JP3509440B2 - 能動型振動制御装置 - Google Patents

能動型振動制御装置

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JP3509440B2
JP3509440B2 JP34752296A JP34752296A JP3509440B2 JP 3509440 B2 JP3509440 B2 JP 3509440B2 JP 34752296 A JP34752296 A JP 34752296A JP 34752296 A JP34752296 A JP 34752296A JP 3509440 B2 JP3509440 B2 JP 3509440B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、車両エンジン等
の振動源から車体に伝達される振動に、制御振動源から
発せられる制御振動を干渉させることにより、振動の低
減を図る能動型振動制御装置に関し、特に、制御振動源
を駆動させるための制御アルゴリズムが、制御振動源
と、残留振動を検出する手段との間の伝達関数を含むも
のであって、その伝達関数を同定する手段を内蔵してい
るものにおいて、伝達関数の同定精度がより向上するよ
うにしたものである。
【0002】
【従来の技術】本発明のような能動型振動制御装置の場
合、制御振動源と残留振動を検出する手段との間の伝達
関数は、その能動型振動制御装置の適用対象装置,適用
対象設備毎の特性バラツキによって微妙に異なるし、ま
た、適用対象装置等の使用に伴う特性変化等によって当
初の状態からは変化してしまう可能性があるため、高精
度の振動低減制御を実行するためには、能動型振動制御
装置を適用対象装置に組み込んだ後に伝達関数を同定す
ることが好ましい。
【0003】そこで、本出願人は、先に特開平3−20
3492号公報に開示される技術や特開平5−2654
68号公報に開示される技術を提案している。即ち、こ
れら公報に開示された従来技術は、いずれも能動型騒音
制御装置に関するものではあるが、制御音源と残留騒音
を検出する手段との間の伝達関数を含む制御アルゴリズ
ムを用いるようになっている点は本発明と同様であっ
て、その伝達関数を同定するための同定音を、音響空間
内の暗騒音レベルがある程度の高い場合に発生させるこ
とにより、能動型騒音制御装置を適用対象装置に搭載し
た後であっても、人間に不快感を与えることなく伝達関
数を同定するようにしていた。
【0004】また、その他の先行技術としては、これも
騒音の低減技術に関するものではあるが特開平3−25
9722号公報に開示されたものがある。この公報に開
示された装置は、冷蔵庫のコンプレッサで発生し機械室
ダクトを通じて外部に放射される騒音を、その機械室ダ
クトから放射される前に打ち消す装置であって、機械室
ダクト内の騒音制御を行うラウドスピーカ及びマイクロ
フォンを備えていて、コンプレッサの駆動状態に応じて
ラウドスピーカから制御音を発生して騒音低減を図る一
方、騒音制御特性が劣化しないように、コンプレッサが
停止する度に、ホワイトノイズ信号に応じた同定音を発
生して、ラウドスピーカ及びマイクロフォン間の伝達関
数を測定し、フィルタの同定を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】確かに、上述したよう
な先行技術によれば、能動型騒音制御装置の適用対象装
置毎に、制御に必要な伝達関数を同定することは可能で
あるから、高精度の振動低減制御等が期待できる。
【0006】しかしながら、本発明のように振動を低減
する能動型振動制御装置の場合、振動を発生する制御振
動源と音を発するラウドスピーカとの構造上の差から、
制御振動源から発生可能な制御振動のレベルを高くする
のが困難であるため、周囲の振動レベルが高い状況で伝
達関数の同定処理を実行してしまうと、高精度の同定が
行えない可能性が高いという不具合がある。
【0007】そして、実際に伝達関数を同定する場合を
想定すると、例えば車両用の能動型振動制御装置であれ
ば、工場において組立てが略完了した際やディーラーに
おいて定期検査を行う際等に、振動レベルが確実に小さ
くなっている状況を選んで、車両に搭載されたコントロ
ーラを用いて伝達関数の同定を行うのが極めて現実的で
あるが、そのような振動レベルが小さくなっている状況
を選んだとしても、同定処理が必ず高精度に行われてい
るという保証はない。
【0008】本発明は、このような従来の技術が有する
未解決の課題に着目してなされたものであって、振動低
減制御に必要な伝達関数を、より高精度に同定すること
ができる能動型振動制御装置を提供することを目的とし
ている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る発明は、振動源から発せられる振動
と干渉する制御振動を発生可能な制御振動源と、前記振
動源の振動発生状態を検出し基準信号として出力する基
準信号生成手段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動
信号として出力する残留振動検出手段と、前記基準信号
及び前記残留振動信号に基づき前記制御振動源及び前記
残留振動検出手段間の伝達関数を含む制御アルゴリズム
を用いて前記振動が低減するように前記制御振動源を駆
動する能動制御手段と、前記伝達関数を同定する伝達関
数同定手段と、を備えるとともに、前記伝達関数同定手
段は、所定の同定信号を前記制御振動源に供給可能な同
定信号供給手段と、前記同定信号に応じた振動が前記制
御振動源から発せられた場合の前記残留振動信号を読み
込む応答信号読み込み手段と、この応答信号読み込み手
段が読み込んだ前記残留振動信号に基づいて前記伝達関
数を演算する伝達関数演算手段と、を備えた能動型振動
制御装置において、前記応答信号読み込み手段が前記残
留振動信号を読み込んでいる最中に前記残留振動検出手
段に外乱が入ったこと又は入った可能性が高いことを検
出する外乱検出手段と、この外乱検出手段が前記外乱が
入ったこと又は入った可能性が高いことを検出した場合
に前記伝達関数同定手段を再始動させる同定処理再始動
手段と、を備えた。
【0010】また、請求項2に係る発明は、上記請求項
1に係る発明である能動型振動制御装置において、前記
同定処理再始動手段は、前記伝達関数同定手段による前
記同定処理を最初からやり直しさせるようにした。
【0011】そして、請求項3に係る発明は、上記請求
項1に係る発明である能動型振動制御装置において、前
記同定信号は正弦波であり、その正弦波の周波数は複数
設定されており、前記同定信号供給手段は前記正弦波を
一つずつ選択して前記同定信号とするようにした。
【0012】また、請求項4に係る発明は、上記請求項
3に係る発明である能動型振動制御装置において、前記
同定処理再始動手段は、前記外乱検出手段が前記外乱が
入ったこと又は入った可能性が高いことを検出した際に
同定信号として選択している正弦波を、再度同定信号と
して選択して前記同定処理を再始動するようになってし
た。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】さらに、請求項に係る発明は、上記請求
項1〜に係る発明である能動型振動制御装置を、車両
に適用するとともに、前記外乱検出手段は車両状態に基
づいて前記外乱が入ったこと又は入った可能性が高いこ
とを検出するようにした。
【0017】請求項に係る発明は、上記請求項に係
る発明である能動型振動制御装置において、前記外乱検
出手段を、前記車両状態としてドアの開閉の変化を検出
するドア開閉変化検出手段とした。
【0018】請求項に係る発明は、上記請求項に係
る発明である能動型振動制御装置において、前記外乱検
出手段を、前記車両状態としてエンジンが駆動している
ことを検出するエンジン駆動検出手段とした。
【0019】請求項に係る発明は、上記請求項に係
る発明である能動型振動制御装置において、前記外乱検
出手段を、前記車両状態として車両が走行していること
又は走行している可能性が高いことを検出する車両走行
検出手段とした。
【0020】請求項に係る発明は、上記請求項に係
る発明である能動型振動制御装置において、前記外乱検
出手段を、前記車両状態として車体の傾斜状態を検出す
る車体傾斜検出手段とした。
【0021】請求項10に係る発明は、上記請求項
係る発明である能動型振動制御装置において、前記外乱
検出手段を、前記車両状態としてエンジンフードの開状
態を検出するエンジンフード開状態検出手段とした。
【0022】また、請求項11に係る発明は、上記請求
3、4に係る発明である能動型振動制御装置におい
て、前記外乱検出手段は、選択されている一の周波数の
前記正弦波からなる前記同定信号の前記制御振動源への
供給が完了した直後であって前記同定信号の出力を停止
しているときの前記残留振動信号に基づいて前記外乱が
入ったこと又は入った可能性が高いことを検出するよう
にした。
【0023】そして、請求項12に係る発明は、上記請
求項3,4に係る発明である能動型振動制御装置におい
て、前記外乱検出手段は、前記応答信号読み込み手段が
読み込んだ前記残留振動信号に基づいて前記外乱が入っ
たこと又は入った可能性が高いことを検出するようにし
た。
【0024】さらに、請求項13に係る発明は、上記請
求項3,4,12に係る発明である能動型振動制御装置
において、前記伝達関数演算手段は、前記同定信号供給
手段が前記正弦波を変更する度に前記応答信号読み込み
手段が読み込んだ前記残留振動信号をフーリエ変換して
前記各正弦波の周波数に相当する成分を抽出するフーリ
エ変換手段と、このフーリエ変換手段が抽出した各周波
数成分を合成したものを逆フーリエ変換して前記伝達関
数としてのインパルス応答を求める逆フーリエ変換手段
と、を備えた。
【0025】ここで、請求項1に係る能動型振動制御装
置にあっては、同定信号供給手段,応答信号読み込み手
段及び伝達関数演算手段を備えた伝達関数同定手段を有
しているため、この能動型振動制御装置を適用対象に搭
載した後であっても、制御振動源及び残留振動検出手段
間の伝達関数を同定することが可能である。しかも、同
定処理に用いられる残留振動信号に外乱が入った場合又
は入った可能性が高い場合には、それが外乱検出手段に
よって検出され、その検出に応じて同定処理再始動手段
が、伝達関数同定手段による伝達関数の同定処理、つま
り同定信号供給手段による同定信号の供給処理、応答信
号読み込み手段による残留振動信号の読み込み処理及び
伝達関数演算手段による伝達関数の演算処理、という一
連の処理を再び実行させる。
【0026】このため、応答信号読み込み手段が読み込
んだ残留振動信号に外乱が含まれていたとしても、それ
に基づいて同定された伝達関数が能動制御手段が用いる
制御アルゴリズムに含まれてしまうことはない。従っ
て、その制御アルゴリズムの精度が、同定処理中の外乱
の影響で大きく劣化してしまうことを防げる。
