の実施の
形態の場合と同様である。
【0091】一方、所定の割り込みタイミングで異常検
出処理及び調整処理としての図7の処理が実行される
と、上記第1の実施の形態と同様のステップ121,1
22の処理が実行され、ステップ122の判定が「N
O」の場合には現状のまま図7の処理を終了するが、ス
テップ122の判定が「YES」の場合には、ステップ
131に移行し、添え字kがインクリメントされる。な
お、ステップ131に移行した際に添え字kが既に最大
値Kである場合には、添え字kはインクリメントせずに
この図7の処理を終了する。
【0092】ステップ131の処理が実行されれば、発
散抑制係数βk が増加方向に更新されるから、上記
(4)式の右辺第3項は発散抑制係数βk が更新される
前よりも大きくなる。すると、フィルタ係数Wi は、更
新演算される際に原点(=0)に近づく傾向が強くなる
から、磁路部材12をヨーク10Aに衝突させる程に大
きかったフィルタ係数Wi が縮小傾向となり、それに伴
って駆動信号yが小さくなって、磁路部材12の変位範
囲が縮小する。このステップ131の処理は、ステップ
122の判定が「NO」となるまで繰り返し行われるか
ら、遂には磁路部材12のヨーク10A等への衝突が解
消されるようになる。
【0093】このように、本実施の形態であっても、良
好な振動低減制御を実行しつつ、能動型エンジンマウン
ト1の異常を検出して、その異常状態を確実に解消する
ことができ、能動型エンジンマウント1の異常に起因し
た異音・振動の発生を抑制して乗員に不快感を与えない
ようにすることができるのである。
【0094】ここで、本実施の形態では、図7のステッ
プ131の処理が調整処理手段に対応する。なお、上記
各実施の形態では、残留振動を能動型エンジンマウント
1に内蔵した荷重センサ22によって検出しているが、
これに限定されるものではなく、例えば車室内の乗員足
元位置にフロア振動を検出する加速度センサを配設し、
その加速度センサの出力信号を残留振動信号eとしても
よい。
【0095】また、上記各実施の形態では、フィルタ処
理手段としてハイパス・フィルタ処理を実行するステッ
プ121を設けているが、これに限定されるものではな
く、バンドパス・フィルタ処理であってもよいし、FF
T演算を行って所定周波数成分を抽出するようにしても
よい。
【0096】そして、上記第2の実施の形態では、能動
型エンジンマウント1の異常が検出された場合には発散
抑制係数βk を増加方向に更新するようにしているが、
これとともに、能動型エンジンマウント1の異常が解消
されたら、発散抑制係数βkを減少方向に更新するよう
にしてもよい。
【0097】また、本発明の適用対象は車両に限定され
るものではなく、エンジン30以外で発生する振動を低
減するための能動型振動制御装置であっても本発明は適
用可能であり、適用対象に関係なく上記各実施の形態と
同様の作用効果を奏することができる。例えば、工作機
械からフロアや室内に伝達される振動を低減する装置等
であっても、本発明は適用可能である。
【0098】さらに、上記各実施の形態では、駆動信号
yを生成するアルゴリズムとして同期式Filtere
d−X LMSアルゴリズムを適用しているが、適用可
能なアルゴリズムはこれに限定されるものではなく、例
えば、通常のFiltered−X LMSアルゴリズ
ム等であってもよい。また、必ずしも適応アルゴリズム
でなくてもよく、通常のフィードバック制御を実行する
ようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態を示す車両の概略側面図であ
る。
【図2】能動型エンジンマウントの一例を示す断面図で
ある。
【図3】振動低減処理の概要を示すフローチャートであ
る。
【図4】異常検出処理及び調整処理を示すフローチャー
トである。
【図5】残留振動信号及びその高周波成分の波形図であ
る。
【図6】駆動信号の縮小状況を説明する波形図である。
【図7】第2の実施の形態における異常検出処理及び調
整処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】 1 能動型エンジンマウント(制御振動源) 10 電磁アクチュエータ 11 板ばね(可動部材,弾性部材) 12 磁路部材(可動部材) 15 流体室 22 荷重センサ(残留振動検出手段) 25 コントローラ 26 パルス信号生成器 30 エンジン(振動体) 35 車体(支持体)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 赤津 洋介 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日産 自動車株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 振動体から伝達される振動と干渉する制