【0027】そして、請求項2に係る発明にあっては、
同定処理全体が再実行されるから、同定された伝達関数
に外乱の影響が含まれてしまうことを、より確実に防ぐ
ことができる。
【0028】また、請求項3に係る発明にあっては、同
定信号供給手段から制御振動源に供給される同定信号は
正弦波状に変化する信号であるから、同定信号によって
制御振動源で発生する同定振動の周波数成分は、元の正
弦波の周波数に相当する特定周波数に集中するようにな
る。よって、高レベルの振動を発生することができない
制御振動源であったとしても、応答信号読み込み手段に
おいて比較的高レベルの残留振動信号を読み込むことが
でき、伝達関数演算手段において高精度に伝達関数を求
めることができる。
【0029】しかも、正弦波の周波数は複数設定されて
いるから、同定信号供給手段が正弦波の周波数を一つず
つ選択して同定信号とすれば、残留振動検出手段は、そ
の正弦波の周波数が変更される度に、周波数の異なった
正弦波状の残留振動信号を読み込むようになり、同定信
号として選択された周波数の数だけ制御振動源及び残留
振動検出手段間の周波数応答を測定することになるか
ら、その読み込み結果毎に伝達関数演算手段が伝達関数
を演算すれば、少なくとも各周波数毎の伝達関数が得ら
れるようになる。そこで、それら各伝達関数を適宜合成
すれば、複数の周波数で有効な伝達関数が得られる。さ
らには、振動低減制御実行中に問題となる周波数(例え
ば、振動源から頻繁に発せられる振動の周波数)を複数
選出し、その問題となる周波数のそれぞれを同定信号の
元となる正弦波の周波数とすれば、振動低減制御に適し
た伝達関数を、効率良く得ることができる。
【0030】また、同定振動の周波数成分が特定周波数
に集中すれば、応答信号読み込み手段で読み込む必要が
ある残留振動信号は、伝達関数(インパルス応答)とし
て時間軸上で必要な長さに相当した分だけ取り込めばよ
いから、同定振動を発している時間は、ホワイトノイズ
信号により同定する場合よりも短くて済む。つまり、ホ
ワイトノイズ信号を用いて同定演算を行うためには、同
定振動を残留振動信号として取り込む一方で例えば適応
演算を行って伝達関数を同定する必要があるから、伝達
関数を高精度に同定するためには、できるだけ長時間に
渡って同定振動を発生し続ける必要があるが、この請求
項3に係る発明のように、正弦波状の同定振動を発生す
る構成であれば、残留振動信号に含まれる周波数成分の
うち、同定信号の元となっている正弦波の周波数に相当
する成分のレベル及び位相を例えばフーリエ変換処理等
によって把握できればよいのであるから、伝達関数同定
手段における演算処理に必要な時間は、結局は必要なデ
ータ数を取り込むのに費やされる時間となるから、ホワ
イトノイズ信号により伝達関数を同定する場合よりも短
くなるのである。
【0031】そして、同定振動の周波数成分が特定周波
数に集中すれば、伝達関数同定手段における演算処理も
例えばフーリエ変換や逆フーリエ変換等の比較的演算負
荷の小さい演算で済むようになるから、ホワイトノイズ
信号によ同定する場合よりも処理が簡易となり、必要
なコントローラも比較的低能力のものとなる。
【0032】さらに、請求項4に係る発明にあっては、
請求項3に係る発明における同定処理の内容を踏まえ、
外乱検出手段による検出結果が同定処理の再始動を求め
るような場合であっても、同定処理全てを最初からやり
直すのではなく、必要な時点に戻って同定処理を再始動
するようになっているから、同定処理再始動手段によっ
て同定処理が再び実行されるような場合でも、処理時間
の増加を最小限に抑えることができる。
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】らに、請求項に係る発明にあっては、
能動型振動制御装置の適用対象である車両の状態に基づ
いて、外乱検出手段が外乱が入ったこと又は入った可能
性が高いことを検出する。
【0038】例えば、請求項に係る発明のように、車
両状態としてドアの開閉の変化を検出するようにすれ
ば、応答信号読み込み手段が残留振動信号を読み込んで
いる最中に残留振動検出手段に外乱が入ったこと又は入
った可能性が高いことを検出することができる。つま
り、ドアの開閉に伴って発生する振動は、車体を伝わっ
て残留振動検出手段に到達し、外乱として残留振動信号
に入ってしまう可能性が高いため、応答信号読み込み手
段が残留振動信号を読み込んでいる最中に、ドア開閉変
化検出手段がドアの開閉の変化を検出した場合には、残
留振動検出手段に外乱が入った又は入った可能性が高
い、と判断することができるのである。
【0039】なお、ドアの開閉の変化は、ドアの開閉を
検出するドアスイッチの状態が変化したか否かによって
検出することができる。また、請求項に係る発明のよ
うに、車両状態としてエンジンが駆動していることを検
出するようにすれば、応答信号読み込み手段が残留振動
信号を読み込んでいる最中に残留振動検出手段に外乱が
入ったこと又は入った可能性が高いことを検出すること
ができる。つまり、エンジンが駆動していると、そのエ
ンジンで発生した振動は、エンジンマウント等を通じて
車体側に伝達されるから、外乱として残留振動信号に入
ってしまう可能性が高いため、応答信号読み込み手段が
残留振動信号を読み込んでいる最中に、エンジン駆動検
出手段がエンジンが駆動していることを検出した場合に
は、残留振動検出手段に外乱が入った又は入った可能性
が高い、と判断することができるのである。
【0040】なお、エンジンが駆動していることは、エ
ンジン回転数センサの出力信号から判断することができ
る。そして、請求項に係る発明のように、車両状態と
して車両が走行していること又は走行している可能性が
高いことを検出するようにすれば、応答信号読み込み手
段が残留振動信号を読み込んでいる最中に残留振動検出
手段に外乱が入ったこと又は入った可能性が高いことを
検出することができる。つまり、車両が走行している
と、路面から車輪に入力された振動がサスペンションや
サスペンションメンバを通じて車体に伝達され、外乱と
して残留振動信号に入ってしまう可能性が高いため、応
答信号読み込み手段が残留振動信号を読み込んでいる最
中に、車両走行検出手段が車両が走行していること又は
走行している可能性が高いことを検出した場合には、残
留振動検出手段に外乱が入った又は入った可能性が高
い、と判断することができるのである。
【0041】なお、車両が走行していることは、車速検
出信号の出力信号から判断することができるし、車両が
走行している可能性が高いということは、自動変速機を
備えた車両であれば、その自動変速機のシフト位置がパ
ーキング位置以外で、且つ、フットブレーキ,パーキン
グブレーキがいずれも非作動状態のときに判断すること
ができるし、手動変速機を備えた車両であれば、フット
ブレーキ,パーキングブレーキがいずれも非作動状態の
ときに判断することができる。
【0042】また、請求項に係る発明のように、車両
状態として車体の傾斜状態を検出するようにすれば、応
答信号読み込み手段が残留振動信号を読み込んでいる最
中に残留振動検出手段に外乱が入ったこと又は入った可
能性が高いことを検出することができる。つまり、左右
片側の車輪又は前後一方の車輪が凸部に乗り上げる等し
て車体が左右方向又は前後方向に傾斜すると、車体の各
部に加わる荷重の大きさ等が通常状態(車体が水平にあ
る状態)とは異なることに起因して、制御振動源及び残
留振動検出手段間の振動伝達系が通常状態とは異なって
くるため、残留振動検出手段には、その振動伝達系の変
化に伴う外乱が入ったと考えることができる。そこで、
応答信号読み込み手段が残留振動信号を読み込んでいる
最中に、車体傾斜検出手段が車体の傾斜を検出した場合
には、残留振動検出手段に外乱が入った又は入った可能
性が高い、と判断することができるのである。
【0043】なお、車体の傾斜は、水準器によって検出
することもできるし、或いは、前後加速度センサや横加
速度センサを備える車両であれば、車体が傾斜すると加
速度センサには重力加速度の影響も加わることから、車
速が零であるにも関わらず加速度センサの出力信号があ
る程度の大きさである場合に、車体が傾斜していると判
断することができる。
【0044】さらに、請求項10に係る発明のように、
車両状態としてエンジンフードの開状態を検出するよう
にすれば、応答信号読み込み手段が残留振動信号を読み
込んでいる最中に残留振動検出手段に外乱が入ったこと
又は入った可能性が高いことを検出することができる。
つまり、エンジンフードが開いていると、制御振動源及
び残留振動検出手段間の振動伝達系が、通常の状態(エ
ンジンフードが閉じている状態)とは異なってくるた
め、残留振動検出手段には、その振動伝達系の変化に伴
う外乱が入ったと考えることができる。そこで、応答信
号読み込み手段が残留振動信号を読み込んでいる最中
に、エンジンフード開状態検出手段がエンジンフードが
開いていることを検出した場合には、残留振動検出手段
に外乱が入った又は入った可能性が高い、と判断するこ
とができるのである。
【0045】なお、エンジンフードが開いている状態
は、エンジンフードが閉じている際には押圧され開いて
いる際には押圧されないスイッチを設けることにより検
出することができる。
【0046】そして、請求項11に係る発明のように、
同定信号の出力を停止しているため制御振動源から同定
信号に応じた振動が発生していない場合の残留振動信号
に基づけば、応答信号読み込み手段が残留振動信号を読
み込んでいる最中に残留振動検出手段に外乱が入ったこ
と又は入った可能性が高いことを検出することができ
る。つまり、例えば同定信号供給手段から制御振動源へ
の同定信号の供給が完了した直後は、制御振動源からは
同定振動が発生していないことを除いては、周囲の状況
は同定振動が発生していた場合と略同じと考えることが
できるから、そのときに所定レベル以上の残留振動信号
が検出されたような場合には、そのような所定レベル以
上の残留振動信号の原因となっている振動が、同定振動
が発生していた際(応答信号読み込み手段が残留振動信
号を読み込んでいた際)にも残留振動検出手段に入り込
んでいた可能性が高いと判断できる。そこで、外乱検出
手段が、同定信号の出力を停止していて制御振動源から
同定信号に応じた振動が発せられていない場合の残留振
動信号に基づくことにより、応答信号読み込み手段が残
留振動信号を読み込んでいる最中に残留振動検出手段に
外乱が入ったこと又は入った可能性が高いことを検出す
ることができるのである。
【0047】一方、請求項12に係る発明のように、応
答信号読み込み手段が読み込んだ残留振動信号に基づい
ても、応答信号読み込み手段が残留振動信号を読み込ん
でいる最中に残留振動検出手段に外乱が入ったこと又は
入った可能性が高いことを検出することができる。この
請求項12に係る発明の具体的な構成としては下記のよ
うなものが考えられる。
【0048】先ず、応答信号読み込み手段が読み込んだ
残留振動信号と、制御振動源に供給されていた同定信号
との相関関数を演算し、その相関関数が著しく低下した
場合に、残留振動検出手段に外乱が入った又は入った可
能性が高いと判断することができる。
【0049】また、応答信号読み込み手段が読み込んだ
残留振動信号の波形に、同定信号と矛盾するような符号
反転が現れた場合に、残留振動検出手段に外乱が入った
又は入った可能性が高いと判断することができる。
【0050】そして、応答信号読み込み手段が読み込ん
だ残留振動信号のピークを検知し、そのピークの出現周
期が同定信号の周期と一致しない場合や、そのピーク値
の大きさが急激に大きくなった場合に、残留振動検出手
段に外乱が入った又は入った可能性が高いと判断するこ
とができる。
【0051】さらに、応答信号読み込み手段が読み込ん
だ残留振動信号の波形が中立ラインを横切る点を検知
し、その横切る点の出現周期が同定信号の周期と一致し
ない場合に、残留振動検出手段に外乱が入った又は入っ
た可能性が高いと判断することができる。
【0052】一方、請求項13に係る発明にあっては、
上記請求項3,4,12に係る発明における伝達関数演
算手段をさらに具体的にしたものであり、フーリエ変換
手段が、各正弦波に対応する残留振動信号をフーリエ変
換して、各残留振動信号における各正弦波の周波数に相
当する成分が抽出されるから、その周波数成分は、各正
弦波毎の伝達関数を表すことになる。そして、各周波数
成分を合成したものが、逆フーリエ変換手段によって逆
フーリエ変換されるから、伝達関数としてのインパルス
応答が求められる。
【0053】なお、同定信号の元となる正弦波の振幅
を、実際の振動の発生状態に合致するように例えばその
周波数に応じて異ならせたような場合、応答信号読み込
み手段が読み込んだ残留振動信号のレベルは、各正弦波
の振幅が周波数毎に異なる影響を受けるため、そのまま
伝達関数を求めてしまうと、各正弦波の振幅の相違が、
振動伝達系の特性として伝達関数に取り込まれてしま
う。そこで、フーリエ変換手段及び逆フーリエ変換手段
の他に、フーリエ変換手段が抽出した各周波数成分を各
正弦波の振幅で補正する補正手段を設ければ、その補正
手段が、フーリエ変換手段の結果を各正弦波の振幅で補
正する(例えば、フーリエ変換手段の各結果を、元の正
弦波の振幅で割る)から、各正弦波の振幅の相違が伝達
関数に影響を与えることを回避できる。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る発
明によれば、伝達関数同定手段として同定信号供給手
段,応答信号読み込み手段及び伝達関数演算手段を備え
た能動型振動制御装置に、さらに外乱検出手段及び同定
処理再始動手段を設けたため、外乱が入っている残留振
動信号に基づいて同定された伝達関数が、制御アルゴリ
ズムに含まれてしまうことがなくなるから、伝達関数の
同定精度が向上し、良好な振動低減制御が行えるという
効果が得られる。
【0055】また、請求項2に係る発明によれば、より
確実に伝達関数の同定精度を向上できるという効果があ
る。そして、請求項3に係る発明であれば、伝達関数を
高精度に且つ効率良く演算することができる。
【0056】さらに、請求項4に係る発明によれば、同
定処理を再始動した場合でもそれに要する時間を可能な
範囲で最小限にすることができるという効果がある。
【0057】
【0058】らに、請求項12に係る発明であれ
ば、応答信号読み込み手段が残留振動信号を読み込んで
いる最中に残留振動検出手段に外乱が入ったこと又は入
った可能性が高いことを、より確実に検出することがで
きるから、上記請求項1〜に係る発明の効果をより確
実に発揮できる。
【0059】そして、請求項13に係る発明であれば、
伝達関数演算手段における演算処理が比較的簡単に行え
るから、比較的低能力のコントローラであってもより確
実に実現が可能であるという効果がある。
【0060】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態を図
面に基づいて説明する。図1乃至図8は本発明の第1の
実施の形態を示す図であって、図1は本発明に係る能動
型振動制御装置を適用した車両の概略側面図である。
【0061】先ず、構成を説明すると、エンジン30が
駆動信号に応じた能動的な支持力を発生可能な能動型エ
ンジンマウント1を介して、サスペンションメンバ等か
ら構成される車体35に支持されている。なお、実際に
は、エンジン30及び車体35間には、能動型エンジン
マウント1の他に、エンジン30及び車体35間の相対
変位に応じた受動的な支持力を発生する複数のエンジン
マウントも介在している。受動的なエンジンマウントと
しては、例えばゴム状の弾性体で荷重を支持する通常の
エンジンマウントや、ゴム状の弾性体内部に減衰力発生
可能に流体を封入してなる公知の流体封入式のマウント
インシュレータ等が適用できる。一方、能動型エンジン
マウント1は、例えば、図2に示すように構成されてい
る。即ち、この実施の形態における能動型エンジンマウ
ント1は、エンジン30への取付け用のボルト2aを上
部に一体に備え且つ内部が空洞で下部が開口したキャッ
プ2を有し、このキャップ2の下部外面には、軸が上下
方向を向く内筒3の上端部がかしめ止めされている。
【0062】内筒3は、下端側の方が縮径した形状とな
っていて、その下端部が内側に水平に折り曲げられて、
ここに円形の開口部3aが形成されている。そして、内
筒3の内側には、キャップ2及び内筒3内部の空間を上
下に二分するように、キャップ2及び内筒3のかしめ止
め部分に一緒に挟み込まれてダイアフラム4が配設され
ている。ダイアフラム4の上側の空間は、キャップ2の
側面に孔を開けることにより大気圧に通じている。
【0063】さらに、内筒3の内側にはオリフィス構成
体5が配設されている。なお、本実施の形態では、内筒
3内面及びオリフィス構成5間には、薄膜状の弾性体
(ダイアフラム4の外周部を延長させたものでもよい)
が介在していて、これにより、オリフィス構成体5は内
筒3内側に強固に嵌め込まれている。
【0064】このオリフィス構成体5は、内筒3の内部
空間に整合して略円柱形に形成されていて、その上面に
は円形の凹部5aが形成されている。そして、その凹部
5aと、底面の開口部3aに対向する部分との間が、オ
リフィス5bを介して連通するようになっている。オリ
フィス5bは、例えば、オリフィス構成体5の外周面に
沿って螺旋状に延びる溝と、その溝の一端部を凹部5a
に連通させる流路と、その溝の他端部を開口部3aに連
通させる流路とで構成される。
【0065】一方、内筒3の外周面には、内周面側が若
干上方に盛り上がった肉厚円筒状の支持弾性体6の内周
面が加硫接着されていて、その支持弾性体6の外周面
は、上端側が拡径した外筒7の内周面上部に加硫接着さ
れている。
【0066】そして、外筒7の下端部は上面が開口した
円筒形のアクチュエータケース8の上端部にかしめ止め
されていて、そのアクチュエータケース8の下端面から
は、車体35側への取付け用の取付けボルト9が突出し
ている。取付けボルト9は、その頭部9aが、アクチュ
エータケース8の内底面に張り付いた状態で配設された
平板部材8aの中央の空洞部8bに収容されている。
【0067】さらに、アクチュエータケース8の内側に
は、円筒形の鉄製のヨーク10Aと、このヨーク10A
の中央部に軸を上下に向けて巻き付けられた励磁コイル
10Bと、ヨーク10Aの励磁コイル10Bに包囲され
た部分の上面に極を上下に向けて固定された永久磁石1
0Cと、から構成される電磁アクチュエータ10が配設
されている。
【0068】また、アクチュエータケース8の上端部は
フランジ状に形成されたフランジ部8Aとなっていて、
そのフランジ部8Aに外筒7の下端部がかしめられて両
者が一体となっているのであるが、そのかしめ止め部分
には、円形の金属製の板ばね11の周縁部(端部)が挟
み込まれていて、その板ばね11の中央部の電磁アクチ
ュエータ10側には、リベット11aによって磁化可能
な磁路部材12が固定されている。なお、磁路部材12
はヨーク10Aよりも若干小径の鉄製の円板であって、
その底面が電磁アクチュエータ10に近接するような厚
みに形成されている。
【0069】さらに、上記かしめ止め部分には、フラン
ジ部8Aと板ばね11とに挟まれるように、リング状の
薄膜弾性体13と、力伝達部材14のフランジ部14a
とが支持されている。具体的には、アクチュエータケー
ス8のフランジ部8A上に、薄膜弾性体13と、力伝達
部材14のフランジ部14aと、板ばね11とをこの順
序で重ね合わせるとともに、その重なり合った全体を外
筒7の下端部をかしめて一体としている。
【0070】力伝達部材14は、磁路部材12を包囲す
る短い円筒形の部材であって、その上端部がフランジ部
14aとなっており、その下端部は電磁アクチュエータ
10のヨーク10Aの上面に結合している。具体的に
は、ヨーク10Aの上端面周縁部に形成された円形の溝
に、力伝達部材14の下端部が嵌合して両者が結合され
ている。また、力伝達部材14の弾性変形時のばね定数
は、薄膜弾性体13のばね定数よりも大きい値に設定さ
れている。
【0071】ここで、本実施の形態では、支持弾性体6
の下面及び板ばね11の上面によって画成された部分に
流体室15が形成され、ダイアフラム4及び凹部5aに
よって画成された部分に副流体室16が形成されてい
て、これら流体室15及び副流体室16間が、オリフィ
ス構成体5に形成されたオリフィス5bを介して連通し
ている。なお、これら流体室15,副流体室16及びオ
リフィス5b内には、油等の流体が封入されている。
【0072】かかるオリフィス5bの流路形状等で決ま
る流体マウントとしての特性は、走行中のエンジンシェ
イク発生時、つまり5〜15Hzで能動型エンジンマウン
ト1が加振された場合に高動ばね定数、高減衰力を示す
ように調整されている。
【0073】そして、電磁アクチュエータ10の励磁コ
イル10Bは、コントローラ25からハーネス23aを
通じて供給される電流である駆動信号yに応じて所定の
電磁力を発生するようになっている。コントローラ25
は、マイクロコンピュータ,必要なインタフェース回
路,A/D変換器,D/A変換器,アンプ、ROM,R
AM等の記憶媒体等を含んで構成され、エンジンシェイ
クよりも高周波の振動であるアイドル振動やこもり音振
動・加速時振動が車体35に入力されている場合には、
その振動を低減できる能動的な支持力が能動型エンジン
マウント1に発生するように、能動型エンジンマウント
1に対する駆動信号yを生成し出力するようになってい
る。
【0074】ここで、アイドル振動やこもり音振動は、
例えばレシプロ4気筒エンジンの場合、エンジン回転2
次成分のエンジン振動が車体35に伝達されることが主
な原因であるから、そのエンジン回転2次成分に同期し
て駆動信号yを生成し出力すれば、車体側振動の低減が
可能となる。そこで、本実施の形態では、エンジン30
のクランク軸の回転に同期した(例えば、レシプロ4気
筒エンジンの場合には、クランク軸が180度回転する