    御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動及び制御振
    動が干渉した後の残留振動を検出する残留振動検出手段
    と、前記残留振動が低減するように前記制御振動源を駆
    動させる制御手段と、を備えた能動型振動制御装置にお
    いて、前記残留振動に含まれる所定周波数成分に基づい
    て前記制御振動源の異常を検出する異常検出手段を設け
    たことを特徴とする能動型振動制御装置。
  2. 【請求項2】 前記制御振動源は、前記振動体及び支持
    体間に介在する支持弾性体と、この支持弾性体によって
    画成された流体室と、この流体室内に封入された流体
    と、前記流体室の隔壁の一部を形成する可動部材と、こ
    の可動部材を前記流体室の容積を変化させる方向に変位
    させる駆動手段と、を備えている請求項1記載の能動型
    振動制御装置。
  3. 【請求項3】 前記可動部材の少なくとも一部を磁化可
    能な材料で形成するとともに、前記駆動手段は、前記可
    動部材を前記流体室の容積を変化させる方向に変位可能
    に弾性支持する弾性部材と、前記可動部材を前記方向に
    変位させる磁力を発生する電磁アクチュエータと、を備
    えている請求項2記載の能動型振動制御装置。
  4. 【請求項4】 前記異常検出手段は、前記残留振動検出
    手段が出力する残留振動信号をフィルタ処理して前記所
    定周波数成分を抽出するフィルタ処理手段と、このフィ
    ルタ処理手段の出力が所定のしきい値を越えた場合に異
    常が発生したと判定する異常判定手段と、を備えている
    請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の能動型振動制
    御装置。
  5. 【請求項5】 前記所定のしきい値は、前記制御振動源
    に異常が発生していない場合に前記残留振動に含まれる
    前記所定周波数成分の最大値である請求項4記載の能動
    型振動制御装置。
  6. 【請求項6】 前記異常検出手段は、前記残留振動検出
    手段が出力する残留振動信号をフィルタ処理して前記所
    定周波数成分を抽出するフィルタ処理手段と、このフィ
    ルタ処理手段の出力が所定のしきい値を越えた場合に異
    常が発生したと判定する異常判定手段と、を備え、前記
    所定周波数は、前記可動部材を含む共振系の共振周波数
    である請求項2又は請求項3記載の能動型振動制御装
    置。
  7. 【請求項7】 前記所定のしきい値は、前記可動部材が
    他の部材に衝突しない範囲で変位している場合に前記残
    留振動に含まれる前記所定周波数成分の最大値である請
    求項6記載の能動型振動制御装置。
  8. 【請求項8】 前記フィルタ処理手段は、前記所定周波
    数よりも高周波の成分を抽出するハイパス・フィルタ処
    理を行うようになっている請求項4乃至請求項7のいず
    れかに記載の能動型振動制御装置。
  9. 【請求項9】 前記異常検出手段が異常を検出した場合
    に、前記制御手段が前記制御振動源に出力する駆動信号
    を縮小させる調整処理を実行する調整処理手段を設けた
    請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の能動型振動制
    御装置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006207794A (ja) * 2004-12-28 2006-08-10 Tokai Rubber Ind Ltd 能動型防振装置
JP2012017765A (ja) * 2010-07-06 2012-01-26 Honda Motor Co Ltd 防振装置
JP2012154406A (ja) * 2011-01-26 2012-08-16 Kyb Co Ltd 車両用緩衝器
JP2012154405A (ja) * 2011-01-26 2012-08-16 Kyb Co Ltd 車両用緩衝器

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