度に一つの)インパルス信号を生成し基準信号xとして
出力するパルス信号生成器26を設けていて、その基準
信号xが、エンジン30における振動の発生状態を表す
信号としてコントローラ25に供給されるようになって
いる。
【0075】一方、電磁アクチュエータ10のヨーク1
0Aの下端面と、アクチュエータケース8の底面を形成
する平板部材8aの上面との間に挟み込まれるように、
エンジン30から支持弾性体6を通じて伝達する加振力
を検出する荷重センサ22が配設されていて、荷重セン
サ22の検出結果がハーネス23bを通じて残留振動信
号eとしてコントローラ25に供給されるようになって
いる。荷重センサ22としては、具体的には、圧電素
子,磁歪素子,歪ゲージ等が適用可能である。
【0076】そして、コントローラ25は、供給される
残留振動信号e及び基準信号xに基づき、逐次更新型の
適応アルゴリズムの一つである同期式Filtered
−XLMSアルゴリズムを実行することにより、能動型
エンジンマウント1に対する駆動信号yを演算し、その
駆動信号yを能動型エンジンマウント1に出力するよう
になっている。
【0077】具体的には、コントローラ25は、フィル
タ係数Wi (i=0,1,2,…,I−1:Iはタップ
数)可変の適応ディジタルフィルタWを有していて、最
新の基準信号xが入力された時点から所定のサンプリン
グ・クロックの間隔で、その適応ディジタルフィルタW
のフィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力する
一方、基準信号x及び残留振動信号eに基づいて適応デ
ィジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を適宜更新する
処理を実行するようになっている。
【0078】適応ディジタルフィルタWの更新式は、F
iltered−X LMSアルゴリズムに従った下記
の(1)式のようになる。 Wi (n+1)=Wi (n)−μRT e(n) ……(1) ここで、(n),(n+1)が付く項はサンプリング時
刻n,n+1における値であることを表し、μは収束係
数である。また、更新用基準信号RT は、理論的には、
基準信号xを、能動型エンジンマウント1の電磁アクチ
ュエータ10及び荷重センサ22間の伝達関数Cを有限
インパルス応答型フィルタでモデル化した伝達関数フィ
ルタC^でフィルタ処理した値であるが、基準信号xの
大きさは“1”であるから、伝達関数フィルタC^のイ
ンパルス応答を基準信号xに同期して次々と生成した場
合のそれらインパルス応答波形のサンプリング時刻nに
おける和に一致する。
【0079】また、理論的には、基準信号xを適応ディ
ジタルフィルタWでフィルタ処理して駆動信号yを生成
するのであるが、基準信号xの大きさが“1”であるた
め、フィルタ係数Wi を順番に駆動信号yとして出力し
ても、フィルタ処理の結果を駆動信号yとしたのと同じ
結果になる。
【0080】さらに、コントローラ25は、上記のよう
な適応ディジタルフィルタWを用いた振動低減処理を実
行する一方で、その振動低減制御に必要な伝達関数Cを
同定する処理をも実行するようになっている。
【0081】即ち、コントローラ25には、伝達関数C
の同定処理を開始するタイミングで操作される同定処理
開始スイッチ28が設けられていて、例えば製造ライン
における最終工程において、或いはディーラーにおける
定期点検時において、作業者がその同定処理開始スイッ
チ28を操作すると、コントローラ25内で伝達関数C
の同定処理が実行される。なお、伝達関数Cの同定処理
実行中には、通常の振動低減処理は実行されない。
【0082】つまり、コントローラ25は、車両のイグ
ニッションがオンになっている通常の走行状態等には、
同期式Filtered−X LMSアルゴリズムに従
った振動低減処理を実行するが、同定処理開始スイッチ
28が操作されると、振動低減処理を停止して、伝達関
数Cの同定処理を実行するようになっている。
【0083】そして、伝達関数Cの同定処理を実行する
ために、コントローラ25の不揮発性メモリ内には、一
周期分の正弦波を等間隔で所定個数(例えば、8個や1
6個等)に離散化してなる数列が記憶されていて、コン
トローラ25は、その記憶された上記数列の各数値を、
出力サンプリング・クロックSCo に同期して(つま
り、出力サンプリング・クロックSCo の周期To の間
隔で)一つずつ順番に同定信号として能動型エンジンマ
ウント1の電磁アクチュエータ10に供給して同定振動
を発生させ、その同定振動を荷重センサ22によって残
留振動信号eとして検出するようになっている。さら
に、コントローラ25は、同定振動の検出結果であるア
ナログ信号としての残留振動信号eを、入力サンプリン
グ・クロックSCi に同期して(つまり、入力サンプリ
ング・クロックSCi の周期Ti の間隔)ディジタル値
に変換して取り込むようになっており、その入力サンプ
リング・クロックSCi に同期して取り込まれた残留振
動信号eをフーリエ変換(高速フーリエ変換;FFT)
して、出力サンプリング・クロックSCo に同期して出
力された同定信号の周波数に相当する成分を抽出するよ
うになっている。
【0084】コントローラ25は、上記のような周波数
成分を抽出する処理を、出力サンプリング・クロックS
o の周期To を切り換え(例えば、周期To を徐々に
短くし)て同定信号の周波数を徐々に変化させることに
より、周波数の異なる複数の同定信号について行うよう
になっていて、そして、各周波数毎の成分を合成し、そ
の合成した結果を逆フーリエ変換して伝達関数Cに相当
するインパルス応答を求めるようになっている。求めら
れたインパルス応答は、有限インパルス応答型の伝達関
数フィルタC^としてそれまでの伝達関数フィルタC^
と置き換えられるようになっている。
【0085】さらに、本実施の形態のコントローラ25
は、上記のような伝達関数Cの同定処理の実行中に、そ
の同定処理に必要な残留振動信号eを読み込んでいる最
中の荷重センサ22に外乱が入っていた可能性が高いか
否かを判断する外乱検出処理と、この外乱検出処理によ
って上記外乱が入っていた可能性が高いという判断がな
された場合に、伝達関数Cの同定処理における同定信号
の周波数の変更を一旦停止して、同じ周波数の同定信号
を用いて同定処理を再実行する再始動処理と、を実行す
るようになっている。
【0086】本実施の形態おける外乱検出処理は、後
に詳細に説明するが、ドアの開閉状態の変化と、エンジ
ン回転数と、車速と、自動変速機のシフト位置と、フッ
トブレーキ及びパーキングブレーキの状態と、エンジン
フードの開閉状態と、に基づいて、荷重センサ22に外
乱が入っていた可能性が高いか否かを判断するようにな
っている。
【0087】そこで、コントローラ25には、図1に示
すように、ドアの開閉状態に応じたドア開閉状態検出信
号D0 を出力するドア開閉スイッチ40Aと、エンジン
回転数を検出してエンジン回転数検出信号N0 を出力す
るエンジン回転ステップセンサ40Bと、車速を検出し
て車速検出信号V0 を出力する車速センサ40Cと、自
動変速機のシフト位置を検出してシフト位置検出信号S
0 を出力するシフト位置センサ40Dと、フットブレー
キ及びパーキングブレーキのいずれのブレーキも作動し
ていないノーブレーキ状態を検出してブレーキ検出信号
0 を出力するブレーキスイッチ40Eと、エンジンフ
ードの開閉状態に応じたエンジンフード開閉状態検出信
号H0 を出力するエンジンフードスイッチ40Fと、の
それぞれから各検出信号D0 〜H0 が供給されるように
なっている。
【0088】また、再始動処理は、伝達関数Cの同定処
理において、出力サンプリング・クロックSCo の周期
o を徐々に切り換えていく処理をスキップすることに
より実現されている。
【0089】次に、本実施の形態の動作を説明する。即
ち、エンジンシェイク発生時には、オリフィス5aの流
路形状等を適宜選定している結果、この能動型エンジン
マウント1は高動ばね定数,高減衰力の支持装置として
機能するため、エンジン30側で発生したエンジンシェ
イクが能動型エンジンマウント1によって減衰され、車
体35側の振動レベルが低減される。なお、エンジンシ
ェイクに対しては、特に可動板12を積極的に変位させ
る必要はない。
【0090】一方、オリフィス5a内の流体がスティッ
ク状態となり流体室15及び副流体室16間での流体の
移動が不可能になるアイドル振動周波数以上の周波数の
振動が入力された場合には、コントローラ25は、所定
の演算処理を実行し、電磁アクチュエータ10に駆動信
号yを出力し、能動型エンジンマウント1に振動を低減
し得る能動的な支持力を発生させる。
【0091】これを、アイドル振動,こもり音振動入力
時にコントローラ25内で実行される処理の概要を示す
フローチャートである図3に従って具体的に説明する。
先ず、そのステップ101において所定の初期設定が行
われた後に、ステップ102に移行し、伝達関数フィル
タC^に基づいて更新用基準信号RT が演算される。な
お、このステップ102では、一周期分の更新用基準信
号RT がまとめて演算される。
【0092】そして、ステップ103に移行しカウンタ
iが零クリアされた後に、ステップ104に移行して、
適応ディジタルフィルタWのi番目のフィルタ係数Wi
が駆動信号yとして出力される。
【0093】ステップ104で駆動信号yを出力した
ら、ステップ105に移行し、残留振動信号eが読み込
まれる。そして、ステップ106に移行して、カウンタ
jが零クリアされ、次いでステップ107に移行し、適
応ディジタルフィルタWのj番目のフィルタ係数Wj
上記(1)式に従って更新される。
【0094】ステップ107における更新処理が完了し
たら、ステップ108に移行し、次の基準信号xが入力
されているか否かを判定し、ここで基準信号xが入力さ
れていないと判定された場合は、適応ディジタルフィル
タWの次のフィルタ係数の更新又は駆動信号yの出力処
理を実行すべく、ステップ109に移行する。
【0095】ステップ109では、カウンタjが、出力
回数Ty (正確には、カウンタjは0からスタートする
ため、出力回数Ty から1を減じた値)に達しているか
否かを判定する。この判定は、ステップ104で適応デ
ィジタルフィルタWのフィルタ係数Wi を駆動信号yと
して出力した後に、適応ディジタルフィルタWのフィル
タ係数Wi を、駆動信号yとして必要な数だけ更新した
か否かを判断するためのものである。そこで、このステ
ップ109の判定が「NO」の場合には、ステップ11
0でカウンタjをインクリメントした後に、ステップ1
07に戻って上述した処理を繰り返し実行する。
【0096】しかし、ステップ109の判定が「YE
S」の場合には、適応ディジタルフィルタWのフィルタ
係数のうち、駆動信号yとして必要な数のフィルタ係数
の更新処理が完了したと判断できるから、ステップ11
1に移行し、カウンタiをインクリメントした後に、上
記ステップ104の処理を実行してから所定のサンプリ
ング・クロックの間隔に対応する時間が経過するまで待
機し、サンプリング・クロックに対応する時間が経過し
たら、上記ステップ104に戻って上述した処理を繰り
返し実行する。
【0097】一方、ステップ108で基準信号xが入力
されたと判断された場合には、ステップ112に移行
し、カウンタi(正確には、カウンタiが0からスター
トするため、カウンタiに1を加えた値)を最新の出力
回数Ty として保存した後に、ステップ102に戻っ
て、上述した処理を繰り返し実行する。
【0098】このような図3の処理を繰り返し実行する
結果、コントローラ25から能動型エンジンマウント1
の電磁アクチュエータ10に対しては、基準信号xが入
力された時点から、サンプリング・クロックの間隔で、
適応ディジタルフィルタWのフィルタ係数Wi が順番に
駆動信号yとして供給される。
【0099】この結果、励磁コイル10Bに駆動信号y
に応じた磁力が発生するが、磁路部材12には、既に永
久磁石10Cによる一定の磁力が付与されているから、
その励磁コイル10Bによる磁力は永久磁石10Cの磁
力を強める又は弱めるように作用すると考えることがで
きる。つまり、励磁コイル10Bに駆動信号yが供給さ
れていない状態では、磁路部材12は、板ばね11によ
る支持力と、永久磁石10Cの磁力との釣り合った中立
の位置に変位することになる。そして、この中立の状態
で励磁コイル10Bに駆動信号yが供給されると、その
駆動信号yによって励磁コイル10Bに発生する磁力が
永久磁石10Cの磁力と逆方向であれば、磁路部材12
は電磁アクチュエータ10とのクリアランスが増大する
方向に変位する。逆に、励磁コイル10Bに発生する磁
力が永久磁石10Cの磁力と同じ方向であれば、磁路部
材12は電磁アクチュエータ10とのクリアランスが減
少する方向に変位する。
【0100】このように磁路部材12は正逆両方向に変
位可能であり、磁路部材12が変位すれば主流体室15
の容積が変化し、その容積変化によって支持弾性体6の
拡張ばねが変形するから、この能動型エンジンマウント
1に正逆両方向の能動的な支持力が発生するのである。
【0101】そして、駆動信号yとなる適応ディジタル
フィルタWの各フィルタ係数Wi は、同期式Filte
red−X LMSアルゴリズムに従った上記(1)式
によって逐次更新されるため、ある程度の時間が経過し
て適応ディジタルフィルタWの各フィルタ係数Wi が最
適値に収束した後は、駆動信号yが能動型エンジンマウ
ント1に供給されることによって、エンジン30から能
動型エンジンマウント1を介して車体35側に伝達され
るアイドル振動やこもり音振動が低減されるようになる
のである。
【0102】以上は車両走行時等に実行される振動低減
処理の動作である。その一方、例えば車両が出荷される
前の製造ラインの最終工程において、作業者が同定処理
開始スイッチ28を操作すると、図4に示すような伝達
関数Cの同定処理が実行される。
【0103】即ち、伝達関数Cの同定処理が開始される
と、先ずそのステップ201において、出力サンプリン
グ・クロックSCo の周期To をその最大値Tomaxに設
定する。なお、最大値Tomaxは、振動低減制御の対象と
なる振動のうち最も周波数の低い振動の周期を、同定信
号として出力される上記数列の個数(正弦波の分割数)
Dで割ったものである。例えば、問題となる振動の最低
周波数が5Hzであり、上記数列の分割数Dが8であれ
ば、最大値Tomax=(1/5)/8秒となる。
【0104】次いで、ステップ202に移行し、カウン
タ変数jを1にセットしてから、ステップ203に移行
する。ステップ203では、上記数列のj番目の数値
(つまり、数列の最初の数値)を、同定信号として能動
型エンジンマウント1の電磁アクチュエータ10に出力
し、次いでステップ204に移行し、残留振動信号eを
読み込む。残留振動信号eは、現時点の出力サンプリン
グ・クロックSCo の周期To 毎の時系列データとして
記憶する。
【0105】そして、ステップ205に移行し、出力サ
ンプリング・クロックSCo の周期To を計測するため
の出力用タイマと、入力サンプリング・クロックSCi
の周期Ti を計測するための入力用タイマとを、リセッ
ト・スタートする。なお、出力用タイマ及び入力用タイ
マは、コントローラ25のクロックパルスを利用してソ
フト的に実現したものであってもよいし、コントローラ
25にハード的に内蔵してもよい。
【0106】次いで、ステップ206に移行し、出力用
タイマの計測時間が周期To に達しているか否かを判定
する。このステップ206の判定が「NO」の場合に
は、ステップ207〜209の処理は実行せずに、ステ
ップ210に移行する。ステップ210では、入力用タ
イマの計測時間が周期Ti に達しているか否かを判定す
る。このステップ210の判定が「NO」の場合には、
ステップ211,212の処理は実行せずに、ステップ
213に移行する。
【0107】そして、ステップ213では、カウンタ変
数jが、正弦波の分割数Dに達しているか否かを判定す
る。ステップ213の判定が「YES」の場合には、ス
テップ214に移行してカウンタ変数jを“1”に戻し
てからステップ215に移行するが、ステップ213の
判定が「NO」の場合にはそのままステップ215に移
行する。ステップ215では、現時点の周期To になっ
てから十分な個数の残留振動信号eを読み込んだか否か
を判定する。なお、残留振動信号eの十分な個数として
設定される値は、伝達関数Cがインパルス応答として求
められることから、そのインパルス応答が充分に減衰す
るのに必要な時間を周期Ti で割った場合の数以上であ
ればよい。ただし、時系列として取り込んだ残留振動信
号eに対して後にFFT演算を行うことから、その残留
振動信号eの取り込み個数は、2の巾乗とすることが望
ましいこと、及び、残留振動信号eを極めて大量に読み
込んでしまうと、その読み込み時間が長くなるし、FF
T演算に要する時間も長くなるという不具合もあるた
め、残留振動信号eの十分な個数として設定される値
は、インパルス応答が充分に減衰するのに必要な時間を
周期Ti で割った場合の数を越える2の巾乗の数値のう
ちの、最小値とすることが望ましい。例えば、周期Ti
が2msecであって、インパルス応答が充分に減衰する時
間が0.2sec であれば、0.2sec /2msec=100
となるから、ステップ215に設定する値は128とな
る。
【0108】そして、ステップ215の判定が「NO」
の場合には、ステップ206に戻って上述した処理を繰
り返し実行する。すると、コントローラ25から電磁ア
クチュエータ10に対しては、上記数列の各数値が、出
力サンプリング・クロックSCo に同期して、順番に一
つずつ同定信号として供給されるから、能動型エンジン
マウント1には、周期To に応じて決まる周波数の正弦
波状の同定振動が発生するようになる。また、これと同
時に、コントローラ25は、荷重センサ22から供給さ
れる残留振動信号eを、入力サンプリング・クロックS
i に同期して読み込むようになり、その読み込んだ残
留振動信号eが時系列データとして記憶される。
【0109】そして、ステップ215の判定が「YE
S」となると、ステップ300に移行し、外乱検出処理
が実行される。この外乱検出処理の具体的内容は後述す
るが、外乱検出処理において荷重センサ22に外乱が入
っていた可能性が高いと判断された場合にはフラグFが
“1”にセットされるようになっており、ステップ30
0からステップ350に移行し、フラグFの状態が判定
され、F=0の場合にはステップ216に移行するが、
F=1の場合にはステップ216に移行せずにステップ
202に戻るようになっている。
【0110】ステップ216では、周期To から所定の
単位時間αT を減じた値を、出力サンプリング・クロッ
クSCo の新たな周期To として記憶するようになって
いるため、このステップ216の処理が実行されれば、
同定信号の周波数が前回の処理に比べて単位時間αT
だけ高くなるが、このステップ216の処理が実行され
なければ、同定信号の周波数は前回とは変わらないか
ら、ステップ202に戻ることにより、同じ周波数の同
定信号によって同定処理が再実行されることになる。な
お、単位時間αT が小さいほど、同定処理に要する時間
は長くなるから、その単位時間αT は、コントローラ2
5の演算能力等を考慮して設定することが望ましい。例
えば単位時間αT =0.2msecとする。
【0111】ステップ350の判定が「NO」であって
ステップ216に移行した場合は、次いでステップ21
7に移行して、ステップ216で新たに設定された出力
サンプリング・クロックSCo の周期To が、最小値T
ominを下回っているか否かを判定する。
【0112】最小値Tominは、振動低減制御の対象とな
る振動のうち最も周波数の高い振動の周期を、同定信号
として出力される上記数列の個数(正弦波の分割数)D
で割ったものである。例えば、問題となる振動の最高周
波数が200Hzであり、上記数列の分割数Dが8であれ
ば、最小値Tomin=(1/200)/8秒となる。
【0113】そして、ステップ217の判定が「NO」
の場合には、上記ステップ202に戻って上述した処理
を再び実行する。このため、ステップ202〜216の
一連の処理は、ステップ217の判定が「YES」とな
るまで実行される。つまり、ステップ202〜215の
処理は、最大値Tomax〜最小値Tominの間で単位時間α
T ずつ変化する周期To 毎に実行されるようになってい
るから、ステップ217の処理が「YES」となった時
点では、ステップ210,211の処理によって時系列
データとして記憶される残留振動信号eは、周期To
種類と同じ数だけ記憶されていることになる。
【0114】そこで、ステップ217の判定が「YE
S」となったら、ステップ218に移行し、周期To
に記憶されている残留振動信号eの時系列データのそれ
ぞれについてFFT演算を行って、各時系列データの周
波数成分を抽出する。ただし、ここで必要なのは、各時
系列データ毎の全周波数の成分ではなく、対応する周期
o によって決まる元の正弦波の周波数に相当する成分
だけであるから、ステップ218では、各時系列に対し
て厳密なFFT演算を行うのではなく、各時系列に対応
する周期To によって決まる周波数の成分を求めるのに
足りる演算だけを行えばよい。
【0115】そして、各時系列データ毎の必要な周波数
成分が求められたら、ステップ219に移行し、それら
各周波数成分を合成したものを逆FFT演算し、時間軸
上のインパルス応答に変換し、次いでステップ220に
移行し、ステップ219で求めたインパルス応答を新た
な伝達関数フィルタC^として記憶する。伝達関数フィ
ルタC^の記憶が完了したら、今回の伝達関数Cの同定
処理を終了する。
【0116】図5は、上述した伝達関数Cの同定処理の
全体的な流れを各波形とともに示した図であって、図5
(a)に示すような離散値からなる同定信号が電磁アク
チュエータ10に供給され、電磁アクチュエータ10に
は図5(b)に示すような正弦波状に変化する同定振動
が発生する。この場合、同定信号の各離散値の出力間隔
である周期To は、その同定信号の元となっている正弦
波の周波数が上昇するに従って徐々に短くなるから、図
5(a)の右側の波形のように正弦波の周波数が高くな
っても、同定信号の階段状の変化が大雑把になり過ぎる
ことが防止でき、図5(b)に示すように、元の正弦波
に極めて近い滑らかな同定振動を発生させることができ
る。
【0117】つまり、周期Ti 及びTo を固定にしてし
まうと、図6(a)に示すように同定信号の元となって
いる正弦波の周波数が上昇するに従って、離散化された
同定信号の間隔が粗くなってしまい、滑らかな同定振動
を発生させることができなくなるが、図4に示すような
処理を実行する結果、元の正弦波の周波数が上昇するに
従って周期To が短くなるから、そのような不具合を回
避できるのである。
【0118】しかも、同定信号の元となる正弦波を、そ
の都度演算により求めるのではないし、図7に示すよう
に、一周期分の正弦波を離散化してなる数列をメモリ内
に記憶しておき、その数列を出力サンプリング・クロッ
クSCo の周期To の間隔で順番に且つ繰り返し出力す
るものであるから、演算負荷やメモリ容量の増大を招く
こともない。
【0119】同定振動が発生したら、その応答が図5
(c)に示すように残留振動信号に現れ、荷重センサ2
2から供給された残留振動信号が図5(d)に示すよう
に入力サンプリング・クロックSCi の周期Ti の間隔
でディジタル値に変換されてコントローラ25に読み込
まれるが、周期Ti は同定信号の周波数に関係なく一定
である。
【0120】つまり、図4に示すように周期Ti と周期
o とを積極的に個別に設定するのではなく、周期Ti
を周期To とともに可変にしてしまうと、同定信号の周
波数が高くなるに従って、時系列データとして記憶され
る残留振動信号のデータ数が増大してしまい、必要なメ
モリ容量が大幅に増加してしまうが、本実施の形態にあ
っては、図4の処理を実行する結果、図6(b)に示す
ように、周期To は周波数の上昇に応じて短くなり、且
つ、周期Ti は周波数が変化しても一定であるから、そ
のような不具合を招かないで済むのである。
【0121】そして、残留振動信号が図5(d)に示す
ように各周波数毎に時系列データとして読み込まれる
と、各時系列データに対してFFT演算が行われて、元
の正弦波の周波数の成分が抽出される。各周波数成分を
合成すると、図5(e)のようになり、その合成した結
果に対して逆FFT演算が行われて、図5()のよう
なインパルス応答が求められる。
【0122】図5(e),()に示すような結果は、
本実施の形態のように正弦波からなる同定信号を発生し
なくても、例えばホワイトノイズ信号による同定信号を
発生させた場合でも得ることはできるが、ホワイトノイ
ズ信号を電磁アクチュエータ10に供給して同定振動を
発生させた場合には、同定振動の出力は図8に破線で示
すように広い周波数帯域に分散して、各周波数成分は極
小さくなってしまう。このため、図5(e),()に
示すような結果を高精度に得るためには、ホワイトノイ
ズ信号と、そのホワイトノイズ信号により発生した同定
振動とに基づいた適応演算を、比較的長時間に渡って行
わなければならない。
【0123】これに対し、正弦波に基づいて生成した同
定信号を用いる本実施の形態にあっては、同定振動の出
力は、図8に実線で示すように特定の周波数に集中する
ようになるから、個々の周波数毎の演算時間が短くなる
ばかりか、全体の演算時間もホワイトノイズ信号により
同定を行う場合に比べて短縮されるのである。
【0124】この結果、車両に搭載される比較的能力の
低く且つメモリ容量にも余裕のないコントローラ25で
あっても、比較的短い時間で伝達関数Cの同定を行うこ
とができるのである。このため、例えば製造ラインの最
終工程において同定処理開始スイッチ28を操作して伝
達関数Cの同定処理を行うようにしても、ライン速度に
大きな影響を与えないで済むし、或いは、ディーラーで
の定期点検時に同定処理開始スイッチ28を操作して伝
達関数Cの同定処理を行うようにしても、作業時間が大
幅に増大してしまうようなことを回避できるのである。
【0125】そして、各車両毎に伝達関数Cを同定でき
れば、実験室で求めた伝達関数Cを全車両に適用する場
合に比べて、高精度の伝達関数フィルタC^が振動低減
制御に用いられることになるし、定期点検毎に伝達関数
Cを同定すれば各部品の経時変化等による振動伝達系の
変化にも対応できるから、良好な振動低減制御が実行で
きるのである。
【0126】ここで、この第1の実施の形態における伝
達関数Cの同定処理について、具体的な検討を行ってみ
る。即ち、出力サンプリング・クロックSCo の周期T
o の最大値Tomax、最小値Tomin並びに単位時間α
T を、 Tomax=(1/5)/8 =25msec Tomin=(1/200)/8 =0.625msec αT =0.2msec とすれば、正弦波の周波数は122種類必要になり、入
力サンプリング・クロックSCi の周期Ti を2msecと
すれば、残留振動信号eの取り込みに必要な時間は、 2msec×128点×122種類=31sec になる。また、周期To が最大値Tomaxから最小値T
ominに変化する間の区切りである単位時間αT を一定に
すると、周波数の区切りは一定にならないので、後に行
われる逆フーリエ変換が面倒になる。
【0127】フーリエ変換の理論から、フーリエ変換後
の周波数刻みΔfは、 Δf=1/(データ継続時間)=1/(2msec×128点) =3.9Hz となるので、周波数刻みを、これに併せて3.9Hz刻み
とすることが望ましいことになる。
【0128】そこで、出力サンプリング・クロックSC
o の最低周波数fmin 及び最高周波数fmax を、 fmin =3.9Hz×2 =7.8Hz fmax =3.9Hz×52=203Hz とすれば、 Tomax=16msec Tomin=0.616msec となり、残留振動信号eの取り込みに必要な時間は、2
msec×128点×51種類=13.3secとなり、単位
時間αT を一定にした場合に比べて、大幅な時間短縮を
図ることができる。
【0129】ただし、単位時間αT が一定にならないた
め、上述のようにステップ216の処理で一定の単位時
間αT を減じていくのではなく、周期To の値を周波数
に対するテーブルとして記憶しておき、それを読み出し
て使用するような処理にすることになる。
【0130】次に、図4の処理のステップ300におい
て実行される外乱検出処理の具体的な内容について説明
する。即ち、伝達関数Cの同定処理実行中にステップ3
00に移行すると、図9に示す外乱検出処理が実行さ
れ、先ずそのステップ301において、ドア開閉状態検
出信号D0 ,エンジン回転数検出信号N0 ,車速検出信
号V0 ,シフト位置検出信号S0 ,ブレーキ検出信号B
0 及びエンジンフード開閉状態検出信号H0 のそれぞれ
が読み込まれる。
【0131】次いで、ステップ302に移行し、ドア開
閉状態検出信号D0 に基づき、前回のこの外乱検出処理
を実行してから現在の間までに、ドアの開閉状態が変化
したか否かを判断する。具体的には、ドア開閉状態検出
信号D0 は、例えばドアが開いている場合には“1”
に、閉じている場合には“0”にセットされる信号であ
るから、この外乱検出処理を前回実行した際のドア開閉
状態検出信号D0 を記憶しておき、ドア開閉状態検出信
号D0 の前回の値と、ドア開閉状態検出信号D0の現在
の値とを比較できるようにする。そして、前回の値と今
回の値とが一致する場合には、ドアの開閉状態が変化し
ていないと判断するが、一致しない場合には、前回の外
乱検出処理を実行してから現時点までの間に、いずれか
のドアが開けられた又は閉じられたと判断することがで
き、ドアが開閉されれば、その際に発生した振動が車体
を通じて荷重センサ22に到達し、図4のステップ20
4,211で読み込んだ残留振動信号eに重畳されてい
る可能性が高いと判断することができる。そこで、ステ
ップ302からステップ307に移行し、フラグFを
“1”にセットしてから今回の外乱検出処理を終了し図
4の処理に復帰する。
【0132】ステップ302の判定が「NO」の場合に
は、ステップ303に移行し、エンジン回転数検出信号
0 に基づきエンジン30が駆動状態であるか否かを判
断する。つまり、エンジン30が駆動状態であればエン
ジン回転数検出信号N0 が零以外の値になっているか
ら、そのエンジン回転数検出信号N0 が零でない場合に
は、エンジン30が駆動状態であると判断でき、エンジ
ン30が駆動状態であれば、そのエンジン30で発生し
た振動が、図4のステップ204,211で読み込んだ
残留振動信号eに重畳されている可能性が高いと判断す
ることができる。そこで、ステップ303からステップ
307に移行し、フラグFを“1”にセットしてから今
回の外乱検出処理を終了し、図4の処理に復帰する。
【0133】ステップ303の判定が「NO」の場合に
は、ステップ304に移行し、車速検出信号Vに基づき
車両が走行中であるか否かを判断する。つまり、車両が
走行中であれば、路面上の凹凸を通過する等して車輪に
入力された振動が、サスペンション部材や車体を通じて
荷重センサ22にに到達し、図4のステップ204,2
11で読み込んだ残留振動信号eに重畳されている可能
性が高いと判断することができる。そこで、ステップ3
04からステップ307に移行し、フラグFを“1”に
セットしてから今回の外乱検出処理を終了し図4の処理
に復帰する。
【0134】ステップ304の判定が「NO」の場合に
は、ステップ305に移行し、シフト位置検出信号S0
及びブレーキ検出信号B0 に基づきノーブレーキ状態で
あるか否かを判断する。即ち、エンジン30が駆動状態
ではなく、しかもステップ304の判定によっては車両
が走行中であると判断されなかった場合であっても、自
動変速機のシフト位置がパーキング位置になく且つフッ
トブレーキ及びパーキングブレーキのいずれもが非作動
状態、というノーブレーキ状態である車両が坂道を下る
ことにより実質的に走行中になっている可能性があり、
車両が極低速でも移動中であれば、路面上の凹凸を通過
する等して車輪に入力された振動が、サスペンション部
材や車体を通じて荷重センサ22に到達し、図4のステ
ップ204,211で読み込んだ残留振動信号eに重畳
されている可能性が高い。そこで、ステップ305から
ステップ307に移行し、フラグFを“1”にセットし
てから今回の外乱検出処理を終了し図4の処理に復帰す
る。
【0135】ステップ305の判定が「NO」の場合に
は、ステップ306に移行し、エンジンフード開閉状態
検出信号H0 に基づきエンジンフードが開いているか否
かを判断する。つまり、エンジンフードが開いている
と、能動型エンジンマウント1周辺の状況が通常の走行
時とは異なっていることになり、振動伝達系も通常の状
態とは異なってくるため、図4のステップ204,21
1で読み込んだ残留振動信号eには、その振動伝達系の
変化に伴う外乱が入った可能性が高いと考えることがで
きる。そこで、ステップ306からステップ307に移
行し、フラグFを“1”にセットしてから今回の外乱検
出処理を終了し図4の処理に復帰する。
【0136】そして、ステップ306の判定が「NO」
の場合、つまりステップ302〜306の全ての判定が
「NO」の場合には、図4のステップ204,211で
読み込んだ残留振動信号eに外乱が入っている可能性が
高いという判断はできなかったので、ステップ308に
移行してフラグFを“0”にセットしてから、図4の処
理に復帰する。
【0137】そして、図9の外乱検出処理を終えたら、
図4のステップ350に移行し、フラグFの状態に応じ
て、ステップ202又はステップ216に移行するので
あるが、ステップ204,211で読み込んだ残留振動
信号eに外乱が入っている可能性が高い場合には、ステ
ップ202に移行するようになっているから、出力サン
プリング・クロックSCo の周期To の変更は行われな
い。このため、ステップ202に戻った時点では、同定
信号として前回と同じ周波数の正弦波が再選択されたこ
とになるから、外乱が入っている可能性が高い残留振動
信号eに代えて、新たな残留振動信号eが読み込まれる
ことになる。
【0138】従って、ステップ350の判定が「NO」
となった時点で記憶されている残留振動信号eの各時数
列データには、外乱が入っている可能性が低いから、そ
の各時数列データに基づいてステップ218〜220の
処理が実行されれば、より精度の高い伝達関数Cを求め
ることができるのである。
【0139】つまり、本実施の形態であれば、ステップ
204,211の処理で残留振動信号eに外乱が入って
いる可能性が高い場合には、同じ周波数の同定信号を再
選択して同定処理を再始動するようになっているから、
記憶されている残留振動信号eに外乱が入っている可能
性が高いまま伝達関数Cを演算することを避けることが
できるのである。この結果、図3に示す振動低減処理に
は、より精度の高い伝達関数Cが用いられるようになる
から、良好な振動低減制御を実行して、車体35側の振
動レベルをより確実に低減することができる。
【0140】また、本実施の形態であれば、ステップ2
04,211の処理で残留振動信号eに外乱が入ってい
る可能性が高い場合に同定処理を再実行するようにして
いるから、残留振動信号eに外乱が入っていることを見
逃してしまう可能性が低いという利点もあるし、外乱検
出処理に複雑な演算が不要であるから、コントローラ2
5にとっても大幅な演算負荷の増大にはならない。
【0141】そして、本実施の形態であれば、ステップ
300の処理によって外乱が入っている可能性が高いこ
とが検出された場合であっても、最初から同定処理をや
り直すのではなく、残留振動信号eに外乱が入っている
可能性が高いと判断された場合の同定信号を再び選択し
て同定処理を再実行する構成であるから、演算時間の増
加を最小限に抑えることができる。
【0142】ここで、本実施の形態では、エンジン30
が振動源に対応し、能動型エンジンマウント1が制御振
動源に対応し、パルス信号生成器26が基準信号生成手
段に対応し、荷重センサ22が残留振動検出手段に対応
し、図3の処理が能動制御手段に対応し、図4の処理の
うちステップ300,350以外の処理が伝達関数同定
手段に対応し、図4のステップ201〜203,20
7,208,209,213〜215,217の処理が
同定信号供給手段に対応し、図4のステップ204,2
11の処理が応答信号読み込み手段に対応し、図4のス
テップ218,219の処理が伝達関数演算手段に対応
し、図4のステップ205,206,209,210,
212の処理が周期個別設定手段に対応し、図4のステ
ップ216の処理が出力周期可変手段に対応し、図4の
ステップ218の処理がフーリエ変換手段に対応し、図
4のステップ219の処理が逆フーリエ変換手段に対応
し、ドア開閉スイッチ40A及び図9のステップ302
の処理が外乱検出手段としてのドア開閉変化検出手段に
対応し、エンジン回転数センサ40B及び図9のステッ
プ303の処理が外乱検出手段としてのエンジン駆動検
出手段に対応し、車速センサ40C及び図9のステップ
304の処理が外乱検出手段としての車両走行検出手段
に対応し、シフト位置センサ40D,ブレーキスイッチ
40E及び図9のステップ305の処理が外乱検出手段
としての車両走行検出手段に対応し、エンジンフードス
イッチ40F及び図9のステップ306の処理がエンジ
ンフード開状態検出手段に対応し、図4のステップ35
0の処理が同定処理再始動手段に対応する。また、本実
施の形態では、ドアの開閉状態の変化、エンジンが駆動
していること、車両が走行していること、エンジンフー
ドが開いていること、のそれぞれ外乱検出手段の検出に
用いられる車両状態に対応する。
【0143】図10は本発明の第2の実施の形態の要部
を示す図であって、コントローラ25内で実行される外
乱検出処理の概要を示すフローチャートである。なお、
その他の構成及び処理の内容は、上記第1の実施の形態
と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0144】即ち、本実施の形態の外乱検出処理が実行
されると、先ずそのステップ310において、現在の同
定信号と、図4のステップ204,211で読み込んだ
残留振動信号eとのコヒーレンスγ2 (f)を演算す
る。なお、この場合の同定信号の周波数は元の正弦波の
周波数に等しいから、ここでのコヒーレンスγ2 (f)
は、その周波数についてのみ演算すればよい。
【0145】そして、ステップ311に移行し、ステッ
プ310で求めたコヒーレンスγ2(f)が、所定のし
きい値γ0 よりも大きいか否かを判定する。ここで、ス
テップ204,211で読み込まれた残留振動信号e
は、同定信号に応じて電磁アクチュエータ10で発生し
た振動を荷重センサ22で検出したものであるから、通
常ならば、同定信号と残留振動信号eとの相関関数は大
きい値にある。しかし、ステップ204,211で残留
振動信号eを読み込んだ際に荷重センサ22に外乱が入
力されていると、同定信号と残留振動信号eとの相関関
数は、入っている外乱の大きさに応じて小さくなるはず
である。従って、しきい値γ0 を適宜設定することによ
り、ステップ204,211で読み込んだ残留振動信号
eに無視できない程度の外乱が入っていたか否かを判断
することができるのである。
【0146】そこで、ステップ311の判定が「YE
S」の場合には、ステップ308に移行してフラグFを
“0”にセットする一方、ステップ311の判定が「N
O」の場合には、ステップ307に移行してフラグFを
“1”にセットしてから、図4の処理に復帰する。
【0147】このように、本実施の形態の構成であれ
ば、ステップ204,211で読み込んだ残留振動信号
eに無視できない外乱が入っていたか否かを判断して、
外乱が入っていたと判断された場合には、同定信号の周
波数を変更せずに再度同定処理を実行するため、上記第
1の実施の形態と同様の作用効果が得られる。しかも、
残留振動信号eに外乱が入っていたことを直接的に検出
する構成であるから、上記第1の実施の形態よりも外乱
検出処理の検出精度が高いという利点がある。
【0148】ここで、本実施の形態では、ステップ31
0,311の処理が外乱検出手段に対応する。なお、こ
の第2の実施の形態では、残留振動信号eに基づいて外
乱が入ったことを検出するようにしているが、残留振動
信号eに基づいて外乱が入ったこと又は入った可能性が
高いことを検出する方法としては、上記のようなコヒー
レンスに頼らなくてもよい。例えば、図11(a)〜
(c)はいずれも同定処理実行中にステップ204,2
11で読み込んだ残留振動信号eの波形図であるが、図
11(a)のように残留振動信号eのピークの周期が途
中で大きく変化するような場合、図11(b)のように
残留振動信号eのピーク値の大きさが途中で大きく変化
するような場合、図11(c)のように残留振動信号e
の中立値を横切る点の周期が変化するような場合(同定
信号の周期と矛盾して残留振動信号eの符号が反転する
ような場合)を検出する処理を実行し、そのような場合
が検出されたときに、残留振動信号eに外乱が入った又
は入った可能性が高いと判断して、フラグFをセットす
るようにしてもよい。
【0149】図12は本発明の第3の実施の形態の要部
を示す図であって、コントローラ25内で実行される外
乱検出処理の概要を示すフローチャートである。なお、
その他の構成及び処理の内容は、上記第1の実施の形態
と同様であるため、その図示及び説明は省略する。
【0150】即ち、本実施の形態の外乱検出処理が実行
されると、先ずそのステップ320において、残留振動
信号eが読み込まれる。そして、ステップ321に移行
し、ステップ320で読み込んだ残留振動信号eの絶対
値が、所定のしきい値e0 よりも大きいか否かを判定
し、判定が「NO」の場合にはステップ308に移行す
る一方、判定が「YES」の場合にはステップ307に
移行する。
【0151】つまり、図4のステップ300に移行した
時点では、コントローラ25は同定信号の出力は停止し
ているから、電磁アクチュエータ10からは同定振動は
発生していないはずである。従って、この時点で比較的
レベルの大きい残留振動信号eが検出されたとすると、
その残留振動信号eは、荷重センサ22に入力されてい
る外乱振動によるものと考えることができる。しかも、
その外乱振動は、ステップ300に移行する前にも発生
していた可能性が高いと判断することができるから、ス
テップ204,211で読み込んだ残留振動信号eに重
畳されている可能性が高いのである。
【0152】そこで、ステップ321の判定結果に従っ
てフラグFをセットしてから図4の処理に復帰すること
により、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を得る
ことができるのである。
【0153】ここで、本実施の形態では、ステップ32
0,321の処理が外乱検出手段に対応する。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】また、上記各実施の形態では、同定信号と
して正弦波を用いるとともに、その正弦波の周波数を徐
々に変化させて広い周波数帯域に渡って有効な伝達関数
Cを同定するようにしているが、伝達関数Cの同定処理
はこれに限定されるものではなく、同定信号としてイン
パルス信号を用いるとともに、残留振動信号eによって
インパルス応答を直接測定する構成であってもよいし、
或いは、同定信号としてホワイトノイズ信号を用いると
ともに、同定信号を基準信号、残留振動信号eをエラー
信号としたLMSアルゴリズムのような適応アルゴリズ
ムによって伝達関数Cを同定するようにしてもよい。
【0162】そして、上記第1〜第3の実施の形態で
は、外乱が検出された場合には、同定処理を途中からや
り直しするように構成しているが、これに限定されるも
のではなく、最初からやり直しするようにしてもよい。
特に、上記のように同定信号としてインパルス信号やホ
ワイトノイズ信号を用いる場合には、正弦波を用いる場
合と異なり途中からやり直しするということはできない
から、最初からやり直しすることになる。
【0163】また、上記第1の実施の形態等では、自動
変速機を有する車両を想定しているため、シフト位置セ
ンサ40Dを備えているが、手動変速機を有する車両に
適用した場合には、シフト位置センタ40Dは不要であ
り、ステップ305の処理もブレーキ検出信号B0 につ
いてのみ行えばよい。
【0164】さらに、外乱検出処理は上記各実施の形態
に示した内容に限定されるものではなく、例えば、車両
状態として車体の横方向や前後方向の傾斜状態を検出
し、その傾斜が無視できない程度に大きい場合には、残
留振動信号eに外乱が入っている又は入っている可能性
が高いと判断するようにしてもよい。すなわち、車体が
傾斜すれば、振動伝達系の状態も通常状態とは異なって
くるため、エンジンフードが開いている場合と同様に外
乱が入っている可能性が高いと判断できるのである。な
お、車体の傾斜状態を検出する車体傾斜状態検出手段と
しては、例えば水準器を適用することができるが、アン
チスキッドブレーキ装置や能動型サスペンションを搭載
している車両であれば、その制御用に前後加速度センサ
や横加速度センサ等を有しているから、車体が傾斜して
いると加速度センサの出力信号に重力加速が重畳される
ことを利用して、車体の傾斜を検出するようにしてもよ
い。また、そのような車両でなくても、車体の傾斜を検
出するために前後加速度センサや横加速度センサを搭載
するようにしてもよい。
【0165】また、上記各実施の形態では、残留振動を
能動型エンジンマウント1に内蔵した荷重センサ22に
よって検出しているが、これに限定されるものではな
く、例えば車室内の乗員足元位置にフロア振動を検出す
る加速度センサを配設し、その加速度センサの出力信号
を残留振動信号eとしてもよい。
【0166】そして、本発明の適用対象は車両に限定さ
れるものではなく、エンジン30以外で発生する振動を
低減するための能動型振動制御装置であっても本発明は
適用可能であり、適用対象に関係なく上記各実施の形態
と同様の作用効果を奏することができる。例えば、工作
機械からフロアや室内に伝達される振動を低減する装置
等であっても、本発明は適用可能である。
【0167】さらに、上記各実施の形態では、駆動信号
yを生成するアルゴリズムとして同期式Filtere
d−X LMSアルゴリズムを適用しているが、適用可
能なアルゴリズムはこれに限定されるものではなく、例
えば、通常のFiltered−X LMSアルゴリズ
ム等であってもよい。
【0168】また、上記第1の実施の形態において、同
定信号の元となる正弦波の最高周波数を200Hzとして
いるが、これの算出根拠は、一般的なレシプロ4気筒エ
ンジンの場合、エンジン回転2次成分のエンジン振動が
問題となる振動であって、エンジンの最高回転数は概ね
6000rpm程度と考えられるから、その最高回転数
で回転している状態での回転2次成分が200Hzとなる
からである。従って、同定信号の元となる正弦波の最高
周波数は、エンジンの形式等に応じて適宜選定すればよ
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態を示す車両の概略構成図であ
る。
【図2】能動型エンジンマウントの一例を示す断面図で
ある。
【図3】振動低減処理の概要を示すフローチャートであ
る。
【図4】伝達関数の同定処理の概要を示すフローチャー
トである。
【図5】伝達関数の同定処理の全体的な流れを各波形と
ともに示す図である。
【図6】周期To 及び周期Ti を個別に設定できること
の利点を説明する図である。
【図7】同定信号の出力を説明する波形図である。
【図8】同定信号として正弦波を用いる場合とホワイト
ノイズ信号を用いる場合との差を説明する周波数特性図
である。
【図9】外乱検出処理の概要を示すフローチャートであ
る。
【図10】第2の実施の形態で実行される外乱検出処理
の概要を示すフローチャートである。
【図11】外乱検出処理の他の例を説明する残留振動信
号eの波形図である。
【図12】第3の実施の形態で実行される外乱検出処理
の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 能動型エンジンマウント(制御振動源) 10 電磁アクチュエータ 22 荷重センサ(残留振動検出手段) 25 コントローラ 26 パルス信号生成器 30 エンジン(振動源) 35 車体 40A ドア開閉スイッチ 40B エンジン回転数センサ 40C 車速センサ 40D シフト位置センサ 40E ブレーキスイッチ 40F エンジンフードスイッ
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G10K 11/16 G10K 11/16 J (56)参考文献 特開 平7−271451(JP,A) 特開 平8−76774(JP,A) 特開 平5−61486(JP,A) 特開 平5−158487(JP,A) 特開 平6−326559(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G10K 11/178 B60K 5/12 B60R 11/02 F16F 13/26 G05D 19/02

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 振動源から発せられる振動と干渉する制
    御振動を発生可能な制御振動源と、前記振動源の振動発
    生状態を検出し基準信号として出力する基準信号生成手
    段と、前記干渉後の振動を検出し残留振動信号として出
    力する残留振動検出手段と、前記基準信号及び前記残留
    振動信号に基づき前記制御振動源及び前記残留振動検出
    手段間の伝達関数を含む制御アルゴリズムを用いて前記
    振動が低減するように前記制御振動源を駆動する能動制
    御手段と、前記伝達関数を同定する伝達関数同定手段
    と、を備えるとともに、 前記伝達関数同定手段は、所定の同定信号を前記制御振
    動源に供給可能な同定信号供給手段と、前記同定信号に
    応じた振動が前記制御振動源から発せられた場合の前記
    残留振動信号を読み込む応答信号読み込み手段と、この
    応答信号読み込み手段が読み込んだ前記残留振動信号に
    基づいて前記伝達関数を演算する伝達関数演算手段と、
    を備えた能動型振動制御装置において、 前記応答信号読み込み手段が前記残留振動信号を読み込
    んでいる最中に前記残留振動検出手段に外乱が入ったこ
    と又は入った可能性が高いことを検出する外乱検出手段
    と、この外乱検出手段が前記外乱が入ったこと又は入っ
    た可能性が高いことを検出した場合に前記伝達関数同定
    手段を再始動させる同定処理再始動手段と、を備えたこ
    とを特徴とする能動型振動制御装置。
  2. 【請求項2】 前記同定処理再始動手段は、前記伝達関
    数同定手段による前記同定処理を最初からやり直しさせ
    るようになっている請求項1記載の能動型振動制御装
    置。
  3. 【請求項3】 前記同定信号は正弦波であり、その正弦
    波の周波数は複数設定されており、前記同定信号供給手
    段は前記正弦波を一つずつ選択して前記同定信号とする
    ようになっている請求項1記載の能動型振動制御装置。
  4. 【請求項4】 前記同定処理再始動手段は、前記外乱検
    出手段が前記外乱が入ったこと又は入った可能性が高い
    ことを検出した際に同定信号として選択している正弦波
    を、再度同定信号として選択して前記同定処理を再始動
    するようになっている請求項3記載の能動型振動制御装
    置。
  5. 【請求項5】 車両に適用されるとともに、前記外乱検
    出手段は車両状態に基づいて前記外乱が入ったこと又は
    入った可能性が高いことを検出するようになっている請
    求項1乃至請求項4のいずれかに記載の能動型振動制御
    装置。
  6. 【請求項6】 前記外乱検出手段は、前記車両状態とし
    てドアの開閉の変化を検出するドア開閉変化検出手段で
    ある請求項5記載の能動型振動制御装置。
  7. 【請求項7】 前記外乱検出手段は、前記車両状態とし
    てエンジンが駆動していることを検出するエンジン駆動
    検出手段である請求項記載の能動型振動制御装置。
  8. 【請求項8】 前記外乱検出手段は、前記車両状態とし
    て車両が走行していること又は走行している可能性が高
    いことを検出する車両走行検出手段である請求項5記載
    の能動型振動制御装置。
  9. 【請求項9】 前記外乱検出手段は、前記車両状態とし
    車体の傾斜状態を検出する車体傾斜検出手段である請
    求項記載の能動型振動制御装置。
  10. 【請求項10】 前記外乱検出手段は、前記車両状態と
    してエンジンフードの開状態を検出するエンジンフード
    開状態検出手段である請求項記載の能動型振動制御装
    置。
  11. 【請求項11】 前記外乱検出手段は、選択されている
    一の周波数の前記正弦波からなる前記同定信号の前記制
    御振動源への供給が完了した直後であって前記同定信号
    の出力を停止しているときの前記残留振動信号に基づい
    て前記外乱が入ったこと又は入った可能性が高いことを
    検出するようになっている請求項3又は請求項4記載の
    能動型振動制御装置。
  12. 【請求項12】 前記外乱検出手段は、前記応答信号読
    み込み手段が読み込んだ前記残留振動信号に基づいて前
    記外乱が入ったこと又は入った可能性が高いことを検出
    するようになっている請求項3又は請求項4記載の能動
    型振動制御装置。
  13. 【請求項13】 前記伝達関数演算手段は、前記同定信
    号供給手段が前記正弦波を変更する度に前記応答信号読
    み込み手段が読み込んだ前記残留振動信号をフーリエ変
    換して 前記各正弦波の周波数に相当する成分を抽出する
    フーリエ変換手段と、このフーリエ変換手段が抽出した
    各周波数成分を合成したものを逆フーリエ変換して前記
    伝達関数としてのインパルス応答を求める逆フーリエ変
    換手段と、を備えた請求項3,請求項4又は請求項12
    のいずれかに記載の能動型振動制御装置。
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